説明

便座装置

【課題】ヒータを内蔵した便座を便座支持体に揺動可能に支持した便座装置において、相互誘導作用を利用することにより、無配線方式で給電及び検知信号伝達を可能にする。
【解決手段】便座装置Sは、ヒータHを内蔵する便座1と、便座1を揺動可能に支持する枢支部X1,X2を有する便座支持体とから成る。一方の枢支部X1に、無配線方式で電力を供給する給電手段30を備える。他方の枢支部X2に、便座1の温度センサTが出力する検知信号を送信する一次信号コイル41を配設し、便座支持体10に検知信号を受信する二次信号コイル42を配設する。一次信号コイル41は支持軸20の近傍に配置し、二次信号コイル42は、便座1の揺動に伴い一次信号コイル41が移動する領域と近接する位置に配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒータ等の電気部品を内蔵した便座を便座支持体に揺動可能に支持してなる便座装置に関し、詳しくは、相互誘導作用等を利用して給電方式を無配線方式とすることにより、便座を着脱可能に構成したものにおいて、便座側に設けた検知器から出力される検知信号を便座支持体へ送信する手段を改良したものである。
【背景技術】
【0002】
便座を揺動可能に支持する部材(便座支持体)から便座内のヒータへの電力供給を、相互誘導作用を利用した無配線方式で行なうと共に、便座側に設けた温度検出素子や着座検出スイッチが出力する検知信号を便座支持体へ伝送する手段も、相互誘導作用を利用して無配線方式とした便座付便器(便座装置)が、特許文献1に記載されている。
特許文献1の便座装置は、便座の側方に、回転軸を便座と同軸としたアームを設けると共に、便座とアームとを係合させて両者が連動して回動するものとする。そして、便座とアームとが対向する部位それぞれに、電力送信用の誘導コイル及び信号伝送用の誘導コイルを配置する構成を採用している。
【0003】
【特許文献1】特開平10−179454号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の便座装置は、便器の側方に便座と同軸回動するアームを設けるため機構が複雑であり、またアームが突出する部材となるから、見栄えを悪くするという問題が有る。さらに、給電用の誘導コイルと信号伝送用の誘導コイルとを近接させて配置する構成であるから、給電動作時に発生するノイズが、温度検知信号等に対する外乱となるおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明が前記従来の問題点を解決するために採用した便座装置の特徴とするところは、請求項1に記載する如く、電気部品を内蔵する便座と、便座を揺動可能に支持する枢支部を有する便座支持体とから成り、便座支持体から便座へ無配線方式で電力を供給する給電装置を備えた便座装置において、便座に検知器と該検知器が出力する検知信号を送信する一次信号コイルとが設けられ、便座支持体に検知信号を受信する二次信号コイルが設けられ、便座の一次信号コイルは枢支部で支持される便座の取付腕部に配置され、便座支持体の二次信号コイルは、その少なくとも一部が、便座の揺動に伴って一次信号コイルが移動する領域と常に近接する位置に配設されていることである。
【0006】
前記において、無配線方式の給電装置は、相互誘導作用を利用するものが代表的であるが、他の方式を採用することも妨げない。また、便座に内蔵される電気部品とは、ヒータ等の加熱手段・体重を計測する重量計・体脂肪計などが挙げられる。検知器は、ヒータ等の温度検知を行なう温度センサ・使用者の有無を検知する着座センサ(荷重センサ)・給電装置の一次コイル/二次コイル間における異物の有無を検知するため二次コイル電圧を監視する電圧センサなどが挙げられる。
【0007】
本発明に係る便座装置は、請求項2に記載する如く、電気部品を内蔵する便座と、便座を揺動可能に支持する枢支部を有する便座支持体とから成り、便座支持体から便座へ無配線方式で電力を供給する給電装置を備えた便座装置において、便座に検知器と該検知器が出力する検知信号を送信する一次信号コイルとが設けられ、便座支持体に検知信号を受信する二次信号コイルが複数設けられ、便座の一次信号コイルは枢支部で支持される便座の取付腕部に配置され、便座支持体の複数の二次信号コイルは、便座の揺動に伴って一次信号コイルが移動する領域における始端側及び終端側と近接する位置それぞれに配設される構成とすることも可能である。
