説明

作用部品を有するマイクロ流体回路

異なった流体(Fl,F2)を収容するマイクロチャネル(24,26)を有するマイクロ流体回路であって、前記流体間の界面(30)上の(32)で、例えばポンプ、バルブ、または混合器を形成するようにレーザ光線が集光される回路である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路に存在する流体に作用することのできる少なくとも1つの部品を有するマイクロ流体回路に関し、特に、とりわけ、その流体を他の流体と混合する回路中の流体の流れを作り出し、その流れを遮断し、その流れを方向付けかつ操舵し、および/または、その流体を他の流体と混合することに係わる。
【背景技術】
【0002】
マイクロ流体デバイスは、今日まで、満足な方法で解決されなかったある特定の数の技術的問題を示しており、これらの問題は、小さな規模での流体力学の可逆性の理由から困難となるようなマイクロチャネル中での流体の輸送に関係し、また漏れ止め法でマイクロチャネルを閉じることができるバルブ(弁)を提供することにも関係している。
【0003】
柔軟なポリマー(重合体)中にマイクロチャネルを形成し、それに圧力をかけ、チャネルを平らにすることによって、そのチャネルを閉じ、それによってマイクロバルブを構成するという提案がすでにされている。所定の順序で作動される3つのこのようなバルブ列を使って蠕動タイプのポンプを形成することも可能である。
【0004】
他の公知の解決法は、イオン化流体(電気浸透)または荷電粒子(電気泳動)を移動させるために電界を利用する。
【0005】
さらに他の公知の解決法は、電気抵抗素子を使って、流体の1つを熱毛細管対流(thermo capillary convection)またはマランゴーニ(Marangoni)効果によって移動させるために、2つの非混和性の流体間の界面に局所的に熱を加えることにある。
【0006】
「多数の光学ピンセット(tweezer)」に捕獲されたビード(bead)を使って、材料と流体を移動させるという提案もなされた(K. Ladavac及びD. Grierによる研究)。
【0007】
これらすべての解決法は欠点を有している。マランゴーニ効果を利用するものは、流体の全体的な流れを引き起こすという長所を持っているが、それを実施することが難しい。実施にあたって、第1の流体中に泡を形成できるような第2の流体を導入するための他のマイクロチャネルから、出口近くの第1の流体が供給されるマイクロチャネル上に置かれた電気抵抗素子を利用する。電気抵抗素子は2つの流体間の界面の一つの側を熱し、界面に沿って温度勾配を生成し、それによって第1の流体を低い温度の方に移動させ、そして決定された方向への流体の全体的な動きを誘発する(特許文献1参照)。
【0008】
この公知技術では、加熱抵抗素子が製造の際にマイクロ流体回路中に組み込まれ、そのため、それらの位置と特性を変更することはできない。このような統合化は回路コストの増加をも招く。さらに、抵抗素子に電力を供給することにより熱をかけることは容易であるが、冷却のために何も提供されず、抵抗への電力供給が停止した後も、それが周囲温度に戻るまでポンピング効果は一定時間の長さにわたって持続する。
【特許文献1】米国特許第6,533,951号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、従来の知られた回路の欠点を与えないマイクロ流体回路を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、とりわけ、流体を移動状態に設定し、停止し、混合し、計測するようにその流体に作用するような部品のレベルにおいて、任意に適応可能で変更可能なマイクロ流体回路を提供することである。
【0011】
本発明の他の目的は、回路自身と直接相互作用せず、それにより回路の悪化や劣化の危険性のない状態である一方で、作用部品が制御または動作可能な状態で制御され得るような、上記で特定されたタイプの作用部品を有するマイクロ流体回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的を達成するため、本発明は、第1の流体を収容する少なくとも1つのマイクロチャネルと、熱毛細管対流によって前記流体に作用することができる少なくとも1つの部品と、を有するマイクロ流体回路であって、前記流体と第2の流体との界面にレーザ光線を集光するための手段を含み、前記マイクロチャネルが前記レーザ光線に対して透明な材料で形成され、前記第2の流体が前記マイクロチャネル内に少なくとも局所的に存在することを特徴とする回路、を提供する。
