説明

便座装置

【課題】作業性の向上を図る。
【解決手段】固定側コネクタ15は、ケーシング20で覆われるベース部材10の上面に固定して設けられていて、この固定側コネクタ15に対して可動側コネクタ30を上から嵌合できるようになっている。したがって、両コネクタ15,30の接続に際しては、固定側コネクタ15をケーシング20の外部へ引き出す作業が不要である。また、接続後に固定側コネクタ15をケーシング20内に収納する作業も不要である。固定側コネクタ15の引き出し作業と収納作業の手間が省かれているので、コネクタ接続時の作業性に優れている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便座装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、便器本体における便鉢の後方位置に取り付けられるベース部材と、ベース部材に対しその上面を覆うように組み付けられるケーシングと、便鉢の上面の開口縁部に載置された状態と便鉢の上方へ跳ね上げられた状態との間での揺動が可能な便座とを備えた便座装置が開示されている。ケーシングには、電気的な機能部材が設けられ、この機能部材に対する電力供給又は機能部材における電気信号の送受信は、機能部材から導出した電線の先端に取り付けたケーシング側コネクタを、ベース部材に設けたベース部材側コネクタに接続することによって行われる。
【0003】
この便座装置では、ベース部材側コネクタが、電線の先端に取り付けられていて、ケーシングの側面に形成した窓孔からケーシング外へ引き出すことができるようになっている。一方、ケーシング側コネクタも、ベース部材側コネクタと同様に、窓孔からケーシング外へ引き出すことができるようになっている。これにより、両コネクタの接続はケーシングの外部において行われる。また、接続後は、両コネクタとこれらのコネクタに接続されている電線が、ケーシングの内部に収納される。
【特許文献1】特開2003−268855公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の便座装置では、コネクタの接続に先だって、窓孔から両コネクタと電線をケーシング外へ引っ張り出す作業が必要であり、接続後は、引っ張り出した両コネクタと電線をケーシング内に収納する作業が必要であるため、作業工数が多く、作業性の点で改善が望まれる。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、作業性の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、便器本体における便鉢の後方位置に取り付けられるベース部材と、前記ベース部材に対しその上面を覆うように組み付けられるケーシングと、前記便鉢の上面の開口縁部に載置された状態と前記便鉢の上方へ跳ね上げられた状態との間での揺動が可能な便座と、前記ケーシングに設けられた電気的な機能部材と、前記機能部材から導出した電線の先端に取り付けられた可動側コネクタと、前記可動側コネクタの嵌合動作を可能とする向きで、前記ベース部材に固定して設けられた固定側コネクタとを備え、前記可動側コネクタが前記固定側コネクタに接続されることで、前記機能部材に対する電力の供給又は前記機能部材における電気信号の送受信が行われるようになっているところに特徴を有する。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記ケーシングには、前記ケーシングを前記ベース部材に組み付けた状態において、前記固定側コネクタとの対向領域を開口させた形態の作業孔が形成されているところに特徴を有する。
【0007】
請求項3の発明は、請求項2に記載のものにおいて、前記ケーシングには、前記作業孔の開口領域を閉塞可能な蓋部材が設けられているところに特徴を有する。
【0008】
請求項4の発明は、請求項2又は請求項3に記載のものにおいて、前記ケーシングには、その外面における少なくとも前記作業孔の形成領域を覆うカバーが取り付けられているところに特徴を有する。
【0009】
請求項5の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のものにおいて、前記固定側コネクタは、前記可動側コネクタの上方からの嵌合動作を可能とする向きに設けられており、前記ベース部材には、上方へ立ち上がった形態であって、前記固定側コネクタを包囲するように配された周壁が設けられているところに特徴を有する。
