説明

保持治具の製造方法

【課題】単一の軸線を有する保持孔が形成された弾性部材を備えて成る保持治具を高い生産性で製造することのできる保持治具の製造方法を提供すること。
【解決手段】厚さ方向に貫通する支持孔11が形成された補強部材5と、厚さ方向に貫通する保持孔15が形成された弾性部材6とを備え、保持孔15が支持孔11の内部を通るように補強部材5が弾性部材6に埋設されて成る保持治具1の製造方法であって、補強部材5を埋設するように成形された弾性体7に有底穴17を支持孔11の軸線Cに沿って少なくとも支持孔11を通過するまで形成する工程と、弾性体7を有底穴17が貫通するまで除去して前記保持孔15を形成する工程とを有することを特徴とする保持治具1の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、保持治具の製造方法に関し、さらに詳しくは、単一の軸線を有する保持孔が形成された弾性部材を備えて成る保持治具を高い生産性で製造することのできる保持治具の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ、電話機、ゲーム機、自動車電装機器等の電子機器に用いられる集積回路等には、例えば、積層セラミックチップコンデンサ(単に、チップコンデンサと称することがある。)等の小型部品が搭載されている。このような小型部品を製造する際等には、通常、小型部品を製造可能な小型部品用部材等を保持する保持孔が形成された保持治具が用いられる。このような保持治具として、例えば、特許文献1には、「(a)多数の並列状貫通通路を有するプレート体を備えること。(b)前記通路は弾性壁を有して電気用小型パーツが該通路内に位置可能となっており、かつ該通路の寸法は対応するパーツの寸法よりも小さく、パーツが前記通路内位置で弾発的に把持されること。以上(a)および(b)の構成から成るを特徴とする多数の電気用小型パーツ端部のコーティング用装置」が記載されている。
【0003】
このような保持治具は、例えば、保持孔に対応するピンが立設された成形金型を用いる方法、成形した弾性体にドリル等を用いて保持孔を穿孔する方法等で、製造される。
【0004】
ドリル等を用いて保持孔を穿孔する方法として、例えば、特許文献2には、「金属製矩形プレート体の厚さ方向に形成したゴム層をドリルで切削加工して多数の貫通孔を形成するキャリアプレートの製造方法であって、前記貫通孔をドリルで切削する工程において、まず片側から厚さ方向に約半分の深さまで切削し、その後プレート体を反転させ、反対側からも同様に切削して貫通孔を形成することを特徴とするキャリアプレートの製造方法」(請求項1)、及び、「金属製矩形プレート体の厚さ方向に形成したゴム層をドリルで切削加工して多数の貫通孔を形成するキャリアプレートの製造方法であって、前記貫通孔をドリルで切削する工程において、まず片側から厚さ方向に、貫通孔の径との比が6 以内となる深さまで切削し、その後プレート体を反転させ、反対側からも同様に切削して、次に最初のドリルよりやや小径のドリルで残りを切削して貫通孔を形成することを特徴とするキャリアプレートの製造方法」(請求項3)が記載されている。
【0005】
ところで、特許文献2に記載された方法は、特に、プレート体を反転させると共に少なくとも2回の切削加工を必要とするから、製造工程数が多くなるうえに、各切削加工で切削され1つの貫通孔を構成する2つの孔の軸線が一致せず、貫通孔を貫く1つの軸線が存在しないことがある。特に、小径の貫通孔においては、開口部の寸法精度が優れていても、全体を代表する軸線がなく複数の軸線を有する貫通孔が形成される割合が高くなることが懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭62−20685号公報
【特許文献2】特開2009−39850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、単一の軸線を有する保持孔が形成された弾性部材を備えて成る保持治具を高い生産性で製造することのできる保持治具の製造方法を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段として、
請求項1は、支持孔が形成された補強部材と自身に挿入された小型部品を弾発的に保持する保持孔が形成された弾性部材とを備え、前記保持孔が前記支持孔の内部を通るように前記補強部材が前記弾性部材に埋設されて成る保持治具の製造方法であって、前記補強部材を埋設するように成形された弾性体の一方の表面から他方の表面に向かう有底穴を前記支持孔の軸線に沿って少なくとも前記支持孔を通過するまで前記弾性体に形成する工程と、前記他方の表面側の弾性体を前記有底穴が貫通するまで除去して前記保持孔を形成する工程とを有することを特徴とする保持治具の製造方法であり、
請求項2は、前記弾性体は前記他方の表面側が前記除去される分だけ厚く成形されていることを特徴とする請求項1に記載の保持治具の製造方法であり、