【0008】
本発明に係る便座装置を実施するに当たっては、請求項3に記載の如く、 枢支部が便座支持体の左右に設けられ、一方の枢支部側に前記一次信号コイル及び二次信号コイルより成る信号伝達部が配設され、他方の枢支部側に一次コイル及び二次コイルより成る給電装置が配設することが望ましい。
【0009】
あるいは、便座を揺動可能に支持する左右の枢支部の一方が、請求項4に記載の如く、便座支持体に設けた支持軸及び該支持軸を駆動する駆動モータで構成されていることもある。
【0010】
本発明の代表的な適用対象は、請求項5に記載の如く、便座に内蔵される電気部品がヒータであり、便座に設けられる検知器が温度センサーである便座装置である。
【0011】
一次信号コイルから二次信号コイルへ信号を確実に伝達するには、請求項6に記載の如く、一次信号コイルのコイル径方向が二次信号コイルのコイル径方向に沿っており、一次信号コイルの内側に高透磁率材からなるコアが設けられた構成、又は、請求項7に記載の如く、取付腕部又は枢支部に、便座の揺動中心に沿って二次信号コイルの近傍まで延びる高透磁率材からなる誘導部分が設けられ、一次信号コイルは、誘導部分に近接させ且つコイル径方向を便座の揺動中心に沿わせて配置されている構成にすることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1及び2に係る便座装置は、一次信号コイルを便座の取付腕部に配置し、二次信号コイルを便座支持体における一次信号コイルと近接する位置に配設する構成を採用したので、一次信号コイル及び二次信号コイルを組み込むために突出部を形成する必要が無く、よって便座装置の見栄えを損なうことがない。請求項1に係る本発明にあっては、便座支持体の二次信号コイルの少なくとも一部が、一次信号コイルが移動する領域と常に近接するように設定したので、便座がどの位置に在っても、便座から便座支持体へ確実に検知信号を送信することが可能である。
【0013】
請求項2に記載する如く、便座支持体の二次信号コイルを、便座の揺動に伴って一次信号コイルが移動する領域における始端側及び終端側と近接する位置それぞれに配設した場合は、便座を閉め下ろした着座位置、及び、開き上げた開放位置の両方において、便座から便座支持体への検知信号の送信が可能である。請求項2に係る本発明にあっては、便座が静止する位置(着座位置及び開放位置)にあるとき検知信号の送受信が可能になる構成であるが、普通、揺動途中の状態(着座位置と開放位置との間)で便座を使用することはないので、日常的な使用状況下では何ら不都合を生じさせない。また、二次信号コイルを大型化させないから設計が容易である。さらに、二次信号コイルの小型化により、受信感度を上げることが可能であるという利点を有する。
【0014】
請求項3に記載の如く、一方の枢支部側に一次信号コイル及び二次信号コイルより成る信号伝達部を配設し、他方の枢支部側に一次コイル及び二次コイルより成る給電装置を配設した場合は、信号伝達部と給電装置とが離れるので、給電装置が発生するノイズが信号伝達部に対して悪影響を及ぼすのを回避できる。また、給電装置を構成する一次コイル及び二次コイルは信号伝達部に比べて大きい部材で構成されるのが通常であるから、信号伝達部と分離することで、枢支部への組み込みが容易になる。
【0015】
請求項4に記載の如く、枢支部の一方に駆動モータを設けた場合、他方の枢支部側に一次コイル及び二次コイルより成る給電装置を配設することにより、枢支部への組み付けが容易になる利点が得られる。
【0016】
請求項5に記載の如く、便座にヒータと温度センサーとを備える便座装置に本発明を適することにより、上に列挙した効果を発揮する暖房便座装置を提供することができる。
【0017】
請求項6に記載の如く、一次信号コイルの内側に高透磁率材からなるコアを設けることにより、一次信号コイル側の磁束密度が増すので、一次信号コイルから二次信号コイルへ信号を確実に伝達できる。
【0018】
請求項7に記載の如く、一次信号コイルと二次信号コイルとの間に高透磁率材からなる誘導部分が設けられることにより、一次信号コイルの磁力が誘導部分を介して二次信号コイルに確実に到達するので、一次信号コイルから二次信号コイルへ信号を確実に伝達できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
