説明

作業車

【課題】脱穀装置および選別装置を合理的に配置して、作業車の安定性や収納性の向上を図れるようにする。
【解決手段】刈取穀稈に脱穀処理を施す脱穀装置6と、脱穀処理により得られた処理物に選別処理を施す選別装置7とを備え、脱穀装置6と選別装置7とを水平方向に並べて配置してある。これにより、走行時や輸送時などにおける車体の安定性を向上させることができ、また、天井の低い納屋などへの作業車の収納を可能にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刈取穀稈に脱穀処理を施す脱穀装置と、前記脱穀処理により得られた処理物に選別処理を施す選別装置とを備えた作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような作業車としてはコンバインやハーベスタなどがある。一般的に、これらの作業車は、脱穀装置での脱穀処理により脱穀装置の受網から漏下した処理物に、脱穀装置の下方に配備した選別装置の揺動選別ケースによる篩い選別処理と、揺動選別ケースの前下方に配備した唐箕からの選別風による風力選別処理とを施すことにより、脱穀装置からの処理物を単粒化穀粒や稈屑などに選別し、その選別処理で得られた単粒化穀粒を、穀粒タンクや籾袋などの所定の穀粒貯留部に貯留するように構成されている(例えば特許文献1〜3参照)。
【特許文献1】特開2006−246718号公報
【特許文献2】特開2006−14708号公報
【特許文献3】特開平8−70688号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
つまり、コンバインやハーベスタなどの作業車においては、通常、脱穀装置と選別装置とが垂直方向に並べて配備されている。そのため、作業車の重心位置や車高を低くすることが困難になり、走行時や輸送時などにおける車体の安定性を向上させる、あるいは、天井の低い納屋などへの収納を可能にする、といった改善が行い難くなっていた。
【0004】
本発明の目的は、脱穀装置および選別装置を合理的に配置して、作業車の安定性や収納性の向上を図れるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明のうちの請求項1に記載の発明では、
刈取穀稈に脱穀処理を施す脱穀装置と、前記脱穀処理により得られた処理物に選別処理を施す選別装置とを備え、
前記脱穀装置と前記選別装置とを水平方向に並べて配置してあることを特徴とする。
【0006】
この特徴構成によると、脱穀装置と選別装置とを垂直方向に並べる場合に比較して作業車の重心位置や車高を低くすることができる。これにより、走行時や輸送時などにおける車体の安定性を向上させることができ、また、天井の低い納屋などへの作業車の収納を可能にすることができる。
【0007】
従って、作業車の安定性や収納性などを向上させることができる。
【0008】
本発明のうちの請求項2に記載の発明では、上記請求項1に記載の発明において、
前記水平方向を車体の左右方向としてあることを特徴とする。
【0009】
この特徴構成によると、脱穀装置と選別装置とが左右に並んで配備されることになる。
【0010】
ところで、選別装置には揺動選別ケースを備えた揺動選別装置を採用することが一般的である。揺動選別ケースは、通常、その揺動選別での精度を確保するために、広い処理面積を有するとともに揺動方向の長さが長くなるように形成されている。そして、揺動選別装置は、揺動選別ケースの揺動方向が車体の前後方向に沿うように備えることが一般的である。そのため、脱穀装置と選別装置とを単に車体の前後方向に並べて配備した場合には作業車の全長が長くなり、作業車の操向性を低下させることになる。
【0011】
そこで、請求項2に記載の発明では、脱穀装置と選別装置とを左右に並べて配備するようにしているのであり、これにより、選別装置として揺動選別装置を採用した場合であっても、車体の全長が長くなることに起因した操向性の低下を回避することができる。
【0012】
従って、車体の全長が長くなることに起因した操向性の低下を招くことなく、作業車の安定性や収納性などを向上させることができる。
【0013】
本発明のうちの請求項3に記載の発明では、上記請求項1または2に記載の発明において、
前記選別装置として、旋風により前記処理物から穀粒を選別するサイクロン選別装置を備えてあることを特徴とする。
【0014】
この特徴構成によると、サイクロン選別装置は、筒状の選別ケースや、この選別ケースの内部において、選別ケースの一端部から他端部に向けて選別ケースの内面に沿って旋回しながら吹き抜ける旋風を発生させるファン、などを備えて構成されるものであることから、選別精度を確保するために、広い処理面積を有するとともに揺動方向の長さが長くなるように形成された揺動選別ケースを要する揺動選別装置を装備する場合に比較して、選別装置の特に平面視での小型化を図ることができる。また、この小型化により、選別装置の配置の自由度を高めることができる。
【0015】
その結果、脱穀装置と選別装置とを水平方向に並べて配置しながらも、その配置に起因して作業車が平面視において大型化することを抑制または回避することができる。
【0016】
従って、作業車の平面視での大型化を抑制または回避しながら、作業車の安定性や収納性などを向上させることができる。
【0017】
本発明のうちの請求項4に記載の発明では、上記請求項1または2に記載の発明において、
前記選別装置として、揺動により前記処理物から穀粒を篩い分ける揺動選別装置を備えてあることを特徴とする。
【0018】
この特徴構成によると、選別装置として一般的に採用されている揺動選別装置を備えることにより、部品の流用が可能になり、新規構造の選別装置を備える場合に比較して、選別装置の製造や作業車への組み付けなどを容易に行えるとともに、コストの低減を図る上において有利になる。
【0019】
従って、選別装置の製造や作業車への組み付けなどの面において有利にしながら、作業車の安定性や収納性などを向上させることができる。
【0020】
本発明のうちの請求項5に記載の発明では、上記請求項1〜4のいずれか一つに記載の発明において、
前記選別処理により得られた穀粒を貯留する穀粒タンクを備え、
前記穀粒タンクを、車体の左右両側部に向けて延出する幅広に形成して、前記脱穀装置および前記選別装置に対して垂直方向に配置してあることを特徴とする。
【0021】
この特徴構成によると、一般的なコンバインのように、脱穀装置、選別装置、および穀粒タンクを、脱穀装置と選別装置とが上下に位置し、その横側方に穀粒タンクが位置するように配置する場合に比較して、穀粒タンクの貯留量が少ない作業開始時などにおける車体の左右バランスの向上を図ることができる。
【0022】
また、穀粒タンクを幅広に形成することにより、穀粒タンクとして必要な容量を確保しながら穀粒タンクの高さを低く抑えることができる。これにより、穀粒タンクを、脱穀装置および選別装置に対して垂直方向に配置しながらも、この配置に起因して作業車の重心位置や車高が高くなることを抑制することができる。
【0023】
従って、穀粒タンクを備えながらも作業車の安定性や収納性などを向上させることができる。
【0024】
本発明のうちの請求項6に記載の発明では、上記請求項5に記載の発明において、
前記穀粒タンクを、前記脱穀装置および前記選別装置の下方に配置してあることを特徴とする。
【0025】
この特徴構成によると、穀粒タンクに貯留される穀粒が車体の低重心化に貢献することから、作業の進行とともに穀粒タンクの貯留量が増加するのに伴って車体の安定性が向上する。
【0026】
また、選別処理により得られた穀粒を選別装置から穀粒タンクに向けて搬送する搬送装置を備えなくても、その穀粒を、選別装置から穀粒タンクに向けて流下させるだけで、穀粒タンクに貯留することができる。
【0027】
従って、構成の簡素化を図りながら、作業の進行とともに車体の安定性を向上させることができる。
【0028】
本発明のうちの請求項7に記載の発明では、上記請求項1〜6のいずれか一つに記載の発明において、
前記脱穀装置の真下位置に、前記脱穀装置から流下した脱穀処理後の処理物を前記選別装置に向けて水平方向に搬出する搬出機構を配備してあることを特徴とする。
【0029】
この特徴構成によると、脱穀装置から流下した脱穀処理後の処理物を、搬出機構によって、脱穀装置の水平方向に位置する選別装置に向けて速やかに搬出することができる。
【0030】
また、脱穀装置は、扱胴および受網の清掃や受網の交換などのメンテナンスを行いやすくするために、受網を着脱可能に敷設した下部ケースに、扱胴を備えた上部ケースを開閉揺動可能に連結することが一般的である。これにより、脱穀装置の上部ケースを開いて下部ケースから受網を取り外すことにより、搬出機構に対する清掃などのメンテナンスを、下部ケースと上部ケースとの間から容易に行うことができる。
【0031】
従って、水平方向に並ぶ脱穀装置から選別装置への処理物の搬送効率を向上させることができるとともに、搬出機構に対するメンテナンス性の向上を図ることができる。
【0032】
本発明のうちの請求項8に記載の発明では、上記請求項7に記載の発明において、
前記搬出機構として、前記脱穀装置の前半部から流下した脱穀処理後の処理物を搬出する第1搬出機構と、前記脱穀装置の後半部から流下した脱穀処理後の処理物を搬出する第2搬出機構とを備え、
前記第1搬出機構を、前記脱穀装置における脱穀処理領域の中間部に配備し、前記第2搬出機構を、前記脱穀装置における脱穀処理領域の終端部に配備してあることを特徴とする。
【0033】
この特徴構成によると、搬送機構が脱穀装置の脱穀処理領域から張り出さないことにより、搬送機構が脱穀装置の脱穀処理領域から張り出すことによる車体の大型化を抑制することができる。
【0034】
従って、車体の大型化に起因した旋回性能の低下やトラックなどによる輸送性の低下などを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
〔第1実施形態〕
以下、本発明を実施するための最良の形態の一例として、本発明を、作業車の一例である2条刈り用の自脱型コンバインに適用した第1実施形態を図面に基づいて説明する。
【0036】
図1には自脱型コンバインの全体側面が、図2にはその全体平面が示されている。これらの図に示すように、本第1実施形態で例示する自脱型コンバインは、角パイプなどの複数の部材により形成した車体フレーム1に、搭乗運転部2、エンジン3、左右一対のクローラ式走行装置4、刈取搬送装置5、脱穀装置6、選別装置としてのサイクロン選別装置7、穀粒タンク8、穀粒搬出装置9、および脱粒穀稈処理装置10、などを備えて構成されている。
【0037】
搭乗運転部2は、車体フレーム1の前部右側に、揺動式で位置保持型の主変速レバー11や副変速レバー12、非制動位置に復帰付勢されたブレーキペダル(図示せず)、十字揺動式で中立復帰型の操縦レバー13、および運転座席14、などを配備して形成されている。
【0038】
図3〜6に示すように、エンジン3は、その出力軸3Aが左右向きになる姿勢で運転座席14の下方に配備されている。エンジン3からの動力は、左右の両クローラ式走行装置4、刈取搬送装置5、脱穀装置6、サイクロン選別装置7、穀粒搬出装置9、および脱粒穀稈処理装置10、などに伝達される。
【0039】
図1〜3に示すように、左右のクローラ式走行装置4は車体フレーム1の下部に配備されている。左右のクローラ式走行装置4には、エンジン3からの動力が、ミッションケース15に一体装備した静油圧式の無段変速装置からなる主変速装置16、および、ミッションケース15の内部に備えたギヤ式の副変速装置(図示せず)や操向装置(図示せず)、などを介して伝達される。操向装置は、左右のクローラ式走行装置4を差動させることにより車体の向きを変更する。
【0040】
図示は省略するが、主変速装置16は、主変速レバー11の揺動操作に基づいて変速作動するように主変速用の連係機構を介して主変速レバー11に連係されている。副変速装置は、副変速レバー12の揺動操作に基づいて変速作動するように副変速用の連係機構を介して副変速レバー12に連係されている。操向装置は、対応するクローラ式走行装置4への伝動を断続する左右一対のサイドクラッチや、対応するクローラ式走行装置4を制動する左右一対のサイドブレーキなどにより構成されている。左右のサイドクラッチおよび左右のサイドブレーキは、操縦レバー13の左右方向への揺動操作に基づいて、各サイドクラッチの断続作動と各サイドブレーキの制動作動とが適切に連動して行われるように、操向用の連係機構を介して操縦レバー13に連係されている。
【0041】
上記の構成から、主変速レバー11を揺動操作することにより、左右の両クローラ式走行装置4の駆動状態を、駆動停止状態と前進駆動状態と後進駆動状態とに無段階に切り換えることができるとともに、前進駆動状態と後進駆動状態とのそれぞれにおける左右の両クローラ式走行装置4の駆動速度を無段階に変更することができる。副変速レバー12を揺動操作することにより、左右の両クローラ式走行装置4に対する伝動状態を、移動用の高速伝動状態や作業用の低速伝動状態などに切り換えることができる。前進駆動状態または後進駆動状態において、操縦レバー13を左右方向に揺動操作することにより、左右のクローラ式走行装置4による走行状態を、左右のクローラ式走行装置4を等速駆動させた直進状態と、左右一方のクローラ式走行装置4を駆動し、かつ、他方のクローラ式走行装置4の駆動を停止した緩旋回状態と、この緩旋回状態において他方のクローラ式走行装置4を制動した急旋回状態とに切り換えることができる。