請求項3は、前記有底穴は前記弾性体の厚さの94〜98%の深さまで形成されることを特徴とする請求項1に記載の保持治具の製造方法であり、
請求項4は、前記有底穴はドリルによる穴あけ加工によって形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の保持治具の製造方法であり、
請求項5は、前記有底穴は前記支持孔の軸線と共通する軸線を有するように形成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の保持治具の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
この発明においては、補強部材を埋設した弾性体に支持孔を通過するまで有底穴を形成する工程と、前記有底穴が貫通するまで前記弾性体を除去して保持孔を形成する工程とを有しているから、弾性体の一方の表面から形成された有底穴は単一の軸線を有すると共に、弾性体の両表面側から有底穴を形成することがなく前記2工程で保持孔を形成することができる。したがって、この発明によれば、単一の軸線を有する保持孔が形成された弾性部材を備えて成る保持治具を高い生産性で製造することのできる保持治具の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、この発明に係る保持治具の製造方法によって製造される保持治具の一例である保持治具を示す概略上面図である。
【図2】図2は、図1のA−A線で切断した保持治具における断面の一部を示す概略断面図である。
【図3】図3は、この発明に係る保持治具の製造方法によって製造される保持治具を構成する補強部材の一例である補強部材を示す概略上面図である。
【図4】図4は、この発明に係る保持治具の製造方法を説明する説明図であり、図4(a)はこの発明に係る保持治具の製造方法において補強部材を埋設した状態に成形された弾性体を示す一部断面図であり、図4(b)はこの発明に係る保持治具の製造方法において有底穴が形成された弾性体を示す一部断面図であり、図4(c)はこの発明に係る保持治具の製造方法において弾性体の除去が終了して成る保持治具の断面を示す一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明に係る保持治具の製造方法によって製造される保持治具に保持される小型部品は、小型部品の製造工程、搬送工程等において保持される必要性のある、小型部品を製造可能な小型部品用部材、例えば、小型器具用部材、小型機械要素用部材及び小型電子部品用部材等が挙げられる。また、小型部品の製造には小型部品の搬送工程等も含まれるから、小型部品は、小型部品そのもの、例えば、小型器具、小型機械要素及び小型電子部品等も含まれる。したがって、この発明においては、小型部品と小型部品用部材とは明確に区別される必要はない。小型電子部品及び小型電子部品用部材としては、例えば、チップコンデンサ、インダクタチップ、抵抗体チップ等の完成品若しくは未完成品等、及び/又は、これらを製造可能な例えば、角柱体若しくは円柱体、一端部に鍔を有する角柱体若しくは円柱体、両端部に鍔を有する角柱体若しくは円柱体等が挙げられる。
【0012】
この発明に係る保持治具の製造方法によって製造される保持治具は、支持孔が形成された補強部材と、自身に挿入された小型部品を弾発的に保持する保持孔が形成された弾性部材とを備え、前記保持孔が前記支持孔の内部を通るように前記補強部材が前記弾性部材に埋設されて成る保持治具である。
【0013】
このような保持治具としては、例えば、特許文献1に記載された「コーティング用装置」、特許文献2に記載された「キャリアプレート」、図1〜3に示される保持治具等が挙げられる。
【0014】
前記保持治具の一例として、図1〜3に示される保持治具1を具体的に説明する。この保持治具1は、図1及び図2等に示されるように、支持孔11が形成された補強部材5と、保持孔15が形成された弾性部材6とを備え、保持孔15が支持孔11の内部を通るように補強部材5の一部が弾性部材6に埋設されて成る。そして、この保持治具1は、弾性部材6の弾性力で保持孔15に挿入された小型部品を弾発的に保持することができる。
【0015】
前記補強部材5は、図2によく示されるように、支持孔11が形成された平坦部12が少なくとも後述する弾性部材6に埋設され、弾性部材6が平坦になるように、弾性部材6を補強支持する。この補強部材5は、図2及び図3に示されるように、多数の支持孔11が穿設された矩形の平坦部12と、平坦部12の周囲に、平坦部12の厚さ方向すなわち上面方向及び下面方向に突出した鍔部13とを備えている。この鍔部13はフランジ部と称することもできる。
【0016】
前記鍔部13は、平坦部12を囲繞するように形成され、図2に示されるように、平坦部12の上面方向及び下面方向における突出量が一定になるように調整されている。換言すると、鍔部13は、図3に明確に示されるように、平坦部12を囲繞する長方形の枠を成し、その厚さ方向の略中央部で鍔部13よりも薄い平坦部12に連結している。この鍔部13は、平坦部12の強度を補強し、また、保持治具1としたときの優れた取扱性を確保する。