【0010】
請求項6の発明は、請求項5に記載のものにおいて、前記周壁は、前記固定側コネクタを包囲する環状領域に沿って複数に分割された形態であり、前記周壁における分割部分は、前記可動側コネクタの電線が通過可能な連通部となっているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0011】
<請求項1の発明>
固定側コネクタが、ベース部材に固定して設けられ、この固定側コネクタに対して可動側コネクタを嵌合できるようになっているので、両コネクタの接続に際しては、固定側コネクタをケーシングの外部へ引き出す作業が不要である。また、接続後は、接続済みのコネクタをケーシング内に収納するという作業も不要である。このようにコネクタの引き出し作業と収納作業の手間が省かれているので、コネクタ接続時の作業性に優れている。
【0012】
<請求項2の発明>
固定側コネクタは、ベース部材におけるケーシングで覆われる領域内に配置されているので、ケーシングがコネクタ接続作業の邪魔になることが懸念される。この対策としては、コネクタ接続の際に、ケーシングをベース部材から外してその傍らに置いておくことが考えられるが、そうすると、可動側コネクタの電線の配索長を長くしなければならない。
その点、本発明では、ケーシングをベース部材に組み付けた状態において、固定側コネクタが作業孔を通してケーシングの上面側に露出するようにしているので、固定側コネクタと可動側コネクタとの接続作業は、ケーシングをベース部材に組み付けた状態で、作業孔を通して行うことができる。したがって、可動側コネクタの電線の配索長を短くすることが可能である。
【0013】
<請求項3の発明>
両コネクタを接続した後は、作業孔を蓋部材で閉塞することにより、接続済みの両コネクタを異物の干渉から保護することができる。また、ユーザーや施工者がコネクタに安易に触れることを防止し、ひいては、コネクタが不用意に外されるのを防止できる。
【0014】
<請求項4の発明>
ケーシングの外面における少なくとも作業孔の形成領域を、カバーで覆い隠すようにしたので、美観の向上を図ることができるとともに、作業孔からケーシング内への浸水や異物の侵入を防止することができる。
【0015】
<請求項5の発明>
固定側コネクタとこの固定側コネクタに接続された可動側コネクタは、周壁で囲まれるので、異物の干渉から保護される。
【0016】
<請求項6の発明>
周壁の上端とケーシングとの間のスペースが狭くても、連通部により、固定側コネクタに可動側コネクタを接続した状態において、可動側コネクタの電線の配索経路が確保される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1を図1乃至図4を参照して説明する。本実施形態の便座装置Aは、洋風の便器本体Bに取り付けられた状態で使用され、この便座装置Aと便器本体Bとによって便器装置が構成されている。便器本体Bは、上面が開放された便鉢Baと、便鉢Baの後方に一体に形成された台座部Bbとを備えて構成されたものであり、便鉢Ba内を洗浄するための図示しない便鉢洗浄装置を備えている。
【0018】
便座装置Aは、便器本体Bに取り付けられるベース部材10と、ベース部材10に対しその上面を覆うように組み付けられるケーシング20と、ケーシング20に揺動可能に取り付けられた便座21と、ケーシング20に設けられて通電により作動する複数の機能部材24〜28とを備えて構成されている。
【0019】
ベース部材10は、台座部Bbの上面に固定される合成樹脂製の後ベースプレート11Rと、後ベースプレート11Rに対して相対的に上下動可能な合成樹脂製の前ベースプレート11Fと、後ベースプレート11Rの上面に組み付けられた制御基板13と、後ベースプレート11Rの上面に組み付けられた複数の固定側コネクタ15とを備えて構成されている。
【0020】
後ベースプレート11Rの上面には凹部12が形成され、この凹部12内に制御基板13が取り付けられている。制御基板13は、図示しないコンセントを介して商用交流電源に接続されるようになっており、便座装置Aに設けられて電気的に機能する機能部材24〜28や機器、装置に対して電力供給を行うための電源回路としての機能と、これらの機能部材24〜28や機器、装置の作動を制御するための制御回路としての機能とを兼ね備えている。
