説明

使用済み紙おむつの処理方法

【課題】廃棄処理が容易な紙おむつを簡単な装置および工程により処理可能で、且つ地球環境に優しい使用済み紙おむつの処理方法を提供する。
【解決手段】生分解性の素材の吸水ポリマー4と、内側不織布シート3、外側シート2、パルプ材31の少なくとも一つおよび接着剤が生分解性で且つ80℃から90℃の高温水に溶ける水溶性の素材を含む素材で構成された紙おむつ1を生分解性で且つ80℃から90℃の高温水に溶ける水溶性の素材で構成された回収袋に収容して回収し、回収袋ごと前記水溶性の素材が溶ける温度よりも高い温度に昇温された高温水で処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済み紙おむつの処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に使い捨ての紙おむつは、非透水カバーシートと透水性不織布との間に吸水ポリマーを内包し、この吸水ポリマーが水分を含んで膨潤することにより、排泄物を吸収することができるように構成されている。
【0003】
このような紙おむつを使用した後は、焼却するか或いは埋め立てることにより処理されている。
【0004】
ところが、焼却処理をするためには多大なエネルギーを消費するとともに、多くの二酸化炭素を排出するので、地球環境に悪影響を及ぼす。一方、使用済み紙おむつが産業廃棄物になる市町村もあり、コストがかかるといった問題が生じていた。
【0005】
そこで、使用済みの紙おむつの容積を減少させるとともに再利用するために、使用済み紙おむつを粉砕機で分断して構成成分に分解分離し、その後塩化カルシウムを投入した分解槽で高吸水性ポリマーを塩化カルシウムでモノマーに分解して水溶化し、パルプ成分を分離回収する方法(例えば、特許文献1参照。)や、使用済み紙おむつを解体、消毒・消臭し、紙おむつの構成成分に分離回収する使用済み紙おむつの処理方法、及びその処理装置(例えば、特許文献2参照。)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−84533号公報
【特許文献2】特開2003−19169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記した従来の使用済み紙おむつの処理方法では、使用済みの紙おむつを分断して分離したり濾過する工程が必要であるため、処理システムが大掛かりになるとともに、処理方法が複雑となる。このため、処理するためにエネルギーを必要としたり、大掛かりな処理施設を設けるためにコストが嵩むといった問題が生じる。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑み創案されたもので、廃棄処理が容易な紙おむつを簡単な装置および工程により処理可能で、且つ地球環境に優しい使用済み紙おむつの処理方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明は、紙おむつを使用した後に回収し廃棄するための処理方法であって、前記紙おむつは、外面側の外側シートと装着者の肌が触れる内側不織布シートとの間に吸水ポリマーを介在するとともに前記内側不織布シートの外側にはパルプ材が配置され、前記吸水ポリマーが生分解性の素材で構成されるとともに、前記内側不織布シート、外側シート、パルプ材の少なくとも一つが生分解性で且つ80℃から90℃の高温水に溶ける水溶性の素材を含む素材で構成されたものであって、且つ前記内側不織布シートと外側シートとが、生分解性で且つ80℃から90℃の高温水に溶ける水溶性の素材で構成された接着剤を介して貼着されており、使用済みの前記紙おむつを生分解性で且つ80℃から90℃の高温水に溶ける水溶性の素材で構成された回収袋に収容して回収し、この回収した使用済みの紙おむつを回収袋ごと回転ドラムを備えた処理機に投入し、該回転ドラム内において、前記使用済みの紙おむつを回収袋ごと前記水溶性の素材が溶ける温度よりも高い温度に昇温された高温水に浸漬して攪拌し、該高温水に回収袋および紙おむつの水溶性素材を溶かすとともに、吸水ポリマーその他の紙おむつの構成材料および排泄物からなる不溶物を分散させ、前記高温水に該水溶性素材が溶けた溶解液と、不溶物のうち少なくとも吸水ポリマーと排泄物とを下水道または浄化槽に排出することを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、吸水ポリマーとして生分解性の素材を使用しているので、吸水ポリマーを焼却したり埋め立てる必要がなく、放置していても微生物等の作用により自然に分解する。