【0013】
マイクロ回路の透明な材料を通して2つの流体の界面上にレーザ光線を集光することにより、マイクロ回路自身に対して作用することなく、従ってマイクロ回路を劣化させたり疲弊させたりするいずれの危険もなく、前記界面に作用することが可能になる。2つの流体の界面にレーザ光線を集光することは、望ましい効果を得るのに十分であって、マイクロ回路における電子部品に組み込むことを回避させる。
【0014】
2つの流体が混和性でない場合、その効果は、第1の流体を、2つの流体の界面における温度勾配によって決定される方向に移動させることにあり、従ってレーザ光線がポンプの機能を遂行する。
【0015】
本発明の他の特徴によれば、レーザ光線は、第1のマイクロチャネルへと開口して第2の流体の流れを運ぶ少なくとも1つまたは2つの第2のマイクロチャネルのすぐ下流に位置した第1のマイクロチャネルの領域における2つの流体の界面に集光されうる。
【0016】
次に、レーザ光線は、第1の流体が第1のマイクロチャネル中を流れるのを防止し、バルブの役割を果たす。
【0017】
そのバルブは、いかなる移動式部品をも持たないという利点をもたらす。これは制御するのが非常に簡単で、制御においてはレーザ光線の放射パワーを調整する以外のいかなるものも含む必要がない。
【0018】
本発明のさらに他の特徴によれば、第2の流体は、お互いに混和性である第1の流体と第3の流体の間の合流領域におけるガスの泡によって形成され、レーザ光線は、泡を保持する役割を果たし、また泡を形成するのに使われうる固体に集光される。
【0019】
泡の形は、レーザ光線によって照射されている間に複雑な方法で非常に速やかに変化し、そうして泡による界面における第1および第2の流体内に流れが誘発され、その流れは時間と共にランダムになり、それによって、いくつかの種類、すなわち同じタイプあるいは異なるタイプのものからなりうるそれらの2つの流体は共に混合する。
【0020】
次に、本発明は、2つ以上の流体のための「カオス的な(chaotic)」混合器(mixer)を作ることを可能にし、そしてマイクロ流体回路内の流体を混合するための問題に対する単純で効果的な解決策を提供する。その問題とは、小規模では乱れた流れを形成することが不可能なことの理由から、従来の方法においては解決できないことである。
【0021】
本発明のさらに他の特徴によれば、レーザ光線は、第1の流体が第1のマイクロチャネルに沿って短時間の間流れることを可能にすることによって、上述のバルブと同じ原理で動作する測定手段を形成するのに使うことができる。
【0022】
第1のマイクロチャネル内の流体流れに所定の時間間隔で作用させることによって、マイクロ小滴(マイクロドロップ)を形成するのに、レーザ光線を使うことも可能である。そのドロップは、レーザ光線がその流れに作用する時間の長さの関数として、種々の大きさを持ちうるように形成される。
【0023】
レーザ光線を、特定の方向への流体流れの方向付けをして、そして異なった流体に対する分類または分離を行なうのに使うことも可能である。
【0024】
本発明で使われるレーザ光線のパワー(出力)は、典型的には10ミリワット(mW)から50mWのオーダーであり、その出力は、流体または溶液の特性により変わる。検討される流体の吸収バンドにレーザの波長を調整するために、そのレーザの波長を変えることも提供される。
【0025】
レーザ光線、およびレーザ光線とマイクロ流体回路の所定の領域を迅速に走査するための手段を使うことによって、本発明は、一の領域から他の領域までレーザ光線が移動する速度が、流体の反応時間と比較してより速い状態の下で、ポンプ、バルブ、混合器(ミキサ)、および測定手段を持った回路を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
添付の図面を参照した例によって成される以下の説明を読むことによって、本発明はより良く理解され、そして他の特徴、その詳細および利点は、より明確に現われることになるであろう。
【0027】
