保守支援装置
【課題】部品の交換が促された場合に、その部品との同時交換が望まれる別の部品の存否を保守作業者に判断してもらうことができる保守支援装置を提供する。
【解決手段】保守支援対象物である複写機に搭載される種々の部品の何れかについて交換時期が到来したと判定した場合に、その部品についてユーザー又は保守作業者に対して交換を促すメッセージを操作表示部3に表示することに加えて、保守作業者に対して、交換時期が到来していない複数の部品それぞれについて残寿命の情報を提供するための残寿命一覧画面を操作表示部3に表示するようにした。
【解決手段】保守支援対象物である複写機に搭載される種々の部品の何れかについて交換時期が到来したと判定した場合に、その部品についてユーザー又は保守作業者に対して交換を促すメッセージを操作表示部3に表示することに加えて、保守作業者に対して、交換時期が到来していない複数の部品それぞれについて残寿命の情報を提供するための残寿命一覧画面を操作表示部3に表示するようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保守対象物に搭載された種々の部品それぞれについて、交換時期が到来したことに基づいて保守作業者に対して交換要求情報を提供して前記保守対象物の保守を支援する保守支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、市場に出回っている様々な機械や装置においては、故障が発生すると、故障の内容によっては修理完了までかなりの期間に渡って使用不可となって、ユーザーに不便を強いてしまうことがあった。このため、できるだけ故障を発生させない適切な保守の実施をユーザーやサービスマンに対して支援する保守支援装置が知られている。
【0003】
例えば、画像形成装置の分野では、保守対象物である画像形成装置に搭載される各種の部品それぞれについて、次のようにして交換時期の到来を把握してユーザーやサービスマンに対して交換を促す保守支援装置が知られている。即ち、各種の部品それぞれについて、累積稼働時間(プリント枚数)を個別にカウントしていき、カウント値が所定の閾値を超えたことに基づいて交換時期が到来したものと把握するのである。
【0004】
また、例えば特許文献1に記載の保守支援装置のように、各種の部品それぞれについて、もうすぐ故障するか否かを予測して、交換時期の到来をより精度良く捉えるようにしたものも知られている。もうすぐ故障するか否かについては、画像形成装置から取得した様々なセンシングデータや制御パラメータなどを用いた多変量解析によって求めたマハラノビス距離などの異常指標値に基づいて予測している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の保守支援装置においては、交換時期の到来がかなり近づいている部品であっても、実際に交換時期が到来するまではユーザーやサービスマンに対して交換を促さない。このため、ある部品の交換を促してユーザーに交換作業を行ってもらった直後に、その部品とほぼ同様の交換作業工程で交換することができる別の部品の交換を促して、ユーザーやサービスマンに二度手間をとらせてしまうことがあった。
【0006】
本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、部品の交換が促された場合に、その部品との同時交換が望まれる別の部品の存否をユーザーやサービスマンなどの保守作業者に判断してもらうことができる保守支援装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、保守対象物に搭載された種々の部品それぞれについて、交換時期が到来したか否かを判定するのに有用な情報である判定有用情報を、前記保守対象物から取得する情報取得手段と、前記種々の部品それぞれについて、前記情報取得手段による前記判定有用情報の取得結果に基づいて交換の必要性を示す交換指標値を算出する指標値算出手段と、前記種々の部品それぞれについて、前記指標値算出手段による算出結果に基づいて交換時期が到来したか否かを判定する判定手段と、判定手段によって交換時期が到来したと判定された部品について、ユーザー又は保守作業者に対して交換を促す情報である交換要求情報を提供する情報提供手段とを備え、前記交換要求情報の提供によって前記保守対象物の保守を支援する保守支援装置において、ユーザー又は保守作業者に対して、前記交換要求情報に加えて、交換時期が到来していない複数の部品それぞれについて前記交換指標値の情報を提供する処理を実施するように、前記情報提供手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の保守支援装置において、前記判定手段によって交換時期が到来したと判定された部品についてのみ、保守作業者に対して交換作業を終えたか否かの問い合わせを行いながら保守作業者ユーザーからの交換作業終了情報を受け付ける受付手段と、前記受付手段によって前記交換作業終了情報が受け付けられたことに基づいて、前記交換作業終了情報に対応する部品の前記判定有用情報を初期化する情報初期化手段とを設けたことを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項2の保守支援装置において、前記判定手段によって交換時期が到来したと判定されていない複数の部品のうち、交換時期が到来したと判定された部品と同時に交換するものがある場合に、その部品の情報を追加交換部品情報として保守作業者ユーザーに入力してもらう入力手段を設けるとともに、前記判定手段によって交換時期が到来したと判定された部品に加えて、前記入力手段に入力された追加交換部品情報に対応する部品についても、前記交換作業終了情報を受け付けるように、上記受付手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項2又は3の保守支援装置において、前記交換作業終了情報が前記受付手段によって受け付けられた場合に、その交換作業終了情報に対応する部品を自動で発注する発注手段を設けたことを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項2、3又は4の保守支援装置において、ユーザーのもとに配設され、且つ、少なくとも、前記情報取得手段、前記受付手段、及び前記入力手段を具備する端末機と、ユーザーのもとから離れた場所に配設され、且つ、少なくとも前記指標値算出手段、前記判定手段、及び前記情報提供手段を具備するホスト機との間における遠隔通信を実現する通信手段を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
これらの発明においては、交換時期が到来した部品についての交換要求情報を保守作業者に提供するときに、交換時期が到来していない他の複数の部品それぞれについて、交換指標値の情報提供によって交換時期の到来までの残期間を保守作業者に知らせる。そして、その残期間に基づいて同時交換した方がよいか否かを、保守作業者に判断してもらうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態に係る保守支援装置の保守支援対象となる複写機を示す概略構成図。
【図2】同複写機のプリンタ部を示す拡大構成図。
【図3】同プリンタ部におけるタンデム部の一部を示す部分拡大図。
【図4】同複写機の電気回路の一部を示すブロック図。
【図5】従来の画像形成装置の操作表示部における交換催促用の画面を示す模式図。
【図6】同操作表示部におけるメニュー画面を示す模式図。
【図7】同操作表示部におけるカウント値一覧画面を示す模式図。
【図8】同カウント値一覧画面上でのカウント値クリア操作を説明するための模式図。
【図9】実施形態に係る複写機の操作表示部における交換催促用の画面を示す模式図。
【図10】同操作表示部における残寿命一覧画面を示す模式図。
【図11】同残寿命一覧画面上での交換部品追加操作を説明するための模式図。
【図12】同操作表示部におけるカウント値一覧画面の一例を示す模式図。
【図13】同複写機によってFAXされる発注用紙の発注用紙フォームを示す模式図。
【図14】同発注用紙フォームの画像に合成される発注文字画像の一例を示す模式図。
【図15】同発注用紙の一例を示す模式図。
【図16】変形例に係る保守支援装置の一部を搭載した複写機と、同保守支援装置の一部として機能する監視装置とを示す構成図
【図17】同監視装置にインストールされている故障予測ソフトウエアによって実現されるソフトウエア回路を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を、画像形成装置である電子写真方式の複写機(以下、単に複写機という)の保守を支援する保守支援装置に適用した実施形態について説明する。
まず、実施形態に係る保守支援装置の保守対象となる複写機の基本的な構成について説明する。図1は、保守支援装置の保守支援対象である複写機を示す概略構成図である。この複写機は、プリンタ部100と給紙部200とからなる画像形成手段と、スキャナ部300と、原稿搬送部400とを備えている。スキャナ部300はプリンタ部100上に取り付けられ、そのスキャナ部300の上に原稿自動搬送装置(ADF)からなる原稿搬送部400が取り付けられている。
【0011】
スキャナ部300は、コンタクトガラス32上に載置された原稿の画像情報を読取センサ36で読み取り、読み取った画像情報を図示しない制御部に送る。制御部は、スキャナ部300から受け取った画像情報に基づき、プリンタ部100の露光装置21内に配設された図示しないレーザやLED等を制御してドラム状の4つの感光体40K,Y,M,Cに向けてレーザ書き込み光Lを照射させる。この照射により、感光体40K,Y,M,Cの表面には静電潜像が形成され、この潜像は所定の現像プロセスを経由してトナー像に現像される。なお、符号の後に付されたK,Y,M,Cという添字は、ブラック,イエロー,マゼンタ,シアン用の仕様であることを示している。
【0012】
プリンタ部100は、露光装置21の他、1次転写ローラ62K,Y,M,C、2次転写装置22、定着装置25、排紙装置、図示しないトナー供給装置、トナー供給装置等も備えている。
【0013】
給紙部200は、プリンタ部100の下方に配設された自動給紙部と、プリンタ部100の側面に配設された手差し部とを有している。そして、自動給紙部は、ペーパーバンク43内に多段に配設された2つの給紙カセット44、給紙カセットから記録体たる転写紙を繰り出す給紙ローラ42、繰り出した転写紙を分離して給紙路46に送り出す分離ローラ45等を有している。また、プリンタ部100の給紙路48に転写紙を搬送する搬送ローラ47等も有している。一方、手差し部は、手差しトレイ51、手差しトレイ51上の転写紙を手差し給紙路53に向けて一枚ずつ分離する分離ローラ52等を有している。
【0014】
プリンタ部100の給紙路48の末端付近には、レジストローラ対49が配設されている。このレジストローラ対49は、給紙カセット44や手差しトレイ51から送られてくる転写紙を受け入れた後、所定のタイミングで中間転写体たる中間転写ベルト10と2次転写装置22との間に形成される2次転写ニップに送る。
【0015】
図1に示した複写機において、操作者は、カラー画像のコピーをとるときに、原稿搬送部400の原稿台30上に原稿をセットする。あるいは、原稿搬送部400を開いてスキャナ部300のコンタクトガラス32上に原稿をセットした後、原稿搬送部400を閉じて原稿を押さえる。そして、図示しないスタートスイッチを押す。すると、原稿搬送部400に原稿がセットされている場合には原稿がコンタクトガラス32上に搬送された後に、コンタクトガラス32上に原稿がセットされている場合には直ちに、スキャナ部300が駆動を開始する。そして、第1走行体33及び第2走行体34が走行し、第1走行体33の光源から発せられる光が原稿面で反射した後、第2走行体34に向かう。更に、第2走行体34のミラーで反射してから結像レンズ35を経由して読取りセンサ36に至り、画像情報として読み取られる。
【0016】
このようにして画像情報が読み取られると、プリンタ部100は、図示しない駆動モータで支持ローラ14、15、16の1つを回転駆動させながら他の2つの支持ローラを従動回転させる。そして、これらローラに張架される中間転写ベルト10を無端移動させる。更に、上述のようなレーザ書き込みや、後述する現像プロセスを実施する。そして、感光体40K,Y,M,Cを回転させながら、それらに、ブラック,イエロー,マゼンタ,シアンの単色画像を形成する。これらは、感光体40K,Y,M,Cと、中間転写ベルト10とが当接するK,Y,M,C用の1次転写ニップで順次重ね合わせて静電転写されて4色重ね合わせトナー像になる。感光体40K、40Y、40M、40C上にトナー像を形成する。
【0017】
一方、給紙部200は、画像情報に応じたサイズの転写紙を給紙すべく、3つの給紙ローラのうちの何れか1つを作動させて、転写紙をプリンタ部100の給紙路48に導く。給紙路48内に進入した転写紙は、レジストローラ対49に挟み込まれて一旦停止した後、タイミングを合わせて、中間転写ベルト10と2次転写装置22の2次転写ローラ23との当接部である2次転写ニップに送り込まれる。すると、2次転写ニップにおいて、中間転写ベルト10上の4色重ね合わせトナー像と、転写紙とが同期して密着する。そして、ニップに形成されている転写用電界やニップ圧などの影響によって4色重ね合わせトナー像が転写紙上に2次転写され、紙の白色と相まってフルカラー画像となる。
【0018】
2次転写ニップを通過した転写紙は、2次転写装置22の搬送ベルト24の無端移動によって定着装置25に送り込まれる。そして、定着装置25の加圧ローラ27による加圧力と、加熱ベルトによる加熱との作用によってフルカラー画像が定着せしめられた後、排出ローラ56を経てプリンタ部100の側面に設けられた排紙トレイ57上に排出される。
【0019】
図2は、プリンタ部100を示す拡大構成図である。プリンタ部100は、ベルトユニット、各色のトナー像を形成する4つのプロセスユニット18K,Y,M,C、2次転写装置22、ベルトクリーニング装置17、定着装置25等を備えている。
【0020】
ベルトユニットは、複数のローラに張架した中間転写ベルト10を、感光体40K,Y,M,Cに当接させながら無端移動させる。感光体40K,Y,M,Cと中間転写ベルト10とを当接させるK,Y,M,C用の1次転写ニップでは、1次転写ローラ62K,Y,M,Cによって中間転写ベルト10を裏面側から感光体40K,Y,M,Cに向けて押圧している。これら1次転写ローラ62K,Y,M,Cには、それぞれ図示しない電源によって1次転写バイアスが印加されている。これにより、K,Y,M,C用の1次転写ニップには、感光体40K,Y,M,C上のトナー像を中間転写ベルト10に向けて静電移動させる1次転写電界が形成されている。各1次転写ローラ62K,Y,M,Cの間には、中間転写ベルト10の裏面に接触する導電性ローラ74がそれぞれ配設されている。これら導電性ローラ74は、1次転写ローラ62K,Y,M,Cに印加される1次転写バイアスが、中間転写ベルト10の裏面側にある中抵抗の基層11を介して隣接するプロセスユニットに流れ込むことを阻止するものである。
【0021】
プロセスユニット(18K,Y,M,C)は、感光体(40K,Y,M,C)と、その他の幾つかの装置とを1つのユニットとして共通の支持体に支持するものであり、プリンタ部100に対して着脱可能になっている。ブラック用のプロセスユニット18Kを例にすると、これは、感光体40Kの他、感光体40K表面に形成された静電潜像をブラックトナー像に現像するための現像手段たる現像ユニット61Kを有している。また、1次転写ニップを通過した後の感光体40K表面に付着している転写残トナーをクリーニングする感光体クリーニング装置63Kも有している。また、クリーニング後の感光体40K表面を除電する図示しない除電装置や、除電後の感光体40K表面を一様帯電せしめる図示しない帯電装置なども有している。他色用のプロセスユニット18Y,M,Cも、取り扱うトナーの色が異なる他は、ほぼ同様の構成になっている。本複写機では、これら4つのプロセスユニット18K,Y,M,Cを、中間転写ベルト10に対してその無端移動方向に沿って並べるように対向配設したいわゆるタンデム型の構成になっている。
【0022】
図3は、4つのプロセスユニット18K,Y,M,Cからなるタンデム部20の一部を示す部分拡大図である。なお、4つのプロセスユニット18K,Y,M,Cは、それぞれ使用するトナーの色が異なる他はほぼ同様の構成になっているので、同図においては各符号に付すK,Y,M,Cという添字を省略している。同図に示すように、プロセスユニット18は、感光体40の周りに、帯電手段としての帯電装置60、現像装置61、1次転写手段としての1次転写ローラ62、感光体クリーニング装置63、除電装置64等を備えている。
