説明

使い捨て容器および容器入り食品

【課題】保型性、運びやすさ、安全性に優れ、ホットプレートや電子レンジでの使用にも適した低コストな使い捨て容器および容器入り食品の提供。
【解決手段】無底筒状で上端側に向けて漸次拡径した外枠20Aと、該外枠20A内に保持されるギャザリングカップ30Aとを備えた使い捨て容器10Aを用いる。外枠20Aは、長手方向に沿って湾曲した帯状の非金属製シートの長手方向の両端側が互いに接合して形成され、ギャザリングカップ30Aは、非金属製シートのプレス成型により形成される。外枠20Aには、取っ手22,22が形成され、ギャザリングカップ30Aの周壁部には、取っ手22,22に係止する係止開口部33,33が形成されていることが好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば食品の加熱、調理など、特に食品用として好適に使用される使い捨て容器と、該使い捨て容器に食品が入った容器入り食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パウンドケーキなどの菓子類を焼いたり、おでんなどの鍋料理を調理したりする場合には、使用後の後始末が容易であることから、紙材などからなる使い捨て用のカップ、鍋などの容器が使用されることが増えてきている。例えば、特許文献1には、薄紙を複雑に折り加工することにより、薄紙製でありながら、側壁(周壁部)の形状が良好に保持される菓子用容器が開示されている。
【0003】
しかしながら、この菓子用容器は、薄紙を1枚ずつ複雑に折り加工する方法により製造されるため、製造コストが高いという問題があった。
一方、薄紙などにPETフィルムなどをラミネートしたシート材料から形成される容器として、図12に示すように、円形の底部51と、この底部51の縁部から立設し、周方向に襞が繰り返し形成された周壁部52とからなるギャザリングカップ50がある。ギャザリングカップ50は、複数枚の例えば円形のシート材料を重ね、これを一括してプレス成型することにより複数個が一括に製造されるため、製造コストが低い。そのため、このようなギャザリングカップ50を鍋料理などの調理に使用することも考えられる。
【0004】
ところが、ギャザリングカップ50は保型性が不十分であり、内容物を入れると周壁部の襞が広がってしまい、内容物を安定に保持できないという問題があった。また、内容物を入れた後には持ちにくく、例えばキッチンからテーブルまで運びにくいという問題もあった。保型性を高めるためには、より厚みの大きなシート材料を用いることも考えられるが、ギャザリングカップ50の製造時の成型性が低下するうえ、液状物を入れた場合などの保型性の向上には限界があった。
【0005】
このような問題を解決する方法として、例えば特許文献2の図5などに示されている形態の金属などからなる外枠を組み合わせて使用することにより、ギャザリングカップ50の保型性を補うことも考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3051452号公報
【特許文献2】実開平7−36940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ギャザリングカップに金属製の外枠を併用し、鍋料理などの調理を行う際に、これをホットプレート上などで加熱した場合には、外枠も高温になるため、安全面で懸念される。また、金属製の外枠がホットプレートのプレート面を傷付けることも考えられる。
また、金属製の外枠は、電子レンジでの使用には不適であるため、外枠が装着されたギャザリングカップを電子レンジで予備加熱してから、ホットプレート上に移動させて使用するなどの使用方法には対応できない。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、保型性、運びやすさ、安全性に優れ、ホットプレートや電子レンジでの使用にも適した低コストな使い捨て容器と、これを用いた容器入り食品の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の使い捨て容器は、上端側に向けて漸次拡径した無底筒状の外枠と、非金属製シートのプレス成型により形成され、前記外枠内に保持されるギャザリングカップとを備えた使い捨て容器であって、前記外枠は、帯状の非金属製シートの前記長手方向の両端側が、互いに接合して形成されたことを特徴とする。
前記外枠は、前記両端側が互いに係合して形成されたことが好ましい。
