説明

作業車

【課題】作業用アタッチメントをアームに固定してなる作業ユニットを作業車両から分離可能とすること。
【解決手段】作業車は、通常の作業時には、ホルダ2と、アーム11と、シリンダ3とを備え、シリンダ3の伸縮動作で、アーム11を揺動させる。ホルダ2は、走行可能の作業車両1のフレームに固定されている。アーム11の一端には、作業用アタッチメント12が取り付けられ、アーム11の他端は、作業車両1のフレームに回転可能にかつ着脱可能に取り付けられる。シリンダ3のシリンダケース3aがホルダ2に回転可能にピン結合されると共に、ピストンロッド3bがアーム11に連結されている。アーム11を作業車両1から分離する際には、アーム11の他端を作業車両1から離脱させると共に、シリンダ3のピストンロッド3bをアーム11から取り外し、ホルダ2にピン結合させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、トラクタ等の作業車両には、その前方で整地、除雪等を行なうドーザや、農作業、荷役、運搬作業等を行うローダ等(例えば特許文献1参照)を含むフロント作業ユニットを装着する場合がある。
【0003】
この種のフロント作業ユニットとしては、例えば図10に示す構成のものが公知である。同図に示すフロント作業ユニット51は、作業車両50に対して揺動可能に支持されるリフトアーム52と、該リフトアーム52の先端に装着されたバケット等の作業用アタッチメント53と、リフトシリンダ54、アタッチメント用シリンダ55等の油圧アクチュエータとを備える。シリンダ54,55には作業車両50の本体から延びる図示しない油圧配管が接続され、シリンダ54,55は、油圧配管を介してシリンダ54,55の油室に供給される作動油によって伸長および縮退動作する。リフトアーム52は、リフトシリンダ54の伸長および縮退動作により、作業車両50に対して軸O1を中心として揺動する。作業用アタッチメント53は、アタッチメント用シリンダ55の伸長および縮退動作により、リフトアーム52に対して軸O2を中心として揺動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−226138号公報
【特許文献2】特開2006−328906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図10に示すフロント作業ユニットは、リフトアーム52に対して作業用アタッチメント53を揺動可能としたものであるが、作業車両の用途によっては作業用アタッチメント単独の揺動操作が不要で、リフトアームの揺動に伴う作業用アタッチメントの姿勢変化だけで要求作業を十分に行える場合もある。図11は、この種の用途に開発された作業ユニット51を有する作業車で、作業車両50のフレームに固定されたホルダ56と、フレームに基端が取り付けられたアーム52と、アーム52の先端に固定した作業用アタッチメント53と、ホルダ56の上端とアーム52の先端との間に介装されたシリンダ57とを備える。作業用アタッチメント53は、アーム52の先端に着脱自在に取り付けられるが、アーム52に対する姿勢は固定された状態にある。シリンダ57の伸縮動作で、軸O3を中心としてアーム52を揺動させることにより、作業車両50に対する作業用アタッチメント53の姿勢を変化させることができる。この種の作業ユニット51では、シリンダ数が1つで足りるため、図10に示す作業ユニット51に比べ、コンパクト化および低コスト化を達成できる利点がある。
【0006】
ところで、リフトアームおよび作業用アタッチメントからなる作業ユニットは、常時必要とされる訳ではないので、作業を行わない場合(通常走行時、後部に作業用機械を取り付けた場合等)には、わざわざ作業車両に搭載する必要はない。従って、フロント作業ユニットを任意に着脱できる構成とすることが望まれる。図10に示す、アタッチメントがアームに対して揺動するタイプ(アタッチメント揺動タイプ)の作業ユニットでは、作業ユニット全体を作業車両から分離する技術が確立されているが(例えば特許文献2参照)、図11に示す、作業用アタッチメントがアームに固定されたタイプ(アタッチメント固定タイプ)の作業ユニットでは、未だその技術は確立されていないのが実情である。