【0042】
なお、操向装置としては、左右一対のサイドクラッチなどからなり、左右一対のサイドブレーキを備えていないものであってもよい。
【0043】
図示は省略するが、ミッションケース15の内部には、制動用の連係機構を介してブレーキペダルに連係された走行用のブレーキが装備されている。搭乗運転部2には、ブレーキペダルの制動位置での保持を可能にする保持金具が備えられている。この保持金具を使用することにより、走行用のブレーキを駐車ブレーキとして機能させることができる。
【0044】
なお、ブレーキペダルの操作に連動して左右のサイドブレーキが同時操作されるように、ブレーキペダルと左右のサイドブレーキとを制動用の連係機構を介して連係することにより、左右のサイドブレーキを走行用のブレーキとして機能させるように構成してもよい。
【0045】
図1および図2に示すように、刈取搬送装置5は、丸パイプ材などからなる刈取フレーム17に、3つのデバイダ18、左右一対の引起機構19、バリカン型の刈取機構20、および穀稈搬送機構21、などを備えて構成されている。刈取フレーム17は、車体フレーム1の左前部に立設した支持フレーム22の上端部から車体フレーム1の前方に向けて延出されている。支持フレーム22は、刈取フレーム17の上下揺動を許容するように刈取フレーム17の基端部17Aを支持する。つまり、刈取搬送装置5は、刈取フレーム17の基端部17Aを支点にした昇降揺動が可能となるように車体の前部左側に配備されている。
【0046】
図3に示すように、刈取フレーム17には刈り取り搬送用の伝動機構23が備えられている。伝動機構23は、刈取フレーム17の基端部17Aに備えた左右向きの入力軸23Aに、エンジン3からの動力が、主変速装置16の入力軸16Aやベルトテンション式の刈取クラッチ24などを介して伝達される。図示は省略するが、伝動機構23は、その入力軸23Aに伝達されたエンジン3からの動力を、刈取フレーム17の内部に備えた複数の伝動軸やベベルギヤなどを介して、各引起機構19、刈取機構20、および穀稈搬送機構21、などに分配する。
【0047】
各デバイダ18は、車体の前進走行に伴って、収穫対象の植立穀稈を収穫対象外の植立穀稈と梳き分けて梳き起こす。各引起機構19は、エンジン3からの動力で駆動されることにより、各デバイダ18により梳き起こされた収穫対象の植立穀稈を所定の刈取姿勢に引き起こす。刈取機構20は、エンジン3からの動力で駆動されることにより、各引起機構19により引き起こされた収穫対象の植立穀稈の株元側を切断する。穀稈搬送機構21は、エンジン3からの動力で駆動されることにより、刈取機構20による切断後の植立穀稈である刈取穀稈を刈り取り用の起立姿勢から脱穀用の横倒れ姿勢に姿勢変更しながら脱穀装置6に向けて搬送する。
【0048】
つまり、刈取搬送装置5は、エンジン3からの動力で駆動されることにより、収穫対象の植立穀稈を刈り取って脱穀装置6に供給するように構成されている。
【0049】
図1に示すように、刈取搬送装置5は、車体フレーム1と刈取フレーム17とにわたって架設した昇降シリンダ25の作動により昇降揺動する。昇降シリンダ25には、作動油の供給による伸長作動で刈取搬送装置5を上昇させ、作動油の排出による収縮作動で刈取搬送装置5を下降させる単動型の油圧シリンダが採用されている。昇降シリンダ25は、操縦レバー13の前後方向への揺動操作に基づく油圧制御により、その作動が制御されるように、操縦レバー13に油圧制御回路(図示せず)などを介して連係されている。
【0050】
この構成から、操縦レバー13を前後方向に揺動操作することにより、刈取搬送装置5を、下限側の作業領域と上限側の非作業位置とにわたって昇降させることができ、作業領域においては、植立穀稈に対する刈り高さ位置を任意の高さ位置に調節することができる。
【0051】
図1〜6に示すように、車体フレーム1の左後半部には脱穀ケース26が配備されている。脱穀装置6は、脱穀ケース26に備えた扱胴27、受網28、および挟持搬送機構29、などにより構成されている。脱穀ケース26は、下部ケース30と上部ケース31とから構成されている。下部ケース30の右上部には、上部ケース31を開閉揺動可能に支持する前後向きの筒軸32が配備されている。扱胴27は、前後向きの軸心a1を中心にして回転するように上部ケース31に支持されている。受網28は、扱胴27の下部側を下方から覆うように下部ケース30に着脱可能に敷設されている。挟持搬送機構29は、下部ケース30の左端部に備えたフィードチェーン33や、上部ケース31の左端部に備えた挟持レール34、などにより構成されている。
【0052】
挟持搬送機構29は、エンジン3からの動力でフィードチェーン33が回動駆動されることにより、刈取搬送装置5により搬送された刈取穀稈の株元側を挟持して後方に向けて搬送する。フィードチェーン33には、エンジン3からの動力が、ベルトテンション式の脱穀クラッチ35、左右向きの伝動軸36、ベルト伝動式の動力分配機構37、および、ギヤ式の減速機構38、などを介して伝達される。挟持搬送機構29により搬送される刈取穀稈は、その穂先側が、下部ケース30と上部ケース31との間に形成した供給口から、扱胴27と受網28との間に形成される脱穀処理領域Aに供給される。
【0053】
扱胴27には、伝動軸36において分岐されたエンジン3からの動力が、ベルト伝動式の第1伝動機構39、一対のベベルギヤ40、および、ベルト伝動式の第2伝動機構41、などを介して伝達される。扱胴27は、エンジン3からの動力により、前後向きの軸心a1を中心にして正面視右回りに回転駆動されることにより、脱穀処理領域Aに供給された刈取穀稈の穂先側に脱穀処理を施す。
【0054】
受網28は、扱胴27による脱穀処理により単粒化した穀粒などの処理物を漏下させる。受網28から漏下しなかった枝梗付き穀粒や二股粒などの処理物は、受網28の車体後方側に形成した送塵口42に送られる。
【0055】
脱穀装置6は、上部ケース31を閉じると、扱胴27が受網28に近接することにより、扱胴27と受網28との間に脱穀処理領域Aとなる所定の脱穀処理空間が形成され、また、フィードチェーン33に挟持レール34が近接することにより、フィードチェーン33と挟持レール34との間に挾持搬送径路が形成される。これにより、挟持搬送機構29による刈取穀稈の挾持搬送が可能になり、扱胴27による脱穀処理が可能になる。脱穀装置6は、上部ケース31を開くと、フィードチェーン33から挟持レール34が離間し、かつ、扱胴27が受網28から離間することにより、扱胴27と受網28との間が大きく開放される。これにより、脱穀装置6における扱胴27や受網28の清掃あるいは受網28の交換などのメンテナンスが行い易くなる。
【0056】
図3〜6に示すように、下部ケース30には、脱穀装置6による脱穀処理後の処理物をサイクロン選別装置7に向けて搬送する搬送装置43が装備されている。搬送装置43には、受網28の前半部から漏下した処理物をサイクロン選別装置7に向けて搬送する第1搬送機構44、受網28の後半部から漏下した処理物をサイクロン選別装置7に向けて搬送する第2搬送機構45、および、送塵口42から車体後方側に送り出された処理物をサイクロン選別装置7に向けて搬送する第3搬送機構46、などが備えられている。各搬送機構44〜46には、フィードチェーン33に伝達されるエンジン3からの動力が動力分配機構37により分配される。
【0057】
第1搬送機構44は、第1収集部47、第1スクリュー48、第1連通ケース49、および、スクリュー搬送式の第1揚送コンベヤ50、などを備えて構成されている。第1収集部47は、受網28の前半部から漏下した処理物を第1スクリュー48の搬送領域に寄せ集めるように下部ケース30の底部に形成されている。第1スクリュー48は、エンジン3からの動力で駆動されることにより、第1スクリュー48の搬送領域に寄せ集められた処理物を車体右側に向けて搬出する。第1連通ケース49は、第1収集部47と第1揚送コンベヤ50の下端部とを連通させる。第1連通ケース49の内部には、第1スクリュー48と第1揚送コンベヤ50とを連動させる一対のベベルギヤ51が備えられている。第1揚送コンベヤ50は、第1スクリュー48と連動することにより、第1スクリュー48により搬送された処理物をサイクロン選別装置7に向けて揚送する。
【0058】
第2搬送機構45は、第2収集部52、第2スクリュー53、第2連通ケース54、および、スクリュー搬送式の第2揚送コンベヤ55、などを備えて構成されている。第2収集部52は、受網28の後半部から漏下した処理物を第2スクリュー53の搬送領域に寄せ集めるように下部ケース30の底部に形成されている。第2スクリュー53は、エンジン3からの動力で駆動されることにより、第2スクリュー53の搬送領域に寄せ集められた処理物を車体右側に向けて搬出する。第2連通ケース54は、第2収集部52と第2揚送コンベヤ55の下端部とを連通させる。第2連通ケース54の内部には、第2スクリュー53と第2揚送コンベヤ55とを連動させる一対のベベルギヤ56が備えられている。第2揚送コンベヤ55は、第2スクリュー53と連動することにより、第2スクリュー53により搬送された処理物をサイクロン選別装置7に向けて揚送する。
【0059】
第1搬送機構44の第1スクリュー48および第2搬送機構45の第2スクリュー53は脱穀装置6の真下位置に配備されている。これにより、脱穀装置6の上部ケース31を開いて受網28を取り外すことにより、第1スクリュー48および第2スクリュー53に対する清掃などのメンテナンスを容易に行うことができる。
【0060】
第3搬送機構46は、第3収集部57、第3スクリュー58、および、スクリュー搬送式の第3揚送コンベヤ59、などを備えて構成されている。第3収集部57は、送塵口42から車体後方側に送り出された枝梗付き穀粒や二股粒などの短稈処理物を第3スクリュー58の搬送領域に寄せ集めるように下部ケース30の底部に形成されている。第3スクリュー58は、エンジン3からの動力で駆動されることにより、第3スクリュー58の搬送領域に寄せ集められた処理物を車体右側に向けて搬出する。第3スクリュー58と第3揚送コンベヤ59との間には、第3スクリュー58により搬送された処理物に再び脱穀処理を施すとともに、再脱穀処理後の処理物を第3揚送コンベヤ59に供給する第1再脱穀装置60が介装されている。第3揚送コンベヤ59は、第3スクリュー58と連動するように、チェーン伝動式の伝動機構61や一対のベベルギヤ62などを介して第3スクリュー58に連結されている。第3揚送コンベヤ59は、第3スクリュー58と連動することにより、第1再脱穀装置60による再脱穀処理後の処理物をサイクロン選別装置7に向けて揚送する。
【0061】
符号の付設は省略するが、第1再脱穀装置60は、複数の固定刃、複数の回転刃、および回転羽根、などを内部に備えて構成されている。第1再脱穀装置60においては、複数の回転刃が第3スクリュー58と一体回転することにより、第3スクリュー58により搬送された処理物に再び脱穀処理が施され、回転羽根が第3スクリュー58と一体回転することにより、再脱穀処理後の処理物が第3揚送コンベヤ59に供給される。
【0062】
この構成から、受網28から漏下せずに送塵口42から車体後方側に送り出された枝梗付き穀粒や二股粒などの短稈処理物に再び脱穀処理を施すことができ、短稈処理物に残存する穀粒の単粒化を促進させることができる。
【0063】
下部ケース30には、送塵口42の近傍において扱胴27と連れ回る長稈処理物などを受け取って再び脱穀処理を施す第2再脱穀装置63が備えられている。第2再脱穀装置63は、前後向きの軸心a2を中心にして回転するように下部ケース30に支持された処理胴64と、処理胴64の下部側を下方から覆うように下部ケース30に敷設された受網65とを備えている。
【0064】
処理胴64には、第2伝動機構41において分岐されたエンジン3からの動力が伝動軸66を介して伝達される。処理胴64は、エンジン3からの動力により、前後向きの軸心a2を中心にして正面視右回りに回転駆動されることにより、扱胴27と連れ回る長稈処理物などを受け取り、受網65との間において脱穀処理を施す。
【0065】
受網65は、その脱穀処理により単粒化した穀粒などの処理物を漏下させる。受網65から漏下した処理物は、第3搬送機構46の第3収集部57により第3スクリュー58の搬送領域に寄せ集められ、短稈処理物とともに第3スクリュー58により車体右側に向けて搬送される。受網65から漏下しなかった脱粒長稈などは、受網65の車体後方側に形成した排出口67に送られる。
【0066】
この構成から、受網28から漏下せずに扱胴27と連れ回る長稈処理物などに再び脱穀処理を施すことができ、長稈処理物などに残存する穀粒の単粒化を促進させることができる。
【0067】
図2〜7に示すように、サイクロン選別装置7は、車体フレーム1の右後半部に、第1選別ケース68、第2選別ケース69、第1ダクト70、吸引ファン71、および第2ダクト72、などを配備して構成されている。第1選別ケース68および第2選別ケース69は、上窄まりの円錐状に形成された上側円錐部68A,69A、円筒状に形成された円筒部68B,69B、下窄まりの円錐状に形成された下側円錐部68C,69C、および、第1選別ケース68の内部への外気の導入を可能にする円筒状の外気導入部68D,69D、などを有するように形成されている。
【0068】
