説明

使用権限情報を転送する方法および機器

【課題】使用権限情報の送信および変換に要するデータの量を低減する。
【解決手段】複数の判断分枝点を有するツリー構造の形態で階層的に構造化されていて使用制限または使用許可からなる使用権限情報を消費者用の電子機器へ転送する方法において、各判断分枝点において、その各判断分枝点の1つ以上の下位分枝に使用制限または使用許可を示す情報が存在するかどうか、を判定し、使用権限情報を電子機器へ転送する期間中において、或る判断分枝点の全ての下位分枝の各々において使用制限または使用許可が無いことを示す個々の情報を送信する代わりに、或る判断分枝点の全ての下位分枝が使用制限または使用許可を含まないことを表す1つのマークを送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用権限情報を転送する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
保護された音声および/または画像コンテンツを含む予め記録された記録媒体の、パーソナル・コンピュータ・プログラムによる不法(illegale)コピーに対して、その不法コピーを困難にしまたは防止する多くの技術的防御手段が提供されている。(訳註:括弧内に原語、代替訳を示す。)このようなコピー保護システムに対して、“コンテンツの保護およびコピー管理システム”(Content Protection und Copy Management-Systeme)(CPCMシステム)は、或る指定されたライセンス条件(Lizenz-Bedingungen)においてのみそのコンテンツの記録媒体の使用を許可する。CPCMシステムの基本的な思想は、そのコンテンツの許可されたそれぞれの使用に対して別々の信号送信(Signalisierungen:シグナリング)を与えることであり、その信号送信は、画像および/または音声コンテンツに付加され、適した受信機によって分析(ausgewertet:判定、評価)される。画像および/または音声の米国制作者(Produzenten)は、コンテンツのコピーのみならず、最小のディテール(Detail:詳細)にまでいたる前記コンテンツを用いて実行される任意の処理(Operation:操作)を制御する相異なる最大55までの信号送信を想定している。
【0003】
しかし、相異なる非常に多数のタイプの使用権限情報(Nutzungsberechtigungsinformationen:利用権限情報、使用許可情報)の送信には相当な量のデータを必要とし、画像および/または音声コンテンツのための伝送容量を犠牲にする。コンテンツの任意の使用に先立ってこのような使用が許可されているか否かについての検証を必要とするので、使用権限情報を分析することおよび前記コンテンツを使用する前にその実状を検証することが必要になる。そのために、通常は暗号(verschluesselt:符号化)形式でまたは電子透かし(Wasserzeichen:ウォーターマーク)として送信される全ての使用情報を暗号解読(entschluesselt:復号)または抽出し次いで分析することが要求される。また、受信機が後で付勢される場合でも、許可された使用情報の調査確認(Ermittlung)を可能にするために、使用権限情報を常にコンテンツと並行して繰り返し送信する必要がある。それによって、送信すべきデータの量が途方もなく増大する。2つの繰り返し送信間の時間は、前述のような分析の速度(Geschwindigkeit)と共に、そのようなコンテンツを最も早く表示させることができる時間の遅延を決定する。これら全ての理由によって、消費者用の電子機器におけるこれらの膨大な信号の変換は極めて複雑であり、例えばかなりの大きさの容量をもったプロセッサを必要とする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】ERNESTO DAMIAN, DTI - UNIVERSITA DI MILANO: "XML and Security" XML AND SECURITY, [Online] November 2003 (2003-11), XP002389008 Gefunden im Internet: URL:http://wise.vub.ac.be/ifipwg26/wfw/app/files/685/11/2003-11%20Ernesto%20amiani.ppt> Seite 2 Seite 5 - Seite 6 Seite 11 - Seite 12 Seite 28
【発明の開示】
【0005】
従って、本発明の目的は、使用権限情報の送信および変換に要するデータの量を低減することである。