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み、アタッチメント固定タイプの作業ユニットを作業車両から分離可能とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための本発明は、走行可能の作業車両と、作業車両に固定されたホルダと、アームおよびアームの一端に取り付けた作業用アタッチメントを有し、アームに対する作業用アタッチメントの姿勢が固定され、アームの他端を作業車両に回転可能に取り付けた作業ユニットと、固定側と可動側の何れか一方が前記ホルダに取り付けられると共に、他方が前記作業ユニットに取り付けられたシリンダとを備え、シリンダの伸縮動作で、作業ユニットを揺動操作する作業車であって、アームの前記他端を作業車両に対して着脱可能とし、かつ作業ユニットに取り付けたシリンダの前記他方を、作業ユニットおよびホルダの双方に対して択一的に着脱可能にしたものである。
【0009】
この構成によれば、アームを作業車両から離脱させ、かつシリンダの他方側(例えば可動側のピストンロッド)を作業ユニットから離脱させることにより、作業ユニットを作業車両から分離することができる。
【0010】
作業ユニットの分離後、そのままの状態だと、シリンダの一方側(例えば固定側のシリンダケース)がホルダに1点支持された状態にあるので、シリンダの姿勢および取付け状態が安定しない。これに対し、上記のようにシリンダの他方側をホルダに取り付けることで、シリンダの可動側および固定側の双方をホルダで支持して2点支持状態とすることができ、シリンダの姿勢が安定化する。そのため、走行中の異常振動や騒音の発生を抑制し、併せてシリンダが車両側の部材と衝突して一方または双方に損傷を生じることを防止することができる。
【0011】
また、作業ユニットの分離作業の全過程を通じて、シリンダの一端はホルダに取り付けられたままの状態にあり、シリンダの全体をホルダから取り外す必要はない。そのため、シリンダに対する配管(例えば油圧配管)の着脱作業を不要とすることが可能となる。
【0012】
上記作業ユニットの分離作業において、作業ユニットに取り付けられていたシリンダの前記他方を作業ユニットから取り外し、これをホルダに取り付けた後、シリンダを縮退させてもよい。
【0013】
この構成によれば、シリンダ可動側のホルダに取り付けた部分、およびシリンダ固定側のホルダに取り付けた部分のそれぞれに、両取り付け部が接近する方向の引張力を作用させることができる。これにより、両取り付け部におけるガタ、例えばピンとピン孔との間の遊びによるガタを消失させることができ、シリンダのガタ付きによる走行中の振動や騒音の発生を抑制することが可能となる。
【0014】
上記構成において、シリンダの前記他方を、ピン孔およびピンからなるピン結合を介してホルダに取り付け、ピン孔を、この取り付け状態からのシリンダの伸長動作を許容する長穴状に形成してもよい。
【0015】
この構成によれば、シリンダの前記他方をピン結合を介してホルダに取り付けた状態から、運転者の誤操作により、シリンダを伸長動作させてしまった場合でもシリンダの伸張動作が長穴に吸収されるため、シリンダの伸張によるシリンダ固定側および可動側のホルダへの取り付け部分、さらにはホルダへの過大負荷の作用を防止し、これらの部材の変形・破損を防止することができる。
【0016】
上記構成において、ホルダの一端を作業車両のフレームに取り付けると共に、他端を自由端とし、かつ前記ピン孔を、シリンダを伸張させた時のピン位置がホルダの基端側に移動する形状にしてもよい。
【0017】
これにより、シリンダの前記他方をピン結合構造を介してホルダに取り付けた状態から、シリンダが伸長動作し続けたことによってピン位置が長穴のホルダ基端側の端部に達しても、シリンダからの伸張力でホルダに作用するモーメントを小さくすることができる。そのため、ホルダの取り付け強度上、有利となる。
【0018】
上記構成において、アームに、アームの上昇操作時に前記ホルダと当接するアームストッパを設けてもよい。
【0019】
