便臭改善作用組成物
【課題】かつお節から生成した便臭改善作用組成物を提供する。
【解決手段】かつお節由来のレジスタントプロテインを主成分として含有する便臭改善作用組成物を持続的に摂取する。悪臭の素である便や糞中のインドールおよびスカトールなどの代謝物が減り、糞や便の悪臭が減る。便臭改善作用組成物は、固形物で、かつお節の酵素分解で生成できる。安全かつ手軽に便臭の改善を図ることができる。老化社会における老人医療の住宅看護に携わる人達や本人の労力を軽減できる。ペットの糞の悪臭も低減できる。
【解決手段】かつお節由来のレジスタントプロテインを主成分として含有する便臭改善作用組成物を持続的に摂取する。悪臭の素である便や糞中のインドールおよびスカトールなどの代謝物が減り、糞や便の悪臭が減る。便臭改善作用組成物は、固形物で、かつお節の酵素分解で生成できる。安全かつ手軽に便臭の改善を図ることができる。老化社会における老人医療の住宅看護に携わる人達や本人の労力を軽減できる。ペットの糞の悪臭も低減できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚節を原料として製造される便臭改善作用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、悪臭の原因となる腸内腐敗産物の抑制としては、抗生物質の投与によって腸内で腐敗産物を生成している有害菌を死滅させている。ところが、この種の抗生物質の投与にて有害菌を死滅させる場合には、有用菌が死滅してしまったり、腸内に耐性菌が発生したり、腸内細菌のバランスがくずれたり、免疫機能の低下をもたらしたりしてしまうおそれがある。
【0003】
一方、便臭の改善作用を有する便臭改善作用組成物としては、フラボノイドなどのポリフェノールを多く含む緑茶抽出物などが知られており、この緑茶抽出物はポリフェノールに含まれるフェノールが悪臭成分に含まれるアンモニウム(NH)と結合しやすいという性質によるものと考えられている。
【0004】
さらに、植物繊維なども、有用菌の増殖を即し有害菌を減らして便臭の改善効果があることが知られている(例えば、特許文献1参照。)。また、これら植物繊維やオリゴ糖とともに、ポリフェノールを含むマッシュルーム抽出物を併用することで相乗効果があることも知られている(例えば、特許文献2参照。)。さらに、食品添加物である鉄クロロフィリンナトリウムと植物抽出物との併用でも便臭の改善効果があることも知られている(例えば、特許文献3参照。)。
【特許文献1】特開2002−191325号公報
【特許文献2】特開平5−238945号公報
【特許文献3】特開2002−47197号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した便臭改善作用組成物では、便臭の改善効果がある物質として植物抽出物やオリゴ糖などが知られているに過ぎず、これら植物抽出物やオリゴ糖などの炭水化物以外の物質については知られていないという問題を有している。
【0006】
本発明はこのような点に鑑みなされたもので、魚節から生成された便臭改善作用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の便臭改善作用組成物は、微生物に由来するプロテアーゼによる魚節の酵素分解にて生成され、便臭改善作用を有するものである。
【0008】
そして、微生物に由来するプロテアーゼにて魚節を酵素分解させて生成させることにより、便臭改善作用を有する。
【0009】
請求項2記載の便臭改善作用組成物は、請求項1記載の便臭改善作用組成物において、酵素分解された魚節を含む溶液を濾過した濾渣により生成されたものである。
【0010】
そして、微生物に由来するプロテアーゼにて酵素分解された魚節を含む溶液を濾過した濾渣により生成することにより、便臭改善作用をより有する。
【0011】
請求項3記載の便臭改善作用組成物は、請求項2記載の便臭改善作用組成物において、濾渣を乾燥して生成されたものである。
【0012】
そして、微生物に由来するプロテアーゼにて酵素分解された魚節の溶液の濾渣を乾燥させて生成することにより固形分となるから、取り扱いが容易になる。
【0013】
請求項4記載の便臭改善作用組成物は、請求項1ないし3いずれか記載の便臭改善作用組成物において、インドールおよびスカトール減少作用を有するものである。
【0014】
そして、微生物に由来するプロテアーゼにて魚節を酵素分解させて生成させることにより、インドールおよびスカトール減少作用を有する。
【0015】
請求項5記載の便臭改善作用組成物は、請求項1ないし4いずれか記載の便臭改善作用組成物において、魚節由来のレジスタントプロテインを含有しているものである。