【0023】
感光体40としては、アルミニウム等の素管に、感光性を有する有機感光材を塗布し、感光層を形成したドラム状のものを用いている。但し、無端ベルト状のものを用いても良い。また、帯電装置60としては、帯電バイアスが印加される帯電ローラを感光体40に当接させながら回転させるものを用いている。感光体40に対して非接触で帯電処理を行うスコロトロンチャージャ等を用いてもよい。
【0024】
現像装置61は、磁性キャリアと非磁性トナーとを含有する二成分現像剤を用いて潜像を現像するようになっている。内部に収容している二成分現像剤を攪拌しながら搬送して現像スリーブ65に供給する攪拌部66と、現像スリーブ65に付着した二成分現像剤のうちのトナーを感光体4K,Y,M,Cに転移させる現像部67とを有している。
【0025】
攪拌部66は、現像部67よりも低い位置に設けられており、互いに平行配設された2本のスクリュウ68、これらスクリュウ間に設けられた仕切り板、現像ケース70の底面に設けられたトナー濃度センサ71などを有している。
【0026】
現像部67は、現像ケース70の開口を通して感光体40に対向する現像スリーブ65、これの内部に回転不能に設けられたマグネットローラ72、現像スリーブ65に先端を接近させるドクタブレード73などを有している。ドクタブレード73と現像スリーブ65との間の最接近部における間隔は500[μm]程度に設定されている。現像スリーブ65は、非磁性の回転可能なスリーブ状の形状になっている。また、現像スリーブ65に連れ回らないようにないようされるマグネットローラ72は、例えば、ドクタブレード73の箇所から現像スリーブ65の回転方向にN1、S1、N2、S2、S3の5磁極を有している。これら磁極は、それぞれスリーブ上の二成分現像剤に対して回転方向の所定位置で磁力を作用させる。これにより、攪拌部66から送られてくる二成分現像剤を現像スリーブ65表面に引き寄せて担持させるとともに、スリーブ表面上で磁力線に沿った磁気ブラシを形成する。
【0027】
磁気ブラシは、現像スリーブ65の回転に伴ってドクタブレード73との対向位置を通過する際に適正な層厚に規制されてから、感光体40に対向する現像領域に搬送される。そして、現像スリーブ65に印加される現像バイアスと、感光体40の静電潜像との電位差によって静電潜像上に転移して現像に寄与する。更に、現像スリーブ65の回転に伴って再び現像部67内に戻り、マグネットローラ72の磁極間の反発磁界の影響によってスリーブ表面から離脱した後、攪拌部66に戻される。攪拌部66内では、トナー濃度センサ71による検知結果に基づいて、二成分現像剤に適量のトナーが補給される。なお、現像装置61として、二成分現像剤を用いるものの代わりに、磁性キャリアを含まない一成分現像剤を用いるものを採用してもよい。
【0028】
感光体クリーニング装置63としては、ポリウレタンゴム製のクリーニングブレード75を感光体40に押し当てる方式のものを用いているが、他の方式のものを用いてもよい。クリーニング性を高める目的で、本例では、外周面を感光体40に接触させる接触導電性のファーブラシ76を、図中矢印方向に回転自在に有するクリーニング装置63を採用している。そして、ファーブラシ76にバイアスを印加する金属製電界ローラ77を図中矢示方向に回転自在に設け、その電界ローラ77にスクレーパ78の先端を押し当てている。スクレーパ78によって電界ローラ77から除去されたトナーは、回収スクリュ79上に落下して回収される。
【0029】
かかる構成の感光体クリーニング装置63は、感光体40に対してカウンタ方向に回転するファーブラシ76で、感光体40上の残留トナーを除去する。ファーブラシ76に付着したトナーは、ファーブラシ76に対してカウンタ方向に接触して回転するバイアスを印加された電界ローラ77に取り除かれる。電界ローラ77に付着したトナーは、スクレーパ78でクリーニングされる。感光体クリーニング装置63で回収したトナーは、回収スクリュ79で感光体クリーニング装置63の片側に寄せられ、トナーリサイクル装置80で現像装置61へと戻されて再利用される。
【0030】
除電装置64は、除電ランプ等からなり、光を照射して感光体40の表面電位を除去する。このようにして除電された感光体40の表面は、帯電装置60によって一様帯電せしめられた後、光書込処理がなされる。
【0031】
ベルトユニットの図中下方には、2次転写装置22が設けられている。この2次転写装置22は、2つのローラ23間に、2次転写ベルト24を掛け渡して無端移動させている。2つのローラ23のうち、一方は図示しない電源によって2次転写バイアスが印加される2次転写ローラとなっており、ベルトユニットのローラ16との間に中間転写ベルト10と2次転写ベルト24とを挟み込んでいる。これにより、両ベルトが当接しながら当接部で互いに同方向に移動する2次転写ニップが形成されている。レジストローラ対49からこの2次転写ニップに送り込まれた転写紙には、中間転写ベルト10上の4色重ね合わせトナー像が2次転写電界やニップ圧の影響で一括2次転写されて、フルカラー画像が形成される。2次転写ニップを通過した転写紙は、中間転写ベルト10から離間して、2次転写ベルト24の表面に保持されながら、ベルトの無端移動に伴って定着装置25へと搬送される。なお、2次転写ローラに代えて、転写チャージャ等によって2次転写を行わせるようにしてもよい。
【0032】
2次転写ニップを通過した中間転写ベルト10の表面は、支持ローラ15による支持位置にさしかかる。ここでは、中間転写ベルト10が、おもて面(ループ外面)に当接するベルトクリーニング装置17と、裏面に当接する支持ローラ15との間に挟み込まれる。そして、ベルトクリーニング装置17により、おもて面に付着している転写残トナーが除去された後、K,Y,M,C用の1次転写ニップに順次進入して、次の4色トナー像が重ね合わされる。
【0033】
ベルトクリーニング装置17は、2つのファーブラシ90,91を有している。これらは、複数の起毛をその植毛方向に対してカウンタ方向で中間転写ベルト10に当接させながら回転することで、ベルト上の転写残トナーを機械的に掻き取る。加えて、図示しない電源によってクリーニングバイアスが印加されることで、掻き取った転写残トナーを静電的に引き寄せて回収する。
【0034】
ファーブラシ90,91に対しては、それぞれ金属ローラ92,93が接触しながら、順または逆方向に回転している。これら金属ローラ92,93のうち、中間転写ベルト10の回転方向上流側に位置する金属ローラ92には、電源94によってマイナス極性の電圧が印加されている。また、下流側に位置する金属ローラ93には、電源95によってプラス極性の電圧が印加される。そして、それらの金属ローラ92,93には、それぞれブレード96,97の先端が当接している。かかる構成では、中間転写ベルト10の図中矢印方向への無端移動に伴って、まず、上流側のファーブラシ90が中間転写ベルト10表面をクリーニングする。このとき、例えば金属ローラ92に−700[V]が印加されながら、ファーブラシ90に−400[V]が印加されると、まず、中間転写ベルト10上のプラス極性のトナーがファーブラシ90側に静電転移する。そして、ファーブラシ側に転移したトナーが更に電位差によってファーブラシ90から金属ローラ92に転移して、ブレード96によって掻き落とされる。
【0035】
このように、ファーブラシ90で中間転写ベルト10上のトナーが除去されるが、中間転写ベルト10上にはまだ多くのトナーが残っている。それらのトナーは、ファーブラシ90に印加されるマイナス極性のバイアスにより、マイナスに帯電される。これは、電荷注入または放電により帯電されるものと考えられる。次いで下流側のファーブラシ91を用いて今度はプラス極性のバイアスを印加してクリーニングを行うことにより、それらのトナーを除去することができる。除去したトナーは、電位差によりファーブラシ91から金属ローラ93に転移させ、ブレード97により掻き落とす。ブレード96、97で掻き落としたトナーは、不図示のタンクに回収される。
【0036】
ファーブラシ91でクリーニングされた後の中間転写ベルト10表面は、ほとんどのトナーが除去されているがまだ少しのトナーが残っている。これらの中間転写ベルト10上に残ったトナーは、上述したようにファーブラシ91に印加されるプラス極性のバイアスにより、プラス極性に帯電される。そして、1次転写位置で印加される転写電界によって感光体40K,Y,M,C側に転写され、感光体クリーニング装置63で回収される。
【0037】
レジストローラ対49は一般的には接地されて使用されることが多いが、転写紙Pの紙粉除去のためにバイアスを印加することも可能である。
【0038】
2次転写装置22および定着装置25の下には、上述したタンデム部20と平行に延びるような、転写紙反転装置28(図1参照)が設けられている。これにより、片面に対する画像定着処理を終えた転写紙が、切換爪で転写紙の進路を転写紙反転装置側に切り換えられ、そこで反転されて再び2次転写転写ニップに進入する。そして、もう片面にも画像の2次転写処理と定着処理とが施された後、排紙トレイ上に排紙される。
【0039】
以上の構成の複写機においては、各プロセスユニット18K,Y,M,C、2次転写装置22、露光装置21等により、記録体たる転写紙に画像を形成する画像形成手段が構成されている。
【0040】
この複写機の部品の一部は、実施形態に係る保守支援装置の情報取得手段として機能している。この情報取得手段は、図4に示される制御部1、各種センサ2、操作表示部3などから構成されるものである。制御部1は、複写機全体の制御を司る制御手段であり、制御プログラムを記憶している情報記憶手段たるROM1c、演算データや制御パラメータ等を記憶する情報記憶手段たるRAM1b、演算手段たるCPU1a、情報記憶手段たる不揮発性RAM1d等を有している。操作表示部3は、文字情報等を表示する液晶ディスプレイ等から構成される表示部3aや、テンキー等などによって操作者から入力情報を受け付けて制御部1cに送る操作部3bなどを有している。
【0041】
制御部1等からなる情報取得手段は、複写機を構成する感光体や帯電装置などの種々の部品それぞれについて、交換時期が到来したか否かを判定するのに有用な情報である判定有用情報を取得する。判定有用情報としては、センシング情報、制御パラメータ情報、入力情報、画像読取情報などが挙げられる。以下、これらの情報について詳述する。
【0042】
(a)センシング情報
センシング情報としては、駆動関係、記録媒体の各種特性、現像剤特性、感光体特性、電子写真の各種プロセス状態、環境条件、記録物の各種特性などが取得する対象として考えられる。これらのセンシング情報の概要を説明すると、以下のようになる。
【0043】
(a−1)駆動の情報
・感光体ドラムの回転速度をエンコーダーで検出したり、駆動モータの電流値を読み取ったり、駆動モータの温度を読み取る。
・同様にして、定着ローラ、紙搬送ローラ、駆動ローラなどの円筒状またはベルト状の回転する部品の駆動状態を検出する。
・駆動により発生する音を装置内部または外部に設置されたマイクロフォンで検出する。
【0044】
(a−2)紙搬送の状態
・透過型または反射型の光センサ、あるいは接触タイプのセンサにより、搬送された紙の先端や後端の位置を読み取り、紙詰まりが発生したことを検出したり、紙の先端や後端の通過タイミングのずれ、送り方向と垂直な方向の変動などを読み取る。
・同様に、複数のセンサ間の検出タイミングにより、紙の移動速度を求める。
・給紙時の給紙ローラと紙とのスリップを、ローラの回転数計測値と紙の移動量との比較で求める。
【0045】
(a−3)紙などの記録媒体の各種特性
この情報は、画質やシート搬送の安定性に大きく影響する。この紙種の情報取得には以下のような方法がある。
・紙の厚みは、紙を二つのローラで挟み、ローラの相対的な位置変位を光学センサ等で検知したり、紙が進入してくることによって押し上げられる部材の移動量と同等の変位量を検知することによって求める。
・紙の表面粗さは、転写前の紙の表面にガイド等を接触させ、その接触によって生じる振動や摺動音等を検知する。
・紙の光沢は、規定された入射角で規定の開き角の光束を入射し、鏡面反射方向に反射する規定の開き角の光束をセンサで測定する。
・紙の剛性は、押圧された紙の変形量(湾曲量)を検知することにより求める。
・再生紙か否かの判断は、紙に紫外線を照射してその透過率を検出して行なう。
・裏紙か否かの判断は、LEDアレイ等の線状光源から光を照射し、転写面から反射した光をCCD等の固体撮像素子で検出して行なう。
・OHP用のシートか否かは、用紙に光を照射し、透過光と角度の異なる正反射光を検出して判断する。
・紙に含まれている水分量は、赤外線またはμ波の光の吸収を測定することにより求める。
・カール量は光センサ、接触センサなどで検出する。
・紙の電気抵抗は、一対の電極(給紙ローラなど)を記録紙と接触させて直接測定したり、紙転写後の感光体や中間転写体の表面電位を測定して、その値から記録紙の抵抗値を推定する。
【0046】
(a−4)現像剤特性
現像剤(トナーやキャリア)の装置内での特性は、電子写真プロセスの機能の根幹に影響するものである。そのため、システムの動作や出力にとって重要な因子となる。現像剤の情報を得ることは極めて重要である。この現像剤特性としては、例えば次のような項目が挙げられる。
・トナーについては、帯電量およびその分布、流動性、凝集度、嵩密度、電気抵抗、外添剤量、消費量または残量、流動性、トナー濃度(トナーとキャリアの混合比)を挙げることができる。
・キャリアについては、磁気特性、コート膜厚、スペント量などを挙げることができる。
これらの情報を画像形成装置の中で単独で検出することは通常困難である。そこで、現像剤の総合的な特性として検出すると良い。この現像剤の総合的な特性は、例えば次のように測定することができる。
・感光体上にテスト用潜像を形成し、予め決められた現像条件で現像して、形成されたトナー像の反射濃度(光反射率)を測定する。
・現像装置中に一対の電極を設け、印加電圧と電流の関係を測定する(抵抗、誘電率など)。
・現像装置中にコイルを設け、電圧電流特性を測定する(インダクタンス)。
・現像装置中にレベルセンサを設けて、現像剤容量を検出する。レベルセンサは光学式、静電容量式などがある。
【0047】
(a−5)感光体特性
感光体特性も現像剤特性と同じく、電子写真プロセスの機能と密接に関わる。この感光体特性の情報としては、感光体の膜厚、表面特性(摩擦係数、凹凸)、表面電位(各プロセス前後)、表面エネルギー、散乱光、温度、色、表面位置(フレ)、線速度、電位減衰速度、電気抵抗、静電容量、表面水分量などが挙げられる。このうち、画像形成装置の中では、次のような情報を検出できる。
・膜厚変化に伴う静電容量の変化を、帯電部材から感光体に流れる電流を検知し、同時に帯電部材への印加電圧と予め設定された感光体の誘電厚みに対する電圧電流特性と照合することにより、膜厚を求める。
・表面電位、温度は従来周知のセンサで求めることができる。
・線速度は感光体回転軸に取り付けられたエンコーダーなどで検出される。
・感光体表面からの散乱光は光センサで検出される。
【0048】
(a−6)電子写真プロセス状態
電子写真方式によるトナー像形成は、周知のように、感光体の均一帯電、レーザー光などによる潜像形成(像露光)、電荷を持ったトナー(着色粒子)による現像、転写材へのトナー像の転写(カラーの場合は中間転写体または最終転写材である記録媒体での重ね合わせ、または現像時に感光体への重ね現像を行なう)、記録媒体へのトナー像の定着という順序で行なわれる。これらの各段階での様々な情報は、画像その他のシステムの出力に大きく影響を与える。これらを取得することがシステムの安定を評価する上で重要となる。この電子写真プロセス状態の情報取得の具体例としては、次のようなものが挙げられる。
・帯電電位、露光部電位は従来公知の表面電位センサにより検出される。
・非接触帯電における帯電部材と感光体とのギャップは、ギャップを通過させた光の量を測定することにより検知する。
・帯電による電磁波は広帯域アンテナにより捉える。
・帯電による発生音。
・露光強度。
・露光光波長。
【0049】
また、トナー像の様々な状態を取得すること方法としては、次のようなものが挙げられる。
・パイルハイト(トナー像の高さ)を、変位センサで縦方向から奥行きを、平行光のリニアセンサで横方向から遮光長を計測して求める。
・トナー帯電量を、ベタ部の静電潜像の電位、その潜像が現像された状態での電位を測定する電位センサにより測定し、同じ箇所の反射濃度センサから換算した付着量との比により求める。
・ドット揺らぎまたはチリを、ドットパターン画像を感光体上においては赤外光のエリアセンサ、中間転写体上においては各色に応じた波長のエリアセンサで検知し、適当な処理をすることにより求める。
