説明

保冷パネルおよびそれを用いた椅子

【構成】 椅子10は、座部に設けられる保冷パネル12を含み、座部表面16の温度を所定温度に保冷することによって使用者に涼感を与える。保冷パネル12は、パネル本体14を備える。パネル本体14は、セメントゲル(50)によって板状に形成され、少なくとも裏面14aに連通する連続空隙を有する。椅子10では、パネル本体14の連続空隙に保持した水を裏面14aから蒸発させることによって座部表面16が保冷される。
【効果】 座部裏面から水分を蒸発させるので、座部表面に体が密着しても表面温度を所定温度に維持でき、使用者に対して持続的に涼感を与えることができる。また、冷却用の電気機器などを用いる必要がないため、導入コストおよび運転コストを低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は保冷パネルおよびそれを用いた椅子に関し、特にたとえば、体と密着する部分に用いられて使用者に涼感を与える、保冷パネルおよびそれを用いた椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の冷却機能を備えた椅子の一例が特許文献1に開示されている。特許文献1の技術では、コンプレッサ、コンデンサおよびエバポレータを含む冷媒回路を有した冷却ユニットと椅子とを一体に構成し、エバポレータと熱交換した空気を送風機によって着座空間に供給して、椅子の着座空間を冷房するようにしている。
【0003】
一方、夏季に都市部の気温が上昇するヒートアイランド現象の対策として、道路の舗装材や建物の外壁材などに保水性を持たせ、その内部に保持した水を表面から蒸発させることによって、表面温度の上昇を抑制する技術が知られている。たとえば、特許文献2には、炭酸ガスを豊富に含んだ水溶液に微細連続空隙を有する軽量骨材を浸漬した後、この軽量骨材とセメントおよび水とを混練して固化させることによって、微細連続空隙を表面部に連通させた保水性コンクリート固化体が記載されている。
【特許文献1】特開2005−348783号公報 [A47C 7/74]
【特許文献2】特開2001−158676号公報 [C04B 38/08]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、コンプレッサ等の電気機器を用いるので、装置全体として小型化することが難しい上、導入コストが高くなる。また、冷房時には電気を使用するので、運転コストもかかってしまう。
【0005】
一方、特許文献2の技術は、道路の舗装材等として用いられるものであるが、このような技術を椅子の座部など(つまり体と密着させて使用する部分)に応用する場合を考える。特許文献2の技術では、その表面から水分を蒸発させることによって表面温度を下げるので、使用者が座部に腰掛ける等して表面の開口が塞がれてしまうと、水分を蒸発させることができず、表面温度を適切に下げることができない。したがって、使用者が利用する前に予め座部表面を冷やしておけば、座った瞬間には涼感(冷感)を与えることはできるが、しばらくすると使用者の体温によって座部表面が暖められてしまうので、持続的に涼感を与えることはできない。また、座部表面から活発に水分を蒸発させ過ぎると、座部表面付近の湿度が上がって使用者に不快感を与える恐れがある。
【0006】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、保冷パネルおよびそれを用いた椅子を提供することである。
【0007】
この発明の他の目的は、コストを低減できる、保冷パネルおよびそれを用いた椅子を提供することである。
【0008】
この発明のさらに他の目的は、長時間に亘って使用者に涼感を与えることができる、保冷パネルおよびそれを用いた椅子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採用した。なお、括弧内の参照符号および補足説明などは、本発明の理解を助けるために後述する実施の形態との対応関係を示したものであって、この発明を何ら限定するものではない。
【0010】
第1の発明は、表面が体と密着する部分に用いられる保冷パネルであって、セメントを硬化させたセメントゲルによって板状に形成され、少なくとも裏面に連通する連続空隙を有するパネル本体を含み、連続空隙内に保持した水を裏面から蒸発させることによって表面を保冷することを特徴とする、保冷パネルである。
【0011】
第1の発明では、保冷パネル(12)は、パネル本体(14)を含み、表面(16)が使用者の体と密着する部分、たとえば椅子(10)の座部や背もたれ部に用いられる。パネル本体は、セメントゲル(50)によって板状に形成され、少なくとも裏面(14a)に連通する連続空隙(52,54,56)を有する。保冷パネルは、パネル本体の連続空隙に保持した水を裏面から蒸発させることによってパネル本体を冷却し、保冷パネルの表面温度を使用者に涼感を与える所定温度に維持する。
【0012】
第1の発明によれば、内部に保持した水分を蒸発させることによって保冷するので、コンプレッサ等の冷却用の電気機器を用いる必要がない。したがって、導入コストおよび運転コストを低減できる。また、裏面から水分を蒸発させるので、表面に体が密着しても表面温度を所定温度に維持でき、使用者に対して持続的に涼感を与えることができる。
【0013】
第2の発明は、第1の発明に従属し、連続空隙は、pF2.7〜4.2のpF域で水を保持する第1毛管部を含む。
【0014】
第2の発明では、パネル本体(14)の連続空隙(52,54,56)は、pF2.7〜4.2のpF域で水を保持する第1毛管部を含む。pF2.7〜4.2のpF域で毛管に保持される水は、適度な力で保持されるので、パネル本体の裏面(14a)で拡がり易く、かつ裏面への供給も素早く行われる。
【0015】
第2の発明によれば、pF2.7〜4.2のpF域で水を保持する第1毛管部を備えるので、内部に保持した水を裏面に適切に供給でき、優れた保冷効果を発揮できる。
【0016】
第3の発明は、第1または第2の発明に従属し、パネル本体の表面および裏面の少なくとも一方に密着して設けられ、毛細管現象を利用してパネル本体に水を伝播する水伝播層をさらに備える。
【0017】
第3の発明では、保冷パネル(12)は、パネル本体(14)の表面および裏面(14a)の少なくとも一方に密着して設けられる水伝播層(32)を備える。水伝播層は、不織布およびセーム皮などの吸水性に優れる材料によって形成され、たとえば水槽や給水受枠(34)のような貯水部に貯留された水を毛細管現象によって伝播し、パネル本体に供給する。
【0018】
第3の発明によれば、ポンプ等の動力を用いることなく、貯水部からパネル本体に自動的に水を供給できる。
【0019】
第4の発明は、第1ないし第3の発明のいずれかに従属し、パネル本体の側部に設けられる給水受枠をさらに備える。
【0020】
第4の発明では、保冷パネル(12)は、給水受枠(32)をさらに備える。給水受枠は、たとえばアルミニウム製のL金具を用いて形成され、パネル本体(14)の側面に沿って延びるように設けられる。給水受枠は、給水源(50)等から流入する水を受けて一時的に貯留すると共に、保冷パネルの強度を補強する。