【0016】
そして、微生物に由来するプロテアーゼにて魚節を酵素分解させて生成させることにより、魚節由来のレジスタントプロテインを含有しているので、便臭改善作用を有する。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の便臭改善作用組成物によれば、微生物に由来するプロテアーゼにて魚節を酵素分解させて生成させることにより、便臭改善作用が期待できる。
【0018】
請求項2記載の便臭改善作用組成物によれば、微生物に由来するプロテアーゼにて酵素分解された魚節を含む溶液を濾過した濾渣により生成することにより、便臭改善作用をより期待できる。
【0019】
請求項3記載の便臭改善作用組成物によれば、微生物に由来するプロテアーゼにて酵素分解された魚節の溶液の濾渣を乾燥させて生成することにより固形分にできるから、取り扱いを容易にできる。
【0020】
請求項4記載の便臭改善作用組成物によれば、インドールおよびスカトール減少作用を期待できる。
【0021】
請求項5記載の便臭改善作用組成物によれば、魚節由来のレジスタントプロテインを含有しているので、便臭改善作用を期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に、本発明の便臭改善作用組成物の一の実施の形態を図1ないし図3を参照して説明する。
【0023】
魚節の製造方法は、図3に示すように、まず、節用原料魚として、冷凍され脂肪の少ないかつお、さば、まぐろ、いわし、あじなどを一晩掛けて流水解凍する(ステップ1)。ここで、魚節とは、魚の身を節どりして蒸した後、火に焙ってから干し固めたものである。
【0024】
そして、このステップ1にて解凍させた節用原料魚を裁断する(ステップ2)。このとき、魚体が大型の場合には頭や内臓を除去して3枚下ろしとしたり、この3枚下ろしにしたものを合断したりして身卸しする(ステップ3)。なお、小型原料魚は裁断せずにそのまま用いることもできる。
【0025】
そして、例えば55℃以上95℃以下とされた水に、ステップ2にて裁断された節用原料魚を入れて30分以上2時間以下加熱させて煮蒸する(ステップ4)。
【0026】
この後、このステップ4にて煮蒸された節用原料魚を熱水から引き上げて水切りして骨抜きする(ステップ5)。
【0027】
そして、このステップ5にて水切りされた節用原料魚を焙乾する(ステップ6)。このとき、この水切り後の節用原料魚を約半日程度、煙で燻してスモークする。
【0028】
次いで、このステップ6にてスモークされた節用原料魚を夜間火を止めてあん蒸する(ステップ7)。このとき、節用原料魚内の水分を拡散させて均一化させる。
【0029】
ここで、このあん蒸された節用原料魚の水分を限界近くまでとばすため、この節用原料魚に対してステップ6およびステップ7を9回ずつ、計10回程度繰り返して荒節とする(ステップ8)。この荒節は、主にだし取り用の花がつおとされる。
【0030】
そして、ステップ6による焙乾とステップ7によるあん蒸とのそれぞれが計10回ずつされた荒節の表面を削って、荒節の表面に付着したタール分などを取り除くとともに成形して裸節とする(ステップ9)。
【0031】
この後、この裸節を、温度が20℃以上40℃以下、湿度が70%以上90%以下のかび付け庫内に入れて2週間程度放置して、この裸節に自然発生的にかび付けをするとともに(ステップ10)、このかび付け後の裸節を天日干し(ステップ11)、これらかび付けおよび天日干しを2回以上4回以内程度繰り返して枯れ節として魚節を得る(ステップ12)。これによって、この裸節の水分や脂肪がさらに減少する。
【0032】
次に、便臭改善作用組成物としてのかつお節酵素分解物の製造方法について説明する。
【0033】
まず、図2に示すように、各種魚類の煮干しや、ステップ8で得られた荒節あるいはステップ12で得られた魚節を削って粉末にする。
【0034】
この後、この粉末を、微生物に由来するプロテアーゼ(protease)、より具体的には、エンド・エキソ型のプロテアーゼ2種により、温度が10℃以上60℃以下でありpHが3以上11以下の雰囲気において、1時間以上20時間以下程度、酵素分解させる。
【0035】
そして、この酵素分解された魚節の分解物を含む溶液を濾過して濾液である水溶液分画と濾渣である不溶性分画とに分離する。
【0036】
なお、この濾過により生成された水溶性分画は、かつお節酵素分解エキスとして使用される。また、この濾過により生成された不溶性分画は、乾燥された後、蛋白質酵素分解物とされてかつお節酵素分解物となり、便臭改善作用組成物として使用される。