【0017】
前記平坦部12は、図2及び図3に示されるように、厚さ方向に貫通する支持孔11が形成される領域であり、一定の厚さを有している。平坦部12の厚さは、例えば、5.9〜7.0mmの範囲内に設定される。
【0018】
前記支持孔11は、前記平坦部12内に、多数、例えば、約100個以上、好ましくは少なくとも約3000個、より好ましくは少なくとも約5000個が、平坦部12の厚さ方向に貫通するように、形成されている(図3において、支持孔11の一部を図示していない。)。補強部材5に多数の支持孔11が形成されると、保持治具1を用いて小型部品を製造するときの生産性が向上する。
【0019】
複数の支持孔11は、第1整列方向及び第1整列方向に略垂直に交差する第2整列方向に沿って整列されている。この例において、支持孔11は、平坦部12の縦方向に略平行な第1整列方向と平坦部12の横方向に略並行で前記第1整列方向に垂直に交差する第2整列方向とに沿って、すなわち、縦横方向に沿って、所定の間隔をおいて碁盤目状に穿孔されている。この例においては、前記第1整列方向及び前記第2整列方向に沿う隣接する支持孔11の間隔は同じ間隔に調整されている。支持孔11の前記間隔は、前記方向に沿って隣接する支持孔11の軸線同士の距離であり、形成する支持孔11の数、保持する小型部品の寸法等に応じて適宜に調整される。
【0020】
平坦部12の表面に開口する支持孔11における開口部の形状、及び、支持孔11を平坦部12に平行な水平面で切断したときの断面形状は、特に限定されず、例えば、円形、楕円形、矩形、多角形等の形状を任意に選択することができる。前記開口部の形状及び前記断面形状は同じ形状であるのがよい。この例においては、開口部の形状及び前記断面形状が同一の円形であり、同一の直径を有している。支持孔11の直径は、形成する支持孔11の数、保持する小型部品の寸法等に応じて適宜に調整される。
【0021】
前記補強部材5は、小型部品の生産性、小型部品の寸法及び保持治具1の強度等を考慮して、鍔部13及び平坦部12の寸法が調整される。
【0022】
前記弾性部材6は、図1及び図2に示されるように、多数の保持孔15が穿孔され、前記平坦部12を内部に収容可能な空隙を有している。そして、図2に示されるように、弾性部材6は、補強部材5の平坦部12を埋設し、換言すると、平坦部12の両面を被覆すると共に補強部材5の支持孔11に貫入し、補強部材5の鍔部13と面一になるように、形成されている。すなわち、弾性部材6は、平坦部12の表面に配置され、補強部材5の鍔部13によって囲繞されている。このように、弾性部材6は、その一部が補強部材5の支持孔11に貫入してなる柱状体を介して、補強部材5の両面に配設された2つの板状成形体が一体に成っている。さらにいうと、弾性部材6は、平坦部12の一方の表面を覆う第1の板状成形体と、平坦部12の他方の表面を覆う第2の板状成形体と、第1の板状成形体及び第2の板状成形体を連結する柱状体とを備え、前記柱状体は前記支持孔11の寸法と同じ寸法を有している。ここで、前記弾性部材6は、その保持孔15が支持孔11の内部を通るように平坦部12を埋設している。弾性部材6は、図2に示されるように、好ましくは保持孔15が自身を貫く1本の軸線Cを有し、特に好ましくは前記軸線Cは支持孔11の軸線Cに一致するように、前記補強部材5特に平坦部12を埋設している。このように弾性部材6が形成されると、弾性部材6と補強部材5との密着性に優れるうえ小型部品の挿入及び抜取りが容易になる。
【0023】
弾性部材6は、図1及び図2に示されるように、多数、例えば、約100個以上、好ましくは少なくとも約3000個、より好ましくは少なくとも約5000個が、弾性部材6の厚さ方向に貫通するように、形成されている(図1において、保持孔15の一部を図示していない。)。この保持孔15は、自身に挿入又は貫入された小型部品をその弾性力で弾発的に保持することができる。弾性部材6に多数の保持孔15が形成されると、保持治具1を用いて小型部品を製造するときの生産性が向上する。
【0024】
複数の保持孔15は、前記支持孔11と基本的に同様に、平坦部12の縦方向に略平行な第1整列方向と平坦部12の横方向に略並行で前記第1整列方向に垂直に交差する第2整列方向とに沿って、すなわち、縦横方向に沿って、所定の間隔をおいて碁盤目状に穿孔されている。この例においては、前記第1整列方向及び前記第2整列方向に沿う隣接する保持孔15の間隔は同じ間隔に調整され、通常、前記支持孔11の間隔と一致している。保持孔15の前記間隔は、前記方向に沿って隣接する保持孔15の軸線同士の距離であり、形成する保持孔15の数、保持する小型部品の寸法等に応じて適宜に調整される。
【0025】
