説明

供給材料の統合処理を用いるキシレン製造方法及び装置

供給流の芳香族トランスアルキル化及びオレフィン減少のための方法及び装置を開示する。トランスアルキル化条件によって、供給流に対して増加したキシレン濃度及び減少したオレフィン濃度を有する生成物が与えられる。本方法及び装置をキシレン製造設備において用いて、水素処理、水素化、或いはクレー及び/又は分子篩による処理のような供給材料の予備処理の必要性を最小にするか又は回避することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は芳香族トランスアルキル化方法及び装置に関する。特に、キシレンを製造するための芳香族物質のトランスアルキル化のような本発明方法においては、供給材料のオレフィン含量を減少させることができる。本発明は、キシレン製造設備における水素処理、水素化、並びにクレー及び/又は分子篩による処理のような供給材料の予備処理の必要性を排除又は減少するために適用することができる。
【背景技術】
【0002】
キシレン、パラキシレン、メタキシレン、及びオルトキシレンは、化学合成における幅広い多様な用途が見出されている重要な中間体である。パラキシレンは、酸化によって合成編織布繊維及び樹脂の製造において用いられるテレフタル酸を生成する。メタキシレンは、可塑剤、アゾ染料、木材保護剤等の製造において用いられる。オルトキシレンは、無水フタル酸製造のための供給材料である。接触改質及び他の源からのキシレン異性体の分布は、一般に化学中間体に関して求められる異性体のものとは合致せず、したがって製造者は供給材料を転化させてより多くの求める異性体を製造している。
【0003】
キシレンの製造は、大規模設備において商業的に行われており、競争が非常に激しい。関心は、キシレン生成物に対する異性化、トランスアルキル化、及び不均化の1以上による供給材料の有効な転化に関してだけでなく、設備コスト及びエネルギーコストなどのかかる設備に関する他の競争的側面に関しても存在する。Meyerによるthe Handbook of Petroleum Refining Processes, 第2版, 1997, McGraw-Hill出版の第2部において、従来技術の芳香族処理の複雑なフロースキームが開示されている。
【0004】
キシレン製造設備への供給流としての単環式芳香族物質に関して種々の源が提案されている。ナフサフラクションを接触改質及び熱分解し、次にナフサフラクションを水素処理することが最も普及している。これらのプロセスにより、通常は求める単環式芳香族物質だけでなく多環式芳香族物質及びオレフィンも含む広範囲の化合物が生成する。多環式芳香族物質及びオレフィンは、通常はキシレン製造設備における望ましくない不純物である。これらは、更なるプロセス工程を必要とし、触媒の寿命を減少させ、生成物の安定性を減少させ、望ましくない生成物の色を引き起こすなどによって、生成物の品質及びプロセスの効率性に悪影響を与える可能性がある。多環式芳香族物質は、通常は蒸留によって所望の単環式芳香族物質から除去する。これらの除去された多環式芳香族物質は、次に任意の好適な方法によって通常は燃料として排出され、したがってより低い価値を有する。また、多環式芳香族物質は、トルエン、キシレン、及びC9+単環式芳香族物質のような有用な単環式芳香族物質に転化させることができることも公知である。
【0005】
キシレン製造設備内の種々のプロセスユニットへの供給流の品質も、適切な特性を確保するために定められる。例えば、トランスアルキル化ユニットなどのキシレン製造設備の幾つかのプロセスユニットへ供給する流れのオレフィン含量を制限する。したがって、オレフィンはトランスアルキル化供給流において汚染物質と認識され、水素処理、水素化、並びにクレー及び/又は分子篩による処理のような種々のオレフィン除去プロセスを用いてオレフィン含量を許容できるレベル(供給流仕様限界)に減少させることが従来実施されている。オレフィンは、例えば通常は、クレー処理によってキシレン製造設備供給材料及び/又は設備内の種々の位置における中間体流から除去される。クレー処理装置においては、オレフィンをオリゴマーに転化させるが、これはクレーの付着を引き起こす可能性がある。それらへの新しいクレーの再装填及び有機物質によって汚染された消費クレーの排出などのクレー処理装置を運転するためのコストは、キシレンの商業的スケールの製造者に対する大きな財政負担となりうる。更に、クレー処理装置により、オレフィンが芳香環にアルキル化される可能性がある。したがって、クレー処理装置からの流出流は、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、及びメチルエチルベンゼンのようなC2+置換基を有する芳香環を含む可能性がある。したがって、ベンゼン、トルエン、及びキシレンの製造のための芳香族物質供給原料の価値が低減する。
【発明の概要】
【0006】
本発明によれば、芳香族物質を反応させてキシレンを製造するトランスアルキル化プロセスにおいてオレフィンを除去することができる。一態様においては、本発明は、少なくとも50の臭素指数を有し、少なくとも6個の炭素原子を有する芳香族化合物を含む供給流をトランスアルキル化し且つそれからオレフィンを除去する方法であって、供給流を、酸性分子篩及び少なくとも1種類の金属成分を含むトランスアルキル化触媒とトランスアルキル化条件で接触させて、増加したキシレン濃度及び供給流の臭素指数よりも少なくとも60%低い臭素指数を有するトランスアルキル化生成物を与えることを含む方法である。
【0007】
他の態様においては、キシレンループプロセスにおいて、設備コスト及び運転コストの減少を可能にしながらオレフィン及び多環式芳香族物質を含む供給材料からキシレン異性体を製造する方法が提供される。キシレンループプロセスは、分別蒸留によってキシレンループ供給流を分離してキシレンを含む流れを与え、キシレン流を選択的キシレン異性体分離にかけ、選択的キシレン異性体分離からの流出流を異性化してキシレン異性体濃度を再平衡化し、そして異性化流出流を分別蒸留に再循環することを含むプロセスである。この分別蒸留のための装置は、ここではキシレンカラムとも呼ぶ。
【0008】
本発明の一態様においては、C8芳香族物質及びオレフィンを含む供給材料の少なくとも一部を、キシレンカラムからの高沸点フラクションのようなC9+芳香族物質を含む流れと混合し、混合した流れを、キシレン濃度を上昇させるだけでなく、オレフィンを除去して多環式芳香族物質を単環式芳香族物質に転化させるのにも十分なトランスアルキル化条件にかける。したがって、本発明方法によれば、オレフィンを含む芳香族供給材料を用いることができることにより、水素処理、水素化、並びにクレー及び/又は分子篩による処理のような予備処理の必要性が減少又は排除され、それにより設備コスト及び運転コストが減少する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明方法を実施するための装置の概念図である。
【図2】図2は、トランスアルキル化及び異性化のための2つの別々の反応容器を有する反応器システムの概念図である。
【図3】図3は、トランスアルキル化及び異性化のための2つの区域をその中に有する単一の反応容器を有する反応器システムの概念図である。
【図4】図4は、本発明方法を実施するための装置の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
キシレン異性体を製造するための方法及び装置は、例えば、Robert A. Meyers,Handbook of Petroleum Refining Processes, 第2版,McGraw-Hill, 1997, 第2部に開示されている。従来の方法においては、C芳香族物質及びオレフィンを含むキシレン製造設備供給材料を分別してベンゼン及びトルエンを除去し、次にキシレンカラム内において分別蒸留にかけてC芳香族物質流を与え、これから求める1種類以上のキシレン異性体を回収する。最も求められる異性体はパラキシレンであるが、オルトキシレン及びメタキシレンも商業的用途が見出されている。求めるキシレン異性体を分離した後、残りの流れを異性化してキシレンカラムに再循環し、ここでもC芳香族物質を含む高沸点フラクションを与える。C含有供給材料は、まずC芳香族物質を分離し、次にキシレンカラム内においてC芳香族物質を除去するなどの他の方法で分別することができる。
【0011】
キシレン製造設備へのC含有芳香族供給材料は、通常は、石油処理から、例えばナフサフラクションの接触改質から、又はナフサフラクションを熱分解し、次に水素処理することから導かれる。これらのプロセスにより、通常は、脂肪族(飽和及び不飽和)及び芳香族(単環式及び多環式)の化合物などの広範囲の化合物が生成する。供給材料は、通常は、その初留点及びその終留点に関して特徴づけられる。終留点は、ASTM法D2887模擬蒸留GC法によって測定して試料の99.5質量%が沸騰する温度である。通常はキシレン製造設備供給材料の終留点は少なくとも210℃であり、他の態様においては供給材料の終留点は少なくとも220℃である。一態様においては終留点は240℃〜280℃、他の態様においては340℃〜360℃の範囲である。したがって、供給材料は、高度に置換された芳香族化合物及び多環式芳香族化合物を含む可能性がある。通常は、供給材料は、脂肪族物質、並びにベンゼン及びトルエンのような芳香族物質を含む低沸点化合物を含む。しばしば、供給材料は80℃未満、幾つかの態様においては70℃未満の初留点を有する。したがって、供給材料は、C及びより低級の炭化水素を除去するための蒸留のような任意の予備処理に応じてC及び場合によってはより軽質の脂肪族物質を含む可能性がある。供給材料は、予備分別などによって調整してより多くの選択された成分の群を含ませることができる。また、複数の供給材料をキシレン製造設備に同時に供給することができる。
