便座装置およびそれを備えるトイレ装置
【課題】省エネルギー化を実現するとともに着座部の温度を短時間で正確に所定の温度に安定させ、かつ、着座部の温度が快適な温度であることを報知することができる便座装置を提供することを目的とする。
【解決手段】便座部400と、便座部400を加熱する発熱体480と、便座部400の表面温度を検出する温度検出部411と、使用者の存在を検知する人体検知部600と、制御部210と、報知部280とを備え、前記人体検知部600により使用者の存在が検知された場合に発熱体480への通電を行い、便座部400の温度を報知部280で報知することにより、着座部410Tの温度が不快な低温状態にあるか否かを実際に着座部410Tに触れること無く認知することが出来るため、省エネルギー性を備えた使い勝手の良い便座装置を提供することが出来る。
【解決手段】便座部400と、便座部400を加熱する発熱体480と、便座部400の表面温度を検出する温度検出部411と、使用者の存在を検知する人体検知部600と、制御部210と、報知部280とを備え、前記人体検知部600により使用者の存在が検知された場合に発熱体480への通電を行い、便座部400の温度を報知部280で報知することにより、着座部410Tの温度が不快な低温状態にあるか否かを実際に着座部410Tに触れること無く認知することが出来るため、省エネルギー性を備えた使い勝手の良い便座装置を提供することが出来る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暖房機能を有する便座装置およびそれを備えるトイレ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、便座の暖房手段の消費電力を抑制する目的で、使用者がトイレを使用する直前に便座の暖房手段の通電を開始する便座装置としては、便座装置本体と通信手段を介して連動する別体の操作表示手段をトイレとは別の居室空間に設置し、トイレ外の居室空間から別体の操作表示手段により便座の暖房手段の電源の操作を行い、使用者が居室空間からトイレに移動するまでの時間に便座を昇温させ、表示手段により便座表面が快適な温度になっていることを、便座適温ランプの点灯や便座温度表示などで使用者に知らせる構成となっている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−119444号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来の構成では、別体の操作表示手段を設置した居室空間からトイレまでの移動時間に便座の暖房手段を通電加熱ため、別体の操作表示手段の設置場所とトイレとの距離や使用者の歩く早さ等の不特定の要素に基づく時間を通電時間とするため、トイレに到着時には便座が十分に昇温していなかったり、昇温後相当時間がたってからトイレに到着し、十分な省エネ効果を得られないという課題を有していた。
【0004】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、省エネルギー化を実現するとともに、着座部の温度を短時間で正確に所定の温度に安定させることができ、かつ、着座部の温度が快適な温度であることを報知することができる便座装置およびそれを備えるトイレ装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従来の課題を解決するために、本発明に係る便座装置は、便座部と、前記便座部を加熱する発熱体と、前記便座部の表面温度を検出する温度検出部と、使用者の存在を検知する人体検知部と、制御部と、報知部とを備え、前記制御部は前記人体検知部により使用者の存在が検知された場合に前記発熱体への通電を行い、第1の温度勾配で前記便座部の温度が使用者が冷たいと感じない限界温度まで上昇するように第1の電力で前記発熱体を第1の時間駆動した後、前記第1の温度勾配よりも緩やかな第2の温度勾配で前記便座部の温度が使用者が予め設定した温度に基づいて決定した温度まで上昇するように前記発熱体を第2の時間駆動し、前記報知部は、前記第1の電力で前記発熱体を第1の時間駆動した時間、および前記温度検出部による検出温度が前記便座表面温度が前記限界温度となる切替温度を検知するまでの時間のうち短い時間で、前記便座部の表面温度が前記限界温度に達したことを報知することを特徴としたものである。これによって、使用者がトイレに入室すると、人体検知部により検知され、便座部への通電を行い、使用者が着衣を外して便座に着座するまでの間に、便座部の温度が着座に適した温度にまで昇温し、報知手段で報知するものであり、便座部の発熱体に無駄な通電をすることがなく、また着座部の温度が不快な低温状態にあるか否かを実際に着座部に触れること無く認知することが出来る為、省エネルギー性を備えた使い勝手の良い便座装置を提供することが出来る。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る便座装置およびそれを備えるトイレ装置によれば、省エネルギー化が実現されるとともに、使用者に着座部の温度が着座に適した温度になっていることを報知する
ことが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
第1の発明に係る便座装置は、便座部と、前記便座部を加熱する発熱体と、前記便座部の表面温度を検出する温度検出部と、使用者の存在を検知する人体検知部と、制御部と、報知部とを備え、前記制御部は前記人体検知部により使用者の存在が検知された場合に前記発熱体への通電を行い、第1の温度勾配で前記便座部の温度が使用者が冷たいと感じない限界温度まで上昇するように第1の電力で前記発熱体を第1の時間駆動した後、前記第1の温度勾配よりも緩やかな第2の温度勾配で前記便座部の温度が使用者が予め設定した温度に基づいて決定した温度まで上昇するように前記発熱体を第2の時間駆動し、前記報知部は、前記第1の電力で前記発熱体を第1の時間駆動した時間、および前記温度検出部による検出温度が前記便座表面温度が前記限界温度となる切替温度を検知するまでの時間のうち短い時間で、前記便座部の表面温度が前記限界温度に達したことを報知することを特徴としたことを特徴とすることにより、使用者がトイレに入室すると、人体検知部により使用者の存在が検知し、便座部への通電を行い、前記便座部の表面温度が前記限界温度に達したことを報知するものであり、これにより、便座部の発熱体に無駄な通電をすることがなく、使用者がトイレットルームに入室した際に、着座部の温度が不快な低温状態にあるか否かを実際に着座部に触れること無く認知することが出来る為、省エネルギー性を備えた使い勝手の良い便座装置を提供することが出来る。また、使用者は、着座部を冷たいと感じることなく便座部に着座することができる。
【0008】
第2発明に係るトイレ装置は、便器と、第1のいずれか1つの発明に係る便座装置とを備えることにより、第1の発明の便座装置が有する機能を便器と一体となって備えたトイレ装置となることとなり、使い勝手がよく、安全性の高いトイレ装置を提供することが出来る。
【0009】
以下、本発明の一実施の形態に係る便座装置およびそれを備えるトイレ装置について図面とともに説明する。
【0010】
(実施の形態1)
図1は本発明の第1の実施の形態に係る便座装置およびそれを備えるトイレ装置を示す外観斜視図である。図1に示すように、トイレ装置1000は、便座装置100および便器700を備え、トイレットルーム内に設置される。
【0011】
トイレ装置1000において、便器700上には便座装置100が装着される。便座装置100は、暖房機能を有し、本体部200、遠隔操作装置300、便座部400、蓋部500および人体検知部である入室検知センサ600により構成される。
【0012】
本体部200には、便座部400および蓋部500が開閉自在に取り付けられる。さらに、本体部200には、洗浄水供給機構および着座センサ290が設けられるとともに、後述する制御部が内蔵されている。
【0013】
本実施の形態において、便座部400には発熱体であるランプヒータが内蔵されている。詳細は後述する。
【0014】
本体部200の図示しない洗浄水供給機構は、水道配管に接続されており、便器700内に洗浄水を供給する。着座センサ290は、例えば反射型の赤外線センサである。この場合、着座センサ290は、人体から反射された赤外線を検出した場合に便座部400上に使用者が存在することを検知する。
【0015】
また、本体部200の上面側に報知部であるお知らせLED280が設けられている。お知らせLED280は、ランプヒータへの通電開始時に点滅し、便座部400の温度が後述の限界温度に達したときに点灯する。また、後述するランプヒータやサーモスタットの断線、サーミスタの断線などの異常時にも使用者に対して報知を行う。
【0016】
遠隔操作装置300には、複数のスイッチが設けられている。この遠隔操作装置300は、例えば便座部400上に着座する使用者が操作可能な場所に取り付けられる。
【0017】
入室検知センサ600は、例えばトイレットルームの入り口等に取り付けられる。入室検知センサ600は、例えば反射型の赤外線センサである。この場合、入室検知センサ600は、人体から反射された赤外線を検出した場合にトイレットルーム内に使用者が入室したことを検知する。
【0018】
本体部200の制御部は、着座センサ290、遠隔操作装置300および入室検知センサ600から送信される信号に基づいて、便座部400に内蔵された後述のランプヒータの駆動を制御する。
【0019】
さらに、本体部200の制御部は、洗浄水供給機構(図示せず)、本体部200に設けられた脱臭装置(図示せず)および温風供給装置(図示せず)等の制御も行う。
【0020】
図2は、図1の遠隔操作装置300のを示す模式図であり、図に示すように、遠隔操作装置300は、暖房スイッチ301、複数の温度調節スイッチ302、303、304および複数のLED(発光ダイオード)305を備える。
【0021】
使用者により暖房スイッチ301および複数の温度調節スイッチ302、303、304が押下操作される。
【0022】
それにより、遠隔操作装置300は、後述する便座装置100の本体部200に設けられた制御部に所定の信号を無線送信する。本体部200の制御部は、遠隔操作装置300より無線送信される所定の信号を受信し、後述のランプヒータの駆動等を制御する。
【0023】
冬季のように、使用者が暖房機能を使用する場合には、予め暖房スイッチ301が押下操作されることにより便座装置100の暖房機能がオンする。この状態で、温度調節スイッチ302が押下操作された場合には便座部400の温度が低く(例えば、34℃)設定され、温度調節スイッチ303が押下操作された場合には便座部400の温度が中程度(例えば、36℃)に設定され、温度調節スイッチ304が押下操作された場合には便座部400の温度が高く(例えば、38℃)設定される。
【0024】
なお、夏季のように使用者が暖房機能を使用しない場合には、暖房スイッチ301が押下操作されることにより便座装置100の暖房機能がオフする。
【0025】
以下、温度調節スイッチ302〜304により設定される便座部400の温度を便座設定温度と称する。
【0026】
複数のLED305の各々は、暖房スイッチ301および複数の温度調節スイッチ302、303、304と対応するように設けられている。複数のLED305は、暖房スイッチ301および複数の温度調節スイッチ302、303、304の押下操作に伴い点灯する。
【0027】
図3は便座装置100の構成を示す模式図である。上述のように、便座装置100は、
本体部200、遠隔操作装置300、便座部400および入室検知センサ600を備える。
【0028】
図3に示すように、本体部200は、制御部210、温度測定部220、ヒータ駆動部230、お知らせLED280および着座センサ290を含む。
【0029】
また、便座部400はランプヒータ480およびサーミスタ411を備える。なお、ランプヒータ480は後方ランプヒータ481および前方ランプヒータ482を含む。
【0030】
制御部210は、例えばマイクロコンピュータからなり、使用者の入室および便座部400の温度等を判定する判定部、タイマ機能を有する計時部、種々の情報を記憶する記憶部、ならびに、ヒータ駆動部230の動作を制御するための通電率切替回路等を含む。
【0031】
本体部200の温度測定部220は、便座部400のサーミスタ411に接続されている。これにより、温度測定部220は、サーミスタ411から出力される信号に基づいて便座部400の温度を測定する。以下、サーミスタ411を通じて温度測定部220により測定される便座部400の温度を測定温度値と称する。
【0032】
また、本体部200のヒータ駆動部230は、便座部400のランプヒータ480に接続されている。これにより、ヒータ駆動部230はランプヒータ480を駆動する。
【0033】
上記構成の便座装置100は次のように動作する。
【0034】
初めに、初期設定時の動作について説明する。使用者が遠隔操作装置300の暖房スイッチ301(図2)を押下操作することにより、暖房機能をオンする旨の信号が本体部200の制御部210に送信される。これにより、制御部210がヒータ駆動部230を制御することにより、ランプヒータ480が駆動される。それにより、便座部400が、例えば約18℃となるように温度調節される。このときの温度を待機温度と称する。
【0035】
ここで、使用者が遠隔操作装置300の温度調節スイッチ302、303、304(図2)のいずれかを押下操作することにより、便座設定温度が制御部210に送信される。制御部210は、遠隔操作装置300から受信した便座設定温度を記憶部に記憶する。
【0036】
例えば、温度調節スイッチ302が押下操作された際には、便座設定温度が34℃として記憶部に記憶される。また、温度調節スイッチ303が押下操作された際には、便座設定温度が36℃として記憶部に記憶される。さらに、温度調節スイッチ304が押下操作された際には、便座設定温度が38℃として記憶部に記憶される。
【0037】
使用者がトイレットルームに入室すると、入室検知センサ600は使用者の入室を検知する。それにより、使用者の入室を示す信号が制御部210に送信される。
【0038】