【0021】
第5の発明は、第1ないし第4の発明のいずれかに従属し、パネル本体の表面を覆う金属製のカバーをさらに備える。
【0022】
第5の発明では、保冷パネル(12)は、カバー(28)を備える。カバーは、アルミニウムおよびステンレス等の熱伝導率の高い金属によって薄板状に形成され、パネル本体(14)の表面を覆う。
【0023】
第5の発明によれば、使用者の体と保冷パネルの表面との密着部分以外に熱が分散し易くなるので、保冷パネルの表面を効率的に冷却することができる。
【0024】
第6の発明は、第1ないし第5の発明のいずれかに従属し、パネル本体の裏面を部分的に覆う補強部をさらに備える。
【0025】
第6の発明では、保冷パネル(12)は、補強部(28)を備える。補強部は、たとえば、孔(30)有りの薄板状に形成されたり、パネル本体(14)の裏面(14a)の一部のみを覆うように設けられたりして、パネル本体の裏面を部分的に覆う。
【0026】
第6の発明によれば、パネル本体の裏面からの水分蒸発を阻害することなく、保冷パネルの強度を補強できる。
【0027】
第7の発明は、表面が体と密着する部分に用いられる保冷パネルであって、金属製の板体、および板体の裏面に密着して設けられる水保持層を備え、水保持層に保持した水を蒸発させることによって、板体の表面を保冷することを特徴とする、保冷パネルである。
【0028】
第7の発明では、保冷パネル(12)は、板体および水保持層を備える。板体は、たとえば、アルミニウムおよびステンレス等の熱伝導率の高い金属によって薄板状に形成される。水保持層は、たとえば、連続空隙(52,54,56)を有するセメントゲル(50)、または不織布およびセーム皮などの吸水性に優れる材料によって形成される。この保冷パネルでは、水保持層の裏面からの水分蒸発によって、板体の表面、つまり保冷パネルの表面を冷却する。
【0029】
第7の発明によれば、第1の発明と同様に、導入コストおよび運転コストを低減できる。また、裏面から水分を蒸発させるので、表面に体が密着しても表面温度を所定温度に維持でき、使用者に対して持続的に涼感を与えることができる。
【0030】
第8の発明は、請求項1ないし7のいずれかに記載の保冷パネル、および保冷パネルの裏面を外部と連通させた状態で保冷パネルを支持する支持部を備える、休息具である。
【0031】
第8の発明では、休息具(10)は、たとえば、使用者が腰掛けて使用する休息具、立ったまま寄りかかって使用する休息具、および寝転んで使用する休息具であり、保冷パネル(12)および支持部(20,22,60,64)を備える。支持部は、保冷パネルの裏面を外部と連通させた状態で保冷パネルを支持する、つまり、保冷パネルの裏面側に外気と連通する空間(26)を形成する。
【0032】
第8の発明によれば、第1の発明と同様に、導入コストおよび運転コストを低減でき、使用者に対して持続的に涼感を与えることができる。
【0033】
第9の発明は、背もたれ部を備える椅子において、背もたれ部は、セメントを硬化させたセメントゲルによって板状に形成され少なくとも裏面に連通する連続空隙を有するパネル本体、およびパネル本体の裏面を外部と連通させた状態でパネル本体を支持する支持部を含み、パネル本体の連続空隙内に保持した水をパネル本体の裏面から蒸発させることによって、背もたれ部の表面を保冷することを特徴とする、椅子である。
【0034】
第9の発明では、椅子(10)は、背もたれ部を備え、背もたれ部は、パネル本体(14)および支持部(64)を含む。パネル本体は、セメントゲル(50)によって板状に形成され、少なくとも裏面(14a)に連通する連続空隙(52,54,56)を有する。支持部は、パネル本体の裏面を外部と連通させた状態でパネル本体を支持する、つまり、パネル本体の裏面側に外気と連通する空間(26)を形成する。この椅子の背もたれ部は、パネル本体の連続空隙に保持した水を裏面から蒸発させることによって、その表面(16)の温度を使用者に涼感を与える所定温度に維持する。
【0035】
第9の発明によれば、第1の発明と同様に、導入コストおよび運転コストを低減でき、使用者に対して持続的に涼感を与えることができる。
【0036】
第10の発明は、座部および脚部を備える椅子において、座部は、セメントを硬化させたセメントゲルによって板状に形成され、少なくとも裏面に連通する連続空隙を有する第1パネル本体を含み、脚部は、第1パネル本体の裏面を外部と連通させた状態で第1パネル本体を支持し、第1パネル本体の連続空隙内に保持した水を第1パネル本体の裏面から蒸発させることによって、座部の表面を保冷することを特徴とする、椅子である。
【0037】
第10の発明では、椅子(10)は、座部および脚部(20,22)を備える。座部は、第1パネル本体(14)を含み、第1パネル本体は、セメントゲル(50)によって板状に形成され、少なくとも裏面(14a)に連通する連続空隙(52,54,56)を有する。脚部は、第1パネル本体の裏面側に外気と連通する空間(26)を形成する。この椅子の座部は、第1パネル本体の連続空隙に保持した水を裏面から蒸発させることによって、その表面(16)の温度を使用者に涼感を与える所定温度に維持する。
【0038】
第10の発明によれば、第1の発明と同様に、導入コストおよび運転コストを低減でき、使用者に対して持続的に涼感を与えることができる。
【0039】
第11の発明は、第10の発明に従属し、背もたれ部をさらに備え、背もたれ部は、セメントを硬化させたセメントゲルによって板状に形成され、少なくとも裏面に連通する連続空隙を有する第2パネル本体、および第2パネル本体の裏面を外部と連通させた状態で第2パネル本体を支持する支持部を含み、第2パネル本体の連続空隙内に保持した水を第2パネル本体の裏面から蒸発させることによって、背もたれ部の表面を保冷する。
【0040】
第11の発明では、椅子(10)は、背もたれ部をさらに備え、背もたれ部は、第2パネル本体(14)および支持部(64)を含む。第2パネル本体は、セメントゲル(50)によって板状に形成され、少なくとも裏面(14a)に連通する連続空隙(52,54,56)を有する。支持部は、第2パネル本体の裏面側に外気と連通する空間(26)を形成する。この椅子の背もたれ部は、第2パネル本体の連続空隙に保持した水を裏面から蒸発させることによって、その表面(16)の温度を使用者に涼感を与える所定温度に維持する。
【0041】
第11の発明によれば、椅子の座部および背もたれ部の双方の表面を保冷するので、より効果的に使用者に対して涼感を与えることができる。
【0042】
第12の発明は、第9ないし第11のいずれかの発明に従属し、座部の上方を覆って日射を遮る日除け部をさらに備える。
【0043】
第12の発明では、椅子(10)は、日除け部(68)をさらに備える。日除け部は、日傘などによって形成され、座部の上方を覆って日射を遮る。
【0044】
第12の発明によれば、屋外であってもより快適な空間を使用者に提供できる。
【発明の効果】
【0045】
この発明によれば、内部に保持した水分を蒸発させることによって保冷するので、コンプレッサ等の冷却用の電気機器を用いる必要がない。したがって、導入コストおよび運転コストを低減できる。
【0046】