【0021】
後ベースプレート11Rにおける制御基板13の側方位置には、コネクタ保持部14が形成されている。コネクタ保持部14は、上下に貫通する複数の取付孔(図示せず)を備えており、各取付孔には、夫々、固定側コネクタ15が上向きに固定して取り付けられている。各固定側コネクタ15は、合成樹脂製のハウジングに雄形の端子金具を取り付けた周知形態の電気接続用の部品である。この固定側コネクタ15には、端子金具の上向きに露出している先端部(上端部)を包囲するフード部が上向きに開口する形態で形成されている。この固定側コネクタ15には後述する可動側コネクタ30が接続されるが、接続に際しては、可動側コネクタ30が上方からフード部に嵌合されるようになっている。また、端子金具の基端部(下端部)には電線16が接続され、この電線16を介して固定側コネクタ15が制御基板13に接続されている。
【0022】
また、後ベースプレート11Rの上面には、上方へ立ち上がった形態であって、複数の固定側コネクタ15の配置領域(コネクタ保持部14)を概ね方形に包囲するように配置された周壁17が形成されている。周壁17は、固定側コネクタ15の配置領域を囲む方形の環状領域に沿って複数の壁部17aに分割された形態となっている。そして、周壁17における分割部分、即ち隣り合う壁部17aの間の空間は、周壁17によって包囲されて固定側コネクタ15が配置されている空間の内部と周壁17よりも外部の空間とを連通させる連通部17bとなっている。連通部17bは、上方に開放された形態であり、周壁17における前面壁の左右両端位置と周壁17における一方(制御基板13とは反対側)の側壁の後端位置との3箇所に配置されている。尚、後ベースプレート11Rにおける固定側コネクタ15の配置領域よりも後方の位置には、便鉢洗浄装置を構成するストレーナと電磁開閉弁を覆う蓋付きの覆い部18が形成されている。
【0023】
さらに後ベースプレート11Rには、使用者の局部を洗浄するための局部洗浄装置19が設けられている。局部洗浄装置19は、制御基板13の下方に配置された温水タンク19aと、後ベースプレート11Rから前方へ突出するように設けられたノズル19bとを備えており、この局部洗浄装置19への電力供給とその作動の制御は、制御基板13によって行われる。
【0024】
ケーシング20は、前ベースプレート11Fに対しその上面から被せるような形態で固定されており、後ベースプレート11Rに対し前ベースプレート11Fと一体に昇降し得るようになっている。この前ベースプレート11Fとケーシング20を昇降させるための昇降機構(図示せず)への電力供給と、その作動の制御は、制御基板13によって行われる。
【0025】
ケーシング20は、前ベースプレート11Fと後ベースプレート11Rの全体を覆う形態であり、このケーシング20には、前方へ延出する形態の便座21と便蓋22が取り付けられている。便座21は、その後端において支持軸(図示せず)により支持され、手動操作により、便鉢Baの上面の開口縁部に載置された状態と、便鉢Baの上方へ跳ね上げられた状態との間で揺動させることができるようになっている。便蓋22は、その後端において駆動軸23により支持され、後述する開閉モータ25の駆動により、便鉢Baの上面の開口縁部に載置された状態の便座21の上に重ねられて便鉢Baの開口部を閉塞する閉蓋位置と、便鉢Baに載置されている便座21に対して上方へ跳ね上げられた開蓋位置との間で揺動されるようになっている。
【0026】
ケーシング20には、複数の機能部材24〜28が取り付けられている。複数の機能部材24〜28は、便器装置の使用者に対して快適な使用環境を提供するための直接的な作動を行う作動部材24,25と、作動部材24,25の作動を制御するために必要とされる信号の出力を行う信号出力部材26,27,28とに分けられる。具体的には、作動部材として、空気清浄装置24と開閉モータ25とが設けられ、信号出力部材として、リモコンセンサ26と人感センサ27と着座センサ28とが設けられている。
【0027】