【0012】
キシレン製造設備供給材料は、表1に示す組成を有する可能性がある。
【0013】
【表1】

【0014】
供給材料中のC芳香族物質の中で、1〜50、しばしば3〜30質量%は多環式芳香族物質である。供給材料及び他の流れのオレフィン含量は、通常は臭素指数として報告される。通常は供給材料は少なくとも100の臭素指数を有し、幾つかの態様においては臭素指数は少なくとも300であり、他の態様においては臭素指数は少なくとも600である。
【0015】
臭素指数はオレフィン含量の指標である。臭素指数は、ASTM International, 100 Bar Harbor Drive, West Conshohocken, PA, USAから得られるUOP法304−90において説明されている手順にしたがって測定される。この手順によれば、滴定反応を促進する触媒を含む滴定溶媒中に試料を溶解する。溶液を室温において0.01Mの臭化物−臭素酸塩溶液で電位差滴定する。滴定においては、白金指示電極及びガラス参照電極を記録電位差滴定装置と共に用いる。臭素指数は、試験条件下で試料100gあたりの消費された臭素のミリグラム数から算出する。ASTM−D1492:「電量滴定による芳香族炭化水素の臭素指数」;ASTM−D5776:「電気滴定による芳香族炭化水素の臭素指数」;及びASTM−D2710:「電気滴定による石油炭化水素の臭素指数」;などの臭素指数に関する少なくとも3つの他の標準的試験法が存在することを指摘しなければならない。これらのASTM法に関する情報も、ASTM Interanationalから入手できる。UOP法304−90は臭素指数を測定するこれらの方法及び他の方法のそれぞれと同等ではない。したがって、ここでは臭素指数の数値はUOP法304−90のみによって測定したものであると理解すべきである。
【0016】
キシレンループへの好適な供給流を与えるためには、オレフィン及びC芳香族物質を含むキシレン製造設備供給材料を処理にかけてそのオレフィン含量を減少させる必要がある。本発明の一態様によれば、C芳香族物質を含む供給材料を、好ましくはキシレンカラムからのC芳香族物質を含む高沸点フラクションであるC芳香族物質流と混合する。この混合物をトランスアルキル化条件にかけて、より多量のキシレン及び減少した臭素指数を有するトランスアルキル化生成物を与える。混合物中のC芳香族物質を含む供給材料とC芳香族物質との質量比は、広範囲に変化させることができる。しばしば、この比は0.01:1〜3:1の間、又はこれ以上である。幾つかの態様においてはこの比は0.1:1〜2:1の間であり、他の態様においてはこれは0.3:1〜1.2:1の間である。混合物は、通常は供給材料よりも低いキシレン濃度を有し;しばしば、混合物中の全芳香族物質の35質量%未満がキシレンである。他の態様においては混合物中の全芳香族物質の30質量%未満がキシレンであり、他の態様においては混合物中の全芳香族物質の5〜25質量%がキシレンである。混合物中により軽質の芳香族物質(ベンゼン及び/又はトルエン)が存在する場合には、混合物中の(ベンゼン+トルエン)とC芳香族物質とのモル比は、一態様においては0.01:1より大きい。他の態様においては(ベンゼン+トルエン)とC芳香族物質との比は0.5:1より大きく、一態様においてはこの比は0.5:1〜2:1の間である。
【0017】
したがって、本発明のトランスアルキル化プロセスを用いて、キシレンを製造し且つ供給流のオレフィン含量を減少させることができる。ここで用いるトランスアルキル化という用語は、複数のアルキル芳香族物質の間、ベンゼンとアルキル芳香族物質との間、ベンゼンとメチルシクロペンタン及びメチルシクロヘキサンのようなアルキルナフテン系化合物との間のトランスアルキル化を包含し、例えばベンゼン及びキシレンへのトルエンの不均化を包含する。したがって、一態様においては、トランスアルキル化供給流は少なくとも6個の炭素原子を有する芳香族化合物を含む。本発明のトランスアルキル化プロセスによって少なくとも50の臭素指数を有する供給流を処理することができる。一態様においてはトランスアルキル化供給流の臭素指数は少なくとも100であり、他の態様においてはそれは少なくとも300であり、一態様においてはトランスアルキル化供給流の臭素指数は少なくとも500である。トランスアルキル化条件は、トランスアルキル化供給流よりも高いキシレン濃度、及びトランスアルキル化供給流の臭素指数よりも少なくとも60%低い臭素指数を有するトランスアルキル化生成物を与えるのに十分なものである。幾つかの態様においては、生成物の臭素指数は供給流のものよりも少なくとも80%低い。一態様においては、生成物の臭素指数は、供給流の臭素指数が少なくとも200である場合に30未満である。一態様においては、生成物の臭素指数は20未満である。他の態様においては、生成物の臭素指数は10未満である。トランスアルキル化プロセスは、キシレン製造の複合プロセスの一部であって、プロセスユニットの他の配列であってよく、或いは独立型のユニットであってよい。トランスアルキル化供給流の芳香族物質の組成は大きく変化してよい。トランスアルキル化供給流は少なくとも6個の炭素原子を有する芳香族化合物を含む。一態様においては、トランスアルキル化供給流はトルエン及びC芳香族物質の少なくとも1つを含む。供給流は、場合によってはベンゼン及びC芳香族物質の一方又は両方を含んでいてよい。一態様においては、トランスアルキル化供給流は、C芳香族物質、並びにベンゼン及びトルエンの少なくとも1つを含む。一態様においては、トランスアルキル化供給流の終留点は少なくとも190℃である。他の態様においては、トランスアルキル化供給流の終留点は少なくとも220℃であり、他の態様においては少なくとも240℃である。一態様においてはトランスアルキル化供給流の終留点は240℃〜280℃の間、他の態様においては340℃〜360℃の間である。
【0018】
特定のトランスアルキル化条件は、部分的に、触媒及びその活性、並びにトランスアルキル化供給流の組成によって定まる。一般に、トランスアルキル化条件は、昇温温度、例えば100℃〜425℃、好ましくは200℃〜400℃を含む。商業的施設においては、トランスアルキル化温度をしばしば上昇させて触媒活性の低下を補償する。トランスアルキル化反応器への供給流は、通常はまず反応器の流出流と間接的に熱交換することによって加熱し、次により加温されている流れ、蒸気、又は炉と熱交換することによって反応温度に加熱する。次に供給流を、本発明の触媒を含む1以上の個々の反応器を含んでいてよい反応区域に通す。反応器は任意の好適なタイプ及び構造のものであってよい。触媒の円筒形の固定床を有する単一の反応容器を用いることが好ましいが、所望の場合には触媒の移動床又は半径流反応器を用いる他の反応形態を用いることができる。トランスアルキル化条件には、100kPa〜10MPa(絶対圧)、好ましくは0.5MPa〜5MPa(絶対圧)の範囲の圧力が含まれる。トランスアルキル化反応は、広範囲の空間速度にわたって行うことができる。重量毎時空間速度(WHSV)は、一般に0.1hr−1〜30hr−1、好ましくは0.5hr−1〜20hr−1、最も頻繁には1hr−1〜5hr−1の範囲である。
【0019】
本発明によれば、触媒などのトランスアルキル化条件又は運転パラメーターの種々の組み合わせによって、キシレン濃度を向上させるトランスアルキル化をなお達成しながら、過度の芳香族環損失を与えずにトランスアルキル化供給流中のオレフィンの所望の減少を与えることができることが見出された。トランスアルキル化条件の好ましい組み合わせは、その条件下でメタンの総生産量が0.5質量%未満となるものである。一態様においては、メタンの総生産量は0.2質量%未満である。メタンの総生産量は、供給流中のものから生成物中のものへのメタン濃度の上昇である。好ましくは、供給流のものと比較した生成物中の単環式芳香環の損失モル%である環損失は、2モル%未満である。一態様においては、環損失は1.5モル%未満である。
【0020】
トランスアルキル化は、気相中且つ水素の存在下で、又は液相中で行うことができる。液相トランスアルキル化については、場合によっては水素を加えるが、水素を加えることが好ましい。供給流を気相中でトランスアルキル化する場合には、水素を、通常はトランスアルキル化ユニットへ供給する混合物中の炭化水素1モル当あたり0.1モル乃至炭化水素1モルあたり10モルの量で加える。この運転パラメーターは水素/炭化水素比と呼ばれ、しばしば、例えば5.5H/HC(即ち炭化水素1モルあたり5.5モルの水素)として表される。トランスアルキル化を液相中で行う場合には、通常の液体芳香族供給材料中に既に存在し溶解している可能性のあるもの以外の水素の実質的な不存在下で行うことができる。部分的液相の場合には、水素を炭化水素1モル当たり1モル未満の量で加えることができる。好ましくは、液相、部分的液相、又は気相トランスアルキル化形態における水素/炭化水素比は少なくとも1.5H/HCである。一態様においてはこれは少なくとも2H/HCであり、他の態様においては2H/HC〜8H/HCの間である。