・オフセット量(定着後)を、記録紙上と定着ローラ上の対応する場所をそれぞれ光学センサで読み取って、両者比較することにより求める。
・転写工程後(PD上,ベルト上)に光学センサを設置し,特定パターンの転写後の転写残パターンからの反射光量で転写残量を判断する。
・重ね合わせ時の色ムラを定着後の記録紙上を検知するフルカラーセンサで検知する。
【0050】
(a−7)形成されたトナー像の特性
・画像濃度、色は光学的に検知する。反射光、透過光のいずれでもよい。色に応じて投光波長を選択すればよい。濃度及び単色情報を得るには感光体上または中間転写体上でよいが、色ムラなど,色のコンビネーションを測るには紙上の必要がある。
・階調性は、階調レベルごとに感光体上に形成されたトナー像または転写体に転写されたトナー像の反射濃度を光学センサにより検出する。
・鮮鋭性は、スポット径の小さい単眼センサ、若しくは高解像度のラインセンサを用いて、ライン繰り返しパターンを現像または転写した画像を読み取ることにより求める。
・粒状性(ざらつき感)は、鮮鋭性の検出と同じ方法により、ハーフトーン画像を読み取り、ノイズ成分を算出することにより求める。
・レジストスキューは、レジスト後の主走査方向両端に光学センサを設け、レジストローラONタイミングと両センサの検知タイミングとの差異から求める。
・色ずれは、中間転写体または記録紙上の重ね合わせ画像のエッジ部を、単眼の小径スポットセンサ若しくは高解像度ラインセンサで検知する。
・バンディング(送り方向の濃度むら)は、記録紙上で小径スポットセンサ若しくは高解像度ラインセンサにより副走査方向の濃度ムラを測定し、特定周波数の信号量を計測する。
・光沢度(むら)は、均一画像が形成された記録紙を正反射式光学センサで検知するように設ける。
・かぶりは、感光体上、中間転写体上、または記録紙上において、比較的広範囲の領域を検知する光学センサで画像背景部を読み取る方法、または高解像度のエリアセンサで背景部のエリアごと画像情報を取得し、その画像に含まれるトナー粒子数を数えるという方法がある。
【0051】
(a−8)画像形成装置のプリント物の物理的な特性
・像流れや画像かすれなどは、感光体上、中間転写体、あるいは記録紙上でトナー像をエリアセンサにより検知し、取得した画像情報を画像処理して判定する。
・トナーチリ汚れは記録紙上の画像を高解像度ラインセンサまたはエリアセンサで取り込み、パターン部の周辺に散っているトナー量を算定することにより求める。
・後端白抜け、ベタクロス白抜けは、感光体上、中間転写体、あるいは記録紙上で高解像度ラインセンサにより検知する。
・記録紙のカール、波打ち、折れは、変位センサで検出する。折れの検出のためには記録紙の両端部分に近い所にセンサを設置することが有効である。
・コバ面の汚れやキズは、排紙トレイに縦に設けたエリアセンサにより,ある程度排紙が溜まった時のコバ面をエリアセンサで撮影,解析する。
【0052】
(a−9)環境状態
・温度検出には、異種金属どうし或いは金属と半導体どうしを接合した接点に発生する熱起電力を信号として取り出す熱電対方式、金属或いは半導体の抵抗率が温度によって変化することを利用した抵抗率変化素子、また、或る種の結晶では温度が上昇したことにより結晶内の電荷の配置に偏りが生じ表面に電位発生する焦電型素子、更には、温度による磁気特性の変化を検出する熱磁気効果素子などを採用することができる。
・湿度検出には、H2O或いはOH基の光吸収を測定する光学的測定法、水蒸気の吸着による材料の電気抵抗値変化を測定する湿度センサ等がある。
・各種ガスは、基本的にはガスの吸着に伴う、酸化物半導体の電気抵抗の変化を測定することにより検出する。
・気流(方向、流速、ガス種)の検出には、光学的測定法等があるが、システムへの搭載を考慮するとより小型にできるエアブリッジ型フローセンサが特に有用である。
・気圧、圧力の検出には、感圧材料を使用する、メンブレンの機械的変位を測定する等の方法がある。振動の検出にも同様に方法が用いられる。
【0053】
(b)制御パラメータ情報
画像形成装置の動作は制御部によって決定されるため、制御部の入出力パラメータを直接利用することが有効である。
【0054】
(b−1)画像形成パラメータ
画像形成のために制御部が演算処理により出力する直接的なパラメータで、以下のような例がある。
・制御部によるプロセス条件の設定値で、例えば帯電電位、現像バイアス値、定着温度設定値など。
・同じく、中間調処理やカラー補正などの各種画像処理パラメータの設定値。
・制御部が装置の動作のために設定する各種のパラメータで、例えば紙搬送のタイミング、画像形成前の準備モードの実行時間など。
【0055】
(b−2)ユーザー操作履歴
・色数、枚数、画質指示など、ユーザーにより選択された各種操作の頻度
・ユーザーが選択した用紙サイズの頻度。
【0056】
(b−3)消費電力
・全期間または特定期間単位(1日、1週間、1ヶ月など)の総合消費電力あるいはその分布、変化量(微分)、累積値(積分)など。
【0057】
(b−4)消耗品消費情報
・全期間または特定期間単位(1日、1週間、1ヶ月など)のトナー、感光体、紙の使用量あるいはその分布、変化量(微分)、累積値(積分)など。
【0058】
(b−5)故障発生情報
・全期間または特定期間単位(1日、1週間、1ヶ月など)の故障発生(種類別)の頻度あるいはその分布、変化量(微分)、累積値(積分)など。
【0059】
(b−6)累積動作時間情報
・制御部1は、プロセスユニット、中間転写ベルト10、各種ローラ、ベルトクリーニング装置17、定着装置25などの各種部品それぞれについて、累積動作時間を計測して不揮発性RAM1d内に記憶している。なお、各色のプロセスユニット18K,Y,C,Mは、プロセスユニットの状態で複写機本体に対して着脱するようになっているが、複写機本体から取り外した状態で、現像ユニットと、帯電装置と、それ以外の部位を保持する感光体ユニットとに分解することができる。部品の交換については、プロセスユニット全体ではなく、現像ユニット、帯電装置、感光体ユニットの形態で交換することができる。このため、累積動作時間については、プロセスユニット全体としてではなく、現像ユニットと帯電装置と感光体ユニットとをそれぞれ別々に計測している。また、累積動作時間としては、累積プリント枚数をカウントしている。プリント1枚分の動作を行う毎に、累積プリント枚数のカウント値を1ずつカウントアップしている。
【0060】
(c)入力画像情報
ホストコンピュータから直接データとして送られる画像情報、あるいは原稿画像からスキャナーで読み取って画像処理をした後に得られる画像情報から、以下のような情報を取得することができる。
・着色画素累積数はGRB信号別の画像データを画素ごとにカウントすることにより求められる。
・例えば特許第2621879号の公報に記載されているような方法でオリジナル画像を文字、網点、写真、背景に分離し、文字部、ハーフトーン部などの比率を求めることができる。同様にして色文字の比率も求めることができる。
・着色画素の累積値を主走査方向で区切った領域別にカウントすることにより、主走査方向のトナー消費分布が求められる。
・画像サイズは制御部が発生する画像サイズ信号または画像データでの着色画素の分布により求められる。
・文字の種類(大きさ、フォント)は文字の属性データから求められる。
【0061】
次に、複写機における各種情報の具体的取得法について説明する。
(1)温度
本複写機は、温度の情報を取得する温度センサとして、原理及び構造が簡単でしかも超小型にできる抵抗変化素子を用いるものを備えている。
【0062】
(2)湿度
小型にできる湿度センサが有用である。基本原理は感湿性セラミックスに水蒸気が吸着すると、吸着水によりイオン伝導が増加しセラミックスの電気抵抗が低下することによる。感湿性セラミックスの材料は多孔質材料であり、一般的にはアルミナ系、アパタイト系、ZrO2−MgO系などが使用される。
【0063】
(3)振動
振動センサは、基本的には気圧及び圧力を測定するセンサと同じであり、システムへの搭載を考慮すると超小型にできるシリコン利用のセンサが特に有用である。薄いシリコンのダイアフラム上に作製した振動子の運動を、振動子と対向して設けられた対向電極間との容量変化を計測する、或いはSiダイアフラム自体のピエゾ抵抗効果を利用して計測することができる。
【0064】
(4)トナー濃度(4色分)
各色ごとにトナー濃度を検出する。トナー濃度センサとしては従来より公知の方式のものを用いることができる。例えば、特開平6−289717号公報に記載されているような現像装置中の現像剤の透磁率の変化を測定するセンシングシステムにより、トナー濃度を検出することができる。
【0065】
(5)感光体一様帯電電位(4色分)
各色用の感光体(40K,Y,M,C)について、それぞれ一様帯電電位を検出する。物体の表面電位を検知する公知の表面電位センサを用いることができる。
【0066】
(6)感光体露光後電位(4色分)
光書込後の感光体(40K,Y,M,C)の表面電位を、(5)と同様にして検出する。
【0067】
(7)着色面積率(4色分)
入力画像情報から、着色しようとする画素の累計値と全画素の累計値の比から着色面積率を色ごとに求め、これを利用する。
【0068】
(8)現像トナー量(4色分)
感光体(40K,Y,M,C)上で現像された各色トナー像における単位面積あたりのトナー付着量を、反射型フォトセンサによる光反射率に基づいて求める。反射型フォトセンサは対象物にLED光を照射し、反射光を受光素子で検出するものである。トナー付着量と光反射率とには相関関係が成立するため、光反射率に基づいてトナー付着量を求めることができる。
【0069】
(9)紙先端位置の傾き
給紙部(200)の給紙ローラから2次転写ニップに至る給紙経路のどこかに、転写紙をその搬送方向に直交する方向の両端で検知する光センサ対を設置し、搬送されてくる転写紙の先端付近の両端を検出する。両光センサについて、給紙ローラの駆動信号の発信時を基準として、通過までの時間を計測し、時間のズレに基づいて送り方向に対する転写紙の傾きを求める。
【0070】
(10)排紙タイミング
排出ローラ対(図1の56)を通過後の転写紙を光センサで検出する。この場合も給紙ローラの駆動信号の発信時を基準として計測する。
【0071】
(11)感光体総電流(4色分)
感光体(40K,Y,M,C)からアースに流れ出る電流を検出する。感光体の基板と接地端子との間に、電流測定手段を設けることで、かかる電流を検出することができる。
【0072】
(12)感光体駆動電力(4色分)
感光体の駆動源(モータ)が駆動中に費やす駆動電力(電流×電圧)を電流計や電圧計などによって検出する。
【0073】
制御部1は、以上のような各種の判定有用情報を定期的にサンプリングして不揮発性RAM1dに記憶する。そして、不揮発性RAM1d内に記憶した各種の判定有用情報に基づいて、各種の部品について、交換時期が到来したか否かを判定する判定処理を実施し、交換時期が到来していると判定した場合には、その部品の交換を促すメッセージを操作表示部3に表示させる。
【0074】
交換時期が到来したか否かの判定については、定期保守判定と、故障予測判定との2種類を行うようになっている。定期保守判定は、累積動作時間としての累積プリント枚数が所定の上限枚数に達したときを交換時期の到来とする判定方法である。各種の部品それぞれについて、交換指標値としての累積プリント枚数を算出し、上限枚数から累積プリント枚数を減じた値を残寿命枚数として求める。この残寿命枚数がゼロになったときを、交換時期の到来とする。なお、残寿命枚数についてゼロになっているか否かを判定するのではなく、累積プリント枚数について上限枚数になっているか否かを判定してもよい。
【0075】
故障予測判定は、各種の部品それぞれについて、もうすぐ故障を発生させそうな状態にあるか否かを予測するための予測指標値を、複数の判定有用情報を多変量解析することによって算出し、その算出結果に基づいて、交換時期が到来したか否かを判定する方法である。予測指標値としては、特許文献1に記載のプリンタのように、マハラノビス距離を例示することができる。各種の部品それぞれについて、その劣化を判定するのに適した判定有用情報を複数サンプリングし、それらの判定有用情報の組合せを用いてマハラノビス距離を求める。その結果について閾値よりも大きいか否かをみることで、もうすぐ故障を発生させそうな状態にあるか否かを判定することが可能である。また、次のようにして予測指標値を求めてもよい。即ち、各種の判定有用情報やそれらを正規化したデータなどそれぞれについて、正常であるか否かの弱判別(正常である場合には「1」、正常でない場合には「−1」)を行い、その結果に対し、ブースティング法という教師付き学習アルゴリズムによって求めた重み付け値を乗じた値を、個々の部品について求める。そして、それら弱判別の結果を合計した値を、予測指標値とする。
【0076】
図5は、従来の画像形成装置の操作表示部3における交換催促用の画面を示す模式図である。操作表示部3は、タッチパネルからなるタッチ表示部3aと、テンキー等からなるキー操作部3bとを具備している。従来の画像形成装置では、定期保守判定や故障予測判定において、例えばK用の感光体について交換時期が到来したと判断した場合、図示のように、K用の感光体の交換を促すメッセージを操作表示部3に表示していた。このメッセージに従ったユーザーは、K用の感光体を交換すると、それまでの累積プリント枚数をゼロにリセットするための操作を行う。具体的には、キー操作部3bのメニューキーを押して図6に示すようなメニュー画面を表示させる。そして、メニュー画面に表示される複数のボタンのうち、カウントクリアボタンを図中矢印のように指でタップ(タッチ操作)する。これにより、図7に示すようなカウント値一覧画面をタッチ表示部3aに表示させたら、K用の感光体のカウント値が画面に表示されるように、必要に応じて画面をスクロールさせる。そして、図8に示すように、K用の感光体のカウント値(累積プリント枚数カウント値)に対応するクリアボタンを指でタップして、そのカウント値をゼロにリセットする。
【0077】
このような従来の画像形成装置においては、図5に示したようにK用の感光体の交換を促したときに、例えばK用の帯電装置の交換時期到来がかなり近づいていたとしても、ユーザーはそのことを知ることができなかった。このため、K用のプロセスユニットを画像形成装置本体から取り外したときに、そのプロセスユニットの感光体だけを交換するに留まっていた。すると、ごく短期間の後に、K用の帯電装置の交換を促すメッセージが表示される。そして、帯電装置を交換するために、K用のプロセスユニットを着脱するという前回と同じ作業を強いられていた。
【0078】
また、カウント値をリセットする際には、図7に示したように、画面に複数表示されるカウント値の中から、交換部品に対応するものを探しながら、そのカウント値をリセットしなければならず、この作業が非常に煩雑であった。更には、交換した部品とは別の部品のカウント値を誤ってリセットしてしまうこともあった。
【0079】
次に、実施形態に係る複写機の特徴的な構成について説明する。
本複写機においては、上述したように、各種部品ぞれぞれについて、交換時期が到来したか否かを、定期保守判定と故障予測判定との2通りで判定するようになっている。制御部1は、何れか一方の判定法で交換時期が到来したという判定結果になった場合には、その部品の交換を促すメッセージを操作表示部3に表示させる。
【0080】
図9は、実施形態に係る複写機の操作表示部3における交換催促用の画面を示す模式図である。K用の感光体について交換時期が到来したという判定結果になった場合、制御部1は、従来と同様に、K用の感光体について寿命が到来した旨のメッセージを表示させる。同時に、K用の感光体と同時に交換した方がよい部品がないかの確認作業を促すメッセージも表示させる。そして、ユーザーによって画面のOKボタンがタップされると、図10に示すように、K用の感光体以外の部品についての交換指標値たる残寿命の一覧をタッチ表示部3aに表示させる。ユーザーは、K用の感光体以外の各種部品について、画面に表示される残寿命に基づいて同時交換した方がよいか否かをそれぞれ判断する。同図では、定期保守判定によってK用の感光体における交換時期の到来が検知された例を示しているので、K用の感光体の残寿命はゼロになっている。ユーザーは、各種の部品それぞれについて、画面に表示される残寿命に基づいて、同時交換した方がよいか否かを費用対効果の観点から容易に判断することができる。そして、同時交換した方がよいと判断した部品については、その残寿命の横に表示されている「同時交換する」というボタンをタップすることで、制御部1に対して、同時交換する旨を認識させる。図示の例では、K用の帯電装置の残寿命が殆ど無いので、同時交換した方がよいことを容易に認識することができる。以下、ユーザーが、K用の帯電装置について「同時交換する」ことを選択した例を説明する。