弾性部材6の表面に開口する保持孔15における開口部の形状、及び、保持孔15を弾性部材6に平行な水平面で切断したときの断面形状は、特に限定されないが、容易に形成できる点で、前記開口部の形状及び前記断面形状は同じ円形であるのがよい。この例においては、開口部の形状及び前記断面形状は同一の直径を有している。保持孔15の直径は、形成する保持孔15の数、保持する小型部品の寸法等に応じて適宜に調整される。
【0026】
弾性部材6は、小型部品を挿入及び/又は抜き取る際に弾性変形し、かつ、破損しないように、所定の伸び、引張強さ及び硬度を有しているのが好ましい。例えば、JIS K6249に規定の切断時伸び(引張速度500mm/min)は、200〜1000%であるのが好ましく、400〜900%であるのが特に好ましく、JIS K6249に規定の引張強さ(引張速度500mm/min)は、5〜15MPaであるのが好ましく、7〜14MPaであるのが特に好ましく、JIS K6253に規定の硬度(JIS A)は、20〜80であるのが好ましく、40〜60であるのが特に好ましい。前記JIS K6249に規定の切断時伸び及び引張強さは、23℃、湿度50%の環境下で、3号ダンベル形状の試験片を作製して、切断時伸びはつかみ具間隔を標線距離で20mmに設定して、実施する。
【0027】
前記弾性部材6は、引き裂き強度が5〜50kN/mであるのが好ましく、30〜50kN/mであるのが特に好ましい。前記弾性部材6が前記範囲の引き裂き強度を有していると、小型部品の挿入及び/又は抜き取り操作を繰り返しても、弾性部材6が破損しにくく、また多数の小型部品をほぼ均一な弾性力で保持することができる。前記引き裂き強度は、前記弾性部材6と同一の材料で作製された「クレセント型試験片」又は前記弾性部材6から切り出された「クレセント型試験片」を用いて、JIS K6252に規定された方法で測定することができる。
【0028】
弾性部材6の表面は、保持治具1が小型部品の製造方法、例えば、小型部品用部材の電極形成工程に使用されるから、製品の均質性を実現し、また、弾性部材6の表面に導電性ペースト等が付着しないように、平滑であるのが好ましい。弾性部材6の表面を鏡面にするには、内面が鏡面とされた金型を用いて弾性部材6を成形する方法、成形後の表面を常法に従って研磨処理又は研削処理する方法等を選択すればよい。
【0029】
前記弾性部材6は、小型部品の生産性、小型部品の寸法及び発揮される弾性力等を考慮して、通常、前記鍔部13と面一になるように、その寸法及び厚さが調整される。すなわち、弾性部材6の厚さは、保持治具1の厚さと同じ厚さに調整され、通常、8.9〜10mmに調整される。
【0030】
このように構成される保持治具は、例えば、前記小型部品の保持用として特に好適であり、少なくとも二箇所に電極形成用の導電性ペーストを塗布する必要のある小型部品の保持用としてさらに好適である。
【0031】
そして、例えば前記保持治具1は、小型部品の軸線が保持孔15の軸線と略平行となる状態、好ましくは一致する状態に小型部品を保持孔15に挿入して弾発的に保持する。そして、小型部品を保持した保持治具1は、小型部品の製造工程、搬送工程等に供される。保持治具1に小型部品を保持するには、例えば、保持孔15と同数の貫通孔が保持孔15と同じ間隔で同様に整列された整列板を準備し、貫通孔と保持孔15とが一致するように、整列板を保持治具1の上に重ね合わせる。次いで、整列板の貫通孔それぞれに小型部品を挿入し、小型部品を平坦な板状部材で均一に保持治具側に押圧する。そうすると、小型部品は保持孔15に前記状態となるように挿入され、弾発的に保持される。
【0032】
この発明に係る保持治具の製造方法の一例として前記保持治具1を製造する製造方法(以下、この発明に係る一製造方法と称することがある。)を説明する。この発明に係る一製造方法は、補強部材5を埋設するように成形された弾性体7の一方の表面7aから他方の表面7bに向かう有底穴17を支持孔11の軸線Cに沿って少なくとも支持孔11を通過するまで弾性体7に形成する工程と、前記他方の表面7b側の弾性体7を有底穴17が貫通するまで除去して保持孔15を形成する工程とを有することを特徴とする。
【0033】
この発明に係る一製造方法においては、まず、図4(a)に示されるように、弾性部材6を構成する弾性体7、すなわち、保持孔15が形成されていない弾性部材を成形する。換言すると、補強部材5を埋設する弾性体7を成形する工程を行う。この工程を行うには、補強部材5、弾性体7を形成する弾性材料及び成形金型を準備する。
【0034】
補強部材5は、例えば、支持孔11が形成されていない板状体を作製した後に支持孔11を形成して、作製される。前記板状体は、例えば、鍔部13の厚さと同じ又はそれよりも厚い板体から平坦部12とその周囲に鍔部13とを有する板状体を所望寸法に切り出して、作製される。又は、前記板状体は、支持孔11が形成された平坦部12と鍔部13とを別個に作製し、溶接又は接着等の接合手段によって、平坦部12と鍔部13とを所望の位置に接合して、作製される。このようにして作製された板状体の平坦部12に、所定形状を有する多数の支持孔11を、フライス盤、ボール盤、ワイヤーカット機等を用いた切削加工、研削加工又はワイヤーカット等によって、前記第1整列方向及び前記第2整列方向に沿って所定の間隔で整列されるように、穿設する。平坦部12の表面に、弾性部材6との密着を高めるために、接着剤又はプライマー等が塗布されてもよい。