前記外枠には、取っ手が形成されていることが好ましい。
また、前記ギャザリングカップの周壁部には、前記取っ手に係止する係止開口部が形成されていることが好ましい。
前記ギャザリングカップが載置される下敷き用シートをさらに備えることが好ましい。
本発明の容器入り食品は、前記使い捨て容器と、該使い捨て容器に入った食品とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、保型性、運びやすさ、安全性に優れ、ホットプレートや電子レンジでの使用にも適した低コストな使い捨て容器と、これを用いた容器入り食品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の使い捨て容器の一例を示す斜視図である。
【図2】図1の使い捨て容器を構成するギャザリングカップを示す斜視図(a)と、図1の使い捨て容器を構成する外枠を示す斜視図(b)である。
【図3】図2(b)の外枠を形成するために使用される外枠形成用シートを示す平面図である。
【図4】図3の外枠形成用シートの係合部を拡大した平面図(a)と、この係合部を係合させた様子を示す平面図(b)である。
【図5】係合部の他の形態を示す平面図(a)と、この係合部を係合させた状態を示す平面図(b)である。
【図6】係合部の他の形態を示す平面図(a)と、この係合部を係合させる様子を示す平面図(b),(c)である。
【図7】本発明の使い捨て容器を構成する外枠の他の一例を示す斜視図(a)と、この外枠を用いた使い捨て容器を示す斜視図(b)である。
【図8】本発明の使い捨て容器を構成する外枠の他の一例を示す斜視図である。
【図9】本発明の使い捨て容器の他の一例を示すものであって、ギャザリングカップの斜視図(a)と、外枠の斜視図(b)と、ギャザリングカップおよび外枠から構成される使い捨て容器の斜視図(c)である。
【図10】本発明の使い捨て容器の他の一例を示すものであって、ギャザリングカップの斜視図(a)と、外枠の斜視図(b)と、ギャザリングカップおよび外枠から構成される使い捨て容器の斜視図(c)である。
【図11】本発明の使い捨て容器の他の一例を示す斜視図である。
【図12】ギャザリングカップの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
本実施形態例の使い捨て容器は、例えばおでん、シチュー、チーズフォンデュのチーズなどの食品が入れられる内容器としてのギャザリングカップと、このギャザリングカップを保持する枠体としての外枠を備えるものである。
図1は、本実施形態例の使い捨て容器10Aを示す図であり、外枠20A内にギャザリングカップ30Aを収め、外枠20Aでギャザリングカップ30Aを保持した状態を示している。図2(a)はギャザリングカップ30A、図2(b)は外枠20Aをそれぞれ示す図、図3は、図2(b)の外枠20Aを形成するための外枠形成用シート40Aを示す図である。本実施形態例の使い捨て容器10Aは、図1のように、外枠20A内にギャザリングカップ30Aが保持された状態で使用される。
【0013】
図示例のギャザリングカップ30Aは、円形の非金属製シートをプレス成型する方法により形成され、円形の底部31と、この底部31の縁部から漸次拡径しつつ立設したテーパー状の周壁部32とから構成されている。周壁部32において、底部31が存在していない側の一端、すなわち上端32aは開口し、ギャザリングカップ30Aに内容物を入れるための投入口となっている。周壁部32には、底部31から上端32a側に向けて、漸次その幅が大きくなるように形成された多数の襞が、周方向に沿って繰り返し形成されている。
【0014】
また、この例のギャザリングカップ30Aには、その周壁部32の上端32a側において、互いに対向する位置に、周方向に沿って延びる一対の細長いスリット状の係止開口部33,33が打ち抜き加工により形成されている。この係止開口部33,33は、詳しくは後述するように、外枠20Aに形成された取っ手22,22に係止するものであって、係止開口部33,33が取っ手22,22に係止することによって、使い捨て容器10Aの運搬時などにおいて、ギャザリングカップ30Aが外枠20Aから抜けて落下することを防止できるようになっている。
【0015】
ギャザリングカップ30Aを形成する非金属製シートは、金属以外の材料からなるシートである。非金属製シートを使用することにより、電子レンジでの使用が可能となる。また、非金属製シートは金属製シートよりも一般に熱伝導率が低く、そのため、ホットプレート上に載置されても加熱されにくいギャザリングカップ30Aを形成することができる。