また、裏面から水分を蒸発させるので、表面に体が密着しても表面温度を所定温度に維持でき、使用者に対して持続的に涼感を与えることができる。
【0047】
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う後述の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】この発明の一実施例の椅子の外観を概略的に示す図解図である。
【図2】図1の椅子が備える保冷パネルの表面の外観を示す平面図である。
【図3】図1の椅子が備える保冷パネルの裏面の外観を示す底面図である。
【図4】図2のIV−IV線における保冷パネルの断面を示す断面図である。
【図5】パネル本体の裏面部分の断面構造を模式的に示す図解図である。
【図6】パネル本体のpF-水分曲線を示すグラフである。
【図7】保冷パネルの他の一例を示す断面図であり、(A)はカバーを設けない保冷パネルの一例、(B)はカバーをパネル本体の裏面に設けた保冷パネルの一例、(C)は水伝播層をパネル本体の表面に設けた保冷パネルの一例を示す。
【図8】この発明の他の実施例の椅子の外観を概略的に示す図解図である。
【図9】この発明のさらに他の実施例の椅子の外観を概略的に示す図解図である。
【図10】この発明のさらに他の実施例の椅子の外観を概略的に示す図解図である。
【図11】この発明のさらに他の実施例の野外卓の外観を概略的に示す図解図である。
【図12】この発明の一実施例の保冷パネルの保冷効果検証実験の結果を示すグラフである。
【図13】この発明の一実施例の椅子の保冷効果検証実験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1を参照して、この発明の一実施例である椅子10は、座部に設けられる保冷パネル12を含み、主として屋外に、固定的或いは移動可能に設置される。そして、保冷パネル12(具体的には後述するパネル本体14)の内部に吸収して保持した水を裏面14aから蒸発させることによって、座部表面(保冷パネル12の表面)16の温度を所定温度に保冷し、使用者に涼感を与える。
【0050】
椅子10は、四角形状の枠体20を備える。枠体20は、座部として用いられる保冷パネル12の裏面(下面)の周縁部を支持する。保冷パネル12は、枠体20上に単に乗せておくだけでもよいが、適宜の固定具を設けて横ずれ等を防止することが好ましい。また、枠体20の下面には4本の脚部22が設けられ、これら4本の脚部22は横木24によって適宜補強される。このような脚部22(枠体20を含む)は、保冷パネル12(パネル本体14)の裏面14aからの水の蒸発を妨げないように、保冷パネル12の裏面14a側に外部(外気)と連通する空間26を形成する。なお、枠体20、脚部22および横木24の材質は、特に限定されず、合成樹脂、木材、金属およびコンクリート等の適宜の材質を採用できる。
【0051】
続いて、図2−4を参照して、保冷パネル12の構成について説明する。図2−4に示すように、保冷パネル12は、水分蒸発による保冷機能を有するパネル本体14を含む。パネル本体14は、詳細は後述するように、セメント、多孔質体26および水を混合して硬化させることによって、所定の形状および寸法に形成され、その内部には、裏面14aに連通して開口する連続空隙を有する。この実施例では、パネル本体14は、四角形の板状体であり、その大きさは、縦300mm、横300mmおよび厚み30mmである。
【0052】
パネル本体14の表面(上面)には、アルミニウムおよびステンレス等の熱伝導率の高い金属によって形成される薄板状のカバー28が設けられる。このカバー28には、複数の孔30が分散して形成されており、パネル本体14の表面の一部は、外部に露出する。この実施例では、カバー28として、アルミニウム板を金型で打ち抜いて製作したアルミパンチングを用いている。たとえば、カバー28の厚さは0.5mmであり、孔30の径は2mmである。このようなカバー28は、椅子10の座部表面16全体の温度を速やかに均質化する。また、アルミニウム等の光の反射率が高い材料によってカバー28を形成すれば、日射による表面16の温度上昇自体を抑制できる。
【0053】
また、パネル本体14の裏面(下面)14aには、パネル本体14の一方端からそれに対向する他端まで延び、裏面14aと密着して裏面14aの一部を覆う水伝播層32が設けられる。水伝播層32は、不織布(紙)、パイル地、セーム皮およびスポンジ等の吸水性に優れる材料によって形成され、後述する給水受枠(固定具34)に貯留された水を伝播してパネル本体14に供給する。この実施例では、3つの水伝播層32が所定間隔を開けて並列に設けられる。水伝播層32の幅は、たとえば50mmであり、水伝播層32間に設けられる間隔、つまりパネル本体14の裏面14aが外部に露出する幅は、たとえば35〜40mmである。
【0054】
水伝播層32の両端部は、パネル本体14の一方端および他端の全長に亘って延びる断面L字状の固定具34によって固定される。また、固定具34の上から被せるようにして、止め具36が装着される。この実施例では、固定具34および止め具36として、肉厚が1mmのアルミニウム製のL金具を用いている。このような固定具34および止め具36は、パネル本体14の強度を補強する機能も有し、固定具34の下面が枠体20の上面と当接することによってパネル本体14の破損が防止される。さらに、水伝播層32の中央部の垂れを防止して水伝播層32とパネル本体14とを密着させるために、水伝播層32の中央部は、ボルトやネジ38等によってパネル本体14に適宜固定される。
【0055】
固定具34をパネル本体14に取り付ける際には、固定具34の縦壁とパネル本体14の一方端(側面)との間に、5−10mm程度の隙間40が形成され、この隙間40に給水チューブ42の一方端が接続される。また、この隙間40の両端部、および固定具34の横壁とパネル本体14の裏面14aとの間には、止水コーキング46が施され、固定具34(隙間40)は、給水チューブ42から流入する水を受けて一時的に貯留する給水受枠として機能する。なお、止め具36をパネル本体14に取り付ける際には、スペーサを挟み込む等して、止め具36の横壁とカバー28の上面との間に、1−2mm程度の隙間が形成される。
【0056】
給水チューブ42としては、合成樹脂などによって形成される市販の灌水チューブを利用することができる。給水チューブ42の他端は、水道管や水槽などの給水源48(図1参照)に接続され、給水源48からの水は、給水チューブ42を介して上記の隙間40に供給される。給水源48が水道管である場合には、水道管からの給水圧を利用して水を共給するとよく、給水源48が水槽である場合には、送水ポンプを用いたり、高低差を利用した自然流下方式を用いたりして水を供給するとよい。
【0057】
次に、図5を参照して、パネル本体14の構成について詳細に説明する。図5に示すように、パネル本体14は、セメントを硬化させたセメントゲル50の内部および裏面14aに多孔質体26が分散配置される構造を有し、パネル本体14の内部には、裏面14aに連通して開口する無数の毛管(連続空隙)が形成される。この無数の毛管は、多孔質体26の内部、隣接する多孔質体26の間、多孔質体26とセメントゲル50との間、およびセメントゲル50の内部などに形成される空隙、或いはこれらが互いに連続して形成される空隙であり、pF2.7〜4.2のpF域で水分を保持する第1毛管部を含む。