空気清浄装置24は、ケーシング20の下面(後ベースプレート11Rと対向する内面)における一方の側縁部に配置されて吊り下げられた状態で固定されている。空気清浄装置24に供給される電力の給電経路、及び必要により空気清浄装置24と制御基板13との間における電気信号(制御信号)の送受信経路として、空気清浄装置24から導出された電線29には、可動側コネクタ30が接続されている。可動側コネクタ30は、ブロック状をなして固定側コネクタ15のフード部に内嵌される合成樹脂製のハウジングと、ハウジング内に収容された雌形の端子金具(図示せず)と、ハウジングを包囲するように形成されて固定側コネクタ15のフード部の外嵌される筒状嵌合部とを備えた周知形態の電気接続用の部品である。
【0028】
開閉モータ25は、ケーシング20の前端部位置に配置され、便座21及び便蓋22を揺動させるための駆動手段として機能する。この開閉モータ25に供給される電力の給電経路、及び必要により開閉モータ25と制御基板13との間における電気信号(制御信号)の送受信経路として、開閉モータ25から導出された電線29には、空気清浄装置24用のものと同じ形態の可動側コネクタ30が接続されている。
【0029】
リモコンセンサ26は、ケーシング20の下面(内面)における空気清浄装置24の近傍位置に固定され、リモコンセンサ26の受光部はケーシング20の上面(外面)に露出されている。リモコンセンサ26は、便器装置の近傍の壁面に設けたリモートコントロール用の操作盤(図示せず)からの赤外線信号を受信し、その受信した信号に基づいた検知信号を出力する。リモコンセンサ26に対する電力供給経路及びリモコンセンサ26から制御基板13への検知信号の出力経路(リモコンセンサ26と制御基板13との間における電気信号の送受信経路)として、リモコン用受光器から導出された電線29には、空気清浄装置24及び開閉用モータのものと同様の形態の可動側コネクタ30が接続されている。
【0030】
人感センサ27は、ケーシング20の前面壁における後面(ケーシング20の内面)に取り付けられ、この人感センサ27の発光部及び受光部は、ケーシング20の前面壁における前面(外面)に露出されている。この人感センサ27は、便蓋の開閉状態を検知する便蓋開閉センサ(図示せず)の検知に基づき、便蓋22が閉蓋位置にあるときには検知機能がONの状態となり、便蓋22が開蓋位置にあるときには検知機能がOFFの状態となる。便座装置Aの前方位置に使用者が接近すると、人感センサ27から発せられて使用者で反射した赤外線が受光されることにより、人感センサ27において使用者の接近が検知され、検知信号が出力される。また、使用者が便座装置Aから遠ざかると、赤外線が受光されなくなることに基づき、人感センサ27は、便座装置Aから使用者人が遠ざかったことを検知して、検知信号を出力する。尚、便座21を覆う閉蓋位置にあるときの便蓋22は、人感センサ27よりも下方に退避しているので、人感センサ27の受光機能の邪魔をしない。この人感センサ27に対する電力供給経路及び人感センサ27から制御基板13への検知信号の出力経路(人感センサ27と制御基板13との間における電気信号の送受信経路)として、人感センサ27から導出された電線29には、リモコンセンサ26のものと同様の形態の可動側コネクタ30が接続されている。
【0031】
着座センサ28は、ケーシング20の前面壁における後面(ケーシング20の内面)であって人感センサ27よりも下方の位置に取り付けられ、この着座センサ28の発光部及び受光部は、ケーシング20の前面壁における前面(外面)に露出されている。この着座センサ28は、上記便蓋開閉センサ(図示せず)の検知に基づき、便蓋22が閉蓋位置にあるときには検知機能がOFFの状態となり、便蓋22が開蓋位置にあるときには検知機能がONの状態となる。便座21に使用者が着座すると、着座28から発せられて使用者で反射した赤外線が受光されることにより、着座センサ28において着座動作が検知され、検知信号が出力される。また、使用者が立ち上がって便座28から離れると、赤外線が受光されなくなることに基づき、着座センサ28は、使用者が便座28から離れたことを検知して、検知信号を出力する。この着座センサ28に対する電力供給経路及び着座センサ28から制御基板13への検知信号の出力経路(着座センサ28と制御基板13との間における電気信号の送受信経路)として、着座センサ28から導出された電線29には、リモコンセンサ26及び人感センサ27のものと同様の形態の可動側コネクタ30が接続されている。
【0032】