次に、通常の使用時の動作について説明する。制御部210の判定部は、入室検知センサ600からの信号により使用者のトイレットルームへの入室を検知する。そこで、判定部は、便座部400の測定温度値、および記憶部に記憶された後述のヒータ制御テーブルに基づいてランプヒータ480の駆動に関する特定のヒータ制御パターンを選択する。
【0039】
通電率切替回路は、選択されたヒータ制御パターンおよび計時部により得られる時間情報に基づいてヒータ駆動部230の動作を制御する。
【0040】
それにより、ヒータ駆動部230によりランプヒータ480が駆動され、便座部400
の温度が便座設定温度へと瞬時に上昇される。
【0041】
制御部210の動作、ランプヒータ480の駆動に関するヒータ制御パターン、およびヒータ制御テーブルの詳細は後述する。
【0042】
図4〜図7は、図1の便座部400の構造の詳細を説明するための図である。図4に便座部400の分解斜視図が示されている。図5に上部便座ケーシング410を下側から見た図が示されている。図6に図4のU−U線における上部便座ケーシング410の拡大断面図が示されている。
【0043】
図4に示すように、便座部400は、アルミニウムにより形成された上部便座ケーシング410と、合成樹脂により形成された下部便座ケーシング420とを備える。
【0044】
一点鎖線で示すように、上部便座ケーシング410の上面の一部が使用者の着座部410Tとなる。
【0045】
図4および図5に示すように、上部便座ケーシング410の下面側には、着座部410Tの領域に2つのサーミスタ411が取り付けられる。また、その他の領域に2つのサーミスタ412が取り付けられる。
【0046】
なお、着座部410Tの領域に設けられるサーミスタ411は1つであってもよい。また、その他の領域に設けられるサーミスタ412も1つであってもよい。
【0047】
図6に示すように、上部便座ケーシング410は熱伝導性に優れたアルミニウム層410bの上面および下面に種々の層を形成することにより作製される。なお、アルミニウムの熱伝導率は約237W/m・Kである。
【0048】
アルミニウム層410bの下面に、炭素等を含む黒色の塗料が塗布される。これにより、アルミニウム層410bの下面には輻射エネルギーを効率よく吸収できる黒色の輻射吸収層410aが形成される。
【0049】
アルミニウム層410bの上面には、アルマイト層410cおよび表面化粧層410dが順に形成される。アルマイト層410cが形成されることにより、アルミニウム層410bの上面の耐蝕性が向上される。表面化粧層410dは所定の塗料等により形成される。
【0050】
アルミニウム層410bの下面には、輻射吸収層410aを介してサーミスタ411が取り付けられている。サーミスタ411は、輻射吸収層410aを介してアルミニウム層410bの温度を検出する。
【0051】
図7に下部便座ケーシング420を上側から見た図が示されている。図4および図7に示すように、下部便座ケーシング420の上面側には、下部便座ケーシング420の形状に沿うように形成された輻射反射板430が取り付けられる。輻射反射板430はアルミニウムからなる板材の表面を鏡面仕上げすることにより作製される。
【0052】
また、輻射反射板430の上面には、ランプヒータ480が設けられる。ランプヒータ480は、U字形に形成された後方ランプヒータ481および前方ランプヒータ482を直列に接続することにより作製される。
【0053】
さらに、輻射反射板430の上面には、前方ランプヒータ482の所定の箇所(2箇所
)に近接するように2つのサーモスタット441が取り付けられ、後方ランプヒータ481の所定の箇所(2箇所)に近接するように2つのサーモスタット442が取り付けられる。これら複数のサーモスタット441、442は、ともにランプヒータ480に直列に接続される。
【0054】
図5の上部便座ケーシング410と図7の下部便座ケーシング420とを図示しないシール材を介して接合することにより図1の便座部400が完成する。これにより、上部便座ケーシング410および下部便座ケーシング420内の空間が密閉される。シール材により、上部便座ケーシング410および下部便座ケーシング420内への水の浸入が防止される。この状態で、上部便座ケーシング410に取り付けられたサーミスタ411は、前方ランプヒータ482に対向する。
【0055】
後方ランプヒータ481および前方ランプヒータ482は、ガラス管、フィラメント、アルゴンガスおよびハロゲンガスからなるハロゲンランプヒータである。
【0056】
これら後方ランプヒータ481および前方ランプヒータ482においては、ガラス管の内部にフィラメントが設けられるとともに、アルゴンガスおよびハロゲンガスが封入されている。
【0057】
本実施の形態の後方ランプヒータ481および前方ランプヒータ482の定格電力は、それぞれ500Wおよび700Wである。
【0058】
上述のように後方ランプヒータ481および前方ランプヒータ482は、図3のヒータ駆動部230に接続されている。ヒータ駆動部230により後方ランプヒータ481および前方ランプヒータ482に電流が流されると、各ランプヒータから周囲へ赤外線が輻射される。
【0059】
そして、後方ランプヒータ481および前方ランプヒータ482から輻射された赤外線、すなわち輻射エネルギーが直接的にまたは輻射反射板430を介して間接的に上部便座ケーシング410の下面側に入射する。
【0060】
上述のように黒色の輻射吸収層410a(図6)は輻射エネルギーを効率よく吸収することができるので、後方ランプヒータ481および前方ランプヒータ482からの輻射エネルギーが効率よくアルミニウム層410b(図6)に伝達される。それにより、アルミニウム層410bが発熱する。
【0061】
上記のようにアルミニウムは高い熱伝導率を有するので、輻射エネルギーにより発生された熱は、上部便座ケーシング410の全体に短時間で伝達される。
【0062】
上部便座ケーシング410において、着座部410Tの領域に取り付けられるサーミスタ411の働き、および着座部410T以外の領域に取り付けられるサーミスタ412の働きについて説明する。
【0063】
上部便座ケーシング410の着座部410Tは、その他の部位に比べてランプヒータ480に近接している。これにより、上部便座ケーシング410の着座部410Tはランプヒータ480の駆動時に比較的高い応答性で熱が伝達される。
【0064】
また、着座部410Tは、上部便座ケーシング410の中でも人体に接触する部分であるため、十分な温度管理が必要である。
【0065】
それにより、着座部410Tのサーミスタ411は、ランプヒータ480の駆動時における温度調節のために用いられる。
【0066】
一方、着座部410T以外の領域に取り付けられるサーミスタ412は、サーミスタ411が故障等した場合に上部便座ケーシング410の温度が過剰に上昇しないようにするために用いられる。
【0067】
下部便座ケーシング420において、前方ランプヒータ482に近接するように取り付けられる2つのサーモスタット441の働き、および後方ランプヒータ481に近接するように取り付けられる2つのサーモスタット442の働きについて説明する。
【0068】
前方ランプヒータ482側の2つのサーモスタット441は、前方ランプヒータ482の温度を監視するために用いられる。これら2つのサーモスタット441は、例えば78℃でランプヒータ480への通電を遮断するように設定される。したがって、2つのサーモスタット441は78℃で通電を遮断する温度ヒューズの役割を果たす。
【0069】
一方、後方ランプヒータ481側の2つのサーモスタット442は、後方ランプヒータ481周辺の雰囲気の温度を監視するために用いられる。これら2つのサーモスタット442は、例えば53℃でランプヒータ480への通電を遮断するように設定される。したがって、2つのサーモスタット442は53℃で通電を遮断する温度ヒューズの役割を果たす。
【0070】
本実施の形態に係る便座装置100の制御部210には、3種類の便座設定温度(34℃、36℃および38℃)に対応する3つのヒータ制御テーブルが予め記憶されている。
【0071】
図8〜図10は、所定の便座設定温度(34℃、36℃および38℃)に対応するヒータ制御テーブルの一例を示す図である。図8〜図10に示すヒータ制御テーブルの各々は、使用者の入室時のサーミスタ411(図3)の測定温度値に対応する複数のヒータ制御パターンを有する。
【0072】
複数のヒータ制御パターンの各々には、ランプヒータ480の駆動に関するタイムスケジュールが設定されている。また、それぞれのヒータ制御パターンにおいては、ランプヒータ480を駆動する電力を切替えるときのサーミスタ411の測定温度値が設定されている。詳細は後述する。
【0073】
上述のように、便座設定温度が決定されると、制御部210は、決定された便座設定温度に対応する1つのヒータ制御テーブルを選択する。
【0074】
また、制御部210は、図3の入室検知センサ600により使用者の入室が検知されると、サーミスタ411の測定温度値に基づいてヒータ制御テーブルの中から1つのヒータ制御パターンを選択する。それにより、選択されたヒータ制御パターンに従ってランプヒータ480の駆動が制御される。
【0075】
例えば、便座設定温度が低く(34℃)設定され、かつ使用者の入室時の測定温度値が16℃〜18℃である場合、図3の制御部210は、図8のヒータ制御テーブルの16℃〜18℃に相当するヒータ制御パターンに基づいて、突入電流を低減するための後述の600W駆動を0.2秒間行う。
【0076】
その後、制御部210は後述の1200W駆動を6秒間行い、続いて後述の600W駆動を2.1秒間行う。
【0077】
なお、上述のように、本実施の形態に係る便座装置100においては、暖房機能がオンしている場合に、便座部400が例えば約18℃となるように温度調節される。
【0078】
ここで、図8〜図10のヒータ制御テーブルは、暖房機能がオフ状態からオン状態に切替わる場合も想定している。それにより、図8〜図10のヒータ制御テーブルには、0℃〜16℃に相当するヒータ制御パターンも設定されている。
【0079】
すなわち、室温が0℃のときに使用者が暖房機能をオンすると、制御部210は、例えば図8のヒータ制御テーブルの0℃〜2℃に相当するヒータ制御パターンに基づいて、600W駆動を16秒間行う。
【0080】
本実施の形態において、ランプヒータ480の駆動の制御は、ランプヒータ480を駆動する電力を大きく3つに変化させることにより行う。
【0081】
例えば、便座部400を第1の温度勾配で昇温させる場合、図3のヒータ駆動部230は約1200Wの電力でランプヒータ480を駆動する(1200W駆動)。また、便座部400を第1の温度勾配よりもやや緩やかな第2の温度勾配で昇温させる場合、ヒータ駆動部230は約600Wの電力でランプヒータ480を駆動する(600W駆動)。さらに、便座部400の温度を一定に保つ場合、ヒータ駆動部230は約50Wの電力でランプヒータ480を駆動する(低電力駆動)。なお、低電力駆動とは、1200W駆動および600W駆動に比べて十分に低い電力(例えば、0W〜50Wの範囲内の電力)によりランプヒータ480を駆動することをいう。
【0082】
1200W駆動、600W駆動および低電力駆動の切替えは、制御部210の通電率切替回路が、ヒータ駆動部230からランプヒータ480への通電を制御することにより行われる。
【0083】
ヒータ駆動部230には図示しない電源回路から交流電流が供給されている。そこで、ヒータ駆動部230は、通電率切替回路から与えられる通電制御信号に基づいて供給された交流電流をランプヒータ480に流す。
【0084】
1200W駆動時、600W駆動時および低電力駆動時におけるランプヒータ480への通電状態を通電率切替回路の通電制御信号とともに説明する。
【0085】
図11(a)は1200W駆動時にランプヒータ480を流れる電流の波形図、図11(b)は1200W駆動時に通電率切替回路からヒータ駆動部230に与えられる通電制御信号の波形図である。
【0086】
図11(b)に示すように、1200W駆動時における通電制御信号は常に論理「1」となる。ヒータ駆動部230は通電制御信号が論理「1」のときに電源回路から供給される交流電流をランプヒータ480に流す(図11(a)太線部)。それにより、全周期の期間に渡って交流電流がランプヒータ480に流れる。その結果、ランプヒータ480が約1200Wの電力で駆動される。
【0087】
図12(a)は600W駆動時にランプヒータ480を流れる電流の波形図、図12(b)は600W駆動時に通電率切替回路からヒータ駆動部230に与えられる通電制御信号の波形図である。
【0088】
図12(b)に示すように、600W駆動時における通電制御信号は、ヒータ駆動部2
30に供給される交流電流と同じ周期のパルスからなる。パルスのデューティー比は50%に設定される。
【0089】
ヒータ駆動部230は通電制御信号が論理「1」のときに電源回路から供給される交流電流をランプヒータ480に流す(図12(a)太線部)。それにより、半周期の期間交流電流がランプヒータ480に流れる。その結果、ランプヒータ480が約600Wの電力で駆動される。
【0090】
図13(a)は低電力駆動時にランプヒータ480を流れる電流の波形図、図13(b)は低電力駆動時に通電率切替回路からヒータ駆動部230に与えられる通電制御信号の波形図である。
【0091】
図13(b)に示すように、低電力駆動時における通電制御信号は、ヒータ駆動部230に供給される交流電流と同じ周期のパルスからなる。パルスのデューティー比は50%よりも小さく(例えば数%程度)に設定される。
【0092】
ヒータ駆動部230は通電制御信号が論理「1」のときに電源回路から供給される交流電流をランプヒータ480に流す(図13(a)太線部)。各周期においては、パルス幅に相当する期間交流電流がランプヒータ480に流れる。その結果、ランプヒータ480が例えば約50Wの電力で駆動する。
【0093】
上記の他、便座部400の温度を低くする場合、または便座装置100の暖房機能をオフしている場合等には、通電率切替回路はヒータ駆動部230に通電制御信号を与えない(通電制御信号を論理「0」に設定する)。これにより、ヒータ駆動部230はランプヒータ480を駆動しない。
【0094】