しかも、吸水ポリマーは、水分を吸収して膨潤し、使用済み紙おむつの大部分を占めているので、従来この吸水ポリマーを含めた紙おむつ全体を焼却処分をする際に大量に発生していた二酸化炭素の排出が大幅に抑制され、地球環境に優しい。
【0011】
なお、本発明でいう生分解性の素材とは、自然環境下で、合理的短期間で分解され分子量が低下する素材であり、分解に要する期間は、この素材が曝されている環境条件にもよるが、たとえば、ISO14851に定められる生分解性試験環境下でおよそ6ヶ月以内に分子量が1万以下に低下するものである。本発明で用いる生分解性の素材は、下水処理場から排出される沈殿廃棄物を処理する埋め立て処理場等においておよそ3年以内に分解消滅するものが好ましい。
【0012】
また、内側不織布シート、外側シート、パルプ材の少なくとも一つが生分解性で且つ80℃から90℃の高温水に溶ける水溶性の素材を含む素材で構成されているので、人間の体温や排泄物の温度程度では上記素材が溶けることがなく、上記素材の耐久性が劣化することがない。したがって、紙おむつの使用時には、従来の紙おむつと同様に使用することができる。
【0013】
一方、前記水溶性の素材が溶ける温度よりも高い温度に昇温された高温水には上記素材が溶けるので、この溶けた素材部分から吸水ポリマーが外部に放出されやすくなる。したがって、例えば前記水溶性の素材が溶ける温度よりも高い温度に昇温した高温水に使用済みの紙おむつを浸漬して攪拌した場合、上記素材が溶けるともに吸水ポリマーその他の紙おむつの構成材料および排泄物からなる不溶物が分散される。この水溶性素材が溶けた溶解液と、不溶物のうち少なくとも吸水ポリマーと排泄物とを下水道または浄化槽に排出すれば、吸水ポリマー、上記素材が生分解性の素材で形成されているので、微生物等の作用により自然に分解する。そうすると、吸水ポリマーや排泄物以外の不溶物のみを焼却或いは埋め立て処理すれば良いので、焼却しても排出される二酸化炭素は少量であり、埋め立てる場合であっても、少量で済むために地球環境に優しい。
【0014】
なお、本発明において、紙おむつとは、フラットタイプの紙おむつのほか、テープタイプの紙おむつ、パンツタイプの紙おむつ、尿とりパッド、ベッド用パッド、失禁パッド、ペット用のおむつ・シーツを含むものとする。
【0015】
また、上記構成の紙おむつにおいて、前記内側不織布シートと外側シートとを、生分解性で且つ80℃から90℃の高温水に溶ける水溶性の素材で構成された接着剤を介して貼着しているので、接着剤が高温水に溶けるとともに微生物等の作用により自然に分解するため、より一層地球環境に優しい。また、80℃から90℃の高温水に接着剤が溶けるので、このように接着剤が溶けた場合は外側シートと内側不織布シートとが分離されるために吸水ポリマーが外部に放出されやすくなる。したがって、例えば前記水溶性の素材が溶ける温度よりも高い温度に昇温された高温水に使用済みの紙おむつを浸漬して攪拌した場合、接着剤が溶けて外側シートと内側不織布シートとが分離されるともに吸水ポリマーその他の紙おむつの構成材料および排泄物からなる不溶物が分散される。この接着剤が溶けた溶解液と、不溶物のうち少なくとも吸水ポリマーと排泄物とを下水道または浄化槽に排出すれば、吸水ポリマーが生分解性の素材で形成されているので、微生物等の作用により自然に分解する。そうすると、吸水ポリマーや排泄物以外の不溶物のみを焼却或いは埋め立て処理すれば良いので、焼却しても排出される二酸化炭素は少量であり、埋め立てる場合であっても、少量で済むために地球環境に優しい。
【0016】