【0058】
なお、図5は、パネル本体14の裏面14a付近の断面構造を分かりやすく示すための模式図であり、多孔質体26および毛管の数、大きさ、形状および配置などを厳密に示すものではない。また、pF値とは、毛管が水を吸着保持している力の強さ(水分ポテンシャル)を水柱圧(水柱高さ)で表し、その絶対値を常用対数で表したものをいう。pF値は、土壌の含水状態を表す指標値として知られるが、この実施例では、パネル本体14に保持される水が、裏面14aからの蒸発に有効に利用されるものであるかどうかを示すための指標値として用いている。
【0059】
パネル本体14に用いるセメントには、各種セメントを利用でき、無機質セメントを利用してもよいし、合成樹脂などの有機質セメントを利用してもよい。無機質セメントとしては、たとえば、普通ポルトランドセメント或いはアルミナセメントを好適に用いることができる。普通ポルトランドセメントは、広く普及しているため入手し易く、安価であるため経済性に優れる上、これを用いて形成したパネル本体14は、白色または淡色になるため光の表面反射率が高く、日射による表面温度の上昇が発生しにくい。また、アルミナセメントを用いてパネル本体14を形成すれば、緻密な組成を作ることができるので、細い毛管を形成し易い上、耐食性、耐寒性および耐熱性などに優れる。また、無機質セメントを硬化させたセメントゲル50は、親水性を有するため、水の付着力が大きい。このため、毛管内を水が移動し易く、パネル本体14の裏面14a上に水が拡がり易いので、無機質セメントは、パネル本体14の形成に適している。
【0060】
なお、パネル本体14には、単独のセメントを用いることもできるし、複数のセメントを混合して用いることもできる。また、セメントに添加剤を配合することもでき、たとえば無機質セメントに骨材を配合して、コンクリート或いはモルタルとすることもできる。さらに、無機質セメントを焼成などして、セラミックとすることもできる。
【0061】
多孔質体26は、その内部に多数の微細な空隙(第1空隙52)を有する粒状体である。多孔質体26の粒径は特に限定されないが、0.5mm〜2.0mmが好ましく、なかでも1.0mm程度に粒径を揃えたものが好ましい。粒径が大きすぎると、パネル本体14の強度が低下するからである。また、粒径を揃えないと、粒径の小さな多孔質体26が近接する多孔質体26同士の間隙を埋めてしまったり、多孔質体26の配置の偏りが大きくなってしまったりして、後述する第2空隙54が適切に形成されない恐れがあるからである。
【0062】
また、多孔質体26の第1空隙52の径(断面積)の大きさは、第2空隙54の径と同程度の大きさであることが好ましく、第1空隙52は、pF2.7〜4.2のpF域で水分を保持する毛管であることが好ましい。
【0063】
具体的には、多孔質体26として、ケイ酸カルシウム保温材、ロックウール保温材、珪藻土焼成粒、ゼオライト、泥炭、木炭、バーミキュライト、ベントナイト、パーライト、および活性炭類などを利用できる。また、有機系或いは無機系の繊維を略球形状に丸めたものを利用することもできる。
【0064】
その中でも特に、ケイ酸カルシウム保温材は、多孔質体26として好適に用いることができる。ケイ酸カルシウム保温材は、火力発電所の配管設備などに使用される保温材であり、配管設備の定期点検時などには、大量の廃材が発生する。従来、ケイ酸カルシウム保温材の廃材は、産業廃棄物として埋め立て処分されているが、このようにパネル本体14の多孔質体26として有効利用すれば、埋め立て処分に伴う問題(たとえば処分費用や処分場の確保)を解決できる。また、ケイ酸カルシウム保温材は、pF2.7〜4.2のpF域で水を保持する多くの空隙を有しており、特に、pF3.0〜4.0のpF域には、体積含水率で約50%の水を保持できる。
【0065】
セメントと多孔質体26とを混合する割合は、セメントおよび多孔質体26の種類やパネル本体14の要求性能などに基づいて適宜決定されるが、体積比(セメント:多孔質体26)で、2:8〜6:4の範囲内であることが望ましい。これは、セメントの割合が少なすぎると、一定の形にならないためパネル本体14を製造できず、セメントの割合が多すぎると、パネル本体14の特徴の1つである高保水性を適切に発揮できない場合があるからである。
【0066】
この実施例のパネル本体14においては、セメントには、普通ポルトランドセメント(麻生ラファージュセメント株式会社製)を用いた。また、多孔質体26には、ケイ酸カルシウム保温材の廃材を、切断機(日立工機株式会社製クロスカットソー,C7RSH)を用いて粒径1.0mm程度に粉砕した粒状物を用いた。セメント:多孔質体の比率は、体積比で35:65とした。
【0067】
また、詳細は後述するように、パネル本体14の製造時に加える水は、セメントの硬化に利用されると共に、多孔質体26の内部(第1空隙52)に一旦保持されて、第2空隙54および第3空隙56の形成に利用される。したがって、製造時に加える水の量は、通常のコンクリートやモルタル等を作成するときに加える水の量よりも多く、パネル本体14を製造する際の水/セメント比は高くなる。
【0068】
以下には、パネル本体14の製造方法の一例について説明する。なお、この製造時における上面側が、パネル本体14の裏面14aとなる。
【0069】
先ず、所定量の多孔質体26とセメントとを乾燥状態のまま空練りして混合し、その後、水を加えて練り上げる。次に、この混練した混合物を型枠に投入して上面を鏝で均した後、混練時に混入した空気を抜くために振動を与え、上面に浮き上がる気泡を取り除く。続いて、高湿度に保った室内で24時間湿潤養生した後型枠を外し、さらに室内で28日間気中養生することによって、パネル本体14が得られる。
【0070】
このようなパネル本体14の製造において、セメントと多孔質体26との混合物に加えた水の一部は、セメントの硬化に利用され、他の一部は、多孔質体26の第1空隙52に吸収されて保持される。そして、養生中、つまりセメントが硬化して硬化物を形成する際には、多孔質体26の第1空隙52内の水が流れ出て、多孔質体26の周囲を伝って、或いはセメントゲル50の内部を通って硬化物の上面から外部に排出される。多孔質体26の周囲を伝って水が排出されることにより、多孔質体26とセメントゲル50との間、或いは隣接する多孔質体50同士の間には第2空隙54が形成される。この第2空隙54は、隣接する多孔質体26の第1空隙52や他の第2空隙54と適宜合流し、上面に連通する。一方、セメントゲル50の内部を通って水が排出されることによって、セメントゲル50の内部には、多孔質体26から上面に向かって延びる無数の第3空隙56が形成される。この第3空隙56も、他の各空隙52,54,56と適宜合流し、上面に連通する。なお、第2空隙54は、多孔質体26の周囲に沿って形成され、他の第2空隙26と合流し易いので、幅広の断面を有するようになる。このため、第2空隙26の径(断面積)の大きさは、第3空隙56の径より大きくなる。
【0071】