ここで、一般に、電子機器に供給される電流が高調波成分を有する場合、ノイズが発生する。本実施の形態では、上述のようにランプヒータ480の1200W駆動または600W駆動を行う場合には、ランプヒータ480に供給される電流がサインカーブを描くように変化するので、電流の大きさが大きくなってもノイズの発生が十分に低減される。
【0095】
また、ランプヒータ480の低電力駆動を行う場合、ランプヒータ480に供給される電流は高調波成分を有するが、電流の大きさが1200W駆動時および600W駆動時に比べて非常に小さいので、ノイズの発生が十分に低減される。
【0096】
上記のように、本実施の形態では、ランプヒータ480を1200W、600Wおよび約50Wの電力で駆動するとしているが、他の大きさの電力でランプヒータ480を駆動してもよい。
【0097】
例えば、ランプヒータ480に半周期の期間交流電流を流す場合には、交流電流を流すタイミングを2周期または3周期等所定の周期の間隔で設定する。それにより、1200W、600Wおよび約50Wとは異なる大きさの電力で、ノイズの発生を十分に防止しつつランプヒータ480を駆動することができる。
【0098】
以下の説明において、通電率とは交流電流の1周期に対してランプヒータ480に交流電流を流す時間(通電制御信号における論理「1」の期間)の割合をいう。
【0099】
なお、本実施の形態では、制御部210は通電制御信号が論理「1」のときにランプヒータ480に電流を供給し、通電制御信号が論理「0」のときにランプヒータ480への電流の供給を停止しているが、通電制御信号が論理「1」のときにランプヒータ480へ
の電流の供給を停止し、通電制御信号が論理「0」のときにランプヒータ480に電流を供給してもよい。
【0100】
本実施の形態に係る便座装置100において、便座部400を瞬時に昇温させる際には、ランプヒータ480に大きな電流を流す。この場合、ランプヒータ480に比較的大きな突入電流が発生する。
【0101】
このような大きな突入電流が発生すると、過電流によりブレーカが遮断され、便座装置100が接続される電力配線の電圧降下が発生する。
【0102】
したがって、ヒータ制御テーブルの作成時においては、突入電流を十分低減できるように複数のヒータ制御パターンを設定することが好ましい。
【0103】
図8〜図10のヒータ制御テーブルの例では、ランプヒータ480の1200W駆動を行う場合、その直前に600W駆動を行うようにヒータ制御パターンが設定されている。図8〜図10では、1200W駆動を行う前の600W駆動を突入電流低減用600W駆動として示している。
【0104】
上記のように、ランプヒータ480により便座部400の温度を瞬時に上昇させるために、ランプヒータ480に大きな電流を流す。それにより、便座部400の温度変化にオーバーシュートが生じる。そのため、便座部400の温度を短時間で便座設定温度に安定させることが困難である。
【0105】
そこで、本実施の形態では、ヒータ制御テーブルの作成時においては、便座部400の温度変化のオーバーシュートを十分低減できるように複数のヒータ制御パターンを設定する。
【0106】
図8〜図10のヒータ制御テーブルの例では、便座部400の温度変化のオーバーシュートを防止するために、便座部400の昇温時にランプヒータ480の駆動を2段階で制御するように設定されている。
【0107】
暖房機能を有する便座装置100においては、使用者が着座部410Tを冷たいと感じないようにすることが好ましい。以下、使用者が冷たいと感じない着座部410Tの最低温度を限界温度と称する。
【0108】
したがって、使用者がトイレットルームに入室し、着座部410Tに着座する際には、少なくとも着座部410Tの温度が限界温度よりも高くなっていることが好ましい。
【0109】
そこで、ヒータ制御テーブルの作成時においては、使用者の入室から着座部410Tの表面温度を限界温度まで上昇させる間の時間を十分に短くできるように複数のヒータ制御パターンを設定する。なお、本発明者が実験を行った結果、限界温度は約29℃であった。
【0110】
図8〜図10のヒータ制御テーブルの例では、便座部400の温度を迅速に限界温度まで上昇させるため、使用者入室時の測定温度値が限界温度よりも小さい場合に、ランプヒータ480の1200W駆動を行うように設定されている。
【0111】
使用者が着座部410Tに着座することにより感じる温度(体感温度)と、着座部410Tの実際の表面温度とは異なる。
【0112】
一般に、人体が特定の対象物に接触する際の体感温度は、対象物の熱伝導率および人体と対象物との熱容量の差等により変化する。
【0113】
これにより、着座部410Tの実際の表面温度と、その着座部410Tに着座する使用者の体感温度との間には差が生じる場合がある。
【0114】
本実施の形態において、着座部410Tは熱伝導性に優れたアルミニウムにより形成されている。
【0115】
これにより、例えば、着座部410Tの温度が使用者の体温よりも低い場合には、使用者の体温が着座部410Tに短時間で伝達されるので、使用者の体感温度は実際の着座部410Tの温度よりも低くなる。
【0116】
したがって、ヒータ制御テーブルの作成時においては、使用者の着座時における体感温度をできるだけ便座設定温度に近づけられるように複数のヒータ制御パターンを設定する。
【0117】
便座部400の昇温時において、ランプヒータ480の表面温度(ガラス管の温度)と着座部410Tの実際の表面温度との間では大きな温度差が生じる。
【0118】
したがって、着座部410Tの表面温度を便座設定温度まで上昇させ、その温度を安定して保つためには、ランプヒータ480の駆動開始時から所定の時間が必要となる。
【0119】
本発明者は、ランプヒータ480の駆動開始時から着座部410Tの表面温度が便座設定温度で安定するまでの時間について、次の試験(便座昇温試験)を行った。
【0120】
トイレットルームの室温が25℃である場合に、便座設定温度を約40℃に設定する。この状態で、ランプヒータ480を駆動する。そして、着座部410Tの表面温度が約40℃で安定するまでの時間を測定した。これにより、図14に示す関係を得た。
【0121】
図14は、便座昇温試験時のランプヒータ480の表面温度と着座部410Tの表面温度との関係を示す図である。図14においては、縦軸が温度を示し、横軸が時間を示す。また、太い実線がランプヒータ480の表面温度を示し、太い点線が着座部410Tの表面温度を示す。
【0122】
図14に示すように、ランプヒータ480が駆動されることにより、ランプヒータ480の表面温度は約10秒間で100℃に達する。その後、ランプヒータ480の表面温度は約100℃で一定に保たれる。
【0123】
一方、ランプヒータ480の表面温度が変化することにより、着座部410Tの表面温度は、緩やかに上昇し約10秒間で約40℃に達する。その後、着座部410Tの表面温度は約45℃で一定に保たれる。
【0124】
このように、例えば着座部410Tの表面温度と便座設定温度との差は時間とともに増大し、約10秒後にほぼ一定となる。
【0125】
すなわち、10秒よりも短い時間内で温度制御する場合には、ランプヒータ480の表面温度と着座部410Tの表面温度との差を考慮してランプヒータ480へ流す電流を制御することが困難である。
【0126】
したがって、ヒータ制御テーブルの作成時においては、ランプヒータ480の駆動に用いる電力、およびその電力により着座部410Tを便座設定温度で安定化させるために必要な時間を考慮して複数のヒータ制御パターンを設定する。
【0127】
便座部400の昇温時において、図3のサーミスタ411による測定温度値と着座部410Tの実際の表面温度との間では温度差が生じる。
【0128】
本発明者は、便座部400の昇温時のサーミスタ411による測定温度値と、着座部410Tの実際の表面温度との関係について、次の試験(測定温度値確認試験)を行った。
【0129】
トイレットルームの室温が21℃である場合に、便座設定温度を約38℃に設定する。この状態で、ランプヒータ480を所定時間駆動する。そして、測定温度値と着座部410Tの表面温度とが約38℃で安定するまでの時間を測定した。これにより、図15に示す関係を得た。
【0130】
図15は、測定温度値確認試験時のサーミスタ411による測定温度値と着座部410Tの表面温度との関係を示す図である。図15においては、縦軸が温度を示し、横軸が時間を示す。また、太い実線がサーミスタ411による測定温度値を示し、太い点線が着座部410Tの表面温度を示す。
【0131】
図15に示すように、ランプヒータ480が駆動され、便座部400が昇温される際には、測定温度値と着座部410Tの表面温度との間で温度差が生じる。
【0132】
図15の例では、ランプヒータ480の駆動開始から約4秒後で、測定温度値と着座部410Tの表面温度との間に約2.5℃の温度差が生じている。
【0133】
また、図示しないが、他の条件により上記の測定温度値確認試験を行った場合には、測定温度値と着座部410Tの表面温度との間に最大約6℃の温度差が生じた。
【0134】
すなわち、便座部400の昇温時においては、ランプヒータ480の駆動をサーミスタ411による測定温度値に基づいて正確に制御することが困難である。
【0135】
したがって、ヒータ制御テーブルの作成時においては、ランプヒータ480の駆動に用いる電力、およびその電力により着座部410Tを便座設定温度で安定化させるために必要な時間を考慮して複数のヒータ制御パターンを設定する。
【0136】
加えて、ヒータ制御パターンは、ランプヒータ480を駆動する電力を切替えるときの測定温度値を有してもよい。この場合、予め実験またはシュミレーションを行うことにより、着座部410Tの表面温度と測定温度値との関係について調査する。そして、電力切替え時の測定温度値を設定する。
【0137】
このように、ヒータ制御パターンがランプヒータ480を駆動する時間に関する情報と測定温度値に関する情報とを有する場合には、それぞれの情報に基づいてより正確なランプヒータ480の駆動の制御を行うことができる。
【0138】
図8〜図10のヒータ制御テーブルの例では、ランプヒータ480の駆動に関するタイムスケジュールに加えて、1200W駆動から600W駆動への切替え時の測定温度値(切替温度)が設定されている。この切替温度は、着座部410Tの表面における限界温度に対応する。
【0139】
この場合、制御部210は、使用者の入室時の測定温度値が16℃〜28℃である場合に、タイムスケジュールに沿ってランプヒータ480の1200W駆動を行うとともに、測定温度値が切替温度に達したか否かを判別する。
【0140】
そこで、測定温度値が切替温度に達した場合には、タイムスケジュールにかかわらず1200W駆動から600W駆動への切替えを行う。
【0141】
また、図8〜図10のヒータ制御テーブルの例では、さらに600W駆動から低電力駆動への切替え時の測定温度値(目標温度)が設定されている。この目標温度は、昇温を停止して使用者の着座を待機する際の着座部410Tの表面温度に対応する。
【0142】
この場合、制御部210は、タイムスケジュールに沿ってランプヒータ480の600W駆動を行うとともに、測定温度値が目標温度に達したか否かを判別する。
【0143】
そこで、測定温度値が目標温度に達した場合には、タイムスケジュールにかかわらず600W駆動から低電力駆動への切替えを行い、着座部410Tの表面温度を一定に保つ。
【0144】
体温よりもやや高い温度の熱源に人体が長時間接触すると、その人体の接触部に低温やけどが発生する場合がある。本実施の形態においても、便座設定温度が使用者の体温よりも高い場合、使用者の着座状態が長時間に渡ると、その使用者は低温やけどする場合がある。
【0145】
したがって、ヒータ制御テーブルの作成時においては、使用者が着座した後、時間が経過するにつれて徐々に着座部410Tの温度が下降するように複数のヒータ制御パターンを設定することが好ましい。
【0146】
図8〜図10のヒータ制御テーブルのヒータ制御パターンでは、使用者の着座後のタイムスケジュールを省略している。しかしながら、実際には、使用者の着座後、着座部410Tの表面温度が徐々に低下するようにランプヒータ480を駆動する電力のタイムスケジュールを設定することが好ましい。
【0147】
図16は、図10のヒータ制御テーブルに基づくランプヒータ480の駆動例および着座部410T(図4)の表面温度の変化を示す図である。
【0148】
図16においては、着座部410Tの表面温度と時間との関係を示すグラフと、ランプヒータ480を駆動する際の通電率と時間との関係を示すグラフとが示されている。これら2つのグラフの横軸は共通の時間軸である。
【0149】
本例では、使用者が予め暖房機能をオンし、便座設定温度を高く(38℃)設定した場合を想定する。
【0150】
上述のように、冬季等室温が待機温度である18℃よりも低い場合、制御部210(図3)は、便座部400の温度を18℃となるように温度調節する。このように、制御部210は、入室検知センサ600により使用者の入室が検知されるまでの待機期間D1の間、着座部410Tの表面温度が18℃で一定となるように、ランプヒータ480の低電力駆動を行う。
【0151】
制御部210は、時刻t1で入室検知センサ600により使用者の入室が検知された場合、突入電流低減期間D2の間、図10のヒータ制御テーブルに従ってランプヒータ480の600W駆動を行う。なお、この600W駆動は、突入電流を十分に低減するために
行う。この場合、着座部410Tの表面温度はやや緩やかな第2の温度勾配で上昇される。
【0152】
その後、制御部210は、突入電流低減期間D2の経過後の時刻t2で、ランプヒータ480の1200W駆動を開始し、第1の昇温期間D3の間ランプヒータ480の1200W駆動を継続する。この場合、着座部410Tの表面温度は上述の第1の温度勾配で上昇される。
【0153】
ここで、着座部410Tの表面温度は急激に上昇される。ランプヒータ480の1200W駆動は、着座部410Tの表面温度が限界温度に達するまで行われる。図16の着座部410Tの表面温度を示すグラフでは、限界温度が29℃として一点鎖線で示されている。ランプヒータ480の1200W駆動時に、着座部410Tの表面温度が限界温度になるときに想定される測定温度値が図10の切替温度となる。
【0154】
着座部410Tの表面温度が限界温度に達する時刻t3は、ヒータ制御テーブルにより定められた1200W駆動の時間、および測定温度値がヒータ制御テーブルにより定められた切替温度に達するまでの時間のうち短い時間である。