さらに、使用済みの前記紙おむつを生分解性で且つ80℃から90℃の高温水に溶ける水溶性の素材で構成された回収袋に収容して回収するので、回収袋自体が前記水溶性の素材が溶ける温度よりも高い温度に昇温された高温水に溶ける。したがって、上記と同様の使用済み紙おむつの廃棄処理を回収袋ごと行うことができるので、手間がかからず簡単であるとともに、排泄物に手を触れることなく処理できるので衛生的である。さらに回収袋が微生物等の作用により自然に分解するので地球環境に優しい。
【0017】
さらにまた、この回収した使用済みの紙おむつを回収袋ごと回転ドラムを備えた処理機に投入し、該回転ドラム内において、前記使用済みの紙おむつを回収袋ごと前記水溶性の素材が溶ける温度に昇温された高温水に浸漬して攪拌し、該高温水に回収袋および紙おむつの水溶性素材を溶かすとともに、吸水ポリマーその他の紙おむつの構成材料および排泄物からなる不溶物を分散させ、前記高温水に該水溶性素材が溶けた溶解液と、不溶物のうち少なくとも吸水ポリマーと排泄物とを下水道または浄化槽に排出するので、簡単な構造の処理機により、使用済み紙おむつを好適に処理することができる。
【0018】
本発明は、紙おむつを使用した後に回収し廃棄するための処理方法であって、前記紙おむつは、外面側の外側シートと装着者の肌が触れる内側不織布シートとの間に吸水ポリマーを介在するとともに前記内側不織布シートの外側にはパルプ材が配置され、前記吸水ポリマーが生分解性の素材で構成されるとともに、前記内側不織布シート、外側シート、パルプ材の少なくとも一つが生分解性で且つ80℃から90℃の高温水に溶ける水溶性の素材を含む素材で構成されたものであって、且つ前記内側不織布シートと外側シートとが、生分解性で且つ80℃から90℃の高温水に溶ける水溶性の素材で構成された接着剤を介して貼着されており、使用済みの前記紙おむつを生分解性で且つ80℃から90℃の高温水に溶ける水溶性の素材で構成された回収袋に収容して回収し、この回収した使用済みの紙おむつを回収袋ごと水蒸気が供給されるチャンバを備えた処理機に投入し、該チャンバ内において、水蒸気により回収袋および紙おむつの水溶性素材を溶かし、この溶解液と、不溶物のうち少なくとも吸水ポリマーと排泄物とを下水道または浄化槽に排出することを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、前記使用済みの紙おむつ回収袋に収容して回収し、水蒸気が供給されるチャンバを備えた処理機に投入し、該チャンバ内において、水蒸気により回収袋および紙おむつの水溶性素材を溶かしているので、この溶けた部分から吸水ポリマーが外部に放出されやすくなり、この吸水ポリマーとその他の紙おむつの構成材料および排泄物とが容易に分散される。したがって、水溶性素材の溶解液と、少なくとも吸水ポリマーと排泄物とを下水道または浄化槽に排出すれば、生分解性の素材で形成されている吸水ポリマーが微生物等の作用により自然に分解する。そうすると、吸水ポリマーや排泄物以外の不溶物のみを焼却或いは埋め立て処理すれば良いので、焼却しても排出される二酸化炭素は少量であり、埋め立てる場合であっても、少量で済むので、地球環境に優しい。
【0020】
また、簡単な構造の処理機により、使用済み紙おむつを好適に処理することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、廃棄処理が容易な紙おむつを簡単な装置および工程により処理可能で、且つ地球環境に優しい使用済み紙おむつの処理方法を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る紙おむつを示す平面図である。
【図2】図1の紙おむつの断面を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る紙おむつの処理方法の概略を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る使用済み紙おむつの処理方法の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0024】
<第1実施形態>
図1は本実施形態に係る紙おむつ1の概略を示しており、図2はこの紙おむつ1の断面の一部を示している。
【0025】