【0021】
トランスアルキル化プロセスによってキシレンが与えられ、したがってトランスアルキル化生成物は供給流に対してより高濃度のキシレンを含む。供給流中により軽質の芳香族物質(ベンゼン及びトルエン)が含まれている場合には、供給流中のより軽質の芳香族物質とC芳香族物質とのモル比は0.01:1より大きく、一態様においてはこの比は0.1:1〜10:1の間である。他の態様においては、供給流中の(ベンゼン+トルエン)とC9+芳香族物質とのこのモル比は0.9:1〜5:1の間である。
【0022】
一態様においては、トランスアルキル化供給流は少なくとも1質量%の多環式芳香族物質を含む。トランスアルキル化中に、多環式芳香族物質は大きく転化する。一態様においては、多環式芳香族物質の少なくとも50モル%が単環式芳香族物質に転化する。したがって、本発明の一形態によれば、インダン類及びナフタレン類を、アルキル置換されているかいないかにかかわらず、アルキル置換単環式芳香族物質に転化させることができる。単環式芳香族物質への転化中のインダン及びナフタレンの分解生成物によりアルキル部分の源を与えることができる。重要なことには、本発明方法によって、単環式部分の過度の損失を起こすことなく多環式芳香族物質の単環式芳香族物質への転化を行って、これにより求める単環式アルキル芳香族物質への高い選択率を与えることができる。
【0023】
一態様においては、トランスアルキル化は、より重質のアルキル芳香族物質(C9+)の少なくとも10モル%が消費されるのに十分な時間及び他の条件下で行う。一態様においてはより重質のアルキル芳香族物質の少なくとも20モル%が消費され、他の態様においてはより重質のアルキル芳香族物質の20〜90モル%が消費される。一態様においては、消費されるより重質のアルキル芳香族物質の少なくとも70モル%がより低分子量の芳香族物質に転化する。他の態様においては、消費されるより重質のアルキル芳香族物質の少なくとも75モル%がより低分子量の芳香族物質に転化する。トランスアルキル化条件は、好ましくは、トランスアルキル化供給流のものよりも少なくとも5℃低い終留点を有するトランスアルキル化生成物を与えるのに十分なものである。他の態様においては、トランスアルキル化生成物はトランスアルキル化供給流のものよりも少なくとも10℃低い終留点を有する。
【0024】
トランスアルキル化条件には、金属成分及び酸性分子篩成分を含むトランスアルキル化触媒を存在させることが含まれる。一態様においては、触媒は、酸性分子篩成分、金属成分、及び無機酸化物成分を含む。金属成分は、通常は水素化官能性を有する。金属成分は貴金属及び卑金属の少なくとも1つを含む。貴金属は白金族金属であり、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、オスミウム、イリジウム、及びこれらの混合物からなる群から選択される。卑金属は、レニウム、スズ、ゲルマニウム、鉛、鉄、コバルト、ニッケル、インジウム、ガリウム、亜鉛、ウラン、ジスプロシウム、タリウム、及びこれらの混合物からなる群から選択される。また、触媒配合物中において促進剤又は変性剤を用いることもできる。かかる促進剤又は変性剤は、IUPACの1、2、5、6、7、11、12、13、14、15、16、及び17族の1種類以上の卑金属である。一態様においては、金属成分は白金及びスズを含む。他の態様においては、金属成分はレニウムを含む。
【0025】
安定化量の金属成分によって、触媒活性に対する多環式芳香族物質の有害な効果が低下する。即ち、触媒の安定性が向上する。一態様においては、触媒の失活速度は、トランスアルキル化供給流が0.5質量%未満のC11+芳香族物質を含む他は実質的に同等の条件下で同じ触媒を用いて観察したものの200%未満、他の態様においては150%未満である。失活は、他が一定の条件下で一定の芳香族転化率を保持するのに必要な温度上昇として測定される。失活速度は、触媒が消費された後、例えば100時間の運転後に測定する。商業的施設において比較試験を行うことは実際的ではないので、好ましくは安定性の測定は合成供給流を用いるパイロットプラントにおいて行う。
【0026】
触媒が安定化量の金属成分を含んでいるかどうかを求める目的のためには、評価条件を好都合に用いることができる。評価条件は、触媒の評価のためだけに用いるものであり、必ずしも本発明にしたがって用いるトランスアルキル化条件を代表するものではない。評価条件は、1.6hr−1の重量毎時空間速度、2760KPa(ゲージ圧)の圧力、6:1の水素/炭化水素比、及び芳香族物質含有供給流中の芳香族物質の45モル%を転化させるのに十分な重量平均床温度においてパイロットプラントを運転することを含む。評価条件のための好適な多環式芳香族物質供給流は、表2に示す範囲内のものである。
【0027】
【表2】

【0028】
参照供給流に関しては、多環式芳香族物質供給流(トルエンを含まない)を蒸留して0.5モル%未満のC11芳香族物質を含むようにし、次にトルエンを加えて同等のトルエン/C芳香族物質のモル比を保持する。C11+芳香族物質は、単環式及び多環式の両方の芳香族物質を含む。
【0029】
本発明方法において用いるために有利な触媒においては、金属成分の量は、過度の芳香族環損失を引き起こす量より少ない量である。評価条件下において、環損失は好ましくは、供給流中の単環式芳香族化合物の全モル数を基準として2モル%未満である。トランスアルキル化触媒中における好適な金属の量は、存在する1種類又は複数の金属及び任意の促進剤又は変性剤によって定まる。一態様においては、金属成分の量は触媒の0.01〜10質量%の範囲である。他の態様においては金属成分の量は0.1〜3質量%の範囲であり;他の態様においてはそれは触媒の0.1〜1質量%の範囲である。
【0030】
酸性分子篩成分は1種類以上の分子篩を含む。分子篩としては、BEA、MTW、FAU(立方晶形及び六方晶形の両方のゼオライトY、及びゼオライトXを含む)、MOR、LTL、ITH、ITW、MEL、FER、TON、IWW、MFI、EUO、MTT、HEU、MFS、CHA、ERI、及びLTAが挙げられるが、これらに限定されない。既知の構造タイプの分子篩は、国際ゼオライト協会の構造委員会によってそれらの三文字表記にしたがって分類されており(ウエブサイト:www.iza-structure.org/databasesにおいて入手できる)、ここではかかるコードを用いる。一態様においては、酸性分子篩成分はMOR及びMFIの少なくとも1つを含む。分子篩成分は、好ましくは最終触媒において少なくとも部分的に水素形態である。分子篩の酸性度は、本発明の触媒の製造において用いる分子篩のものであってよく、或いは触媒の製造中に達成することができる。一態様においては、酸性分子篩成分はアンモニア昇温脱離法(アンモニアTPD)によって測定して少なくとも0.15の全酸性度を有する。一態様においては分子篩成分の全酸性度は少なくとも0.25であり;他の態様においては分子篩成分の全酸性度は少なくとも0.4であり;他の態様においては分子篩成分は0.4〜0.8の範囲内の全酸性度を有する。
【0031】
アンモニアTPDは、分子篩の試料(250mg)をまず、ヘリウム雰囲気中の20体積%の酸素の存在下(100mL/分の流速)において5℃/分の速度で550℃の温度に加熱することを含む。1時間保持した後、ヘリウムを用いて系をフラッシングし(15分間)、試料を150℃に冷却する。次に、試料を40mL/分のヘリウム中のアンモニアのパルスで飽和する。用いるアンモニアの全量は、試料上の酸部位の全部を飽和するのに必要な量を大きく超えるものである。試料をヘリウム(40mL/分)で8時間パージして物理吸着したアンモニアを除去する。ヘリウムのパージを継続しながら、温度を10℃/分の速度で600℃の最終温度に上昇させる。較正した熱伝導度検出器を用いて脱離したアンモニアの量を監視する。積分によってアンモニアの全量が分かる。アンモニアの全量を分子篩試料の乾燥重量で割ることによって全酸性度が得られる。ここで用いる全酸性度の値は、乾燥分子篩1gあたりのアンモニアのミリモル数の単位で与える。
【0032】
モルデナイトが触媒の成分である場合には、モルデナイトは好ましくは40:1未満のSi/Alのモル比を有する。一態様においてはモルデナイトのSi/Alのモル比は25:1未満であり;他の態様においてはモルデナイトのSi/Alのモル比は15:1〜25:1の間である。モルデナイトは、10:1〜20:1の間のSi/Alのモル比を有するように合成することができる。かかるモルデナイトは、合成された状態で用いることができ、或いは触媒中に含ませる前又は含ませた後に脱アルミニウム化することができる。
【0033】
本発明の触媒中において用いるMFI分子篩は、好ましくは80未満のSi/Alのモル比を有する。一態様においてはMFIのSi/Alのモル比は40:1未満であり;他の態様においては25:1未満である。一態様においてはMFIのSi/Alのモル比は15:1〜25:1の間である。MFIは、合成された状態で用いることができ、或いは脱アルミニウム化することができる。脱アルミニウム化した場合には触媒の活性が向上するが、過剰の脱アルミニウム化はベンゼンと共沸する更なる成分を含むトランスアルキル化生成物を与える可能性がある。理論によって限定されることは望まないが、脱アルミニウム化によってMFI構造体中に若干のメソ多孔性が導入される可能性がある。MFI構造体中のメソ多孔性により全体的な転化率を向上させることができると考えられる。
