説明

侵入制限エリアのあるクレーン運転方法

【課題】天井走行クレーン側で地上側の設備の運転状況を把握して地上側の設備との干渉を防止して天井走行クレーンによる吊り荷の運搬、地上側の設備へのロード、アンロードを安全に効率よく行うようにした侵入制限エリアのあるクレーン運転方法を提供すること。
【解決手段】天井走行クレーンK及び地上側の設備Mの双方に通信手段4、5を備えて双方向で通信可能とし、地上側の設備Mの運転状態と天井走行クレーンKの位置情報を双方で共有し、相互にインターロックをとって天井走行クレーンKの運転操作を行うように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、侵入制限エリアのあるクレーン運転方法に関し、特に、天井走行クレーンの下方に配設された地上側の設備との干渉を回避する必要が生じ得る場合、侵入制限エリアにおける天井走行クレーンの運転を安全に行えるようにした侵入制限エリアのあるクレーン運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、天井走行クレーンKは、図2に示すように、クレーンガーダ1にオペレータ室3を備え、該オペレータ室3にオペレータが乗り込み、地上側に設置された設備M、特に限定されるものではないが、例えば、高価なマシニングセンターの運転状況に合わせて該クレーンを操作しているが、この地上側の設備が配設されたエリアは、地上側の設備の運転に支障を与えないよう、さらには吊り荷等の衝突による破損を防止するため、地上側の設備の運転状況に合わせて天井走行クレーンを停止してその侵入を一時制限したり、或いは徐行運転を行ったりする侵入制限エリアAとなっている。
この侵入制限エリアAでのクレーンの操作は、クレーンガーダ1に配設されたオペレータ室3に搭乗しているオペレータの目視による判断にて地上側に設置された設備の運転状況を把握して行うようにしている。
【0003】
したがって、オペレータの目視により天井走行クレーンを運転しているため、天井走行クレーンが地上側の設備と干渉する危険が常に存在し、オペレータの未熟さや疲れなどによりうっかりミスによる衝突にて高価な地上側の設備や天井走行クレーンを破損する事故が発生したり、さらには天井走行クレーンの衝突を防止するため、侵入制限エリア侵入時一旦停止させるので無駄な時間待ちが生じて運転効率が悪いという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、侵入制限エリアのあるクレーン運転の有する問題点に鑑み、天井走行クレーン側で地上側の設備の運転状況を把握して地上側の設備との干渉を防止して天井走行クレーンによる吊り荷の運搬、地上側の設備へのロード、アンロードを安全に効率よく行うようにした侵入制限エリアのあるクレーン運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の侵入制限エリアのあるクレーン運転方法は、天井走行クレーンと、該天井走行クレーンの走行方向下方位置で侵入制限エリア内に配設された地上側の設備との双方に通信手段を備え、地上側の設備の運転状態と天井走行クレーンの位置情報を天井走行クレーンと地上側の設備の双方で共有し、相互にインターロックをとって天井走行クレーンの運転操作を行うように構成したことを特徴とする。
【0006】
この場合において、地上側の設備の運転状態を優先して天井走行クレーンを運転するように構成することができる。
【0007】
また、地上側の設備の運転状態を示す表示装置を、天井走行クレーン側及び/又は地上側の設備に配設することができる。
【0008】
また、天井走行クレーン走行路に沿って侵入制限エリアの入口と出口の双方の位置に、天井走行クレーンの走行を検知する検知手段を配設して該天井走行クレーンの侵入制限エリア内への侵入を一時的に制限するように構成することができる。
【0009】
