説明

便器用洗浄剤組成物

【課題】便器への塗布容易性と洗浄力の持続性に優れた便器用洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】(a)アルキル基の炭素数が14〜22でエチレンオキサイド平均付加モル数が20〜80であるポリオキシエチレンアルキルエーテル、及び(b)エタノールを含有し、25℃における粘度が50〜3000mPa・sである、便器用洗浄剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は便器の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水洗便器の洗浄に関して、従来、タンク内の洗浄水に洗浄剤有効成分を溶出させて、持続的に便器の汚れを洗浄し、清潔な状態を保たせることを目的とした洗浄剤組成物が知られている。これらは、トイレ用のオートクリーナーとして知られている。
【0003】
また、水洗便器の形態に制限されずに適用できる手段として、便器表面に徐溶性の被膜を形成して、持続的に便器の洗浄等を行う方法も知られている。例えば特許文献1〜2には、容器から吐出した成分が、任意の部分に対し付着固化した後、水によって徐溶化しながら有効成分を徐放することによって洗浄する洗浄方法が記載されている。
【0004】
また、便器表面に徐溶性のゲルを付着させて、洗浄成分を徐放させて持続的に便器の洗浄等を行う方法も知られている。例えば特許文献3には、15000mPa・s以上の粘度を有する剤を対象物に直接適用することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−187511号公報
【特許文献2】特開2006−206882号公報
【特許文献3】国際公開第02/26925号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
洗浄成分を徐放する被膜を形成できる組成物を用いて便器を洗浄するにあたり、便器への塗布容易性(容器からの洗浄剤組成物の出しやすさ、便器への付着しやすさ、均一かつ広い範囲への洗浄剤組成物の塗布のしやすさ)と洗浄力の持続性に優れることが望まれる。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されている水溶解遅延成分と洗浄成分を含む組成物は乾燥過程が長時間になると難溶化や崩落を起こし、成分の徐溶特性が損なわれてしまう。また、特許文献2に記載されている水溶解遅延成分と薬剤成分と溶媒とを含む組成物は洗浄力に寄与する成分の含有量が少なく、十分な洗浄力を有していない。それに加えて、成分の徐溶特性も十分ではない。特許文献3に記載されている組成物は極めて高粘度であり、便器表面に組成物を貼り付けて、部分的に滞留するように設計されているため、便器表面に均一塗布する用途には適していない。
【0008】
本発明の課題は、便器への塗布容易性と洗浄力の持続性に優れた便器用洗浄剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、(a)アルキル基の炭素数が14〜22でエチレンオキサイド平均付加モル数が20〜80であるポリオキシエチレンアルキルエーテル〔以下、(a)成分という〕、及び(b)エタノール〔以下、(b)成分という〕を含有し、25℃における粘度が50〜3000mPa・sである、便器用洗浄剤組成物に関する。
【0010】
また、本発明は、下記1〜3の工程を含む便器の洗浄方法に関する。
工程1:上記本発明の便器用洗浄剤組成物を便器に塗布する工程。
工程2:工程1の後、1分〜3時間放置することで、工程1で塗布された組成物から(b)を揮発させて塗布前の組成物よりも高粘度のゲルを形成させる工程。
工程3:工程2で形成させたゲルに水を適用して(a)と水とを含む洗浄媒体を生じせしめ、該洗浄媒体を便器に適用する工程。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、便器への塗布容易性と洗浄力の持続性に優れた便器用洗浄剤組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<洗浄剤組成物>
【0013】