非金属製シートとしては、具体的には、上質紙、中質紙、片艶紙およびクラフト紙などの酸性紙、中性紙、アルカリ性紙などの紙基材の少なくとも片面に、樹脂層が形成されたシートが好適に使用できる。具体的には、水溶性樹脂と必要に応じて無機顔料を含む塗工層が5〜20g/m塗工されたシート;紙基材の少なくとも片面に、ポリエチレン、ポリプロピレンなどからなる厚さ5〜40μmの熱可塑性樹脂ラミネート層が形成されたシート;紙基材の片面に、シリコーン樹脂を含む耐油層が0.01〜10g/m塗工された片面耐油紙などが使用される。
また、カナディアンスタンダードフリーネス(CSF)が100ml以下になるまで粘状叩解したパルプを使用して抄紙したグラシン紙、セミグラシン紙などの高密度紙を紙基材として用い、この片面に、シリコーン樹脂を含む耐油層が0.01〜10g/m塗工された片面耐油紙も非金属製シートとして好適に使用される。
【0016】
耐油層の形成に使用されるシリコーン樹脂としては、付加型ビニル基を含有するポリシロキサンをベースポリマーとし、架橋剤としてポリメチルハイドロジェンシロキサンを配合して、白金触媒の存在下で反応させたもの;縮合型末端にシラノール基を有するポリシロキサンをベースポリマーとして、架橋剤としてポリメチルハイドロジェンシロキサンを配合して、有機スズアシレート触媒の存在下で縮合反応させたもの:シリコーンレジンと呼ばれる3〜4官能型シラノールを用い、縮合により三次元網目構造を生成したものなどを用いることができる。
耐油層を形成する際には、シリコーン樹脂は有機溶剤で希釈され、または、水系エマルション、無溶剤型の形態とされ、グラビア塗工、ロール塗工、エアナイフ塗工、メイヤーバ塗工などの方法で塗工される。
【0017】
ギャザリングカップ30Aの形成に好適な非金属製シートの一例としては、例えば、王子特殊紙(株)製のグラシン紙(商品名「クリスラップ」、米坪39.7g/m、厚さ36.8μm)の片面に、信越化学工業(株)製のシリコーン主剤(商品名「KS−778E」)と硬化剤(商品名「PL−56」)とを100:1の質量割合で混合し、トルエンで濃度が8質量%となるように希釈した塗布液を乾燥質量1.0g/mで塗布して製造された片面耐油紙が例示できる。
【0018】
図示例の外枠20Aは、図3に示す形状の一枚ものの平坦な外枠形成用シート40Aから形成され、無底筒状で上端20a側にテーパー状に漸次拡径した形状を有している。
また、この例の外枠20Aには、その上端20aから上方に延出する一対の取っ手22,22が互いに対向する位置に形成され、使用者は、両手で各取っ手22,22をそれぞれ把持することによって、使い捨て容器10Aを例えば電子レンジからホットプレートに安定に運搬できるようになっている。また、この取っ手22の両脇には、下端20b側に向けて延びる切り欠き21,21がそれぞれ形成されていて、ギャザリングカップ30Aを外枠20A内に収めた場合には、その係止開口部33,33が取っ手22,22に安定に係止できるようになっている。そのため、運搬時などにおけるギャザリングカップ30Aの外枠20Aからの落下を防止することもできる。
【0019】
図3の外枠形成用シート40Aは、非金属製シートを例えば打ち抜き加工する方法により所定形状に形成されたものであって、長手方向に沿って湾曲した帯状の形状を有しているとともに、長手方向の両端41,42側には、係合部43,44が形成されている。そのため、係合部43,44を互いに係合させることによって、無底筒状で上端20a側に向けて漸次拡径した図2(b)に示す形状の外枠20Aを形成することができる。
【0020】
この例の係合部43、44は、図4(a)にも示すように、長手方向の一端41側と他端42側に、互いに反対方向に向けて切り込まれた切り込み43a,44aをそれぞれ有している。具体的には、一端41側の切り込み43aは、外枠20Aを形成した際に上側となる方を起点とし、下端20bとなる側に向けて途中まで切り込まれて形成されている。一方、他端42側の切り込み44aは、外枠20Aを形成した際に下端20bとなる側を起点として、上端20aとなる側に向けて途中まで切り込まれて形成されている。そして、一端41側の切り込み43aを下方から、他端42側の切り込み44aを上方から、互いに噛み合わせて、図4(b)に示すように係合させることにより、上端20a側に向けて漸次拡径した無底筒状に形成できるようになっている。