【0034】
脱アルミニウム化は、酸処理及び/又は蒸気処理のような任意の好適な技術によって行うことができる。蒸気処理された分子篩を用いる場合には、好ましくは、穏やかに、例えば2〜50、好ましくは5〜30体積%の蒸気、100kPa〜2MPaの圧力、及び650℃未満、例えば500℃〜600℃、より好ましくは550℃〜600℃の温度を用いて蒸気処理する。蒸気か焼は、分子篩を求める触媒形態に成形する前又は成形した後に行うことができる。蒸気処理を触媒の成形後に行うと、望ましい触媒が得られた。
【0035】
一態様においては、酸性分子篩成分はMOR及びMFIを含む。MFI:モルデナイトの質量比は、一態様においては1:10〜5:1、他の態様においては1:10〜1:1の範囲である。好ましくは、モルデナイトは、最終触媒において少なくとも部分的に水素形態である。一態様においては触媒は、レニウムを他の金属成分と一緒か又は他の金属成分なしに含む。例えば、共に係属している特許出願60/825306及び60/825313(いずれも2006年9月12日出願であり、いずれもその全体を参照として本明細書中に包含する)を参照。
【0036】
好適な無機酸化物成分(耐火バインダー又はマトリクス)は、好ましくは触媒の製造を容易にして、強度を与え、製造コストを減少させるために用いる。好適なバインダーとしては、無機酸化物、例えばアルミナ、マグネシア、ジルコニア、クロミア、チタニア、ボリア、トリア、リン酸アルミニウム、及び酸化亜鉛の1以上が挙げられる。好ましい無機酸化物バインダーとしては、アルミナ、特に遷移アルミナ及びガンマアルミナが挙げられる。特に有用なアルミナは、CATAPAL B及びVERSAL 250の商品名で商業的に入手できる。一態様においては、分子篩成分は触媒の5〜99質量%の範囲で存在し、耐火無機酸化物は、用いる場合には触媒の1〜95質量%の範囲で存在させることができる。
【0037】
触媒を製造するための処理技術によって触媒特性に影響を与える可能性がある。例えば、触媒活性部位の閉塞が起こる可能性がある。したがって、触媒の活性が過度に損なわれないように注意を払わなければならない。金属成分は、キャリア材料との共粉砕、共沈殿、若しくは共ゲル化、イオン交換、又は含浸のような任意の好適な方法で触媒中に含ませることができる。この成分は、最終触媒複合体内に、酸化物、硫化物、ハロゲン化物、又はオキシハロゲン化物のような化合物として、複合体の1種類以上の他の成分との化合状態で、或いは元素状金属として存在させることができる。触媒を製造する1つの方法は、金属の水溶性又は溶媒可溶性の分解性化合物を用いて分子篩含有支持体に含浸させることを含む。或いは、分子篩成分及びバインダーを複合体化する時点で金属化合物を加えることができる。触媒を製造するための他の方法は、分子篩成分、金属成分、及びバインダーを共粉砕して、求める触媒形状を形成するための押出可能な混合物を与えることを含む。本発明の触媒の1つの形状は円筒体である。かかる円筒体は当該技術において公知の押出法を用いて形成することができる。触媒の他の形状は、押出によって形成することができる三葉又は三つ葉クローバータイプの断面を有するものである。他の形状は、油滴下法又は当該技術において公知の他の形成法を用いて形成することができる球状体である。
【0038】
好ましくは、触媒の製造には、特に金属がレニウムである場合には酸化又はか焼工程の少なくとも1つが含まれる。酸化工程は、通常は370℃〜650℃の温度で行う。通常は空気を含む酸素雰囲気を用いる。一般に、酸化工程は金属成分の実質的に全部をそれらの対応する酸化物形態に転化させるのに必要な時間、通常は0.5〜10時間又はそれ以上行う。この時間は、勿論、触媒を製造するのに用いる金属成分、用いる酸化温度、及び用いる雰囲気の酸素含量によって変動する。場合によっては、か焼中において、蒸気を例えば5〜70、例えば5〜40体積%の量で存在させる。
【0039】
レニウム含有触媒を用いる場合には、触媒を好ましくは硫化する。レニウムは、好ましくは硫化時において少なくとも部分的に酸化物形態である。幾つかの態様においては、硫化の前又は硫化中に触媒を部分的に還元する。還元の量は、還元雰囲気、還元温度、及び還元時間の関数である。過剰の還元条件下、特に高温を含む条件下では、触媒中におけるレニウムの分散が悪影響を受ける可能性がある。硫化に先立って還元を行う場合には、還元温度は好ましくは400℃未満であり、一態様においては100℃〜350℃の範囲である。還元時間は、好ましくは触媒上のレニウムの過度の凝集が起こらず、好ましくはレニウムが少なくとも+4の酸化状態を有するようなものである。したがって、還元は通常は24時間未満の時間行い、より高い温度においてはより短い時間を用いる。一態様においては、還元は280℃において12時間以下、他の態様においては280℃において5〜6時間行う。
【0040】
硫化は、還元の少なくとも一部と同時か、又は還元の後に行うことができる。好ましくは、還元は実質的に水を含まない雰囲気中で行う。好ましくは、還元ガスは実質的に純粋な乾燥水素(即ち水が20重量ppm未満)である。しかしながら、炭化水素、CO、窒素等のような他のガスが存在していてもよい。還元工程は、周囲圧力又はより高い圧力下で行うことができる。好ましい圧力は50kPa(絶対圧)〜10MPa(絶対圧)であり、一態様においては圧力は200〜5000kPa(絶対圧)の範囲である。
【0041】
イオウ成分は任意の公知の技術によって触媒中に含ませることができる。in-situ及び/又はex-situのイオウ処理方法の任意の1つ又は組み合わせを用いることができる。有効な処理は、触媒をイオウ源と0℃〜500℃の範囲の温度において接触させることによって行われる。イオウ源は、触媒と、直接か、又はキャリアガス、例えば水素又は窒素を用いて接触させることができる。一態様においては、イオウ源は硫化水素である。イオウの他の源を用いることができ、例としては、二硫化炭素、及び硫化アルキル、例えば硫化メチル、硫化ジメチル、二硫化ジメチル、硫化ジエチル、及び硫化ジブチルが挙げられる。好ましい触媒は、カルベニウムイオンの存在下で硫化したものである。カルベニウムイオンは中間化学反応生成物であるので、カルベニウムイオンを導入する最も簡便な方法は、硫化中に炭化水素クラッキングを行うことである。炭化水素は、硫化条件において分解することのできる任意の好適な化合物であってよく、一態様においては炭化水素は、エチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、及びプロピルベンゼンの少なくとも1つを含む。酸性分子篩成分はカルベニウムイオンの生成を助ける。一態様においては、硫化は250℃〜500℃、他の態様においては250〜400℃の範囲で行う。レニウム含有触媒が不十分な分解活性を有する場合には、より高い温度が必要である可能性がある。
【0042】
一態様においては、硫化は、イオウを含むガスを、少なくとも0.5hr−1の重量毎時空間速度で触媒上に通すことによって行う。また、触媒組成物をin-situで硫化することもでき、この場合には、イオウ源を炭化水素供給流に1〜5,000又は10,000、好ましくは5〜500体積ppmの範囲のイオウ濃度で加えることによってイオウ源を触媒組成物と接触させる。炭化水素供給流にイオウ源を加える必要性は、一部の炭化水素流中に既に存在している可能性のあるイオウの実際の濃度に応じて減少させるか又は完全に排除することができる。
【0043】
供給流中のイオウの濃度に応じて、硫化は1時間未満行うことができ、或いはより長い時間、例えば1日以上行うことができる。イオウ処理は、生成物オフガス中のイオウの濃度を測定することによって監視することができる。イオウ処理のために計算される時間は、供給流中のイオウの実際の濃度、及び達成すべき触媒上の所望のイオウ装填量によって定まる。幾つかの場合においては、目標のイオウ/レニウムの原子比のために求められる量よりも多いイオウを与えても、イオウ/レニウムの比は一定のレベルに達し、レニウムが過硫化されるようにはならないことが分かった。
【0044】
硫化は、通常は、レニウム1原子あたり0.2〜0.7原子のイオウが与えられ、他の態様においてはレニウム1原子あたり0.25〜0.5原子のイオウが与えられるように行う。触媒がイオウを収着するか又はイオウと反応することのできる他の成分を含む場合には、与えるイオウの全量は、レニウムに対するイオウの求める量が与えられることが確保されるのに十分なものでなければならない。
【0045】
触媒はか焼によって再生することができる。再生条件は、一般に、触媒上の炭素質堆積物に対して、酸素含有雰囲気、例えば空気又は更なる窒素及び/又は蒸気を有する空気中において、370℃〜650℃の範囲の温度で、0.5〜24時間、制御された炭素燃焼除去を行うことを含む。
【0046】
したがって、一態様においては、本発明は、C8芳香族物質を含み、少なくとも100の臭素指数を有する供給材料をトランスアルキル化し且つそれからオレフィンを除去する方法であって、供給材料及びC9+芳香族物質を含む流れを混合して、少なくとも50の臭素指数及び少なくとも210℃の終留点を有するようにすることを含む上記方法である。この混合物を、トランスアルキル化条件下において、酸性分子篩及び少なくとも1種類の金属成分を含むトランスアルキル化触媒と接触させて、増加したキシレン濃度及び混合物の臭素指数よりも少なくとも60%低い臭素指数を有するトランスアルキル化生成物を与える。
