説明

便座装置

【課題】設置時のアース接続忘れを防ぎ、使用者の安全性の向上を図ることを目的とする。
【解決手段】一部を金属材料413で形成した便座400と、便座400の裏面に絶縁体414を介して設置した便座ヒータ450と、金属材料413をアース接続するアース接続手段473とを備え、便座ヒータ450は金属箔451に電気絶縁層463bを有する線状ヒータ460を配設した構成とし、便座ヒータ460の金属箔451と便座400の金属材料413との電位差を検知して、アース接続手段473の接続の有無を検知することにより、便座装置の設置時のアース接続手段473の未接続を報知し、使用者の感電事故を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は便座装置における人体への感電防止に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の便座装置における人体の感電防止の方法としては、商用電源から絶縁トランスを介して電気談合便座に導通する電源回路を構成することにより、使用者の身体が接触する便座等の電源を非大地アース電源とすることにより、便座に座っている人体への感電を防止している(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開昭63―125738号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来の構成では、高額また重量の重たい絶縁トランスが必要となり、製品のコストアップとともに、大型化および大重量化という課題を有していた。
【0004】
本願発明は、前記従来の課題を解決するもので、便座にアース端子を設けて、アース接地により感電を防止するとともに、便座装置の設置時に必ずアース接続が行われるように、アース接続の有無を検知して報知することにより安全性の確保を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の課題を解決するために、本発明の便座装置は、一部を金属材料で形成した便座と、便座の裏面に絶縁体を介して設置した便座ヒータと、金属材料をアース接続するアース接続手段とを備え、便座ヒータは金属箔に電気絶縁層を有する線状ヒータを配設した構成とし、便座ヒータの金属箔と便座の金属材料との電位差を検知して、アース接続手段の接続の有無を検知する構成となっている。
【0006】
本構成によって、便座の金属材料がアース接続されているときは、金属箔と便座の金属材料間の電圧は、ほぼ交流電源の電圧である100V以上になり、アース接続がなされていないときは、金属箔と便座の金属材料間で形成される静電容量であるコンデンサを介して交流電源に電流が流れ、この電流によりコンデンサに電圧が発生し、金属箔と便座部の金属材料間の電圧は数Vになるので、大きく変わる金属箔と便座の金属材料間の電圧を検知手段で検知することにより、便座部の金属材料のアース接続の有無を検知して報知することが可能となる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の便座装置によれば、アース接続が行われていない場合、報知することにより、アース接続作業の実施を警告することができるので、使用者の感電事故を防止し、安全性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
第1の発明は、着座部の少なくとも一部を金属材料で形成した便座と、前記便座の少なくとも着座部の裏面に絶縁体を介して設置した便座ヒータと、前記便座の金属材料をアース接続するアース接続手段とを備え、前記便座ヒータは金属箔に電気絶縁層を有する線状ヒータを間隔を設けて配設した構成とし、前記絶縁体を介して設置した前記便座ヒータの金属箔と前記着座部の金属材料との電位差を検知する検知手段を設け、前記検知手段で前記アース接続手段の接続の有無を検知することとした。
【0009】
これにより、絶縁体を介して設置した便座ヒータの金属箔と便座の金属材料間で形成される静電容量であるコンデンサの両極の電位差が、アース接続の有無により大きく変化することを検知手段で検知して報知することが可能となり、便座装置の感電事故を防止することができる。
【0010】