【実施例】
【0037】
次に、上記かつお節酵素分解物の一実施例について詳細に説明する。
【0038】
まず、実験方法としては、8週齢で体重が約300gのSD(Sprague-Dawley)系雄ラットを、表1に示す組成のコントロール飼料にて1週間予備飼育してから、1群6匹の6群に群分けした。
【0039】
【表1】
【0040】
この後、実験開始日から14日目に、0.5mg/体重1kg当たりの割合でアトロピンを各群のラットのそれぞれに腹腔投与する。そして、このアトロピン投与後の糞の状態を観察するため、3日間連続して糞を採取して、これら糞の乾燥重量を測定する。この後、悪臭の原因となる腐敗産物として、インドールおよびスカトールを測定するために、1週間糞を集めて冷凍保存しておく。
【0041】
次いで、測定項目および測定方法としては、6群それぞれのラットの毎日の飼料摂取量および体重を測定して記録し、これら飼料摂取量および体重から各ラットの体重増加率および飼料効率を算出した。
【0042】
また、各群それぞれのラットのアトロピン投与後3日間の糞を集めて個数および湿重量を測定するとともに、この糞をそれぞれ凍結乾燥させて糞の乾燥重量を測定した。
【0043】
さらに、各群それぞれのラットのアトロピン投与3日経過後の糞を連続して7日間集めて、−50℃で冷凍保存しておき、これら糞中のインドール量およびスカトール量のそれぞれをガスクロマトグラフィにて測定した。
【0044】
この結果、表2および図1に示すように、かつお節酵素分解物を飼料に添加した群では、糞の重量が他の食品繊維(セルロース、小麦ふすま)群と同程度であり、糞中の悪臭が改善され、糞中の悪臭の指標となるインドールおよびスカトールも減少していた。したがって、かつお節酵素分解物が糞臭の改善効果を有することが確認された。
【0045】
【表2】
【0046】
ここで、この糞臭の改善効果の作用メカニズムに関しては、かつお節酵素分解物が消化されにくいレジスタントプロテインを主成分として含有していることから、有害菌の作用を受けにくく、インドールおよびスカトールそれぞれの発生を抑制できたと考えられる。
【0047】
上述したように、上記一実施例では、かつお節由来のレジスタントプロテインを主成分として含有しているかつお節酵素分解物を持続的に摂取することにより、悪臭の素である便や糞中のインドールおよびスカトールなどの代謝物を減らすことができるから、これら糞や便の悪臭を減らすことができる。したがって、このかつお節酵素分解物が、インドールおよびスカトール減少作用を有することから、便臭改善作用を有していると判断できる。よって、このかつお節酵素分解物は、固形物であって、かつお節の酵素分解にて生成されるので、安全かつ手軽に便臭の改善を図ることができる。
【0048】
ここで、このかつお節酵素分解物を継続的に服用することによって、近年の老化社会における老人医療の住宅看護に携わる人達や本人の労力を軽減できるので、環境を改善できる。また、便臭を軽減することによって、本人および周囲の者の環境も改善できる。また、近年のペットブームにより屋内および屋外を問わずペットを飼育する人が増加しており、糞の悪臭が屋内および屋外を問わず大きな問題となっているが、かつお節酵素分解物を継続的に摂取させることによって、ペットの糞の悪臭を低減できるから、これら種々の問題をも低減することが可能となる。
【0049】
なお、上記一実施例では、主としてかつおを原料としたかつお節から生成されるかつお節酵素分解物について説明したが、かつお以外の魚、例えばさば、まぐろ、いわし、あじなどの魚節であっても対応させて用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施の形態の便臭改善作用組成物による糞中のインドールおよびスカトール含量を示すグラフである。
【図2】同上便臭改善作用組成物を魚節から製造するまでを示す工程図である。
【図3】同上魚節を製造するまでを示す工程図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚節を原料として製造される便臭改善作用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、悪臭の原因となる腸内腐敗産物の抑制としては、抗生物質の投与によって腸内で腐敗産物を生成している有害菌を死滅させている。ところが、この種の抗生物質の投与にて有害菌を死滅させる場合には、有用菌が死滅してしまったり、腸内に耐性菌が発生したり、腸内細菌のバランスがくずれたり、免疫機能の低下をもたらしたりしてしまうおそれがある。
【0003】