本発明の洗浄剤組成物の25℃における粘度(以下、初期粘度という)は50〜3000mPa・s、好ましくは100〜2500mPa・s、より好ましくは150〜2000mPa・sである。洗浄剤組成物の便器への付着性の観点より50mP・s以上であり、組成物を容器に収容して用いる場合の排出容易性等の作業性の観点より3000mP・s以下である。
【0014】
本発明の洗浄剤組成物は、(a)成分として、アルキル基の炭素数が14〜22でエチレンオキサイド平均付加モル数が20〜80であるポリオキシエチレンアルキルエーテルを含有する。(a)成分は洗浄成分であるとともに、上記初期粘度の付与やエタノール揮発後の高粘度ゲルの形成に寄与する成分である。(a)成分のアルキル基の炭素数は14〜22であり、16〜18が好ましい。便器への付着性及び洗浄力持続性の観点から14以上であり、容器からの組成物の抜き出しやすさの観点から22以下である。また、(a)成分のエチレンオキサイド平均付加モル数は20〜80であり、25〜70、更に30〜60が好ましい。洗浄力持続性の観点から20以上であり、便器への付着性の観点から80以下である。本発明の洗浄剤組成物は、(a)成分を14〜64質量%、更に15〜60質量%、より更に20〜50質量%含有することが好ましい。洗浄力持続性及び便器への付着性の観点から14質量%以上が好ましく、容器からの組成物の抜き出しやすさの観点から64質量%以下が好ましい。
【0015】
本発明の洗浄剤組成物は、(a)成分以外の洗浄成分を含有することができる。洗浄成分としては界面活性剤が好ましく、その中でも、(a)成分以外の非イオン性界面活性剤が好ましい。ここで、(a)成分以外の非イオン性界面活性剤としてはポリオキシエチレン(エチレンオキサイド平均付加モル数1〜6)鎖を有する界面活性剤が好ましく、具体的にはポリオキシエチレン(エチレンオキサイド平均付加モル数1〜6)アルケニル(炭素数8〜18)エーテル、ポリオキシエチレン(エチレンオキサイド平均付加モル数1〜6)アルキル(炭素数8〜18)フェニルエーテル、エチレンオキシド付加(エチレンオキサイド平均付加モル数1〜6)アルキル(炭素数8〜18)基またはアルケニル(炭素数8〜18)基含有非イオン性界面活性剤混合物、ポリオキシエチレン基(エチレンオキサイド平均付加モル数1〜6)含有アルキル(炭素数8〜18)アミンオキサイド、ポリオキシエチレン基(エチレンオキサイド平均付加モル数1〜6)含有脂肪酸(炭素数8〜18)アルカノールアミド等が挙げられる。
【0016】
本発明の洗浄剤組成物は、(b)成分として、エタノールを含有する。(b)成分は、(a)成分とともに上記初期粘度の付与に寄与する成分であり、また、揮発性成分であるため、組成物から(b)成分を揮発させることで組成物の粘度を上昇させることができる。本発明の洗浄剤組成物は、(b)成分を2〜30質量%、更に3〜15質量%含有することが好ましい。容器からの組成物の抜き出しやすさ、及び均一且つ広い範囲に塗布できる観点から2質量%以上が好ましく、便器への付着性及び洗浄力の持続性の観点から30質量%以下が好ましい。
【0017】
本発明の洗浄剤組成物は、(b)成分以外の揮発性のアルコールを含有することができる。ここで「揮発性成分」とは、20℃の飽和蒸気圧が1kPa以上であり、20℃、常圧で揮発する物質を指す。
【0018】
本発明の洗浄剤組成物には、殺菌性を付与する目的で炭素数6〜16、好ましくは8〜14の炭化水素基を1つ又は2つ有する4級アンモニウム塩型の殺菌性を有するカチオン性界面活性剤を配合しても良い。
【0019】
上記カチオン性界面活性剤としては、下記一般式(1)で表されるカチオン性界面活性剤及び一般式(2)で表されるカチオン性界面活性剤から選ばれる1種以上のカチオン性界面活性剤が好ましい。
【0020】
【化1】

【0021】
〔式中、R1は炭素数8〜18の炭化水素基又は
【0022】
【化2】

【0023】
(式中R5、R6、R7、R9、R10はそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基であり、R8、R11、R12はそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキレン基である。)で表わされる基を示し、R2、R3はそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基を表し、R4は炭素数1〜3のアルキレン基を表す。Z-は陰イオン基であり、好ましくはハロゲンイオン、アミノ酸イオン、脂肪酸セッケンアニオン残基、炭素数1〜30の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基若しくはアルケニル基を有するリン酸エステルアニオン残基、ホスホン酸エステルアニオン残基、スルホン酸エステルアニオン残基若しくは硫酸エステルのアニオン残基、又は重合度3以上のスチレンスルホン酸イオンを有するか若しくは置換基として炭化水素基を有することがある多環式芳香族化合物のスルホン化物のホルマリン縮合物を含有するアニオン性オリゴマー若しくはポリマーを示す。〕