ケーシング20には、ケーシング20をベース部材10に組み付けた状態において固定側コネクタ15の配置領域と対応する部分を方形に切欠した形態の作業孔31が形成されている。作業孔31は、ケーシング20の下面から上面に貫通されており、ケーシング20をベース部材10に組み付けた状態では、作業孔31を通してケーシング20の上方から固定側コネクタ15を目視することができる。換言すると、作業孔31を通して固定側コネクタ15がケーシング20の外部に露出した状態となる。また、ケーシング20には、便鉢洗浄装置のストレーナと電磁開閉弁を覆う覆い部18との干渉を回避するための切欠部32が形成されており、この切欠部32と作業孔31とは互いに開口部同士を連通させている。
【0033】
さらに、ケーシング20には、ケーシング20とは別体の蓋部材33が設けられている。蓋部材33は、ケーシング20に取り付けた状態において、作業孔31をその全体に亘って覆い隠すようになっている。また、ケーシング20に取り付けた蓋部材33は、必要に応じてケーシング20から外すことができる。さらに、ケーシング20には、その上面に全体を覆う形態のカバー34が取り付けられるようになっている。カバー34をケーシング20に取り付けた状態では、作業孔31、蓋部材33、切欠部32及び切欠部32において露出している覆い部18が、全てカバー34で覆い隠される。
【0034】
上記構成になる便座装置Aが便器本体Bに組み付けられている状態においてメンテナンスを行う際には、まず、カバー34をケーシング20から外し、次に、蓋部材33をケーシング20から外して作業孔31を開放して、両コネクタ15、30をケーシング20の上面から目視できるように露出させる。そして、作業孔31に手を差し込んで、可動側コネクタ30を固定側コネクタ15から外し、この後、ケーシング20をベース部材10の前ベースプレート11Fから外す。以上により、ベース部材10に設けられている機器に対するメンテナンスや、ケーシング20に設けられている機器に対するメンテナンスを行える状態となる。
【0035】
機器に対するメンテナンスが済んだら、上記とは逆の手順で各部品の組付けをおこなう。即ち、蓋部材33が取り付けられていない状態において、ケーシング20の内面側に設けられている機能部材24〜28(作動部材24,25と信号出力部材26,27,28)の可動側コネクタ30を、図1に示すように、作業孔31からケーシング20の上面側へ引き出す。 この後、可動側コネクタ30をケーシング20の上面側に引き出した状態を保ちながら、ケーシング20をベース部材10の前ベースプレート11Fに組み付ける。これにより、ベース部材10のほぼ全体がケーシング20によって上から覆われた状態となり、作業孔31において露出する固定側コネクタ15と切欠部32において露出する覆い部18以外は目視できない状態となる。
【0036】
この後、ケーシング20の上面に引き出されている可動側コネクタ30を、夫々、作業孔31内に差し入れて、対応する固定側コネクタ15に対して上から嵌め込むようにして接続する。可動側コネクタ30を固定側コネクタ15に接続する際には、可動側コネクタ30に接続されている電線29が、可動側コネクタ30に引っ張られて作業孔31からケーシング20の内部に収容されるので、両コネクタ15,30の作業後に電線29をケーシング20内に押し込むという手間が省かれる。
【0037】
全ての可動側コネクタ30を固定側コネクタ15に接続した後は、蓋部材33をケーシング20に取り付けて作業孔31を塞ぐ。さらに、その後は、ケーシング20にカバー34を組み付ける。以上により、便座装置Aが元の形態に復元されるとともに、メンテナンスの作業が完了する。
【0038】
可動側コネクタ30を固定側コネクタ15に接続すると、この両コネクタ15,30を介して機能部材(作動部材24,25と信号出力部材26,27,28)が制御基板13に接続される、両コネクタ15,30を介して機能部材(作動部材24,25と信号出力部材26,27,28)に電力供給を行うことが可能になる。また、両コネクタ15,30を接続したことにより、機能部材(作動部材24,25と信号出力部材26,27,28)における電気信号の送受信、即ち機能部材(作動部材24,25と信号出力部材26,27,28)と制御基板13との間において電気信号(制御信号や検知信号)の送受信を行うことが可能となる。これにより、信号出力部材26,27,28制御基板13に入力される検知信号に基づいて、作動部材24,25の作動を制御することができる状態となる。
【0039】