第2の発明は、特に第1の発明において、便座ヒータの金属箔に電気的に接続したリード線をダイオードを介して交流電源の一端に接続し、交流電源の一端に第1のコンデンサの一端を、交流電源の他端に第2のコンデンサの一端を接続し、第1のコンデンサの他端と第2のコンデンサの他端と第3のコンデンサの一端を接続し、第3のコンデンサの他端は便座部の金属材料に接続し、金属箔と便座部の金属材料間に検知手段を設けた。
【0011】
この構成により、便座の金属材料がアース接続されているときは、金属箔と便座の金属材料間の電圧は、ほぼ交流電源の電圧である100V以上になり、アース接続がなされていないときは、金属箔と便座の金属材料間で形成される静電容量であるコンデンサを介して交流電源に電流が流れ、この電流によりコンデンサに電圧が発生し、金属箔と便座部の金属材料間の電圧は数Vになるので、大きく変わる金属箔と便座の金属材料間の電圧を検知手段で検知することにより、便座部の金属材料のアース接続の有無を検知して報知することが可能となり、便座装置の感電事故を防止することができる。
【0012】
第3の発明は、特に第2の発明において、交流電源の一端に加え、交流電源の他端からもダイオードを追加して金属箔に電気的に接続したリード線に接続する構成とした。
【0013】
この構成により、交流電源の一端からだけでなく他端からもダイオードを追加してリード線に接続することとなり、便座装置の電源のプラグの向きを気にすることなく商用交流電源のコンセントに差し込むことができる。
【0014】
第4の発明は、特に第1〜3のいずれか1つの発明において、検知手段にネオンランプを使用することにより、アース接地されるとネオンランプが点灯し、アース接地されていないとネオンランプが消灯することとなり、ネオンランプ1つで検知手段と報知手段を兼用することができるので、回路のシンプル化とコストの低減ができる。
【0015】
以下本発明を実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0016】
(実施の形態1)
図1は本発明の一実施の形態に係る電気便座用便座ヒータが組み込まれた衛生洗浄装置。およびそれを備えるトイレ装置を示す外観斜視図である。トイレ装置1000はトイレットルーム内に設置される。トイレ装置1000において、便器700には衛生洗浄装置100が取り付けられる。衛生洗浄装置100は、本体部200、遠隔操作装置300、便座部400および 蓋部500により構成される。蓋部500を除く衛生洗浄装置100の各構成要素が、後述の便座装置110を構成する。本体部200には、便座部400および蓋部500が開閉可能に取り付けられている。また、本体部200には、図示しない洗浄水供給機構が設けられるとともに、制御部90が内蔵される。図1では、本体部200の正面上部に設けられる着座センサ610が示されている。
【0017】
この着座センサ610は、例えば反射型の赤外線センサである。この場合、着座センサ610は、人体から反射された赤外線を検出することにより便座部400上に使用 者が存在することを検知する。さらに、図1では、本体部200の正面下部に設けられる便器ノズル40が便器700の内側に突出している状態が示されている。この便器ノズル40は、上述の洗浄水供給機構に接続されている。洗浄水供給機構は、図示しない水道配管に
接続されている。これにより、洗浄水供給機構は、水道配管から供給される洗浄水を便器ノズル40に供給する。それにより、便器ノズル40から便器700の内面の広い範囲に洗浄水が噴出される(便器プレ洗浄)。または、便器ノズル40から便器700の内面の背面側に洗浄水が噴出される (便器後部洗浄)。また、洗浄水供給機構は、局部洗浄ノズル部(図示せず)に接続されている。これにより、洗浄水供給機構は、水道配管から供給される洗浄水を局部洗浄ノズル部に供給する。それにより、局部洗浄ノズル部から使用者の局部に洗浄水が噴出され、局部が洗浄される。
【0018】
遠隔操作装置300には、複数のスイッチが設けられている。遠隔操作装置300は、例えば便座部400上に着座する使用者が操作可能な場所に取り付けられる。
【0019】
入室検知センサ600は、トイレットルームの入口等に取り付けられる。入室検知センサ600は、例えば反射型の赤外線センサである。この場合、入室検知センサ600は、人体から反射された赤外線を検出した場合にトイレットルーム内に使用者が入室したことを検知する。
【0020】
本体部200の制御部90は、遠隔操作装置300、入室検知センサ600および着座センサ610から送信される信号に基づいて、衛生洗浄装置100の各部の動作を制御する。