【0021】
また、この例の係合部43,44は、外枠形成用シート40Aの長手方向の一端41側と他端42側において、切り込み43a,44a同士を噛み合わせた際に互いに対応する位置に、挿入片44bと、これが差し込まれる挿入口43bとを一組備えている。具体的には、挿入口43bは、下方から噛み合わされる側(一端41側)の係合部43に形成され、挿入片44bは、上方から噛み合わされる側(他端42側)の係合部44に形成されている。そのため、切り込み43a,44a同士を噛み合わせて係合させるとともに、挿入口43bに挿入片44bを差し込むことにより、両端41,42側がぐらつくことなく安定に接合し、上端20a側に向けて漸次拡径した外枠20の形状がより安定に保持されるようになっている。また、この例のスリット状の挿入口43bは、差し込み方向に対して斜め方向に延設され、挿入片44bを挿入口43bに差し込みやすいように形成されている。
【0022】
外枠20Aを形成する外枠形成用シート40Aには、金属以外の材料からなる非金属製シートが使用される。非金属製シートを使用することにより、電子レンジでの使用が可能となる。また、非金属製シートは金属製シートよりも一般に熱伝導率が低く、そのため、ホットプレート上に載置されても加熱されにくい外枠20Aを形成することができる。
具体的には、広葉樹晒クラフトパルプ、針葉樹晒クラフトパルプ等の化学パルプ、GP、RGP、TMP等の機械パルプなどを原料とし、公知の長網多筒型抄紙機、長網ヤンキー型抄紙機、円網抄紙機等により抄造される上質紙、中質紙、片艶紙及びクラフト紙等の酸性紙、中性紙、アルカリ性紙の紙材が非金属製シートとして好適に使用できる。これらは、単層抄きまたは多層抄きのいずれであってもよい。なお、原料としては、古紙パルプも使用できるが、食品用の観点からは、古紙パルプを用いないほうが好ましい。
【0023】
単層抄きの紙材を使用する場合には、米坪が30〜310g/m(厚さが33〜443μm)の紙材が好ましく、より好ましくは 米坪が70〜300g/m(厚さが75〜430μm)の紙材が好ましい。さらに生産性、剛性、組み立て作業性などを考慮すると、米坪が200〜280g/m(厚さが285〜360μm)の紙材が好適である。
一方、多層抄きの紙材を使用する場合には、米坪が30〜750g/m(厚さが40〜1000μm)の紙材が好ましく、より好ましくは 米坪が180〜730g/m(厚さが250〜920μm)の紙材が好ましい。さらに生産性、剛性、組み立て作業性などを考慮すると、米坪が200〜500g/m(厚さが280〜700μm)の紙材が好適である。
【0024】
また、上述した紙材などを適宜糊貼合や、押出ラミネート(ラミサンド)等の方法で積層させた紙材を使用することもでき、紙材は、外枠20Aに要求される紙厚(剛性)などの適性に応じて適宜選択される。
【0025】
さらに、外枠20Aを形成する非金属製シートとしては、上述したような紙材に限定されず、樹脂を原料としたいわゆる合成紙や、樹脂と紙とを組み合わせた耐熱性ラミネート紙、PP、PET、PEN、ポリイミドなどの樹脂製の耐熱性フィルムや、これらを適宜積層した複合フィルム等も使用できる。これらのフィルムを用いた場合には、フィルムの厚さは12〜200μmが好ましく、剛性、組み立て作業性などを考慮すると、さらに好ましくは75〜200μmが好ましい。
【0026】
以上説明した使い捨て容器10Aは、ギャザリングカップ30Aに外枠20Aを組み合わせたものであるため、内容物を入れた場合でもギャザリングカップ30Aの保型性に優れ、運びやすい。
また、ギャザリングカップ30Aと外枠20Aのいずれもが非金属製シートから形成されたものであるため、使い捨てができ、調理後の後始末が簡単であるし、軽量で使い勝手も良い。なお、ギャザリングカップ30Aは、通常は1回の使用ごとに廃棄されるが、外枠20Aは、使用状況に応じて複数回使用されてから、廃棄されてもよい。
また、ギャザリングカップ30Aと外枠20Aのいずれもが非金属製シートから形成されたものであるため、ホットプレート上などで使用した際にも高温まで加熱されにくく、安全性に優れ、しかも、ホットプレートのプレート面を傷付けることもない。また、電子レンジでの使用にも適するため、この使い捨て容器10Aを電子レンジで予備加熱してから、ホットプレート上に移動させて使用するなどの使用方法にも対応でき、使用形態の自由度が大きい。
【0027】