【0047】
トランスアルキル化プロセスは、種々のフロースキームで他のプロセスと統合することができる。一態様においては、トランスアルキル化生成物をキシレンループ供給流としてキシレン蒸留カラムに送る。キシレン異性体分離アセンブリにおいて、キシレンを含むキシレンカラム生成物流から少なくとも1種類の所望のキシレン異性体を回収する。キシレン異性体分離アセンブリによって製造される非平衡のキシレン異性体流をキシレン異性化区域に送り、平衡に近いキシレン異性体の分布を有する異性化生成物を製造する。異性化生成物はキシレンカラムに再循環する。異性化条件下において、トランスアルキル化及び分解のような他の反応が起こる可能性がある。したがって、異性化はより高分子量の芳香族物質の源となることができ、これらのC9+芳香族物質もキシレンカラムからのより重質の芳香族物質含有フラクション中に含まれる。
【0048】
幾つかの態様においては、キシレンカラムからのより重質の芳香族物質含有フラクションからパージをとって、多環式芳香族物質の過度の蓄積を抑止する。パージは任意の好適な方法で用いることができ、所望の場合には燃料として用いることができる。或いは、パージを蒸留による分離にかけてC9及びC10の芳香族物質を回収することができ、これを副生成物として用いるか、又はトランスアルキル化アセンブリに送ることができる。
【0049】
キシレン製造装置100を図式的に示す図1に関連して本発明を更に議論する。示されている装置は、本発明方法の幅を限定するものではなく、本発明の原理の理解を助けるものと意図される。
【0050】
C8芳香族化合物及びオレフィンを含む供給材料を、ライン102を通してキシレン製造装置に供給する。供給材料は任意の好適な源から導くことができる。また、供給材料は、混合された流れの中のC9+芳香族物質のトランスアルキル化のために有用なより軽質の芳香族物質(ベンゼン及びトルエン)の大きな部分を与えることもできる。示されている態様においては、供給材料を供給流蒸留装置158に送って、分別蒸留によってC4炭化水素流を与える。供給流カラム158からの塔底流は、下記に議論するキシレンカラムからの高沸点フラクションの一部とライン142内で混合するためにライン162を通して送る。流れの混合は示されているようにライン142内で行うことができ、或いはトランスアルキル化反応器144内で行うことができる。幾つかの態様においては、C8芳香族物質含有供給材料及び供給流カラム塔底流は、より軽質の芳香族物質(ベンゼン及び/又はトルエン)を更に含み、これによりトランスアルキル化区域に再循環するために蒸留によって回収するベンゼン及び/又はトルエンの量を減少するか又は排除することもできるという点で運転上の省力化が得られる。有利には、C8芳香族物質及びオレフィンを含む供給流カラム塔底流をトランスアルキル化区域に直接送ることができる。「直接」という用語により、トランスアルキル化供給流を、トランスアルキル化の前に、水素処理、水素化、或いはクレー及び/又は分子篩による処理のようなオレフィン除去工程にかけないことが意図される。しかしながら、トランスアルキル化供給流は、他の供給流仕様を満足させるために必要な場合には乾燥のような他の処理にかけることができる。同様に、オレフィン及び少なくとも6個の炭素原子を有する芳香族化合物を含むキシレン製造装置100への調整された供給材料は、供給流カラムをバイパスさせて、オレフィン除去区域内で処理することなくトランスアルキル化区域に直接送ることができる。即ち、当該技術において周知なように、キシレン製造装置への供給材料は、装置100へ導入する前に分別、非芳香族物質除去、及び他の加工又は処理工程などによって調製することができ、これにより供給流蒸留装置158に関する必要性を取り除くことができる。また、周知なように、供給流蒸留装置158により、サイドカット及び/又は下記に例示するような多重カラムを用いることなどによって種々の流出流を製造することができる。かかる流出流又は「カット」の非限定的な代表例としては、軽質留分、ベンゼン、トルエン、C8芳香族物質、及びC9+芳香族物質に富むものが挙げられる。
【0051】
得られる混合物はトランスアルキル化区域に送る。下記で議論するように、トランスアルキル化区域は種々の構造を包含し;したがってより一般的には反応区域144と呼ぶ。ライン146を通して更なるより軽質の芳香族物質(ベンゼン及び/又はトルエン)を混合物に加えることができる。ベンゼン及びトルエンは、任意の好適な源から、例えばキシレン製造設備への他の供給流から、及び/又は下記で議論するようにライン106、112、132、及び138から導くことができる。また、供給材料は混合された流れの中のC9+芳香族物質のトランスアルキル化のために有用なより軽質の芳香族物質(ベンゼン及びトルエン)の大きな部分を与えることもできる。トランスアルキル化反応器には、本発明の触媒を含む1以上の個々の反応器を含ませることができる。反応器は、任意の好適なタイプ及び構造のものであってよい。触媒の円筒形の固定床を有する単一の反応容器を用いることが好ましいが、所望の場合には触媒の移動床又は半径流反応器を用いる他の反応形態を用いることができる。
【0052】
上記したように、本発明方法によるトランスアルキル化によって、増加した濃度のキシレン及び減少した濃度のオレフィンを含むトランスアルキル化生成物が与えられる。したがって、反応区域は、キシレン製造設備供給材料を直接か、又は供給流カラム内での分別の後に直接に、即ちトランスアルキル化供給流をオレフィン除去区域に通すことなく受容するための少なくとも1つの入口を含む。トランスアルキル化又は反応区域の生成物は、反応区域出口から反応区域生成物蒸留アセンブリに排出し、ここで反応区域生成物をキシレン製造設備内で再循環するためか及び/又は生成物として排出するための種々の流れに分離する。示されている態様においては、反応区域生成物蒸留アセンブリは、ストリッピング装置150、ベンゼンカラム104、及びトルエンカラム110を含む。トランスアルキル化又は反応区域の生成物は、ライン148を通してストリッピングカラム150に送り、分別蒸留によって分離された軽質分をライン152を通して除去する。ストリッピングカラム150はまた、高沸点のC6+フラクションを与え、これはベンゼンカラム104に送る。ベンゼンカラム104は、分別蒸留によって、塔底フラクションとして回収されるC7+芳香族物質から、塔頂流としてライン106内に回収されるベンゼンの分離を行う。ベンゼンカラム104からの塔底フラクションはライン108を通してトルエンカラム110に送る。トルエンカラム110においては、分別蒸留によって、ライン112を通して除去されるトルエン塔頂流、及びライン114を通してキシレンカラム116に送られるC8+芳香族塔底フラクションが与えられる。
【0053】
示されていない態様においては、場合によって用いるトルエン不均化反応区域においてトルエンをキシレン及びベンゼンに転化させることができる。トルエン不均化ユニットの運転を用いるかどうかは、供給流及び与えられた設備に関する経済性によって定まる。不均化は触媒反応によって行い、当該技術において公知の任意のかかるプロセスを本発明と共に用いることができる。製造されるパラキシレンを増加させるために好ましい不均化条件としては、US6,429,347(その全体を参照として本明細書中に包含する)に記載されているような予めコーキング処理した触媒が挙げられる。
【0054】
キシレンカラム116においては、分別蒸留によって、少なくとも2種類のキシレン異性体を含む低沸点のC8芳香族物質流が分離される。他の態様においては、C8芳香族物質を含むキシレンカラム流出流は高沸点生成物流である。このC8芳香族物質流から1種類以上のキシレン異性体が回収される。オルトキシレンが求める異性体である場合には、分離は通常は分別蒸留によって行う。パラキシレン異性体は、選択的結晶化分別法又は模擬移動床吸着分離法のような選択的吸着法によって回収することができる。また、収着法によるメタキシレンの回収も公知である。キシレン異性体の分離方法は当業者に周知であり、任意の公知のプロセスを個別か又は組み合わせて用いて1種類以上の求める異性体を得ることができる。したがって、このC8芳香族物質流は、キシレンカラム116の第1の出口からライン118を通して選択的キシレン異性体分離アセンブリ120の入口に送る。
【0055】
場合によってはライン118内にオレフィン除去装置117を与えてオレフィンを除去する。本発明方法によると、トランスアルキル化によってキシレン製造設備供給材料から実質的にすべてのオレフィンが除去される。したがって、ライン118内の低沸点のC8芳香族物質流は、キシレンループ内において例えば異性化によって生成する少量のオレフィン及びトランスアルキル化生成物中に含まれる残留量のオレフィンしか含まない。異性化区域内でのオレフィンの生成が僅かである幾つかの態様においては、オレフィン除去装置117を完全に排除することができる。キシレン異性化区域においてより高いレベルのオレフィンが製造される場合のような他の態様においては、除去装置117は必要である可能性がある。たとえそうであったとしても、オレフィン除去装置117は比較的小型で長い運転寿命を有することができ、それによって設備コスト及び運転コストの節約を得ることができる。更に、オレフィン除去区域は、製造装置100内の1つの位置に配置して好ましくはキシレンカラムの出口から送られるC8芳香族物質流を処理するためだけに必要である可能性がある。この態様においては、選択的キシレン異性体分離ユニット120は選択的収着ユニットであり、第1の出口及びライン122を通してパラキシレンが排出される。パラキシレンが低減した非平衡異性体流(ラフィネートとも呼ぶ)を、キシレン分離器120から第2の出口を通してライン124を通して異性化区域126に送る。