【0081】
ユーザーは、図10に示される画面表示での確認作業を終えると、キー操作部3bのOKキーを押す。すると、制御部1は、図11に示すように、K用の感光体以外の部品についての交換指標値たるコンディション値の一覧をタッチ表示部3aに表示させる。コンディション値は、各種部品それぞれについて、上述した故障予測判定で算出された交換指標値としての予測指標値そのもの、あるいは予測指標値をユーザーに分かり易い形式に変換した値である。例えば、予測指標値として、上述した弱判別の値の合計値を採用したとする。この予測指標値は、プラス極性である場合には、数字が大きくなるほど、部品のコンディションが良好であることを示す。また、マイナス極性である場合には、もうすぐ故障が発生することを示し、且つ数字が大きくなるほど故障の発生する可能性が高いことを示す。このため、予測指標値がプラス極性からマイナス極性に転じた時点が交換時期であると判断される。同図では、このような予測指標値を採用し、その値をそのままコンディション値として表示している例を示している。ユーザーは、各種の部品それぞれについて、画面に表示されるコンディション値に基づいて、費用対効果の観点から、同時交換した方がよいか否かを容易に判断することができる。例えば、K用の感光体や、K用の帯電装置は、コンディション値(予測指標値)が1であることから、非常に悪いコンディションになっていることがわかる。但し、それらの部品は既に交換することが決まっているため、それらの部品についての「同時交換する」ボタンは表示されていない。その他の部品のうち、Y用の帯電装置やY用の感光体は、コンディション値がプラス極性で且つ比較的大きな値であることから、良好なコンディションであり、交換の必要がないことがわかる。また、C用の帯電装置のコンディション値は「2」であることから、C用の帯電装置のコンディションについて、悪くなってきていることがわかる。以下、ユーザーがコンディション値に基づいてC用の帯電装置について「同時交換する」ことを選択した例を説明する。
【0082】
ユーザーは、K用の感光体、K用の帯電装置、及びC用の帯電装置をそれぞれ交換すると、従来と同様のメニュー操作により、カウント値一覧画面をタッチ表示部3aに表示させる。図12は、実施形態に係る複写機におけるカウント値一覧画面の一例を示す模式図である。このカウント値一覧画面においては、先に示した図7との比較からわかるように、次の点が従来と異なっている。即ち、全ての部品のうち、定期保守判定や故障予測判定にて交換時期が到来したと判定された部品、及び、同時交換の実施がユーザーによって選択された部品、についてだけ、カウント値をクリアするためのクリアボタンが表示される点である。このため、交換していない部品のカウント値を誤ってリセットしてしまうという誤操作の発生を回避することができる。
【0083】
制御部1は、クリアボタンがタッチされた部品については、カウント値をゼロにリセットすることに加えて、不揮発性RAM1dに記憶していた複数の判定有用情報のうち、その部品だけに特有のものを不揮発性RAM1d内から消去する。また、制御部1は、不揮発性RAM1d内に、制御パラメータとして自動発注実行フラグを記憶している。この自動発注実行フラグは、ユーザーがメニュー画面から立ち上げた各種設定画面を表示することによって、オンに設定したり、オフに設定したりすることができる。交換した部品の自動発注を希望するユーザーは、自動発注実行フラグをオンに設定しておく。制御部1は、交換作業を終えたユーザーがクリアボタンを押した部品については、所定の発注先に自動発注する処理を実行する。具体的には、不揮発性RAM1d内には、部品発注用紙フォーム画像情報や、各種部品それぞれについて発注文字画像情報が予め記憶されている。
【0084】
部品発注用紙フォーム画像情報は、例えば、図13に示すような発注用紙フォームの画像を表示するための情報であり、ビットマップ形式で構築されている。発注先の業者の名称を示す文字画像、発注者であるユーザーの名称や連絡先を示す文字画像、部品の発送を依頼するための文字画像などの文字画像情報が含まれている。また、発注文字画像情報は、例えば図14に示すように、部品の名称や型番などを示す文字画像情報である。
【0085】
制御部1は、ユーザーによるキー操作に基づいてカウント値一覧画面の表示を終了すると、図13に示した部品発注用紙フォーム画像と、カウント値がクリアされた部品の発注文字画像とを合成した合成画像情報を構築する。例えが図15に示すような合成画像を表示するための情報である。そして、この合成画像情報を、モデム500を介して、予め登録されている発注先の電話番号にFAX送信する。このFAX送信により、交換された部品を自動発注する。
【0086】
以上の構成の複写機においては、制御部1等からなる保守支援装置を搭載している。この保守支援装置においては、制御部1が、種々の部品それぞれについて、判定有用情報に基づいて交換の必要性を示す交換指標値たる累積プリント枚数(カウント値)や予測指標値を算出する指標値算出手段として機能している。また、種々の部品それぞれについて、カウント値や予測指標値に基づいて交換時期が到来したか否かを判定する判定手段としても機能している。また、制御部1と操作表示部3との組合せが、交換時期が到来したと判定された部品について、ユーザーに対して交換を促す情報である交換要求情報(交換して下さいという表示)を提供する情報提供手段として機能している。また、交換時期が到来したと判定された部品について、ユーザーに対して交換作業を終えたか否かの問い合わせを行いながらユーザーからの交換作業終了情報たるクリアボタンのタップ操作を受け付ける受付手段としても機能している。更に、制御部1は、交換作業終了情報に対応する部品の判定有用情報たるカウント値を初期化する情報初期化手段や、交換作業終了情報に対応する部品を自動で発注する発注手段としても機能している。
【0087】
図16は、変形例に係る保守支援装置の一部を搭載した複写機と、同保守支援装置の一部として機能する監視装置とを示す構成図である。同図に示されている複数の複写機は、それぞれ互いに異なるユーザーのもとに置かれているものである。変形例に係る保守支援装置では、それぞれの複写機に搭載されている制御部、各種センサ、操作表示部などが、判定有用情報を取得する情報取得手段、交換作業終了情報(カウンタクリア)を受け付ける受付手段、カウント値をクリア(初期化)する情報初期化手段などとしてそれぞれ機能している。また、交換指標値たるカウント値を算出する指標値算出手段、カウント値に基づいて交換時期が到来したか否かを判定する判定手段、ユーザーに対して交換を促す情報である交換要求情報を提供する情報提供手段などとしても機能している。また、各複写機のモデムは、後述する監視装置900と電話回線を介して通信する通信手段として機能している。
【0088】
複数の複写機はそれぞれ、実施形態に係る複写機と同様にして、各種部品について、カウント値に基づいて残寿命を算出し、その結果に基づいて交換時期に達したか否かを判定する定期保守判定を行う。そして、定期保守判定にて、何らかの部品について交換時期に達したと判断した場合には、その部品の交換を促すメッセージを操作表示部3に表示する。また、実施形態に係る複写機と同様にして、他の部品について残寿命の一覧や、同時交換するか否かのボタンを表示したり、ユーザーの操作に基づいてカウント値をリセットしたりする。
【0089】
複数の複写機は、それぞれ電話回線を介して、監視装置900に接続されている。この監視装置900は、各ユーザーと複写機の保守管理契約を結んでいる管理業者のもとに置かれている。そして、交換指標値たる予測指標値を算出する指標値算出手段、予測指標値に基づいて交換時期の到来の有無を判定する判定手段などとして機能している。変形例に係る保守支援装置では、故障予測判定については、複写機の制御部ではなく、監視装置900が実施してその結果を、電話回線を介して各複写機に送信するようになっている。
【0090】
また、複数の複写機はそれぞれ、部品のカウント値がリセットされると、その部品についての自動発注を自らが行う代わりに、リセットされた旨の情報を、電話回線を通じて監視装置900に送信する。その情報を受信した監視装置900は、予め登録差されている顧客情報データに基づいて、その情報に対応する部品をユーザーの代わりにEメールで業者に自動発注する。
【0091】
複数の複写機はそれぞれ、1日1回など、予め定められた定期的なタイミングで、電話回線を介して監視装置900と通信する。そして、不揮発性RAM1d内に記憶している各種の判定有用情報を監視装置900に送る。また、監視装置900によって算出された各種部品についてのコンディション値を受信して不揮発性RAM1d内に記憶する。そして、図11に示したコンディション値の一覧を表示する際には、不揮発性RAM1d内に記憶している各コンディション値を利用する。
【0092】
図17は、監視装置900にインストールされている故障予測ソフトウエアによって実現されるソフトウエア回路910を示すブロック図である。このソフトウエア回路910は、故障予測装置として機能する。ユーザーのもとに置かれている各複写機から電話回線を介して送られてくる判定有用情報は、通信手段としてのモデム911を介して監視データ通知受信部912に受信される。そして、データ特徴量計算部913により、必要に応じて正規化などの特徴量変換処理が施された後、それぞれ専用の弱判定部(例えば915〜917)に送られて、正常か否かの弱判別が行われる。それぞれの弱判別に対しては、判別基準データベースから固有の重み付け値が送信される。この重み付け値は、ブースティング法を利用した機械学習によって算出されたものである。各弱判別部は、弱判別の結果に重み付け値を乗じた結果を、予測指標値算出部918に出力する。予測指標値算出部918は、各種の部品それぞれについて、複数の弱判別部から送られてくる判別値を累積して予測指標値を算出した後、結果をアラーム発信部920に送信する。アラーム発信部920は、予測指標値算出部918から送られてくる予測指標値のうち、マイナス極性のものがあった場合、その予測指標値に対応する部品について、交換時期が到来したことを知らせるためのアラーム信号を、モデム911を介して、その部品を所有しているユーザーの複写機に送信する。このアラーム信号を受け取った複写機は、その部品について交換を促すメッセージを表示する。なお、アラーム発信部920は、複写機が定期通信してきた際に、その複写機に対して各種部品の現時点での予測指標値を送信する役割もになっている。
【0093】
かかる構成においては、複雑な演算が必要になる故障予測判定については、各複写機の制御部の代わりに、監視装置900が行うことで、各複写機の制御部の演算負荷を減らすことができる。
【0094】
以上、実施形態に係る保守支援装置においては、ユーザーに対して、部品の交換を促すメッセージ(交換要求情報)に加えて、交換時期が到来していない複数の部品それぞれについて交換指標値である残寿命やコンディション値を表示してそれらの情報をユーザーに提供するように、情報提供手段たる制御部1及び操作表示部3の組合せを構成している。かかる構成では、既に説明したように、残寿命やコンディション値により、交換時期の到来までの残期間をユーザーに把握してもらって、同時交換した方がよいか否かを判断してもらうことができる。
【0095】
また、実施形態に係る保守支援装置においては、判定手段たる制御部1によって交換時期が到来したと判定された部品と、同時交換された部品とについてのみ、ユーザーに対して交換作業を終えたか否かの問い合わせを行いながらユーザーからの交換作業終了情報を受け付ける画面表示を行うように、受付手段たる制御部1及び操作表示部3の組合せを構成している。そして、交換作業終了情報が受け付けられたことに基づいて、その交換作業終了情報に対応する部品のカウント値(判定有用情報)をリセットするように、情報初期化手段としての制御部1を構成している。かかる構成では、既に説明したように、交換していない部品のカウント値を誤ってリセットしてしまうという誤操作の発生を回避することができる。
【0096】
また、実施形態に係る保守支援装置においては、交換時期が到来したと判定されていない複数の部品のうち、交換時期が到来したと判定された部品と同時に交換するものがある場合に、その部品の情報を追加交換部品情報たる同時交換情報としてユーザーに入力してもらう入力手段として、制御部1及び操作表示部3を機能させている。そして、交換時期が到来したと判定された部品に加えて、同時交換情報に対応する部品についても、交換作業終了情報(カウントリセット命令)を受け付けるように、受付手段たる制御部1や操作表示部3を構成している。かかる構成においては、交換時期が到来したと判定した部品についてだけでなく、ユーザーによって同時交換すると決定された部品についても、その交換作業の終了を把握することができる。
【0097】
また、実施形態に係る保守支援装置においては、交換作業終了情報が受け付けられた場合に、その交換作業終了情報に対応する部品を自動で発注する発注手段として、制御部1を機能させているので、ユーザーの部品発注の手間を解消することができる。
【0098】
また、実施形態に係る保守支援装置においては、ユーザーのもとに配設され、且つ、少なくとも、情報取得手段、受付手段、及び入力手段を具備する、制御部1、各種センサ2、操作表示部3等からなる端末機と、ユーザーのもとから離れた場所に配設され、且つ、少なくとも指標値算出手段、判定手段、及び情報提供手段を具備するホスト機たる監視装置900との間における遠隔通信を実現する通信手段(モデム)を設けている。かかる構成では、複雑な演算が必要になる故障予測判定については、各複写機の制御部の代わりに、監視装置900が行うことで、各複写機の制御部の演算負荷を減らすことができる。
【符号の説明】
【0099】
1:制御部
2:各種センサ
3:操作表示部
100:プリンタ部
200:給紙部b
300:スキャナ部
400:原稿搬送部
500:モデム
900:監視装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0100】
【特許文献1】特開2008−8996号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、保守対象物に搭載された種々の部品それぞれについて、交換時期が到来したことに基づいて保守作業者に対して交換要求情報を提供して前記保守対象物の保守を支援する保守支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、市場に出回っている様々な機械や装置においては、故障が発生すると、故障の内容によっては修理完了までかなりの期間に渡って使用不可となって、ユーザーに不便を強いてしまうことがあった。このため、できるだけ故障を発生させない適切な保守の実施をユーザーやサービスマンに対して支援する保守支援装置が知られている。
【0003】
例えば、画像形成装置の分野では、保守対象物である画像形成装置に搭載される各種の部品それぞれについて、次のようにして交換時期の到来を把握してユーザーやサービスマンに対して交換を促す保守支援装置が知られている。即ち、各種の部品それぞれについて、累積稼働時間(プリント枚数)を個別にカウントしていき、カウント値が所定の閾値を超えたことに基づいて交換時期が到来したものと把握するのである。
【0004】
また、例えば特許文献1に記載の保守支援装置のように、各種の部品それぞれについて、もうすぐ故障するか否かを予測して、交換時期の到来をより精度良く捉えるようにしたものも知られている。もうすぐ故障するか否かについては、画像形成装置から取得した様々なセンシングデータや制御パラメータなどを用いた多変量解析によって求めたマハラノビス距離などの異常指標値に基づいて予測している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の保守支援装置においては、交換時期の到来がかなり近づいている部品であっても、実際に交換時期が到来するまではユーザーやサービスマンに対して交換を促さない。このため、ある部品の交換を促してユーザーに交換作業を行ってもらった直後に、その部品とほぼ同様の交換作業工程で交換することができる別の部品の交換を促して、ユーザーやサービスマンに二度手間をとらせてしまうことがあった。
【0006】