次に、便器装置の使用形態について説明する。
便器装置が使用されず、使用者が便器装置から離れている状態では、便蓋22が便鉢Baの開口部を閉じた状態に保持され、空気清浄装置24が停止している。この状態において、作用者が便器装置に近づくと、人感センサ27から制御基板13に入力される検出信号に基づき、開閉モータ25が作動して便蓋22が上方の開蓋位置へ跳ね上げられる。この後、使用者が便座21に着座すると、着座センサ28から制御基板13に入力される検知信号に基づき、使用者の着座時間が検出される。使用者が用をたした後、局部洗浄のために壁面の操作盤を操作すると、リモコンセンサ26から制御基板13に入力される検出信号に基づいて、局部洗浄装置19が作動し、ノズル19bから洗浄水が噴出される。尚、人感センサ27からの検知信号又は着座センサ28からの検知信号に基づき、空気清浄装置24が作動する。
【0040】
局部の洗浄が行われた後、使用者が立ち上がって便座21から離れると、着座センサ28から制御基板13に入力される信号に基づき、便鉢洗浄装置から着座時間に応じた量の洗浄水が流れて便鉢Baが洗浄される。尚、便鉢Baの洗浄は、使用者が壁面の操作盤の操作によって任意に行うようにすることもできる。また、着座センサ28からの信号に基づき、使用者が便座21から離れてから一定時間が経過した後に、開閉モータ25が作動し、便蓋22が閉蓋位置へ揺動して便鉢Baの開口部が塞がれる。さらに、着座センサ28からの信号に基づき、空気清浄装置24の作動が停止する。
尚、男性が小用をたす際には、壁面の操作盤を操作すると、リモコンセンサ26からの検知信号により開閉モータ25が作動して便座21が跳ね上げられる。また、小用が済んだら、操作盤を操作すると便座21が下りて着座可能な状態となる。
【0041】
尚、清掃の際には、壁面の操作盤の操作により前ベースプレート11Fをケーシング20とともに上方へ移動させることにより、便鉢Baのうち前ベースプレート11Fで覆われていた後部を露出させ、その露出させた部分の清掃を行うことができる。このとき、ケーシング20に取り付けられている機能部材(作動部材24,25と信号出力部材26,27,28)が、後ベースプレート11Rの固定側コネクタ15に対して上方へ逃げるように変位するのであるが、可動側コネクタ30に接続されている電線29は、必要な配索長を有しているので、電線29と機能部材24〜28との接続部分や、固定側コネクタ15と可動側コネクタ30との接続部分に負荷が作用する虞はない。
【0042】
便鉢洗浄装置のストレーナと電磁開閉弁のメンテナンスを行う際には、カバー34をケーシング20から外して切欠部32と覆い部18を露出させればよい。また、固定側コネクタ15と可動側コネクタ30との接続部分のメンテナンスを行う際にも、カバー34をケーシング20から外し、更に、蓋部材33を外して作業孔31を開口状態にすればよい。
【0043】
上述のように本実施形態においては、固定側コネクタ15が、ベース部材10におけるケーシング20で覆われる領域内に固定して設けられ、この固定された固定側コネクタ15に対して可動側コネクタ30を嵌合できるようになっているので、両コネクタ15,30の接続に際しては、固定側コネクタ15をケーシング20の外部へ引き出す作業が不要である。また、接続済みの固定側コネクタ15をケーシング20内に収納する作業も不要である。このように固定側コネクタ15の引き出し作業と収納作業の手間が省かれているので、両コネクタ15,30を接続する際の作業性に優れている。
【0044】
また、固定側コネクタ15は、ベース部材10におけるケーシング20で覆われる領域内に配置されているので、ケーシング20が両コネクタ15,30の接続作業の邪魔になることが懸念される。この対策としては、コネクタ接続の際に、ケーシング20をベース部材10から外してその傍らに置いておくことが考えられるが、そうすると、可動側コネクタ30の電線29の配索長を長くしなければならない。
【0045】
その点、本実施形態では、ケーシング20に、固定側コネクタ15との対向領域を開口させた形態の作業孔31を形成し、ケーシング20をベース部材10に組み付けた状態において、固定側コネクタ15が作業孔31を通してケーシング20の上面側に露出するようにしているので、固定側コネクタ15と可動側コネクタ30との接続作業は、ケーシング20をベース部材10に組み付けた状態で、作業孔31を通して行うことができる。したがって、メンテナンス等の作業が容易であり、また、可動側コネクタ30の電線29の配索長を短くすることが可能である。