【0155】
このように、第1の昇温期間D3においては、着座部410Tの表面温度が、1200W駆動により迅速に限界温度まで上昇される。限界温度(本発明での第1の規定温度)よりも低い際には、第1の報知手段としてお知らせLED280(図1)を点滅(本実施の形態では0.3秒ON、0.3秒OFF)させて、使用者にヒータを通電していることを報知する。サーミスタでの検出温度が限界温度よりも高くなると、第2の報知手段としてお知らせLEDを点灯させることにより、使用者は、着座部410Tを冷たいと感じることなく便座部400に着座することができる。
【0156】
また、上述のように、着座部410Tの表面温度を急激に上昇させると、その温度変化にオーバーシュートが生じる。しかしながら、本実施の形態では、着座部410Tの表面温度が限界温度に達したときにランプヒータ480の1200W駆動を600W駆動に切替える。したがって、着座部410Tの表面温度の変化がオーバーシュートした場合でも、その表面温度は便座設定温度を超えない。その結果、使用者が着座時に着座部410Tを熱いと感じることが防止される。
【0157】
続いて、制御部210は、第1の昇温期間D3の経過後の時刻t3で、ランプヒータ480の600W駆動を開始し、第2の昇温期間D4の間ランプヒータ480の600W駆動を継続する。この場合、着座部410Tの表面温度は上述の第2の温度勾配で上昇される。
【0158】
ランプヒータ480の600W駆動は、着座部410Tの表面温度が便座設定温度よりもやや高い温度(40℃)に達するまで行われる。ここで、ランプヒータ480の600W駆動時に、着座部410Tの表面温度が便座設定温度よりもやや高い温度になるときに想定される測定温度値が図10の目標温度となる。
【0159】
着座部410Tの表面温度が便座設定温度よりもやや高い温度に達する時刻t4は、ヒータ制御テーブルにより定められた600W駆動の時間、および測定温度値がヒータ制御テーブルにより定められた目標温度に達するまでの時間のうち短い時間である。
【0160】
第2の温度勾配は第1の温度勾配よりも緩やかである。これにより、着座部410Tの表面温度の変化に大きなオーバーシュートが生じることが防止される。
【0161】
制御部210は、第2の昇温期間D4の経過後の時刻t4で、ランプヒータ480の低電力駆動を開始し、第1の維持期間D5の間ランプヒータ480の低電力駆動を継続する。それにより、着座部410Tの表面温度が便座設定温度よりもやや高い温度で一定となる。
【0162】
本例では、使用者により設定された便座設定温度よりもやや高い温度まで着座部410Tの表面温度が上昇され、その温度は使用者の着座時まで維持される。したがって、使用者は、着座時に自己の設定した便座設定温度とほぼ同じ体感温度を得ることができる。
【0163】
制御部210は、時刻t5で着座センサ290により使用者の便座部400への着座が検知された場合、低電力駆動の通電率を低下させ、第1の着座期間D6の間着座部410Tの表面温度が便座設定温度に低下するようにランプヒータ480の低電力駆動を継続する。本例では、第1の着座期間D6は約2分に設定される。
【0164】
また、制御部210は、第1の着座期間D6の経過後の時刻t6で、低電力駆動の通電率をさらに低下させ、第2の着座期間D7の間着座部410Tの表面温度が便座設定温度よりもやや低い温度(36℃)に低下するようにランプヒータ480の低電力駆動を継続する。本例では、第2の着座期間D7は約2分に設定される。
【0165】
制御部210は、第2の着座期間D7の経過後の時刻t7で、低電力駆動の通電率をさらに低下させ、第2の維持期間D8の間着座部410Tの表面温度が便座設定温度よりもやや低い温度(36℃)で一定となるようにランプヒータ480の低電力駆動を継続する。以下の説明では、第2の維持期間D8において一定に維持される期間着座部410Tの表面温度、すなわち便座設定温度よりもやや低い温度を維持温度と称する。
【0166】
このように、本例では、使用者が便座部400に着座した後、制御部210が徐々に着座部410Tの表面温度を低下させる。それにより、使用者が低温やけどすることが防止される。
【0167】
制御部210は、時刻t8で着座センサ290により使用者が便座部400から離れたことを検知すると、停止期間D9の間ランプヒータ480の駆動を停止する。それにより、着座部410Tの表面温度が低下する。
【0168】
制御部210は、着座部410Tの表面温度が18℃に達した時刻t9で、再びランプヒータ480の低電力駆動を開始し、着座部410Tの表面温度が18℃で一定となるように待機期間D10の間ランプヒータ480の低電力駆動を維持する。
【0169】
上記の第2の昇温期間D4において、制御部210はランプヒータ480の600W駆動を行っているが、制御部210はランプヒータ480を駆動する電力を放物線を描くように徐々に低下させてもよい(通電率のグラフ中の太い点線部参照)。
【0170】
この場合、着座部410Tの表面温度を示すグラフ中の太い点線部に示すように、着座部410Tの表面温度が便座設定温度よりもやや高い温度に近づくにつれて、その温度勾配が徐々に緩やかになる。
【0171】
このように温度勾配が徐々に緩やかになる場合、着座部410Tの温度変化により生じるオーバーシュートを十分に小さくすることができる。
【0172】
本例では、使用者の便座部400への着座後、ランプヒータ480の駆動に用いる電力を調整することにより着座部410Tの表面温度を徐々に低下させているが、ランプヒー
タ480の駆動は使用者の便座部400への着座時に停止してもよい。この場合においても、使用者が低温やけどすることが防止される。
【0173】
また、本例では、着座部410Tの表面温度を便座設定温度よりもやや高い温度まで上昇させているが、着座部410Tの表面温度の上昇は便座設定温度までとなるように行ってもよい。
【0174】
上述のように、お知らせLED280は限界温度よりも検出温度(測定温度値)が低い場合は第1の報知手段である点滅を、検出温度(測定温度値)が高い場合は第2の報知手段である点灯を行い、使用者に着座部410Tが冷たいと感じるか否かをお知らせLED280を見ることで判別することが出来、便座部400に着座することができる。
【0175】
また、入室検知センサ600によるトイレットルームの人体の有無を検出する機能により、使用者がトイレットルームから退室してから一定時間(例えば3分間)経過すると、ランプヒータ480の通電を停止し、お知らせLED280は点滅、点灯の状態によらず消灯する。
【0176】
更に、ランプヒータ480の断線故障やサーモスタット441、442の故障時にはランプヒータ480への通電を行ってもサーミスタ411の測定温度値は変化しない。上述のように1200W通電の際には、ランプヒータ480での温度上昇度合いに比べ、サーミスタ411の測定温度値は遅れる為、サーミスタ411の測定温度値で異常判定を行うと、異常検出に時間がかかってしまい、使用者が冷たい着座部410Tに着座することとなり、不快であり、使い勝手が悪いものとなってしまう。
【0177】
上記課題を解決するために、本実施の形態の便座装置100は、ランプヒータ480への通電率(1200W、600W)に応じて測定温度値の1秒当たりの変化率が、1200Wのときには1.5℃、600Wの時には0.8℃以下のときには、ランプヒータ480等の断線故障と判断する。この1秒間あたりの1.5℃や0.8℃の変化率は断線していないときの温度変化率の約1/2程度に設定している。
【0178】
ランプヒータ480の断線やサーモスタット441、442の故障での温度上昇しない状態や、サーミスタ411の故障等での温度検出ができない状態を検出した際は、お知らせLED280を第3の報知手段で報知することにより、使用者に異常状態を報知する。この第3の報知手段である異常報知は、正常時の点滅(0.3秒ON、0.3秒OFF)とは異なり、周期が早い点滅(例えば0.1秒ON、0.1秒OFFなど)をおこなうことで、使用者に対して正常時とは異なった状態であることを報知する。
【0179】
この第3の報知手段である異常状態の報知は、入室検知センサ600での退室検出からの一定時間(例えば3分間)以降も異常状態報知を継続し、トイレットルームに入室しなくても異常状態を判断することが出来る。なお、本実施の形態では、お知らせLEDを用いて第3の報知手段である異常状態の報知を行ったが、ブザーや音声、または、トイレットルームの外でも使用者が認識できる報知手段を用いてもよい、これにより早期に便座装置の異常を検出することが出来る。
【0180】
以上のように、本実施の形態に係る便座装置100においては、便座部400の温度を常に便座設定温度に維持する必要がない。したがって、使用者がトイレットルームに入室しない待機期間D1、D10(図16)においては、ランプヒータ480を駆動するための電流を十分に小さくすることができる。
【0181】
これにより、便座装置100の暖房機能をオンしている場合でも、消費電力が十分に低
減される。その結果、省エネルギー化が実現される。
【0182】
本発明者は、着座部410Tの表面温度を常に便座設定温度に維持する便座装置の消費電力(ランプヒータ480の駆動に用いる電力)について実験を行ったところ、その消費電力は約125W/hであった。これに対し、本実施の形態に係る便座装置100の消費電力(ランプヒータ480の駆動に用いる電力)は、約42W/hに低減された。
【0183】
また、便座装置100の制御部210は、ランプヒータ480の1200W駆動を行うことにより着座部410Tの表面温度を限界温度まで短時間で上昇させる。その後、制御部210はランプヒータ480の600W駆動を行い、1200W駆動時よりも緩やかな温度勾配で着座部410Tの表面温度を上昇させる。
【0184】
これにより、着座部410Tの温度変化に生じるオーバーシュートが十分に低減される。その結果、着座部410Tの表面温度が短時間で正確に上昇されるとともに、便座設定温度で安定化される。
【0185】
また、お知らせLED280にてランプヒータ480の通電時のサーミスタ411の測定温度値の変化率によりランプヒータ480やサーモスタット441、442、サーミスタ411の断線状態を検出することが出来、より安全性と使い勝手の良い便座装置を提供することが出来る。
【0186】
なお、本実施の形態では、着座部410Tの表面温度を上昇させるためにランプヒータ480を用いているが、着座部410Tの表面温度を瞬時に上昇させることができるのであれば、ランプヒータ480に代えて、電熱線を備えるヒータを用いてもよい。
【0187】
ランプヒータ480の駆動は、約1200Wおよび約600Wの電力ならびに1200W駆動および600W駆動に比べて十分に低い電力を用いて行っているが、ランプヒータ480の駆動に用いる電力はこれらに限られない。ランプヒータ480の駆動に用いる電力はその定格電力に応じて設定してもよい。
【0188】
さらに、第3の報知手段である異常報知の手段としてお知らせLEDにて説明を行ったが、ブザーや音声、または、トイレットルームの外でも使用者が認識できる報知手段を用いても、同様の効果を得ることが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0189】
本発明は、即暖性の高い暖房器具の安全性を高めることができるので、人体に直接接触する暖房装置への用途へも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0190】
【図1】本発明の一実施の形態に係る便座装置およびそれを備えるトイレ装置を示す外観斜視図
【図2】図1の遠隔操作装置の一例を示す模式図
【図3】本発明の一実施の形態に係る便座装置の構成を示す模式図
【図4】図1の便座部の構造の詳細を説明するための分解斜視図
【図5】図1の上部便座ケーシングの構造の詳細を説明するための下面図
【図6】図1の便座部の構造の詳細を説明するための要部断面図
【図7】図1の便座部の内部構造の詳細を説明するための内部の平面図
【図8】所定の便座設定温度(34℃、36℃および38℃)に対応するヒータ制御テーブルの一例を示す図
【図9】所定の便座設定温度(34℃、36℃および38℃)に対応するヒータ制御テーブルの一例を示す図
【図10】所定の便座設定温度(34℃、36℃および38℃)に対応するヒータ制御テーブルの一例を示す図
【図11】(a)は1200W駆動時にランプヒータを流れる電流の波形図(b)は1200W駆動時に通電率切替回路からヒータ駆動部に与えられる通電制御信号の波形図
【図12】(a)は600W駆動時にランプヒータを流れる電流の波形図(b)は600W駆動時に通電率切替回路からヒータ駆動部に与えられる通電制御信号の波形図
【図13】(a)は低電力駆動時にランプヒータを流れる電流の波形図(b)は低電力駆動時に通電率切替回路からヒータ駆動部に与えられる通電制御信号の波形図
【図14】便座昇温試験時のランプヒータの表面温度と着座部の表面温度との関係を示す図
【図15】測定温度値確認試験時のサーミスタによる測定温度値と着座部の表面温度との関係を示す図
【図16】図10のヒータ制御テーブルに基づくランプヒータの駆動例および着座部(図4)の表面温度の変化を示す図
【符号の説明】
【0191】
100 便座装置
210 制御部
280 お知らせLED(報知部)
400 便座部
411、412 サーミスタ(温度検出部)
480 ランプヒータ(発熱体)
600 入室検知センサ(人体検知部)
700 便器
1000 トイレ装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、暖房機能を有する便座装置およびそれを備えるトイレ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、便座の暖房手段の消費電力を抑制する目的で、使用者がトイレを使用する直前に便座の暖房手段の通電を開始する便座装置としては、便座装置本体と通信手段を介して連動する別体の操作表示手段をトイレとは別の居室空間に設置し、トイレ外の居室空間から別体の操作表示手段により便座の暖房手段の電源の操作を行い、使用者が居室空間からトイレに移動するまでの時間に便座を昇温させ、表示手段により便座表面が快適な温度になっていることを、便座適温ランプの点灯や便座温度表示などで使用者に知らせる構成となっている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−119444号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来の構成では、別体の操作表示手段を設置した居室空間からトイレまでの移動時間に便座の暖房手段を通電加熱ため、別体の操作表示手段の設置場所とトイレとの距離や使用者の歩く早さ等の不特定の要素に基づく時間を通電時間とするため、トイレに到着時には便座が十分に昇温していなかったり、昇温後相当時間がたってからトイレに到着し、十分な省エネ効果を得られないという課題を有していた。