【0024】
【化3】

【0025】
〔式中、R13及びR14はそれぞれ独立に炭素数6〜14、かつR13及びR14の合計炭素数が16〜26の長鎖アルキル基、長鎖アルケニル基または長鎖ヒドロキシアルキル基を示し、R15及びR16は独立に炭素数1〜3のアルキル基、ヒドロキシアルキル基又は−(OR18n−OH(式中R18は炭素数が2〜4のアルケニル基、nは1〜10の数を示す。)で表される基を示し、Z-は前記と同じ意味を示す。〕
【0026】
一般式(1)中、R1として洗浄力の観点から炭素数6〜18のアルキル基が好ましく、さらに炭素数8〜14のアルキル基が好ましい。一般式(2)中、R13及びR14はそれぞれ独立に炭素数8〜12のアルキル基が好ましい。また、一般式(1)及び(2)中のZ-としては、ハロゲンイオンが好ましい。
【0027】
上記カチオン界面活性剤の含有量は、殺菌性の点から、組成物中、0.1〜8質量%が好ましく、1〜5質量%がより好ましい。
【0028】
本発明の洗浄剤組成物には、洗浄性を向上する目的でビルダー成分を配合しても良い。ビルダー成分としては、以下のものが挙げられる。
【0029】
(i)アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン等のアミノ酸、及びそのアルカリ金属塩又はアルカノールアミン塩。
【0030】
(ii)ニトリロ三酢酸、イミノ二酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、ジエンコル酸等のアミノカルボン酸、及びそのアルカリ金属塩又はアルカノールアミン塩。
【0031】
(iii)ジグリコール酸、オキシジコハク酸、カルボキシメチルオキシコハク酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、リンゴ酸、オキシジコハク酸、グルコン酸、カルボキシメチルコハク酸、カルボキシメチル酒石酸等の有機酸、及びそのアルカリ金属塩又はアルカノールアミン塩。
【0032】
これらの中でも、クエン酸、リンゴ酸等のヒドロキシカルボン酸、エチレンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸等のアミノカルボン酸、及びこれらの塩が好ましい。塩の形態としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アルカノールアミン塩が好ましい。
【0033】
上記ビルダー成分の含有量は、洗浄力の点から、組成物中、0.1〜5質量%が好ましく、特に0.2〜3質量%が好ましい。
【0034】
本発明において、上記一般式(1)および(2)で示したカチオン性界面活性剤と、上記(i)〜(iii)に記したビルダー成分を組合わせて使用することで、便器水封部に発生するリング汚れの防止効果がより向上する。そのため、カチオン界面活性剤とビルダー成分を組合わせて使用することが好ましい。カチオン界面活性剤とビルダー成分の重量比は、カチオン界面活性剤/ビルダー成分で10/1〜1/10の範囲であることが好ましい。この理由については明確ではないが、ビルダー成分とカチオン界面活性剤が弱い相互作用を起こし、カチオン界面活性剤が便器表面に吸着安定化することを防ぐことにより、リング汚れ発生の起因となる水封部内で殺菌効果を発現すると考えられる。
【0035】
本発明の洗浄剤組成物は、上記各成分とともに水を含有する。水の含有量は、洗浄剤組成物の合計で100質量%となるように調整する量である。つまり、洗浄剤組成物の残部は水である。
【0036】