[第1の実施形態]
図1に本発明に係る便座装置Sの一例を示す。但し図面には、便座装置Sの内部構造のうち、本発明に関連する部分だけを概略的に示す。例えば、便座1が便座支持体10に装着されているかどうかを検知する検知手段や、便座1への通電量を制御して温度調節する操作パネル等については、図示を省略してある。この便座装置Sは、内部に電気部品としてヒータ等の加熱手段Hを内蔵した便座1と、便器(図示省略)の上面に設置され便座1を揺動可能に支持する便座支持体10とから構成される。
【0020】
便座1は、後端部の左右に所定間隔を置いて後方へ突出するように取付腕部2,2が設けられ、該取付腕部2,2の間に、便座支持体10の前面部に設けた膨出部11を挟むように構成してある。便座装置Sは、左右の取付腕部2,2に軸装着部4,3を設けると共に、便座支持体10の膨出部11の左右側面に枢支部X2,X1を設け、この枢支部X2,X1において、便座1を便座支持体10に対し着脱可能に装着できるよう構成されている。本例にあっては、一方(左方)の枢支部X2を膨出部11の左側面から突出する支持軸20で形成すると共に、一方の取付腕部2の軸装着部4に挿通口を開口した軸装凹部を設け、挿通口から軸装凹部へ支持軸20を出し入れすることで、便座支持体10に便座1を着脱するようにしてある態様だが、この態様以外には、一方の枢支部X2を膨出部11の左側面側に凹設され挿通口を開口した軸装凹部で形成すると共に、一方の取付腕部の右側面から突出する軸を設け、挿通口から軸装凹部へ軸を出し入れすることで、便座支持体10に便座1を着脱するようにしてもよい。なお、一方の軸装着部4には、便座1が便座支持体10の支持軸20から分離するのを阻止するロック機構5が設けられる。ロック機構5としては、例えば、軸装着部4の外周面上を回動可能なC形部材で軸装着部4の挿通口を閉止して、軸装着部4に接合した支持軸20が軸装凹部から抜け出るのを阻止する構造などが採用される。
【0021】
便座支持体10は、例えば箱状の形態を有し、その内部に、電源Wに接続されて電力の供給を受ける支持体側制御部C1が設けられる。支持体側制御部C1は、他方(右方)の枢支部X1側に設けられる給電装置30と、一方(左方)の枢支部X2側に設けられる駆動モータMとに電力を供給する。駆動モータMは、図2に例示する如く、便座1の一方の軸装着部4に接合する支持軸20を回転させて、便座1を強制的に揺動させたり、便蓋を自動開閉したりするためのものである。なお支持軸20の先端部に、便蓋(図示せず)を装着するための突部21を形成してもよい。
【0022】
便座1の内部には、面状ヒータ、あるいは誘導コイルと金属箔との組合わせから成る加熱手段H、便座2の着座面の温度や加熱手段Hの温度を測定する温度センサT、並びに、給電装置30から加熱手段H及び/又は温度センサTへの配電を制御する便座側制御部C2が設けられる。さらに便座側制御部C2は、温度センサTが出力する温度信号を、高周波信号に変換して、枢支部X2に設けた信号伝達部40の一次信号コイル41へ伝送する機能を有している。図示は省略するが、温度信号の変換回路を、便座側制御部C2とは独立させて設けることも妨げない。
【0023】
前記便座支持体10の枢支部X2及び便座1の取付腕部2に設けられる信号伝達部40は、図2に示す如く、便座側制御部C2に接続される一次信号コイル41と、支持体側制御部C1に接続される二次信号コイル42とから構成される。一次信号コイル41は、便座の取付腕部に、そのコイル中心が便座1の揺動中心(便座1を揺動させる駆動モータMの出力軸である支持軸20の軸芯に一致)に沿って配置されている。本例の一次信号コイル41は、便座1の取付腕部2に設けた軸装着部4に、便座1の揺動中心に近接させて配置される。また一次信号コイル41は、その一端を、なるべく便座支持体10の側面に近接するよう配置して、一次信号コイル41から二次信号コイル42への信号の伝達を確実にすることが望ましい。更に、図2(B)に示す如く、一次信号コイル41は、その内側に高透磁率材料からなるコア45を設けることで、一次信号コイル41側の磁束密度を大きくして、一次信号コイル41から二次信号コイル42へ信号を確実に伝達できるようにしてある。なお、該コア45は、絶縁物である金属酸化物(例えばフェライト)を採用して渦電流による損失を無視できるようにするのが望ましい。