これらの第1空隙52、第2空隙54および第3空隙56は、パネル本体14の内部と上面とを連通する無数の毛管を形成する。この中でも、第1空隙52と第2空隙54とによって形成される毛管は、主に、pF2.7〜4.2のpF域で水を保持する第1毛管部となる。具体的には、多孔質体26の一部が上面に露出することによって第1空隙52或いは第2空隙54が直接上面に連通(開口)する毛管、およびその毛管に他の第1空隙52や第2空隙54が連続して形成される毛管などは、第1毛管部となる。また、第3空隙56を介して上面に連通する毛管は、主に、第1毛管部より径の小さい第2毛管部となる。具体的には、上面に連通する第3空隙56に第1空隙52や第2空隙54が連続して形成される毛管などは、第2毛管部となる。
【0072】
ただし、第1空隙52および第2空隙54の中でも、その径が小さい空隙、たとえば第1空隙52の内部にセメントゲル50が入り込んでその断面積が小さくなった空隙は、第2毛管部を形成する場合もある。また、第3空隙56の中でも、その径が大きい空隙、たとえば第3空隙56同士が合流してその断面積が大きくなった空隙は、第1毛管部を形成する場合もある。
【0073】
なお、各空隙52,54,56(連続空隙)は、下面(パネル本体14の表面)および側面にも連通して開口するが、上面と比較するとその開口数は少ない。このため、後述するパネル本体14からの水の蒸発は、主として上面(裏面14a)から行われる。
【0074】
このようなパネル本体14では、連続空隙に保持した水を蒸発させることによって、温度上昇を抑制する効果を発揮する。この際、連続空隙は、裏面14aに連通する第1毛管部をより多く含んでいることが好ましい。これは、連続空隙の径が大きすぎても小さすぎても、1つの毛管の開口から裏面14aに出て拡がる水の面積は狭くなるため、裏面14a全体に薄膜状に拡がる水の層を適切に形成できず、また、裏面14aで水が蒸発したときに裏面14aに対して水を素早く補給できないからである。つまり、水を保持するpF域は、高すぎても低すぎてもいけない。
【0075】
その点、pF2.7〜4.2のpF域で水を保持する第1毛管部は、適度な力で水を保持するので、その開口付近では水が薄膜状に拡がって水の蒸発面積が広くなり、かつ裏面14aから水が蒸発すると素早く裏面14aに水が供給される。つまり、内部に保持した水を裏面14aに適切に供給できる。これにより、パネル本体14では、裏面14a全体に水が薄膜状に拡がっている状態が維持されるので、裏面14aからの水の蒸発量は多くなり、水の蒸発速度は速くなる。したがって、パネル本体14により多くの第1毛管部を形成すれば、パネル本体14は、優れた温度上昇抑制効果を発揮できるようになる。また、第1毛管部は、適度な力で水を保持するので、供給された水を素早く吸収でき、パネル本体14は吸水性に優れるようになる。
【0076】
pF2.7〜4.2のpF域で水を保持する第1毛管部は、上述のように、パネル本体14を製造するときに、セメントの硬化に必要な量よりも多くの水を加え、多孔質体26に保持させた水の作用で空隙を形成することによって形成できる。また、pF2.7〜4.2のpF域で水分を保持する無数の空隙を有する多孔質体26を選択して用いることによって、より多くの第1毛管部をパネル本体14に形成することができる。
【0077】
図6には、この実施例のパネル本体14のpF-水分曲線を示す。各pF値における体積含水率の測定は、「土壌標準分析・測定法(土壌標準分析法・測定委員会編集,日本土壌肥料学会監修,1986年度版)」を参照して行った。具体的には、pF0は減圧飽和法によって、pF1.5は砂柱法によって、pF1.8〜3.0は加圧板法によって、pF3.8〜4.2は遠心法によって、pF7は加熱減量法によってそれぞれ測定した。なお、各pF値の体積含水率を測定する際には、裏面14aが下側になるように分析装置に配置した。これは、パネル本体14が主として裏面14aから水を蒸発させるものであるため、裏面14aからの水の排出の様子を知る必要があるからである。
【0078】
図6に示すように、この実施例のパネル本体14のpF1.8における体積含水率は、約70%である。一般的に、pF1.8より低いpF域の水は、重力水としてパネル本体から自然と流れ落ち、pF1.8以上のpF域の水は、毛管水としてパネル本体内に保持されることが知られているので、この実施例のパネル本体14は、非常に優れた保水性を有するといえる。また、pF2.7〜4.2のpF域において、体積含水率で17.8%もの水を保持していることが分かる。
【0079】
なお、上述の製造方法では、裏面14aとして用いる上面を養生前に鏝で均した後、上面をそのままの状態にして製造した硬化物をパネル本体14とした。しかし、パネル本体14には、硬化物の上面(裏面14a)を切削することによって、裏面14a全体に亘る多数の微細な凹凸を形成することもできる。この凹凸は、一方向に線状に延び、その直交方向に傾斜する平坦面が繰り返される溝形や波形などに形成するとよく、凹凸の深さおよびピッチは、たとえば1〜2mmに設定するとよい。このような凹凸を裏面14aに形成することにより、裏面14aの面積が増加すると共に、裏面14aに対する水滴のみかけの接触角が小さくなり、水が裏面14aに広くかつ薄く拡がり易くなる。
【0080】
また、パネル本体10を製造する際には、上面(裏面14a)に対して圧力を加えるようにしてもよい。この圧力は、圧力を加えた面に近いほど大きく作用するため、裏面14aに近い第2および第3空隙54,56ほど圧縮され、パネル本体14の表面から裏面14aに向かうほど、第2および第3空隙54,56の径(太さ)は徐々に細くなる。毛管内に保持した水を毛細管現象により吸い上げる力は、毛管が細くなるほど大きくなるので、毛管内に保持された水分は、毛管の細い方に向かって移動する。つまり、毛管の太さをパネル本体14の表面から裏面14aに向かうに従い徐々に細くしておけば、毛管内の水分は、パネル本体14の裏面14aに向かって移動し易くなり、裏面14aからの水分の蒸発が促進される。
【0081】
なお、パネル本体14を製造するときに圧力を加えると、流動性の高いセメントが上方へ移動し、硬化物の上面近傍に占めるセメントゲル50の割合は高くなるが、上述のように硬化物の上面近傍を切削するようにすれば、多数の毛管の開口を、パネル本体14の裏面14aに確実に形成できる。また、混合物に加える圧力を適宜調節し、圧縮脱水時に移動する水の流れ方向および流量を制御することによって、毛管の口径および本数を制御できる。
【0082】
また、上述の製造方法では、パネル本体14を製造するときに、セメントと多孔質体26と空練りした後に水を加えるようにしたが、予め多孔質体26に水を吸収させておき、水を含む多孔質体26とセメントと水とを混練するようにしてもよい。
【0083】