第1選別ケース68において、上側円錐部68Aの上端には第1ダクト70の一端部が接続されている。円筒部68Bの上部には、第1揚送コンベヤ50により揚送された処理物を第1選別ケース68の内部に案内する第1案内ダクト68Eと、第2揚送コンベヤ55により揚送された処理物を第1選別ケース68の内部に案内する第2案内ダクト68Fとが備えられている。円筒部68Bの下部には、第1選別ケース68の内部への外気の導入を可能にする1次吸気用の吸気口68aが形成されている。第1案内ダクト68Eおよび第2案内ダクト68Fは、円筒部68Bに対する接線に沿って処理物を案内するように形成されている。外気導入部68Dには2次吸気用として複数の吸気孔68bが形成されている。外気導入部68Dの下端には、第1選別ケース68の内部を穀粒タンク8の内部に連通する円筒状の連通部68Gが連設されている。
【0069】
第2選別ケース69において、上側円錐部69Aの上端は第1ダクト70の中間部に接続されている。円筒部69Bの上部には、第3揚送コンベヤ59により揚送された処理物を第2選別ケース69の内部に案内する案内ダクト69Eが備えられている。円筒部69Bの下部には、第2選別ケース69の内部への外気の導入を可能にする1次吸気用の吸気口69aが形成されている。案内ダクト69Eは、円筒部69Bに対する接線に沿って処理物を案内するように形成されている。外気導入部69Dには2次吸気用として複数の吸気孔69bが形成されている。外気導入部69Dの下端には、第2選別ケース69の内部を穀粒タンク8の内部に連通する円筒状の連通部69Fが連設されている。
【0070】
そして、第1選別ケース68および第2選別ケース69の各連通部68G,69Fが、選別後の穀粒を穀粒タンク8に回収する回収部として機能する。
【0071】
吸引ファン71は、処理胴64に伝達したエンジン3からの動力がベルト伝動式の伝動機構73を介して伝達され、その動力で駆動されることにより吸引作動する。吸引ファン71の吸込口71aには第1ダクト70の他端部が接続されている。これにより、吸引ファン71の吸込口71aは、第1ダクト70を介して第1選別ケース68の内部と第2選別ケース69の内部とに連通されている。吸引ファン71の吐出口71bには第2ダクト72が接続されている。第2ダクト72は、吸引ファン71の吐出口71bからの排出物を排出口67に向けて案内する。
【0072】
上記の構成から、第1選別ケース68には、扱胴27の回転駆動により好適に脱穀処理されて受網28から漏下した単粒化穀粒の含有量の多い処理物が供給される。第2選別ケース69には、第1再脱穀装置60や第2再脱穀装置63による再脱穀処理により穀粒の単粒化が促進された処理物が供給される。
【0073】
そして、吸引ファン71の吸引作用により、第1選別ケース68に対しては、外気が、円筒部68Bの吸気口68aおよび外気導入部68Dの各吸気孔68bから第1選別ケース68の内部に導入され、第1選別ケース68の内部においては、吸気口68aからの外気が、第1選別ケース68の内面に沿って旋回しながら第1ダクト70に向けて上昇する旋回流となり、各吸気孔68bからの外気が、第1選別ケース68の中心部を通って第1ダクト70に向けて直線状に立ち上る上昇流となる。また、第2選別ケース69に対しては、外気が、円筒部69Bの吸気口69aおよび外気導入部69Dの各吸気孔69bから第2選別ケース69の内部に導入され、第2選別ケース69の内部においては、吸気口69aからの外気が、第2選別ケース69の内面に沿って旋回しながら第1ダクト70に向けて上昇する旋回流となり、各吸気孔69bからの外気が、第2選別ケース69の中心部を通って第1ダクト70に向けて直線状に立ち上る上昇流となる。
【0074】
つまり、吸引ファン71の吸引作用により、第1選別ケース68および第2選別ケース69のそれぞれの内部においては、それらの下部から上方の第1ダクト70に向けて、各選別ケース68,69の内面に沿って旋回しながら吹き抜ける旋風が発生する。
【0075】
これにより、第1選別ケース68においては、脱穀装置6からの単粒化した穀粒の含有量の多い処理物が、第1案内ダクト68Eおよび第2案内ダクト68Fにより、円筒部68Bに対する接線に沿って第1選別ケース68の内部に供給されるように案内され、その内部で発生する旋回流の遠心作用により、比重の大きい穀粒が第1選別ケース68の内面側に向かい、比重の小さい稈屑類が第1選別ケース68の中心側に向かうことにより、比重の大きい穀粒と比重の小さい稈屑類とに選別される。そして、比重の大きい穀粒は、選別ケース259の中心部を通る上昇流の作用を受けずに、その自重により第1選別ケース68の内面に沿って流下する。一方、比重の軽い稈屑類は、上昇流に乗って第1選別ケース68の中心部を通って吹き上がり、第1ダクト70、吸引ファン71、および第2ダクト72を通って排出口67に案内される。
【0076】
第2選別ケース69においては、第1再脱穀装置60や第2再脱穀装置63からの穀粒の単粒化が促進された処理物が、案内ダクト69Eにより、円筒部69Bに対する接線に沿って第2選別ケース69の内部に供給されるように案内され、その内部で発生する旋回流の遠心作用により、比重の大きい穀粒が第2選別ケース69の内面側に向かい、比重の小さい稈屑類が第2選別ケース68の中心側に向かうことにより、比重の大きい穀粒と比重の小さい稈屑類とに選別される。そして、比重の大きい穀粒は、選別ケース259の中心部を通る上昇流の作用を受けずに、その自重により第2選別ケース69の内面に沿って流下する。一方、比重の軽い稈屑類は、上昇流に乗って第2選別ケース69の中心部を通って吹き上がり、第1ダクト70、吸引ファン71、および第2ダクト72を通って排出口67に案内される。
【0077】
つまり、第1選別ケース68が、脱穀装置6からの処理物に旋風による風力選別処理を施す選別部であり、第2選別ケース69が、第1再脱穀装置60および第2再脱穀装置63からの処理物に旋風による風力選別処理を施す選別部であり、これらの各選別部68,69での旋風による風力選別処理により、比重の大きい穀粒を精度良く選別して流下させることができる。
【0078】
なお、吸引ファン71にはプレートファンを採用することが好ましい。また、図示は省略するが、車体フレーム1の右後半部には、サイクロン選別装置7を覆う化粧カバーが着脱可能に装備されている。
【0079】
図1〜7に示すように、穀粒タンク8は、車体フレーム1の後半部において車体の下部側に位置するように配備されている。穀粒タンク8の前後長さは、車体フレーム1の前後中間部から後端部にわたる長さに設定されている。穀粒タンク8の左右幅は、車体の左右両端部にほぼわたる幅広に設定されている。穀粒タンク8の上下長さは、穀粒タンク8の上端が、刈取搬送装置5の揺動支点となる刈取フレーム17の基端部17Aよりも低くなる短い長さに設定されている。
【0080】
つまり、穀粒タンク8は、車体後半部の略全域にわたる扁平の長方体状に形成された状態で車体の下部側に配備されている。これにより、車体フレーム1の左後半部に配備される脱穀装置6は、穀粒タンク8の左上部に搭載されることになる。車体フレーム1の右後半部に配備されるサイクロン選別装置7は、穀粒タンク8の右上部に搭載されることになる。そして、サイクロン選別装置7が穀粒タンク8に搭載されることにより、サイクロン選別装置7における各連通部68G,69Fの下方に穀粒タンク8が位置することになり、これにより、サイクロン選別装置7の第1選別ケース68および第2選別ケース69を穀粒タンク8に直に連通させることができ、第1選別ケース68および第2選別ケース69のそれぞれから流下する穀粒が、そのまま穀粒タンク8の内部に流れ込んで穀粒タンク8に貯留される。穀粒タンク8に貯留された穀粒は、作業走行時の車体の振動により均平化される。
【0081】
このように、このコンバインにおいては、車体の下部側に、車体後半部の略全域にわたる扁平の長方体状に形成した穀粒タンク8を配備し、その上部に、脱穀装置6とサイクロン選別装置7とを車体の左右方向に並べて配備することから、車体の左右一側部に脱穀装置6と選別装置とを上下に並べて配備し、車体の左右他側部に穀粒タンク8を配備する従来構造のコンバインに比較して、穀粒タンク8の貯留量の少ない作業開始時などにおける車体の左右バランスの向上を効果的に図ることができる。
【0082】
また、車体後半部の略全域を穀粒タンク8に有効利用することにより、穀粒タンク8を、その容量を十分に確保しながらも、その高さを極力低く抑えた扁平形状に形成することができ、結果、穀粒タンク8の上部に脱穀装置6とサイクロン選別装置7とを配備する構成でありながら、車高や車体の重心位置を低く抑えることができる。
【0083】
しかも、穀粒タンク8に貯留される穀粒が車体の低重心化に貢献することから、作業の進行とともに穀粒タンク8に貯留される穀粒量が増加するのに伴って車体の安定性が向上することになる。
【0084】
図示は省略するが、穀粒タンク8は、脱穀装置6およびサイクロン選別装置7の搭載を可能にする高い強度を有するように、複数の補強部材などにより補強されている。これにより、穀粒タンク8を車体フレーム1の強度部材に兼用することができる。その結果、車体フレーム1として高い強度を確保しながら、車体フレーム1の構成の簡素化を図ることができる。
【0085】
図1〜8に示すように、穀粒搬出装置9は、前後向きのスクリューからなる搬出コンベヤ74、下部ケース75、スクリュー搬送式の揚送コンベヤ76、上部ケース77、および、スクリュー搬送式の排出コンベヤ78、などを備えて構成されている。搬出コンベヤ74は、穀粒タンク8の右端側底部に前後向きに形成した穀粒搬出用のガイド溝8Aの内部に配備されている。搬出コンベヤ74には、エンジン3からの動力が、ベルトテンション式の排出クラッチ79、左右向きの伝動軸80、および、伝動ケース81の内部に備えた一対のベベルギヤ82、などを介して伝達される。搬出コンベヤ74は、エンジン3からの動力で駆動されることにより、ガイド溝8Aに堆積した穀粒を揚送コンベヤ76に向けて搬出する。下部ケース75は、揚送コンベヤ76の旋回を許容しながら、穀粒タンク8のガイド溝8Aと揚送コンベヤ76の下端部とを連通させる。下部ケース75の内部には、搬出コンベヤ74と揚送コンベヤ76とを連動させる一対のベベルギヤ83が備えられている。揚送コンベヤ76は、搬出コンベヤ74と連動することにより、搬出コンベヤ74により搬出された穀粒を排出コンベヤ78に向けて揚送する。上部ケース77は、排出コンベヤ78の起伏揺動を許容しながら、揚送コンベヤ76の上端部と排出コンベヤ78の基端部とを連通させる。上部ケース77の内部には、揚送コンベヤ76と排出コンベヤ78とを連動させる一対のベベルギヤ84が備えられている。排出コンベヤ78は、油圧シリンダ85の作動により起伏揺動し、油圧モータ86の作動により、揚送コンベヤ76および上部ケース77とともに旋回し、揚送コンベヤ76と連動することにより、揚送コンベヤ76により揚送された穀粒を、排出コンベヤ78の遊端部に形成した排出口78Aに向けて搬送し、その排出口78Aから、起伏揺動操作や旋回操作により設定された所望の排出位置に排出する。
【0086】
図3、図4および図6〜8に示すように、穀粒タンク8には、その内部に貯留した穀粒を搬出コンベヤ74に向けて搬送する搬送装置としての振動搬送装置87が装備されている。振動搬送装置87は、穀粒タンク8の底部に右下がり姿勢で配備された底板88、底板88を左右方向に揺動可能に吊り下げ支持する4本の支持アーム89、および、底板88を左右方向に揺動駆動する駆動機構90、などにより構成されている。
【0087】
駆動機構90は、搬出コンベヤ74の前端部に備えた偏心カム91、前後向きの回動軸92、前後一対の揺動アーム93、および、前後一対のロッド94、などにより構成されている。偏心カム91は、エンジン3からの動力により搬出コンベヤ74と一体回転する。回動軸92は、搬出コンベヤ74の上方に位置するように穀粒タンク8の前壁8Bと後壁8Cとにわたって架設されている。前後の揺動アーム93は、回動軸92を介して一体揺動するように、それらの上端部が回動軸92に連結されている。前側の揺動アーム93は、その下端部に偏心カム91が係入される長孔93aが形成されている。これにより、前後の揺動アーム93は、偏心カム91の回転に連動して左右方向に揺動する。前後のロッド94は、前後の揺動アーム93をその横側方に位置する右側の支持アーム89に連結する。
【0088】
つまり、振動搬送装置87は、搬出コンベヤ74の駆動に連動して、駆動機構90が、搬出コンベヤ74の回転運動を前後の揺動アーム93の揺動運動に変換して、底板88に振動を与えることにより、穀粒タンク8の内部に貯留した穀粒を搬出コンベヤ74に向けて搬送するように構成されている。
【0089】
これにより、穀粒タンク8を扁平形状に形成しながらも、穀粒搬出装置9の作動による穀粒排出時には、穀粒タンク8の内部に貯留した穀粒を滞りなく搬出コンベヤ74に供給することができ、穀粒搬出装置9の作動による穀粒の排出を良好に行える。
【0090】
なお、振動搬送装置87としては、水平姿勢で配備した底板88に駆動機構90による振動を与えるように構成したものであってもよい。
【0091】
図6〜8に示すように、穀粒タンク8の内部には、貯留した穀粒を、回動軸92との接触を回避しながら搬出コンベヤ74の左右に流下案内する断面形状山形の流下案内板95、および、穀粒タンク8の内面と底板88との間に形成された隙間への穀粒の入り込みを阻止するシート96が装備されている。