この構成によれば、アームと作業車両との結合部におけるピンの遊びによるガタ付きが、アームストッパがホルダに当接することにより抑制される。この状態を保持すれば、ガタ付きに起因する走行中の振動や騒音の発生等を抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、アームに対する作業アタッチメントの姿勢を固定した作業車において、シリンダの配管を着脱することなく、アームおよび作業アタッチメントからなる作業ユニットを作業車両から分離することが可能となり、良好な作業性が得られる。また、作業ユニットの分離後も、シリンダを安定して保持することができ、走行中の異音や振動の発生、さらには他部材との衝突による損傷を防止することができる。
【0021】
作業ユニットの分離作業において、作業ユニットに取り付けられていたシリンダの前記他方を作業ユニットから取り外し、これをホルダに取り付けた後、シリンダを縮退させることで、作業ユニットを分離した状態で作業車両を使用した際にも、振動や異音の発生を抑制・防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係る作業車であって、作業ユニットを装着した状態の側面図である。
【図2】(A)はアームの一端と作業車両との結合部の側面図、(B)がその分解正面図、(C)は抜け止めピンの斜視図である。
【図3】作業ユニットの分離後におけるホルダの正面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る作業車であって、作業ユニットを作業車両から分離した状態を示す一部破断側面図である。
【図5】作業ユニットを装着した作業車の前部を拡大して示す一部破断側面図である。
【図6】アーム連結部の背面図である。
【図7】図3におけるピストンロッドと格納板との結合部を拡大して示す図である。
【図8】(A)はアームストッパの側面図、(B)はアームストッパの斜視図である。
【図9】(A)がアームストッパの変形例の側面図、(B)がその正面図である。
【図10】アタッチメント揺動タイプの作業車を示す側面図である。
【図11】アタッチメント固定タイプの作業車を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態について図面に基づき説明する。
【0024】
図1に示すように、本実施形態の作業車は、トラクタ等の作業車両1の前部に、アーム11および作業用アタッチメント12からなるフロント作業ユニット10を取り付けた構成を有する。作業車両1の前方には、ホルダ2が設置されており、このホルダ2の上端とアーム11との間にシリンダ3が介装されている。シリンダ3を往復駆動することで作業ユニット10が揺動し、これによって、作業用アタッチメント12の位置および姿勢が二点鎖線と実線で示す位置の間で変化する。
【0025】
作業ユニット10を構成するアーム11は、作業車両1の前部の左右両側に配置されたアーム本体11aと、アーム本体11aの前端同士を車幅方向に連結するアーム連結部11bとで構成される。アーム本体11aは、作業車両1の前輪4の上方を前後に跨ぐ形で配置され、かつ上に凸となるように湾曲させた形態を有する。両アーム11の一端(図示例では前端)には、ブレード等からなる作業用アタッチメント12が着脱自在に固定される。この時、作業用アタッチメント12とアーム11との間には揺動軸が介在しておらず、従って、アーム11に対する作業用アタッチメント12の姿勢は固定された状態にある(アタッチメント固定タイプ)。両アーム11の他端(図示例では後端)は、接続部材15を介して、作業車両1の図示しないフレームに固定したブラケット16に取り付けられている。
【0026】
ブラケット16は、図2(B)に示すように、車幅方向に側板16aを対向させた断面コ字状に形成されている。また、接続部材15は、アーム本体11aの後端に固定された板状をなし、その一部が、ブラケット16の側板16a間の隙間に挿入されている。一方の側板16a、接続部材15、および他方の側板16aには同軸のピン孔18が設けられており、このピン孔18にドッキングピン19を挿通することでピン結合構造が構成され、接続部材15、アーム11、さらには作業用アタッチメント12がブラケット16に対してドッキングピン19を中心として揺動可能となる。
【0027】
ドッキングピン19には、ピン軸と直交する方向に貫通孔19aが形成されている。また、貫通孔19aよりも基端側に、使用者が把持するための把持部19bが設けられている。
【0028】