本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、部品の交換が促された場合に、その部品との同時交換が望まれる別の部品の存否をユーザーやサービスマンなどの保守作業者に判断してもらうことができる保守支援装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、保守対象物に搭載された種々の部品それぞれについて、交換時期が到来したか否かを判定するのに有用な情報である判定有用情報を、前記保守対象物から取得する情報取得手段と、前記種々の部品それぞれについて、前記情報取得手段による前記判定有用情報の取得結果に基づいて交換の必要性を示す交換指標値を算出する指標値算出手段と、前記種々の部品それぞれについて、前記指標値算出手段による算出結果に基づいて交換時期が到来したか否かを判定する判定手段と、判定手段によって交換時期が到来したと判定された部品について、ユーザー又は保守作業者に対して交換を促す情報である交換要求情報を提供する情報提供手段とを備え、前記交換要求情報の提供によって前記保守対象物の保守を支援する保守支援装置において、ユーザー又は保守作業者に対して、前記交換要求情報に加えて、交換時期が到来していない複数の部品それぞれについて前記交換指標値の情報を提供する処理を実施するように、前記情報提供手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の保守支援装置において、前記判定手段によって交換時期が到来したと判定された部品についてのみ、保守作業者に対して交換作業を終えたか否かの問い合わせを行いながら保守作業者ユーザーからの交換作業終了情報を受け付ける受付手段と、前記受付手段によって前記交換作業終了情報が受け付けられたことに基づいて、前記交換作業終了情報に対応する部品の前記判定有用情報を初期化する情報初期化手段とを設けたことを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項2の保守支援装置において、前記判定手段によって交換時期が到来したと判定されていない複数の部品のうち、交換時期が到来したと判定された部品と同時に交換するものがある場合に、その部品の情報を追加交換部品情報として保守作業者ユーザーに入力してもらう入力手段を設けるとともに、前記判定手段によって交換時期が到来したと判定された部品に加えて、前記入力手段に入力された追加交換部品情報に対応する部品についても、前記交換作業終了情報を受け付けるように、上記受付手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項2又は3の保守支援装置において、前記交換作業終了情報が前記受付手段によって受け付けられた場合に、その交換作業終了情報に対応する部品を自動で発注する発注手段を設けたことを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項2、3又は4の保守支援装置において、ユーザーのもとに配設され、且つ、少なくとも、前記情報取得手段、前記受付手段、及び前記入力手段を具備する端末機と、ユーザーのもとから離れた場所に配設され、且つ、少なくとも前記指標値算出手段、前記判定手段、及び前記情報提供手段を具備するホスト機との間における遠隔通信を実現する通信手段を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
これらの発明においては、交換時期が到来した部品についての交換要求情報を保守作業者に提供するときに、交換時期が到来していない他の複数の部品それぞれについて、交換指標値の情報提供によって交換時期の到来までの残期間を保守作業者に知らせる。そして、その残期間に基づいて同時交換した方がよいか否かを、保守作業者に判断してもらうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態に係る保守支援装置の保守支援対象となる複写機を示す概略構成図。
【図2】同複写機のプリンタ部を示す拡大構成図。
【図3】同プリンタ部におけるタンデム部の一部を示す部分拡大図。
【図4】同複写機の電気回路の一部を示すブロック図。
【図5】従来の画像形成装置の操作表示部における交換催促用の画面を示す模式図。
【図6】同操作表示部におけるメニュー画面を示す模式図。
【図7】同操作表示部におけるカウント値一覧画面を示す模式図。
【図8】同カウント値一覧画面上でのカウント値クリア操作を説明するための模式図。
【図9】実施形態に係る複写機の操作表示部における交換催促用の画面を示す模式図。
【図10】同操作表示部における残寿命一覧画面を示す模式図。
【図11】同残寿命一覧画面上での交換部品追加操作を説明するための模式図。
【図12】同操作表示部におけるカウント値一覧画面の一例を示す模式図。
【図13】同複写機によってFAXされる発注用紙の発注用紙フォームを示す模式図。
【図14】同発注用紙フォームの画像に合成される発注文字画像の一例を示す模式図。
【図15】同発注用紙の一例を示す模式図。
【図16】変形例に係る保守支援装置の一部を搭載した複写機と、同保守支援装置の一部として機能する監視装置とを示す構成図
【図17】同監視装置にインストールされている故障予測ソフトウエアによって実現されるソフトウエア回路を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を、画像形成装置である電子写真方式の複写機(以下、単に複写機という)の保守を支援する保守支援装置に適用した実施形態について説明する。
まず、実施形態に係る保守支援装置の保守対象となる複写機の基本的な構成について説明する。図1は、保守支援装置の保守支援対象である複写機を示す概略構成図である。この複写機は、プリンタ部100と給紙部200とからなる画像形成手段と、スキャナ部300と、原稿搬送部400とを備えている。スキャナ部300はプリンタ部100上に取り付けられ、そのスキャナ部300の上に原稿自動搬送装置(ADF)からなる原稿搬送部400が取り付けられている。
【0011】
スキャナ部300は、コンタクトガラス32上に載置された原稿の画像情報を読取センサ36で読み取り、読み取った画像情報を図示しない制御部に送る。制御部は、スキャナ部300から受け取った画像情報に基づき、プリンタ部100の露光装置21内に配設された図示しないレーザやLED等を制御してドラム状の4つの感光体40K,Y,M,Cに向けてレーザ書き込み光Lを照射させる。この照射により、感光体40K,Y,M,Cの表面には静電潜像が形成され、この潜像は所定の現像プロセスを経由してトナー像に現像される。なお、符号の後に付されたK,Y,M,Cという添字は、ブラック,イエロー,マゼンタ,シアン用の仕様であることを示している。
【0012】
プリンタ部100は、露光装置21の他、1次転写ローラ62K,Y,M,C、2次転写装置22、定着装置25、排紙装置、図示しないトナー供給装置、トナー供給装置等も備えている。
【0013】
給紙部200は、プリンタ部100の下方に配設された自動給紙部と、プリンタ部100の側面に配設された手差し部とを有している。そして、自動給紙部は、ペーパーバンク43内に多段に配設された2つの給紙カセット44、給紙カセットから記録体たる転写紙を繰り出す給紙ローラ42、繰り出した転写紙を分離して給紙路46に送り出す分離ローラ45等を有している。また、プリンタ部100の給紙路48に転写紙を搬送する搬送ローラ47等も有している。一方、手差し部は、手差しトレイ51、手差しトレイ51上の転写紙を手差し給紙路53に向けて一枚ずつ分離する分離ローラ52等を有している。
【0014】
プリンタ部100の給紙路48の末端付近には、レジストローラ対49が配設されている。このレジストローラ対49は、給紙カセット44や手差しトレイ51から送られてくる転写紙を受け入れた後、所定のタイミングで中間転写体たる中間転写ベルト10と2次転写装置22との間に形成される2次転写ニップに送る。
【0015】
図1に示した複写機において、操作者は、カラー画像のコピーをとるときに、原稿搬送部400の原稿台30上に原稿をセットする。あるいは、原稿搬送部400を開いてスキャナ部300のコンタクトガラス32上に原稿をセットした後、原稿搬送部400を閉じて原稿を押さえる。そして、図示しないスタートスイッチを押す。すると、原稿搬送部400に原稿がセットされている場合には原稿がコンタクトガラス32上に搬送された後に、コンタクトガラス32上に原稿がセットされている場合には直ちに、スキャナ部300が駆動を開始する。そして、第1走行体33及び第2走行体34が走行し、第1走行体33の光源から発せられる光が原稿面で反射した後、第2走行体34に向かう。更に、第2走行体34のミラーで反射してから結像レンズ35を経由して読取りセンサ36に至り、画像情報として読み取られる。
【0016】
このようにして画像情報が読み取られると、プリンタ部100は、図示しない駆動モータで支持ローラ14、15、16の1つを回転駆動させながら他の2つの支持ローラを従動回転させる。そして、これらローラに張架される中間転写ベルト10を無端移動させる。更に、上述のようなレーザ書き込みや、後述する現像プロセスを実施する。そして、感光体40K,Y,M,Cを回転させながら、それらに、ブラック,イエロー,マゼンタ,シアンの単色画像を形成する。これらは、感光体40K,Y,M,Cと、中間転写ベルト10とが当接するK,Y,M,C用の1次転写ニップで順次重ね合わせて静電転写されて4色重ね合わせトナー像になる。感光体40K、40Y、40M、40C上にトナー像を形成する。
【0017】
一方、給紙部200は、画像情報に応じたサイズの転写紙を給紙すべく、3つの給紙ローラのうちの何れか1つを作動させて、転写紙をプリンタ部100の給紙路48に導く。給紙路48内に進入した転写紙は、レジストローラ対49に挟み込まれて一旦停止した後、タイミングを合わせて、中間転写ベルト10と2次転写装置22の2次転写ローラ23との当接部である2次転写ニップに送り込まれる。すると、2次転写ニップにおいて、中間転写ベルト10上の4色重ね合わせトナー像と、転写紙とが同期して密着する。そして、ニップに形成されている転写用電界やニップ圧などの影響によって4色重ね合わせトナー像が転写紙上に2次転写され、紙の白色と相まってフルカラー画像となる。
【0018】
2次転写ニップを通過した転写紙は、2次転写装置22の搬送ベルト24の無端移動によって定着装置25に送り込まれる。そして、定着装置25の加圧ローラ27による加圧力と、加熱ベルトによる加熱との作用によってフルカラー画像が定着せしめられた後、排出ローラ56を経てプリンタ部100の側面に設けられた排紙トレイ57上に排出される。
【0019】
図2は、プリンタ部100を示す拡大構成図である。プリンタ部100は、ベルトユニット、各色のトナー像を形成する4つのプロセスユニット18K,Y,M,C、2次転写装置22、ベルトクリーニング装置17、定着装置25等を備えている。
【0020】
ベルトユニットは、複数のローラに張架した中間転写ベルト10を、感光体40K,Y,M,Cに当接させながら無端移動させる。感光体40K,Y,M,Cと中間転写ベルト10とを当接させるK,Y,M,C用の1次転写ニップでは、1次転写ローラ62K,Y,M,Cによって中間転写ベルト10を裏面側から感光体40K,Y,M,Cに向けて押圧している。これら1次転写ローラ62K,Y,M,Cには、それぞれ図示しない電源によって1次転写バイアスが印加されている。これにより、K,Y,M,C用の1次転写ニップには、感光体40K,Y,M,C上のトナー像を中間転写ベルト10に向けて静電移動させる1次転写電界が形成されている。各1次転写ローラ62K,Y,M,Cの間には、中間転写ベルト10の裏面に接触する導電性ローラ74がそれぞれ配設されている。これら導電性ローラ74は、1次転写ローラ62K,Y,M,Cに印加される1次転写バイアスが、中間転写ベルト10の裏面側にある中抵抗の基層11を介して隣接するプロセスユニットに流れ込むことを阻止するものである。
【0021】
プロセスユニット(18K,Y,M,C)は、感光体(40K,Y,M,C)と、その他の幾つかの装置とを1つのユニットとして共通の支持体に支持するものであり、プリンタ部100に対して着脱可能になっている。ブラック用のプロセスユニット18Kを例にすると、これは、感光体40Kの他、感光体40K表面に形成された静電潜像をブラックトナー像に現像するための現像手段たる現像ユニット61Kを有している。また、1次転写ニップを通過した後の感光体40K表面に付着している転写残トナーをクリーニングする感光体クリーニング装置63Kも有している。また、クリーニング後の感光体40K表面を除電する図示しない除電装置や、除電後の感光体40K表面を一様帯電せしめる図示しない帯電装置なども有している。他色用のプロセスユニット18Y,M,Cも、取り扱うトナーの色が異なる他は、ほぼ同様の構成になっている。本複写機では、これら4つのプロセスユニット18K,Y,M,Cを、中間転写ベルト10に対してその無端移動方向に沿って並べるように対向配設したいわゆるタンデム型の構成になっている。
【0022】
図3は、4つのプロセスユニット18K,Y,M,Cからなるタンデム部20の一部を示す部分拡大図である。なお、4つのプロセスユニット18K,Y,M,Cは、それぞれ使用するトナーの色が異なる他はほぼ同様の構成になっているので、同図においては各符号に付すK,Y,M,Cという添字を省略している。同図に示すように、プロセスユニット18は、感光体40の周りに、帯電手段としての帯電装置60、現像装置61、1次転写手段としての1次転写ローラ62、感光体クリーニング装置63、除電装置64等を備えている。
【0023】
感光体40としては、アルミニウム等の素管に、感光性を有する有機感光材を塗布し、感光層を形成したドラム状のものを用いている。但し、無端ベルト状のものを用いても良い。また、帯電装置60としては、帯電バイアスが印加される帯電ローラを感光体40に当接させながら回転させるものを用いている。感光体40に対して非接触で帯電処理を行うスコロトロンチャージャ等を用いてもよい。
【0024】
現像装置61は、磁性キャリアと非磁性トナーとを含有する二成分現像剤を用いて潜像を現像するようになっている。内部に収容している二成分現像剤を攪拌しながら搬送して現像スリーブ65に供給する攪拌部66と、現像スリーブ65に付着した二成分現像剤のうちのトナーを感光体4K,Y,M,Cに転移させる現像部67とを有している。
【0025】
攪拌部66は、現像部67よりも低い位置に設けられており、互いに平行配設された2本のスクリュウ68、これらスクリュウ間に設けられた仕切り板、現像ケース70の底面に設けられたトナー濃度センサ71などを有している。
【0026】
現像部67は、現像ケース70の開口を通して感光体40に対向する現像スリーブ65、これの内部に回転不能に設けられたマグネットローラ72、現像スリーブ65に先端を接近させるドクタブレード73などを有している。ドクタブレード73と現像スリーブ65との間の最接近部における間隔は500[μm]程度に設定されている。現像スリーブ65は、非磁性の回転可能なスリーブ状の形状になっている。また、現像スリーブ65に連れ回らないようにないようされるマグネットローラ72は、例えば、ドクタブレード73の箇所から現像スリーブ65の回転方向にN1、S1、N2、S2、S3の5磁極を有している。これら磁極は、それぞれスリーブ上の二成分現像剤に対して回転方向の所定位置で磁力を作用させる。これにより、攪拌部66から送られてくる二成分現像剤を現像スリーブ65表面に引き寄せて担持させるとともに、スリーブ表面上で磁力線に沿った磁気ブラシを形成する。
【0027】
磁気ブラシは、現像スリーブ65の回転に伴ってドクタブレード73との対向位置を通過する際に適正な層厚に規制されてから、感光体40に対向する現像領域に搬送される。そして、現像スリーブ65に印加される現像バイアスと、感光体40の静電潜像との電位差によって静電潜像上に転移して現像に寄与する。更に、現像スリーブ65の回転に伴って再び現像部67内に戻り、マグネットローラ72の磁極間の反発磁界の影響によってスリーブ表面から離脱した後、攪拌部66に戻される。攪拌部66内では、トナー濃度センサ71による検知結果に基づいて、二成分現像剤に適量のトナーが補給される。なお、現像装置61として、二成分現像剤を用いるものの代わりに、磁性キャリアを含まない一成分現像剤を用いるものを採用してもよい。
【0028】
感光体クリーニング装置63としては、ポリウレタンゴム製のクリーニングブレード75を感光体40に押し当てる方式のものを用いているが、他の方式のものを用いてもよい。クリーニング性を高める目的で、本例では、外周面を感光体40に接触させる接触導電性のファーブラシ76を、図中矢印方向に回転自在に有するクリーニング装置63を採用している。そして、ファーブラシ76にバイアスを印加する金属製電界ローラ77を図中矢示方向に回転自在に設け、その電界ローラ77にスクレーパ78の先端を押し当てている。スクレーパ78によって電界ローラ77から除去されたトナーは、回収スクリュ79上に落下して回収される。