【0092】
図1〜3に示すように、脱粒穀稈処理装置10は、車体の後部に排ワラ搬送機構97や排ワラ細断機構98などを配備して構成されている。排ワラ搬送機構97には、扱胴27に伝達したエンジン3からの動力が、ベルト伝動式の伝動機構99や一対のベベルギヤ100などを介して伝達される。排ワラ搬送機構97は、その動力で駆動されることにより、脱穀処理後の刈取穀稈である排ワラを挟持搬送機構29から受け取って車体の後端部に向けて搬送する。
【0093】
排ワラ細断機構98は、その内部に前後一対のカッター101が備えられている。各カッター101は、左右向きの回転軸102に円盤状の複数の回転刃103を各回転刃103が左右方向に所定間隔を隔てるように整列配備して構成されている。排ワラ細断機構98には、動力分配機構37に伝達されたエンジン3からの動力がベルト伝動式の伝動機構104を介して伝達される。排ワラ細断機構98は、その動力で駆動されることにより、排ワラ搬送機構97により搬送された排ワラを細断することができる。
【0094】
排ワラ細断機構98の上面には、排ワラ搬送機構97からの排ワラを、排ワラ細断機構98の内部に案内する状態と、排ワラ細断機構98の上方を通過するように案内する状態とに切り換えられる案内板105が配備されている。つまり、排ワラ細断機構98は、案内板105を切り換え操作することにより、排ワラ搬送機構97により搬送された排ワラを、長ワラのまま車外に放出する長ワラ放出状態と、細断して車外に放出する細断放出状態とに切り換えられるように構成されている。
【0095】
排ワラ細断機構98は、穀粒搬出装置9の揚送コンベヤ76を支点にした揺動操作が可能となるように揚送コンベヤ76に支持されている。これにより、排ワラ細断機構98を、排ワラ搬送機構97により搬送された排ワラを受け取ることが可能な作業位置と、脱穀装置6や排ワラ搬送機構97との間を大きく開放するメンテナンス位置とにわたって揺動変位させることができる。
【0096】
〔第2実施形態〕
【0097】
以下、本発明を実施するための最良の形態の一例として、本発明を、作業車の一例である3条刈り用の自脱型コンバインに適用した第2実施形態を図面に基づいて説明する。
【0098】
図9には自脱型コンバインの全体側面が、図10にはその全体平面が示されている。これらの図に示すように、本第2実施形態で例示する自脱型コンバインは、角パイプなどの複数の部材により形成した車体フレーム201に、搭乗運転部202、エンジン203、左右一対のクローラ式走行装置204、刈取搬送装置205、脱穀装置206、選別装置としてのサイクロン選別装置207、穀粒タンク208、穀粒搬出装置209、および脱粒穀稈処理装置210、などを備えて構成されている。
【0099】
搭乗運転部202は、車体フレーム201の前部右側に、揺動式で位置保持型の主変速レバー211や副変速レバー212、非制動位置に復帰付勢されたブレーキペダル(図示せず)、十字揺動式で中立復帰型の操縦レバー213、および運転座席214、などを配備して形成されている。
【0100】
図11〜14に示すように、エンジン203は、その出力軸203Aが左右向きになる姿勢で運転座席214の下方に配備されている。エンジン203からの動力は、左右の両クローラ式走行装置204、刈取搬送装置205、脱穀装置206、サイクロン選別装置207、穀粒搬出装置209、および脱粒穀稈処理装置210、などに伝達される。
【0101】
図9〜11に示すように、左右のクローラ式走行装置204は車体フレーム201の下部に配備されている。左右のクローラ式走行装置204には、エンジン203からの動力が、ミッションケース215に一体装備した静油圧式の無段変速装置からなる主変速装置216、および、ミッションケース215の内部に備えたギヤ式の副変速装置(図示せず)や操向装置(図示せず)、などを介して伝達される。操向装置は、左右のクローラ式走行装置204を差動させることにより車体の向きを変更する。
【0102】
上記の構成から、主変速レバー211を揺動操作することにより、左右の両クローラ式走行装置204の駆動状態を、駆動停止状態と前進駆動状態と後進駆動状態とに無段階に切り換えることができるとともに、前進駆動状態と後進駆動状態とのそれぞれにおける左右の両クローラ式走行装置204の駆動速度を無段階に変更することができる。副変速レバー212を揺動操作することにより、左右の両クローラ式走行装置204に対する伝動状態を、移動用の高速伝動状態や作業用の低速伝動状態などに切り換えることができる。前進駆動状態または後進駆動状態において、操縦レバー213を左右方向に揺動操作することにより、左右のクローラ式走行装置204による走行状態を、左右のクローラ式走行装置204を等速駆動させた直進状態と、左右一方のクローラ式走行装置204を駆動し、かつ、他方のクローラ式走行装置204の駆動を停止した緩旋回状態と、この緩旋回状態において他方のクローラ式走行装置204を制動した急旋回状態とに切り換えることができる。
【0103】
なお、操向装置としては、左右一対のサイドクラッチなどからなり、左右一対のサイドブレーキを備えていないものであってもよい。
【0104】
図示は省略するが、ミッションケース215の内部には、制動用の連係機構を介してブレーキペダルに連係された走行用のブレーキが装備されている。搭乗運転部202には、ブレーキペダルの制動位置での保持を可能にする保持金具が備えられている。この保持金具を使用することにより、走行用のブレーキを駐車ブレーキとして機能させることができる。
【0105】
なお、ブレーキペダルの操作に連動して左右のサイドブレーキが同時操作されるように、ブレーキペダルと左右のサイドブレーキとを制動用の連係機構を介して連係することにより、左右のサイドブレーキを走行用のブレーキとして機能させるように構成してもよい。
【0106】
図9および図10に示すように、刈取搬送装置205は、丸パイプ材などからなる刈取フレーム217に、4つのデバイダ218、3つの引起機構219、バリカン型の刈取機構220、および穀稈搬送機構221、などを備えて構成されている。刈取フレーム217は、車体フレーム201の左前部に立設した支持フレーム222の上端部から車体フレーム201の前方に向けて、その前部の右側が搭乗運転部202の前方に位置するように延出されている。支持フレーム222は、刈取フレーム217の上下揺動を許容するように刈取フレーム217の基端部217Aを支持する。つまり、刈取搬送装置205は、刈取フレーム217の基端部217Aを支点にした昇降揺動が可能となるように車体の前部左側に配備されている。
【0107】
図11に示すように、刈取フレーム217には刈り取り搬送用の伝動機構223が備えられている。伝動機構223は、刈取フレーム217の基端部217Aに備えた左右向きの入力軸223Aに、エンジン203からの動力が、主変速装置216の入力軸216Aやベルトテンション式の刈取クラッチ224などを介して伝達される。図示は省略するが、伝動機構223は、その入力軸223Aに伝達されたエンジン203からの動力を、刈取フレーム217の内部に備えた複数の伝動軸やベベルギヤなどを介して、各引起機構219、刈取機構220、および穀稈搬送機構221、などに分配する。
【0108】
各デバイダ218は、車体の前進走行に伴って、収穫対象の植立穀稈を収穫対象外の植立穀稈と梳き分けて梳き起こす。各引起機構219は、エンジン203からの動力で駆動されることにより、各デバイダ218により梳き起こされた収穫対象の植立穀稈を所定の刈取姿勢に引き起こす。刈取機構220は、エンジン203からの動力で駆動されることにより、各引起機構219により引き起こされた収穫対象の植立穀稈の株元側を切断する。穀稈搬送機構221は、エンジン203からの動力で駆動されることにより、刈取機構220による切断後の植立穀稈である刈取穀稈を刈り取り用の起立姿勢から脱穀用の横倒れ姿勢に姿勢変更しながら脱穀装置206に向けて搬送する。
【0109】
つまり、刈取搬送装置205は、エンジン203からの動力で駆動されることにより、収穫対象の植立穀稈を刈り取って脱穀装置206に供給するように構成されている。
【0110】
図示は省略するが、刈取搬送装置205において左右の端部に配備されるデバイダ218は、それらの梳き分け始端部の位置が、それらの後方に位置する左右のクローラ式走行装置204における車体外側の横側端と車体左右方向で位置または略一致するように配置設定されている。これにより、車体の左側に植立穀稈が存在する回り刈りや車体の左右両側に植立穀稈が存在する中割りなどの作業走行時に、左右のクローラ式走行装置204で植立穀稈を踏み付ける、などの不都合が発生することを防止することができ、その踏み付けに起因した作業効率の低下を回避することができる。
【0111】
図9に示すように、刈取搬送装置205は、車体フレーム201と刈取フレーム217とにわたって架設した昇降シリンダ225の作動により昇降揺動する。昇降シリンダ225には、作動油の供給による伸長作動で刈取搬送装置205を上昇させ、作動油の排出による収縮作動で刈取搬送装置205を下降させる単動型の油圧シリンダが採用されている。昇降シリンダ225は、操縦レバー213の前後方向への揺動操作に基づく油圧制御により、その作動が制御されるように、操縦レバー213に油圧制御回路(図示せず)などを介して連係されている。
【0112】
この構成から、操縦レバー213を前後方向に揺動操作することにより、刈取搬送装置205を、下限側の作業領域と上限側の非作業位置とにわたって昇降させることができ、作業領域においては、植立穀稈に対する刈り高さ位置を任意の高さ位置に調節することができる。
【0113】
図9〜14に示すように、車体フレーム201の左後半部には脱穀ケース226が配備されている。脱穀装置206は、脱穀ケース226に備えた扱胴227、受網228、および挟持搬送機構229、などにより構成されている。脱穀ケース226は、下部ケース230と上部ケース231とから構成されている。下部ケース230の右上部には、上部ケース231を開閉揺動可能に支持する前後向きの筒軸232が配備されている。扱胴227は、前後向きの軸心aを中心にして回転するように上部ケース231に支持されている。受網228は、扱胴227の下部側を下方から覆うように下部ケース230に着脱可能に敷設されている。挟持搬送機構229は、下部ケース230の左端部に備えたフィードチェーン233や、上部ケース231の左端部に備えた挟持レール234、などにより構成されている。
【0114】
挟持搬送機構229は、エンジン203からの動力でフィードチェーン233が回動駆動されることにより、刈取搬送装置205により搬送された刈取穀稈の株元側を挟持して後方に向けて搬送する。フィードチェーン233には、エンジン203からの動力が、ベルトテンション式の脱穀クラッチ235、左右向きの伝動軸236、ベルト伝動式の動力分配機構237、および、ギヤ式の減速機構238、などを介して伝達される。挟持搬送機構229により搬送される刈取穀稈は、その穂先側が、下部ケース230と上部ケース231との間に形成した供給口から、扱胴227と受網228との間に形成される脱穀処理領域Aに供給される。
【0115】
扱胴227には、伝動軸236において分岐されたエンジン203からの動力が、ベルト伝動式の第1伝動機構239、一対のベベルギヤ240、および、ベルト伝動式の第2伝動機構241、などを介して伝達される。扱胴227は、エンジン203からの動力により、前後向きの軸心aを中心にして正面視右回りに回転駆動されることにより、脱穀処理領域Aに供給された刈取穀稈の穂先側に脱穀処理を施す。
【0116】
受網228は、扱胴227による脱穀処理により単粒化した穀粒などの処理物を漏下させる。受網228から漏下しなかった枝梗付き穀粒や二股粒などの処理物は、受網228の車体後方側に形成した送塵口242に送られる。
【0117】
脱穀装置206は、上部ケース231を閉じると、扱胴227が受網228に近接することにより、扱胴227と受網228との間に脱穀処理領域Aとなる所定の脱穀処理空間が形成され、また、フィードチェーン233に挟持レール234が近接することにより、フィードチェーン233と挟持レール234との間に挾持搬送径路が形成される。これにより、挟持搬送機構229による刈取穀稈の挾持搬送が可能になり、扱胴227による脱穀処理が可能になる。脱穀装置206は、上部ケース231を開くと、フィードチェーン233から挟持レール234が離間し、かつ、扱胴227が受網228から離間することにより、扱胴227と受網228との間が大きく開放される。これにより、脱穀装置206における扱胴227や受網228の清掃あるいは受網228の交換などのメンテナンスが行い易くなる。
【0118】
図10〜14に示すように、下部ケース230には、脱穀装置206による脱穀処理後の処理物をサイクロン選別装置207に向けて搬送する搬送装置243が装備されている。搬送装置243には、受網228の前半部から漏下した処理物をサイクロン選別装置207に向けて搬送する第1搬送機構244、および、受網228の後半部から漏下した処理物と送塵口242から流下した処理物とをサイクロン選別装置207に向けて搬送する第2搬送機構245、などが備えられている。これらの搬送機構244,245には、フィードチェーン233に伝達されるエンジン203からの動力が動力分配機構237により分配される。
【0119】