一方の側板16aには、ピン孔18を有する円筒状の厚肉部16a1を一体に設けてある。厚肉部16a1には、ピン孔18の中心を通る貫通孔16a2が形成されている。一連のピン孔18にドッキングピン19を挿入し、厚肉部16a1に設けた貫通孔16a2とドッキングピン19に設けた貫通孔19aとの位置合わせを行った後、貫通孔16a2、19aに抜け止めピン20を挿入することで、ドッキングピン19の抜け止めが行われる。
【0029】
図2(C)に示すように、抜け止めピン20は、ピン本体部20aと抜け止め部20bとを有する。抜け止め部20bは、線材をU字状に折り曲げると共に、全体を湾曲させた形状をなし、その両端は、ピン本体部20aの一端に回転可能に取り付けられている。これによって、抜け止め部20bは、ピン本体部20aに対し、図2(B)に示す初期姿勢と、図2(C)に示す取り付け姿勢との間で揺動可能となる。抜け止め部20bを図2(B)の初期姿勢にして抜け止めピン20を貫通孔16a2、19aに挿入した後、抜け止め部20bを回転させて図2(C)に示す取り付け姿勢にする。これにより、図2(A)に示すように、抜け止め部20bが厚肉部16a1の周囲を抱き込む形となるので、厚肉部16a1と抜け止め部20bとの係合により、抜け止めピン20の意図しない脱落を防止することができる。
【0030】
作業ユニット10の作業車両からの分離は、上記とは逆の手順をとることで行うことができる。すなわち先ず抜け止め部20bを図2(B)に示す初期姿勢に戻して抜け止めピン20を貫通孔16a2、19aから抜き取り、次いで把持部19bをつかんでドッキングピン19をピン孔18から抜き取る。その後、作業車両1を後退させることで、作業ユニット10を作業車両1から分離することができる。
【0031】
次に、作業ユニット10を揺動させる機構を説明する。この機構は、作業車両1のフレームに固定して作業車両1の前部に配置したホルダ2と、ホルダ2および作業ユニット10間に配置したシリンダ3とで構成される。
【0032】
ホルダ2は、図3に示すように、正面視で矩形枠状をなすもので、幅方向に離隔した2つの柱部2aと、両柱部2aの先端同士を連結する先端連結部2bと、両柱部2aの基端部同士を連結する基端連結部2cとを主な構成要素とする。ホルダ2の下端の基端連結部2cが作業車両1のフレームに固定される。一方、ホルダ2の上端はどこにも取り付けられない自由端である。
【0033】
ホルダ2の先端連結部2bの中央部には、車幅方向に離隔して下方に突出した2つの支持板2dが設けられている。この支持板2d間の隙間に、シリンダ3の固定側となるシリンダケース3aの一端が挿入される。両支持板2dおよびシリンダケース3aにそれぞれ設けたピン孔2fに取り付けピン2eを挿入することでピン結合が構成され、このピン結合によってシリンダ3の一端が支持板2dに対して回転自在に支持されている。取り付けピン2eの両端には、フランジ2e1が設けられ、これにより、取り付けピン2eの抜け止めがなされている。本実施形態において、シリンダケース3aと支持板2dとのピン結合は、基本的に解除する必要はないので、両端のフランジ2e1は、溶接などの手段で取り付けピン2eに固定してもよい。もちろんピン結合を容易に解除できるように、図2(A)〜(C)に示すドッキングピン19および抜け止めピン20と類似した構成の二種類のピンを使用してもよい。
【0034】
ホルダ4の基端連結部2cの中央部には、前側斜め上方に突出した板状の2つの格納板2hが車幅方向に離隔して設けられている。図4に示すように、両格納板2hには、ピン孔として、その前端側から後端側に向かって漸次下方に移行するように傾斜した長孔2gが形成されている。
【0035】
シリンダ3の可動側となるピストンロッド3bの先端は、アーム11およびホルダ2の双方に対して択一的に着脱可能に構成される。図5及び図6は、このうちで、ピストンロッド3bの先端をアーム11に結合した状態を示すものである。
【0036】
図5および図6において、ピストンロッド3bとアーム11は、図2(A)〜(C)に示すドッキングピン19および抜け止めピン20と類似した構成のピン21および抜け止めピン22を用いて結合されている。詳細に説明すると、図6に示すように、アーム11の先端に設けられたアーム連結部11bの中央部に、車幅方向に離隔する2つの支持板11fが設けられており、両支持板11f間の隙間に、ピストンロッド3bの先端に取り付けたスリーブ3cが配置されている。両支持板11fおよびスリーブ3cに設けた各ピン孔23にピン21を挿通することで、ピストンロッド3bを支持板11fに対して回転自在に支持するピン結合が構成される。ピン21には、使用者が把持するための把持部21aが設けられている。一方の支持板11fには厚肉部11f1が一体に形成される。この厚肉部11f1およびピン21に、ピン孔23と直交する貫通孔21bが形成されている。この貫通孔21bに、抜け止め部22aを有する抜け止めピン22を挿入し、抜け止め部22aを図2(C)と同様に取り付け姿勢にし、厚肉部11f1と係合させることで、ピン21の抜け止めがなされる。