【0006】
本発明によれば、この目的は独立請求項1および2の特徴を表す部分によって実現される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、ツリー構造形式の画像および/または音声コンテンツ用の使用権限情報の階層構造を概略的に示す図である。
【図2】図2は、画像および/または音声コンテンツ用の使用権限情報を転送するための、本発明による機器のブロック図である。
【図3】図3は、画像および/または音声コンテンツ用の使用権限情報を転送するための、本発明による代替的な機器の実施形態のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明を図示の実施形態を参照して以下で詳細に説明する。
【0009】
図2に示す本発明による機器のブロックにおいて、受信機が100で示されており、その受信機100はネットワーク(Netz)40から信号の一部として使用権限情報(Nutzungsberechtigungsinformationen:利用権限情報、使用許可情報)2と共に画像および/または音声コンテンツ1を受信する。ネットワーク40は、例えば、欧州放送連合(Europaeischen Rundfunkunion)のDVB(ディジタル・ビデオ・ブロードキャスティング)の規格またはインターネットの規格による放送送信ネットワークであってもよい。各信号の形態で使用権限情報2が画像および/または音声コンテンツ1と共に送信され、この情報は、ネガティブまたは否定的信号送信の場合、受信した画像および/または音声コンテンツの使用を、制限無しまたは或る定められた制限のいずれかを与えて許可する。代替構成として、ポジティブまたは肯定的信号送信の場合、許可された全ての可能な使用は許可として送信されてもよい。使用制限の例として、この分野で議論されているDVBコンテンツの保護およびコピー管理システムについてDVBで現在設けられている、“許可領域(Authorized Domains:許可範囲)”と“局所的環境(Local Environment:ローカル環境)”とに対する制限について、以下で考察する。これらの事例の1つでは、全ての機器が一世帯(Haushalt:家庭、宅内)に存在し“許可領域”を構成し、その領域ではそのコンテンツを使用することができるのはそれが適正に識別された場合である。それらの事例の他の例では、全ての機器がすぐ近傍の範囲に配置されていて“局所的環境”を構成し、その環境ではそのコンテンツを使用することができるのはそれが適正に識別された場合である。機器のすぐ近傍については、いわゆる近接試験(Proximity-Test)によってDVBの概念に従って検査(untersucht:試験)される。近接試験において、例えば受信機10は識別信号を消費者用電子機器400に送信して、その機器400に対してできるだけ速やかにその識別信号を返すよう要求する。識別信号が受信機10に返るのに要する時間遅延によって、機器10と400がどの程度離れているかについて結論を導き出すことが可能になる。例えば、同時にまたは並行して送信されたパラメータによって許容される時間遅延が決定される。
【0010】
受信機100において、受信部10と消費者用電子機器400の間に変換器30が結合されており、その変換器30は使用権限情報のデータ量を低減する。使用権限情報2のリストには、最初は、個々の使用を制限しまたは許可する個々の可能性が全て含まれている。しかし、このようなリストのコンテンツは図1に例示されている階層ツリー構造に従って論理的に構成されているので、このリストは変換器30で低減されて(reduziert:制限されて、軽減されて)、“減縮リスト”(verduennte Liste:希釈されたリスト)3として画像および/または音声コンテンツと共に消費者用電子機器400に送信される。
【0011】
図3に示す本発明による代替的な機器のブロック図では、変換器30は送信機200に先行して(vor:前の段に先に)送信側に配列されており、使用権限情報のリストを低減して“減縮リスト”3として前記送信機200に送信する。送信機200は次に“減縮リスト”3を画像および/または音声コンテンツと組み合わせてそれを送信または放送する(sendet)。この場合は、受信機100は、画像および/または音声コンテンツ1のみならず、使用権限情報の既に“減縮されたリスト”3をも受信する。そこで受信機100はその両方を消費者用電子機器400に送る。
【0012】
次に図1について以下で詳細に説明する。
【0013】