一方、便臭の改善作用を有する便臭改善作用組成物としては、フラボノイドなどのポリフェノールを多く含む緑茶抽出物などが知られており、この緑茶抽出物はポリフェノールに含まれるフェノールが悪臭成分に含まれるアンモニウム(NH)と結合しやすいという性質によるものと考えられている。
【0004】
さらに、植物繊維なども、有用菌の増殖を即し有害菌を減らして便臭の改善効果があることが知られている(例えば、特許文献1参照。)。また、これら植物繊維やオリゴ糖とともに、ポリフェノールを含むマッシュルーム抽出物を併用することで相乗効果があることも知られている(例えば、特許文献2参照。)。さらに、食品添加物である鉄クロロフィリンナトリウムと植物抽出物との併用でも便臭の改善効果があることも知られている(例えば、特許文献3参照。)。
【特許文献1】特開2002−191325号公報
【特許文献2】特開平5−238945号公報
【特許文献3】特開2002−47197号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した便臭改善作用組成物では、便臭の改善効果がある物質として植物抽出物やオリゴ糖などが知られているに過ぎず、これら植物抽出物やオリゴ糖などの炭水化物以外の物質については知られていないという問題を有している。
【0006】
本発明はこのような点に鑑みなされたもので、魚節から生成された便臭改善作用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の便臭改善作用組成物は、微生物に由来するプロテアーゼによる魚節の酵素分解にて生成され、便臭改善作用を有するものである。
【0008】
そして、微生物に由来するプロテアーゼにて魚節を酵素分解させて生成させることにより、便臭改善作用を有する。
【0009】
請求項2記載の便臭改善作用組成物は、請求項1記載の便臭改善作用組成物において、酵素分解された魚節を含む溶液を濾過した濾渣により生成されたものである。
【0010】
そして、微生物に由来するプロテアーゼにて酵素分解された魚節を含む溶液を濾過した濾渣により生成することにより、便臭改善作用をより有する。
【0011】
請求項3記載の便臭改善作用組成物は、請求項2記載の便臭改善作用組成物において、濾渣を乾燥して生成されたものである。
【0012】
そして、微生物に由来するプロテアーゼにて酵素分解された魚節の溶液の濾渣を乾燥させて生成することにより固形分となるから、取り扱いが容易になる。
【0013】
請求項4記載の便臭改善作用組成物は、請求項1ないし3いずれか記載の便臭改善作用組成物において、インドールおよびスカトール減少作用を有するものである。
【0014】
そして、微生物に由来するプロテアーゼにて魚節を酵素分解させて生成させることにより、インドールおよびスカトール減少作用を有する。
【0015】
請求項5記載の便臭改善作用組成物は、請求項1ないし4いずれか記載の便臭改善作用組成物において、魚節由来のレジスタントプロテインを含有しているものである。
【0016】
そして、微生物に由来するプロテアーゼにて魚節を酵素分解させて生成させることにより、魚節由来のレジスタントプロテインを含有しているので、便臭改善作用を有する。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の便臭改善作用組成物によれば、微生物に由来するプロテアーゼにて魚節を酵素分解させて生成させることにより、便臭改善作用が期待できる。
【0018】
請求項2記載の便臭改善作用組成物によれば、微生物に由来するプロテアーゼにて酵素分解された魚節を含む溶液を濾過した濾渣により生成することにより、便臭改善作用をより期待できる。
【0019】
請求項3記載の便臭改善作用組成物によれば、微生物に由来するプロテアーゼにて酵素分解された魚節の溶液の濾渣を乾燥させて生成することにより固形分にできるから、取り扱いを容易にできる。
【0020】
請求項4記載の便臭改善作用組成物によれば、インドールおよびスカトール減少作用を期待できる。
【0021】
請求項5記載の便臭改善作用組成物によれば、魚節由来のレジスタントプロテインを含有しているので、便臭改善作用を期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に、本発明の便臭改善作用組成物の一の実施の形態を図1ないし図3を参照して説明する。
【0023】
魚節の製造方法は、図3に示すように、まず、節用原料魚として、冷凍され脂肪の少ないかつお、さば、まぐろ、いわし、あじなどを一晩掛けて流水解凍する(ステップ1)。ここで、魚節とは、魚の身を節どりして蒸した後、火に焙ってから干し固めたものである。