【0056】
キシレン異性化はキシレンの非平衡混合物を再平衡化するように働く。例えば、パラキシレンが求める生成物でこれを取り出す場合には、キシレン異性体の平衡か又はほぼ平衡の分布を再形成することによって更なるパラキシレンが製造される。パラキシレン分離ユニットのラフィネート中のエチルベンゼンは、用いる異性化触媒のタイプ及び他の条件に応じて、更なるキシレンに転化されるか又は脱アルキル化によってベンゼンに転化される。一態様においては、脱アルキル化によるエチルベンゼンの転化は、キシレンへのエチルベンゼンの転化に通常含まれる大量のナフテンの取り扱いにおける複雑さを減少させるのに好ましい。1つのかかる態様においては、異性化反応器126への供給流中の全ナフテンは1質量%未満、好ましくは0.7質量%未満である。エチルベンゼンの異性化に好ましい条件としては、少なくとも0.1:1、例えば0.5:1〜6:1、好ましくは1.5:1〜5:1の水素:炭化水素のモル比の水素を存在させることが挙げられる。好ましくは、供給流はナフテンを含み、より好ましくは十分な濃度、例えば2〜20質量%のナフテンを供給流中に与えてエチルベンゼンの転化を増加させる。好ましくは、異性化は少なくとも部分的に気相の条件下で行う。異性化区域には、水素化ユニット運転、及びそれに続いて脱水素ユニット運転を含ませることができる。
【0057】
キシレン異性化は、異性化条件下で異性化触媒を用いて異性化体を与えることを含む。異性化触媒は、通常は、分子篩成分、金属成分、及び無機酸化物成分から構成される。分子篩成分の選択によって、ベンゼンに関する総需要に応じて触媒特性をエチルベンゼン異性化とエチルベンゼン脱アルキル化との間で制御することができる。したがって、分子篩はゼオライト系アルミノシリケート又は非ゼオライト系分子篩のいずれかであってよい。ゼオライト系アルミノシリケート(又はゼオライト)成分は、通常は、MFI、MEL、MTW、MFS、MTF、及びFER(ゼオライトの命名に関するIUPAC委員会)構造などのペンタシルゼオライト、MWW、ベータゼオライト、又はモルデナイトのいずれかである。非ゼオライト系分子篩は、通常は、「Atlas of Zeolite Structure Types」(Butterworth-Heineman, Boston, Mass., 第3版,1992)によるAEL骨格タイプの1種類以上、特にSAPO−11、或いはATO骨格タイプの1種類以上、特にMAPSO−31である。
【0058】
金属成分は、通常は貴金属成分であり、貴金属に加えて、又は貴金属に代えて場合によっては卑金属変性剤成分を含ませることができる。貴金属は、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、オスミウム、及びイリジウムから選択される白金族金属である。卑金属は、レニウム、スズ、ゲルマニウム、鉛、鉄、コバルト、ニッケル、インジウム、ガリウム、亜鉛、ウラン、ジスプロシウム、タリウム、及びこれらの混合物からなる群から選択される。卑金属は、他の卑金属又は貴金属と組み合わせることができる。一態様においては異性化触媒中の全金属は0.01〜10質量%の範囲であり、他の態様においては金属の量は0.1〜3質量%の範囲である。触媒中の好適なゼオライトの量は1〜99質量%の範囲、一態様においては10〜90質量%の間、他の態様においては25〜75質量%の間である。触媒の残りは、無機酸化物バインダー、通常はアルミナから構成される。幾つかの場合においては、in-situ又はex-situのいずれかで硫化することなどによって触媒を変性することが望ましい場合がある。本発明において用いるための1つの異性化触媒が、US4,899,012(その教示は参照として本明細書中に包含する)に開示されている。
【0059】
通常の異性化条件としては、0℃〜600℃の範囲の温度及び100kPa〜6MPa(絶対圧)の圧力が挙げられる。触媒の重量に対する供給材料の重量毎時炭化水素空間速度は0.1〜30hr−1である。炭化水素は、0.5:1〜15:1又はそれ以上の水素/炭化水素のモル比、一態様においては0.5〜10のH/HCの気体状水素との混合物で触媒と接触させる。異性化のために液相条件を用いる場合には、通常は水素は加えない。異性化反応器には、触媒を含む1以上の個々の反応器を含ませることができ、任意の好適なタイプ及び構造のものであってよい。触媒の円筒形の固定床を有する単一の反応容器を用いることが好ましいが、所望の場合には触媒の移動床又は半径流反応器を用いる他の反応形態を用いることができる。
【0060】
示されている態様においては、異性化区域126からの異性化体を、ライン128を通して軽質分カラム130に送る。このカラムは、例えばベンゼン及びより軽質の成分を低沸点フラクションとしてライン132を通して除去するように働く。高沸点のC7+芳香族物質を含有する流れを、軽質分カラム130からライン134を通して脱ヘプタン化カラム136に送る。脱ヘプタン化カラム136内での分別蒸留によってトルエンフラクションが与えられ、ライン138を通して取り出される。C8+芳香族物質を含む塔底流は、ライン140を通してキシレンカラム116に送る。反応区域生成物蒸留アセンブリと同様に、種々の装置の配置を用いて、キシレンカラムへ再循環するために異性化体からC8+芳香族物質流を分離することができる。したがって、この分離を達成するために用いる軽質分カラム130及び脱ヘプタン化カラム136のようなカラムの配置を、異性化体蒸留アセンブリと呼ぶ。したがって、キシレン異性化反応器126内で製造される異性化体は、キシレンカラム116に間接的に送られる。異性化体蒸留アセンブリからのベンゼン及びトルエンを含むフラクションは、更なる分離のためにキシレン製造設備内の他の蒸留カラムに送ることができる。
【0061】
キシレンカラム116に戻り、ライン114を通るトルエンカラム110からの塔底フラクション及びライン140を通る脱ヘプタン化カラム136からの塔底フラクションであるカラムへの供給流は、いずれもC9+芳香族物質を含む。前者は供給流からのこれらの重質物を含み、後者は通常は重質物を共製造する異性化からのものである。キシレンカラム116の分別蒸留によって1種類以上の高沸点フラクションが与えられる。示されているように、C9+芳香族物質を含む1つの高沸点フラクションが、ライン142を通してキシレンカラム116から排出される。しかしながら、本発明の広範な形態においては、キシレンカラムは、1つが主としてC9及びC10芳香族物質並びに若干のC11+芳香族物質を含み、他方がより低濃度のC9及びC10芳香族物質並びにより高濃度のC11+芳香族物質を含む少なくとも2つの高沸点フラクションを与えるように運転することができる。第1のフラクションは好ましくは少なくとも0.5質量%の多環式芳香族物質を含み、第2のフラクションは好ましくは少なくとも50質量%のC11+芳香族物質を含む。分離は大まかであるので、重質分蒸留カラムにおいて通常用いられるものと比較して、キシレンカラム116からの高沸点フラクションから実質的にすべてのC11+芳香族物質を除去するために少量のリボイラー運転しか必要ではない。一態様において示されるように、キシレンカラム内で製造されるC9+芳香族物質の少なくとも一部は、ライン142を通して反応区域に戻す。一般に、トランスアルキル化供給流中のC9+芳香族物質のより高い濃度が、トランスアルキル化中のキシレンの製造に好ましい。C9+芳香族物質の濃度は、キシレンカラム上に過度の装填物が配置されるか、或いは大きなパージをとらなければならないようなレベルに増加させてはならない。一態様においては、トランスアルキル化生成物中のC9+芳香族物質の濃度は10質量%未満である。一態様においてはトランスアルキル化生成物は5質量%未満のC9+芳香族物質を含み、他の態様においてはC9+芳香族物質はトランスアルキル化生成物の0.01〜5質量%を構成する。
【0062】
場合によっては、C9+芳香族物質の一部をパージして、それらが望ましくなく増加することを抑止することができる。一態様においては、キシレンカラム内で製造されるC9+芳香族物質の50質量%未満をパージする。他の態様においては、キシレンカラムのC9+芳香族物質の20質量%未満をパージし、一態様においては5〜20質量%をパージする。パージ流を用いて、安定状態の条件を保持するのに十分な多環式芳香族物質を消費するほどトランスアルキル化条件を厳しくする必要がないようにすることができる。パージは任意の好適な方法で用いることができるが、好ましくは下記で議論するように蒸留にかけてその中に含まれるC9+単環式芳香族物質の少なくとも一部を回収する。
【0063】