使用権限情報は常に1つ以上のコンテンツのタイプに関連している。1つのタイプのコンテンツに対する使用権限情報はツリー構造に従って階層的に構成または構造化されている。ネガティブ(negativer:否定的)信号送信の場合は、使用権限情報はそのコンテンツに対する個々の使用の制限を含み、ポジティブ(positiver:肯定的)信号送信の場合は、使用権限情報はコンテンツの使用に対する個々の使用許可を含んでいる。組み合わされたコンテンツの使用に対する全ての個々の制限または許可が使用権限情報を構成している。
【0014】
図1において、そこに示された各分枝(Aeste:ブランチ)101乃至507は、ネガティブ信号送信の場合のコンテンツに対する使用制限に対応している。分枝点11乃至43の各々において、下位の分枝(unten verzweigenden Aeste)の中の1つ以上の分枝で使用制限が伝えられ(signalisiert:信号送信され)または示されるか否かについて決定される。使用制限の形式のネガティブ信号送信の場合に下位の(nach unten:下向きの)主導的な(fuehrender:先頭の)分枝が使用されない場合、即ちこの分枝に対応する使用制限が使用されない場合には、全ての下位の分枝は使用制限を含まないので、これらの全ての下位分枝が重要でないまたは関係ないことを表す1つのマーク(Markierung:標識)のみが、それら下位に位置する全ての分枝の各々で使用に制限が無いことを伝え(signalisieren:信号送信する)または示す個々の情報の代わりに、送信される。それによって、実際には全ての可能性のある使用制限を伴った全ての可能性のある分枝の使用は実質的には決して行われないので、送信されるべきデータの量を著しく減少させることができる。使用許可の形式のポジティブ信号送信の場合にも同様の事象が生じる。下位の(下向きの)主導的な分枝が使用されない場合、即ちこの分枝に対応する使用許可が使用されない場合には、全ての下位の分枝は使用許可を含まないので、これらの全ての下位分枝が重要でないまたは関係がないことを表す1つのマークのみが、下位に位置する各分枝に対する許可の不存在を伝えまたは示す個々の情報の代わりに、送信される。
【0015】
この方法の特定の典型例の実施形態は、第1の分枝点11において2つの分枝201および202が開始し、分枝201で、いわゆる“許可領域”でのコンテンツの使用の制限を表し(bedeutet)、一方、分枝202で、いわゆる“局所的環境(地域的環境)”でのコンテンツの使用の制限を表す。
【0016】
分枝点11において“許可領域”または“局所的環境”に対応する使用制限が使用されなければ、後続の分枝201および202は何らの使用制限をも含まないという情報信号のみが送信される。これは、例えば自由に使用できるコンテンツに対して生じ得るであろう。“許可領域”または“局所的環境”のいずれかの概念による制限のみに従って使用が行われると、この分枝だけに対して使用制限だけを含む信号が伝えられる(signalisiert)か、または使用されない分枝に対して使用制限を含まない信号が伝えられる。
【0017】
この方法の典型例の実施形態では、2つの分枝201および202が、“許可領域”または“局所的環境”に対する使用制限に対応する。分枝301乃至303、404、および501乃至505は、“許可領域(Authorized Domain:許可範囲)”内の使用制限に関するさらなる詳細、例えば地方(Land:国)に対する地理的制限、または例えば1週間やまたは最大90分時間遅延で時間遅延再生するというような時間に関する制限、を指定または規定する。一方、分枝304、305、405乃至407は、例えばすぐ近傍(unmittelbaren Naehe)を決定するためのパラメータのような、“局所的環境”に対する制限に関するさらなる詳細を記述する。
【0018】
上位からの幾つかの分枝は、また、分枝点43および分枝506および507に示されているように、成長し、再び合体しまたは再結合する。使用制限の形式のネガティブ信号の送信によって、両方の使用制限の共通部分(Schnittmenge:合流部分、交点、交わり部分)、即ちさらに小さい使用範囲(Bereich:領域)を作り出す。この方法の典型例の実施形態では、2つの分枝201と202が、“許可領域”または“局所的環境”に対する使用制限にそれぞれ対応する。このことは、コンテンツの使用がいわゆる“局所的な許可領域(Local Authorized Domains)”に制限されることを意味し、これは、“局所的環境”の伝えられた(signalisierten)全ての制限と“許可領域”の伝えられた全ての制限の共通部分(Schnittmenge)に対応する。
【0019】