【0035】
補強部材5は、弾性部材6を平坦な形状に維持することのできる材料で形成されていればよく、このような材料として、金属及び樹脂等が挙げられる。具体的には、金属として、ステンレス鋼、炭素鋼、アルミニウム又はアルミニウム合金及びニッケル合金等が挙げられ、樹脂として、例えば、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン及びポリ塩化ビニル等が挙げられる。補強部材5は、ステンレス鋼、アルミニウム又はアルミニウム合金及びポリフェニレンスルフィド樹脂等で形成されるのが好ましく、特にアルミニウム又はアルミニウム合金で形成されるのが好ましい。
【0036】
前記成形金型は、自身に収納した補強部材5の少なくとも平坦部12が、成形される弾性体7に埋設されるように、弾性体7を成形可能な金型であればよく、例えば、特開2006−344826号公報の図2に示される「成形金型」等が挙げられる。成形金型の一例をもう少し詳しく説明すると、この発明に係る一製造方法に用いられる成形金型は、凹部を有する上側成形金型と凹部を有する下側成形金型とから成り、前記凹部が互いに向かい合うように上側成形金型と下側成形金型とを重ね合せたときに、上側成形金型に形成された凹部と下側成形金型に形成された凹部とで補強部材5を収容可能な収納凹部が形成される成形金型が挙げられる。この成形金型における凹部の内表面は鏡面加工されていてもよい。
【0037】
前記弾性材料は、弾性部材6としたときに弾性変形し小型部品を挿入保持することのできる材料で形成される。このような材料として、例えば、ゴム及びエラストマー等が挙げられ、より具体的には、シリコーンゴムが挙げられる。シリコーンゴムの中でも、高重合度の線状ポリジメチルシロキサン若しくはその共重合体を架橋してゴム弾性を付与したシリコーンゴム、又は、耐酸性のシリコーンゴムが好ましい。高重合度の線状ポリジメチルシロキサンを架橋したシリコーンゴムとしては、例えば、商品名「KE−1950−50」(信越化学工業株式会社製)等を入手することができる。
【0038】
このようにして準備した成形金型の収納凹部に補強部材5を収納して、成形金型の前記凹部及び補強部材で画成されたキャビティに、液状の前記弾性材料を充填して弾性体7を成形する。弾性材料の充填及び成形方法は、特に限定されず、例えば、圧縮成形、射出成形、トランスファー成形等の成形方法を採用することができる。成形温度及び成形時間等は、使用する弾性材料が硬化する温度及び時間であればよく、弾性材料に応じて、任意に調整される。
【0039】
弾性体7の成形工程において、成形される弾性体7は、図4(a)及び図4(b)に破線で示されるように、その他方の表面7b側が後述する工程において除去される分だけ厚く成形されるのが好ましい。この場合において、弾性体7は、図4(a)に示されるように、保持孔15が形成された弾性部材6と、弾性部材6の他方の表面6bに好ましくは一体的に連設された除去予定領域7cとを有して成る。前記除去予定領域は後述する工程で除去される弾性体7の他方の表面側領域である。前記除去予定領域は、例えば、約0.9mm以下の厚さにすることができる。このように弾性体7の厚さが調整されていると、保持孔15を形成するために弾性体7を除去しても所定の厚さの弾性部材6を形成することができる。
【0040】
このようにして、図4(a)に示されるように、補強部材5の前記平坦部12を埋設した状態に弾性体7が成形される。具体的には、補強部材5の平坦部12を埋設すると共に保持孔15が形成されていない弾性体7が補強部材5と一体成形されることができる。
【0041】
成形された弾性体7の表面に成形バリが生じていた場合、又は、弾性体7の平面度を向上させる場合等には、研削等の表面処理が行われてもよい。例えば、表面処理として、平面研削、フライス研削、ラッピング等が挙げられる。また、弾性体7の表面を鏡面加工することもできる。なお、弾性体7の成形後に、弾性体7の硬化を確実にするため、二次加熱又は熱処理等を行ってもよい。
【0042】
このようにして形成される弾性体7は、前記弾性部材6と同様の伸び、引張強さ及び硬度を有しているのが好ましい。また、前記弾性体7は、引き裂き強度が5〜50kN/mであるのが好ましく、30〜50kN/mであるのが特に好ましい。弾性体7が前記範囲の引き裂き強度を有していると、穴加工工具の軸線に垂直な断面形状とほぼ同一の断面形状を有する有底孔を穿孔することができる。弾性体7の伸び、引張強さ、硬度及び引き裂き強度は前記弾性部材6と基本的に同様にして測定することができる。
【0043】