この紙おむつ1は、テープタイプの紙おむつであって、外面側の外側シート2と装着者の肌が触れる内側不織布シート3との間に吸水ポリマー4を介在したもので構成されている。
【0026】
外側シート2は、例えば、非透水性の塩化ビニルで形成されており、防水効果を奏することにより、水分が外部に漏れることが防止されている。
【0027】
なお、外側シート2を形成する素材は、上記した塩化ビニルに限定されるものではなく、例えば、80℃から90℃の高温水に溶けるように設定されたポリビニルアルコールで形成されている。外側シート2をこのようなポリビニルアルコールで形成した場合は、80℃から90℃の高温水に溶けるため、使用済み紙おむつの処理が一層容易になる。また、この場合外側シート2が生分解性であるから微生物等の作用により自然に分解するので使用済み紙おむつの処理が一層容易で且つ地球環境に優しい。
【0028】
内側不織布シート3は、装着者の肌が直接触れるものであって、生分解性で且つ80℃から90℃の高温水に溶ける水溶性の素材、例えば、ポリビニルアルコールで構成されている。
【0029】
なお、内側不織布シート3が80℃から90℃の高温水に溶けるように設定するので、この溶ける温度よりも高い温度に昇温された高温水に浸漬することにより、内側不織布シート3を溶かすとともに殺菌効果をも奏するので、好適である。このように内側不織布シート3が溶ける温度設定は、公知の技術、例えばシートの原料となるPVA系ポリマーの重合度やケン化度の違いや延伸条件の制御、或いは原料の構成の相違により制御されるものである。本発明において、温度設定の条件や制御に関しては上記した説明を援用するものである。
【0030】
また、内側不織布シート3は、生分解性をも有しているので、微生物等の作用により自然に分解するので使用済み紙おむつの処理が一層容易で且つ地球環境に優しい。
【0031】
本実施の形態では、内側不織布シート3の全体が80℃から90℃の高温水に溶ける水溶性の素材で構成されているが、内側不織布シート3の一部が80℃から90℃の高温水に溶ける水溶性の素材で形成されたものであってもよい。
【0032】
パルプ材31は、内側不織布シート3の外側に配置されるものであって、生分解性で且つ80℃から90℃の高温水に溶ける水溶性の素材、例えば、ポリビニルアルコールを粉砕したもので形成されている。したがって、使用済み紙おむつの処理が一層容易で且つ地球環境に優しい。
【0033】
なお、パルプ材31は、一般的に使用されるパルプ成分で形成してもよく、例えばティッシュペーパーを粉砕したものでもよい。また木材紙に限られるものではなく、植物繊維で形成されたものであってもよい。この場合においても水溶性素材で構成すれば、使用済み紙おむつの処理が容易である。
【0034】
上記した外側シート2と内側不織布シート3のそれぞれの外周縁は、生分解性で且つ80℃から90℃の高温水に溶ける水溶性の素材、例えば、ポリビニルアルコールで形成された接着剤(図示省略)を介して貼着されている。このような接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコールを保護コロイドとして酢酸ビニルモノマーを乳化重合して得られた酢酸ビニルポリマーを使用して形成されたものが挙げられる。
【0035】
また、外側シート2、内側不織布シート3、パルプ材31、および接着剤は、そのすべてが生分解性で且つ80℃から90℃の高温水に溶ける水溶性の素材、例えば、ポリビニルアルコールで形成されていても、あるいはこれらのうちのいずれがポリビニルアルコールで形成されているものの組み合わせであってもよい。
【0036】
吸水ポリマー4は、ポリアスパラギン酸或いはポリグルタミン酸ナトリウムの生分解性の素材で形成されており、微生物等の作用により自然に分解して使用済み紙おむつの処理が容易になるように図られている。
【0037】
本実施の形態に係る紙おむつ1は、上記した構成材料のほかに、紙おむつ1を装着者に取り付けるための面ファスナー11aを有する係合部材11、股部分からの漏れを防止するための漏れ防止ギャザー12、紙おむつ1の外周を伸縮させて快適に装着するためのゴム部材13などが含まれている。