【0037】
一方、抜け止めピン22の抜け止め部22aを回転させて図2(B)に示す初期姿勢に戻し、抜け止めピン22を貫通孔21bから抜き取った後、把持部21aをつかんでピン21をピン孔23から抜き取ることで、ピストンロッド3bと支持板11f間のピン結合を解除することができる。
【0038】
このようにしてピン結合を解除したピストンロッド3bは、図3、図4、および図7に示すように、ホルダ2の格納板2hにピン結合で取り付けられる。すなわち、ピストンロッド3bの先端に設けたスリーブ3cを格納板2h間の隙間に挿入し、その後、先に取り外したピン21を両格納板2hの長孔2g、およびスリーブ3cのピン孔23に挿入する。次いで、ピン21の貫通孔21bとに、先に取り外した抜け止めピン22を挿入する。その後、抜け止めピン22の抜け止め部22aを取り付け姿勢にし、抜け止めピン22の先端と係合させることでピン21の抜け止めがなされる。この時、ピン21は長孔2gの前端に位置させる。また、シリンダ3は例えば最縮退状態にする。
【0039】
図5および図6に示すように、アーム11先端に設けたアーム連結部11bの幅方向の両端部には、それぞれホルダ2側に突出したアームストッパ11cが設けられている。アームストッパ11cは、図8に示すように、例えば断面略コ字状に形成され、アーム11を上昇方向に揺動させた際にホルダ2の柱部2aと当接する位置に配設される。
【0040】
以上の構成の作業車について、使用手順を以下に説明する。
【0041】
図1に示すように、アーム11を作業車両1に装着した状態では、シリンダ3のピストンロッド3bの先端がアーム11の支持板11fに取り付けられた状態にある(図5参照)。作業用アタッチメント12をアーム11に取り付け、必要に応じて作業車両1を適宜走行させながら、シリンダ3を駆動してアーム11を操作することにより、目的とする作業が行われる。
【0042】
作業用アタッチメント12による作業が不要である場合、例えば後部に別の用途の作業用機械を取り付ける場合には、上記のようにアーム11の後端とブラケット16とのピン結合を解除してアーム11と作業車両1との関係を切り離すと共に、シリンダ3のピストンロッド3bとアーム11の支持板11fとのピン結合を解除し、シリンダ3とアーム11との関係を切り離す。その後、作業車両1を後退させることで、作業ユニット10を作業車両1から分離することができる。
【0043】
更に、この状態で、最縮退状態の直前状態となるまでシリンダ3を縮退させ、かつシリンダ3を取り付けピン2eを中心として図1の反時計回りに僅かに揺動させて、ピストンロッド3bの先端に取り付けたスリーブ3cを格納板2hに設けた長孔2gの前端に位置合わせする。その後、取り外したピン21および抜け止めピン22を用いて、ピストンロッド3bを図4および図7に示す態様でホルダ2の格納板2hに結合する。その後、シリンダ3をさらに僅かに縮退させる。この状態で、ボンネットを開閉しても(図4の二点鎖線A参照)ボンネットが、シリンダ3や、シリンダ3に接続した油圧配管3dと干渉しないように設計されている。
【0044】
作業ユニット10を作業車両1に再装着する場合は、上記の手順の逆を行なう。すなわち、先ず地面に載置した作業ユニット10に向かって作業車両1を前進させ、ブラケット16の側板16a間の隙間に、アーム11に取り付けた接続部材15の一端を挿入する。側板16aおよび接続部材15の各ピン孔18の位置合わせを行った後、ドッキングピン19をピン孔18に挿入し、抜け止めピン20を貫通孔16a2、19aに挿入してドッキングピン19の抜け止めを行う。また、ピストンロッド3bとホルダ2の格納板2hとのピン結合を解除し、シリンダ3を、その上端のピン2eを中心として時計方向に僅かに揺動させ、必要に応じてシリンダ3の伸張長さを調節してから、図5に示すように、ピストンロッド3b先端のスリーブ3cをアーム11の支持板11f間に配置する。支持板11fおよびスリーブ3cのピン孔23との位置合わせを行ってから、ピン21および抜け止めピン22を使用してピストンロッド3b先端と支持板11fのピン結合を行う。