この発明に係る一製造方法においては、次いで、成形された弾性体7に有底穴17を形成する。すなわち、弾性体7の一方の表面7aから他方の表面7bに向かう有底穴17を、支持孔11の軸線Cに沿って少なくとも支持孔11を通過するまで、弾性体7に形成する工程を行う。この工程は、例えば、有底穴17を形成することのできるフライス盤、ボール盤、NCマシニングセンタ、ドリルマシン等を用いて、行う。これらの装置には、有底穴17を形成可能なドリル8、例えば、樹脂用ドリルが装着されている。この樹脂用ドリル8は、形成する保持孔15の直径と略同一の外径又はわずかに大きな外径、例えば、保持孔15の直径に対して0.05〜0.3mm程度大きな外径を有するものであればよく、その先端部形状等は特に限定されない。ここで、この発明において、前記ドリル8の外径は、通常、山径をいう。
【0044】
この工程においては、図4(a)に示されるように、前記ドリル8を弾性体7に埋設された補強部材5の支持孔11の軸線C上に配置する。このとき、ドリル8の軸線と支持孔11の軸線Cとは一致している。このドリル8を、ドリル8が配置された側である弾性体7の一方の表面7aから他方の表面7bに向かって、少なくとも支持孔11を通過するまで、軸線Cに沿って降下させる。このとき、ドリル8は弾性体7の厚さの94〜98%の位置まで降下されるのが、有底穴17すなわち保持孔15の高い寸法精度を維持しつつ、他方の表面7b側の弾性体7を少量除去するだけで保持孔15を形成することができる点で、好ましい。この例においては、ドリル8は、前記他方の表面7b近傍まで、換言すると、図4(a)及び図4(b)に破線で示される除去予定領域まで降下されるのが特に好ましい。なお、ドリル8の降下量は、好ましくは弾性体7の厚さの94〜98%に設定されるが、弾性体7の変形による誤差を考慮して前記範囲よりもわずかに例えば1%程度深く、すなわち、弾性体7の厚さの95〜99%の位置に設定されることもできる。
【0045】
このようにしてドリルによる穴あけ加工を行うと、図4(b)に示されるように、弾性体7の一方の表面7aに開口する開口部17aと少なくとも支持孔11を超え他方の表面7b側に位置する底部17bとを有すると共に、支持孔11と軸線を共有する有底穴17が形成される。この有底穴17の底部17bは弾性体7の厚さに対して94〜98%の深さにあるのが好ましく、前記他方の表面7b近傍、換言すると、前記除去予定領域にあるのが特に好ましい。前記厚さを有する弾性部材6の場合には、例えば、有底穴17は、前記弾性部材7の厚さよりも0.2〜0.9mm浅い深さに底部17bを有しているのが好ましい。
【0046】
前記ドリル8の降下量、すなわち、有底穴17の底部17bの深さは、図4(b)に示されるように、少なくとも支持孔11を超える量又は支持孔11を超えた深さにある。前記ドリル8の降下量等がこのような量等にあると、弾性体7を大幅に除去することなく、作業性にも優れる。前記ドリル8の降下量、すなわち、有底穴17の底部17bの深さが、好ましくは弾性体7の厚さの94〜98%の位置又は深さにあると、特に好ましくは前記除去予定領域内の位置又は深さにあると、形成される有底穴17の直径の高い均一性を損なうことなく、他方の表面7b側の弾性体7における除去量を大幅に低減することができる。なお、前記数値範囲の境界値94%は、弾性体7の除去量及び作業性を考慮して決定される値であり、前記ドリル8の降下量が支持孔11を超えた位置又は深さにあれば前記94%未満であってもこの発明の前記目的を達成することができる。また、前記ドリル8の降下量、すなわち、有底穴17の底部17bの深さは、用いるドリルの先端部形状によらず、弾性体7の一方の表面7aから、ドリルの先端部における最先端の位置すなわち有底穴17における底部17bの最深部までの距離である。
【0047】
この工程において、前記ドリルを、例えば、5000〜60000rpmの回転数で回転させると、径が均一な有底穴17を形成することができる。
【0048】
この発明に係る一製造方法においては、次いで、前記他方の表面7b側の弾性体7、前記除去予定領域7cを形成した場合にはこの前記除去予定領域7cを、有底穴17が貫通するまで除去する。弾性体7の除去は、例えば、研磨機、フライス盤、ボール盤、ワイヤーカット機、NCマシニングセンタを用いた研磨加工、切削加工、研削加工又はワイヤーカット等によって、行うことができる。前記除去予定領域7cの除去は、例えば、研磨機を使用する場合には、砥石の周速度20〜30mm/s、切り込み量10〜20μmの条件で、実施することができる。
【0049】
このようにして他方の表面7b側の弾性体7を有底穴17の底部17bに到達するまで除去すると、図4(c)に示されるように、有底穴17は弾性体7の一部が除去されて成る弾性部材6の他方の表面6bに開口して、弾性部材6をその厚さ方向に貫通し、単一の軸線Cを有する保持孔15が形成される。このとき、弾性体7の他方の表面7b側を除去するために弾性体7を反転させても、形成される保持孔15の軸線が単一のまま変化することはない。
【0050】