また、天井走行クレーン走行路に沿って侵入制限エリアの入口の位置に、天井走行クレーンの走行を検知する検知手段を配設し、該検知手段にて天井走行クレーンの侵入を検知すると、該検知手段が動作する近傍エリアに当該天井走行クレーンを一旦停止させ、地上側の設備の運転状態の確認の信号の授受を通信手段を介して行い、天井走行クレーンの侵入制限エリア内への侵入が可の状態をオペレータが確認した後、天井走行クレーンを再起動して、侵入運転を継続するように構成することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の侵入制限エリアのあるクレーン運転方法によれば、天井走行クレーンと、該天井走行クレーンの走行方向下方位置で侵入制限エリア内に配設された地上側の設備との双方に通信手段を備え、地上側の設備の運転状態と天井走行クレーンの位置情報を天井走行クレーンと地上側の設備の双方で共有し、相互にインターロックをとって天井走行クレーンの運転操作を行うように構成することにより、天井走行クレーン側で地上側の設備の運転状態を把握して天井走行クレーンの運転することができるので、地上側の設備と干渉するのを未然に防止して未熟なオペレータでも吊り荷の運搬、地上側の設備へのロード、アンロードを安全に効率よく行うことができ、かつ、天井走行クレーン及び地上側の設備の運転効率を向上させることができる。
【0011】
また、地上側の設備の運転状態を優先して天井走行クレーンを運転するように構成することにより、クレーン走行路を高速で走行する天井走行クレーンにおいても、高価な地上側の設備との衝突を確実に防止して地上側の設備、天井走行クレーン間の安全を確保することができる。
【0012】
また、地上側の設備の運転状態を示す表示装置を、天井走行クレーン側及び/又は地上側の設備に配設することにより、天井走行クレーン側、地上側の設備の双方で地上側の設備の運転状態を確実に把握することができるので、天井走行クレーンを安全に効率よく運転することができる。
【0013】
また、天井走行クレーン走行路に沿って侵入制限エリアの入口と出口の双方の位置に、天井走行クレーンの走行を検知する検知手段を配設して該天井走行クレーンの侵入制限エリア内への侵入を一時的に制限するように構成することにより、オペレータのうっかりミスを未然に防止し、天井走行クレーンの安全運転を確保することができる。
【0014】
また、天井走行クレーン走行路に沿って侵入制限エリアの入口の位置に、天井走行クレーンの走行を検知する検知手段を配設し、該検知手段にて天井走行クレーンの侵入を検知すると、該検知手段が動作する近傍エリアに当該天井走行クレーンを一旦停止させ、地上側の設備の運転状態の確認の信号の授受を通信手段を介して行い、天井走行クレーンの侵入制限エリア内への侵入が可の状態をオペレータが確認した後、天井走行クレーンを再起動して、侵入運転を継続するように構成することにより、天井走行クレーンをより安全に運転することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の侵入制限エリアのあるクレーン運転方法の一実施例を示す平面図である。
【図2】同側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の侵入制限エリアのあるクレーン運転方法の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0017】
図1〜図2に、本発明の侵入制限エリアのあるクレーン運転方法の一実施例を示す。
【0018】
製造ライン或いは搬送ライン等に沿って配列されるヤード間を走行レールRに沿って走行可能に天井走行クレーンKを配設するとともに、該ラインの所定位置に地上側の設備Mを配設し、この地上側の設備Mの配設ゾーンは、天井走行クレーンKの侵入制限エリアAとされ、低速で走行するように配設する。
また、ヤード内は、多くの場合、この侵入制限エリアAに隣接して定格速度走行区間Bが連続するように配設されている。
【0019】
この天井走行クレーンKは、従来の天井走行クレーンKと同様に走行ラインに沿って敷設した走行レールR上をオペレータ室3を備えたクレーンガーダ1が走行し、かつ、このガーダ上を荷Lの吊り上げ動作を行うクラブ2が横行するように構成されている。
【0020】
また、天井走行クレーンK及び地上側の設備Mの双方に通信手段4及び通信手段5、これは特に限定されるものではないが、例えば、無線通信手段を備えて双方向で通信可能とし、これにより地上側の設備Mの運転状態と天井走行クレーンKの位置情報を双方で共有し、相互にインターロックをとって天井走行クレーンKを、さらには地上側の設備Mの運転状態を優先して天井走行クレーンKを運転するようにする。
【0021】
この場合、地上側の設備Mの運転状態を示す表示装置6を、天井走行クレーンK側及び/又は地上側の設備Mに配設するようにする。
この表示装置6として、特に限定されるものではないが、例えば、天井走行クレーンの侵入制限エリアA内への侵入を可とする場合を緑色のランプを、侵入を不可とする場合を赤色のランプを、またエリアA内侵入を示す場合を黄色のランプをそれぞれ選択的に点灯するようし、一目でその状況を識別できるようにすることもできる。