続いて、図1−4に戻って、上述のような構成の椅子10の作用効果について説明する。椅子10では、給水源48から水が供給されると、その水は、給水チューブ42を介して固定具34上の隙間40に流入し、そこで一時貯留される。一時貯留された水は、主として水伝播層32に毛細管現象によって吸収されてパネル本体14の裏面14aに伝播され、裏面14aに形成される開口から毛細管現象によってパネル本体14内の連続空隙(空隙52,54,56)に吸収される。また、一時貯留された水の一部は、止め具36とカバー28との間に形成した隙間からオーバーフローし、カバー28の上面を流れて対向位置の隙間40にも一時貯留される。この対向位置の隙間40の水も、水伝播層32に吸収されてパネル本体14の裏面14aに伝播され、裏面14aから吸収される。また、カバー28の上面を流れる水の一部は、カバー28の孔30からパネル本体14の表面に伝わり、表面の開口からパネル本体14内の連続空隙に吸収される。これら裏面14aや表面に形成される開口からパネル本体14内の連続空隙に吸収された水は、連続空隙内を順次移動してパネル本体14全体に浸透し、連続空隙内で保持される。
【0084】
そして、パネル本体14の連続空隙内に保持された水は、周囲の環境状況に応じて、パネル本体14の主として裏面14aから適宜蒸発する。特に、周囲の気温が上昇したり、パネル本体14が温められたりすると、裏面14aに薄膜状に拡がって存在する水は、活発に蒸発する。このとき、連続空隙の各開口付近にある水が蒸発すると、蒸発した水の近傍に存在する連続空隙に保持された水は、分子間力や毛細管現象によって各開口から裏面14aに出て薄膜状に拡がる。また、裏面14a近傍に保持された水が裏面14aへ移動するに伴い、パネル本体14のさらに内部に保持された水は、毛細管現象によって順次移動して各開口から裏面14aに出る。つまり、裏面14aにおける水の蒸発に伴い、パネル本体14内の水は、連続空隙を通って裏面14aに順次供給され、裏面14aから順次蒸発する。なお、パネル本体14の表面からも水は蒸発するが、裏面14aからの蒸発量と比較するとその量は少ない。
【0085】
パネル本体14の裏面14aから水が蒸発すると、その蒸発熱(気化熱)によってパネル本体14の熱が奪われ、パネル本体14は裏面14a側から冷却される。パネル本体14は板状に形成されてその厚みは小さいので、この冷却効果はパネル本体14全体に作用し、パネル本体14の表面も冷却(保冷)される。パネル本体14の表面が冷却されると、その冷却効果はカバー28に伝わって全体的に速やかに均質化され、カバー28の上面、つまり椅子10の座部表面16の温度が冷却される。このとき、周囲の温度が上がると裏面14aからの蒸発量が増え、周囲の温度が下がると蒸発量が減るので、座部表面16の温度は概ね所定温度を維持する。つまり、椅子10は、座部の表面温度を厳密に制御できるものではないが、周囲の温度が変化しても程よい涼感を使用者に与える温度を維持できる。具体的には、使用者に涼感を与えるために少なくとも体温より低温に座部表面16の温度を維持し、好ましくは、過度に冷やし過ぎずに程よい涼感を与える温度である25〜35℃、特に好ましくは、28〜33℃に座部表面16の温度を維持する。
【0086】
また、使用者が椅子10の座部に腰掛けることによって、パネル本体14の表面の開口が塞がれたとしても、パネル本体14の裏面14aからの水の蒸発は阻害されずに持続される。したがって、使用者の体温によって座部表面16が暖められても、パネル本体14の裏面14aからの水の蒸発によって座部表面16は直ちに冷却され、座部表面16は所定温度に保冷される。さらに、熱伝導性が大きいカバー28をパネル本体14の上面に設けることによって、尻および太腿などの体と座部表面16(保冷パネル12の表面)との密着部分以外に熱が分散し易くなり、パネル本体14全体を利用して冷却できるようになるので、座部表面16が冷却され易くなる。
【0087】
なお、パネル本体14内の連続空隙は、表面にも開口しているが、その径は小さく、使用者の衣服よりも吸水力(保水力)が強いので、連続空隙内に保持した水によって衣服や肌が濡れることはない。また、沸騰時のように水を急激に蒸発させるわけではないので、表面または裏面14aからの水蒸気によって衣服や肌が濡れることもない。
【0088】
この実施例によれば、内部に保持した水分を蒸発させることによって座部表面16を保冷するので、コンプレッサ等の冷却用の電気機器を用いる必要がない。したがって、安価に製作することができ、運転コストもかからない。なお、パネル本体14の冷却は裏面14a側から行われるが、パネル本体14は、板状に形成されてその厚みが小さいので、その冷却効果はパネル全体に作用し、座部表面16も適切に冷却(保冷)される。
【0089】
また、座部裏面(具体的にはパネル本体の裏面14a)から水を蒸発させるので、座部表面16に使用者の体が密着しても、水の蒸発を持続的に行うことができる。したがって、座部表面16の温度を所定温度に保冷でき、使用者に対して持続的に涼感を与えることができる。
【0090】
さらに、上述の特許文献1の技術のように冷気を送風して人体に直接当てると、体が冷え過ぎてしまったり、喘息の人に悪影響を及ぼしたりする恐れがあるが、この実施例ではそのような問題点も解消される。
【0091】
なお、上述の実施例では、パネル本体14の表面に金属製のカバー28を設けたが、図7(A)に示すように、保冷パネル12には、カバー28を設けないこともできる。また、上述の実施例では、カバー28として、アルミパンチングを用いたが、孔30の大きさや形状は特に限定されず、たとえば、金網(金属を方形やひし形に目を透かして編んだもの)を用いることもできる。また、孔30が形成されてないカバー28を用いて、パネル本体14の上面をカバー28によって完全に覆うようにすることもできる。
【0092】
さらに、図7(B)に示すように、カバー28をパネル本体14の裏面14aに設けることもできる。たとえば、水伝播層32をパネル本体14とカバー28とで挟み込むようにカバー28を設けるとよく、これによって、水伝播層32をパネル本体14の裏面14aに適切に密着させることができる。ただし、パネル本体14の裏面14aにカバー28を設ける場合には、裏面14aからの水分蒸発を妨げないように、カバー28に孔30を形成したり、裏面14aの一部のみにカバー28を設けたりする必要がある。このように、カバー28をパネル本体14の裏面14aに設けることによって、保冷パネル12の強度を強くできる。つまり、カバー28は、パネル本体14の裏面14aを部分的に覆う補強部として機能する。
【0093】
また、上述の実施例では、水伝播層32をパネル本体14の裏面14aに設けたが、図7(C)に示すようにパネル本体14の表面に設けることもできるし、或いはパネル本体14の裏面14aおよび表面の双方に設けることもできる。ただし、水伝播層32をパネル本体14の表面に設ける場合には、使用者が腰掛けたときに水に濡れないように、孔30のないカバー28が必須となる。また、水伝播層32を裏面14aに設ける場合のように水分蒸発の阻害を考慮する必要はないので、パネル本体14の表面全体を覆うように水伝播層32を設けるようにしてもよい。
【0094】
さらに、上述の実施例では、給水源48から給水チューブ42を介して固定具34上の隙間40に水を流入させ、そこから水伝播層32を介してパネル本体14に水を供給するようにしたが、パネル本体14への水の供給方法はこれに限定されない。たとえば、止め具36の上部に給水口を設けるようにし、その給水口から固定具34上の隙間40に手差しで水を供給することもできる。また、保冷パネル12を椅子10(枠体20)に対して着脱可能に設けておき、パネル本体14に水を供給する際には、保冷パネル12を取り外して水槽などに直接漬けるようにしてもよい。さらに、保冷パネル12が着脱可能でない場合には、椅子10全体を傾ける等して水槽に保冷パネル12を直接漬けることもできる。また、パネル本体14にカバー28を設けない場合や、孔30を形成したカバー28を設ける場合には、パネル本体14の表面または裏面14aへの散水によって、パネル本体14に水を供給してもよい。