【0029】
かかる構成の感光体クリーニング装置63は、感光体40に対してカウンタ方向に回転するファーブラシ76で、感光体40上の残留トナーを除去する。ファーブラシ76に付着したトナーは、ファーブラシ76に対してカウンタ方向に接触して回転するバイアスを印加された電界ローラ77に取り除かれる。電界ローラ77に付着したトナーは、スクレーパ78でクリーニングされる。感光体クリーニング装置63で回収したトナーは、回収スクリュ79で感光体クリーニング装置63の片側に寄せられ、トナーリサイクル装置80で現像装置61へと戻されて再利用される。
【0030】
除電装置64は、除電ランプ等からなり、光を照射して感光体40の表面電位を除去する。このようにして除電された感光体40の表面は、帯電装置60によって一様帯電せしめられた後、光書込処理がなされる。
【0031】
ベルトユニットの図中下方には、2次転写装置22が設けられている。この2次転写装置22は、2つのローラ23間に、2次転写ベルト24を掛け渡して無端移動させている。2つのローラ23のうち、一方は図示しない電源によって2次転写バイアスが印加される2次転写ローラとなっており、ベルトユニットのローラ16との間に中間転写ベルト10と2次転写ベルト24とを挟み込んでいる。これにより、両ベルトが当接しながら当接部で互いに同方向に移動する2次転写ニップが形成されている。レジストローラ対49からこの2次転写ニップに送り込まれた転写紙には、中間転写ベルト10上の4色重ね合わせトナー像が2次転写電界やニップ圧の影響で一括2次転写されて、フルカラー画像が形成される。2次転写ニップを通過した転写紙は、中間転写ベルト10から離間して、2次転写ベルト24の表面に保持されながら、ベルトの無端移動に伴って定着装置25へと搬送される。なお、2次転写ローラに代えて、転写チャージャ等によって2次転写を行わせるようにしてもよい。
【0032】
2次転写ニップを通過した中間転写ベルト10の表面は、支持ローラ15による支持位置にさしかかる。ここでは、中間転写ベルト10が、おもて面(ループ外面)に当接するベルトクリーニング装置17と、裏面に当接する支持ローラ15との間に挟み込まれる。そして、ベルトクリーニング装置17により、おもて面に付着している転写残トナーが除去された後、K,Y,M,C用の1次転写ニップに順次進入して、次の4色トナー像が重ね合わされる。
【0033】
ベルトクリーニング装置17は、2つのファーブラシ90,91を有している。これらは、複数の起毛をその植毛方向に対してカウンタ方向で中間転写ベルト10に当接させながら回転することで、ベルト上の転写残トナーを機械的に掻き取る。加えて、図示しない電源によってクリーニングバイアスが印加されることで、掻き取った転写残トナーを静電的に引き寄せて回収する。
【0034】
ファーブラシ90,91に対しては、それぞれ金属ローラ92,93が接触しながら、順または逆方向に回転している。これら金属ローラ92,93のうち、中間転写ベルト10の回転方向上流側に位置する金属ローラ92には、電源94によってマイナス極性の電圧が印加されている。また、下流側に位置する金属ローラ93には、電源95によってプラス極性の電圧が印加される。そして、それらの金属ローラ92,93には、それぞれブレード96,97の先端が当接している。かかる構成では、中間転写ベルト10の図中矢印方向への無端移動に伴って、まず、上流側のファーブラシ90が中間転写ベルト10表面をクリーニングする。このとき、例えば金属ローラ92に−700[V]が印加されながら、ファーブラシ90に−400[V]が印加されると、まず、中間転写ベルト10上のプラス極性のトナーがファーブラシ90側に静電転移する。そして、ファーブラシ側に転移したトナーが更に電位差によってファーブラシ90から金属ローラ92に転移して、ブレード96によって掻き落とされる。
【0035】
このように、ファーブラシ90で中間転写ベルト10上のトナーが除去されるが、中間転写ベルト10上にはまだ多くのトナーが残っている。それらのトナーは、ファーブラシ90に印加されるマイナス極性のバイアスにより、マイナスに帯電される。これは、電荷注入または放電により帯電されるものと考えられる。次いで下流側のファーブラシ91を用いて今度はプラス極性のバイアスを印加してクリーニングを行うことにより、それらのトナーを除去することができる。除去したトナーは、電位差によりファーブラシ91から金属ローラ93に転移させ、ブレード97により掻き落とす。ブレード96、97で掻き落としたトナーは、不図示のタンクに回収される。
【0036】
ファーブラシ91でクリーニングされた後の中間転写ベルト10表面は、ほとんどのトナーが除去されているがまだ少しのトナーが残っている。これらの中間転写ベルト10上に残ったトナーは、上述したようにファーブラシ91に印加されるプラス極性のバイアスにより、プラス極性に帯電される。そして、1次転写位置で印加される転写電界によって感光体40K,Y,M,C側に転写され、感光体クリーニング装置63で回収される。
【0037】
レジストローラ対49は一般的には接地されて使用されることが多いが、転写紙Pの紙粉除去のためにバイアスを印加することも可能である。
【0038】
2次転写装置22および定着装置25の下には、上述したタンデム部20と平行に延びるような、転写紙反転装置28(図1参照)が設けられている。これにより、片面に対する画像定着処理を終えた転写紙が、切換爪で転写紙の進路を転写紙反転装置側に切り換えられ、そこで反転されて再び2次転写転写ニップに進入する。そして、もう片面にも画像の2次転写処理と定着処理とが施された後、排紙トレイ上に排紙される。
【0039】
以上の構成の複写機においては、各プロセスユニット18K,Y,M,C、2次転写装置22、露光装置21等により、記録体たる転写紙に画像を形成する画像形成手段が構成されている。
【0040】
この複写機の部品の一部は、実施形態に係る保守支援装置の情報取得手段として機能している。この情報取得手段は、図4に示される制御部1、各種センサ2、操作表示部3などから構成されるものである。制御部1は、複写機全体の制御を司る制御手段であり、制御プログラムを記憶している情報記憶手段たるROM1c、演算データや制御パラメータ等を記憶する情報記憶手段たるRAM1b、演算手段たるCPU1a、情報記憶手段たる不揮発性RAM1d等を有している。操作表示部3は、文字情報等を表示する液晶ディスプレイ等から構成される表示部3aや、テンキー等などによって操作者から入力情報を受け付けて制御部1cに送る操作部3bなどを有している。
【0041】
制御部1等からなる情報取得手段は、複写機を構成する感光体や帯電装置などの種々の部品それぞれについて、交換時期が到来したか否かを判定するのに有用な情報である判定有用情報を取得する。判定有用情報としては、センシング情報、制御パラメータ情報、入力情報、画像読取情報などが挙げられる。以下、これらの情報について詳述する。
【0042】
(a)センシング情報
センシング情報としては、駆動関係、記録媒体の各種特性、現像剤特性、感光体特性、電子写真の各種プロセス状態、環境条件、記録物の各種特性などが取得する対象として考えられる。これらのセンシング情報の概要を説明すると、以下のようになる。
【0043】
(a−1)駆動の情報
・感光体ドラムの回転速度をエンコーダーで検出したり、駆動モータの電流値を読み取ったり、駆動モータの温度を読み取る。
・同様にして、定着ローラ、紙搬送ローラ、駆動ローラなどの円筒状またはベルト状の回転する部品の駆動状態を検出する。
・駆動により発生する音を装置内部または外部に設置されたマイクロフォンで検出する。
【0044】
(a−2)紙搬送の状態
・透過型または反射型の光センサ、あるいは接触タイプのセンサにより、搬送された紙の先端や後端の位置を読み取り、紙詰まりが発生したことを検出したり、紙の先端や後端の通過タイミングのずれ、送り方向と垂直な方向の変動などを読み取る。
・同様に、複数のセンサ間の検出タイミングにより、紙の移動速度を求める。
・給紙時の給紙ローラと紙とのスリップを、ローラの回転数計測値と紙の移動量との比較で求める。
【0045】
(a−3)紙などの記録媒体の各種特性
この情報は、画質やシート搬送の安定性に大きく影響する。この紙種の情報取得には以下のような方法がある。
・紙の厚みは、紙を二つのローラで挟み、ローラの相対的な位置変位を光学センサ等で検知したり、紙が進入してくることによって押し上げられる部材の移動量と同等の変位量を検知することによって求める。
・紙の表面粗さは、転写前の紙の表面にガイド等を接触させ、その接触によって生じる振動や摺動音等を検知する。
・紙の光沢は、規定された入射角で規定の開き角の光束を入射し、鏡面反射方向に反射する規定の開き角の光束をセンサで測定する。
・紙の剛性は、押圧された紙の変形量(湾曲量)を検知することにより求める。
・再生紙か否かの判断は、紙に紫外線を照射してその透過率を検出して行なう。
・裏紙か否かの判断は、LEDアレイ等の線状光源から光を照射し、転写面から反射した光をCCD等の固体撮像素子で検出して行なう。
・OHP用のシートか否かは、用紙に光を照射し、透過光と角度の異なる正反射光を検出して判断する。
・紙に含まれている水分量は、赤外線またはμ波の光の吸収を測定することにより求める。
・カール量は光センサ、接触センサなどで検出する。
・紙の電気抵抗は、一対の電極(給紙ローラなど)を記録紙と接触させて直接測定したり、紙転写後の感光体や中間転写体の表面電位を測定して、その値から記録紙の抵抗値を推定する。
【0046】
(a−4)現像剤特性
現像剤(トナーやキャリア)の装置内での特性は、電子写真プロセスの機能の根幹に影響するものである。そのため、システムの動作や出力にとって重要な因子となる。現像剤の情報を得ることは極めて重要である。この現像剤特性としては、例えば次のような項目が挙げられる。
・トナーについては、帯電量およびその分布、流動性、凝集度、嵩密度、電気抵抗、外添剤量、消費量または残量、流動性、トナー濃度(トナーとキャリアの混合比)を挙げることができる。
・キャリアについては、磁気特性、コート膜厚、スペント量などを挙げることができる。
これらの情報を画像形成装置の中で単独で検出することは通常困難である。そこで、現像剤の総合的な特性として検出すると良い。この現像剤の総合的な特性は、例えば次のように測定することができる。
・感光体上にテスト用潜像を形成し、予め決められた現像条件で現像して、形成されたトナー像の反射濃度(光反射率)を測定する。
・現像装置中に一対の電極を設け、印加電圧と電流の関係を測定する(抵抗、誘電率など)。
・現像装置中にコイルを設け、電圧電流特性を測定する(インダクタンス)。
・現像装置中にレベルセンサを設けて、現像剤容量を検出する。レベルセンサは光学式、静電容量式などがある。
【0047】
(a−5)感光体特性
感光体特性も現像剤特性と同じく、電子写真プロセスの機能と密接に関わる。この感光体特性の情報としては、感光体の膜厚、表面特性(摩擦係数、凹凸)、表面電位(各プロセス前後)、表面エネルギー、散乱光、温度、色、表面位置(フレ)、線速度、電位減衰速度、電気抵抗、静電容量、表面水分量などが挙げられる。このうち、画像形成装置の中では、次のような情報を検出できる。
・膜厚変化に伴う静電容量の変化を、帯電部材から感光体に流れる電流を検知し、同時に帯電部材への印加電圧と予め設定された感光体の誘電厚みに対する電圧電流特性と照合することにより、膜厚を求める。
・表面電位、温度は従来周知のセンサで求めることができる。
・線速度は感光体回転軸に取り付けられたエンコーダーなどで検出される。
・感光体表面からの散乱光は光センサで検出される。
【0048】
(a−6)電子写真プロセス状態
電子写真方式によるトナー像形成は、周知のように、感光体の均一帯電、レーザー光などによる潜像形成(像露光)、電荷を持ったトナー(着色粒子)による現像、転写材へのトナー像の転写(カラーの場合は中間転写体または最終転写材である記録媒体での重ね合わせ、または現像時に感光体への重ね現像を行なう)、記録媒体へのトナー像の定着という順序で行なわれる。これらの各段階での様々な情報は、画像その他のシステムの出力に大きく影響を与える。これらを取得することがシステムの安定を評価する上で重要となる。この電子写真プロセス状態の情報取得の具体例としては、次のようなものが挙げられる。
・帯電電位、露光部電位は従来公知の表面電位センサにより検出される。
・非接触帯電における帯電部材と感光体とのギャップは、ギャップを通過させた光の量を測定することにより検知する。
・帯電による電磁波は広帯域アンテナにより捉える。
・帯電による発生音。
・露光強度。
・露光光波長。
【0049】
また、トナー像の様々な状態を取得すること方法としては、次のようなものが挙げられる。
・パイルハイト(トナー像の高さ)を、変位センサで縦方向から奥行きを、平行光のリニアセンサで横方向から遮光長を計測して求める。
・トナー帯電量を、ベタ部の静電潜像の電位、その潜像が現像された状態での電位を測定する電位センサにより測定し、同じ箇所の反射濃度センサから換算した付着量との比により求める。
・ドット揺らぎまたはチリを、ドットパターン画像を感光体上においては赤外光のエリアセンサ、中間転写体上においては各色に応じた波長のエリアセンサで検知し、適当な処理をすることにより求める。
・オフセット量(定着後)を、記録紙上と定着ローラ上の対応する場所をそれぞれ光学センサで読み取って、両者比較することにより求める。
・転写工程後(PD上,ベルト上)に光学センサを設置し,特定パターンの転写後の転写残パターンからの反射光量で転写残量を判断する。
・重ね合わせ時の色ムラを定着後の記録紙上を検知するフルカラーセンサで検知する。
【0050】
(a−7)形成されたトナー像の特性
・画像濃度、色は光学的に検知する。反射光、透過光のいずれでもよい。色に応じて投光波長を選択すればよい。濃度及び単色情報を得るには感光体上または中間転写体上でよいが、色ムラなど,色のコンビネーションを測るには紙上の必要がある。
・階調性は、階調レベルごとに感光体上に形成されたトナー像または転写体に転写されたトナー像の反射濃度を光学センサにより検出する。
・鮮鋭性は、スポット径の小さい単眼センサ、若しくは高解像度のラインセンサを用いて、ライン繰り返しパターンを現像または転写した画像を読み取ることにより求める。
・粒状性(ざらつき感)は、鮮鋭性の検出と同じ方法により、ハーフトーン画像を読み取り、ノイズ成分を算出することにより求める。
・レジストスキューは、レジスト後の主走査方向両端に光学センサを設け、レジストローラONタイミングと両センサの検知タイミングとの差異から求める。
・色ずれは、中間転写体または記録紙上の重ね合わせ画像のエッジ部を、単眼の小径スポットセンサ若しくは高解像度ラインセンサで検知する。
・バンディング(送り方向の濃度むら)は、記録紙上で小径スポットセンサ若しくは高解像度ラインセンサにより副走査方向の濃度ムラを測定し、特定周波数の信号量を計測する。
・光沢度(むら)は、均一画像が形成された記録紙を正反射式光学センサで検知するように設ける。
・かぶりは、感光体上、中間転写体上、または記録紙上において、比較的広範囲の領域を検知する光学センサで画像背景部を読み取る方法、または高解像度のエリアセンサで背景部のエリアごと画像情報を取得し、その画像に含まれるトナー粒子数を数えるという方法がある。
【0051】
(a−8)画像形成装置のプリント物の物理的な特性
・像流れや画像かすれなどは、感光体上、中間転写体、あるいは記録紙上でトナー像をエリアセンサにより検知し、取得した画像情報を画像処理して判定する。
・トナーチリ汚れは記録紙上の画像を高解像度ラインセンサまたはエリアセンサで取り込み、パターン部の周辺に散っているトナー量を算定することにより求める。
・後端白抜け、ベタクロス白抜けは、感光体上、中間転写体、あるいは記録紙上で高解像度ラインセンサにより検知する。
・記録紙のカール、波打ち、折れは、変位センサで検出する。折れの検出のためには記録紙の両端部分に近い所にセンサを設置することが有効である。
・コバ面の汚れやキズは、排紙トレイに縦に設けたエリアセンサにより,ある程度排紙が溜まった時のコバ面をエリアセンサで撮影,解析する。
【0052】
(a−9)環境状態
・温度検出には、異種金属どうし或いは金属と半導体どうしを接合した接点に発生する熱起電力を信号として取り出す熱電対方式、金属或いは半導体の抵抗率が温度によって変化することを利用した抵抗率変化素子、また、或る種の結晶では温度が上昇したことにより結晶内の電荷の配置に偏りが生じ表面に電位発生する焦電型素子、更には、温度による磁気特性の変化を検出する熱磁気効果素子などを採用することができる。