【0021】
図2は、便座装置110の構成を示す模式図である。 上述のように、便座装置110は、本体部200、遠隔操作装置300、便座部400および入室検知センサ600を備える。
【0022】
図2に示すように、本体部200は、制御部90、温度測定部401、ヒータ駆動部402、アース有無検知部480、便座温調ランプRA1および着座センサ610を含む。また、便座部400は便座ヒータ450およびサーミスタ401aを備える。
【0023】
制御部90は、例えばマイクロコンピュータからなり、使用者の入室および便座部400の温度等を判定する判定部、タイマ機能を有する計時部、種々の情報を記憶する記憶部、ならびに、ヒータ駆動部402の動作を制御するための通電率切替回路等を含む。
【0024】
本体部200の温度測定部401は、便座部400のサーミスタ401aに接続されている。これにより、温度測定部401は、サーミスタ401aから出力される信号に基づいて便座部400の温度を測定する。以下、サーミスタ401aを通じて温度測定部401により測定される便座部400の温度を測定温度値と称する。
【0025】
また、本体部200のヒータ駆動部402は、便座部400の便座ヒータ450に接続されている。これにより、ヒータ駆動部402は便座ヒータ450を駆動する。
【0026】
本体部200のアース有無検知部480は、便座部400の便座ヒータ450から出ているリード線471に接続され、便座部450のから引き出されたアースリード線472がアース線473を介してアースに接続されているかの有無を検知して報知する。
【0027】
本実施の形態において、便座装置110は次のように動作する。初期設定時では、制御部90がヒータ駆動部402を制御することにより、便座部400が例えば約18℃となるように温度調整さ れる。このときの温度を待機温度と称する。
【0028】
ここで、使用者が遠隔操作装置300の便座温度調整スイッチ(図示せず)を操作することにより、便座設定温度が制御部90に送信される。制御部90は、遠隔操作装置30
0から受信した便座設定温度を記憶部に記憶する。
【0029】
使用者がトイレットルームに入室すると、入室検知センサ600が使用者の入室を検知する。それにより、使用者の入室検知信号が制御部90に送信される。
【0030】
次に、通常の使用時の動作について説明する。制御部90の判定部は、入室検知センサ600からの入室検知信号により使用者のトイ レットルームへの入室を検知する。そこで、判定部は、便座部400の測定温度値、および記憶部に記憶された便座設定温度に基づいて便座ヒータ450の駆動に関する特定のヒータ制御パターンを選択する。
【0031】
通電率切替回路は、選択されたヒータ制御パターンおよび計時部により得られる時間情報に基づいてヒータ駆動部402の動作を制御する。それにより、ヒータ駆動部402により便座ヒータ450が駆動され、便座部400の温度が便座設定温度へと瞬時に上昇される。
【0032】
図3は、便座部400の分解斜視図である。図4(a)は、第1の例の便座 部400の便座ヒータ450の平面図、図4(b)は、図4(a)の領域C72の拡大図である。図3に示すように、便座部400は、主としてアルミニウムにより形成された略楕円形状の上部便座ケーシング410、略馬蹄形状の便座ヒータ450および合成樹脂により形成された略楕円形状の下部便座ケーシング420を備える。
【0033】
以下、着座した使用者から見て前方側を便座部400の前部とし、着座した使用者から見て後方側を便座部400の後部とする。
【0034】
図4(a)および図5に示すように、本実施の形態の便座ヒータ450は、着座した使用者の身体が接触する着座部の形状に合わせて前部の一部が切り取られた馬蹄状に形成される。なお、便座ヒータ450は、 楕円形状を有してもよい。便座ヒータ450は、例えばアルミニウムからなる金属箔451、453および線状ヒータ460を含む。
【0035】
線状ヒータ460は、シート中央部SE3からシート一方端部SE1までの領域およびシート中央部SE3からシート他方端部SE2までの領域において上部便座ケーシング410の形状に合わせて蛇行形状に配設される。
【0036】
具体的には、線状ヒータ460は、左右6列程度のU字状部を有するように形成される。これらのU字状部は、着座した使用者の大腿部の方向にほぼ沿って並 行に配置される。各U字状部における線状ヒータ460の間隔は5mm程度である。また、図4(b)に示すように、蛇行形状の線状ヒータ460の経路中に熱応力緩衝部となる複数の折曲部CUが設けられる。