図1のデバイスはレーザ発生器、例えば、514ナノメートル(nm)の波長で典型的には10mWから50mWにおける出力の、連続的、または約1キロヘルツ(kHz)以上の周波数の反復パルスで発するイオン化アルゴン発生器を有する。例えば、レーザダイオードや、イットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)タイプレーザを使うこともできる。
【0028】
柔軟性のある通常のリソグラフィ技術を使って、例えば適切な材料のプレート18、例としてポリジメチルシロキサン(PDMS)のようなポリマー内に形成されるマイクロ流体回路のマイクロチャネル領域に、正確に集光できるようにした顕微鏡レンズ16に向かって、反射手段14によりレーザ光線12が導かれる。
【0029】
一実施形態において、マイクロチャネルはプレート18の表面に形成され、またガラス顕微鏡スライドがその上に付けられる。
【0030】
通常、マイクロチャネルは約100マイクロメートル(μm)の幅で約50μmの深さである。これにかかわらず、これらの大きさはナノメートルスケールからミリメートルスケールの広範囲にわたって変えることができる。
【0031】
顕微鏡レンズにつながれたカメラ20が、回路18で起こっていることの観測の役割と、データプロセッサシステムのスクリーン22上にそれを表示する役割とを果たす。
【0032】
好都合に、そして以下の説明からさらに良く理解できるように、反射手段14により、回路18上のレーザ光線の集光点を、所定の領域において、特にポンプ、バルブ、混合器(ミキサ)、計測装置、方向付け(steering:ステアリング)手段、分離器(セパレータ)、およびソート(仕分け)手段、などのような作用部品を作る命令の関数としての速い速度で移動させることができる。
【0033】
図2は、第1の流体とは混和性でなく、また第2のマイクロチャネル26か、あるいは回路18のキャビティ中に存在する第2の流体F2を使うことによって、前述の回路18のマイクロチャネル24内で、第1の流体F1をある速度で流れさせることを可能にするポンプの一実施形態を示す。そして、この第2のマイクロチャネル26またはこのキャビティは、第1のマイクロチャネル24へと開口している。第2の流体F2は、その第2のマイクロチャネル26が開口する第1の流体F1内にドロップまたは泡28を形成し、レーザ光線16は2つの流体の界面30の一部、例えばマイクロチャネル24内の流体F1を移動させたい方向34に対応する界面30の上流端に存在する、32で示された領域に集光される。
【0034】
このような状況の下で、レーザ光線12の出力は例えば20mWオーダーであり、反射手段14における損失が比較的大きいので、集光点で利用可能な出力は放射出力の5分の1のオーダーである。領域32でのレーザ光線の集光点の大きさは、例えば直径が約5μmから15μmであり、マイクロチャネル26の開口におけるドロップ28のサイズは任意であって、例えば約10μmから約500μmの範囲内である。
【0035】
点32での界面30の局所的な熱は、流体F1を界面上に移動させ、従ってマイクロチャネル24の入口から界面30までの流体F1における全体的な移動をもたらす。マイクロ流体において、小さな寸法は2つの理由で有利である。
・熱毛細管対流は温度/距離の勾配に依存する。関連する小さな寸法の条件のもとで、この勾配は小さな温度差に対して大きくあり得る。また、
・小さいレイノルズ数において、界面30での流体の動きは、界面から遠い流体における移動をもたらし、そして界面における熱毛細管対流は流体F1に対し全体的な影響を与える。
【0036】
空気、または約5重量%濃度の水とフルオレセイン(fluorescein)の混合物によって構築された流体F1と、さらに約2重量%濃度のヘキサデカン(hexadecane)とスパン80(Span80)の名で知られているような界面活性剤との溶液である流体F2と、を用いて実行されたテストにより、約20mWの出力を持つレーザ光線12を使って以下のような結果が得られた。
・流体F1が空気であるとき、流れ速度はマイクロチャネル24内で毎秒500マイクロメートル(μm/s)に達することができる。また、
・流体F1がフルオレセインの水溶液であるとき、速度は遅く、約50μm/sに達する。
【0037】
図3は、回路18上に集光するレーザ光線12によって構成される作用部品が、バルブである時の状況を示す概略図である。
【0038】