【0004】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、省エネルギー化を実現するとともに、着座部の温度を短時間で正確に所定の温度に安定させることができ、かつ、着座部の温度が快適な温度であることを報知することができる便座装置およびそれを備えるトイレ装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従来の課題を解決するために、本発明に係る便座装置は、便座部と、前記便座部を加熱する発熱体と、前記便座部の表面温度を検出する温度検出部と、使用者の存在を検知する人体検知部と、制御部と、報知部とを備え、前記制御部は前記人体検知部により使用者の存在が検知された場合に前記発熱体への通電を行い、第1の温度勾配で前記便座部の温度が使用者が冷たいと感じない限界温度まで上昇するように第1の電力で前記発熱体を第1の時間駆動した後、前記第1の温度勾配よりも緩やかな第2の温度勾配で前記便座部の温度が使用者が予め設定した温度に基づいて決定した温度まで上昇するように前記発熱体を第2の時間駆動し、前記報知部は、前記第1の電力で前記発熱体を第1の時間駆動した時間、および前記温度検出部による検出温度が前記便座表面温度が前記限界温度となる切替温度を検知するまでの時間のうち短い時間で、前記便座部の表面温度が前記限界温度に達したことを報知することを特徴としたものである。これによって、使用者がトイレに入室すると、人体検知部により検知され、便座部への通電を行い、使用者が着衣を外して便座に着座するまでの間に、便座部の温度が着座に適した温度にまで昇温し、報知手段で報知するものであり、便座部の発熱体に無駄な通電をすることがなく、また着座部の温度が不快な低温状態にあるか否かを実際に着座部に触れること無く認知することが出来る為、省エネルギー性を備えた使い勝手の良い便座装置を提供することが出来る。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る便座装置およびそれを備えるトイレ装置によれば、省エネルギー化が実現されるとともに、使用者に着座部の温度が着座に適した温度になっていることを報知する
ことが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
第1の発明に係る便座装置は、便座部と、前記便座部を加熱する発熱体と、前記便座部の表面温度を検出する温度検出部と、使用者の存在を検知する人体検知部と、制御部と、報知部とを備え、前記制御部は前記人体検知部により使用者の存在が検知された場合に前記発熱体への通電を行い、第1の温度勾配で前記便座部の温度が使用者が冷たいと感じない限界温度まで上昇するように第1の電力で前記発熱体を第1の時間駆動した後、前記第1の温度勾配よりも緩やかな第2の温度勾配で前記便座部の温度が使用者が予め設定した温度に基づいて決定した温度まで上昇するように前記発熱体を第2の時間駆動し、前記報知部は、前記第1の電力で前記発熱体を第1の時間駆動した時間、および前記温度検出部による検出温度が前記便座表面温度が前記限界温度となる切替温度を検知するまでの時間のうち短い時間で、前記便座部の表面温度が前記限界温度に達したことを報知することを特徴としたことを特徴とすることにより、使用者がトイレに入室すると、人体検知部により使用者の存在が検知し、便座部への通電を行い、前記便座部の表面温度が前記限界温度に達したことを報知するものであり、これにより、便座部の発熱体に無駄な通電をすることがなく、使用者がトイレットルームに入室した際に、着座部の温度が不快な低温状態にあるか否かを実際に着座部に触れること無く認知することが出来る為、省エネルギー性を備えた使い勝手の良い便座装置を提供することが出来る。また、使用者は、着座部を冷たいと感じることなく便座部に着座することができる。
【0008】
第2発明に係るトイレ装置は、便器と、第1のいずれか1つの発明に係る便座装置とを備えることにより、第1の発明の便座装置が有する機能を便器と一体となって備えたトイレ装置となることとなり、使い勝手がよく、安全性の高いトイレ装置を提供することが出来る。
【0009】
以下、本発明の一実施の形態に係る便座装置およびそれを備えるトイレ装置について図面とともに説明する。
【0010】
(実施の形態1)
図1は本発明の第1の実施の形態に係る便座装置およびそれを備えるトイレ装置を示す外観斜視図である。図1に示すように、トイレ装置1000は、便座装置100および便器700を備え、トイレットルーム内に設置される。
【0011】
トイレ装置1000において、便器700上には便座装置100が装着される。便座装置100は、暖房機能を有し、本体部200、遠隔操作装置300、便座部400、蓋部500および人体検知部である入室検知センサ600により構成される。
【0012】
本体部200には、便座部400および蓋部500が開閉自在に取り付けられる。さらに、本体部200には、洗浄水供給機構および着座センサ290が設けられるとともに、後述する制御部が内蔵されている。
【0013】
本実施の形態において、便座部400には発熱体であるランプヒータが内蔵されている。詳細は後述する。
【0014】
本体部200の図示しない洗浄水供給機構は、水道配管に接続されており、便器700内に洗浄水を供給する。着座センサ290は、例えば反射型の赤外線センサである。この場合、着座センサ290は、人体から反射された赤外線を検出した場合に便座部400上に使用者が存在することを検知する。
【0015】
また、本体部200の上面側に報知部であるお知らせLED280が設けられている。お知らせLED280は、ランプヒータへの通電開始時に点滅し、便座部400の温度が後述の限界温度に達したときに点灯する。また、後述するランプヒータやサーモスタットの断線、サーミスタの断線などの異常時にも使用者に対して報知を行う。
【0016】
遠隔操作装置300には、複数のスイッチが設けられている。この遠隔操作装置300は、例えば便座部400上に着座する使用者が操作可能な場所に取り付けられる。
【0017】
入室検知センサ600は、例えばトイレットルームの入り口等に取り付けられる。入室検知センサ600は、例えば反射型の赤外線センサである。この場合、入室検知センサ600は、人体から反射された赤外線を検出した場合にトイレットルーム内に使用者が入室したことを検知する。
【0018】
本体部200の制御部は、着座センサ290、遠隔操作装置300および入室検知センサ600から送信される信号に基づいて、便座部400に内蔵された後述のランプヒータの駆動を制御する。
【0019】
さらに、本体部200の制御部は、洗浄水供給機構(図示せず)、本体部200に設けられた脱臭装置(図示せず)および温風供給装置(図示せず)等の制御も行う。
【0020】
図2は、図1の遠隔操作装置300のを示す模式図であり、図に示すように、遠隔操作装置300は、暖房スイッチ301、複数の温度調節スイッチ302、303、304および複数のLED(発光ダイオード)305を備える。
【0021】
使用者により暖房スイッチ301および複数の温度調節スイッチ302、303、304が押下操作される。
【0022】
それにより、遠隔操作装置300は、後述する便座装置100の本体部200に設けられた制御部に所定の信号を無線送信する。本体部200の制御部は、遠隔操作装置300より無線送信される所定の信号を受信し、後述のランプヒータの駆動等を制御する。
【0023】
冬季のように、使用者が暖房機能を使用する場合には、予め暖房スイッチ301が押下操作されることにより便座装置100の暖房機能がオンする。この状態で、温度調節スイッチ302が押下操作された場合には便座部400の温度が低く(例えば、34℃)設定され、温度調節スイッチ303が押下操作された場合には便座部400の温度が中程度(例えば、36℃)に設定され、温度調節スイッチ304が押下操作された場合には便座部400の温度が高く(例えば、38℃)設定される。
【0024】
なお、夏季のように使用者が暖房機能を使用しない場合には、暖房スイッチ301が押下操作されることにより便座装置100の暖房機能がオフする。
【0025】
以下、温度調節スイッチ302〜304により設定される便座部400の温度を便座設定温度と称する。
【0026】
複数のLED305の各々は、暖房スイッチ301および複数の温度調節スイッチ302、303、304と対応するように設けられている。複数のLED305は、暖房スイッチ301および複数の温度調節スイッチ302、303、304の押下操作に伴い点灯する。
【0027】
図3は便座装置100の構成を示す模式図である。上述のように、便座装置100は、
本体部200、遠隔操作装置300、便座部400および入室検知センサ600を備える。
【0028】
図3に示すように、本体部200は、制御部210、温度測定部220、ヒータ駆動部230、お知らせLED280および着座センサ290を含む。
【0029】
また、便座部400はランプヒータ480およびサーミスタ411を備える。なお、ランプヒータ480は後方ランプヒータ481および前方ランプヒータ482を含む。
【0030】
制御部210は、例えばマイクロコンピュータからなり、使用者の入室および便座部400の温度等を判定する判定部、タイマ機能を有する計時部、種々の情報を記憶する記憶部、ならびに、ヒータ駆動部230の動作を制御するための通電率切替回路等を含む。
【0031】
本体部200の温度測定部220は、便座部400のサーミスタ411に接続されている。これにより、温度測定部220は、サーミスタ411から出力される信号に基づいて便座部400の温度を測定する。以下、サーミスタ411を通じて温度測定部220により測定される便座部400の温度を測定温度値と称する。
【0032】
また、本体部200のヒータ駆動部230は、便座部400のランプヒータ480に接続されている。これにより、ヒータ駆動部230はランプヒータ480を駆動する。
【0033】
上記構成の便座装置100は次のように動作する。
【0034】
初めに、初期設定時の動作について説明する。使用者が遠隔操作装置300の暖房スイッチ301(図2)を押下操作することにより、暖房機能をオンする旨の信号が本体部200の制御部210に送信される。これにより、制御部210がヒータ駆動部230を制御することにより、ランプヒータ480が駆動される。それにより、便座部400が、例えば約18℃となるように温度調節される。このときの温度を待機温度と称する。
【0035】
ここで、使用者が遠隔操作装置300の温度調節スイッチ302、303、304(図2)のいずれかを押下操作することにより、便座設定温度が制御部210に送信される。制御部210は、遠隔操作装置300から受信した便座設定温度を記憶部に記憶する。
【0036】
例えば、温度調節スイッチ302が押下操作された際には、便座設定温度が34℃として記憶部に記憶される。また、温度調節スイッチ303が押下操作された際には、便座設定温度が36℃として記憶部に記憶される。さらに、温度調節スイッチ304が押下操作された際には、便座設定温度が38℃として記憶部に記憶される。
【0037】
使用者がトイレットルームに入室すると、入室検知センサ600は使用者の入室を検知する。それにより、使用者の入室を示す信号が制御部210に送信される。
【0038】
次に、通常の使用時の動作について説明する。制御部210の判定部は、入室検知センサ600からの信号により使用者のトイレットルームへの入室を検知する。そこで、判定部は、便座部400の測定温度値、および記憶部に記憶された後述のヒータ制御テーブルに基づいてランプヒータ480の駆動に関する特定のヒータ制御パターンを選択する。
【0039】
通電率切替回路は、選択されたヒータ制御パターンおよび計時部により得られる時間情報に基づいてヒータ駆動部230の動作を制御する。
【0040】
それにより、ヒータ駆動部230によりランプヒータ480が駆動され、便座部400
の温度が便座設定温度へと瞬時に上昇される。
【0041】
制御部210の動作、ランプヒータ480の駆動に関するヒータ制御パターン、およびヒータ制御テーブルの詳細は後述する。
【0042】
図4〜図7は、図1の便座部400の構造の詳細を説明するための図である。図4に便座部400の分解斜視図が示されている。図5に上部便座ケーシング410を下側から見た図が示されている。図6に図4のU−U線における上部便座ケーシング410の拡大断面図が示されている。
【0043】
図4に示すように、便座部400は、アルミニウムにより形成された上部便座ケーシング410と、合成樹脂により形成された下部便座ケーシング420とを備える。
【0044】
一点鎖線で示すように、上部便座ケーシング410の上面の一部が使用者の着座部410Tとなる。
【0045】
図4および図5に示すように、上部便座ケーシング410の下面側には、着座部410Tの領域に2つのサーミスタ411が取り付けられる。また、その他の領域に2つのサーミスタ412が取り付けられる。
【0046】
なお、着座部410Tの領域に設けられるサーミスタ411は1つであってもよい。また、その他の領域に設けられるサーミスタ412も1つであってもよい。
【0047】
図6に示すように、上部便座ケーシング410は熱伝導性に優れたアルミニウム層410bの上面および下面に種々の層を形成することにより作製される。なお、アルミニウムの熱伝導率は約237W/m・Kである。
【0048】
アルミニウム層410bの下面に、炭素等を含む黒色の塗料が塗布される。これにより、アルミニウム層410bの下面には輻射エネルギーを効率よく吸収できる黒色の輻射吸収層410aが形成される。
【0049】