【0045】
以上説明した作業車では、次のような作用効果を享受できる。
【0046】
アーム11および作業用アタッチメント12からなる作業ユニット10を簡単な作業で作業車両1から分離することができる。しかも分離後は、シリンダ3の固定側(シリンダケース3a)と可動側(ピストンロッド3b)の双方がホルダ2に支持されるため、作業車両1の走行中のシリンダ3の揺れによる騒音や振動の発生を防止し、かつシリンダ3と他の部材(例えば作業車両1のボンネット)との衝突による一方または双方の損傷を防止することができる。
【0047】
また、作業ユニット10の着脱作業中は、シリンダ3のシリンダケース3aがホルダ2に支持されたままの状態にあり、シリンダ3自体の着脱作業は不要である。そのため、シリンダ3の油圧配管3dの着脱が不要となり、作業ユニット10の着脱作業の作業性向上を図ることが可能となる。
【0048】
作業ユニット10の分離後、図4に示すように、ピストンロッド3bの先端をホルダ2の格納板2hにピン結合した後で、シリンダ3を僅かに縮退させるようにしたので、シリンダ3とホルダ2間のピン結合構造(上下二箇所)で、ピンとピン孔間の遊び(ガタ)を詰めることができる。そのため、作業車両1の走行中における振動や騒音の発生を抑制することが可能となる。
【0049】
上記作業車では、シリンダ3のピストンロッド3bをホルダ2の格納板2hにピン結合する際に、格納板2hに設けた長孔2gの前端にピン21を配置している。そのため、作業車両1のボンネットを開閉しやすい(図4の二点鎖線A参照)。また長孔2gは、格納板2hの前端側から基端側に向かって漸次下方に移行しており、後方側ほどシリンダ3の上端を支持する固定ピン2eから離反した形状をなしている。そのため、図4に示すようにピストンロッド3bをホルダ2の格納板2hにピン結合した状態で、シリンダ3の伸長動作が許容された状態にある。従って、その後、作業者が運転席の操作レバーを誤操作して、シリンダ3を伸長動作させてしまった場合でも、長孔2gにピン21がガイドされ、シリンダ3の伸張動作が吸収される。そのため、シリンダ3の伸張により、シリンダ3を支持する上下のピン2e、21に過大な力が作用するのを防止することができ、ピン2e、21やホルダ2の変形を防止することができる。
【0050】
また、長孔2gの後端は前端よりもホルダ2の作業車両への取り付け部位に近い側にある。この場合、誤操作によりシリンダ3を伸張させ、ピン21が長孔2gの後端に当接した場合(図5の二点鎖線の状態)でも、シリンダ3からピン21を介して格納板2hに作用するモーメントが小さくなるため、ホルダ2と作業車両1の取り付け部に加わる負荷が小さくなる。従って、ホルダ2の変形や取り付け部の損傷等を抑制することができる。
【0051】
図5に拡大して示すように、アーム11の上昇操作時、すなわちシリンダ3を縮退させた時には、アームストッパ11cがホルダ2の柱部2aと当接する。この当接状態を保持することにより、アーム11と作業車両1間のピン結合構造において、ドッキングピン19とピン孔18との間の遊び(ガタ)が詰められ、この遊びに起因した車両走行中のアーム11の振動や騒音の発生を抑制することが可能となる。なお、本実施形態では、アームストッパ11cが柱部2aと当接した状態で、シリンダ3は、最縮退状態より僅かに伸長した状態、例えば最縮退状態より4mm伸長した状態である。シリンダ3が最縮退状態より僅かに伸長した状態であることにより、シリンダ3の縮退する力が十分に発揮される。このため、ドッキングピン19とピン孔18との間の遊び(ガタ)がより詰められ、アーム11の振動や騒音の発生を抑制する効果を向上することができる。
【0052】
上記実施形態では、アームストッパ11cは、断面略コ字状であったが、図9に示すように、例えば弾性部材から成るローラ11c1と、ローラ11c1を回転自在に支持する支持板11c2とから構成されるものであってもよい。シリンダ3を縮退させることにより、アームストッパ11cがホルダ2の柱部2aと当接して、ドッキングピン19とピン孔18との間の遊び(ガタ)が詰められる際には、アームストッパ11cが柱部2aに沿って僅かに移動する。アームストッパ11cが、図9の構成の場合には、このアームストッパ11cの僅かな移動がスムーズになる効果が享受できる。また、アームストッパ11cとホルダ2の柱部2aとが、当接することにより損傷・変形することを抑制できる。