本発明の洗浄剤組成物は、(b)成分であるエタノールの揮発により、揮発前の組成物の粘度よりも高粘度のゲルを形成する。具体的には、(b)成分であるエタノールの揮発により形成されるゲルの粘度は、25℃で10Pa・s以上が好ましく、より好ましくは100Pa・s以上、更に好ましくは1000Pa・s以上である。このゲルの粘度は、洗浄剤組成物から(b)成分が揮発した後に形成されるゲルの粘度であり、例えば、TOKIMEC VISCOMETER MODEL BM(TOKIMEC INC製)を用いて測定することができる。以下、このゲルの粘度を便宜的に「揮発後粘度」という。このような揮発後粘度を有するゲルは組成物からエタノールが十分揮発することで形成でき、上記した便器表面への塗布操作後に、便器が設置されている環境温度(例えば室温)で、1分間〜3時間、乾燥する方法が最も簡便な方法として挙げられる。揮発後粘度はゲルの洗浄力持続性の観点より10Pa・s以上が好ましい。本発明の便器用洗浄剤組成物は、内径85mmのガラス製シャーレに均一に10gを塗布し、40℃、湿度50%で3時間乾燥させたとき、(b)の揮発により、25℃における粘度が10Pa・s以上のゲルを形成することが好ましい。
【0037】
また、(b)成分であるエタノールの揮発により形成されたゲルは、水に対して徐溶性であることが好ましい。ここで、水に対して徐溶性であるとは、組成物10gを内径約85mmのガラス製シャーレに均一に塗布し、40℃、湿度50%の環境下で3時間乾燥させて生じるゲルに、25℃の水道水10gを静かに加えて1分間放置した時に、前記水道水中に(a)成分の一部が溶解するような物性のことである。
【0038】
スクイズ容器に充填された本発明の組成物を吐出して便器表面に塗布する、スプレー容器に充填された本発明の組成物を噴射して便器表面に塗布する等の方法により便器表面に本発明の組成物を付着させ、エタノールが揮発するまで放置することで、上記揮発後粘度を有し、好ましくは水に対して徐溶性のゲルを形成させることができる。
【0039】
本発明の洗浄剤組成物の25℃でのpHは、好ましくは2〜13、より好ましくは3〜11、特に好ましくは3〜7である。pHは、(株)堀場製作所pHメータD−52S、pH電極6367−10Dを用いて測定したものである。
【0040】
<便器の洗浄方法>
本発明の便器の洗浄方法は、本発明の洗浄剤組成物を便器に塗布し、塗布された組成物から(b)エタノールを揮発させて、高粘度で好ましくは水に対して徐溶性のゲルを形成し、該ゲルに水を適用して(a)ポリオキシエチレンアルキルエーテルを溶出させて、便器を洗浄するものである。具体的には、下記1〜3の工程を含む。
工程1:本発明の便器用洗浄剤組成物を便器に塗布する工程。
工程2:工程1の後、1分〜3時間放置することで、工程1で塗布された組成物から(b)を揮発させて塗布前の組成物よりも高粘度のゲルを形成させる工程。
工程3:工程2で形成させたゲルに水を適用して(a)と水とを含む洗浄媒体を生じせしめ、該洗浄媒体を便器に適用する工程。
【0041】
工程1での洗浄剤組成物の便器への塗布は、スクイズ容器に充填された液体を吐出して便器表面に塗布する方法、スプレー容器に充填された液体を噴射して便器表面に塗布する方法等が挙げられる。洗浄剤組成物の塗布量は、便器表面への1回あたりの使用量が2g〜50gとなるようにすることが好ましく、より好ましくは5〜40gである。洗浄力の持続性の観点より2g以上が好ましく、洗浄剤組成物の使用効率の観点より50g以下が好ましい。
【0042】
スクイズ容器としては、特に限定されるものではないが、好ましくは特開2009−298426号公報に記載の容器が挙げられる。可撓性を有する容器本体と、容器本体の押圧変形を容器本体内で規制する押圧規制部材とを備え、容器本体を押圧することにより内容液を吐出させるタイプのものである。
【0043】
スプレー式容器としては、特に限定されるものではないが、好ましくはトリガー式スプレーヤーが装着されたスプレー容器(トリガー式スプレー容器という)が挙げられる。トリガー式スプレー容器としては、液体洗浄剤組成物を収容する容器本体と、容器本体の口部に装着されたトリガー式液体噴出器とを具備するものが挙げられ、更には、容器本体の口部に液体洗浄剤組成物を噴出するトリガー式スプレーヤーが装着され、該トリガー式スプレーヤーの内部に垂直管路及び水平管路が形成され、該垂直管路内に該垂直管路と上記水平管路との連通を遮断するバルブが配設されたスプレー容器(スプレー容器(I)という)が挙げられる。スプレー容器(I)における上記水平管路の容積は0.1〜0.28cm3が好ましく、上記垂直管路の上記バルブ下の容積は0.06〜0.19cm3が好ましい。