第1搬送機構244は、第1収集部246、第1スクリュー247、搬送筒248、第1連通ケース249、および、スクリュー搬送式の第1揚送コンベヤ250、などを備えて構成されている。第1収集部246は、受網228の前半部から漏下した処理物を第1スクリュー247の搬送領域に寄せ集めるように下部ケース230の底部に形成されている。第1スクリュー247は、脱穀装置206における脱穀処理領域Aの中間部の真下位置に位置するように、扱胴227の前後中間部の真下位置に配置されている。そして、エンジン203からの動力で駆動されることにより、第1スクリュー247の搬送領域に寄せ集められた処理物を車体右側に向けて搬出する。搬送筒248は、その左右中間部に多数の長孔248aが形成されている。そして、これらの長孔248aに、第1スクリュー247で搬送される処理物が摺接することにより、その処理物に含まれる枝梗付きの穀粒や二股粒などの単粒化を促すことができる。第1連通ケース249は、第1収集部246と第1揚送コンベヤ250の下端部とを連通させる。第1連通ケース249の内部には、第1スクリュー247と第1揚送コンベヤ250とを連動させる一対のベベルギヤ251が備えられている。第1揚送コンベヤ250は、第1スクリュー247と連動することにより、第1スクリュー247により搬送された処理物をサイクロン選別装置207に向けて揚送する。
【0120】
第2搬送機構245は、第2収集部252、第2スクリュー253、再脱穀装置254、および、スクリュー搬送式の第2揚送コンベヤ255、などを備えて構成されている。第2収集部252は、受網228の後半部から漏下した処理物と送塵口242から流下した処理物とを第2スクリュー253の搬送領域に寄せ集めるように下部ケース230の底部に形成されている。第2スクリュー253は、脱穀装置206における脱穀処理領域Aの終端部の真下位置に位置するように、扱胴227の後端部の真下位置に配置されている。そして、エンジン203からの動力で駆動されることにより、第2スクリュー253の搬送領域に寄せ集められた処理物を車体右側に向けて搬送する。再脱穀装置254は、第2スクリュー253により搬送された処理物に再び脱穀処理を施すとともに、再脱穀処理後の処理物を第2揚送コンベヤ255に供給する。第2揚送コンベヤ255は、第2スクリュー253と連動するように、チェーン伝動式の伝動機構256や一対のベベルギヤ257などを介して第2スクリュー253に連結されている。そして、第2スクリュー253と連動することにより、再脱穀装置254による再脱穀処理後の処理物をサイクロン選別装置207に向けて揚送する。
【0121】
つまり、搬送装置243においては、第1スクリュー247と第2スクリュー253とが、脱穀装置206の真下位置に位置して、脱穀装置206から流下した脱穀処理後の処理物をサイクロン選別装置207に向けて水平方向に搬出する搬出機構258として機能するように構成されている。
【0122】
そして、第1スクリュー247および第2スクリュー253が脱穀装置6の真下位置に位置することにより、脱穀装置206の上部ケース231を開いて下部ケース230から受網228を取り外すことにより、第1スクリュー247および第2スクリュー253に対する清掃などのメンテナンスを、下部ケース230と上部ケース231との間から容易に行うことができる。
【0123】
符号の付設は省略するが、再脱穀装置254は、複数の固定刃、複数の回転刃、および回転羽根、などを内部に備えて構成されている。再脱穀装置254においては、複数の回転刃が第2スクリュー253と一体回転することにより、第2スクリュー253により搬送された処理物に再び脱穀処理が施され、回転羽根が第2スクリュー253と一体回転することにより、再脱穀処理後の処理物が第2揚送コンベヤ255に供給される。
【0124】
この構成から、受網228の後半部から漏下した処理物と送塵口242から流下した処理物とに再び脱穀処理を施すことができ、それらの処理物に多く含まれる枝梗付きの穀粒や二股粒などの単粒化を促進させることができる。
【0125】
そして、第2搬送機構245により、受網228の後半部から漏下した処理物と送塵口242から流下した処理物とをサイクロン選別装置207に向けて搬送することにより、受網228の後半部から漏下した処理物に対する専用の搬送機構と、送塵口242から流下した処理物に対する専用の搬送機構とをそれぞれ装備する場合に比較して、搬送装置243としての構成の簡素化およびコストの削減を図ることができる。
【0126】
また、搬送装置243が、脱穀装置206よりも車体後方側に張り出さないことにより、車体の全長を短くすることが可能になり、その分、旋回性能の向上が図りやすくなるとともに、トラックなどによる輸送を行いやすくすることができる。
【0127】
図10〜15に示すように、サイクロン選別装置207は、車体フレーム201の右後半部に、選別ケース259、排塵ダクト260、および排風機としての吸引ファン261、などを配備して構成されている。
【0128】
図13〜19に示すように、選別ケース259は、円形に形成された透明樹脂製の天板259A、天板259Aにより上端が閉塞される円筒状に形成された透明樹脂製の第1円筒部259B、第1円筒部259Bの下端に連接される下窄まりの円錐状に形成された板金製の第1円錐部259C、第1円錐部259Cの下端に連接される円筒状に形成された板金製の第2円筒部259D、第2円筒部259Dの下端に連結される下窄まりの円錐状に形成された板金製の第2円錐部259E、および、第2円錐部259Eの下端に連接される円筒状に形成された板金製の第3円筒部259F、などを備えて構成されている。
【0129】
図10〜19に示すように、第1円筒部259Bは、その周面に3つの連通口259a〜259cが高さ位置および開口方向がそれぞれ異なるように形成されている。第1連通口259aは、第1円筒部259Bの下部側において車体の右前方向きに開口するように形成されている。第2連通口259bは、第1円筒部259Bの上部側において車体の左前方向きに開口するように形成されている。第3連通口259cは、第2連通口259bよりも上方の第1円筒部259Bの上端部において車体の右後方向きに開口するように形成されている。
【0130】
第1円筒部259Bの下部側には、その第1連通口259aと、第1搬送機構244の搬送終端部となる第1揚送コンベヤ250の上端部に形成した排出口250aとを連通接続する第1連通部としての第1連通ダクト262が装備されている。第1円筒部259Bの上部側には、その第2連通口259bと、第2搬送機構245の搬送終端部となる第2揚送コンベヤ255の上端部に形成した排出口255aとを連通接続する第2連通部としての第2連通ダクト263が装備されている。第1円筒部259Bの上端部には、その第3連通口259cを利用して排塵ダクト260の一端部が接続されている。
【0131】
第1連通ダクト262は、第1揚送コンベヤ250により揚送された処理物を、第1円筒部259Bに対する接線に沿って、第1円筒部259Bの第1連通口259aに案内するように形成されている。第2連通ダクト263は、第2揚送コンベヤ255により揚送された処理物を、第1円筒部259Bに対する接線に沿って、第1円筒部259Bの第2連通口259bに案内するように形成されている。排塵ダクト260は、選別ケース259の内部で選別された排出物を、第1円筒部259Bの第3連通口259cから、第1円筒部259Bに対する接線に沿って流出させるように案内し、その流出後に、吸引ファン261の吸込口261aに向けて案内するように形成されている。
【0132】
第1連通ダクト262には、選別ケース259の内部への外気の導入を可能にする1次吸気用の第1吸気口262aが形成されている。第2連通ダクト263には、選別ケース259の内部への外気の導入を可能にする1次吸気用として、第1吸気口262aよりも開口面積の小さい第2吸気口263aが形成されている。第2円筒部259Dおよび第2円錐部259Eは、それらの間に、選別ケース259の内部への外気の導入を可能にする2次吸気用としてスリット状の隙間259Gが形成されるように、複数のスペーサ259Hを介してボルト連結されている。第2円錐部259Eには、選別ケース259の内部への外気の導入を可能にする3次吸気用として多数の吸気孔259dが形成されている。
【0133】
第3円筒部259Fは、選別ケース259の内部を穀粒タンク208の内部に連通するように形成されている。これにより、第3円筒部259Fは、選別後の穀粒を穀粒タンク8に回収する回収部として機能する。
【0134】
吸引ファン261は、フィードチェーン233に伝達されるエンジン203からの動力が動力分配機構237などを介して伝達され、その動力で駆動されることにより吸引作動する。吸引ファン261の吸込口261aには排塵ダクト260の他端部が接続されている。これにより、吸引ファン261の吸込口261aは、排塵ダクト260を介して選別ケース259の内部に連通されている。
【0135】
吸引ファン261は、その吐出口261bが車体の後端部に位置するように配置設定され、その吐出口261bからの排出物が車体の後方に向けて排出されるように向き設定されている。
【0136】
上記の構成から、選別ケース259の下部には、扱胴227の回転駆動により好適に脱穀処理されて受網228の前半部から漏下した単粒化穀粒の含有量の多い処理物が供給される。選別ケース259の上部には、受網228の前半部から漏下せずに、受網228の後半部または送塵口242から漏下または流下し、再脱穀装置254による再脱穀処理により穀粒の単粒化が促進された稈屑類の含有量の多い処理物が供給される。
【0137】
そして、吸引ファン261の吸引作用により、外気が、第1連通ダクト262の第1吸気口262a、第2連通ダクト263の第2吸気口263a、および、選別ケース259の隙間259Gや各吸気孔259dから選別ケース259の内部に導入され、選別ケース259の内部においては、第1吸気口262aからの外気と第2吸気口263aからの外気とが、選別ケース259の内面に沿って旋回しながら排塵ダクト260に向けて上昇する旋回流となり、隙間259Gからの外気と各吸気孔259dからの外気とが、選別ケース259の中心部を通って排塵ダクト260に向けて直線状に立ち上る上昇流となる。
【0138】
つまり、吸引ファン261の吸引作用により、選別ケース259の内部においては、その下部から上方の排塵ダクト260に向けて、選別ケース259の内面に沿って旋回しながら吹き抜ける旋風が発生する。
【0139】
これにより、選別ケース259の下部においては、脱穀装置206からの単粒化した穀粒の含有量の多い処理物が、第1連通ダクト262により、第1円筒部259Bに対する接線に沿って選別ケース259の内部に供給されるように案内され、その内部で発生する旋回流の遠心作用により、比重の大きい穀粒が選別ケース259の内面側に向かい、比重の小さい稈屑類が選別ケース259の中心側に向かうことにより、比重の大きい穀粒と比重の小さい稈屑類とに選別される。そして、比重の大きい穀粒は、選別ケース259の中心部を通る上昇流の作用を受けずに、その自重により選別ケース259の内面に沿って流下する。一方、比重の軽い稈屑類は、上昇流に乗って選別ケース259の中心部を通って吹き上がり、その後、第1円筒部259Bの第3連通口259cから第1円筒部259Bに対する接線に沿って流出するように排塵ダクト260により案内され、排塵ダクト260および吸引ファン261を介して吸引ファン261の吐出口261bから車体の後方に向けて排出される。
【0140】
選別ケース259の上部においては、脱穀装置206からの稈屑類の含有量の多い処理物が、第2連通ダクト263により、第1円筒部259Bに対する接線に沿って選別ケース259の内部に供給されるように案内され、その内部で発生する旋回流の遠心作用により、比重の大きい穀粒が選別ケース259の内面側に向かい、比重の小さい稈屑類が選別ケース259の中心側に向かうことにより、比重の大きい穀粒と比重の小さい稈屑類とに選別される。そして、比重の大きい穀粒は、選別ケース259の中心部を通る上昇流の作用を受けずに、その自重により選別ケース259の内面に沿って流下する。一方、比重の軽い稈屑類は、上昇流に乗って選別ケース259の中心部を通って吹き上がり、その後、第1円筒部259Bの第3連通口259cから第1円筒部259Bに対する接線に沿って流出するように排塵ダクト260により案内され、排塵ダクト260および吸引ファン261を介して吸引ファン261の吐出口261bから車体の後方に向けて排出される。
【0141】
つまり、選別ケース259が、脱穀装置206からの処理物に旋風による風力選別処理を施す選別部であり、この選別部259における穀粒タンク208に近い下部側の選別領域に、単粒化した穀粒の含有量の多い処理物を供給することにより、比重の大きい多くの穀粒を、穀粒タンク208の内部に向けて速やかに自重落下させることができる。また、選別部259における排塵ダクト260に近い上部側の選別領域に、稈屑類の含有量の多い処理物を供給することにより、比重の小さい多くの稈屑類を、排塵ダクト260に向けて速やかに上昇させることができ、この排塵ダクト260を介して吸引ファン261の吐出口261bから車体の後方に向けて排出することができる。
【0142】
しかも、吸引ファン261に対して単一の選別部259を接続する構成であることにより、複数の選別部259を接続する場合に比較して、構成の簡素化、コストの削減、および、省スペース化などを図りながら、サイクロン選別装置207における圧力の損失を抑制することができる。