この形態では、回路18のマイクロチャネル24は矢印34で示される方向に流体F1の流れを運び、マイクロチャネル24へと面して開口する2つのマイクロチャネル26が直角に交差し、そのそれぞれが矢印36で示される方向に第2の流体F2の流れを運び、流体F2の流れはマイクロチャネル24に入り込んで、そして矢印38で表されるように下流に流れる。
【0039】
レーザ光線12は、32で示されるように、マイクロチャネル26の出口のすぐ下流で第1の流体F1と流体F2の界面に集光され、従って流体F1の流れをほとんど瞬間的に
止める効果を有する。
【0040】
マイクロチャネル26およびマイクロチャネル24内の第2の流体F2の流れは変更されないように見える。
【0041】
流体F1の流れを止めることが可能である時間間隔は、レーザ光線の集光点32の位置に応じて、またマイクロチャネル24の流体F1の流れ速度に応じて、より長いか、またはより短い。
【0042】
この時間は、典型的には、数秒であり、10秒を超えることもある。
【0043】
マイクロチャネル24に流速がかけられるのではなく、圧力下での前記流体によって流体F1が供給される場合、マイクロチャネル24に沿った流体F1の流れは無制限の時間止めることができる。
【0044】
上記のように、レーザの放射出力が約20mWから40mWの範囲内にある状態で、レーザ光線の集光点の大きさは約10μmである。
【0045】
第1の流体の屈折率が第2の流体より大きい場合、「光捕捉」効果を、流体界面にレーザ光線を集光することによって作り出される流れ止め効果に加えることができる。双極子(dipolar)由来のこの光捕捉効果は、バルブを動作させるか、または2つの流体の界面をガイドするためにも使うことができる。
【0046】
バルブの変形形態を図4と図5に示す。これらの図では、第2の流体F2が、矢印34の方向に流れる第1の流体Fを収容するマイクロチャネル24へと、直角に開口する一つのマイクロチャネル26内の矢印36の方向に流れる。
【0047】
図4に示すように、2つの流体の界面上の32、すなわち、マイクロチャネル26の軸から少し下流で、マイクロチャネル24の軸に関して前記マイクロチャネルとは反対側にレーザ光線が集光される場合、第1の流体F1の流れを止めて、第2の流体F2が流れることが可能となる。
【0048】
逆に、図5に示すように、マイクロチャネル26がマイクロチャネル24へと開口する32にレーザ光線が集光されるならば、第2の流体F2の流れを止めて、第1の流体F1がマイクロチャネル24に沿って下流に通過することが可能となる。
【0049】
図6では、第2の流体F2内の第1の流体F1の軸方向噴射間の界面上で、マイクロチャネル24と、第2の流体F2が流れる2つのマイクロチャネル26との交差点から下流における32にレーザ光線が集光される。
【0050】
レーザのオン/オフ取り替えを繰り返すことにより、レイリー・プラトー不安定性(Rayleigh-Plateau instability)によって、流体F1の噴射が流体流れF2中でドロップ39に細分され、その状況ではドロップの大きさがレーザ駆動振動数と流れ速度との比の関数である。
【0051】
図7は、2つのマイクロチャネル24の合流点において、2つの混和性の流体を一緒に混合するための混合器(ミキサ)を構築するのにレーザ光線が使われる形態を示す。2つのマイクロチャネル24の一方は流体F1の流れを一つの矢印で示される方向に運び、他方は他の流体F2の流れを他の矢印で示される方向に運ぶ。そして2つのマイクロチャネル24は、流体混合物F1+F2を、マイクロチャネル42を介して逃がすことのできるチャンバ40において合流する。
【0052】
2つの流体を一緒に混合するために、両マイクロチャネル24の合流点におけるチャンバ40内に位置し、そしてレーザ光線12によって加熱される際にガス46の1つ以上の泡、例えば空気の泡を生成するか、または放つのに適した固体材料の粒子44に、レーザ光線12が集光される。
【0053】
泡46は粗面を有しうる固体粒子44に付着させられたままの状態である。変形として、泡46は、レーザ光線12によって加熱される前に固体粒子44上に存在させることができる。
【0054】
固体粒子44がレーザ光線によって加熱される時、一つまたはそれぞれの泡46の形状は、非常に複雑で非常に速やかな方法で変化し、そして前記泡と、流体F1およびF2のそれぞれとの界面上に或る流れが誘発される。これはやがてランダムとなる流体F1とF2に対する流れをもたらし、それによってそれらの流体を良好に混合することになる。