また、ギャザリングカップ30Aは、複数枚の非金属製シートのプレス成型により、複数個が一括に製造され、外枠20Aも、複数枚重ねられた非金属製シートの打ち抜き加工などで、複数枚が一括に製造された外枠形成用シート40Aから形成される。よって、このような使い捨て容器10Aは、製造コストが低い。
【0028】
また、外枠20Aおよびギャザリングカップ30Aは、上方に漸次拡径したテーパー形状に形成されているため、外枠20Aには底部が形成されていなくても、その内側にギャザリングカップ30Aを安定に保持することができる。外枠20Aおよびギャザリングカップ30Aのテーパーの程度は適宜設定できるが、容器としての使い易さや、ギャザリングカップ30Aの保型性などの観点からは、水平方向に対する周壁部の角度(テーパー度)が、80〜10度となる範囲が好ましく、70〜45度がより好ましい。
なお、ギャザリングカップの周壁部のテーパー度は、形成されるギャザーの数により調整できる。
【0029】
また、この例では、外枠20Aには取っ手22,22が形成されているため、より安定に使い捨て容器10Aを運搬できることに加えて、ギャザリングカップ30Aの係止開口部33,33が外枠20Aの取っ手22,22に係止することによって、運搬時などにおけるギャザリングカップ30Aの外枠20Aからの落下を防止することもできる。
【0030】
さらに、この例の外枠20Aは、1枚ものの外枠形成用シート40Aの両端41,42側を係合する方法で形成されるものであるため、保管時にはシートの形態で場所をとることなく保管でき、使用時には、使用者が容易に外枠形成用シート40Aの両端41,42側を係合させて、外枠20Aとすることができる。
【0031】
なお、以上の実施形態例においては、外枠形成用シート40Aの両端41,42側を係合する係合部43,44として、一対の切り込み43a,44aと、一対の挿入片44bおよび挿入口43bとを具備した形態を例示したが、係合部の構成はこれに限定されない。
例えば、図5(a)に示すように、外枠形成用シート40Bにおいて、その長手方向の一端側には、この端部から延出する挿入片45を形成し、他端側には、この挿入片45が挿入されるスリット状の挿入口46を形成する。また、ここで挿入片45の基端部には、挿入方向に対して垂直方向に括れた一対の括れ部45a,45aを形成しておく。
このような係合部によれば、図5(b)に示すように、挿入片45を挿入口46に挿入することによって、一対の括れ部45a,45aがスリット状の挿入口46に係止するため、挿入片45は挿入口46から容易には抜けず、外枠形成用シート40Bの両端側を安定に係合させることができる。さらに、図示のように、挿入片45の基端部の両脇には、挿入方向に沿う切り込み45b,45bを形成し、また、他端側にもこれら切り込み45b,45bと噛み合う切り込み46b,46bを形成しておくことにより、外枠形成用シート40Bの長手方向の両端側をぐらつくことなくより安定に係合させることができる。
【0032】
その他には、図6(a)に示すように、外枠形成用シート40Cにおいて、その長手方向の一端側には、一端部から延出する挿入片47を形成し、他端側には、この挿入片47が挿入されるスリット状の挿入口48を形成する。また、ここで挿入片47の基端部には、挿入方向に対して垂直方向の一対の切れ込み47a,47a形成しておく。また、挿入口48の長さは、挿入片の幅(挿入方向に対して垂直方向の長さ)よりも小さく形成しておく。そして、図6(b)に示すように、挿入片47を挿入口48に挿入する際には、挿入片47の両側部分を折線47b,47bにおいて内側に折りたたんで挿入し、挿入後、図6(c)に示すように、この両側部分を元通りに開く。
このように係合部を構成すると、挿入片47を挿入口48に挿入した後には、挿入片47の両側部分が挿入口48に係止するため、挿入片47は挿入口48から抜けず、外枠形成用シート40Cの長手方向の両端側をより安定に係合させることができる。
【0033】
また、以上の各例では、外枠形成用シート40A,40B,40Cの一端側と他端側それぞれに、係合部を1つずつ形成したが、一端側、他端側の少なくとも一方に、複数の係合部を設けてもよい。例えば、一端側に、第1の係合部と第2の係合部とを長手方向に間隔をあけて設けておき、他端側の係合部を第1の係合部または第2の係合部のどちらに係合させるかによって、外枠の径を調整できるようにしてもよい。このようにすると、保持するギャザリングカップの径に応じて外枠の径を調整でき、1種類の外枠形成用シートにより、径の異なる複数のギャザリングカップに対応可能な外枠を形成することができる。