【0143】
その結果、構成の簡素化、コストの削減、および、サイクロン選別装置207の省スペース化による車体の小型化などを図りながら、選別部259での選別精度の向上および穀粒回収効率の向上を図ることができる。
【0144】
なお、吸引ファン71にはプレートファンを採用することが好ましい。また、図示は省略するが、車体フレーム201の右後半部には、サイクロン選別装置207を覆う化粧カバーが着脱可能に装備されている。
【0145】
図14〜20に示すように、第1円筒部259Bにおいて、第2連通口259bは、第1連通口259aよりも第3連通口259cから処理物の旋回方向上手側に離れた位置に位置するように配置設定されている。これにより、排塵ダクト260に近い第2連通口259bからの処理物に対して旋風による風力選別処理が施しやすくなり、結果、第2連通口259bからの処理物に対する選別精度を向上させることができる。
【0146】
図13〜18に示すように、第1円筒部259Bにおける下部側の内面には、第1搬送機構244からの単粒化した穀粒の含有量の多い処理物を選別ケース259の内部において拡散させる第1拡散部材264が装備されている。第1拡散部材264は、第1連通口259aにおける右側縁の上部から、処理物の旋回方向下手側に向けて、第1円筒部259Bの周長の約1/2の長さで、第1円筒部259Bの内面に沿って延出する長尺リブ状の上ガイド板264A、第1連通口259aにおける右側縁の上下中間部から、処理物の旋回方向下手側に向けて、第1円筒部259Bの周長の約1/4の長さで、第1円筒部259Bの内面に沿って延出する中尺リブ状の中ガイド板264B、および、第1連通口259aにおける右側縁の下部から、処理物の旋回方向下手側に向けて、第1円筒部259Bの周長の約1/8の長さで、第1円筒部259Bの内面に沿って延出する短尺リブ状の下ガイド板264C、により構成されている。
【0147】
つまり、第1拡散部材264により、穀粒タンク208に近い選別ケース259の第1連通口259aから選別ケース259の内部に供給される、単粒化穀粒の含有量の多い処理物を、選別ケース259の周方向に適度に拡散させることができ、その適度に拡散した処理物に、旋風による風力選別処理を適切に施すことができる。
【0148】
これにより、穀粒タンク208に近い選別ケース259の第1連通口259aから、単粒化穀粒の含有量の多い処理物が、旋風による風力選別処理を受けにくい固まりになった状態で選別ケース259の内部に供給され、その含有量の多い単粒化穀粒の間に稈屑類が介在する固まりのまま、穀粒タンク208の内部に流下することを防止することができる。
【0149】
その結果、第1連通口259aからの処理物が、固まりのまま穀粒タンク208の内部に流下することによる選別精度の低下を回避することができる。
【0150】
なお、第1拡散部材264を構成するガイド板の枚数、延出長さ、延出角度、幅寸法などは種々の変更が可能である。
【0151】
図13〜17および図19に示すように、第1円筒部259Bにおける上部側の内面には、第2搬送機構245からの稈屑類の含有量の多い処理物を選別ケース259の内部において拡散させる第2拡散部材265が装備されている。第2拡散部材265は、第1円筒部259Bの内面における、第2連通口259bに対する処理物の旋回方向下手側の近傍位置に配置設定され、かつ、処理物の旋回方向下手側に位置する部分ほど第1円筒部259Bの中心側に位置して、第2連通口259bからの処理物を選別ケース259の中心側に向けて拡散させるガイド面265Aを有するように形成されている。ガイド面265Aは、その上下幅が第2連通口259bの上下長さよりも大きい幅広に形成されている。
【0152】
つまり、第2拡散部材265により、排塵ダクト260に近い選別ケース259の第2連通口259bから選別ケース259の内部に供給される、稈屑類の含有量の多い処理物を、上昇流が吹き抜ける選別ケース259の中心部に向けて適度に拡散させることができ、その適度に拡散した処理物に上昇流を適切に作用させることができる。
【0153】
これにより、排塵ダクト260に近い選別ケース259の第2連通口259bから、稈屑類の含有量の多い処理物が、上昇流の作用を受けにくい選別ケース259の内面に沿って旋回するように供給されたまま、上昇流の作用を受けずに選別ケース259の内面に沿って流下することを防止することができる。
【0154】
その結果、第2連通口259bからの処理物が、選別ケース259の内面に沿って穀粒タンク208の内部に向けて流下することによる選別精度の低下を回避することができる。
【0155】
なお、第2拡散部材265におけるガイド面265Aの延出長さ、第1円筒部259Bの中心側へのガイド面265Aの入り込み量、ガイド面265Aの上下幅などは種々の変更が可能である。
【0156】
図13〜18に示すように、第2円錐部259Eの上部には、複数のガイド片266Aを備えたガイド部材266が配備されている。各ガイド片266Aは、選別ケース259の内面側から、処理物の旋回方向下手側に向けて傾倒する後退角を有しながら選別ケース259の中心側に向けて延出する円弧状に形成されている。
【0157】
これにより、選別ケース259の内面に沿って流下する処理物のうち、比重の大きい単粒化穀粒の流下を妨げることなく、比重の小さい稈屑類を選別ケース259の中心側に向けて案内することができ、この案内作用により、比重の小さい稈屑類に対して、第2円錐部259Eの各吸気孔259dから導入した外気をより確実に作用させることができ、選別ケース259の内面に沿って流下する処理物に含まれる比重の小さい稈屑類を排塵ダクト260に向けてより好適に吹き上げさせることができる。その結果、選別ケース259での選別精度をさらに向上させることができる。
【0158】
なお、ガイド部材におけるガイド片の装備数やガイド片の形状などは種々の変更が可能であり、例えば、図示は省略するが、各ガイド片266Aを、選別ケース259の内面側から、処理物の旋回方向下手側に向かいながら選別ケース259の中心側に向けて直線状に延出するように形成してもよい。
【0159】
また、図示は省略するが、第2円錐部259Eの上部に、比重の大きい単粒化穀粒の流下を許容しながら、比重の小さい稈屑類の流下を阻止する網体を、ガイド部材266に代えて、または、ガイド部材266とともに装備するようにしてもよい。
【0160】
図13〜17および図20に示すように、第1円筒部259Bにおける上端部の内面には、旋回流や上昇流により、選別ケース259の第3連通口259cまで吹き上げられた稈屑類の流下を防止する落下防止部材267が装備されている。落下防止部材267は、第3連通口259cにおける右側縁の下端から、処理物の旋回方向上手側に向けて、第1円筒部259Bの周長の約1/2の長さで、第1円筒部259Bの内面に沿って延出する長尺リブ状に形成されている。
【0161】
つまり、旋回流や上昇流により、選別ケース259と排塵ダクト260とを連通する第3連通口259cまで吹き上げられた稈屑類を、落下防止部材267が受け止めて排塵ダクト260に向けて案内するようになる。
【0162】
これにより、処理物に含まれる稈屑類の塵埃を、選別ケース259の第3連通口259cから排塵ダクト260や吸引ファン261を介して車外に速やかに排出することができる。その結果、選別ケース259での選別効率をさらに向上させることができる。
【0163】
なお、落下防止部材267の装備数、延出長さ、延出角度、幅寸法などは種々の変更が可能である。
【0164】
図9〜15および図21に示すように、穀粒タンク208は、車体フレーム201の後半部において車体の下部側に位置するように配備されている。穀粒タンク208の前後長さは、車体フレーム201の前後中間部から後端部にわたる長さに設定されている。穀粒タンク208の左右幅は、車体の左右両端部にほぼわたる幅広に設定されている。穀粒タンク208の上下長さは、穀粒タンク208の上端が、刈取搬送装置205の揺動支点となる刈取フレーム217の基端部217Aよりも高くならない短い長さに設定されている。
【0165】
つまり、穀粒タンク208は、車体後半部の略全域にわたる扁平の長方体状に形成された状態で車体の下部側に配備されている。これにより、車体フレーム201の左後半部に配備される脱穀装置206は、穀粒タンク208の左上部に搭載されることになる。車体フレーム201の右後半部に配備されるサイクロン選別装置207は、穀粒タンク208の右上部に搭載されることになる。そして、サイクロン選別装置207が穀粒タンク208に搭載されることにより、サイクロン選別装置7における第3円筒部259Fの下方に穀粒タンク208が位置することになり、これにより、サイクロン選別装置207の選別ケース259を穀粒タンク208に直に連通させることができ、これにより、選別ケース259から流下する穀粒が、そのまま穀粒タンク208の内部に流れ込むようになる。
【0166】
このように、このコンバインにおいては、車体の下部側に、車体後半部の略全域にわたる扁平の長方体状に形成した穀粒タンク208を配備し、その上部に、脱穀装置206とサイクロン選別装置207とを車体の左右方向に並べて配備することから、車体の左右一側部に脱穀装置206と選別装置とを上下に並べて配備し、車体の左右他側部に穀粒タンク208を配備する従来構造のコンバインに比較して、穀粒タンク208の貯留量の少ない作業開始時などにおける車体の左右バランスの向上を効果的に図ることができる。
【0167】
また、車体後半部の略全域を穀粒タンク208に有効利用することにより、穀粒タンク208を、その容量を十分に確保しながらも、その高さを極力低く抑えた扁平形状に形成することができ、結果、穀粒タンク208の上部に脱穀装置206とサイクロン選別装置207とを配備する構成でありながら、車高や車体の重心位置を低く抑えることができる。
【0168】
しかも、穀粒タンク208に貯留される穀粒が車体の低重心化に貢献することから、作業の進行とともに穀粒タンク208に貯留される穀粒量が増加するのに伴って車体の安定性が向上することになる。
【0169】
図示は省略するが、穀粒タンク208は、脱穀装置206およびサイクロン選別装置207の搭載を可能にする高い強度を有するように、複数の補強部材などにより補強されている。これにより、穀粒タンク208を車体フレーム201の強度部材に兼用することができる。その結果、車体フレーム201として高い強度を確保しながら、車体フレーム201の構成の簡素化を図ることができる。
【0170】
図9〜15に示すように、穀粒搬出装置209は、前後向きのスクリューからなる搬出コンベヤ268、下部ケース269、スクリュー搬送式の揚送コンベヤ270、上部ケース271、および、スクリュー搬送式の排出コンベヤ272、などを備えて構成されている。搬出コンベヤ268は、穀粒タンク208における脱穀装置206の位置とは反対側の端部に前後向きの姿勢で位置するように、穀粒タンク208の右端側底部に前後向きに形成した穀粒搬出用のガイド溝208Aの内部に配備されている。搬出コンベヤ268には、エンジン203からの動力が、ベルトテンション式の排出クラッチ273、左右向きの伝動軸274、および、伝動ケース275の内部に備えた一対のベベルギヤ276、などを介して伝達される。搬出コンベヤ268は、エンジン203からの動力で駆動されることにより、ガイド溝208Aに堆積した穀粒を、車体の右後端部に立設した揚送コンベヤ270に向けて搬出する。下部ケース269は、排出コンベヤ272の旋回を許容しながら、穀粒タンク208におけるガイド溝208Aの後端部と揚送コンベヤ270の下端部とを連通させる。下部ケース269の内部には、搬出コンベヤ268と揚送コンベヤ270とを連動させる一対のベベルギヤ277が備えられている。揚送コンベヤ270は、搬出コンベヤ268と連動することにより、搬出コンベヤ268により搬出された穀粒を排出コンベヤ272に向けて揚送する。上部ケース271は、排出コンベヤ272の起伏揺動を許容しながら、揚送コンベヤ270の上端部と排出コンベヤ272の基端部とを連通させる。上部ケース271の内部には、揚送コンベヤ270と排出コンベヤ272とを連動させる一対のベベルギヤ278が備えられている。排出コンベヤ272は、油圧シリンダ279の作動により起伏揺動し、油圧モータ280の作動により、揚送コンベヤ270および上部ケース271とともに旋回し、揚送コンベヤ270と連動することにより、揚送コンベヤ270により揚送された穀粒を、排出コンベヤ272の遊端部に形成した排出口272Aに向けて搬送し、その排出口272Aから、起伏揺動操作や旋回操作により設定された所望の排出位置に排出する。
【0171】
そして、このコンバインにおいては、上記のように、比較的に重量のある搬出コンベヤ268を、穀粒タンク208の左上部に搭載される脱穀装置206とは反対側となる穀粒タンク208の右端部に前後向きに配備することにより、重量の大きい脱穀装置206と重量の小さいサイクロン選別装置207とを左右に並べて配備することによる左右の重量差を小さくすることができる。その結果、車体の左右バランスが向上し、直進性や旋回性が向上する。
【0172】
また、上記の構成により、比較的に重量のある揚送コンベヤ270も、脱穀装置206とは反対側となる車体の右端部に位置することになり、これにより、重量の大きい脱穀装置206と重量の小さいサイクロン選別装置207とを左右に並べて配備することによる左右の重量差をさらに小さくすることができる。その結果、車体の左右バランスがさらに向上し、直進性や旋回性がさらに向上する。