ライン142は、キシレンカラム116からトランスアルキル化(反応)区域144への流体連絡を与える。ライン102内の供給材料がベンゼン及び/又はトルエンを含むかどうかにかかわらず、所望の場合にはライン146を通して更なるより軽質の芳香族物質(ベンゼン及び/又はトルエン)をトランスアルキル化区域の反応器144に与えることができる。より軽質の芳香族物質は、ライン106、112、132、及び138など(しかしながらこれらに限定されない)の任意の好都合な源から得ることができる。図1の装置は例えばいずれもトルエンをC8+芳香族物質から分離するトルエンカラム110及び脱ヘプタン化カラム136を有するように記載されているが、両方の機能を与える単一のカラムを用いることができる。また、同様の分離を行う他のカラムを同じように組み合わせることもできる。一態様においては、異性化区域の出口からの異性化体を、反応区域生成物と一緒に共処理するために反応区域生成物蒸留アセンブリの入口に送る。この態様により、二重の装置を排除することによって設備コストが減少する。示されていない態様においては、異性化区域及び反応区域が共通の水素ガス循環システムを共有する。例えば、異性化及びトランスアルキル化反応器からの流出流を、2つの個々の生成物分離器又は単一の組み合わされた生成物分離器中に流し入れることができ、1つ又は複数の分離器からのガスは所望のように連続及び/又は平行の個々の反応器に再循環するために混合する。
【0064】
本発明方法によるトランスアルキル化は多環式芳香族物質の一部(全部ではない)が転化するように運転することができるので、多環式芳香族物質の増加が起こる可能性がある。パージの必要性なしに安定状態の条件を達成することができるが、本発明方法では、一態様においてはキシレンカラム116からより重質のフラクションの一部を連続的又は断続的に除去して、トランスアルキル化反応器144への所望の多環式芳香族物質の濃度を保持する。このパージは、上記に記載したようにキシレンカラム116から第2の高沸点フラクションとしてとることができ、或いはライン159で示されるような高沸点フラクションのアリコート部分であってもよい。
【0065】
パージは排出して、例えば燃料として用いるか、或いは好ましくはパージカラム161内で分別蒸留にかけることができる。パージカラム161はC9及びC10芳香族物質に富む塔頂流を与え、これはライン163を通してライン142へ、次にトランスアルキル化反応器144へ送ることができる。この流れの一部又は全部を、ライン164を通して副生成物として、例えば溶媒として用いるために回収することができる。パージカラム161内の塔底フラクションはC11+芳香族物質に富んでおり、排出して例えば燃料として用いることができる。パージはキシレンカラム116の高沸点フラクションの一部にしか過ぎず、例えばしばしば高沸点フラクションの50質量%未満、好ましくは20質量%未満にしか過ぎないので、パージカラムは、高沸点フラクション全体を処理するのに用いる重質分蒸留カラムよりも実質的により小さくすることができ、より低い熱効率しか必要でなくすることができる。
【0066】
図2及び図3は、トランスアルキル化及びキシレン異性化の統合反応器システムを含む種々の反応区域を示す。図3は、単一の反応器202内に2つの区域を有する反応器システム200を示す。示されているように、容器202は、2つの別個の触媒床であるトランスアルキル化触媒床204及びキシレン異性化床206を含む。示されていない他の態様においては、トランスアルキル化、オレフィン除去、及びキシレン異性化のための活性を有する単一の触媒床を用いる。反応容器202への供給流は、ライン208、並びにライン210及び210Aの一方又は両方によって与えられる。ライン102から、或いは更なる分別工程を用いる場合にはライン162からのC8芳香族物質及びオレフィンを含む供給材料がライン208を通して与えられ、キシレンカラムからのC9+芳香族物質を含む高沸点フラクションがライン210を通して与えられる。更なるベンゼン及び/又はトルエンを触媒床204に供給する場合には、示されているラインの1つ又は別の専用のラインを用いることができる。所望の場合には、ライン124から導かれる非平衡キシレン混合物の全部又は一部を、示されているラインの1つを通してか又は専用のラインを通して触媒床204に導入することができ、及び/又はライン124からのこの混合物の全部又は一部を、ライン210Aを通して触媒床204と206の間に導入することができる。異性化体又は反応区域生成物は、ライン148と同じように反応区域生成物蒸留アセンブリと流体連絡しているライン212を通して排出することができる。
【0067】
図2において一般的に300によって示されるシステムは、連続流動配列の2つの反応器を用いることを含む。トランスアルキル化反応器302は、その中に触媒床304を有する。トランスアルキル化反応器302への供給流はライン306によって与えられる。1つのラインが示されているが、供給成分を別々のラインによって与えて反応器302内で反応混合物を形成することが考えられる。ライン306によって与えられる供給成分は、ライン102又はライン162からの供給材料、及びキシレンカラムからのC9+芳香族物質を含む高沸点フラクションである。所望の場合には、図1のライン124から導かれる非平衡キシレン混合物の全部又は一部を、ライン306を通してトランスアルキル化反応器302中に導入することができる。ライン308は、トランスアルキル化生成物を反応器302からキシレン異性化反応器310へ送るように構成されている。示されているように、ライン314は、ライン124から導かれる非平衡キシレン混合物の全部又は一部をキシレン異性化反応器310中に導入するように与えられている。キシレン異性化反応器は触媒床312を含む。異性化体又は反応区域生成物は、ライン148と同じように反応区域生成物蒸留アセンブリと流体連絡しているライン316を通して排出することができる。
【0068】
したがって、本発明によれば、トランスアルキル化区域を有することをうまく活用し、同時にオレフィンを除去することができる種々のフロースキームが可能であり、本発明はこれらを包含する。幾つかの態様においては反応区域はトランスアルキル化区域であり;他の態様においては反応区域は連続か又は組み合わされたトランスアルキル化及び異性化区域を含む。示されていない他の態様においては、異性化区域の出口からのライン128中の異性化体は、一部をキシレン蒸留カラムに再循環する前に、トランスアルキル化生成物と組み合わせて分離するために反応区域生成物蒸留アセンブリに送られる。示されていない他の態様においては、反応区域生成物蒸留アセンブリは、キシレンカラムの入口へのC8+芳香族物質の流れを与える少なくとも1つの出口を有する単一の蒸留カラムを含む。
【0069】
一態様においては、キシレンループへ送られるキシレン製造設備への供給材料の実質的に全部をトランスアルキル化区域内で処理して、キシレンを製造し且つオレフィン含量を減少させる。幾つかの態様においては、供給材料の1以上の部分をキシレンループへは送らず、必要ではないが、かかる部分をトランスアルキル化区域内で処理して、ここで例えば過剰のベンゼン、トルエン、又は他の生成物を設備から運び出すことができる。他の態様においては、C8芳香族化合物を含む流れを、別の調整された供給材料から、及び/又は供給材料蒸留装置内で供給材料を分離することによって得て、これをキシレンカラムに送り、一方、キシレンカラムへ送られる供給材料の残りは、まずトランスアルキル化区域に送ってキシレンを製造し且つオレフィンを減少させる。
【0070】
図4に示すように、オレフィン及び芳香族化合物を含む供給材料は、導管102を通して供給材料蒸留装置158に送り、ここでオレフィン及びC9+芳香族化合物を含む流れを製造し、出口並びに導管162及び142を通して反応区域144に送る。供給材料蒸留装置158においては、また、ベンゼン及びトルエンの少なくとも1つを含む流れが出口及び導管160を通して製造され、これを所望のように反応区域144に送ってキシレンの製造を増加させ且つオレフィン含量を減少させる。更に、供給材料蒸留装置158においては、C8芳香族化合物を含む流れが製造され、これを出口及び導管165を通してキシレンカラム116に送る。示されていない他の態様においては、供給材料蒸留装置は多重カラムを含み、C8芳香族化合物を含む流れがカラム塔頂流又は塔底流として得られる。したがって、反応区域144により相当量の供給材料オレフィンが減少し、一方、トランスアルキル化供給流はキシレンが低減しているので1パスあたりより多い量のキシレンが製造される。導管165を通してキシレンカラムに送られるC8芳香族化合物に富む供給材料の部分は、オレフィンを含むと思われる。しかしながら、キシレン製造設備において必要なオレフィン除去能は、トランスアルキル化区域内で処理される供給材料の他の部分からオレフィンが除去されることにより大きく減少する。上述のように、他の芳香族化合物をキシレンへ転化させ且つオレフィンを減少させるためにトランスアルキル化区域に送りながら、キシレンに富む流れを処理するためにオレフィン除去区域117を用いることが好ましい。
【0071】
上記から、以下の更なる非限定的な態様が容易に認識される。オレフィン除去装置117はクレー処理器であってよい。他の態様においては、キシレン異性化区域の出口は反応区域生成物蒸留アセンブリの入口と流体連絡している。
【0072】
一態様においては、異性化体蒸留アセンブリは、(a)キシレン異性化区域126の出口と流体連絡している入口、第1の出口、及び第2の出口を有し、第1の出口からベンゼンを含む流れ、及び第2の出口からC7+芳香族物質を含む流れを排出する軽質分カラム130;及び(b)軽質分カラムの第2の出口と流体連絡している入口、第1の出口、及び第2の出口を有し、第1の出口からトルエンを含む流れ、及び第2の出口からC8+芳香族物質を含む流れを排出する脱ヘプタン化カラム136;を含む。場合によっては、軽質分カラムの第1の出口132及び脱ヘプタン化カラムの第1の出口138の少なくとも1つは、反応区域144の入口と流体連絡している。