【0034】
さらには、外枠形成用シートの両端側を接合する方法としては、以上例示した係合に限定されず、例えば、両端側をヒートシールして接合する方法、接着剤や接着テープなどを用いて接合する方法などが挙げられる。両端側をヒートシールする方法を採用する場合には、外枠形成用シートを構成する非金属製シートとして、最外層にPEなどの樹脂からなるヒートシール層を備えたシートを使用すればよい。
【0035】
また、以上の実施形態例においては、外枠20Aの取っ手22,22として、外枠20Aの上端20aから上方に延出するとともに、両脇には細長い切り欠き21,21が形成された一対の延出片状の取っ手22,22を例示した。しかしながら、両脇に切り欠きが形成されていれば、取っ手が外枠の上端から延出していなくても、この取っ手に係止開口部33,33を係止させることができる。よって、取っ手は、必ずしも外枠の上端から延出していなくてもよい。反対に、係止開口部33,33を係止させる必要がない場合には、両脇に切り欠きのない延出片状の取っ手であってもよい。
また、両手で把持できる一対の取っ手に限らず、対を成さない片手用の取っ手であってもよいし、図7(a)に示すように、延出片状の一対の取っ手22’,22’を長めに形成するとともに、これらの各先端側に、それぞれ切り込み23,23を設け、図7(b)に示すように、これらを互いに噛み合わせることによって、各取っ手22’,22’を連結して「持ち手」のようにできる形態としてもよい。さらに、取っ手を外枠形成用シートとは別の部材から形成して、外枠形成用シートに接合してもよく、取っ手の構成には制限はない。
【0036】
また、ギャザリングカップに形成される係止開口部の位置、数、形状などは、取っ手の数、構成などに応じて適宜設定すればよい。例えば形状については、打ち抜きにより形成された形状に限定されず、単なる切れ目であってもよい。
【0037】
また、運搬時などにおけるギャザリングカップ30Aの外枠20Aからの落下をより防止するために、例えば図8に示すように、外枠20Aの下端20bに、ギャザリングカップ30Aの底部31が係止する爪部24を設けることが好ましい。この例の爪部24は、外枠20Aに、その下端20bから延出する延出片を等間隔で3ケ所形成し、これら延出片を内側に折り曲げることにより形成されている。
このような爪部24を設けることによって、外枠20A内にギャザリングカップ30Aが保持された場合に、ギャザリングカップ30Aの底部31が爪部24に係止する。そのため、外枠の取っ手にギャザリングカップの係止開口部が係止する形態でない使い捨て容器の場合などにおいて、このような爪部24を設けると、落下防止の点で効果的である。しかしながら、図1の例のように、外枠20Aの取っ手22,22にギャザリングカップ30Aの係止開口部33,33を係止する形態の場合に、外枠20Aの下端に爪部24を形成してもよい。爪部24は、この例では係止の安定性の点から3ケ所形成されているが、その数には特に制限はない。また、爪部を外枠とは別の部材から形成して、外枠の下端に接合してもよく、その構成にも制限はない。
【0038】
また、落下防止の観点からは、図9に示す使い捨て容器10Dのように、ギャザリングカップ30Dとして、その周壁部32に、周方向に沿って環状に形成された段差部34を1段備えたものを採用し、外枠20Dとして、その周壁部25においてギャザリングカップ30Dの段差部34に対応する高さに、段差部34が係止する段差用爪部26が形成されたものを採用することも好適である。図示例の段差用爪部26は、外枠20Dの周壁部25に切り込みを入れ、この切り込みに囲まれた部分を内側に折り曲げることで形成されたものであって、周方向に等間隔で3ケ所設けられている。
このようなギャザリングカップ30Dと外枠20Dとを組み合わせることによって、取っ手および係止開口部が形成されていない図9のような使い捨て容器10Dにおいても、ギャザリングカップ30Dの外枠20Dからの落下を効果的に防止することができる。しかしながら、外枠の取っ手にギャザリングカップの係止開口部を係止する形態の使い捨て容器において、ギャザリングカップに段差部を形成し、外枠に段差用爪部を形成してもよい。
【0039】