【0038】
なお、テープタイプの紙おむつ1の構成の概略は上記したとおりであるが、パンツタイプの紙おむつは、このテープタイプのものを立体成形した構造であり、また、フラットタイプの紙おむつ、尿とりパッド、ベッド用パッド、失禁パッド、ペット用のおむつ・シーツについても、基本的な外側シート2、内側不織布シート3、吸水ポリマー4の構成はいずれも同様である。
【0039】
次に、上記した紙おむつ1を使用した後に回収し廃棄する処理方法について、内側不織布シート3をポリビニルアルコールで形成した場合を例にとって説明する。
【0040】
まず、使用済みの紙おむつ1を回転ドラムを備えた処理機に投入する。
【0041】
そして、処理機の回転ドラム内において、使用済みの紙おむつ1を紙おむつ1を構成する水溶性素材が溶ける温度よりも高い温度に昇温された高温水に浸漬して攪拌し、該高温水に紙おむつ1の内側不織布シート3の水溶性素材を溶かすとともに、吸水ポリマー4その他の紙おむつの構成材料および排泄物からなる不溶物を分散させる。
【0042】
続いて、この内側不織布シート3の水溶性素材が溶けた溶解液と、不溶物のうち少なくとも吸水ポリマー4と排泄物とを下水道または浄化槽に排出する。
【0043】
なお、内側不織布シート3は80℃から90℃の高温水に溶けるように設定されており、この水溶性の素材が溶ける温度よりも高い温度に昇温された高温水に浸漬することにより、内側不織布シート3を溶かすとともに殺菌効果をも奏するので、感染症予防に有効となる。
【0044】
また、上記した使用済み紙おむつの処理において、使用済み紙おむつ1を回収する際に、使用済みの紙おむつ1を80℃から90℃の高温水に溶ける水溶性の素材で構成された回収袋(図示省略)に収容して回収すると、回収袋ごと処理することができるので、衛生的であり且つ利便性が高い。
【0045】
この回収袋は、例えば、ポリビニルアルコールで形成されており、この場合、生分解性で且つ水溶性であるから、使用済み紙おむつの処理がより一層容易になる。
【0046】
回収袋に使用済み紙おむつを収容して処理するには、まず、回収した使用済みの紙おむつ1を回収袋ごと回転ドラムを備えた処理機に投入する。
【0047】
そして、処理機の回転ドラム内において、使用済みの紙おむつ1を回収袋ごと前記した水溶性素材が溶ける温度よりも高い温度に昇温された高温水に浸漬して攪拌し、該高温水に回収袋および紙おむつ1の内側不織布シート3の水溶性素材を溶かすとともに、吸水ポリマー4その他の紙おむつの構成材料および排泄物からなる不溶物を分散させる。
【0048】
続いて、この内側不織布シート3の水溶性素材と回収袋が溶けた溶解液と、不溶物のうち少なくとも吸水ポリマー4と排泄物とを下水道または浄化槽に排出する。
【0049】
なお、回収袋は80℃から90℃の高温水に溶けるように設定されており、この水溶性の素材が溶ける温度よりも高い温度に昇温された高温水に浸漬することにより、回収袋を溶かすとともに殺菌効果をも奏するので、感染症予防に有効となる。
【0050】
次に、上記した使用済み紙おむつ1の処理方法に使用される処理機について図面を参照しながら説明する。
【0051】
この処理機5は、図3に示すように、回転自在に配設された回転ドラム(図示省略)と、該回転ドラムに高温水を供給する供給手段と、該回転ドラム内の前記高温水に該水溶性素材が溶けた溶解液と、不溶物のうち少なくとも吸水ポリマー4と排泄物とを下水道または浄化槽に排出する排出手段とが備えられている。
【0052】
回転ドラムに高温水を供給する供給手段は、給水手段、蒸気ボイラー51、温水タンク52、給水タンク53とから主要部が構成されており、温水タンク52に供給された水に蒸気ボイラー51から蒸気を供給して水の温度を上昇させ、給水手段から供給された水を一時貯留した給水タンク53からの水とともに処理機5内に供給される。処理機5内の蒸気は再び蒸気ボイラー51に供給され、蒸気が循環されるようになされている。
【0053】