アルミニウム層410bの上面には、アルマイト層410cおよび表面化粧層410dが順に形成される。アルマイト層410cが形成されることにより、アルミニウム層410bの上面の耐蝕性が向上される。表面化粧層410dは所定の塗料等により形成される。
【0050】
アルミニウム層410bの下面には、輻射吸収層410aを介してサーミスタ411が取り付けられている。サーミスタ411は、輻射吸収層410aを介してアルミニウム層410bの温度を検出する。
【0051】
図7に下部便座ケーシング420を上側から見た図が示されている。図4および図7に示すように、下部便座ケーシング420の上面側には、下部便座ケーシング420の形状に沿うように形成された輻射反射板430が取り付けられる。輻射反射板430はアルミニウムからなる板材の表面を鏡面仕上げすることにより作製される。
【0052】
また、輻射反射板430の上面には、ランプヒータ480が設けられる。ランプヒータ480は、U字形に形成された後方ランプヒータ481および前方ランプヒータ482を直列に接続することにより作製される。
【0053】
さらに、輻射反射板430の上面には、前方ランプヒータ482の所定の箇所(2箇所
)に近接するように2つのサーモスタット441が取り付けられ、後方ランプヒータ481の所定の箇所(2箇所)に近接するように2つのサーモスタット442が取り付けられる。これら複数のサーモスタット441、442は、ともにランプヒータ480に直列に接続される。
【0054】
図5の上部便座ケーシング410と図7の下部便座ケーシング420とを図示しないシール材を介して接合することにより図1の便座部400が完成する。これにより、上部便座ケーシング410および下部便座ケーシング420内の空間が密閉される。シール材により、上部便座ケーシング410および下部便座ケーシング420内への水の浸入が防止される。この状態で、上部便座ケーシング410に取り付けられたサーミスタ411は、前方ランプヒータ482に対向する。
【0055】
後方ランプヒータ481および前方ランプヒータ482は、ガラス管、フィラメント、アルゴンガスおよびハロゲンガスからなるハロゲンランプヒータである。
【0056】
これら後方ランプヒータ481および前方ランプヒータ482においては、ガラス管の内部にフィラメントが設けられるとともに、アルゴンガスおよびハロゲンガスが封入されている。
【0057】
本実施の形態の後方ランプヒータ481および前方ランプヒータ482の定格電力は、それぞれ500Wおよび700Wである。
【0058】
上述のように後方ランプヒータ481および前方ランプヒータ482は、図3のヒータ駆動部230に接続されている。ヒータ駆動部230により後方ランプヒータ481および前方ランプヒータ482に電流が流されると、各ランプヒータから周囲へ赤外線が輻射される。
【0059】
そして、後方ランプヒータ481および前方ランプヒータ482から輻射された赤外線、すなわち輻射エネルギーが直接的にまたは輻射反射板430を介して間接的に上部便座ケーシング410の下面側に入射する。
【0060】
上述のように黒色の輻射吸収層410a(図6)は輻射エネルギーを効率よく吸収することができるので、後方ランプヒータ481および前方ランプヒータ482からの輻射エネルギーが効率よくアルミニウム層410b(図6)に伝達される。それにより、アルミニウム層410bが発熱する。
【0061】
上記のようにアルミニウムは高い熱伝導率を有するので、輻射エネルギーにより発生された熱は、上部便座ケーシング410の全体に短時間で伝達される。
【0062】
上部便座ケーシング410において、着座部410Tの領域に取り付けられるサーミスタ411の働き、および着座部410T以外の領域に取り付けられるサーミスタ412の働きについて説明する。
【0063】
上部便座ケーシング410の着座部410Tは、その他の部位に比べてランプヒータ480に近接している。これにより、上部便座ケーシング410の着座部410Tはランプヒータ480の駆動時に比較的高い応答性で熱が伝達される。
【0064】
また、着座部410Tは、上部便座ケーシング410の中でも人体に接触する部分であるため、十分な温度管理が必要である。
【0065】
それにより、着座部410Tのサーミスタ411は、ランプヒータ480の駆動時における温度調節のために用いられる。
【0066】
一方、着座部410T以外の領域に取り付けられるサーミスタ412は、サーミスタ411が故障等した場合に上部便座ケーシング410の温度が過剰に上昇しないようにするために用いられる。
【0067】
下部便座ケーシング420において、前方ランプヒータ482に近接するように取り付けられる2つのサーモスタット441の働き、および後方ランプヒータ481に近接するように取り付けられる2つのサーモスタット442の働きについて説明する。
【0068】
前方ランプヒータ482側の2つのサーモスタット441は、前方ランプヒータ482の温度を監視するために用いられる。これら2つのサーモスタット441は、例えば78℃でランプヒータ480への通電を遮断するように設定される。したがって、2つのサーモスタット441は78℃で通電を遮断する温度ヒューズの役割を果たす。
【0069】
一方、後方ランプヒータ481側の2つのサーモスタット442は、後方ランプヒータ481周辺の雰囲気の温度を監視するために用いられる。これら2つのサーモスタット442は、例えば53℃でランプヒータ480への通電を遮断するように設定される。したがって、2つのサーモスタット442は53℃で通電を遮断する温度ヒューズの役割を果たす。
【0070】
本実施の形態に係る便座装置100の制御部210には、3種類の便座設定温度(34℃、36℃および38℃)に対応する3つのヒータ制御テーブルが予め記憶されている。
【0071】
図8〜図10は、所定の便座設定温度(34℃、36℃および38℃)に対応するヒータ制御テーブルの一例を示す図である。図8〜図10に示すヒータ制御テーブルの各々は、使用者の入室時のサーミスタ411(図3)の測定温度値に対応する複数のヒータ制御パターンを有する。
【0072】
複数のヒータ制御パターンの各々には、ランプヒータ480の駆動に関するタイムスケジュールが設定されている。また、それぞれのヒータ制御パターンにおいては、ランプヒータ480を駆動する電力を切替えるときのサーミスタ411の測定温度値が設定されている。詳細は後述する。
【0073】
上述のように、便座設定温度が決定されると、制御部210は、決定された便座設定温度に対応する1つのヒータ制御テーブルを選択する。
【0074】
また、制御部210は、図3の入室検知センサ600により使用者の入室が検知されると、サーミスタ411の測定温度値に基づいてヒータ制御テーブルの中から1つのヒータ制御パターンを選択する。それにより、選択されたヒータ制御パターンに従ってランプヒータ480の駆動が制御される。
【0075】
例えば、便座設定温度が低く(34℃)設定され、かつ使用者の入室時の測定温度値が16℃〜18℃である場合、図3の制御部210は、図8のヒータ制御テーブルの16℃〜18℃に相当するヒータ制御パターンに基づいて、突入電流を低減するための後述の600W駆動を0.2秒間行う。
【0076】
その後、制御部210は後述の1200W駆動を6秒間行い、続いて後述の600W駆動を2.1秒間行う。
【0077】
なお、上述のように、本実施の形態に係る便座装置100においては、暖房機能がオンしている場合に、便座部400が例えば約18℃となるように温度調節される。
【0078】
ここで、図8〜図10のヒータ制御テーブルは、暖房機能がオフ状態からオン状態に切替わる場合も想定している。それにより、図8〜図10のヒータ制御テーブルには、0℃〜16℃に相当するヒータ制御パターンも設定されている。
【0079】
すなわち、室温が0℃のときに使用者が暖房機能をオンすると、制御部210は、例えば図8のヒータ制御テーブルの0℃〜2℃に相当するヒータ制御パターンに基づいて、600W駆動を16秒間行う。
【0080】
本実施の形態において、ランプヒータ480の駆動の制御は、ランプヒータ480を駆動する電力を大きく3つに変化させることにより行う。
【0081】
例えば、便座部400を第1の温度勾配で昇温させる場合、図3のヒータ駆動部230は約1200Wの電力でランプヒータ480を駆動する(1200W駆動)。また、便座部400を第1の温度勾配よりもやや緩やかな第2の温度勾配で昇温させる場合、ヒータ駆動部230は約600Wの電力でランプヒータ480を駆動する(600W駆動)。さらに、便座部400の温度を一定に保つ場合、ヒータ駆動部230は約50Wの電力でランプヒータ480を駆動する(低電力駆動)。なお、低電力駆動とは、1200W駆動および600W駆動に比べて十分に低い電力(例えば、0W〜50Wの範囲内の電力)によりランプヒータ480を駆動することをいう。
【0082】
1200W駆動、600W駆動および低電力駆動の切替えは、制御部210の通電率切替回路が、ヒータ駆動部230からランプヒータ480への通電を制御することにより行われる。
【0083】
ヒータ駆動部230には図示しない電源回路から交流電流が供給されている。そこで、ヒータ駆動部230は、通電率切替回路から与えられる通電制御信号に基づいて供給された交流電流をランプヒータ480に流す。
【0084】
1200W駆動時、600W駆動時および低電力駆動時におけるランプヒータ480への通電状態を通電率切替回路の通電制御信号とともに説明する。
【0085】
図11(a)は1200W駆動時にランプヒータ480を流れる電流の波形図、図11(b)は1200W駆動時に通電率切替回路からヒータ駆動部230に与えられる通電制御信号の波形図である。
【0086】
図11(b)に示すように、1200W駆動時における通電制御信号は常に論理「1」となる。ヒータ駆動部230は通電制御信号が論理「1」のときに電源回路から供給される交流電流をランプヒータ480に流す(図11(a)太線部)。それにより、全周期の期間に渡って交流電流がランプヒータ480に流れる。その結果、ランプヒータ480が約1200Wの電力で駆動される。
【0087】
図12(a)は600W駆動時にランプヒータ480を流れる電流の波形図、図12(b)は600W駆動時に通電率切替回路からヒータ駆動部230に与えられる通電制御信号の波形図である。
【0088】
図12(b)に示すように、600W駆動時における通電制御信号は、ヒータ駆動部2
30に供給される交流電流と同じ周期のパルスからなる。パルスのデューティー比は50%に設定される。
【0089】
ヒータ駆動部230は通電制御信号が論理「1」のときに電源回路から供給される交流電流をランプヒータ480に流す(図12(a)太線部)。それにより、半周期の期間交流電流がランプヒータ480に流れる。その結果、ランプヒータ480が約600Wの電力で駆動される。
【0090】
図13(a)は低電力駆動時にランプヒータ480を流れる電流の波形図、図13(b)は低電力駆動時に通電率切替回路からヒータ駆動部230に与えられる通電制御信号の波形図である。
【0091】
図13(b)に示すように、低電力駆動時における通電制御信号は、ヒータ駆動部230に供給される交流電流と同じ周期のパルスからなる。パルスのデューティー比は50%よりも小さく(例えば数%程度)に設定される。
【0092】
ヒータ駆動部230は通電制御信号が論理「1」のときに電源回路から供給される交流電流をランプヒータ480に流す(図13(a)太線部)。各周期においては、パルス幅に相当する期間交流電流がランプヒータ480に流れる。その結果、ランプヒータ480が例えば約50Wの電力で駆動する。
【0093】
上記の他、便座部400の温度を低くする場合、または便座装置100の暖房機能をオフしている場合等には、通電率切替回路はヒータ駆動部230に通電制御信号を与えない(通電制御信号を論理「0」に設定する)。これにより、ヒータ駆動部230はランプヒータ480を駆動しない。
【0094】
ここで、一般に、電子機器に供給される電流が高調波成分を有する場合、ノイズが発生する。本実施の形態では、上述のようにランプヒータ480の1200W駆動または600W駆動を行う場合には、ランプヒータ480に供給される電流がサインカーブを描くように変化するので、電流の大きさが大きくなってもノイズの発生が十分に低減される。
【0095】
また、ランプヒータ480の低電力駆動を行う場合、ランプヒータ480に供給される電流は高調波成分を有するが、電流の大きさが1200W駆動時および600W駆動時に比べて非常に小さいので、ノイズの発生が十分に低減される。
【0096】
上記のように、本実施の形態では、ランプヒータ480を1200W、600Wおよび約50Wの電力で駆動するとしているが、他の大きさの電力でランプヒータ480を駆動してもよい。
【0097】
例えば、ランプヒータ480に半周期の期間交流電流を流す場合には、交流電流を流すタイミングを2周期または3周期等所定の周期の間隔で設定する。それにより、1200W、600Wおよび約50Wとは異なる大きさの電力で、ノイズの発生を十分に防止しつつランプヒータ480を駆動することができる。
【0098】
以下の説明において、通電率とは交流電流の1周期に対してランプヒータ480に交流電流を流す時間(通電制御信号における論理「1」の期間)の割合をいう。
【0099】
なお、本実施の形態では、制御部210は通電制御信号が論理「1」のときにランプヒータ480に電流を供給し、通電制御信号が論理「0」のときにランプヒータ480への電流の供給を停止しているが、通電制御信号が論理「1」のときにランプヒータ480へ
の電流の供給を停止し、通電制御信号が論理「0」のときにランプヒータ480に電流を供給してもよい。
【0100】
本実施の形態に係る便座装置100において、便座部400を瞬時に昇温させる際には、ランプヒータ480に大きな電流を流す。この場合、ランプヒータ480に比較的大きな突入電流が発生する。
【0101】
このような大きな突入電流が発生すると、過電流によりブレーカが遮断され、便座装置100が接続される電力配線の電圧降下が発生する。
【0102】
したがって、ヒータ制御テーブルの作成時においては、突入電流を十分低減できるように複数のヒータ制御パターンを設定することが好ましい。
【0103】