【0037】
線状ヒータ460のヒータ始端部460aおよびヒータ終端部460bは、便座部400の後部の一方側から引き出されるリード線470にそれぞれ接続される。リード線470は防水性を有する絶縁被覆を備えており、ヒータ始端部460aおよびヒータ終端部460bとの接続部は金属箔451、453で挟持された状態であり外部からの浸水を防ぐ防水構造となっている。
【0038】
また、便座部450のから引き出されたアースリード線472がアース接続手段であるアース線473を介してアース34に接続されているかの有無を検知するために、金属箔451、453にリード線471が電気的に接続されている。
【0039】
図5は、上部便座ケーシング410に取り付けられる便座ヒータ450の構造の一例を
示す断面図である。図5に示すように、上部便座ケーシング410は、例えば厚さ1mmのアルミニウム板413により形成される。アルミニウム板413の上面には、アルマイト層412および表面化粧層411が形成される。表面化粧層411の上面が着座面410Uとなる。また、アルミニウム板413の下面には、絶縁体として塗装膜414が形成される。塗装膜414は、例えば膜厚40μmおよび150℃の耐熱性を有するポリエステル粉体塗装膜である。なお 、アルミニウム板413の代わりに、銅板、ステンレス板、アルミニウムめっき鋼板および亜鉛アルミニウムめっき鋼板のうちいずれかまたは複数を用いてもよい。
【0040】
塗装膜414の下面に粘着層452aを介して例えばアルミニウムからなる金属箔451が貼着される。金属箔451の膜厚は、例えば50μmである。
【0041】
線状ヒータ460は、断面円形の発熱線463a、エナメル層463bおよび絶縁被覆層462により構成される。断面円形の発熱線463aの外周面がエナメル層463bおよび絶縁被覆層462で順に被覆される。発熱線463aおよびエナメル層463bによりエナメル線463が構成される。
【0042】
発熱線463aは、例えば0.16〜0.25mmの直径を有し、銅または銅合金からなる。本例では、発熱線463aとして、直径0.176mmの4%Ag−Cu合金からなる高抗張力型ヒータ線が用いられる。抵抗値は0.833Ω/mである。
【0043】
エナメル層463bは、例えば180〜300℃の耐熱性を有するポリエステルイミド(PEI)からなる。エナメル層463bの膜厚は、20μm以下であり、本例では12〜13μmである。
【0044】
このようなエナメル線463は、エナメル層463bの膜厚が極薄い0.01〜0.02mm程度であっても、電気用品技術基準である1000Vで1分間以上の電気絶縁耐圧性能を十分確保することができる。また、エナメル層463bの材料として、ポリイミド(PI)またはポリアミドイミド(PAI)を用いてもよい。
【0045】
絶縁被覆層462は、例えば260℃の耐熱性を有するパーフロロアルコキシ混合物(以下PFAと称する)等のフッ素樹脂からなる。絶縁被覆層462の厚みは、例えば0.1〜0.15mmである。PFAからなる絶縁被覆層462の形成は、押出し加工により行うことができる。 この場合、絶縁被覆層462の厚みが0.05〜0.1mmと薄くても、雷サージにも耐える電気絶縁耐圧性能を確保することができる。
【0046】
なお、絶縁被覆層462の材料として、ポリイミド(PI)またはポリアミドイミド(PAI)を用いてもよい。
【0047】
線状ヒータ460の外径は、例えば0.46〜0.50mmである。線状ヒータ460の電力密度は、例えば0.95W/cm2である。
【0048】
線状ヒータ460は、粘着層452bおよび例えばアルミニウムからなる金属箔453で覆うように金属箔451に取り付けられる。金属箔453の膜厚は、例えば50μmである。
【0049】
このように、単一のエナメル線463上に絶縁被覆層462を形成することにより二重の絶縁構造を確保することができる。
【0050】
また、絶縁被覆層462は比較的薄くても十分な絶縁性が得られる。したがって、絶縁
被覆層462の厚さを薄くすることができる。上記の例では、線状ヒータ460の樹脂層(エナメル層463bおよび絶縁被覆層462)の厚さは、0.12mm程度であり、極めて薄い。この場合、発熱線463aから金属箔451および便座ケーシング410への熱伝導を極めて俊敏に行うことができる。