【0055】
この固体粒子は、フルオレセインの結晶、ポリマー・ビード(例えばPDMSよりなる)、または何らかの黒体、例えばカーボンブラックの粒子などであり得る。そして条件の操作に対する良好な抵抗を提供する。
【0056】
その大きさは約10μmが可能である。
【0057】
レーザ光線は回路18のマイクロチャネル内の流体の流れ方向を変更するのに使うこともできる。
【0058】
図8は、他の流体F2が流れる第2のマイクロチャネル26と直角に交差するマイクロチャネル24中を第1の流体F1が流れる形態を示す。レーザ光線12の集光点32が各マイクロチャネルの交差点からすぐ下流で、第2のマイクロチャネル26中に位置するならば、第1の流体F1にはその方向の変更がもたらされ、第2のマイクロチャネル26の下流部分へと流れる。
【0059】
図9は、第2の流体F2の流れを運ぶ2つのマイクロチャネル26に内部で面する開口を有した第1のマイクロチャネル24内を、第1の流体F1が流れる形態を示す。
【0060】
マイクロチャネル24と26の交差点より下流では、2つのマイクロチャネル52に分けられるマイクロチャネル24内の分岐領域へと流体F2内部を流れる中央の流れを、流体F1が形成する。
【0061】
2つのマイクロチャネル52の1つの上流側端部おいて、流れ50に位置する点32にレーザ光線12が集光されるならば、流れ50は前記マイクロチャネル52に向かって流れを変えられ、そして他のマイクロチャネル52の方に通過することが防止される。
【0062】
レーザ光線が移動する速度と比較して比較的長くなり得る流体の反応時間を利用し、例えば検流計(galvanometer:ガルバノメータ)制御または圧電制御の下でミラーを使うなどして、前記異なった領域で、ある一定の数の作用を遂行するように回路18の異なる所定領域上でレーザ光線12を速やかに移動させることも可能である。
【0063】
従って、図10に概略的に示すように、第1の流体F1の流れを運ぶ第1のマイクロチャネル24と第2の流体F2を運ぶ2つのマイクロチャネル26との交差点の領域にレーザ光線を集光させることによってバルブVを形成し、次に下流側で流体F2を収容する第3のマイクロチャネル26の開口部分にレーザ光線を集光させることによってポンプPを形成し、そして下流側で固体粒子上にレーザ光線を集光することによって混合器Mを実装し、そして次に混合器チャンバ40から離れていく2つのマイクロチャネル52の上流端部にレーザ光線を集光することによって形成された分離器Sを使ってソート(仕分け)を行なう、ということが可能である。
【0064】
1つの流体のドロップがマイクロチャネル52に沿って互いに続いていく場合、
図10中に図式的に示すように、その1つのドロップの界面上のRにおいてレーザ光線を集光させることによって、それらを一緒に集めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明のマイクロ流体回路装置の概略図である。
【図2】本発明のポンプの拡大概略図である。
【図3】本発明のバルブの拡大概略図である。
【図4】バルブの変形形態の拡大概略図である。
【図5】バルブの変形形態の拡大概略図である。
【図6】ドロップの噴射を小片化することを示す拡大概略図である。
【図7】本発明の混合器(ミキサ)の拡大概略図である。
【図8】流れの方向付けをするための手段を示す概略図である。
【図9】流れの方向付けをするための手段を示す概略図である。
【図10】バルブ、ポンプ、混合器(ミキサ)、および分離器(セパレータ)、ソート(仕分け)手段を有する、本発明のマイクロ流体回路を示す概略図である。
【符号の説明】
【0066】
12 レーザ光線
14 反射手段
16 レーザ光線
18 回路
24 マイクロチャネル
26 マイクロチャネル
28 ドロップ(または泡)
30 界面
32 集光点
39 ドロップ
40 混合器チャンバ
42 マイクロチャネル
44 固体粒子
46 ガス泡
52 マイクロチャネル
F1 第1の流体
F2 第2の流体
V バルブ
P ポンプ
M 混合器
S 分離器