・湿度検出には、H2O或いはOH基の光吸収を測定する光学的測定法、水蒸気の吸着による材料の電気抵抗値変化を測定する湿度センサ等がある。
・各種ガスは、基本的にはガスの吸着に伴う、酸化物半導体の電気抵抗の変化を測定することにより検出する。
・気流(方向、流速、ガス種)の検出には、光学的測定法等があるが、システムへの搭載を考慮するとより小型にできるエアブリッジ型フローセンサが特に有用である。
・気圧、圧力の検出には、感圧材料を使用する、メンブレンの機械的変位を測定する等の方法がある。振動の検出にも同様に方法が用いられる。
【0053】
(b)制御パラメータ情報
画像形成装置の動作は制御部によって決定されるため、制御部の入出力パラメータを直接利用することが有効である。
【0054】
(b−1)画像形成パラメータ
画像形成のために制御部が演算処理により出力する直接的なパラメータで、以下のような例がある。
・制御部によるプロセス条件の設定値で、例えば帯電電位、現像バイアス値、定着温度設定値など。
・同じく、中間調処理やカラー補正などの各種画像処理パラメータの設定値。
・制御部が装置の動作のために設定する各種のパラメータで、例えば紙搬送のタイミング、画像形成前の準備モードの実行時間など。
【0055】
(b−2)ユーザー操作履歴
・色数、枚数、画質指示など、ユーザーにより選択された各種操作の頻度
・ユーザーが選択した用紙サイズの頻度。
【0056】
(b−3)消費電力
・全期間または特定期間単位(1日、1週間、1ヶ月など)の総合消費電力あるいはその分布、変化量(微分)、累積値(積分)など。
【0057】
(b−4)消耗品消費情報
・全期間または特定期間単位(1日、1週間、1ヶ月など)のトナー、感光体、紙の使用量あるいはその分布、変化量(微分)、累積値(積分)など。
【0058】
(b−5)故障発生情報
・全期間または特定期間単位(1日、1週間、1ヶ月など)の故障発生(種類別)の頻度あるいはその分布、変化量(微分)、累積値(積分)など。
【0059】
(b−6)累積動作時間情報
・制御部1は、プロセスユニット、中間転写ベルト10、各種ローラ、ベルトクリーニング装置17、定着装置25などの各種部品それぞれについて、累積動作時間を計測して不揮発性RAM1d内に記憶している。なお、各色のプロセスユニット18K,Y,C,Mは、プロセスユニットの状態で複写機本体に対して着脱するようになっているが、複写機本体から取り外した状態で、現像ユニットと、帯電装置と、それ以外の部位を保持する感光体ユニットとに分解することができる。部品の交換については、プロセスユニット全体ではなく、現像ユニット、帯電装置、感光体ユニットの形態で交換することができる。このため、累積動作時間については、プロセスユニット全体としてではなく、現像ユニットと帯電装置と感光体ユニットとをそれぞれ別々に計測している。また、累積動作時間としては、累積プリント枚数をカウントしている。プリント1枚分の動作を行う毎に、累積プリント枚数のカウント値を1ずつカウントアップしている。
【0060】
(c)入力画像情報
ホストコンピュータから直接データとして送られる画像情報、あるいは原稿画像からスキャナーで読み取って画像処理をした後に得られる画像情報から、以下のような情報を取得することができる。
・着色画素累積数はGRB信号別の画像データを画素ごとにカウントすることにより求められる。
・例えば特許第2621879号の公報に記載されているような方法でオリジナル画像を文字、網点、写真、背景に分離し、文字部、ハーフトーン部などの比率を求めることができる。同様にして色文字の比率も求めることができる。
・着色画素の累積値を主走査方向で区切った領域別にカウントすることにより、主走査方向のトナー消費分布が求められる。
・画像サイズは制御部が発生する画像サイズ信号または画像データでの着色画素の分布により求められる。
・文字の種類(大きさ、フォント)は文字の属性データから求められる。
【0061】
次に、複写機における各種情報の具体的取得法について説明する。
(1)温度
本複写機は、温度の情報を取得する温度センサとして、原理及び構造が簡単でしかも超小型にできる抵抗変化素子を用いるものを備えている。
【0062】
(2)湿度
小型にできる湿度センサが有用である。基本原理は感湿性セラミックスに水蒸気が吸着すると、吸着水によりイオン伝導が増加しセラミックスの電気抵抗が低下することによる。感湿性セラミックスの材料は多孔質材料であり、一般的にはアルミナ系、アパタイト系、ZrO2−MgO系などが使用される。
【0063】
(3)振動
振動センサは、基本的には気圧及び圧力を測定するセンサと同じであり、システムへの搭載を考慮すると超小型にできるシリコン利用のセンサが特に有用である。薄いシリコンのダイアフラム上に作製した振動子の運動を、振動子と対向して設けられた対向電極間との容量変化を計測する、或いはSiダイアフラム自体のピエゾ抵抗効果を利用して計測することができる。
【0064】
(4)トナー濃度(4色分)
各色ごとにトナー濃度を検出する。トナー濃度センサとしては従来より公知の方式のものを用いることができる。例えば、特開平6−289717号公報に記載されているような現像装置中の現像剤の透磁率の変化を測定するセンシングシステムにより、トナー濃度を検出することができる。
【0065】
(5)感光体一様帯電電位(4色分)
各色用の感光体(40K,Y,M,C)について、それぞれ一様帯電電位を検出する。物体の表面電位を検知する公知の表面電位センサを用いることができる。
【0066】
(6)感光体露光後電位(4色分)
光書込後の感光体(40K,Y,M,C)の表面電位を、(5)と同様にして検出する。
【0067】
(7)着色面積率(4色分)
入力画像情報から、着色しようとする画素の累計値と全画素の累計値の比から着色面積率を色ごとに求め、これを利用する。
【0068】
(8)現像トナー量(4色分)
感光体(40K,Y,M,C)上で現像された各色トナー像における単位面積あたりのトナー付着量を、反射型フォトセンサによる光反射率に基づいて求める。反射型フォトセンサは対象物にLED光を照射し、反射光を受光素子で検出するものである。トナー付着量と光反射率とには相関関係が成立するため、光反射率に基づいてトナー付着量を求めることができる。
【0069】
(9)紙先端位置の傾き
給紙部(200)の給紙ローラから2次転写ニップに至る給紙経路のどこかに、転写紙をその搬送方向に直交する方向の両端で検知する光センサ対を設置し、搬送されてくる転写紙の先端付近の両端を検出する。両光センサについて、給紙ローラの駆動信号の発信時を基準として、通過までの時間を計測し、時間のズレに基づいて送り方向に対する転写紙の傾きを求める。
【0070】
(10)排紙タイミング
排出ローラ対(図1の56)を通過後の転写紙を光センサで検出する。この場合も給紙ローラの駆動信号の発信時を基準として計測する。
【0071】
(11)感光体総電流(4色分)
感光体(40K,Y,M,C)からアースに流れ出る電流を検出する。感光体の基板と接地端子との間に、電流測定手段を設けることで、かかる電流を検出することができる。
【0072】
(12)感光体駆動電力(4色分)
感光体の駆動源(モータ)が駆動中に費やす駆動電力(電流×電圧)を電流計や電圧計などによって検出する。
【0073】
制御部1は、以上のような各種の判定有用情報を定期的にサンプリングして不揮発性RAM1dに記憶する。そして、不揮発性RAM1d内に記憶した各種の判定有用情報に基づいて、各種の部品について、交換時期が到来したか否かを判定する判定処理を実施し、交換時期が到来していると判定した場合には、その部品の交換を促すメッセージを操作表示部3に表示させる。
【0074】
交換時期が到来したか否かの判定については、定期保守判定と、故障予測判定との2種類を行うようになっている。定期保守判定は、累積動作時間としての累積プリント枚数が所定の上限枚数に達したときを交換時期の到来とする判定方法である。各種の部品それぞれについて、交換指標値としての累積プリント枚数を算出し、上限枚数から累積プリント枚数を減じた値を残寿命枚数として求める。この残寿命枚数がゼロになったときを、交換時期の到来とする。なお、残寿命枚数についてゼロになっているか否かを判定するのではなく、累積プリント枚数について上限枚数になっているか否かを判定してもよい。
【0075】
故障予測判定は、各種の部品それぞれについて、もうすぐ故障を発生させそうな状態にあるか否かを予測するための予測指標値を、複数の判定有用情報を多変量解析することによって算出し、その算出結果に基づいて、交換時期が到来したか否かを判定する方法である。予測指標値としては、特許文献1に記載のプリンタのように、マハラノビス距離を例示することができる。各種の部品それぞれについて、その劣化を判定するのに適した判定有用情報を複数サンプリングし、それらの判定有用情報の組合せを用いてマハラノビス距離を求める。その結果について閾値よりも大きいか否かをみることで、もうすぐ故障を発生させそうな状態にあるか否かを判定することが可能である。また、次のようにして予測指標値を求めてもよい。即ち、各種の判定有用情報やそれらを正規化したデータなどそれぞれについて、正常であるか否かの弱判別(正常である場合には「1」、正常でない場合には「−1」)を行い、その結果に対し、ブースティング法という教師付き学習アルゴリズムによって求めた重み付け値を乗じた値を、個々の部品について求める。そして、それら弱判別の結果を合計した値を、予測指標値とする。
【0076】
図5は、従来の画像形成装置の操作表示部3における交換催促用の画面を示す模式図である。操作表示部3は、タッチパネルからなるタッチ表示部3aと、テンキー等からなるキー操作部3bとを具備している。従来の画像形成装置では、定期保守判定や故障予測判定において、例えばK用の感光体について交換時期が到来したと判断した場合、図示のように、K用の感光体の交換を促すメッセージを操作表示部3に表示していた。このメッセージに従ったユーザーは、K用の感光体を交換すると、それまでの累積プリント枚数をゼロにリセットするための操作を行う。具体的には、キー操作部3bのメニューキーを押して図6に示すようなメニュー画面を表示させる。そして、メニュー画面に表示される複数のボタンのうち、カウントクリアボタンを図中矢印のように指でタップ(タッチ操作)する。これにより、図7に示すようなカウント値一覧画面をタッチ表示部3aに表示させたら、K用の感光体のカウント値が画面に表示されるように、必要に応じて画面をスクロールさせる。そして、図8に示すように、K用の感光体のカウント値(累積プリント枚数カウント値)に対応するクリアボタンを指でタップして、そのカウント値をゼロにリセットする。
【0077】
このような従来の画像形成装置においては、図5に示したようにK用の感光体の交換を促したときに、例えばK用の帯電装置の交換時期到来がかなり近づいていたとしても、ユーザーはそのことを知ることができなかった。このため、K用のプロセスユニットを画像形成装置本体から取り外したときに、そのプロセスユニットの感光体だけを交換するに留まっていた。すると、ごく短期間の後に、K用の帯電装置の交換を促すメッセージが表示される。そして、帯電装置を交換するために、K用のプロセスユニットを着脱するという前回と同じ作業を強いられていた。
【0078】
また、カウント値をリセットする際には、図7に示したように、画面に複数表示されるカウント値の中から、交換部品に対応するものを探しながら、そのカウント値をリセットしなければならず、この作業が非常に煩雑であった。更には、交換した部品とは別の部品のカウント値を誤ってリセットしてしまうこともあった。
【0079】
次に、実施形態に係る複写機の特徴的な構成について説明する。
本複写機においては、上述したように、各種部品ぞれぞれについて、交換時期が到来したか否かを、定期保守判定と故障予測判定との2通りで判定するようになっている。制御部1は、何れか一方の判定法で交換時期が到来したという判定結果になった場合には、その部品の交換を促すメッセージを操作表示部3に表示させる。
【0080】
図9は、実施形態に係る複写機の操作表示部3における交換催促用の画面を示す模式図である。K用の感光体について交換時期が到来したという判定結果になった場合、制御部1は、従来と同様に、K用の感光体について寿命が到来した旨のメッセージを表示させる。同時に、K用の感光体と同時に交換した方がよい部品がないかの確認作業を促すメッセージも表示させる。そして、ユーザーによって画面のOKボタンがタップされると、図10に示すように、K用の感光体以外の部品についての交換指標値たる残寿命の一覧をタッチ表示部3aに表示させる。ユーザーは、K用の感光体以外の各種部品について、画面に表示される残寿命に基づいて同時交換した方がよいか否かをそれぞれ判断する。同図では、定期保守判定によってK用の感光体における交換時期の到来が検知された例を示しているので、K用の感光体の残寿命はゼロになっている。ユーザーは、各種の部品それぞれについて、画面に表示される残寿命に基づいて、同時交換した方がよいか否かを費用対効果の観点から容易に判断することができる。そして、同時交換した方がよいと判断した部品については、その残寿命の横に表示されている「同時交換する」というボタンをタップすることで、制御部1に対して、同時交換する旨を認識させる。図示の例では、K用の帯電装置の残寿命が殆ど無いので、同時交換した方がよいことを容易に認識することができる。以下、ユーザーが、K用の帯電装置について「同時交換する」ことを選択した例を説明する。
【0081】
ユーザーは、図10に示される画面表示での確認作業を終えると、キー操作部3bのOKキーを押す。すると、制御部1は、図11に示すように、K用の感光体以外の部品についての交換指標値たるコンディション値の一覧をタッチ表示部3aに表示させる。コンディション値は、各種部品それぞれについて、上述した故障予測判定で算出された交換指標値としての予測指標値そのもの、あるいは予測指標値をユーザーに分かり易い形式に変換した値である。例えば、予測指標値として、上述した弱判別の値の合計値を採用したとする。この予測指標値は、プラス極性である場合には、数字が大きくなるほど、部品のコンディションが良好であることを示す。また、マイナス極性である場合には、もうすぐ故障が発生することを示し、且つ数字が大きくなるほど故障の発生する可能性が高いことを示す。このため、予測指標値がプラス極性からマイナス極性に転じた時点が交換時期であると判断される。同図では、このような予測指標値を採用し、その値をそのままコンディション値として表示している例を示している。ユーザーは、各種の部品それぞれについて、画面に表示されるコンディション値に基づいて、費用対効果の観点から、同時交換した方がよいか否かを容易に判断することができる。例えば、K用の感光体や、K用の帯電装置は、コンディション値(予測指標値)が1であることから、非常に悪いコンディションになっていることがわかる。但し、それらの部品は既に交換することが決まっているため、それらの部品についての「同時交換する」ボタンは表示されていない。その他の部品のうち、Y用の帯電装置やY用の感光体は、コンディション値がプラス極性で且つ比較的大きな値であることから、良好なコンディションであり、交換の必要がないことがわかる。また、C用の帯電装置のコンディション値は「2」であることから、C用の帯電装置のコンディションについて、悪くなってきていることがわかる。以下、ユーザーがコンディション値に基づいてC用の帯電装置について「同時交換する」ことを選択した例を説明する。
【0082】
ユーザーは、K用の感光体、K用の帯電装置、及びC用の帯電装置をそれぞれ交換すると、従来と同様のメニュー操作により、カウント値一覧画面をタッチ表示部3aに表示させる。図12は、実施形態に係る複写機におけるカウント値一覧画面の一例を示す模式図である。このカウント値一覧画面においては、先に示した図7との比較からわかるように、次の点が従来と異なっている。即ち、全ての部品のうち、定期保守判定や故障予測判定にて交換時期が到来したと判定された部品、及び、同時交換の実施がユーザーによって選択された部品、についてだけ、カウント値をクリアするためのクリアボタンが表示される点である。このため、交換していない部品のカウント値を誤ってリセットしてしまうという誤操作の発生を回避することができる。
【0083】
制御部1は、クリアボタンがタッチされた部品については、カウント値をゼロにリセットすることに加えて、不揮発性RAM1dに記憶していた複数の判定有用情報のうち、その部品だけに特有のものを不揮発性RAM1d内から消去する。また、制御部1は、不揮発性RAM1d内に、制御パラメータとして自動発注実行フラグを記憶している。この自動発注実行フラグは、ユーザーがメニュー画面から立ち上げた各種設定画面を表示することによって、オンに設定したり、オフに設定したりすることができる。交換した部品の自動発注を希望するユーザーは、自動発注実行フラグをオンに設定しておく。制御部1は、交換作業を終えたユーザーがクリアボタンを押した部品については、所定の発注先に自動発注する処理を実行する。具体的には、不揮発性RAM1d内には、部品発注用紙フォーム画像情報や、各種部品それぞれについて発注文字画像情報が予め記憶されている。