このように処理機5が構成され、給水・蒸気供給のための配管がなされているので、処理機5は、通常の洗濯機において、高温水に対する耐性を備えるように形成すれば使用することができる。また、特別な配管を施さなくても、通常の洗濯機・乾燥機に対する配管を利用することができるので、例えば洗濯機に処理機を並設して使用することも可能である。したがって、処理機5を設置するために、特別に大掛かりな工事等を行う必要がない。
【0054】
また、排出手段は、排水パイプ54を有しており、排水パイプ54の口径より大きな不溶物、例えば外側シート2は、回転ドラム内に残留して、容易に取り出すことができるように図られている。
【0055】
なお、処理機から排水した後は、浄化槽などにおいて排水リントやスリットスクリーンを用いることによりゴム部材などを取り除くことができる。
【0056】
次に、本発明の第1実施形態の一例としての実施例について説明する。
【0057】
テープタイプの紙おむつにおいて、外側シート2、面ファスナー11a、面ファスナーの係合部材11、漏れ防止ギャザー12をポリプロピレンの不織布で形成し、内側不織布シート3をポリビニルアルコールで形成(内側不織布シート3をポリビニルアルコールのシート材で形成し、パルプ材31をポリビニルアルコールで形成された不織布を粉砕したもので形成)した。
【0058】
なお、内側不織布シート3を形成しているポリビニルアルコールは、例えば株式会社クラレ製の水溶性ポリビニルアルコール繊維、製品名クラロンK−IIを用いており、溶解温度が設定可能に構成されている。本実施例では80℃で水に溶けるように設定されたものを用いた。
【0059】
吸水ポリマー4は、ポリアスパラギン酸の生分解性素材で形成されている。
【0060】
このように構成された紙おむつ1に水分500mlを吸収させた。
次に、この紙おむつ1をポリビニルアルコールで形成された回収袋に入れて回収袋ごと処理機に投入した。
【0061】
処理機において、90℃に昇温された高温水に浸漬して10分間攪拌し、3分間脱水処理を行った。
【0062】
内側不織布シート3と回収袋は水に溶けているので、その後、処理機内の内側不織布シート3と回収袋が溶けた溶解液と、不溶物のうち吸水ポリマーと排泄物とを浄化槽に排出した。
【0063】
なお、外側シート2、面ファスナー11a、面ファスナーの係合部材11、漏れ防止ギャザー12、およびゴム部材13は取り出して廃棄処分を行った。
【0064】
この結果、処理機に投入して1分から2分後に紙おむつ1の内側不織布シート3と回収袋が溶けてなくなり、吸水ポリマー4が分離された。
【0065】
また、浄化槽に流れた吸水ポリマー4は、2ヶ月から3ヶ月の間に二酸化炭素と水に分解された。
【0066】
この一連の処理において、紙おむつ1の重量を計量したところ、初期重量が140gで、水500mlを加えた後の重量が640gであった。また、処理機投入後の吸水ポリマー4・内側不織布シート3以外の紙おむつ1構成材料の重量が108gで、この構成材料を6時間自然乾燥させると80gとなった。したがって、廃棄処理するのは、水分を含んで膨潤した紙おむつ1の重量の約8分の1程度に軽減され、廃棄に要するエネルギーや処理コストが飛躍的に低減されることが証明される。
【0067】
<実施形態2>
次に、本発明の他の実施形態について説明する。
【0068】
この実施形態は、上記した第1実施形態における紙おむつ1の処理方法および処理機が異なるのみであって、紙おむつ1や回収袋の構成は同様である。したがって、異なる点のみ説明し、同一のものについては説明を省略する。
【0069】
本実施形態の処理方法では、使用済みの紙おむつ1を回収袋に収容して回収し、この回収した使用済みの紙おむつ1を回収袋ごと水蒸気が供給されるチャンバを備えた処理機に投入し、該チャンバ内において、水蒸気により回収袋および紙おむつ1の内側不織布シート3の水溶性素材を溶かすとともに、このよう溶解液と、少なくとも吸水ポリマー4と排泄物とを下水道または浄化槽に排出する点に特徴がある。
【0070】
なお、ここで用いられる使用済み紙おむつの処理機は、使用済み紙おむつ1を投入するチャンバと、このチャンバに水蒸気を供給する水蒸気供給手段を備えたものであればよく、一般的に用いられているオートクレープ装置を転用することが可能である。このオートクレープ装置を用いた場合、約120度の高温高圧蒸気により処理するため滅菌処理が施され、感染症対策として極めて有効であるとともに、簡単な構造の処理機により、使用済み紙おむつを好適に処理することができる。