【0173】
しかも、揚送コンベヤ270が、重量ある刈取搬送装置205の反対側となる車体の右後端部に位置することにより、車体の前後バランスにも貢献することになり、車体の安定性が向上する。また、揚送コンベヤ270の上端部から、車体の右前部に形成した搭乗運転部202を避けて延設される排出コンベヤ272として、車体からの食み出し量を抑えながらも延出長さの長いものを採用することができ、穀粒の排出作業の面で有利にすることができる。
【0174】
さらに、搬出コンベヤ268が、脱穀装置206の左端部に備えた挟持搬送機構229に対して反対側となる車体の右端部に位置することにより、車体の左側を穀稈搬送経路とし、車体の右側を穀粒排出経路とすることができる。これにより、穀粒タンク208の左上部に脱穀装置206を搭載する構成でありながら、刈取搬送装置205から脱粒穀稈処理装置210にわたる穀稈搬送経路と、穀粒タンク208から穀粒搬出装置209の排出口272Aにわたる穀粒排出経路とを、互いの搬送に支障を来すことなく形成することができる。
【0175】
図11、図12、図14、図15および図21に示すように、穀粒タンク208には、その内部に貯留した穀粒を搬出コンベヤ268に向けて搬送する搬送装置としての振動搬送装置281が装備されている。振動搬送装置281は、穀粒タンク208の底部に右下がり姿勢で配備された底板282、底板282を左右方向に揺動可能に吊り下げ支持する4本の支持アーム283、および、底板282を左右方向に揺動駆動する駆動機構284、などにより構成されている。
【0176】
駆動機構284は、搬出コンベヤ268の前端部に備えた偏心カム285、前後向きの支軸286、揺動アーム287、および、ロッド288、などにより構成されている。偏心カム285は、エンジン203からの動力により搬出コンベヤ268と一体回転する。支軸286は、搬出コンベヤ268の上方に前後向き姿勢で位置するように穀粒タンク208の前壁208Bに支持されている。揺動アーム287は、その上端部が支軸286に支持されている。揺動アーム287の下端部には、偏心カム285が係入される長孔287aが形成されている。これにより、揺動アーム287は、偏心カム285の回転に連動して左右方向に揺動する。ロッド288は、揺動アーム287をその横側方に位置する右前側の支持アーム283に連結する。各支持アーム283の揺動支点は、それらの高さ位置が揺動アーム287の揺動支点となる支軸286の高さ位置と同じになるように設定されている。
【0177】
つまり、振動搬送装置281は、搬出コンベヤ268の駆動に連動して、駆動機構284が、搬出コンベヤ268の回転運動を揺動アーム287の揺動運動に変換して、底板282に振動を与えることにより、穀粒タンク208の内部に貯留した穀粒を搬出コンベヤ268に向けて搬送するように構成されている。
【0178】
これにより、穀粒タンク208を扁平形状に形成しながらも、穀粒搬出装置209の作動による穀粒排出時には、穀粒タンク208の内部に貯留した穀粒を滞りなく搬出コンベヤ268に供給することができ、穀粒搬出装置209の作動による穀粒の排出を良好に行える。
【0179】
なお、振動搬送装置281としては、水平姿勢で配備した底板282に駆動機構284による振動を与えるように構成したものであってもよい。また、搬出コンベヤ268とは連動せずに、独立駆動されるように構成したものであってもよい。そして、振動搬送装置281を独立駆動させる場合には、振動搬送装置281の作動により、穀粒タンク208の内部に貯留した穀粒の均平化を行うようにしてもよい。
【0180】
図10〜15に示すように、穀粒タンク208の内部には、サイクロン選別装置207の選別ケース259から流下する穀粒を、振動搬送装置281の穀粒搬送方向上手側に拡散させる拡散装置289を装備してある。拡散装置289は、縦軸心回りに回転する回転羽根290、回転羽根290をチェーン伝動式の伝動機構291を介して回転駆動するウォーム減速機付きの電動モータ292、および、回転羽根290により拡散される穀粒の拡散方向を振動搬送装置281の穀粒搬送方向上手側に制限する拡散ガイド293、などにより構成されている。回転羽根290および拡散ガイド293は、穀粒タンク208の天板208Cに支持されている。電動モータ292は、穀粒タンク208の天板208Cに載置されている。
【0181】
そして、拡散装置289の作用により、サイクロン選別装置207の選別ケース259から流下する穀粒は、振動搬送装置281の穀粒搬送方向上手側に拡散供給され、作業走行時の車体の振動により、振動搬送装置281の穀粒搬送方向上手側から穀粒搬出用のガイド溝208Aに向けて流動しながら均平化される。
【0182】
これにより、穀粒タンク208として、車体後半部の略全域にわたる扁平形状に形成したものを採用しながらも、穀粒を単にサイクロン選別装置207の選別ケース259から穀粒タンク208の内部に流下供給するように構成した場合に生じる、穀粒の流下供給箇所での堆積を回避することができる。その結果、単に穀粒をサイクロン選別装置207の選別ケース259から穀粒タンク208の内部に流下供給させる構成に比較して、穀粒タンク208の内部空間を穀粒の貯留領域としてより有効に利用することができ、穀粒タンク208の穀粒貯留効率を高めることができる。
【0183】
なお、図示は省略するが、拡散装置289としては、エンジン203からの動力で駆動されるように構成したものであってもよい。また、拡散ガイド293を備えていないものであってもよい。
【0184】
図12〜15に示すように、穀粒タンク208の右側壁208Dには、その右側壁208Dにボルト連結した金属製の側板294を取り外すことにより開放されるメンテナンス用の開口208aが形成されている。そして、この開口208aを利用することにより、穀粒タンク208の右端側に位置する搬出コンベヤ268やガイド溝208Aなどの清掃、あるいは、拡散装置289の回転羽根290や拡散ガイド293などの着脱、などを容易に行える。
【0185】
なお、側板294にアクリル板などの透明樹脂材を使用して、穀粒タンク208の内部に貯留された穀粒量の視認を行えるようにしてもよい。
【0186】
図14に示すように、穀粒タンク208の内部には、穀粒タンク208の内面と底板282との間に形成された隙間への穀粒の入り込みを阻止するシート295が装備されている。
【0187】
図9〜11に示すように、脱粒穀稈処理装置210は、車体の後部に排ワラ搬送機構296や排ワラ細断機構297などを配備して構成されている。排ワラ搬送機構296には、扱胴227に伝達したエンジン203からの動力が、ベルト伝動式の伝動機構298や一対のベベルギヤ299などを介して伝達される。排ワラ搬送機構296は、その動力で駆動されることにより、脱穀処理後の刈取穀稈である排ワラを挟持搬送機構229から受け取って車体の後端部に向けて搬送する。
【0188】
排ワラ細断機構297は、その内部に前後一対のカッター300が備えられている。各カッター300は、左右向きの回転軸301に円盤状の複数の回転刃302を各回転刃302が左右方向に所定間隔を隔てるように整列配備して構成されている。排ワラ細断機構297には、動力分配機構237に伝達されたエンジン203からの動力がベルト伝動式の伝動機構303を介して伝達される。排ワラ細断機構297は、その動力で駆動されることにより、排ワラ搬送機構296により搬送された排ワラを細断することができる。
【0189】
排ワラ細断機構297の上面には、排ワラ搬送機構296からの排ワラを、排ワラ細断機構297の内部に案内する状態と、排ワラ細断機構297の上方を通過するように案内する状態とに切り換えられる案内板304が配備されている。つまり、排ワラ細断機構297は、案内板304を切り換え操作することにより、排ワラ搬送機構296により搬送された排ワラを、長ワラのまま車外に放出する長ワラ放出状態と、細断して車外に放出する細断放出状態とに切り換えられるように構成されている。
【0190】
排ワラ細断機構297は、穀粒搬出装置209の揚送コンベヤ270を支点にした揺動操作が可能となるように揚送コンベヤ270に支持されている。これにより、排ワラ細断機構297を、排ワラ搬送機構296により搬送された排ワラを受け取ることが可能な作業位置と、脱穀装置206や排ワラ搬送機構296との間を大きく開放するメンテナンス位置とにわたって揺動変位させることができる。
【0191】
図12、図13、図15および図22に示すように、サイクロン選別装置207には、選別ケース259での風量の調節を可能にする風量調節機構305が装備されている。風量調節機構305は、吸引ファン261の吐出口261bに、矩形の調節板306を、その左右両端部に形成した縦長の長孔306aを利用して、上下変位可能にボルト連結することにより構成されている。そして、吐出口261bに対して調節板306を上下変位させて吐出口261bの開度を調節することにより、選別ケース259での風量を無段階に調節することができる。
【0192】
これにより、収穫する作物の種類や収穫量、あるいは作物の濡れ具合などに応じた適切な風量を得ることが可能になり、結果、サイクロン選別装置207の選別精度や穀粒回収効率を向上させることが可能になる。
【0193】
なお、図示は省略するが、風量調節機構305としては、吸引ファン261の吸込口261aを開度調節することにより、選別ケース259での風量を調節するように構成したものであってもよく、第1連通ダクト262の第1吸気口262a、第2連通ダクト263の第2吸気口263a、あるいは、選別ケース259の各吸気孔259dを開度調節することにより、選別ケース259での風量を調節するように構成したものであってもよく、選別ケース259における隙間259Gの間隔を調節することにより、選別ケース259での風量を調節するように構成したものであってもよく、吸引ファン261の回転数を調節することにより、選別ケース259での風量を調節するように構成したものであってもよい。
【0194】
また、搭乗運転部202に、搭乗運転部202からの風量調節機構305の操作を可能にする操作レバーなどの操作具を備えて、風量調節操作の操作性を向上させるようにしてもよい。
【0195】
さらに、サイクロン選別装置207の選別ケース259に供給する処理物量や処理物の濡れ具合などを検出するセンサ、および、風量調節の自動化を可能にするアクチュエータなどを装備し、そのセンサの検出に基づいて、風量調節機構305による風量調節を自動的に行うように構成してもよい。
【0196】
〔別実施形態〕
【0197】
〔1〕本発明を、4条刈り以上の自脱型コンバイン、ハーベスタ、あるいは、全稈投入型コンバイン、などの作業車に適用してもよい。
【0198】
〔2〕選別装置7,207として、揺動駆動されることにより脱穀装置6,206からの処理物に篩い選別処理を施す揺動選別ケースや、回転駆動されることにより選別風を生起して脱穀装置からの処理物に選別風による風力選別処理を施す唐箕、などを備えた揺動選別装置を装備するようにしてもよい。また、唐箕を備えずに揺動選別ケースを備えた揺動選別装置を装備するようにしてもよい。そして、選別装置7,207として揺動選別装置を装備する場合には、揺動選別装置を、その選別方向(揺動選別ケースの揺動方向)が車体の前後方向に沿うように前後向きに備えてもよく、また、その選別方向が車体の左右方向に沿うように左右向きに備えてもよい。
【0199】
〔3〕選別装置7,207として、揺動選別装置の揺動選別ケースを装備し、かつ、揺動選別装置の唐箕の代わりに、揺動選別ケースによる選別後の処理物に旋風による選別処理を施すように構成したサイクロン選別装置7,207を装備した、揺動サイクロン選別装置を備えるようにしてもよい。
【0200】
〔4〕選別装置7,207として、揺動選別装置とサイクロン選別装置とを備え、脱穀装置6,206からの処理物には、揺動選別装置による選別処理を施し、この選別処理で得られた2番物としての枝梗付き穀粒や二股粒などの未単粒化穀粒に再脱穀装置60,63,254による再脱穀処理を施し、その再脱穀処理により得られた処理物にサイクロン選別装置による選別処理を施すように構成してもよい。
【0201】
〔5〕脱穀装置6,206と選別装置7,207とを車体の前後方向に並べて配置してもよい。この配置において、選別装置7,207として揺動選別装置を備える場合には、例えば、図23に示すように、脱穀装置6,206の後方に、揺動選別装置7,207を、その選別精度を上げるために長く形成される選別方向(揺動選別ケースの揺動方向)が車体の左右方向に沿うように左右向きに備えて、車体の全長を短くするようにしてもよい。この配置においては、同図に示すように、脱穀装置6,206の右側方に穀粒タンク8,208を配備してもよい。また、図示は省略するが、脱穀装置6,206の後方で揺動選別装置7,207の上方に脱粒穀稈処理装置10,210を配備してもよい。
【0202】