【0024】
そして、このステップ1にて解凍させた節用原料魚を裁断する(ステップ2)。このとき、魚体が大型の場合には頭や内臓を除去して3枚下ろしとしたり、この3枚下ろしにしたものを合断したりして身卸しする(ステップ3)。なお、小型原料魚は裁断せずにそのまま用いることもできる。
【0025】
そして、例えば55℃以上95℃以下とされた水に、ステップ2にて裁断された節用原料魚を入れて30分以上2時間以下加熱させて煮蒸する(ステップ4)。
【0026】
この後、このステップ4にて煮蒸された節用原料魚を熱水から引き上げて水切りして骨抜きする(ステップ5)。
【0027】
そして、このステップ5にて水切りされた節用原料魚を焙乾する(ステップ6)。このとき、この水切り後の節用原料魚を約半日程度、煙で燻してスモークする。
【0028】
次いで、このステップ6にてスモークされた節用原料魚を夜間火を止めてあん蒸する(ステップ7)。このとき、節用原料魚内の水分を拡散させて均一化させる。
【0029】
ここで、このあん蒸された節用原料魚の水分を限界近くまでとばすため、この節用原料魚に対してステップ6およびステップ7を9回ずつ、計10回程度繰り返して荒節とする(ステップ8)。この荒節は、主にだし取り用の花がつおとされる。
【0030】
そして、ステップ6による焙乾とステップ7によるあん蒸とのそれぞれが計10回ずつされた荒節の表面を削って、荒節の表面に付着したタール分などを取り除くとともに成形して裸節とする(ステップ9)。
【0031】
この後、この裸節を、温度が20℃以上40℃以下、湿度が70%以上90%以下のかび付け庫内に入れて2週間程度放置して、この裸節に自然発生的にかび付けをするとともに(ステップ10)、このかび付け後の裸節を天日干し(ステップ11)、これらかび付けおよび天日干しを2回以上4回以内程度繰り返して枯れ節として魚節を得る(ステップ12)。これによって、この裸節の水分や脂肪がさらに減少する。
【0032】
次に、便臭改善作用組成物としてのかつお節酵素分解物の製造方法について説明する。
【0033】
まず、図2に示すように、各種魚類の煮干しや、ステップ8で得られた荒節あるいはステップ12で得られた魚節を削って粉末にする。
【0034】
この後、この粉末を、微生物に由来するプロテアーゼ(protease)、より具体的には、エンド・エキソ型のプロテアーゼ2種により、温度が10℃以上60℃以下でありpHが3以上11以下の雰囲気において、1時間以上20時間以下程度、酵素分解させる。
【0035】
そして、この酵素分解された魚節の分解物を含む溶液を濾過して濾液である水溶液分画と濾渣である不溶性分画とに分離する。
【0036】
なお、この濾過により生成された水溶性分画は、かつお節酵素分解エキスとして使用される。また、この濾過により生成された不溶性分画は、乾燥された後、蛋白質酵素分解物とされてかつお節酵素分解物となり、便臭改善作用組成物として使用される。
【実施例】
【0037】
次に、上記かつお節酵素分解物の一実施例について詳細に説明する。
【0038】
まず、実験方法としては、8週齢で体重が約300gのSD(Sprague-Dawley)系雄ラットを、表1に示す組成のコントロール飼料にて1週間予備飼育してから、1群6匹の6群に群分けした。
【0039】
【表1】
【0040】
この後、実験開始日から14日目に、0.5mg/体重1kg当たりの割合でアトロピンを各群のラットのそれぞれに腹腔投与する。そして、このアトロピン投与後の糞の状態を観察するため、3日間連続して糞を採取して、これら糞の乾燥重量を測定する。この後、悪臭の原因となる腐敗産物として、インドールおよびスカトールを測定するために、1週間糞を集めて冷凍保存しておく。
【0041】
次いで、測定項目および測定方法としては、6群それぞれのラットの毎日の飼料摂取量および体重を測定して記録し、これら飼料摂取量および体重から各ラットの体重増加率および飼料効率を算出した。
【0042】
また、各群それぞれのラットのアトロピン投与後3日間の糞を集めて個数および湿重量を測定するとともに、この糞をそれぞれ凍結乾燥させて糞の乾燥重量を測定した。
【0043】
さらに、各群それぞれのラットのアトロピン投与3日経過後の糞を連続して7日間集めて、−50℃で冷凍保存しておき、これら糞中のインドール量およびスカトール量のそれぞれをガスクロマトグラフィにて測定した。
【0044】
この結果、表2および図1に示すように、かつお節酵素分解物を飼料に添加した群では、糞の重量が他の食品繊維(セルロース、小麦ふすま)群と同程度であり、糞中の悪臭が改善され、糞中の悪臭の指標となるインドールおよびスカトールも減少していた。したがって、かつお節酵素分解物が糞臭の改善効果を有することが確認された。