【0095】
また、たとえば、椅子10の座部の下などに水槽を設置すると共に、水伝播層32の一端をその水槽まで延ばすように設け、水伝播層32を用いて水槽からパネル本体14に直接給水することもできる。この場合、水槽内に貯留された水は、毛細管現象によって水伝播層32内を伝播し、パネル本体14に順次供給される。つまり、ポンプ等の動力を用いることなく、パネル本体14から蒸発した水の分だけ、連続的かつ自動的にパネル本体14に水を供給できる。なお、この発明者らが、不織布(王子ネピア株式会社製キッチンタオル WRG22)、人工セーム(株式会社クレトム製合成セーム F18)、および本皮セームを水伝播層32として用いて、パネル本体14の30cm下に設置した水槽からパネル本体14への給水実験を行ったところ、いずれの水伝播層32においても、パネル本体14への給水が良好に行われることが確認された。また、パネル本体14の表面の保冷効果は、周囲の環境条件にもよるが、パネル本体14に十分に保水した状態で15時間程度持続できる。これに対して、水槽から水伝播層32を介してパネル本体14に連続的に給水すれば、ほぼ無期限に保冷効果を持続できることが確認された。
【0096】
なお、冬期などのように、椅子10の座部表面16を保冷する必要がないときには、パネル本体14への水の供給を行わないようにすれば、水分蒸発による保冷機能は停止されるので、椅子10は、従来のコンクリート製の椅子と同様に使用できる。
【0097】
また、上述の実施例では、パネル本体14の内部に保持した水を蒸発させることによって保冷パネル12の表面を保冷した、つまり、水を保持して蒸発させる部分(水保持層)として、セメントを硬化させて形成したパネル本体14を用いたが、これに限定されず、水を保持して蒸発させる部分には、不織布(紙)、パイル地、セーム皮およびスポンジ等の吸水性に優れる材料を用いることもできる。すなわち、保冷パネル12は、パネル本体14を用いずに、板状体と、板状体の裏面に設けられる不織布などの水保持層とで構成することもできる。この場合、板状体は、アルミニウムおよびステンレス等の熱伝導率の高い金属によって薄板状に形成するとよい。このような保冷パネル12であっても、水保持層の裏面からの水分蒸発によって、保冷パネル12(板状体)の表面16を冷却することが可能である。ただし、パネル本体14を用いない場合は、その保冷効果は小さく、表面温度のばらつきも大きくなるので、保冷パネル12にはパネル本体14を用いることが好ましい。
【0098】
さらに、上述の実施例では、背もたれ部や肘掛け部のない椅子10を一例として挙げたが、椅子10は、背もたれ部や肘掛け部を有していてもよく、背もたれ部や肘掛け部に保冷パネル12を設けるようにすることもできる。
【0099】
たとえば、図8に示すこの発明の他の実施例である椅子10は、座部に加えて、背もたれ部にも保冷パネル12を設けている。背もたれ部として用いられる保冷パネル12は、座部として用いられる保冷パネル12と同じものを用いることもできるし、たとえばパネル本体14への給水手段が違う等のように、構成を変えたものを用いることもできる。
【0100】
図8に示す椅子10は、図1に示す椅子10にさらに背もたれ部を設けたものであり、脚部22の両側方を斜め方向に延びる第2脚部60、および第2脚部60を支える支え部62を備える。第2脚部60の上部には、矩形の枠体状に形成される支持部64が設けられ、この支持部64上に保冷パネル12が設けられる。支持部64は、保冷パネル12の周縁部を支持し、保冷パネル12(具体的にはパネル本体14)の裏面14a側に外部と連通する空間26を形成する。背もたれ部に設けた保冷パネル12も、座部に設けた保冷パネル12と同様に、パネル本体14の連続空隙内に保持した水をパネル本体14の裏面14aから蒸発させることによって、保冷パネル12の表面16、つまり背もたれ部の表面16を保冷するので、背もたれ部の表面16に使用者の体が密着しても、水の蒸発を持続的に行うことができる。したがって、背もたれ部の表面16の温度を所定温度に保冷でき、使用者に対して持続的に涼感を与えることができる。
【0101】
また、椅子10は、1人掛けの椅子ではなく、長椅子(ベンチ)状に形成することもできる。この場合、たとえば、縦30cm×横100cmの1枚のパネル本体14(保冷パネル12)によって座部や背もたれ部を形成してもよいし、図9に示すように、30cm四方のパネル本体14を横に並べるようにしてもよい。もちろん、パネル本体14(保冷パネル12)の平面視形状は、正方形や矩形に限定されず、円形、楕円形、三角形などの適宜の形状に形成できる。なお、図9に示す実施例では、隣り合う保冷パネル12同士を給水チューブ42で連結して、給水源50からの水を各パネル本体14に供給するようにしている。
【0102】
また、図10に示すように、椅子10は、座部の上方を覆って日射を遮る日除け部68をさらに備えるようにしてもよい。使用者に直射日光が当たる状態よりも、日陰の状態で過ごす方が快適であるので、日射を遮る日除け部68を併設すれば、屋外であってもより快適な空間を使用者に提供できる。
【0103】
さらに、図11に示すように、椅子10、日傘70および机72を組み合わせて、野外卓セット74として利用すれば、さらに快適な空間を使用者に提供できる。
【0104】
また、保冷パネル12は、腰掛けて使用する休息具、つまり椅子10への適用に限定されず、たとえば、使用者が立ったまま寄りかかって使用する休息具や、寝転んで使用する休息具にも適用することもできる。
【0105】
さらに、使用者には、人間以外の動物も含み、保冷パネル12およびこれを用いた休息具は、猫や犬などの動物が使用してもかまわない。たとえば、保冷パネル12を犬小屋などの床板部分に設ければ、床板の上に横たわる動物に対して冷却効果を長時間に亘って連続的に与えることができる。ただし、床板の裏面側には、外部と連通する空間を設けるようにし、裏面からの水分蒸発が効率的に行われるようにする必要がある。
【0106】
また、保冷パネル12およびこれを用いた休息具は、水分を蒸発させるので、屋外に設置することが好ましいが、屋内に設置することもできる。屋内に設置する場合には、換気を適宜行う等の湿気対策を別途講じることが好ましい。
【0107】
以下、保冷パネル12および椅子10に対して保冷効果の検証実験を行った結果を示す。
【0108】
図12には、保冷パネル12を単独で夏場の屋外に設置し、日射を受けたときの表面温度の経時変化(保冷効果)を調べた結果を示す。保冷パネル12には、供試体1としてパネル本体14のみのものを用い、供試体2としてパネル本体14の表面に孔30有りのアルミ製のカバー28を被せたものを用いた。実験前には、パネル本体14に十分に水を保持させておき、保冷パネル12を設置する際には、裏面14a側に15mmの隙間(外気と連通する空間)を開けて設置して、裏面14aからの水分蒸発が阻害されないようにした。また、表面温度の計測には、日置電気株式会社製の温度ロガーを用いた。なお、比較例として、屋外によく見られる木製の椅子を想定して、ベニヤ板を供試体1および2と同様に設置したときの表面温度の計時変化も併せて示す。