【0071】
以上、本発明の実施の形態について、一例としての実施例について説明したが、上述した実施例に限られるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、廃棄処理が容易な紙おむつを簡単な装置および工程により処理可能で、且つ地球環境に優しい使用済み紙おむつの処理方法に適用でき、有用である。
【符号の説明】
【0073】
1 紙おむつ
2 外側シート
3 内側不織布シート
31 パルプ材
4 吸水ポリマー
5 処理機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙おむつを使用した後に回収し廃棄するための処理方法であって、
前記紙おむつは、外面側の外側シートと装着者の肌が触れる内側不織布シートとの間に吸水ポリマーを介在するとともに前記内側不織布シートの外側にはパルプ材が配置され、前記吸水ポリマーの生分解性の素材で構成されるとともに、前記内側不織布シート、外側シート、パルプ材の少なくとも一つが生分解性で且つ80℃から90℃の高温水に溶ける水溶性の素材を含む素材で構成されたものであって、且つ前記内側不織布シートと外側シートとが、生分解性で且つ80℃から90℃の高温水に溶ける水溶性の素材で構成された接着剤を介して貼着されており、
使用済みの前記紙おむつを生分解性で且つ80℃から90℃の高温水に溶ける水溶性の素材で構成された回収袋に収容して回収し、この回収した使用済みの紙おむつを回収袋ごと回転ドラムを備えた処理機に投入し、
該回転ドラム内において、前記使用済みの紙おむつを回収袋ごと前記水溶性の素材が溶ける温度よりも高い温度に昇温された高温水に浸漬して攪拌し、該高温水に回収袋および紙おむつの水溶性素材を溶かすとともに、吸水ポリマーその他の紙おむつの構成材料および排泄物からなる不溶物を分散させ、
前記高温水に該水溶性素材が溶けた溶解液と、不溶物のうち少なくとも吸水ポリマーと排泄物とを下水道または浄化槽に排出することを特徴とする使用済み紙おむつの処理方法。
【請求項2】
紙おむつを使用した後に回収し廃棄するための処理方法であって、
前記紙おむつは、外面側の外側シートと装着者の肌が触れる内側不織布シートとの間に吸水ポリマーを介在するとともに前記内側不織布シートの外側にはパルプ材が配置され、前記吸水ポリマーが生分解性の素材で構成されるとともに、前記内側不織布シート、外側シート、パルプ材の少なくとも一つが生分解性で且つ80℃から90℃の高温水に溶ける水溶性の素材を含む素材で構成されたものであって、且つ前記内側不織布シートと外側シートとが、生分解性で且つ80℃から90℃の高温水に溶ける水溶性の素材で構成された接着剤を介して貼着されており、
使用済みの前記紙おむつを生分解性で且つ80℃から90℃の高温水に溶ける水溶性の素材で構成された回収袋に収容して回収し、この回収した使用済みの紙おむつを回収袋ごと水蒸気が供給されるチャンバを備えた処理機に投入し、
該チャンバ内において、水蒸気により回収袋および紙おむつの水溶性素材を溶かし、この溶解液と、不溶物のうち少なくとも吸水ポリマーと排泄物とを下水道または浄化槽に排出することを特徴とする使用済み紙おむつの処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−172599(P2009−172599A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−42158(P2009−42158)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【分割の表示】特願2008−190911(P2008−190911)の分割
【原出願日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(500294800)松本ナ−ス産業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】