このようにして、保持治具1が製造される。
【0051】
この発明に係る一製造方法によれば、補強部材5を埋設した弾性体7に支持孔11を通過するまで有底穴17を形成する工程と、有底穴17が貫通するまで弾性体7を除去して保持孔15を形成する工程とを有しているから、弾性体7を反転させて弾性体7の両表面それぞれから2つの穴を別々に形成する必要がない。それ故、この発明に係る一製造方法によれば、弾性体7の一方の表面7aから形成された有底穴17が単一の軸線Cを有すると共に、前記2工程で保持孔15を形成することができる。したがって、この発明に係る一製造方法によれば、単一の軸線Cを有する保持孔15が形成された弾性部材6を備えて成る保持治具1を、高い生産性で、具体的には、従来の製造方法に対して少ない工程数及び短時間で、製造することができる。
【0052】
この発明に係る保持治具の製造方法は、前記した実施例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。
【0053】
例えば、有底穴17を弾性体7に形成する工程において、一度の操作で形成する有底穴17の数は特に限定されず、有底穴を1つずつ形成しても、図4に示されるように3つずつ形成してもよく、使用する装置に装着可能なドリル数の範囲内で適宜に調整することができる。
【0054】
前記した、この発明に係る一製造方法においては、弾性体7の他方の表面7b側を研磨除去する分だけ厚く形成し、この表面7b側の弾性体7を研磨除去しているが、この発明においては、弾性体を研磨除去する分だけ厚く形成せずに弾性体の他方の表面側を除去することもでき、また、補強部材の鍔部も前記弾性体と共に研磨除去することもできる。この場合に、研磨除去される鍔部は、研磨除去される分だけ厚く形成されなくてもよく、また、前記弾性体と同様に他方の表面側を研磨除去される分だけ厚く形成されてもよい。
【0055】
この発明に係る保持治具の製造方法によって製造される保持治具は、前記した保持治具1に限定されることはない。例えば、前記保持治具1は、前記第1整列方向及び前記第2整列方向に沿う支持孔11の間隔が同一間隔に設定され、かつ、前記第1整列方向及び前記第2整列方向に沿う保持孔15の間隔が同一間隔に設定されているが、この発明において、第1整列方向及び第2整列方向に沿う支持孔の間隔は異なる間隔に設定されていてもよく、また、第1整列方向及び第2整列方向に沿う保持孔の間隔は異なる間隔に設定されていてもよい。
【0056】
前記保持治具1において、補強部材5の支持孔11及び弾性部材6の保持孔15はいずれも第1整列方向及び第2整列方向に沿って碁盤目状に整列されているが、この発明において、貫通孔及び保持孔は、例えば、正六角形が最密に配置されるハニカム配列、45度回転して縦横に配列されるスクエア配列、一点から放射状とされる放射形状の配列、放射曲線形状の配列、同心円形状の配列、一点から渦巻き状とされる渦巻き形状の配列等に従って、穿孔されてもよい。
【0057】
保持治具1において、図3に示されるように、補強部材5は平坦部12の周囲に鍔部13が形成されているが、この発明においては、鍔部は、平担部の周囲に形成されている必要はなく、形成されてなくてもよく又は平坦部の少なくとも1辺に形成されてもよい。さらに、前記保持治具1において、前記補強部材5は平坦部12の上面方向及び下面方向における突出量が一定となる鍔部13を有しているが、この発明において、補強部材は平坦部の上面方向及び下面方向における突出量が異なる鍔部を有していてもよい。
【0058】
保持治具1において、図1〜図3に示されるように、支持孔11は、保持孔15の開口部と同様の開口部形状に穿孔されているが、この発明においては、支持孔は、保持孔の開口部と異なる開口部形状に穿孔されてもよい。
【実施例】
【0059】
(実施例1)
厚さ8.9mmのアルミニウム板を縦180mm×横270mmに切り出し、その縦150mm×横225mmの長方形の領域を両表面から深さ1.5mmまで切削して、周囲に鍔部13を有する平坦部12を形成した。この平担部12に、1.6mmの直径を有する円形断面の支持孔11を、縦方向及び横方向に2.03mmの間隔で、縦71列及び横108列に整列した状態に、穿孔した。このようにして、図3に示される補強部材5を作製した。
【0060】
次いで、前記補強部材5を収納可能な収納凹部を有する成形金型に、プライマー(プライマーNo.4、信越化学工業株式会社製)を塗布した補強部材5を収納して、成形金型と補強部材5とで形成されたキャビティにシリコーンゴム(信越化学工業株式会社製、商品名「KE−1950−50」)を充填した。この状態のまま成形金型ごと180℃で5分間加熱し、補強部材5とシリコーンゴムとを一体成形して、図4(a)に示される弾性体7を得た。この弾性体7の他方の表面7b側を一方の表面7a側よりも約0.8mm厚くして、鍔部13の表面よりも約0.8mm高い除去予定領域7cを形成した。
【0061】