【0045】
【表2】
【0046】
ここで、この糞臭の改善効果の作用メカニズムに関しては、かつお節酵素分解物が消化されにくいレジスタントプロテインを主成分として含有していることから、有害菌の作用を受けにくく、インドールおよびスカトールそれぞれの発生を抑制できたと考えられる。
【0047】
上述したように、上記一実施例では、かつお節由来のレジスタントプロテインを主成分として含有しているかつお節酵素分解物を持続的に摂取することにより、悪臭の素である便や糞中のインドールおよびスカトールなどの代謝物を減らすことができるから、これら糞や便の悪臭を減らすことができる。したがって、このかつお節酵素分解物が、インドールおよびスカトール減少作用を有することから、便臭改善作用を有していると判断できる。よって、このかつお節酵素分解物は、固形物であって、かつお節の酵素分解にて生成されるので、安全かつ手軽に便臭の改善を図ることができる。
【0048】
ここで、このかつお節酵素分解物を継続的に服用することによって、近年の老化社会における老人医療の住宅看護に携わる人達や本人の労力を軽減できるので、環境を改善できる。また、便臭を軽減することによって、本人および周囲の者の環境も改善できる。また、近年のペットブームにより屋内および屋外を問わずペットを飼育する人が増加しており、糞の悪臭が屋内および屋外を問わず大きな問題となっているが、かつお節酵素分解物を継続的に摂取させることによって、ペットの糞の悪臭を低減できるから、これら種々の問題をも低減することが可能となる。
【0049】
なお、上記一実施例では、主としてかつおを原料としたかつお節から生成されるかつお節酵素分解物について説明したが、かつお以外の魚、例えばさば、まぐろ、いわし、あじなどの魚節であっても対応させて用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施の形態の便臭改善作用組成物による糞中のインドールおよびスカトール含量を示すグラフである。
【図2】同上便臭改善作用組成物を魚節から製造するまでを示す工程図である。
【図3】同上魚節を製造するまでを示す工程図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物に由来するプロテアーゼによる魚節の酵素分解にて生成され、
便臭改善作用を有する
ことを特徴とした便臭改善作用組成物。
【請求項2】
酵素分解された魚節を含む溶液を濾過した濾渣により生成された
ことを特徴とした請求項1記載の便臭改善作用組成物。
【請求項3】
濾渣を乾燥して生成された
ことを特徴とした請求項2記載の便臭改善作用組成物。
【請求項4】
インドールおよびスカトール減少作用を有する
ことを特徴とした請求項1ないし3いずれか記載の便臭改善作用組成物。
【請求項5】
魚節由来のレジスタントプロテインを含有している
ことを特徴とした請求項1ないし4いずれか記載の便臭改善作用組成物。
【請求項1】
微生物に由来するプロテアーゼによる魚節の酵素分解にて生成され、
便臭改善作用を有する
ことを特徴とした便臭改善作用組成物。
【請求項2】
酵素分解された魚節を含む溶液を濾過した濾渣により生成された
ことを特徴とした請求項1記載の便臭改善作用組成物。
【請求項3】
濾渣を乾燥して生成された
ことを特徴とした請求項2記載の便臭改善作用組成物。
【請求項4】
インドールおよびスカトール減少作用を有する
ことを特徴とした請求項1ないし3いずれか記載の便臭改善作用組成物。
【請求項5】
魚節由来のレジスタントプロテインを含有している
ことを特徴とした請求項1ないし4いずれか記載の便臭改善作用組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図2】
【図3】
【公開番号】特開2006−169204(P2006−169204A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−367037(P2004−367037)
【出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【出願人】(590006398)マルトモ株式会社 (23)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【出願人】(590006398)マルトモ株式会社 (23)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]