【0051】
ちなみに従来の便座装置においては、線状ヒータのシリコーンゴムまたは塩化ビニール等からなる被覆チューブの厚さは、上記の例の約10倍の1mm程度ある。このような被覆チューブの熱伝導速度は桁違いに遅く、便座の昇温速度を速くすることはできなかった。
【0052】
従来の便座装置において便座の昇温速度を無理やり速くするためにヒータ線に大きい電力を供給した場合、断熱状態でヒータ線の温度を高くした場合と同様に、被覆チューブが溶融および焼損する。そのため、このような方法による便座の昇温は実用できなかった。
【0053】
一方、本例のように耐熱性能に優れたエナメル線 463をヒータ線として使用した場合、十分短時間で便座を昇温でき、かつ電気絶縁性および安全性を確保できる。したがって、本例の構造は、種々の便座装置に有効に実用することができる。
【0054】
また、本例の構造では、エナメル層463bおよび絶縁被覆層462等からなる樹脂層を0.1〜0.4mm程度の薄い厚さで形成できる。それにより、発熱線463aおよび樹脂層の絶対温度が低い温度に維持された状態で、便座を急速に昇温させることができる。その結果、高価な耐熱絶縁材料でなく比較的安価な絶縁材料を用いることができる。
【0055】
また、本例においては、線状ヒータ460の熱を便座ケーシング410に効率よく伝達するために、線状ヒータ460を金属箔451,453で挟んでいる。ここで、本例の線状ヒータ460においては、エナメル層463bおよび絶縁被覆層462を薄くできるので、線状ヒータ460の外径を細く ( 約φ0.2〜φ0.4) できる。この場合、金属箔451と金属箔453とを貼り合わせる際に、金属箔451と金属箔453との間の空気層を小さくすることができるとともに、金属箔451,453のしわを少なくすることができる。それにより、エナメル線463の局所高熱が抑制され、エナメル線463の断線および電気絶縁層(エナメル層463bおよび絶縁被覆層462)の損傷が防止される。その結果、便座装置110の長寿命化が可能になる。
【0056】
また、エナメル線463を細くできるので、便座ヒータ450の重量を低減でき、便座開閉トルクを小さくすることができる。それにより、便座開閉用の電動開閉ユニットを小型化でき、便座装置110の小型化が可能となる。
【0057】
なお、便座部400の安全性確保のために、便座装置110には2つの安全回路が内蔵されている。第1の安全回路は、便座ヒータ450 の金属箔451と電気的に接触されたリード線471および上部便座ケーシング410のアルミニウム板413と電気的に接触されたアースリード線472間に接続されており、第2の安全回路は、便座ヒータ450の両方のリード線470a、470bと便座ヒータ断線検出回路との間に接続されている。
【0058】
これらの安全回路は便座装置110の設置工事が正常に行われていない場合や、便座ヒータ450に異常が発生したときに使用者の安全を確保するために用いるものである。
【0059】
アース有無検知回路は、便座装置にアース接続がなされていない時に、塗装膜414を介して設置されている便座ヒータ450の金属箔451と上部便座ケーシング410のアルミニウム板413間の電位差の変化をリード線470a、470b、471、アースリ
ード線472を介して検出し、報知するものである。
【0060】
また、便座ヒータ断線検出回路は、便座ヒータ450両端に発生する電圧波形が便座ヒータ450断線時には発生しなくなることを検出するものであり、便座ヒータの断線を検出したときは、ヒータ駆動部402は便座ヒータ450への通電を停止する。
【0061】
特に、上記安全回路の詳細について以下に記述する。図4(a)に示すように、便座ヒータ450の金属箔451、453にリード線471を電気的に接続し外部に取り出し、ヒータ線460の始端はリード線470a、終端はリード線470bで外部に取り出している。
【0062】
図6(a)は、便座部400がアースされていない時のアース有無検知部の回路図である。破線20で囲んだ部分は、便座部400の電気的な等価回路である。
【0063】
図に示すように、線状ヒータ460の始端にはリード線470aが、線状ヒータ460の終端にはリード線470bが接続してある。電気絶縁層(エナメル層463bおよび絶縁被覆層462)を介して設置された線状ヒータ460と金属箔451間で構成される静電容量をコンデンサ24とコンデンサ25で、塗装膜414を介して設置された金属箔451と上部便座ケーシング410のアルミニウム板413間で構成される静電容量をコンデンサ26とコンデンサ27で表している。コンデンサ24とコンデンサ25の容量は共に0.75nFで、コンデンサ26とコンデンサ27の容量は共に5nFとなっている。また金属箔451からはリード線471が出ている。