【0084】
部品発注用紙フォーム画像情報は、例えば、図13に示すような発注用紙フォームの画像を表示するための情報であり、ビットマップ形式で構築されている。発注先の業者の名称を示す文字画像、発注者であるユーザーの名称や連絡先を示す文字画像、部品の発送を依頼するための文字画像などの文字画像情報が含まれている。また、発注文字画像情報は、例えば図14に示すように、部品の名称や型番などを示す文字画像情報である。
【0085】
制御部1は、ユーザーによるキー操作に基づいてカウント値一覧画面の表示を終了すると、図13に示した部品発注用紙フォーム画像と、カウント値がクリアされた部品の発注文字画像とを合成した合成画像情報を構築する。例えが図15に示すような合成画像を表示するための情報である。そして、この合成画像情報を、モデム500を介して、予め登録されている発注先の電話番号にFAX送信する。このFAX送信により、交換された部品を自動発注する。
【0086】
以上の構成の複写機においては、制御部1等からなる保守支援装置を搭載している。この保守支援装置においては、制御部1が、種々の部品それぞれについて、判定有用情報に基づいて交換の必要性を示す交換指標値たる累積プリント枚数(カウント値)や予測指標値を算出する指標値算出手段として機能している。また、種々の部品それぞれについて、カウント値や予測指標値に基づいて交換時期が到来したか否かを判定する判定手段としても機能している。また、制御部1と操作表示部3との組合せが、交換時期が到来したと判定された部品について、ユーザーに対して交換を促す情報である交換要求情報(交換して下さいという表示)を提供する情報提供手段として機能している。また、交換時期が到来したと判定された部品について、ユーザーに対して交換作業を終えたか否かの問い合わせを行いながらユーザーからの交換作業終了情報たるクリアボタンのタップ操作を受け付ける受付手段としても機能している。更に、制御部1は、交換作業終了情報に対応する部品の判定有用情報たるカウント値を初期化する情報初期化手段や、交換作業終了情報に対応する部品を自動で発注する発注手段としても機能している。
【0087】
図16は、変形例に係る保守支援装置の一部を搭載した複写機と、同保守支援装置の一部として機能する監視装置とを示す構成図である。同図に示されている複数の複写機は、それぞれ互いに異なるユーザーのもとに置かれているものである。変形例に係る保守支援装置では、それぞれの複写機に搭載されている制御部、各種センサ、操作表示部などが、判定有用情報を取得する情報取得手段、交換作業終了情報(カウンタクリア)を受け付ける受付手段、カウント値をクリア(初期化)する情報初期化手段などとしてそれぞれ機能している。また、交換指標値たるカウント値を算出する指標値算出手段、カウント値に基づいて交換時期が到来したか否かを判定する判定手段、ユーザーに対して交換を促す情報である交換要求情報を提供する情報提供手段などとしても機能している。また、各複写機のモデムは、後述する監視装置900と電話回線を介して通信する通信手段として機能している。
【0088】
複数の複写機はそれぞれ、実施形態に係る複写機と同様にして、各種部品について、カウント値に基づいて残寿命を算出し、その結果に基づいて交換時期に達したか否かを判定する定期保守判定を行う。そして、定期保守判定にて、何らかの部品について交換時期に達したと判断した場合には、その部品の交換を促すメッセージを操作表示部3に表示する。また、実施形態に係る複写機と同様にして、他の部品について残寿命の一覧や、同時交換するか否かのボタンを表示したり、ユーザーの操作に基づいてカウント値をリセットしたりする。
【0089】
複数の複写機は、それぞれ電話回線を介して、監視装置900に接続されている。この監視装置900は、各ユーザーと複写機の保守管理契約を結んでいる管理業者のもとに置かれている。そして、交換指標値たる予測指標値を算出する指標値算出手段、予測指標値に基づいて交換時期の到来の有無を判定する判定手段などとして機能している。変形例に係る保守支援装置では、故障予測判定については、複写機の制御部ではなく、監視装置900が実施してその結果を、電話回線を介して各複写機に送信するようになっている。
【0090】
また、複数の複写機はそれぞれ、部品のカウント値がリセットされると、その部品についての自動発注を自らが行う代わりに、リセットされた旨の情報を、電話回線を通じて監視装置900に送信する。その情報を受信した監視装置900は、予め登録差されている顧客情報データに基づいて、その情報に対応する部品をユーザーの代わりにEメールで業者に自動発注する。
【0091】
複数の複写機はそれぞれ、1日1回など、予め定められた定期的なタイミングで、電話回線を介して監視装置900と通信する。そして、不揮発性RAM1d内に記憶している各種の判定有用情報を監視装置900に送る。また、監視装置900によって算出された各種部品についてのコンディション値を受信して不揮発性RAM1d内に記憶する。そして、図11に示したコンディション値の一覧を表示する際には、不揮発性RAM1d内に記憶している各コンディション値を利用する。
【0092】
図17は、監視装置900にインストールされている故障予測ソフトウエアによって実現されるソフトウエア回路910を示すブロック図である。このソフトウエア回路910は、故障予測装置として機能する。ユーザーのもとに置かれている各複写機から電話回線を介して送られてくる判定有用情報は、通信手段としてのモデム911を介して監視データ通知受信部912に受信される。そして、データ特徴量計算部913により、必要に応じて正規化などの特徴量変換処理が施された後、それぞれ専用の弱判定部(例えば915〜917)に送られて、正常か否かの弱判別が行われる。それぞれの弱判別に対しては、判別基準データベースから固有の重み付け値が送信される。この重み付け値は、ブースティング法を利用した機械学習によって算出されたものである。各弱判別部は、弱判別の結果に重み付け値を乗じた結果を、予測指標値算出部918に出力する。予測指標値算出部918は、各種の部品それぞれについて、複数の弱判別部から送られてくる判別値を累積して予測指標値を算出した後、結果をアラーム発信部920に送信する。アラーム発信部920は、予測指標値算出部918から送られてくる予測指標値のうち、マイナス極性のものがあった場合、その予測指標値に対応する部品について、交換時期が到来したことを知らせるためのアラーム信号を、モデム911を介して、その部品を所有しているユーザーの複写機に送信する。このアラーム信号を受け取った複写機は、その部品について交換を促すメッセージを表示する。なお、アラーム発信部920は、複写機が定期通信してきた際に、その複写機に対して各種部品の現時点での予測指標値を送信する役割もになっている。
【0093】
かかる構成においては、複雑な演算が必要になる故障予測判定については、各複写機の制御部の代わりに、監視装置900が行うことで、各複写機の制御部の演算負荷を減らすことができる。
【0094】
以上、実施形態に係る保守支援装置においては、ユーザーに対して、部品の交換を促すメッセージ(交換要求情報)に加えて、交換時期が到来していない複数の部品それぞれについて交換指標値である残寿命やコンディション値を表示してそれらの情報をユーザーに提供するように、情報提供手段たる制御部1及び操作表示部3の組合せを構成している。かかる構成では、既に説明したように、残寿命やコンディション値により、交換時期の到来までの残期間をユーザーに把握してもらって、同時交換した方がよいか否かを判断してもらうことができる。
【0095】
また、実施形態に係る保守支援装置においては、判定手段たる制御部1によって交換時期が到来したと判定された部品と、同時交換された部品とについてのみ、ユーザーに対して交換作業を終えたか否かの問い合わせを行いながらユーザーからの交換作業終了情報を受け付ける画面表示を行うように、受付手段たる制御部1及び操作表示部3の組合せを構成している。そして、交換作業終了情報が受け付けられたことに基づいて、その交換作業終了情報に対応する部品のカウント値(判定有用情報)をリセットするように、情報初期化手段としての制御部1を構成している。かかる構成では、既に説明したように、交換していない部品のカウント値を誤ってリセットしてしまうという誤操作の発生を回避することができる。
【0096】
また、実施形態に係る保守支援装置においては、交換時期が到来したと判定されていない複数の部品のうち、交換時期が到来したと判定された部品と同時に交換するものがある場合に、その部品の情報を追加交換部品情報たる同時交換情報としてユーザーに入力してもらう入力手段として、制御部1及び操作表示部3を機能させている。そして、交換時期が到来したと判定された部品に加えて、同時交換情報に対応する部品についても、交換作業終了情報(カウントリセット命令)を受け付けるように、受付手段たる制御部1や操作表示部3を構成している。かかる構成においては、交換時期が到来したと判定した部品についてだけでなく、ユーザーによって同時交換すると決定された部品についても、その交換作業の終了を把握することができる。
【0097】
また、実施形態に係る保守支援装置においては、交換作業終了情報が受け付けられた場合に、その交換作業終了情報に対応する部品を自動で発注する発注手段として、制御部1を機能させているので、ユーザーの部品発注の手間を解消することができる。
【0098】
また、実施形態に係る保守支援装置においては、ユーザーのもとに配設され、且つ、少なくとも、情報取得手段、受付手段、及び入力手段を具備する、制御部1、各種センサ2、操作表示部3等からなる端末機と、ユーザーのもとから離れた場所に配設され、且つ、少なくとも指標値算出手段、判定手段、及び情報提供手段を具備するホスト機たる監視装置900との間における遠隔通信を実現する通信手段(モデム)を設けている。かかる構成では、複雑な演算が必要になる故障予測判定については、各複写機の制御部の代わりに、監視装置900が行うことで、各複写機の制御部の演算負荷を減らすことができる。
【符号の説明】
【0099】
1:制御部
2:各種センサ
3:操作表示部
100:プリンタ部
200:給紙部b
300:スキャナ部
400:原稿搬送部
500:モデム
900:監視装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0100】
【特許文献1】特開2008−8996号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保守対象物に搭載された種々の部品それぞれについて、交換時期が到来したか否かを判定するのに有用な情報である判定有用情報を、前記保守対象物から取得する情報取得手段と、前記種々の部品それぞれについて、前記情報取得手段による前記判定有用情報の取得結果に基づいて交換の必要性を示す交換指標値を算出する指標値算出手段と、前記種々の部品それぞれについて、前記指標値算出手段による算出結果に基づいて交換時期が到来したか否かを判定する判定手段と、判定手段によって交換時期が到来したと判定された部品について、ユーザー又は保守作業者に対して交換を促す情報である交換要求情報を提供する情報提供手段とを備え、前記交換要求情報の提供によって前記保守対象物の保守を支援する保守支援装置において、
ユーザー又は保守作業者に対して、前記交換要求情報に加えて、交換時期が到来していない複数の部品それぞれについて前記交換指標値の情報を提供する処理を実施するように、前記情報提供手段を構成したことを特徴とする保守支援装置。
【請求項2】
請求項1の保守支援装置において、
前記判定手段によって交換時期が到来したと判定された部品についてのみ、保守作業者に対して交換作業を終えたか否かの問い合わせを行いながら保守作業者からの交換作業終了情報を受け付ける受付手段と、前記受付手段によって前記交換作業終了情報が受け付けられたことに基づいて、前記交換作業終了情報に対応する部品の前記判定有用情報を初期化する情報初期化手段とを設けたことを特徴とする保守支援装置。
【請求項3】
請求項2の保守支援装置において、
前記判定手段によって交換時期が到来したと判定されていない複数の部品のうち、交換時期が到来したと判定された部品と同時に交換するものがある場合に、その部品の情報を追加交換部品情報として保守作業者に入力してもらう入力手段を設けるとともに、前記判定手段によって交換時期が到来したと判定された部品に加えて、前記入力手段に入力された追加交換部品情報に対応する部品についても、前記交換作業終了情報を受け付けるように、上記受付手段を構成したことを特徴とする保守支援装置。
【請求項4】
請求項2又は3の保守支援装置において、
前記交換作業終了情報が前記受付手段によって受け付けられた場合に、その交換作業終了情報に対応する部品を自動で発注する発注手段を設けたことを特徴とする保守支援装置。
【請求項5】
請求項2、3又は4の保守支援装置において、
ユーザーのもとに配設され、且つ、少なくとも、前記情報取得手段、前記受付手段、及び前記入力手段を具備する端末機と、ユーザーのもとから離れた場所に配設され、且つ、少なくとも前記指標値算出手段、前記判定手段、及び前記情報提供手段を具備するホスト機との間における遠隔通信を実現する通信手段を設けたことを特徴とする保守支援装置。
【請求項1】
保守対象物に搭載された種々の部品それぞれについて、交換時期が到来したか否かを判定するのに有用な情報である判定有用情報を、前記保守対象物から取得する情報取得手段と、前記種々の部品それぞれについて、前記情報取得手段による前記判定有用情報の取得結果に基づいて交換の必要性を示す交換指標値を算出する指標値算出手段と、前記種々の部品それぞれについて、前記指標値算出手段による算出結果に基づいて交換時期が到来したか否かを判定する判定手段と、判定手段によって交換時期が到来したと判定された部品について、ユーザー又は保守作業者に対して交換を促す情報である交換要求情報を提供する情報提供手段とを備え、前記交換要求情報の提供によって前記保守対象物の保守を支援する保守支援装置において、
ユーザー又は保守作業者に対して、前記交換要求情報に加えて、交換時期が到来していない複数の部品それぞれについて前記交換指標値の情報を提供する処理を実施するように、前記情報提供手段を構成したことを特徴とする保守支援装置。
【請求項2】
請求項1の保守支援装置において、
前記判定手段によって交換時期が到来したと判定された部品についてのみ、保守作業者に対して交換作業を終えたか否かの問い合わせを行いながら保守作業者からの交換作業終了情報を受け付ける受付手段と、前記受付手段によって前記交換作業終了情報が受け付けられたことに基づいて、前記交換作業終了情報に対応する部品の前記判定有用情報を初期化する情報初期化手段とを設けたことを特徴とする保守支援装置。
【請求項3】
請求項2の保守支援装置において、
前記判定手段によって交換時期が到来したと判定されていない複数の部品のうち、交換時期が到来したと判定された部品と同時に交換するものがある場合に、その部品の情報を追加交換部品情報として保守作業者に入力してもらう入力手段を設けるとともに、前記判定手段によって交換時期が到来したと判定された部品に加えて、前記入力手段に入力された追加交換部品情報に対応する部品についても、前記交換作業終了情報を受け付けるように、上記受付手段を構成したことを特徴とする保守支援装置。
【請求項4】
請求項2又は3の保守支援装置において、
前記交換作業終了情報が前記受付手段によって受け付けられた場合に、その交換作業終了情報に対応する部品を自動で発注する発注手段を設けたことを特徴とする保守支援装置。
【請求項5】
請求項2、3又は4の保守支援装置において、
ユーザーのもとに配設され、且つ、少なくとも、前記情報取得手段、前記受付手段、及び前記入力手段を具備する端末機と、ユーザーのもとから離れた場所に配設され、且つ、少なくとも前記指標値算出手段、前記判定手段、及び前記情報提供手段を具備するホスト機との間における遠隔通信を実現する通信手段を設けたことを特徴とする保守支援装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−59044(P2012−59044A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202034(P2010−202034)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]