これにより、天井走行クレーン側でも地上側の設備Mの運転状態を確実に把握することができるので、天井走行クレーンKの安全運転に寄与することができる。
【0022】
また、天井走行クレーン走行路に沿って侵入制限エリアAの入口と出口の双方の位置に、天井走行クレーンKの走行を検知する検知手段7を配設して該天井走行クレーンKの該エリアA内への侵入を一時的に制限するようにする。この検知手段7は、天井走行クレーンの走行方向の左右いずれの方向から走行する場合でも、必ず侵入制限エリア内への侵入を検知できるよう、例えば、図1に示すように、侵入制限エリアAの前後位置に、すなわち、天井走行クレーン走行方向の前後位置に配設するようにする。
【0023】
また、この検知手段7としては、特に限定されるものではなく、例えば、図1に示すように、天井走行クレーン側に取り付けたリミットスイッチ71と、走行路や建屋等の固定側に取り付けて走行するクレーン側のリミットスイッチ71を操作できるようにしたストライカ72とより構成し、これにより天井走行クレーンKが走行して侵入制限エリアAに近づき、ストライカ72にてクレーン側のリミットスイッチ71が操作されて天井走行クレーンKの走行を検知し、侵入を制限するようにしている。
また、リミットスイッチ71を固定側に、ストライカ72をクレーン側に配設しても同じ効果を奏するものである。
【0024】
さらにこの検知手段7としては、前述のリミットスイッチのほかに、エンコーダ付モータで自動運転に応用することもできる。
これにより、オペレータがうっかりミスによって、一旦停止せずに、侵入制限エリアAに侵入しかけても、自動で天井走行クレーンKを停止せしめ、安全運転を確保することができるとともに、地上側の設備Mの運転効率の向上、天井走行クレーンK、地上側の設備Mの安全を確保することができる。
【0025】
次に、この侵入制限エリアのあるクレーン運転方法の作用について説明する。
天井走行クレーンKを運転する場合、信号は地上側の設備Mを優先して判断し、クレーン側に信号を出すようにする。そして、クレーン側から地上側の設備Mへエリア信号を送り、地上側の設備Mでは、このクレーン側のエリア信号を受信して地上側の設備Mの状態をエリア信号でクレーン側へ侵入可或いは侵入不可の信号を送るようにする。
【0026】
したがって、天井走行クレーンKは走行レールRに沿って定格速度走行区間Bを侵入制限エリアAに向かって定格速度で走行してくる。このとき、地上側の設備Mの通信手段4から発信されるエリア信号を、天井走行クレーンKの通信手段5にて受信し、天井走行クレーンKが侵入制限エリアAの状態を認識することができる。
【0027】
また、天井走行クレーンK側からも通信手段5より地上側の設備Mの通信手段4へエリア信号を送信すると、地上側の設備Mの通信手段4にて天井走行クレーンKのエリア信号を受信するとともに、地上側の設備Mの運転状態をエリア信号で天井走行クレーンK側へ侵入制限エリアA内への侵入可或いは侵入不可の信号を送る。
これにより、天井走行クレーンK側に、或いは天井走行クレーンKと地上側の設備Mの表示装置6にてその状態が表示され、天井走行クレーンK側において侵入制限エリアAとの相対位置関係が認識されることにより、天井走行クレーンKは走行レールRに沿って定格速度走行区間Bより低速で、或いは所定の減速速度で侵入制限エリアA内への侵入できるようになる。
【0028】
そして、天井走行クレーンKが侵入制限エリアA内への侵入する際、検知手段7にて検知する。
すなわち、侵入制限エリアAの入口の位置に配設されたストライカ72にて天井走行クレーンK側に配設したリミットスイッチ71が操作されることで天井走行クレーンKが侵入制限エリアA内への侵入したことを検知する。
【0029】
ところで、天井走行クレーンKをより安全に運転するために、次のように、一旦停止させる方法もある。
すなわち、侵入制限エリアAに天井走行クレーンKが侵入する際、天井走行クレーンKの走行を検知する検知手段7にて天井走行クレーンKの侵入を検知すると、その検知手段7が動作する近傍エリアに、具体的には、0〜2m程度侵入した後、天井走行クレーンKを一旦停止させ、地上側の設備Mの運転状態の確認の信号の授受を通信手段4及び通信手段5を介して行い、天井走行クレーンKの侵入制限エリアA内への侵入が可の状態をオペレータが確認した後、天井走行クレーンKを再起動して、侵入運転を継続するようにする。