なお、図9(b)の外枠20Dにおいて、周方向における段作用爪部26の数は、この例では係止の安定性の点から3ケ所とされているが、その数には特に制限はない。また、段差用爪部を外枠とは別の部材から形成して、外枠に接合してもよく、その構成にも制限はない。また、図9(a)のギャザリングカップ30Dの段差部34は、1段とされているが、その段数も限定されず、必要に応じて複数段形成されてもよい。その場合には、段差用爪部も、段差部が適切に係止するように、段差部に応じた段数で適宜形成されればよい。
【0040】
さらに、運搬時などにおけるギャザリングカップの外枠からの落下をより防止するためには、例えばギャザリングカップの高さを外枠の高さよりも大きく設定し、外枠内にギャザリングカップを収めた際に、ギャザリングカップの周壁部が外枠の上端よりも上方に延出するようにする。そして、この延出した部分を外側に折り返して、折り返した部分が外枠の上端に引っ掛かるようにする。このように、ギャザリングカップを外枠の上端に引っ掛かるように形成することによっても、ギャザリングカップの落下を防止することができる。
【0041】
さらに、使い捨て容器を構成するギャザリングカップとしては、図10(a)に示すように、円形でなく多角形(この例では四角形)の底部31を有するギャザリングカップ30Eも使用できる。すなわち、本発明においてギャザリングカップとは、非金属製シートをプレス成型することにより、底部と、この底部の縁部から立設し、襞が形成されることにより漸次拡径した周壁部とを備えたものであればよく、底部の形状に制限はない。また、周壁部の襞は、図10(a)の例のように、底部31の角(四隅)に対応する位置などに部分的に形成されて、周壁部32をテーパー状にするものでもよく、必ずしも全周に均一に形成されていなくてもよい。
このようなギャザリングカップ30Eにも、帯状の外枠形成用シートの長手方向の両端側が互いに接合して形成され、上端側に向けて漸次拡径した無底筒状の図10(b)に示す外枠20Eを組み合わせることにより、図10(c)の使い捨て容器10Eを構成できる。
また、このような、いわゆる角型の使い捨て容器においても、外枠に取っ手を形成したり、また、取っ手に係止する係止開口部をギャザリングカップに形成してもよい。さらに、外枠の下端に爪部を設けてもよいし、ギャザリングカップに段差部を形成し、外枠に段差用爪部を形成してもよい。
【0042】
以上説明した使い捨て容器10A,10D,10Eの用途には特に制限はないが、食品の加熱、調理など、特に食品用として好適に使用される。
加熱、調理の対象となる食品としては、特に制限はないが、おでん、寄せ鍋、チーズフォンデュ、チョコレートフォンデュ、オイルフォンデュなどの鍋料理や、カレー、シチューなどが例示できる。
使い捨て容器10A,10D,10Eは、例えば、ホットプレートやフライパンなどの加熱手段の上に載置されて加熱、調理に使用される。また、この使い捨て容器10A,10D,10Eは、電子レンジでの使用にも適するため、電子レンジで予備加熱してから、ホットプレート上に移動させて使用するなど、種々の使用方法に対応でき、使用方法に制限はない。
【0043】
なお、先に例示した食品のうち、チーズフォンデュ用のチーズの溶融温度は100℃程度、チョコレートフォンデュ用のチョコレートの溶融温度は60℃程度であって、これらの溶融温度は、ホットプレートでの一般的な加熱温度よりも低温である。よって、ホットプレート上に使い捨て容器10A,10D,10Eを直に載置して、ホットプレートの一般的な加熱温度でチーズフォンデュやチョコレートフォンデュを行った場合には、チーズやチョコレートなどの内容物がギャザリングカップ30A,30D,30Eに焦げ付きやすくなる傾向がある。その際には、例えば図11に示すように、外枠20Aとギャザリングカップ30Aに加えて、ホットプレートHなどの加熱手段の加熱面と、ギャザリングカップ30Aとの間に介在させる円形の下敷き用シート50Aとから使い捨て容器10A’を構成し、下敷き用シート50AをホットプレートHの加熱面上に敷いてからギャザリングカップ30Aを載置して、チーズフォンデュやチョコレートフォンデュを行うことが好ましい。これにより、ホットプレートをその一般的な加熱温度に設定した場合でも、より低温でギャザリングカップ30Aの内容物を加熱でき、内容物の焦げ付きを防止することができる。
下敷き用シート50Aの材質は、外枠形成用シートに使用される非金属製シートとして先に例示した材質の中などから、適宜選択して使用できる。
【0044】
使い捨て容器10A,10A’,10D,10Eは、使い捨て容器10A,10A’,10D,10E単独で、あるいは、使い捨て容器10A,10A’,10D,10Eと、この使い捨て容器10A,10A’,10D,10Eに入った食品とを備えた容器入り食品の形態などで流通する。