スプレー容器(I)は、水平管路の下方位置にシリンダーを備え、また、水平管路の先端部にスピンエレメントが装着され、さらに、このスピンエレメントの先端部にノズル孔を有するノズル部が嵌着固定されている。スプレー容器(I)は、トリガーを引いて、シリンダー内の空気を外に排出し、トリガーを戻した際に容器本体の液体洗浄剤組成物に浸した垂直管路を通じて液体洗浄剤組成物を吸い上げ、上記シリンダー内に液体を満たし、再びトリガーを引くことにより、該シリンダー内の液体を押し出して垂直管路に導き、さらに水平管路、スピンエレメントを通じて液体の流れにスピンを与え、最後にノズルから噴出するタイプのものである。トリガー式スプレー容器としては、例えば、「バスマジックリン泡立ちスプレー」(花王(株))のトリガー式スプレー容器を、洗浄、乾燥させたものを使用できる。
【0044】
工程2では、組成物から(b)成分であるエタノールを揮発させて、塗布前の組成物よりも高粘度のゲルを形成させる。工程2では、組成物から(b)成分であるエタノールを揮発させて、25℃で10Pa・s以上の粘度ゲルを形成させることが好ましい。工程2で形成されるゲルは、水に対して徐溶性であることが好ましい。工程1における組成物の塗布量が前記範囲である場合、通常、室温程度で数分〜数時間、具体的には1分間〜3時間、放置することで、塗布前の組成物よりも高粘度で好ましくは水に対して徐溶性のゲルが形成される。
【0045】
工程3では、工程2で形成させたゲルに水を適用(例えば流水を接触させる等)して(a)と水とを含む洗浄媒体を生じせしめ、該洗浄媒体を便器に適用する。工程2で、ゲルの粘度が25℃で10Pa・s以上となった後に、工程3でのゲルへの水の適用を開始することができる。工程2で本発明の洗浄剤組成物から形成されたゲルは、一般的な水洗トイレでのフラッシュ1回あたりの洗浄であれば、水との接触により、剥離、過剰な溶解、粘度の低下等は生じず、塗布箇所に滞留して水との接触により(a)成分を含む洗浄成分が放出されて便器の洗浄が行われる。すなわち、(a)成分と水とを含む洗浄媒体が便器と接触することで洗浄が行われる。(a)成分と水を含む洗浄媒体は、ゲルからの水溶性成分を適宜含むことができる。本発明の洗浄剤組成物は、便器用洗浄媒体用組成物、便器用洗浄剤組成物用組成物、或いは便器用オートクリーナー用組成物であってもよい。
【0046】
本発明では、洗浄剤組成物を、腰掛式水洗便器(いわゆる洋式便器)のリム部分(縁裏部分)に塗布することが好ましい。通常、腰掛式水洗便器では、便器本体のボウルの内壁面を洗浄するための洗浄水の供給口が設けられ、多くは、便器周辺の縁裏に水の排出口が設けられている。本発明では、工程1、2で、腰掛式水洗便器から排出される洗浄水の流路下流に本発明の洗浄剤組成物を塗布してゲルを形成させることが好ましい。
【実施例】
【0047】
表1、2に示す各成分を用い、実施例、比較例の洗浄剤組成物を得た。なお、表2の比較例13は特許文献1の実施例6に、また表2の比較例14は特許文献2の実施例10に、それぞれ記載されている組成物である。pH(25℃)は必要に応じ6N−水酸化ナトリウム水溶液又は6N−塩酸で調整した。各洗浄剤組成物を用い、下記の方法により塗布容易性、洗浄持続性、およびリング汚れ防止性の試験を行った。また、組成物の初期粘度と揮発後粘度を以下の方法で測定した。結果を表1、2に示す。
【0048】
(粘度の測定法)
初期粘度の測定装置は、TOKIMEC INC.製 TOKIMEC VISCOMETER MODEL BMを用いた。測定条件は、25℃で、ローターはNo.3を用いて、回転数を30rpmに設定し、測定開始1分後の測定値を初期粘度とした。
【0049】
揮発後粘度は、内径85mmのガラス製シャーレに均一に組成物10gを塗布し、40℃、湿度50%の環境下で3時間乾燥させたサンプルを用いて測定した。エタノールを含む組成物は、この条件でエタノールが揮発する。測定装置はAnton Paar社製のPhysica MCR−301、プレートとしてCP50−1(series3275)を用い、25℃、剪断速度が0.1s-1の条件で測定した。
【0050】
(塗布容易性)