【0053】
上記実施形態では、シリンダ3をホルダ2の格納板2hにピン結合する場合には、シリンダ3を縮退させた状態でピン21を長孔2gの前端に位置させていたが、シリンダ3を伸長させた状態で長孔2gの後端に位置させてもよい(図5の二点鎖線の状態)。この場合でも、シリンダ3とホルダ2間のピン結合構造(上下二箇所)で、ピンとピン孔間の遊び(ガタ)を詰めることができる。そのため、作業車両1の走行中における振動や騒音の発生を抑制することが可能となる。また、この場合には、作業者が誤操作して、シリンダ3を縮退動作させてしまっても、長孔2gにピン21がガイドされ、シリンダ3の縮退動作が吸収される。
【0054】
また、上記実施形態では、シリンダ3の固定側であるシリンダケース3aをホルダ2の先端連結部2bとピン結合し、シリンダ3の可動側であるピストンロッド3bをホルダ2の基端連結部2cとピン結合しているが、シリンダ3を上下逆に配置して、可動側のピストンロッド3bをホルダ2の先端連結部2bにピン結合し、固定側のシリンダケース3aを基端連結部2cにピン結合してもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、作業ユニット10を作業車両1に装着した際に、シリンダ3のピストンロッド3bをアーム11にピン結合しているが、この結合位置は作業ユニット10内であれば任意であり、例えば作業用アタッチメント12にピストンロッド3bを結合してもよい。
【0056】
本発明は上記実施形態に限定されることなく、その技術的思想の範囲内であれば、様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 作業車両
2 ホルダ
2g 長孔
3 シリンダ
3a シリンダケース(固定側)
3b ピストンロッド(可動側)
10 作業ユニット
11 アーム
11c アームストッパ
12 作業用アタッチメント
19 ドッキングピン
21 ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業車両と、作業車両に固定されたホルダと、アームおよびアームの一端に取り付けた作業用アタッチメントを有し、アームに対する作業用アタッチメントの姿勢が固定され、アームの他端を作業車両に回転可能に取り付けた作業ユニットと、固定側と可動側の何れか一方が前記ホルダに取り付けられ、他方が前記作業ユニットに取り付けられたシリンダとを備え、シリンダの伸縮動作で、作業ユニットを揺動操作する作業車であって、
アームの前記他端を作業車両に対して着脱可能とし、かつ作業ユニットに取り付けたシリンダの前記他方を、作業ユニットおよびホルダの双方に対して択一的に着脱可能にしたことを特徴とする作業車。
【請求項2】
作業ユニットに取り付けられていたシリンダの前記他方を作業ユニットから取り外し、ホルダに取り付けた後、シリンダを縮退させる請求項1に記載の作業車。
【請求項3】
シリンダの前記他方を、ピン孔およびピンからなるピン結合でホルダに取り付け、前記ピン孔を、シリンダの伸長動作を許容する長穴状に形成した請求項2に記載の作業車。
【請求項4】
ホルダの一端を作業車両のフレームに取り付けると共に、他端を自由端とし、かつ前記ピン孔を、シリンダを伸張させた時のピン位置がホルダの基端側に移動する形状にした請求項3に記載の作業車。
【請求項5】
アームに、アームの上昇操作時に前記ホルダと当接するアームストッパを設けた請求項1〜4の何れか1項に記載の作業車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−80297(P2011−80297A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−234490(P2009−234490)
【出願日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(000177184)三陽機器株式会社 (26)
【Fターム(参考)】