【0046】
また、ケーシング20には、作業孔31の開口領域を閉塞可能な蓋部材33が設けられているので、両コネクタ15,30を接続した後は、作業孔31を蓋部材33で閉塞することにより、接続済みの両コネクタ15,30を異物の干渉から保護することができる。
また、ケーシング20には、その外面における少なくとも作業孔31の形成領域を覆うカバー34を取り付けるようになっていて、このカバー34により、作業孔31と切欠部32を覆い隠すことができる。これにより、美観の向上を図ることができるとともに、作業孔31や切欠部32からケーシング20内へ浸水すること、及び異物が侵入することを防止できる。
【0047】
また、固定側コネクタ15が上向きに形成されていることに鑑み、ベース部材10には、固定側コネクタ15よりも高い位置まで上方へ立ち上がった形態であって、固定側コネクタ15を包囲するように配された周壁17を設けている。したがって、ベース部材10にケーシング20が組み付けられずにベース部材10の上面が露出されている状態において、固定側コネクタ15は、周壁17により、異物の上からの干渉及び側方からの干渉から保護される。
【0048】
また、周壁17を、固定側コネクタ15を包囲する環状領域に沿って複数の壁部17aに分割された形態とし、周壁17における分割部分を、可動側コネクタ30の電線29が通過可能な連通部17bとしている。これにより、周壁17の上端とケーシング20との間の上下の間隔が狭くても、連通部17bにより、固定側コネクタ15に可動側コネクタ30を接続した状態において、可動側コネクタ30の電線29の配索経路を確保することができる。
【0049】
尚、ケーシング20に設けられる作動部材としては、上述した空気清浄装置24と開閉モータ25の他に、通電により作動する脱臭装置やSDカード再生装置や便座ヒーター(いずれも図示せず)を設けることができる。脱臭装置、SDカード再生装置及び便座ヒーターについても、空気清浄装置24及び開閉モータ25と同様に、これらの作動部材に対する電力の供給経路、及び必要によりこれらの作動部材と制御基板13との間の電気信号の送受信経路として、電線29を介して可動側コネクタ30を接続することができる。また、これらの可動側コネクタ30の接続対象となる固定側コネクタ15を、ベース部材10に上向きに固定して設けることができる。このような形態にすれば、両コネクタ15,30を接続する際の作業性の向上を図ることができる。また、上述の説明で列挙した各種の機能部材24〜28については、必要に応じてその一部の機能部材のみをケーシング20に取り付ける形態とすることができる。
【0050】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施態様も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では作業孔を塞ぐ蓋部材を、ケーシングとは別体部品としたが、蓋部材をケーシングに対してヒンジを介して連結した形態とすることで、蓋部材をケーシングと一体の部品とすることもできる。
(2)上記実施形態では、ベース部材に固定側コネクタを包囲する形態の周壁を設けたが、ベース部材にはこのような周壁を設けなくてもよい。
(3)上記実施形態では周壁が固定側コネクタを包囲する環状領域に沿って複数に分割された形態となっているが、周壁の上端とケーシングとの間に可動側コネクタの電線の配索スペースが確保されている場合には、周壁を全周に亘って連続した形態としてもよい。
(4)上記実施形態では固定側コネクタに可動側コネクタを接続した状態において可動側コネクタの電線の配索経路を確保する手段として、固定側コネクタを包囲する環状領域に沿って周壁を複数に分割したが、これに替えて、周壁を全周に亘って連続する形態とした上で、この周壁の一部を切欠することにより、可動側コネクタの電線の配索経路を確保してもよい。
(5)上記実施形態ではケーシングの上面にカバーを取り付けたが、このようなカバーを取り付けなくてもよい。
(6)上記実施形態ではベース部材を後ベースプレートと後ベースプレートに対して昇降可能な前ベースプレートとで構成し、ケーシングを前ベースプレートに組み付けるようにしたが、ベース部材を単一のベースプレートで構成し、このベースプレートにケーシングを組み付けてもよい。