表1の洗浄剤組成物を、500mlスクイズ容器を用いて洋式便器の縁裏部に塗布した時の塗布容易性について評価した。スクイズ容器を手で握るだけで洗浄剤組成物を吐出させることができ、洗浄剤組成物が付着し、かつ、洋式便器の縁裏に塗布できることを容易に塗布できると規定する。被験者10名がトイレ便器縁裏への塗布作業を行い、下記評価基準により評価した。
1:0〜2名が容易に塗布できたと回答した。
2:3〜5名が容易に塗布できたと回答した。
3:6〜8名が容易に塗布できたと回答した。
4:9〜10名が容易に塗布できたと回答した。
【0051】
(洗浄持続性)
500mlスクイズ容器を用いて、洗浄剤組成物20gを洋式便器の縁裏部に塗布し、1時間室温乾燥してゲルを形成させた。実施例では、初期粘度よりも高粘度で水に対して徐溶性のゲルが形成されていた。毎日9時から17時まで1時間ごとにモデル汚れ(オレイン酸:49.95質量%、トリオレイン:49.95質量%、スダンIII:0.10質量%)20μlをピペットで便器面へ適用したのちフラッシュ操作を行った。この操作を月曜日から金曜日の5日間連続して行い、土曜日および日曜日は操作を中断した。この操作を繰返し、下記評価基準により評価した。
1:1〜10回のフラッシュ操作後、汚れの残留がある。
2:11〜30回のフラッシュ操作後、汚れの残留がある。
3:31〜50回のフラッシュ操作後、汚れの残留がある。
4:50回のフラッシュ操作後、汚れの残留が無い。
【0052】
(リング汚れ防止性)
上記洗浄持続性の評価方法を行い、便器内の液溜まり部の喫水線上にリング状の汚れが発生するまでの期間について、下記評価基準により評価した。リング汚れは一度発生したらフラッシュ操作によって容易に除去できないものであるため、一度発生した時点で試験を終了した。
1:50回のフラッシュ操作後、リング汚れが存在する
2:50回のフラッシュ操作後にはリング汚れが確認されず、70回のフラッシュ操作までの間にリング汚れが確認される
3:70回のフラッシュ操作後にはリング汚れが確認されず、90回のフラッシュ操作までの間にリング汚れが確認される
4:90回のフラッシュ操作後にはリング汚れが確認されず、110回のフラッシュ操作までの間にリング汚れが確認される
5:110回のフラッシュ操作後、リング汚れが存在しない
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
表中の成分は以下のものである。また、pは平均付加モル数である。
*1 セチル基/ステアリル基=13/87(質量比)
*2 サニゾールC(花王株式会社製)
*3 HECダイセル SE−900(ダイセル化学工業株式会社製)
*4 コータミンD10E(花王株式会社製)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アルキル基の炭素数が14〜22でエチレンオキサイド平均付加モル数が20〜80であるポリオキシエチレンアルキルエーテル、及び(b)エタノールを含有し、25℃における粘度が50〜3000mPa・sである、便器用洗浄剤組成物。
【請求項2】
(a)を14〜64質量%含有する、請求項1記載の便器用洗浄剤組成物。
【請求項3】
(b)を2〜30質量%含有する、請求項1又は2記載の便器用洗浄剤組成物。
【請求項4】
内径85mmのガラス製シャーレに均一に10gを塗布し、40℃、湿度50%で3時間乾燥させたとき、(b)の揮発により、25℃における粘度が10Pa・s以上のゲルを形成する、請求項1〜3のいずれかに記載の便器用洗浄剤組成物。
【請求項5】
下記1〜3の工程を含む便器の洗浄方法。
工程1:請求項1〜4のいずれかに記載の便器用洗浄剤組成物を便器に塗布する工程。
工程2:工程1の後、1分〜3時間放置することで、工程1で塗布された組成物から(b)を揮発させて塗布前の組成物よりも高粘度のゲルを形成させる工程。
工程3:工程2で形成させたゲルに水を適用して(a)と水とを含む洗浄媒体を生じせしめ、該洗浄媒体を便器に適用する工程。
【請求項6】
工程2で形成されたゲルの粘度が、25℃で10Pa・s以上である、請求項5に記載の便器の洗浄方法。

【公開番号】特開2011−219645(P2011−219645A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91185(P2010−91185)
【出願日】平成22年4月12日(2010.4.12)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】