図8〜図10のヒータ制御テーブルの例では、ランプヒータ480の1200W駆動を行う場合、その直前に600W駆動を行うようにヒータ制御パターンが設定されている。図8〜図10では、1200W駆動を行う前の600W駆動を突入電流低減用600W駆動として示している。
【0104】
上記のように、ランプヒータ480により便座部400の温度を瞬時に上昇させるために、ランプヒータ480に大きな電流を流す。それにより、便座部400の温度変化にオーバーシュートが生じる。そのため、便座部400の温度を短時間で便座設定温度に安定させることが困難である。
【0105】
そこで、本実施の形態では、ヒータ制御テーブルの作成時においては、便座部400の温度変化のオーバーシュートを十分低減できるように複数のヒータ制御パターンを設定する。
【0106】
図8〜図10のヒータ制御テーブルの例では、便座部400の温度変化のオーバーシュートを防止するために、便座部400の昇温時にランプヒータ480の駆動を2段階で制御するように設定されている。
【0107】
暖房機能を有する便座装置100においては、使用者が着座部410Tを冷たいと感じないようにすることが好ましい。以下、使用者が冷たいと感じない着座部410Tの最低温度を限界温度と称する。
【0108】
したがって、使用者がトイレットルームに入室し、着座部410Tに着座する際には、少なくとも着座部410Tの温度が限界温度よりも高くなっていることが好ましい。
【0109】
そこで、ヒータ制御テーブルの作成時においては、使用者の入室から着座部410Tの表面温度を限界温度まで上昇させる間の時間を十分に短くできるように複数のヒータ制御パターンを設定する。なお、本発明者が実験を行った結果、限界温度は約29℃であった。
【0110】
図8〜図10のヒータ制御テーブルの例では、便座部400の温度を迅速に限界温度まで上昇させるため、使用者入室時の測定温度値が限界温度よりも小さい場合に、ランプヒータ480の1200W駆動を行うように設定されている。
【0111】
使用者が着座部410Tに着座することにより感じる温度(体感温度)と、着座部410Tの実際の表面温度とは異なる。
【0112】
一般に、人体が特定の対象物に接触する際の体感温度は、対象物の熱伝導率および人体と対象物との熱容量の差等により変化する。
【0113】
これにより、着座部410Tの実際の表面温度と、その着座部410Tに着座する使用者の体感温度との間には差が生じる場合がある。
【0114】
本実施の形態において、着座部410Tは熱伝導性に優れたアルミニウムにより形成されている。
【0115】
これにより、例えば、着座部410Tの温度が使用者の体温よりも低い場合には、使用者の体温が着座部410Tに短時間で伝達されるので、使用者の体感温度は実際の着座部410Tの温度よりも低くなる。
【0116】
したがって、ヒータ制御テーブルの作成時においては、使用者の着座時における体感温度をできるだけ便座設定温度に近づけられるように複数のヒータ制御パターンを設定する。
【0117】
便座部400の昇温時において、ランプヒータ480の表面温度(ガラス管の温度)と着座部410Tの実際の表面温度との間では大きな温度差が生じる。
【0118】
したがって、着座部410Tの表面温度を便座設定温度まで上昇させ、その温度を安定して保つためには、ランプヒータ480の駆動開始時から所定の時間が必要となる。
【0119】
本発明者は、ランプヒータ480の駆動開始時から着座部410Tの表面温度が便座設定温度で安定するまでの時間について、次の試験(便座昇温試験)を行った。
【0120】
トイレットルームの室温が25℃である場合に、便座設定温度を約40℃に設定する。この状態で、ランプヒータ480を駆動する。そして、着座部410Tの表面温度が約40℃で安定するまでの時間を測定した。これにより、図14に示す関係を得た。
【0121】
図14は、便座昇温試験時のランプヒータ480の表面温度と着座部410Tの表面温度との関係を示す図である。図14においては、縦軸が温度を示し、横軸が時間を示す。また、太い実線がランプヒータ480の表面温度を示し、太い点線が着座部410Tの表面温度を示す。
【0122】
図14に示すように、ランプヒータ480が駆動されることにより、ランプヒータ480の表面温度は約10秒間で100℃に達する。その後、ランプヒータ480の表面温度は約100℃で一定に保たれる。
【0123】
一方、ランプヒータ480の表面温度が変化することにより、着座部410Tの表面温度は、緩やかに上昇し約10秒間で約40℃に達する。その後、着座部410Tの表面温度は約45℃で一定に保たれる。
【0124】
このように、例えば着座部410Tの表面温度と便座設定温度との差は時間とともに増大し、約10秒後にほぼ一定となる。
【0125】
すなわち、10秒よりも短い時間内で温度制御する場合には、ランプヒータ480の表面温度と着座部410Tの表面温度との差を考慮してランプヒータ480へ流す電流を制御することが困難である。
【0126】
したがって、ヒータ制御テーブルの作成時においては、ランプヒータ480の駆動に用いる電力、およびその電力により着座部410Tを便座設定温度で安定化させるために必要な時間を考慮して複数のヒータ制御パターンを設定する。
【0127】
便座部400の昇温時において、図3のサーミスタ411による測定温度値と着座部410Tの実際の表面温度との間では温度差が生じる。
【0128】
本発明者は、便座部400の昇温時のサーミスタ411による測定温度値と、着座部410Tの実際の表面温度との関係について、次の試験(測定温度値確認試験)を行った。
【0129】
トイレットルームの室温が21℃である場合に、便座設定温度を約38℃に設定する。この状態で、ランプヒータ480を所定時間駆動する。そして、測定温度値と着座部410Tの表面温度とが約38℃で安定するまでの時間を測定した。これにより、図15に示す関係を得た。
【0130】
図15は、測定温度値確認試験時のサーミスタ411による測定温度値と着座部410Tの表面温度との関係を示す図である。図15においては、縦軸が温度を示し、横軸が時間を示す。また、太い実線がサーミスタ411による測定温度値を示し、太い点線が着座部410Tの表面温度を示す。
【0131】
図15に示すように、ランプヒータ480が駆動され、便座部400が昇温される際には、測定温度値と着座部410Tの表面温度との間で温度差が生じる。
【0132】
図15の例では、ランプヒータ480の駆動開始から約4秒後で、測定温度値と着座部410Tの表面温度との間に約2.5℃の温度差が生じている。
【0133】
また、図示しないが、他の条件により上記の測定温度値確認試験を行った場合には、測定温度値と着座部410Tの表面温度との間に最大約6℃の温度差が生じた。
【0134】
すなわち、便座部400の昇温時においては、ランプヒータ480の駆動をサーミスタ411による測定温度値に基づいて正確に制御することが困難である。
【0135】
したがって、ヒータ制御テーブルの作成時においては、ランプヒータ480の駆動に用いる電力、およびその電力により着座部410Tを便座設定温度で安定化させるために必要な時間を考慮して複数のヒータ制御パターンを設定する。
【0136】
加えて、ヒータ制御パターンは、ランプヒータ480を駆動する電力を切替えるときの測定温度値を有してもよい。この場合、予め実験またはシュミレーションを行うことにより、着座部410Tの表面温度と測定温度値との関係について調査する。そして、電力切替え時の測定温度値を設定する。
【0137】
このように、ヒータ制御パターンがランプヒータ480を駆動する時間に関する情報と測定温度値に関する情報とを有する場合には、それぞれの情報に基づいてより正確なランプヒータ480の駆動の制御を行うことができる。
【0138】
図8〜図10のヒータ制御テーブルの例では、ランプヒータ480の駆動に関するタイムスケジュールに加えて、1200W駆動から600W駆動への切替え時の測定温度値(切替温度)が設定されている。この切替温度は、着座部410Tの表面における限界温度に対応する。
【0139】
この場合、制御部210は、使用者の入室時の測定温度値が16℃〜28℃である場合に、タイムスケジュールに沿ってランプヒータ480の1200W駆動を行うとともに、測定温度値が切替温度に達したか否かを判別する。
【0140】
そこで、測定温度値が切替温度に達した場合には、タイムスケジュールにかかわらず1200W駆動から600W駆動への切替えを行う。
【0141】
また、図8〜図10のヒータ制御テーブルの例では、さらに600W駆動から低電力駆動への切替え時の測定温度値(目標温度)が設定されている。この目標温度は、昇温を停止して使用者の着座を待機する際の着座部410Tの表面温度に対応する。
【0142】
この場合、制御部210は、タイムスケジュールに沿ってランプヒータ480の600W駆動を行うとともに、測定温度値が目標温度に達したか否かを判別する。
【0143】
そこで、測定温度値が目標温度に達した場合には、タイムスケジュールにかかわらず600W駆動から低電力駆動への切替えを行い、着座部410Tの表面温度を一定に保つ。
【0144】
体温よりもやや高い温度の熱源に人体が長時間接触すると、その人体の接触部に低温やけどが発生する場合がある。本実施の形態においても、便座設定温度が使用者の体温よりも高い場合、使用者の着座状態が長時間に渡ると、その使用者は低温やけどする場合がある。
【0145】
したがって、ヒータ制御テーブルの作成時においては、使用者が着座した後、時間が経過するにつれて徐々に着座部410Tの温度が下降するように複数のヒータ制御パターンを設定することが好ましい。
【0146】
図8〜図10のヒータ制御テーブルのヒータ制御パターンでは、使用者の着座後のタイムスケジュールを省略している。しかしながら、実際には、使用者の着座後、着座部410Tの表面温度が徐々に低下するようにランプヒータ480を駆動する電力のタイムスケジュールを設定することが好ましい。
【0147】
図16は、図10のヒータ制御テーブルに基づくランプヒータ480の駆動例および着座部410T(図4)の表面温度の変化を示す図である。
【0148】
図16においては、着座部410Tの表面温度と時間との関係を示すグラフと、ランプヒータ480を駆動する際の通電率と時間との関係を示すグラフとが示されている。これら2つのグラフの横軸は共通の時間軸である。
【0149】
本例では、使用者が予め暖房機能をオンし、便座設定温度を高く(38℃)設定した場合を想定する。
【0150】
上述のように、冬季等室温が待機温度である18℃よりも低い場合、制御部210(図3)は、便座部400の温度を18℃となるように温度調節する。このように、制御部210は、入室検知センサ600により使用者の入室が検知されるまでの待機期間D1の間、着座部410Tの表面温度が18℃で一定となるように、ランプヒータ480の低電力駆動を行う。
【0151】
制御部210は、時刻t1で入室検知センサ600により使用者の入室が検知された場合、突入電流低減期間D2の間、図10のヒータ制御テーブルに従ってランプヒータ480の600W駆動を行う。なお、この600W駆動は、突入電流を十分に低減するために
行う。この場合、着座部410Tの表面温度はやや緩やかな第2の温度勾配で上昇される。
【0152】
その後、制御部210は、突入電流低減期間D2の経過後の時刻t2で、ランプヒータ480の1200W駆動を開始し、第1の昇温期間D3の間ランプヒータ480の1200W駆動を継続する。この場合、着座部410Tの表面温度は上述の第1の温度勾配で上昇される。
【0153】
ここで、着座部410Tの表面温度は急激に上昇される。ランプヒータ480の1200W駆動は、着座部410Tの表面温度が限界温度に達するまで行われる。図16の着座部410Tの表面温度を示すグラフでは、限界温度が29℃として一点鎖線で示されている。ランプヒータ480の1200W駆動時に、着座部410Tの表面温度が限界温度になるときに想定される測定温度値が図10の切替温度となる。
【0154】
着座部410Tの表面温度が限界温度に達する時刻t3は、ヒータ制御テーブルにより定められた1200W駆動の時間、および測定温度値がヒータ制御テーブルにより定められた切替温度に達するまでの時間のうち短い時間である。
【0155】
このように、第1の昇温期間D3においては、着座部410Tの表面温度が、1200W駆動により迅速に限界温度まで上昇される。限界温度(本発明での第1の規定温度)よりも低い際には、第1の報知手段としてお知らせLED280(図1)を点滅(本実施の形態では0.3秒ON、0.3秒OFF)させて、使用者にヒータを通電していることを報知する。サーミスタでの検出温度が限界温度よりも高くなると、第2の報知手段としてお知らせLEDを点灯させることにより、使用者は、着座部410Tを冷たいと感じることなく便座部400に着座することができる。
【0156】
また、上述のように、着座部410Tの表面温度を急激に上昇させると、その温度変化にオーバーシュートが生じる。しかしながら、本実施の形態では、着座部410Tの表面温度が限界温度に達したときにランプヒータ480の1200W駆動を600W駆動に切替える。したがって、着座部410Tの表面温度の変化がオーバーシュートした場合でも、その表面温度は便座設定温度を超えない。その結果、使用者が着座時に着座部410Tを熱いと感じることが防止される。
【0157】
続いて、制御部210は、第1の昇温期間D3の経過後の時刻t3で、ランプヒータ480の600W駆動を開始し、第2の昇温期間D4の間ランプヒータ480の600W駆動を継続する。この場合、着座部410Tの表面温度は上述の第2の温度勾配で上昇される。
【0158】
ランプヒータ480の600W駆動は、着座部410Tの表面温度が便座設定温度よりもやや高い温度(40℃)に達するまで行われる。ここで、ランプヒータ480の600W駆動時に、着座部410Tの表面温度が便座設定温度よりもやや高い温度になるときに想定される測定温度値が図10の目標温度となる。
【0159】
着座部410Tの表面温度が便座設定温度よりもやや高い温度に達する時刻t4は、ヒータ制御テーブルにより定められた600W駆動の時間、および測定温度値がヒータ制御テーブルにより定められた目標温度に達するまでの時間のうち短い時間である。
【0160】
第2の温度勾配は第1の温度勾配よりも緩やかである。これにより、着座部410Tの表面温度の変化に大きなオーバーシュートが生じることが防止される。
【0161】