〔6〕脱穀装置6,206と選別装置7,207とを、脱穀装置6,206に対して選別装置7,207が右斜め前方、左斜め前方、右斜め後方、あるいは左斜め後方に位置するように、水平方向のうちの斜め方向に並べて配置してもよい。例えば、図24に示すように、脱穀装置6,206に対して選別装置7,207が右斜め後方に位置するように配置し、脱穀装置6,206の右側方で選別装置7,207の前方の位置に穀粒タンク8,208が位置し、脱穀装置6,206の後方で選別装置7,207の左側方の位置に脱粒穀稈処理装置10,210が位置するように配置してもよい。なお、この配置において、脱粒穀稈処理装置10,210の排ワラ細断機構として、排ワラを二つ折りにした状態で細断処理するシリンダカッターを備えるようにすれば、脱粒穀稈処理装置10,210をコンパクトに構成することができ、上述した位置への脱粒穀稈処理装置10,210の配置が行い易くなる。
【0203】
〔7〕図25に示すように、選別装置7,207を、脱穀装置6,206の左右両側方に分散配備してもよい。また、図示は省略するが、選別装置7,207を、脱穀装置6,206の左右両側方と後方とに分散配備してもよく、また、脱穀装置6,206の左右一側方と後方とに分散配備してもよい。なお、図25においては、作業車として全稈投入型のコンバインを例示してある。
【0204】
〔8〕図26に示すように、左右一対の脱穀装置6,206を備えるように構成し、それらの脱穀装置6,206の間に選別装置7,207を配備してもよい。なお、図26においては、作業車として全稈投入型のコンバインを例示してある。
【0205】
〔9〕図27に示すように、水平方向に並べて配備した脱穀装置6,206と選別装置7,207の上方(車体の上部側)に、車体後半部の略全域にわたる扁平の長方体状に形成した穀粒タンク8,208を配備してもよい。
【0206】
〔10〕穀粒タンク8,208を、脱穀装置6,206と選別装置7,207とを水平方向に並べて配備した後の車体における平面視の空間に配備するようにしてもよい(図23、図24参照)。
【0207】
〔11〕穀粒タンク8,208を、水平方向に並ぶ脱穀装置6,206と選別装置7,207のうちのいずれか一方の下方で、他方と水平方向に並ぶように配備してもよい。例えば、図28に示すように、穀粒タンク8,208を、左右に並べた脱穀装置6,206と選別装置7,207のうちの選別装置7,207の下方で脱穀装置6,206の横側方に位置するように配備してもよい。また、図示は省略するが、穀粒タンク8,208を、左右に並べた脱穀装置6,206と選別装置7,207のうちの脱穀装置6,206の下方で選別装置7,207の横側方に位置するように配備してもよく、前後に並べた脱穀装置6,206と選別装置7,207のうちの選別装置7,207の下方で脱穀装置6,206の前後一側方に位置するように配備してもよく、前後に並べた脱穀装置6,206と選別装置7,207のうちの脱穀装置6,206の下方で選別装置7,207の前後一側方に位置するように配備してもよい。
【0208】
〔12〕穀粒タンク8,208を、水平方向に並ぶ脱穀装置6,206と選別装置7,207のうちのいずれか一方の上方で、他方と水平方向に並ぶように配備してもよい。
【0209】
〔13〕穀粒タンク8,208を、車体後半部の略全域にわたる扁平の長方体状で、その垂直方向に水平方向に並べて配備した脱穀装置6,206および選別装置7,207のうちの高さの低い側に向けて膨出する膨出部を有するように形成して、穀粒タンク8,208の容量アップを図るようにしてもよい。例えば、図29に示すように、穀粒タンク8,208を、車体後半部の略全域にわたる扁平の長方体状で、その上方に左右に並べて配備した脱穀装置6,206および選別装置7,207のうちの高さの低い選別装置7,207に向けて膨出する膨出部8D,208Eを有するように形成してもよい。また、図示は省略するが、穀粒タンク8,208を、車体後半部の略全域にわたる扁平の長方体状で、その上方に左右に並べて配備した脱穀装置6,206および選別装置7,207のうちの高さの低い脱穀装置6,206に向けて膨出する膨出部を有するように形成してもよく、穀粒タンク8,208を、車体後半部の略全域にわたる扁平の長方体状で、その下方に左右に並べて配備した脱穀装置6,206および選別装置7,207のうちの高さの低い選別装置7,207に向けて膨出する膨出部を有するように形成してもよい。
【0210】
〔14〕穀粒タンク8,208を、車体後半部の略全域にわたる扁平の長方体状で、その垂直方向に備えた脱穀装置6,206および選別装置7,207の配置領域における平面視での空間において垂直方向に向けて膨出する膨出部を有するように形成して、空間を有効利用した穀粒タンク8,208の容量アップを図るようにしてもよい。例えば、図30の(A)に示すように、穀粒タンク8,208を、車体後半部の略全域にわたる扁平の長方体状で、その上方に備えた脱穀装置6,206および選別装置7,207の配置領域における平面視での空間となる選別装置7,207の右側方箇所において上方に向けて膨出する膨出部8D,208Eを有するように形成してもよい。また、図30の(B)に示すように、穀粒タンク8,208を、車体後半部の略全域にわたる扁平の長方体状で、その上方に備えた脱穀装置6,206および選別装置7,207の配置領域における平面視での空間となる脱穀装置6,206と選別装置7,207との間において上方に向けて膨出する膨出部8D,208Eを有するように形成してもよい。
【0211】
〔15〕穀粒タンク8,208に、その内部に貯留した穀粒を搬出コンベヤ74,268に向けて搬送する搬送装置87,281として、無端ベルトやこの無端ベルトを回動させる回転ローラなどを備えて構成されるベルト搬送装置を装備してもよい。
【0212】
〔16〕穀粒タンク8,208としては、搬送装置87,281に代えて、穀粒タンク8,208の底部に、その内部に貯留した穀粒を搬出コンベヤ74,268に向けて流下案内する傾斜面を形成したものであってもよい。
【0213】
〔17〕穀粒タンク8,208に代えて、脱穀装置6,206からの単粒化穀粒を貯留するホッパー、ホッパーから籾袋への単粒化穀粒の供給を可能にする筒状の供給口、および、供給口を開閉するシャッター、などを備えて構成された袋詰め装置を装備してもよい。
【0214】
〔18〕サイクロン選別装置7,207として、吸引ファン71,261の代わりに送風ファンを備えた吹き上げ式のものを採用してもよい。
【0215】
〔19〕図31に示すように、サイクロン選別装置7,207を、受網28,228の前半部から漏下し、第1搬送機構44,244により搬送された処理物に選別処理を施す専用の選別ケース68,259と、受網28,228の後半部から漏下し、第2搬送機構45,245により搬送された処理物に選別処理を施す専用の選別ケース68,259とをそれぞれ個別に備えるように構成してもよい。また、図示は省略するが、サイクロン選別装置7,207を、受網28,228の前部から漏下し、前部側に配備した搬送機構により搬送された処理物に選別処理を施す専用の選別ケース68,259と、受網28,228の前後中間部から漏下し、前後中間部側に配備した搬送機構により搬送された処理物に選別処理を施す専用の選別ケース68,259と、受網28,228の後部から漏下し、後部側に配備した搬送機構により搬送された処理物に選別処理を施す専用の選別ケース68,259とをそれぞれ個別に備えるように構成してもよい。さらに、サイクロン選別装置7,207を、受網28,208の左半部から漏下し、所定の搬送機構により搬送された処理物に選別処理を施す専用の選別ケース68,259と、受網28,228の右半部から漏下し、所定の搬送機構により搬送された処理物に選別処理を施す専用の選別ケース68,259とをそれぞれ個別に備えるように構成してもよい。
【0216】
〔20〕サイクロン選別装置7を、第1再脱穀装置60からの処理物に選別処理を施す専用の選別ケース69と、第2再脱穀装置63からの処理物に選別処理を施す専用の選別ケース69とをそれぞれ個別に備えるように構成してもよい。
【0217】
〔21〕サイクロン選別装置7としては、第2選別ケース69を備えずに、第1再脱穀装置60および第2再脱穀装置63からの処理物も第1選別ケース68に供給されるように構成したものであってもよい。
【0218】
〔22〕サイクロン選別装置7,207としては、各選別ケース68,69,259を傾斜姿勢や横向き姿勢で備えたものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0219】
【図1】第1実施形態での自脱型コンバインの全体側面図
【図2】第1実施形態での自脱型コンバインの全体平面図
【図3】第1実施形態での伝動構造を示す概略図
【図4】第1実施形態での脱穀装置、穀粒タンク、などの構成を示す要部の縦断側面図
【図5】第1実施形態での脱穀装置、選別装置、穀粒タンク、などの構成を示す要部の横断平面図
【図6】第1実施形態での脱穀装置、選別装置、穀粒タンク、などの構成を示す要部の縦断背面図
【図7】第1実施形態での選別装置、穀粒タンク、などの構成を示す要部の縦断側面図
【図8】第1実施形態での振動搬送装置の構成を示す要部の縦断正面図
【図9】第2実施形態での自脱型コンバインの全体側面図
【図10】第2実施形態での自脱型コンバインの全体平面図
【図11】第2実施形態での伝動構造を示す概略図
【図12】第2実施形態での脱穀装置、穀粒タンク、などの構成を示す要部の縦断側面図
【図13】第2実施形態での脱穀装置、選別装置、穀粒タンク、などの構成を示す要部の横断平面図
【図14】第2実施形態での脱穀装置、選別装置、穀粒タンク、などの構成を示す要部の縦断背面図
【図15】第2実施形態での選別装置、穀粒タンク、などの構成を示す要部の縦断側面図
【図16】第2実施形態での選別ケースの構成を示す分解斜視図
【図17】第2実施形態での選別ケースの構成を示す要部の横断平面図
【図18】第2実施形態での選別ケース下部の構成を示す要部の横断平面図
【図19】第2実施形態での選別ケース上部の構成を示す要部の横断平面図
【図20】第2実施形態での選別ケース上端部の構成を示す要部の横断平面図
【図21】第2実施形態での振動搬送装置の構成を示す要部の縦断正面図
【図22】第2実施形態での風量調節機構の構成を示す要部の背面図
【図23】脱穀装置の後方に選別装置を配備した別実施形態を示す概略平面図
【図24】脱穀装置の右斜め後方に選別装置を配備した別実施形態を示す概略平面図
【図25】脱穀装置の左右に選別装置を配備した別実施形態を示す概略平面図
【図26】左右の脱穀装置の間に選別装置を配備した別実施形態を示す概略平面図
【図27】左右に並べた脱穀装置と選別装置の上方に穀粒タンクを配備した別実施形態を示す概略背面図
【図28】左右に並べた脱穀装置と選別装置のうちの選別装置の下方に穀粒タンクを配備した別実施形態を示す概略背面図
【図29】左右に並べた脱穀装置と選別装置のうちの選別装置に向けて穀粒タンクの一部を膨出させた別実施形態を示す概略背面図
【図30】左右に並べた脱穀装置と選別装置との空間に向けて穀粒タンクの一部を膨出させた別実施形態を示す概略背面図
【図31】サイクロン選別装置に受網からの処理物に対する複数の選別ケースを備えた別実施形態を示す概略平面図
【符号の説明】
【0220】
6 脱穀装置
7 選別装置
8 穀粒タンク
206 脱穀装置
207 選別装置
208 穀粒タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈取穀稈に脱穀処理を施す脱穀装置と、前記脱穀処理により得られた処理物に選別処理を施す選別装置とを備え、
前記脱穀装置と前記選別装置とを水平方向に並べて配置してあることを特徴とする作業車。
【請求項2】
前記水平方向を車体の左右方向としてあることを特徴とする請求項1に記載の作業車。
【請求項3】
前記選別装置として、旋風により前記処理物から穀粒を選別するサイクロン選別装置を備えてあることを特徴とする請求項1または2に記載の作業車。
【請求項4】
前記選別装置として、揺動により前記処理物から穀粒を篩い分ける揺動選別装置を備えてあることを特徴とする請求項1または2に記載の作業車。
【請求項5】
前記選別処理により得られた穀粒を貯留する穀粒タンクを備え、
前記穀粒タンクを、車体の左右両側部に向けて延出する幅広に形成して、前記脱穀装置および前記選別装置に対して垂直方向に配置してあることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の作業車。
【請求項6】
前記穀粒タンクを、前記脱穀装置および前記選別装置の下方に配置してあることを特徴とする請求項5に記載の作業車。
【請求項7】
前記脱穀装置の真下位置に、前記脱穀装置から流下した脱穀処理後の処理物を前記選別装置に向けて水平方向に搬出する搬出機構を配備してあることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の作業車。
【請求項8】
前記搬出機構として、前記脱穀装置の前半部から流下した脱穀処理後の処理物を搬出する第1搬出機構と、前記脱穀装置の後半部から流下した脱穀処理後の処理物を搬出する第2搬出機構とを備え、
前記第1搬出機構を、前記脱穀装置における脱穀処理領域の中間部に配備し、前記第2搬出機構を、前記脱穀装置における脱穀処理領域の終端部に配備してあることを特徴とする請求項7に記載の作業車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2009−39112(P2009−39112A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−187957(P2008−187957)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】