【0064】
線状ヒータ460の始端側のリード線470aは交流電源28の一端と、容量1nFの第1のコンデンサ29の一端とダイオード30のアノードに接続され、線状ヒータ460の終端側にリード線470bは交流電源28の他端と、容量1nFの第2のコンデンサ31の一端に接続され、金属箔451に接続したリード線471はダイオード30のカソードに接続され、上部便座ケーシング410のアルミニウム板413は、容量1nFの第3のコンデンサ32の他端に接続され、第3のコンデンサ32の一端は第1のコンデンサ29の他端と第2のコンデンサ30の他端に接続されている。リード線471と上部便座ケーシング410のアルミニウム板413間には電位差を検知する検知手段としてネオンランプ473が接続されている。34はアースである。
【0065】
図7(a)は、本実施の形態における便座部400がアースされている時の電気的な等価回路図である。便座部400の上部便座ケーシング410のアルミニウム板413に接続されたアースリード線472がアース接続手段であるアース線474を介してアース34に接続されている。その他の部分は図6(a)と同構成であるので説明は省略する。
【0066】
以上のように構成されたアース有無検知回路の作用について、以下その動作、作用を説明する。
【0067】
便座部400がアースされていない時の図6(a)において、交流電源28の一端からダイオード30、コンデンサ27、コンデンサ32、コンデンサ31を介して交流電流が流れる。同時に、交流電源28の一端からダイオード30、コンデンサ25を介して交流電流が流れる。このとき、金属箔451と上部便座ケーシング410のアルミニウム板413の電位差はコンデンサ27の電圧である。図6(b)に金属箔451と上部便座ケーシング410のアルミニウム板413間のコンデンサ27の電圧を示す。上記コンデンサ27の容量は1nF前後であり、交流電流は極めて小さく図6(b)は測定電圧で、4.5V程度である。検知手段のネオンランプ473はこの電圧を検知する。
【0068】
一方、便座部400がアースされている時の図7(a)において、交流電源28の一端からダイオード30、コンデンサ27を介して交流電流3が流れる。同時に、交流電源28の一端からダイオード30、コンデンサ25を介して交流電流4が流れる。このとき、金属箔451と上部便座ケーシング410のアルミニウム板413の電位差はコンデンサ27の電圧である。このときコンデンサ27の一端である上部便座ケーシング410のアルミニウム413はアース34と同じ電位である。一方、コンデンサ27の他端である金属箔451にはダイオード30を介して交流電圧が直接かかるのでAC100Vのピーク値140Vまで印加される。図7(b)に金属箔451と便座部の上部便座ケーシング410のアルミニウム板413の電位の測定電圧で、120〜140V程度である。検知手段であるネオンランプ473はこの電圧を検知する。
【0069】
このように、金属箔451と上部便座ケーシング410のアルミニウム板413の電位差は、便座部400がアースされているときは約140Vで、アースされていないときは約5Vとなる。
【0070】
本実施の形態では、検知手段としてネオンランプ473を採用しているが、一般的にネオンランプの判別レベルの電圧は65Vで、電流が0.3mA程度ある。すなわち、電圧が65Vより高くなるとネオンランプ473は点灯し、電圧が65Vより低くなるとネオンランプ473は消灯する。ネオンランプ473を検知手段として採用した本実施の形態の場合、便座装置110がアースされている時はネオンランプ473が点灯し、便座装置110がアースされていない時はネオンランプ473が消灯する。このように検知手段としてネオンランプ473を採用することにより、アースの有無の検知と報知を同時に行うことができる。また、ネオンランプ473に流れる電流も少ないので無駄に電気エネルギーを消費することがない。
【0071】
なお、本実施の形態においては、検知手段としてはネオンランプを使用したが、これに限るものではなく、電位差を検知する電圧計等のメータ類や、回路や素子等を使用してもよい。