【0109】
図12に示すように、比較例のベニヤ板の表面温度は、気温および日射強度の変化に応じて大きく変動して、気温より高い温度となり、36℃(体温)を越えてしまう時間帯も多く見られた。これに対して、供試体1および2(保冷パネル12)の表面温度は、日射強度の影響を受けるが、気温とほぼ同じ、或いは気温よりも低い温度を維持し、概ね28〜33℃に保たれた。また、表面温度の変動幅も、比較例より小さかった。この実験結果から、保冷パネル12は、体を過度に冷やし過ぎずに程よい涼感を与える温度である28〜33℃の間に、表面温度を維持できることが分かる。
【0110】
また、図13には、椅子10を夏場の屋外に設置し、複数の被験者(老若男女を問わない計24名)にランダムに腰掛けてもらったときの、座部および背部の表面温度(座面温度および背面温度)の経時変化を示す。この実験では、保冷パネル12を座部および背もたれ部に設けた椅子10を用い、この保冷パネル12には、パネル本体14の表面をアルミ製のカバー28(孔30なし)で覆ったものを用いた。なお、パネル本体14への給水は、実験日前日の夕方に行い、パネル本体14には十分に水を保持させておいた。
【0111】
図13に示すように、座面温度は、気温よりも平均2.1℃低く、背面温度は、気温よりも平均2.7℃低かった。また、気温が30℃を越えているのにも係わらず、椅子10の座面温度および背面温度は共に、気温を上回ること無く30℃前後を推移した。なお、図示は省略するが、実験時間帯における湿度は、50%前後を推移していた。
【0112】
この実験結果から、1回の給水によって、椅子10(保冷パネル12)は、体を過度に冷やし過ぎずに程よい涼感を与える温度である28〜33℃の間に、座面温度および背面温度を5時間以上も維持できることが分かる。
【0113】
また、実際に座ったときの感想を使用者に求めたところ、「座面および背面共に冷たくて気持ち良く、何時間でも居られそう」という意見が大半であった。これは、保冷パネル12の表面16が、使用者の体温で温められることがないため、或いは温められてもすぐに冷却されるため、程よい温度を持続できるからに他ならない。また、使用者の感想においては、座面の方が冷たく感じる使用者と、背面の方が冷たく感じる使用者とに分かれたが、冷点密度(冷たさを感じる感覚点の密度)や冷感受性は、尻よりも背中の方が高い。このため、背もたれ部に保冷パネル12を設けた方が、使用者に冷感をより効果的に与えることができると考えられる。
【符号の説明】
【0114】
10 …椅子
12 …保冷パネル
14 …パネル本体
14a …パネル本体の裏面
16 …座部表面(保冷パネルの表面)
26 …多孔質体
28 …カバー(補強部)
32 …水伝播層
34 …固定具(給水受枠)
50 …セメントゲル
52,54,56 …パネル本体の空隙
68 …日除け部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面が体と密着する部分に用いられる保冷パネルであって、
セメントを硬化させたセメントゲルによって板状に形成され、少なくとも裏面に連通する連続空隙を有するパネル本体を含み、
前記連続空隙内に保持した水を前記裏面から蒸発させることによって、前記表面を保冷することを特徴とする、保冷パネル。
【請求項2】
前記連続空隙は、pF2.7〜4.2のpF域で水を保持する第1毛管部を含む、請求項1記載の保冷パネル。
【請求項3】
前記パネル本体の表面および裏面の少なくとも一方に密着して設けられ、毛細管現象を利用して当該パネル本体に水を伝播する水伝播層をさらに備える、請求項1または2記載の保冷パネル。
【請求項4】
前記パネル本体の側部に設けられる給水受枠をさらに備える、請求項1ないし3のいずれかに記載の保冷パネル。
【請求項5】
前記パネル本体の表面を覆う金属製のカバーをさらに備える、請求項1ないし4のいずれかに記載の保冷パネル。
【請求項6】
前記パネル本体の裏面を部分的に覆う補強部をさらに備える、請求項1ないし5のいずれかに記載の保冷パネル。
【請求項7】
表面が体と密着する部分に用いられる保冷パネルであって、
金属製の板体、および
前記板体の裏面に密着して設けられる水保持層を備え、
前記水保持層に保持した水を蒸発させることによって、前記板体の表面を保冷することを特徴とする、保冷パネル。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の保冷パネル、および
前記保冷パネルの裏面を外部と連通させた状態で当該保冷パネルを支持する支持部を備える、休息具。
【請求項9】
背もたれ部を備える椅子において、
前記背もたれ部は、
セメントを硬化させたセメントゲルによって板状に形成され、少なくとも裏面に連通する連続空隙を有するパネル本体、および
前記パネル本体の裏面を外部と連通させた状態で当該パネル本体を支持する支持部を含み、
前記パネル本体の連続空隙内に保持した水を当該パネル本体の裏面から蒸発させることによって、前記背もたれ部の表面を保冷することを特徴とする、椅子。
【請求項10】
座部および脚部を備える椅子において、
前記座部は、セメントを硬化させたセメントゲルによって板状に形成され、少なくとも裏面に連通する連続空隙を有する第1パネル本体を含み、
前記脚部は、前記第1パネル本体の裏面を外部と連通させた状態で当該第1パネル本体を支持し、
前記第1パネル本体の連続空隙内に保持した水を当該第1パネル本体の裏面から蒸発させることによって、前記座部の表面を保冷することを特徴とする、椅子。
【請求項11】
背もたれ部をさらに備え、
前記背もたれ部は、セメントを硬化させたセメントゲルによって板状に形成され、少なくとも裏面に連通する連続空隙を有する第2パネル本体、および
前記第2パネル本体の裏面を外部と連通させた状態で当該第2パネル本体を支持する支持部を含み、
前記第2パネル本体の連続空隙内に保持した水を当該第2パネル本体の裏面から蒸発させることによって、前記背もたれ部の表面を保冷することを特徴とする、請求項10記載の椅子。
【請求項12】
前記座部の上方を覆って日射を遮る日除け部をさらに備える、請求項9ないし11のいずれかに記載の椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−217871(P2011−217871A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88449(P2010−88449)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【出願人】(505407575)株式会社森生テクノ (4)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【出願人】(510097688)
【Fターム(参考)】