さらに、許可された使用を決定するメカニズム(Mechanismen:機構)に対する相異なる要求を、相異なる使用制限に対応する相異なる分枝に対して設定する(festgelegt:規定する、定める)こともできる。これは、例えば、機器の地理的受信位置の毎日のチェック(Pruefung:検査)、または機器が“許可された領域”に属するか否かについての時間毎のチェックである。これによって、コンテンツを使用することができるか否かについて判断(Entscheidungsfindung:判定)するプロセスをさらに高速化する(Beschleuningung)ことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意の種類の伝送ネットワークからの音声コンテンツおよび画像コンテンツのうちの少なくとも一方と共に暗号形式でまたは非暗号形式で転送装置によって受信された使用権限情報を消費者用の電子機器へ転送する方法であって、
前記使用権限情報は、複数の判断分枝点を有するツリー構造の形態で階層的に構造化されていて、使用制限または使用許可からなり、
各判断分枝点において、その各判断分枝点の1つ以上の下位分枝に前記使用制限または前記使用許可を示す情報が存在するかどうかを判定し、
前記使用権限情報を前記消費者用の電子機器へ転送する期間中において、或る判断分枝点の全ての下位分枝の各々において前記使用制限または前記使用許可が無いことを示す個々の情報を送信する代わりに、前記或る判断分枝点の全ての下位分枝が前記使用制限または前記使用許可を含まないことを表す1つのマークを送信する、
使用権限情報を転送する方法。
【請求項2】
伝送ネットワークからの音声コンテンツおよび画像コンテンツのうちの少なくとも一方と共に暗号形式でまたは非暗号形式で受信された使用権限情報を消費者用の電子機器へ転送する機器であって、
前記使用権限情報は、複数の判断分枝点を有するツリー構造の形態で階層的に構造化されていて、使用制限または使用許可からなり、
各判断分枝点において、その各判断分枝点から1つ以上の下位分枝に前記使用制限または前記使用許可を示す情報が存在するかどうかを判定し、
前記使用権限情報を前記消費者用の電子機器へ転送する期間中において、或る判断分枝点の全ての下位分枝の各々において前記使用制限または前記使用許可が無いことを示す個々の情報を送信する代わりに、前記或る判断分枝点の全ての下位分枝が前記使用制限または前記使用許可を含まないことを表す1つのマークを送信する
処理を実行する機器。
【請求項3】
任意の種類の伝送ネットワークからの信号において音声および/または画像コンテンツと共に暗号形式でまたは非暗号形式で受信された使用権限情報を転送する方法であって、
特徴として、転送に先立って、ツリー構造の形態で階層的に構成された前記使用権限情報は、前記ツリーの空の分枝が認識され且つ無関係であるとしてマークされるように低減され、さらに前記使用権限情報の転送期間において、前記無関係であるとしてマークされた前記ツリーの分枝が送信されないものである、
使用権限情報を転送する方法。
【請求項4】
任意の種類の伝送ネットワークからの信号において音声および/または画像コンテンツと共に暗号形式でまたは非暗号形式で受信された使用権限情報を転送する機器であって、
特徴として、転送に先立って、ツリー構造の態様で階層的に構成された前記使用権限情報は、前記ツリーの空の分枝が認識され且つ無関係であるとしてマークされるように低減され、さらに前記使用権限情報の転送期間において、前記無関係であるとしてマークされた前記ツリーの分枝が送信されないよう構成された、
使用権限情報を転送する機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−213162(P2012−213162A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−101973(P2012−101973)
【出願日】平成24年4月27日(2012.4.27)
【分割の表示】特願2008−521816(P2008−521816)の分割
【原出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(507061959)インスティトゥート フュール ルントフンクテヒニク ゲー・エム・ベー・ハー (5)
【氏名又は名称原語表記】Institute fuer Rundfunktechnik GmbH
【住所又は居所原語表記】Floriansmuehlstrasse 60 D−80939 Muenchen, Bundesrepublik Deutschland
【復代理人】
【識別番号】100145023
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 学
【Fターム(参考)】