【0030】
また、この侵入制限エリアA内に配設した地上側の設備Mの作業エリアは、天井走行クレーンの進行方向と幅方向だけでなく高さ方向にも及ぶ。
したがって、地上側の設備Mからはその運転状態により高さ信号を発するようにする。
この侵入制限エリアAには地上側の設備Mの高さ方向の安全作業エリアを設定してあり、例えば、図2の鎖線で示す高さ位置を高さ方向の安全作業エリアとする。
【0031】
これにより、天井走行クレーンKは侵入制限エリアAとの相対位置関係だけでなく、天井走行クレーンKによる吊り荷高さまでを検知し、地上側の設備Mの運転状態を優先して天井走行クレーンKの侵入制限エリアA内への制限を行うようにして、吊り荷の運搬、地上側の設備Mへのロード、アンロードを安全に効率よく行うことができる。
なお、侵入制限エリアA内への天井走行クレーンKの侵入後は地上側の設備Mの運転動作を制限するようにする。
天井走行クレーンKを侵入制限エリアA内で停止させ、所定の作業を完了すると、天井走行クレーンKは再び走行すると、侵入制限エリアAの出口位置に配設した検知手段7にてその位置を検知すると該天井走行クレーンKを定格速度で走行させ、次のヤードへと進行するようにする。このようにして、天井走行クレーンKの安全運転を確保するとともに、地上側の設備Mの運転効率の向上を図ることができるものとなる。
【0032】
以上、本発明の侵入制限エリアのあるクレーン運転方法について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の侵入制限エリアのあるクレーン運転方法は、天井走行クレーンと地上側の設備の双方に通信手段を備えて天井走行クレーン側で地上側の設備の運転状況を把握するようにするという特性を有していることから、天井走行クレーンの用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0034】
A 侵入制限エリア
B 天井走行クレーンの定格速度走行区間
K 天井走行クレーン
L 吊り荷
M 地上側の設備
1 クレーンガーダ
2 クラブ
3 オペレータ室
4 地上側の設備の通信手段
5 天井走行クレーン側の通信手段
6 表示装置
7 検知手段
71 リミットスイッチ
72 ストライカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井走行クレーンと、該天井走行クレーンの走行方向下方位置で侵入制限エリア内に配設された地上側の設備との双方に双方向性の通信手段を備え、地上側の設備の運転状態と天井走行クレーンの位置情報を天井走行クレーンと地上側の設備の双方で共有し、相互にインターロックをとって天井走行クレーンの運転操作を行うように構成したことを特徴とする侵入制限エリアのあるクレーン運転方法。
【請求項2】
地上側の設備の運転状態を優先して天井走行クレーンを運転するように構成したことを特徴とする請求項1記載の侵入制限エリアのあるクレーン運転方法。
【請求項3】
地上側の設備の運転状態を示す表示装置を、天井走行クレーン側及び/又は地上側の設備に配設したことを特徴とする請求項1又は2記載の侵入制限エリアのあるクレーン運転方法。
【請求項4】
天井走行クレーン走行路に沿って侵入制限エリアの入口と出口の双方の位置に、天井走行クレーンの走行を検知する検知手段を配設して該天井走行クレーンの侵入制限エリア内への侵入を一時的に制限するように構成したことを特徴とする請求項1、2又は3記載の侵入制限エリアのあるクレーン運転方法。
【請求項5】
天井走行クレーン走行路に沿って侵入制限エリアの入口の位置に、天井走行クレーンの走行を検知する検知手段を配設し、該検知手段にて天井走行クレーンの侵入を検知すると、該検知手段が動作する近傍エリアに当該天井走行クレーンを一旦停止させ、地上側の設備の運転状態の確認の信号の授受を通信手段を介して行い、天井走行クレーンの侵入制限エリア内への侵入が可の状態をオペレータが確認した後、天井走行クレーンを再起動して、侵入運転を継続するように構成したことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の侵入制限エリアのあるクレーン運転方法。

【図1】
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【図2】
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