【0073】
一態様においては、反応区域生成物蒸留アセンブリは、(a)反応区域144の出口と流体連絡している入口、及び出口を有し、出口からC6+芳香族物質を含む流れを排出するストリッピングカラム150;(b)ストリッピングカラムの出口と流体連絡している入口、第1の出口、及び第2の出口を有し、第1の出口からベンゼンを含む流れ、及び第2の出口からC7+芳香族物質を含む流れを排出するベンゼンカラム104;及び(c)ベンゼンカラムの第2の出口と流体連絡している入口、第1の出口、及び第2の出口を有し、第1の出口からトルエンを含む流れ、及び第2の出口からC8+芳香族物質を含む流れを排出し、第2の出口はキシレン蒸留カラム116と流体連絡しているトルエンカラム110;を含む。場合によっては、トルエンカラムの第1の出口112及びベンゼンカラムの第1の出口106の少なくとも1つは、反応区域144の入口と流体連絡している。
【0074】
一態様においては、反応区域144は更にキシレン異性化区域126を含み、ここでキシレン異性化区域の入口は第1の反応器の出口と流体連絡しており、キシレン異性化区域の出口は反応区域生成物蒸留アセンブリの入口と流体連絡している。他の態様においては、反応区域144は更にキシレン異性化区域126を含み、反応区域は、第1の床内にトランスアルキル化及びオレフィン転化触媒、及び第2の床内にキシレン異性化触媒を含み;反応区域の入口は第1の床と流体連絡しており、キシレン異性化区域の入口は第2の床と流体連絡しており、第1の床の出口は第2の床と流体連絡しており、キシレン異性化区域の出口は第2の床及び反応区域生成物蒸留アセンブリの入口と流体連絡している。他の態様においては、供給流蒸留装置158によってベンゼン及びトルエンの少なくとも1つを含む流れが製造され、これを反応区域の入口に直接送る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも50の臭素指数を有し、少なくとも6個の炭素原子を有する芳香族化合物を含む供給流をトランスアルキル化し且つそれからオレフィンを除去する方法であって、供給流を、酸性分子篩及び少なくとも1種類の金属成分を含むトランスアルキル化触媒とトランスアルキル化条件で接触させて、増加したキシレン濃度及び供給流の臭素指数よりも少なくとも60%低い臭素指数を有するトランスアルキル化生成物を与えることを含む上記方法。
【請求項2】
トランスアルキル化条件が、100℃〜425℃の範囲の温度、100kPa〜10MPa(絶対圧)の範囲の圧力、及び0.1hr−1〜30hr−1の範囲の重量毎時空間速度(WHSV)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
酸性分子篩が、BEA、MTW、FAU、MOR、LTL、ITH、ITW、MEL、FER、TON、IWW、MFI、EUO、MTT、HEU、MFS、CHA、ERI、及びLTAの少なくとも1つを含み;少なくとも1種類の金属成分が、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、オスミウム、イリジウム、レニウム、スズ、ゲルマニウム、鉛、鉄、コバルト、ニッケル、インジウム、ガリウム、亜鉛、ウラン、ジスプロシウム、及びタリウムの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
供給流がトルエン及びC芳香族物質の少なくとも1つを含み、供給流の臭素指数が少なくとも100である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
供給流がC芳香族物質を含み、少なくとも190℃の終留点を有し;供給流中の全C芳香族物質の20モル%〜75モル%を転化させる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
環損失が、供給流中の単環式芳香族物質のモル数を基準として2モル%未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
金属成分が、評価条件下で測定して200%未満の触媒の失活速度を与える量で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
(a)キシレン及びC芳香族物質を含むキシレンループ供給流を蒸留によって分別して、キシレンを含む低沸点フラクション及びC芳香族物質を含む少なくとも1つの高沸点フラクションを与え;
(b)少なくとも1つのキシレン異性体分離区域において低沸点フラクションを分離して、キシレン異性体を回収し、キシレン異性体が低減したC芳香族物質流を与え;
(c)キシレン異性体が低減したC芳香族物質流を異性化条件下で異性化して、平衡に近いキシレン異性体の分布を有する異性化体を与え;
(d)分別蒸留によって異性化体からキシレンを含む再循環流を分離し;
(e)再循環流を工程(a)に送り;
(f)分別蒸留によってトランスアルキル化生成物からC及びより低級の炭化水素を分離してC含有フラクションを与え;
(g)C含有フラクションの少なくとも一部をキシレンループ供給流の少なくとも一部として工程(a)に送り;そして
(h)工程(a)からのC芳香族物質を含む少なくとも1つの高沸点フラクションの少なくとも一部を供給流と混合して、少なくとも50の臭素指数及び少なくとも210℃の終留点を有する混合物を与える;
ことを更に含み;
工程(h)の混合物をトランスアルキル化触媒と接触させ;混合物はベンゼン及びトルエンの少なくとも1つを更に含み;ベンゼン及びトルエンの合計モル数とC芳香族物質の全モル数との比が0.01:1より大きく;供給流と混合物中のC芳香族物質を含む少なくとも1つの高沸点フラクションとの質量比が0.01:1〜3:1の間である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも50の臭素指数を有し、少なくとも6個の炭素原子を有する芳香族化合物を含む供給流をトランスアルキル化し且つそれからオレフィンを除去する装置であって;
(a)入口及び出口を有し、オレフィン及び少なくとも6個の炭素原子を有する芳香族化合物を含む流れを出口から排出する供給流蒸留装置;
(b)酸性分子篩及び少なくとも1種類の金属成分を含むトランスアルキル化及びオレフィン転化触媒を含む少なくとも第1の反応器を含み、少なくとも1つの入口及び少なくとも1つの出口を有する反応区域;
(c)供給流蒸留装置の出口から反応区域の入口への流体連絡を与え、オレフィン除去区域への流体連絡は与えない導管;
(d)少なくとも1つの蒸留カラムを含み、反応区域の出口と流体連絡している少なくとも1つの入口、及び出口を有し、C芳香族物質を含む流れを出口から排出する反応区域生成物蒸留アセンブリ;
(e)反応区域生成物蒸留アセンブリの出口と流体連絡している入口、第1の出口、及び第2の出口を有し、少なくとも2種類のキシレン異性体を含む流れを第1の出口から排出するキシレン蒸留カラム;
(f)キシレン蒸留カラムの第1の出口と流体連絡している入口、第1の出口、及び第2の出口を有し、キシレン異性体を第1の出口から排出し、キシレン異性体が低減した非平衡キシレン異性体流を第2の出口から排出する選択的キシレン異性体分離アセンブリ;
(g)キシレン異性体触媒を含み、少なくとも1つの入口及び少なくとも1つの出口を有し、入口が選択的キシレン異性体分離アセンブリの第2の出口と流体連絡しているキシレン異性化区域;及び
(i)キシレン蒸留カラムの第2の出口と流体連絡している入口、反応区域の入口と流体連絡している第1の出口、及びパージ流を排出する第2の出口を有するパージカラム;
を含む上記装置。
【請求項10】
(a)少なくとも1つの蒸留カラムを含み、キシレン異性化区域の出口と流体連絡している少なくとも1つの入口、及び出口を有し、C芳香族物質を含む流れを、キシレン蒸留カラムの入口と流体連絡している出口から排出する異性化体蒸留アセンブリ;
(b)キシレン蒸留カラムの第1の出口と流体連絡している入口、及び選択的キシレン異性体分離アセンブリの入口と流体連絡している出口を有するオレフィン除去区域;
(c)供給流蒸留装置内の第2の出口;及び
(d)供給流蒸留装置の第2の出口とキシレン蒸留カラムの入口との間の流体連絡を与え、オレフィン除去区域との流体連絡は与えない第2の導管;
を更に含む、請求項9に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−535223(P2010−535223A)
【公表日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520041(P2010−520041)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【国際出願番号】PCT/US2008/069309
【国際公開番号】WO2009/017937
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(598055242)ユーオーピー エルエルシー (182)
【Fターム(参考)】