(7)上記実施形態では機能部材の全てに対して電力供給を行うようにしたが、本発明の機能部材には、光電素子を用いたセンサのように電力供給を受けずに電気信号の出力を行う部材も含まれる。
(8)上記実施形態では機能部材に対する電力の供給及び機能部材との間で電気信号の送受を行う制御基板を、ベース部材に設けたが、制御基板は、ベース部材にではなく、便器本体に設けられていてもよい。
(9)上記実施形態では固定側コネクタに対して可動側コネクタが上から嵌合されるようにしたが、固定側コネクタに対する可動側コネクタの嵌合方向は、側方からでもよく、下方からでもよい。
(10)上記実施形態では固定がコネクタと対応する作業孔を、ケーシングの上面に開口させたが、作業孔は、ケーシングの側面に開口させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】実施形態1において便器本体に取り付けたベース部材からケーシングを外した状態をあらわす斜視図
【図2】ケーシングの底面図
【図3】ケーシングをベース部材に組み付けた状態をあらわす部分拡大平面図
【図4】ベース部材に組み付けたケーシングからカバーを外した状態をあらわす斜視図
【符号の説明】
【0052】
A…便座装置
B…便器本体
Ba…便鉢
10…ベース部材
15…固定側コネクタ
17…周壁
17b…連通部
20…ケーシング
21…便座
24…空気清浄器(機能部材、作動部材)
25…開閉モータ(機能部材、作動部材)
26…リモコンセンサ(機能部材、信号出力部材)
27…人感センサ(機能部材、信号出力部材)
28…着座センサ(機能部材、信号出力部材)
29…電線
30…可動側コネクタ
31…作業孔
33…蓋部材
34…カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器本体における便鉢の後方位置に取り付けられるベース部材と、
前記ベース部材に対しその上面を覆うように組み付けられるケーシングと、
前記便鉢の上面の開口縁部に載置された状態と前記便鉢の上方へ跳ね上げられた状態との間での揺動が可能な便座と、
前記ケーシングに設けられた電気的な機能部材と、
前記機能部材から導出した電線の先端に取り付けられた可動側コネクタと、
前記可動側コネクタの嵌合動作を可能とする向きで、前記ベース部材に固定して設けられた固定側コネクタとを備え、
前記可動側コネクタが前記固定側コネクタに接続されることで、前記機能部材に対する電力の供給又は前記機能部材における電気信号の送受信が行われるようになっていることを特徴とする便座装置。
【請求項2】
前記ケーシングには、前記ケーシングを前記ベース部材に組み付けた状態において、前記固定側コネクタとの対向領域を開口させた形態の作業孔が形成されていることを特徴とする請求項1記載の便座装置。
【請求項3】
前記ケーシングには、前記作業孔の開口領域を閉塞可能な蓋部材が設けられていることを特徴とする請求項2記載の便座装置。
【請求項4】
前記ケーシングには、その外面における少なくとも前記作業孔の形成領域を覆うカバーが取り付けられていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の便座装置。
【請求項5】
前記固定側コネクタは、前記可動側コネクタの上方からの嵌合動作を可能とする向きに設けられており、
前記ベース部材には、上方へ立ち上がった形態であって、前記固定側コネクタを包囲するように配された周壁が設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の便座装置。
【請求項6】
前記周壁は、前記固定側コネクタを包囲する環状領域に沿って複数に分割された形態であり、
前記周壁における分割部分は、前記可動側コネクタの電線が通過可能な連通部となっていることを特徴とする請求項5記載の便座装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−287230(P2009−287230A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−138941(P2008−138941)
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】