【0024】
本例の二次信号コイル42は、便座1の揺動中心を中心とする円環状の形態とし、便座1の軸装着部4になるべく近接する位置に配設した。また、その半径rを、便座1の揺動中心である支持軸20の回動中心から一次信号コイル41の中心までの距離にほぼ等しく設定した。かかる構成により、駆動モータMで便座1を揺動させたとき、これに従って一次信号コイル41も回動するが、その回動中心は、二次信号コイル42の中心と実質的に一致する。それ故、便座1が伏倒位置から起立位置に至るどの位置にあっても、一次信号コイル41と二次信号コイル42との距離は変化せず一定である。よって一次信号コイル41と二次信号コイル42との距離をできるだけ近接させて配置しておけば、常に確実な信号伝送が保証される。
【0025】
便座1の温度センサTから出力される温度信号は、便座側制御部C2で高周波変換されて一次信号コイル41へ伝送され、これにより二次信号コイル42が励磁されて、支持体側制御部C1へ温度信号を送信する。支持体側制御部C1は、この温度信号に適宜の処理(例えばA/D変換)を施したのち、受信した温度情報に基づいて、適宜必要な動作を行なう信号処理部を有する。すなわち、加熱手段Hへの通電状態を調整し、あるいは異常昇温を検知したときに送電を停止させる。なお、支持体側制御部C1における信号処理部は、これを独立させて設けることも妨げない。
【0026】
[第2の実施形態]
信号伝達部40は、図3に示すような構成も考えられる。本例では、二次信号コイル42を、便座1が揺動したときに、一次信号コイル41が移動する領域に近接する範囲だけに配設する構成とした。かかる構成によれば、二次信号コイル42の断面積を小さくできるから、一次信号コイル41から送信される温度信号の受信感度を向上させることが可能である。なお、本例の二次信号コイル42は、図3(B)に示す如く、支持軸20の軸心方向に側面視したとき、一次信号コイル41の移動領域とほぼ重なるような形状に形成し、且つ、ほぼ重なる位置に配置してある。しかるに信号伝達が可能ならば、二次信号コイル42を、その一部又は全部が、一次信号コイル41の移動領域に重ならない形状に形成したり、一次信号コイル41の移動領域から外れる位置に配置したりすることも妨げない。
【0027】
[第3の実施形態]
本発明に係る信号伝達部40は、図4に示すように、2つの比較的小径の二次信号コイル42a,42bを、一次信号コイル41が便座1の揺動に伴って移動する領域における始端側(42a)と終端側(42b)との2個所に配設する構成とすることもできる。かかる構成によれば、便座1を閉め下ろした着座位置(伏倒位置)又は開き上げた開放位置(起立位置)にあるときだけ、温度信号の伝達がなされる。しかるに、便座1を着座位置と開放位置との中間に保持して使用することは通常行なわれないから、温度情報の伝達に実用上の問題は無い。また本例では、二次信号コイル42の断面積をより小さくできるから、一次信号コイル41から送信される温度信号の受信感度を一層向上させることができる。なお必要に応じ、小径の二次信号コイルを、一次信号コイル41の移動領域の途中位置に配置して、便座1の揺動途中でも、温度信号を受信できるようにすることを妨げない。
【0028】
[第4の実施形態]
本発明に係る信号伝達部40は、図5に示すように、コイル径方向を便座1の揺動中心に直角又は略直角に配置している二次信号コイル62と、便座1の揺動中心に沿って二次信号コイル62の近傍まで延びる高透磁率材からなる誘導部分63と、誘導部分63に近接させ且つコイル径方向を便座1の回動中心に沿わせて配置している一次信号コイル61とで構成することもできる。
【0029】