【0072】
(実施の形態2)
図8は第2の実施の形態におけるアース有無検知部の回路を示すものである。
【0073】
図6、図7に示す実施の形態1においては、便座装置の電源のプラグの向きにより、ダイオード30のアノードが交流電源のアース側に接続された場合、コンデンサ27に電圧が印加されず、検知手段であるネオンランプ473は識別することができない。
【0074】
本実施の形態は上記課題を解決するもので、図8に示すように第2のダイオード35を追加し、ダイオード35のカソードをダイオード30のカソードに、第2のダイオード35のアソードをリード線470bに接続する。
【0075】
上記構成とすることにより、ダイオード30のアノードが交流電源のアース側に接続された場合、ダイオード35のアノードを介してコンデンサ27に電圧が印加され、前述のように検知手段であるネオンランプ473は識別することが可能となり、電源のプラグをどちらの向きに挿しても検知手段を作用させることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明にかかる便座装置は、アース接続有無を検知、報知することが可能になるので、金属部を人体に直接接触させて使用する暖房器具等の用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の実施の形態1におけるトイレ装置の外観を示す斜視図
【図2】本発明の実施の形態1における便座装置の構成を示す模式図
【図3】本発明の実施の形態1における便座の分解状態を示す斜視図
【図4】(a)は本発明の実施の形態1における便座ヒータの平面図(b)は(a)のC72部の詳細を示す平面図
【図5】本発明の実施の形態1における便座ヒータの断面図
【図6】(a)は本発明の実施の形態1におけるアース接続手段を接続しない時の回路図(b)は同金属箔とアルミニウム板間の電圧の変化を示すグラフ
【図7】(a)は本発明の実施の形態1におけるアース接続手段を接続した時の回路図(b)は同金属箔とアルミニウム板間の電圧の変化を示すグラフ
【図8】本発明の実施の形態2におけるアース接続手段を接続しない時の回路図
【符号の説明】
【0078】
28 交流電源
29 第1のコンデンサ
30 ダイオード
31 第2のコンデンサ
32 第3のコンデンサ
35 第2のダイオード(ダイオード)
110 便座装置
400 便座部(便座)
413 アルミニウム板(金属材料)
414 塗装膜(絶縁体)
450 便座ヒータ
451 金属箔
453 金属箔
460 線状ヒータ
462 絶縁被覆層(電気絶縁層)
463b エナメル層(電気絶縁層)
471 リード線
473 ネオンランプ(検知手段)
474 アース線(アース接続手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座部の少なくとも一部を金属材料で形成した便座と、前記便座の少なくとも着座部の裏面に絶縁体を介して設置した便座ヒータと、前記便座の金属材料をアース接続するアース接続手段とを備え、前記便座ヒータは金属箔に電気絶縁層を有する線状ヒータを間隔を設けて配設した構成とし、前記絶縁体を介して設置した前記便座ヒータの金属箔と前記着座部の金属材料との電位差を検知する検知手段を設け、前記検知手段で前記アース接続手段の接続の有無を検知する便座装置。
【請求項2】
便座ヒータの金属箔に電気的に接続したリード線をダイオードを介して交流電源の一端に接続し、交流電源の一端に第1のコンデンサの一端を、交流電源の他端に第2のコンデンサの一端を接続し、第1のコンデンサの他端と第2のコンデンサの他端と第3のコンデンサの一端を接続し、第3のコンデンサの他端は便座部の金属材料に接続し、金属箔と便座部の金属材料間に検知手段を設けてなることを特徴とする請求項1に記載の便座装置。
【請求項3】
交流電源の一端に加え、交流電源の他端からもダイオードを追加して金属箔に電気的に接続したリード線に接続してなる請求項2に記載の便座装置。
【請求項4】
検知手段にネオンランプを使用してなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の便座装置。

【図8】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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