特に、容器入り食品の形態においては、食品として、例えばチーズフォンデュに使用されるチーズ、チョコレートフォンデュに使用されるチョコレートなど、常温(20±15℃)では固体状態であって、加熱により流動状態となるものが好適に採用される。
また、下敷き用シート50Aを具備する使い捨て容器10A’に、食品を組み合わせた容器入り食品の場合には、その流通時においては、ギャザリングカップ30A内に食品を入れた後、下敷き用シート50Aを蓋としてギャザリングカップ30A内の食品上に載置してパッケージすることにより、流通時におけるギャザリング30Aの潰れ、変形を防止することもできる。
【0045】
使い捨て容器10A,10D,10Eのサイズにも特に制限はないが、食品用に使用される場合には、例えば外枠20A,20Dのサイズとして、下端20bの径が好ましくは5.0〜21.0cm、より好ましくは7.0〜18.0cmであり、上端20aから下端20bまでの長さが好ましくは1.5〜8.0cm、より好ましくは4.0〜6.0cmである。また、周壁部の好適なテーパー度は、上述したとおりである。また、ギャザリングカップ30A,30Dは、その底部31の径を外枠20A,20Dの下端20bの径と同程度とすることが好適である。また、ギャザリングカップ30A,30Dの上端32aから底部の縁部までの長さは、外枠20A,20Dの上端20aから下端20bまでの長さと同程度とすることが好適ではあるが、必要に応じて適宜設定できる。
また、図10に示すような角型の使い捨て容器10Eの場合には、外枠20Eの下端20bにおける径方向の最大長さ(この例の場合には対角線に相当する長さ)は、好ましくは5.0〜21.0cm、より好ましくは7.0〜18.0cmであり、その他の好適なサイズについては、使い捨て容器10A,10Dについて記載した範囲と同様である。
また、使い捨て容器10A’の具備する下敷き用シート50Aは、少なくともギャザリングカップ30Aの底部31全面を載置できる大きさ、形状とされることが好ましい。
【符号の説明】
【0046】
10A,10A’,10D,10E 使い捨て容器
20A,20D,20E 外枠
20a 外枠の上端
22 取っ手
30A,30D,30E ギャザリングカップ
33 係止開口部
40A〜40C 外枠形成用シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端側に向けて漸次拡径した無底筒状の外枠と、非金属製シートのプレス成型により形成され、前記外枠内に保持されるギャザリングカップとを備えた使い捨て容器であって、
前記外枠は、帯状の非金属製シートの前記長手方向の両端側が、互いに接合して形成されたことを特徴とする使い捨て容器。
【請求項2】
前記外枠は、前記両端側が互いに係合して形成されたことを特徴とする請求項1に記載の使い捨て容器。
【請求項3】
前記外枠には、取っ手が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の使い捨て容器。
【請求項4】
前記ギャザリングカップの周壁部には、前記取っ手に係止する係止開口部が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の使い捨て容器。
【請求項5】
前記ギャザリングカップが載置される下敷き用シートをさらに備えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の使い捨て容器。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の使い捨て容器と、該使い捨て容器に入った食品とを備えたことを特徴とする容器入り食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−189985(P2011−189985A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141836(P2010−141836)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【出願人】(592033688)株式会社平野紙器 (4)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【出願人】(000191320)王子特殊紙株式会社 (79)
【Fターム(参考)】