R レーザ光線の集光点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の流体を収容する少なくとも1つのマイクロチャネル(24)と、熱毛細管対流によって前記流体に作用することができる少なくとも1つの部品と、を有するマイクロ流体回路であって、
前記流体(F1)と第2の流体(F2)との界面にレーザ光線(12)を集光するための手段(16)を含み、前記マイクロチャネル(24)が前記レーザ光線(12)に対して透明な材料で形成され、前記第2の流体(F2)が前記マイクロチャネル(24)内に少なくとも局所的に存在することを特徴とする回路。
【請求項2】
前記界面は前記第1の流体(F1)と、前記第2の流体(F2)の泡または小滴と、の間に形成されることを特徴とする請求項1に記載の回路。
【請求項3】
前記第2の流体(F2)は、前記第1の流体(F1)を収容する第1のマイクロチャネル(24)へと開口する少なくとも1つの第2のマイクロチャネル(26)またはキャビティに収容されることを特徴とする請求項1または2に記載の回路。
【請求項4】
前記2つの流体は混和性ではなく、前記界面にレーザ光線(12)を集光することは、前記第1のマイクロチャネル(24)内に前記第1の流体(F1)の流れを生み出すポンプを形成することを特徴とする請求項3に記載の回路。
【請求項5】
前記第2の流体(F2)は、前記第1の流体(F1)を収容する前記第1のマイクロチャネル(24)へと面して開口する2つの前記第2のマイクロチャネル(26)に収容されることを特徴とする請求項1または2に記載の回路。
【請求項6】
前記2つの流体は混和性ではなく、前記第1のマイクロチャネル(24)と前記第2のマイクロチャネル(26)の交差点に位置した領域(32)における2つの流体間の界面にレーザ光線(12)を集光することは、前記第1の流体(F1)が前記第1のマイクロチャネル(24)内で流れることを防止するバルブを形成することを特徴とする請求項3または5に記載の回路。
【請求項7】
第1の流体(F1)と、第1の流体と混和性である他の流体との合流領域に位置したガスの泡を含み、前記流体による前記泡の界面にレーザ光線(12)を集光することは、各流体を混合する役割を果たすことを特徴とする請求項2に記載の回路。
【請求項8】
前記泡(46)は、レーザ光線(12)が集光される固体粒子(44)上に保持されることを特徴とする請求項7に記載の回路。
【請求項9】
前記泡(46)は、レーザ光線(12)によって固体粒子(44)上に作られることを特徴とする請求項8に記載の回路。
【請求項10】
前記レーザ光線が集光されることによって形成される複数の作用部品と、レーザ光線(12)による前記部品の位置を迅速に走査するための手段(14)とを有し、前記部品がポンプ、バルブ、計測手段、混合器、分離器、および方向付け手段を含むグループから選択されることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の回路。
【請求項11】
レーザ光線(12)を集光するための手段(16)は、前記第1および第2の流体間の界面のスポット(32)を形成し、前記スポットが約5μmから約15μmの範囲に存在する直径を持っていることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の回路。
【請求項12】
レーザ光線(12)の放射は連続的であるか、または約1kHzを超える振動数の頻度を持ってパルス化されており、その放射出力は約10mWから約50mWの範囲に存在することを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2008−506526(P2008−506526A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−521974(P2007−521974)
【出願日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【国際出願番号】PCT/FR2005/001756
【国際公開番号】WO2006/018490
【国際公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(500531141)セントレ・ナショナル・デ・ラ・レシェルシェ・サイエンティフィーク (84)
【出願人】(503378028)エコール・ポリテクニク(イーピー) (12)
【Fターム(参考)】