前記誘導部分63は、本例では、図5(B)に示す如く、軸装着部4の表面側に貼着等して設けるか、または軸装着部4の内部に埋め込んで設け(図示略)た高透磁率材64(例えば、フェライト)からなる板状又は箔状のものであって、一次信号コイル61の近傍から便座1の揺動中心に沿って二次信号コイル62の近傍まで延設してあるが、これ以外に、高透磁率材料からなる支持軸20で形成することもある。前記一次信号コイル61は、面状に巻回したものであって、軸装着部4の表面側に貼着等して配置するか、または軸装着部4の内部に埋め込んで配置(図示略)して、誘導部分63に重ね合わせるか、または誘導部分63に近接させて(図示略)コイル径方向を便座1の揺動中心に沿わせてある。前記二次信号コイル62は、本例では、第2の実施形態(図3(A)参照)で前述した如く、便座1が揺動したときに一次信号コイル41が移動する領域に近接する範囲だけに配設する構成としてあるが、これに限らず、第1の実施形態(図2(A)参照)で前述した如く、便座1の回動中心を中心とする円環状の形態としたり、第3の実施形態(図4(A)参照)で前述した如く、2つの比較的小径の二次信号コイルを、一次信号コイルが便座の揺動に伴って移動する領域における始端側と終端側との2個所に配設する構成としたりしてもよい。
【0030】
このように構成すれば、本発明に係る便座装置は、一次信号コイル61と二次信号コイル62との間に高透磁率材からなる誘導部分63が設けられることにより、一次信号コイル61の磁力が誘導部分63を介して二次信号コイル62に確実に到達するので、一次信号コイル61から二次信号コイル62へ信号を確実に伝達できる。本例の便座装置は、面状に巻回した薄い厚みのコイルを、軸装着部4における便座1の回動中心に沿う表面側に貼着することで、一次信号コイル61を嵩張ることなく容易に設けることができる。
【0031】
[第5の実施形態]
図6に、給電装置30の一例を示す。本例では、便座支持体10における膨出部11の側面側に送電部31を配設し、便座1における軸装着部3に受電部32を配設し、両者が常時近接するように構成したものである。支持体側制御部C1から電力の供給を受ける送電部31は、ボビン33の内部にコイル34を内蔵させたものであり、便座1の軸装着部3に面する部位に凹部12が形成されている。便座側制御部C2へ電力を送給する受電部32は、送電部31と同様、ボビン35内部にコイル36を内蔵させたものであり、軸装着部3に対し摺動可能に貫通するよう配設され、その先端部を送電部31の凹部12に嵌合させている。受電部32と軸装着部3との間には、滑動用のシール材37とスプリング39とが配され、スプリング39と係合するフランジ付きのスリーブ38を外装してある。また受電部32における外側の端部には、便蓋の支持部材を兼ねる摘み50が設けられている。
【0032】
かかる構成の給電装置30は、図6(A)に示す如く、通常は、スプリング39の付勢力によって、受電部32が送電部31に押しつけられた状態にあり、両者に内蔵させたコイル34,36間の相互誘導作用により、電力が、支持体側制御部C1から便座側制御部C2へ送給される。また、受電部32の先端部を送電部31の凹部12内へ嵌合させる構造により、便座支持体10の膨出部11の他方(右方)の枢支部X1と便座1の軸装着部3(図1参照)からなる着脱自在な接合構造を構成している。便座1を便座支持体10から取り外すときは、図6(B)に示す如く、摘み50を引っ張って、受電部32をスプリング39の付勢力に抗して外側へ引き出す。これにより、送電部31と受電部32とが分離し、便座1の取り外しが可能となる。
【0033】
[第6の実施形態]
図7に、給電装置30の異なる例を示す。送電部31及び受電部32が、ボビン33,35にコイル34,36を内蔵させた構造である点は、前記実施形態と同様である。本例では、便座支持体10における膨出部11の側面より奥側に送電部31を配設すると共に、便座支持体10の側面に送電部31の端面へ向かうテーパ状の凹部13を形成する。他方、便座1の軸装着部3には、受電部32を突出した状態に固定して配設する。
【0034】
便座1の装着時は、図7(A)に示す如く、受電部32を凹部13内へ収納させることにより、送電部31と受電部32とが近接して送電可能な状態となる。また、受電部32の先端部が、便座支持体10の凹部13に嵌合することで、便座支持体10の膨出部11の他方(右方)の枢支部X1と便座1の軸装着部3(図1参照)からなる着脱自在な接合構造を構成している。
【0035】