制御部210は、第2の昇温期間D4の経過後の時刻t4で、ランプヒータ480の低電力駆動を開始し、第1の維持期間D5の間ランプヒータ480の低電力駆動を継続する。それにより、着座部410Tの表面温度が便座設定温度よりもやや高い温度で一定となる。
【0162】
本例では、使用者により設定された便座設定温度よりもやや高い温度まで着座部410Tの表面温度が上昇され、その温度は使用者の着座時まで維持される。したがって、使用者は、着座時に自己の設定した便座設定温度とほぼ同じ体感温度を得ることができる。
【0163】
制御部210は、時刻t5で着座センサ290により使用者の便座部400への着座が検知された場合、低電力駆動の通電率を低下させ、第1の着座期間D6の間着座部410Tの表面温度が便座設定温度に低下するようにランプヒータ480の低電力駆動を継続する。本例では、第1の着座期間D6は約2分に設定される。
【0164】
また、制御部210は、第1の着座期間D6の経過後の時刻t6で、低電力駆動の通電率をさらに低下させ、第2の着座期間D7の間着座部410Tの表面温度が便座設定温度よりもやや低い温度(36℃)に低下するようにランプヒータ480の低電力駆動を継続する。本例では、第2の着座期間D7は約2分に設定される。
【0165】
制御部210は、第2の着座期間D7の経過後の時刻t7で、低電力駆動の通電率をさらに低下させ、第2の維持期間D8の間着座部410Tの表面温度が便座設定温度よりもやや低い温度(36℃)で一定となるようにランプヒータ480の低電力駆動を継続する。以下の説明では、第2の維持期間D8において一定に維持される期間着座部410Tの表面温度、すなわち便座設定温度よりもやや低い温度を維持温度と称する。
【0166】
このように、本例では、使用者が便座部400に着座した後、制御部210が徐々に着座部410Tの表面温度を低下させる。それにより、使用者が低温やけどすることが防止される。
【0167】
制御部210は、時刻t8で着座センサ290により使用者が便座部400から離れたことを検知すると、停止期間D9の間ランプヒータ480の駆動を停止する。それにより、着座部410Tの表面温度が低下する。
【0168】
制御部210は、着座部410Tの表面温度が18℃に達した時刻t9で、再びランプヒータ480の低電力駆動を開始し、着座部410Tの表面温度が18℃で一定となるように待機期間D10の間ランプヒータ480の低電力駆動を維持する。
【0169】
上記の第2の昇温期間D4において、制御部210はランプヒータ480の600W駆動を行っているが、制御部210はランプヒータ480を駆動する電力を放物線を描くように徐々に低下させてもよい(通電率のグラフ中の太い点線部参照)。
【0170】
この場合、着座部410Tの表面温度を示すグラフ中の太い点線部に示すように、着座部410Tの表面温度が便座設定温度よりもやや高い温度に近づくにつれて、その温度勾配が徐々に緩やかになる。
【0171】
このように温度勾配が徐々に緩やかになる場合、着座部410Tの温度変化により生じるオーバーシュートを十分に小さくすることができる。
【0172】
本例では、使用者の便座部400への着座後、ランプヒータ480の駆動に用いる電力を調整することにより着座部410Tの表面温度を徐々に低下させているが、ランプヒー
タ480の駆動は使用者の便座部400への着座時に停止してもよい。この場合においても、使用者が低温やけどすることが防止される。
【0173】
また、本例では、着座部410Tの表面温度を便座設定温度よりもやや高い温度まで上昇させているが、着座部410Tの表面温度の上昇は便座設定温度までとなるように行ってもよい。
【0174】
上述のように、お知らせLED280は限界温度よりも検出温度(測定温度値)が低い場合は第1の報知手段である点滅を、検出温度(測定温度値)が高い場合は第2の報知手段である点灯を行い、使用者に着座部410Tが冷たいと感じるか否かをお知らせLED280を見ることで判別することが出来、便座部400に着座することができる。
【0175】
また、入室検知センサ600によるトイレットルームの人体の有無を検出する機能により、使用者がトイレットルームから退室してから一定時間(例えば3分間)経過すると、ランプヒータ480の通電を停止し、お知らせLED280は点滅、点灯の状態によらず消灯する。
【0176】
更に、ランプヒータ480の断線故障やサーモスタット441、442の故障時にはランプヒータ480への通電を行ってもサーミスタ411の測定温度値は変化しない。上述のように1200W通電の際には、ランプヒータ480での温度上昇度合いに比べ、サーミスタ411の測定温度値は遅れる為、サーミスタ411の測定温度値で異常判定を行うと、異常検出に時間がかかってしまい、使用者が冷たい着座部410Tに着座することとなり、不快であり、使い勝手が悪いものとなってしまう。
【0177】
上記課題を解決するために、本実施の形態の便座装置100は、ランプヒータ480への通電率(1200W、600W)に応じて測定温度値の1秒当たりの変化率が、1200Wのときには1.5℃、600Wの時には0.8℃以下のときには、ランプヒータ480等の断線故障と判断する。この1秒間あたりの1.5℃や0.8℃の変化率は断線していないときの温度変化率の約1/2程度に設定している。
【0178】
ランプヒータ480の断線やサーモスタット441、442の故障での温度上昇しない状態や、サーミスタ411の故障等での温度検出ができない状態を検出した際は、お知らせLED280を第3の報知手段で報知することにより、使用者に異常状態を報知する。この第3の報知手段である異常報知は、正常時の点滅(0.3秒ON、0.3秒OFF)とは異なり、周期が早い点滅(例えば0.1秒ON、0.1秒OFFなど)をおこなうことで、使用者に対して正常時とは異なった状態であることを報知する。
【0179】
この第3の報知手段である異常状態の報知は、入室検知センサ600での退室検出からの一定時間(例えば3分間)以降も異常状態報知を継続し、トイレットルームに入室しなくても異常状態を判断することが出来る。なお、本実施の形態では、お知らせLEDを用いて第3の報知手段である異常状態の報知を行ったが、ブザーや音声、または、トイレットルームの外でも使用者が認識できる報知手段を用いてもよい、これにより早期に便座装置の異常を検出することが出来る。
【0180】
以上のように、本実施の形態に係る便座装置100においては、便座部400の温度を常に便座設定温度に維持する必要がない。したがって、使用者がトイレットルームに入室しない待機期間D1、D10(図16)においては、ランプヒータ480を駆動するための電流を十分に小さくすることができる。
【0181】
これにより、便座装置100の暖房機能をオンしている場合でも、消費電力が十分に低
減される。その結果、省エネルギー化が実現される。
【0182】
本発明者は、着座部410Tの表面温度を常に便座設定温度に維持する便座装置の消費電力(ランプヒータ480の駆動に用いる電力)について実験を行ったところ、その消費電力は約125W/hであった。これに対し、本実施の形態に係る便座装置100の消費電力(ランプヒータ480の駆動に用いる電力)は、約42W/hに低減された。
【0183】
また、便座装置100の制御部210は、ランプヒータ480の1200W駆動を行うことにより着座部410Tの表面温度を限界温度まで短時間で上昇させる。その後、制御部210はランプヒータ480の600W駆動を行い、1200W駆動時よりも緩やかな温度勾配で着座部410Tの表面温度を上昇させる。
【0184】
これにより、着座部410Tの温度変化に生じるオーバーシュートが十分に低減される。その結果、着座部410Tの表面温度が短時間で正確に上昇されるとともに、便座設定温度で安定化される。
【0185】
また、お知らせLED280にてランプヒータ480の通電時のサーミスタ411の測定温度値の変化率によりランプヒータ480やサーモスタット441、442、サーミスタ411の断線状態を検出することが出来、より安全性と使い勝手の良い便座装置を提供することが出来る。
【0186】
なお、本実施の形態では、着座部410Tの表面温度を上昇させるためにランプヒータ480を用いているが、着座部410Tの表面温度を瞬時に上昇させることができるのであれば、ランプヒータ480に代えて、電熱線を備えるヒータを用いてもよい。
【0187】
ランプヒータ480の駆動は、約1200Wおよび約600Wの電力ならびに1200W駆動および600W駆動に比べて十分に低い電力を用いて行っているが、ランプヒータ480の駆動に用いる電力はこれらに限られない。ランプヒータ480の駆動に用いる電力はその定格電力に応じて設定してもよい。
【0188】
さらに、第3の報知手段である異常報知の手段としてお知らせLEDにて説明を行ったが、ブザーや音声、または、トイレットルームの外でも使用者が認識できる報知手段を用いても、同様の効果を得ることが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0189】
本発明は、即暖性の高い暖房器具の安全性を高めることができるので、人体に直接接触する暖房装置への用途へも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0190】
【図1】本発明の一実施の形態に係る便座装置およびそれを備えるトイレ装置を示す外観斜視図
【図2】図1の遠隔操作装置の一例を示す模式図
【図3】本発明の一実施の形態に係る便座装置の構成を示す模式図
【図4】図1の便座部の構造の詳細を説明するための分解斜視図
【図5】図1の上部便座ケーシングの構造の詳細を説明するための下面図
【図6】図1の便座部の構造の詳細を説明するための要部断面図
【図7】図1の便座部の内部構造の詳細を説明するための内部の平面図
【図8】所定の便座設定温度(34℃、36℃および38℃)に対応するヒータ制御テーブルの一例を示す図
【図9】所定の便座設定温度(34℃、36℃および38℃)に対応するヒータ制御テーブルの一例を示す図
【図10】所定の便座設定温度(34℃、36℃および38℃)に対応するヒータ制御テーブルの一例を示す図
【図11】(a)は1200W駆動時にランプヒータを流れる電流の波形図(b)は1200W駆動時に通電率切替回路からヒータ駆動部に与えられる通電制御信号の波形図
【図12】(a)は600W駆動時にランプヒータを流れる電流の波形図(b)は600W駆動時に通電率切替回路からヒータ駆動部に与えられる通電制御信号の波形図
【図13】(a)は低電力駆動時にランプヒータを流れる電流の波形図(b)は低電力駆動時に通電率切替回路からヒータ駆動部に与えられる通電制御信号の波形図
【図14】便座昇温試験時のランプヒータの表面温度と着座部の表面温度との関係を示す図
【図15】測定温度値確認試験時のサーミスタによる測定温度値と着座部の表面温度との関係を示す図
【図16】図10のヒータ制御テーブルに基づくランプヒータの駆動例および着座部(図4)の表面温度の変化を示す図
【符号の説明】
【0191】
100 便座装置
210 制御部
280 お知らせLED(報知部)
400 便座部
411、412 サーミスタ(温度検出部)
480 ランプヒータ(発熱体)
600 入室検知センサ(人体検知部)
700 便器
1000 トイレ装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
便座部と、前記便座部を加熱する発熱体と、前記便座部の表面温度を検出する温度検出部と、使用者の存在を検知する人体検知部と、制御部と、報知部とを備え、前記制御部は前記人体検知部により使用者の存在が検知された場合に前記発熱体への通電を行い、第1の温度勾配で前記便座部の温度が使用者が冷たいと感じない限界温度まで上昇するように第1の電力で前記発熱体を第1の時間駆動した後、前記第1の温度勾配よりも緩やかな第2の温度勾配で前記便座部の温度が使用者が予め設定した温度に基づいて決定した温度まで上昇するように前記発熱体を第2の時間駆動し、前記報知部は、前記第1の電力で前記発熱体を第1の時間駆動した時間、および前記温度検出部による検出温度が前記便座表面温度が前記限界温度となる切替温度を検知するまでの時間のうち短い時間で、前記便座部の表面温度が前記限界温度に達したことを報知することを特徴とした便座装置。
【請求項2】
便器と、請求項1に記載の便座装置とを備えるトイレ装置。
【請求項1】
便座部と、前記便座部を加熱する発熱体と、前記便座部の表面温度を検出する温度検出部と、使用者の存在を検知する人体検知部と、制御部と、報知部とを備え、前記制御部は前記人体検知部により使用者の存在が検知された場合に前記発熱体への通電を行い、第1の温度勾配で前記便座部の温度が使用者が冷たいと感じない限界温度まで上昇するように第1の電力で前記発熱体を第1の時間駆動した後、前記第1の温度勾配よりも緩やかな第2の温度勾配で前記便座部の温度が使用者が予め設定した温度に基づいて決定した温度まで上昇するように前記発熱体を第2の時間駆動し、前記報知部は、前記第1の電力で前記発熱体を第1の時間駆動した時間、および前記温度検出部による検出温度が前記便座表面温度が前記限界温度となる切替温度を検知するまでの時間のうち短い時間で、前記便座部の表面温度が前記限界温度に達したことを報知することを特徴とした便座装置。
【請求項2】
便器と、請求項1に記載の便座装置とを備えるトイレ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2008−12347(P2008−12347A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−257327(P2007−257327)
【出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【分割の表示】特願2005−297493(P2005−297493)の分割
【原出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【分割の表示】特願2005−297493(P2005−297493)の分割
【原出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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