便座1を取り外すときには、図7(B)に示す如く、テーパ状の凹部13を利用して、便座1を傾けることにより、送電部31と受電部32とを分離させる。これにより、便座1を便座支持体10から取り外すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る便座装置の概略構成を示す平面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るものであって、図(A)は信号伝達部の概略構成を示す斜視図、図(B)は信号伝達部の概略構成を示す正面断面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係るものであって、図(A)は信号伝達部の概略構成を示す斜視図、図(B)は便座の揺動に伴う一次信号コイルの移動領域と二次信号コイルとの関係を示す側面図である。
【図4】本発明の第3の実施形態に係るものであって、図(A)は信号伝達部の概略構成を示す斜視図、図(B)は便座の揺動に伴う一次信号コイルの移動領域と二次信号コイルとの関係を示す側面図である。
【図5】本発明の第4の実施形態に係るものであって、図(A)は信号伝達部の概略構成を示す斜視図、図(B)は信号伝達部の概略構成を示す正面断面図である。
【図6】本発明の第5の実施形態に係るものであって、図(A)は給電可能な状態にある給電装置の平面断面図、図(B)は便座を取り外し可能な状態にした給電装置の平面断面図である。
【図7】本発明の第6の実施形態に係るものであって、図(A)は給電可能な状態にある給電装置の平面断面図、図(B)は便座を取り外し可能な状態にした給電装置の平面断面図である。
【符号の説明】
【0037】
C1…支持体側制御部 C2…便座側制御部 H…加熱手段 M…駆動モータ S…便座装置 T…温度センサ W…電源 X1,X2…枢支部 1…便座 2…取付腕部 3,4…軸装着部 10…便座支持体 20…支持軸 30…給電装置 31…送電部 32…受電部 40…信号伝達部 41…一次信号コイル 42…二次信号コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気部品を内蔵する便座と、便座を揺動可能に支持する枢支部を有する便座支持体とから成り、便座支持体から便座へ無配線方式で電力を供給する給電装置を備えた便座装置において、便座に検知器と該検知器が出力する検知信号を送信する一次信号コイルとが設けられ、便座支持体に検知信号を受信する二次信号コイルが設けられ、便座の一次信号コイルは枢支部で支持される便座の取付腕部に配置され、便座支持体の二次信号コイルは、その少なくとも一部が、便座の揺動に伴って一次信号コイルが移動する領域と常に近接する位置に配設されていることを特徴とする便座装置。
【請求項2】
電気部品を内蔵する便座と、便座を揺動可能に支持する枢支部を有する便座支持体とから成り、便座支持体から便座へ無配線方式で電力を供給する給電装置を備えた便座装置において、便座に検知器と該検知器が出力する検知信号を送信する一次信号コイルとが設けられ、便座支持体に検知信号を受信する二次信号コイルが複数設けられ、便座の一次信号コイルは枢支部で支持される便座の取付腕部に配置され、便座支持体の複数の二次信号コイルは、便座の揺動に伴って一次信号コイルが移動する領域における始端側及び終端側と近接する位置それぞれに配設されていることを特徴とする便座装置。
【請求項3】
枢支部が便座支持体の左右に設けられ、一方の枢支部側に前記一次信号コイル及び二次信号コイルより成る信号伝達部が配設され、他方の枢支部側に一次コイル及び二次コイルより成る給電装置が配設されている請求項1又は2に記載する便座装置。
【請求項4】
一方の枢支部が、便座支持体に設けた駆動モータで駆動する支持軸で構成されている請求項3に記載する便座装置。
【請求項5】
電気部品がヒータであり、検知器が温度センサーである請求項1乃至4のいずれかに記載する便座装置。
【請求項6】
一次信号コイルのコイル径方向が二次信号コイルのコイル径方向に沿っており、一次信号コイルの内側に高透磁率材からなるコアが設けられた請求項1乃至5のいずれかに記載する便座装置。
【請求項7】
取付腕部又は枢支部に、便座の揺動中心に沿って二次信号コイルの近傍まで延びる高透磁率材からなる誘導部分が設けられ、一次信号コイルは、誘導部分に近接させ且つコイル径方向を便座の揺動中心に沿わせて配置されている請求項1乃至5のいずれかに記載する便座装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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