この弾性体7の切断時伸び、引張強さ及びJIS A硬度として、この弾性体7を形成する前記シリコーンゴムを同様に成形してJIS K6249及びJIS K6253に記載の前記ゴム試験片をそれぞれ作製し、前記測定方法に準拠して、ゴム試験片の切断時伸び、引張強さ及びJIS A硬度をそれぞれ測定した。また、前記弾性体7の引き裂き強度として、この弾性体7を形成する前記シリコーンゴムを用いてクレセント型試験片を作製し、この試験片の引き裂き強度をJIS K6252に規定された方法に準拠して前記条件で測定した。その結果、弾性体7の切断時伸び、引張強さ、JIS A硬度及び引き裂き強度はそれぞれ、600%、8.8MPa、49及び40kN/mであった。
【0062】
次いで、ドリルマシン(ファナック株式会社製)の回転軸に外径0.6mmの樹脂用ドリル8をその回転軸にセットして、この樹脂用ドリル8の軸線が支持孔11の軸線C上に配置されるように、前記弾性体7をセットした。次いで、この樹脂用ドリル8を、20000rpmで回転させつつ、弾性体7に向かって、形成される有底穴17の底部17bの深さが9.5mm(弾性体7の厚さの98%)となるまで、前記軸線Cに沿って降下させて、有底穴17を形成した。この有底孔17の底部は鍔部13よりも他方の表面7b側に位置していた。
【0063】
次いで、平面研削盤研磨機(株式会社岡本工作機械製作所製)を準備して、砥石#40(株式会社ノリタケカンパニーリミテド)を使用し、砥石の周速度25m/s、切り込み量20μmの条件で、前記弾性体7における他方の表面7b側の厚さ約0.8mm分である除去予定領域7c(弾性体7の厚さの8.2%)を研磨除去して、保持孔15を形成した。
【0064】
このようにして、支持孔11と同数の保持孔15を支持孔11と同軸となるように形成して、保持治具を製造した。
【0065】
(実施例2及び3)
前記底部17bの深さを9.2mm(弾性体7の厚さの95%)又は9.3mm(弾性体7の厚さの96%)に変更したこと以外は、実施例1と基本的に同様にして、保持治具を製造した。
【0066】
(実施例4及び5)
前記樹脂用ドリル8に代えて、この樹脂用ドリル8よりも大きな外径0.7mmを有する樹脂用ドリル、又は、この樹脂用ドリルよりも小さな外径0.5mmを有する樹脂用ドリルを用いたこと以外は、実施例1と基本的に同様にして、保持治具を製造した。
【0067】
(実施例6)
前記支持孔11の間隔を2.28mmに変更し、縦63列及び横96列に整列した状態に支持孔11を穿孔したこと以外は、実施例1と基本的に同様にして、保持治具を製造した。
(実施例7)
前記弾性体7を前記鍔部13の厚さ8.9mmと同一の厚さとなるように成形し、有底穴17の底部17bの深さを8.7mm(弾性体7の厚さの98%)となるまで樹脂用ドリル8を降下させ、かつ、他方の表面7b側の弾性体7の研磨除去量を0.5mmに変更し、前記弾性体7と共に鍔部13を0.5mm研磨除去したこと以外は、実施例1と基本的に同様にして、保持治具を製造した。なお、この保持治具において、前記鍔部13は、平坦部12の上面方向への突出量が1.5mmで、下面方向すなわち前記他方の表面7b側への突出量が1.0mmであった。
【0068】
(比較例1)
実施例1と同様にして補強部材5の鍔部13の厚さと同一の厚さとなるように成形した弾性体7の一方の表面7aから他方の表面7bに前記樹脂用ドリル8を貫通させて保持孔15を形成し、保持治具を作製した。
【0069】
(保持孔の評価)
製造した各保持治具における保持孔15を任意に10個選択して、弾性部材6の両表面に開口した保持孔15の開口部における開口径(算術平均値)を測定し、その形状を確認した。その結果、実施例1〜7の保持治具における保持孔15は、いずれも、両表面の開口径が同一であり、かつ、開口部形状も円形であった。これに対して、比較例1の保持治具における保持孔15は、弾性体7の他方の表面7bに開口した開口部近傍の弾性部材6が一部欠落して、開口部全体が前記表面上になく、また、開口径も小さくなっていた。
【0070】
また、選択した保持孔15における軸線Cを、表面及び裏面における任意の30個の保持孔15の中心のXY座標を測定することで、測定した。保持孔15の軸線CをCNC画像測定器「NEXIV(株式会社ニコン)」によって確認したところ、実施例1〜7の保持治具における保持孔15の大部分が単一の軸線Cを有していた。
【符号の説明】
【0071】
1 保持治具
5 補強部材
6 弾性部材
6b 他方の表面
7 弾性体
7a 一方の表面
7b 他方の表面
7c 除去予定領域7c
8 ドリル
11 支持孔
12 平坦部
13 鍔部
15 保持孔
17 有底穴
17a 開口部
17b 底部
C 軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持孔が形成された補強部材と、自身に挿入された小型部品を弾発的に保持する保持孔が形成された弾性部材とを備え、前記保持孔が前記支持孔の内部を通るように前記補強部材が前記弾性部材に埋設されて成る保持治具の製造方法であって、
前記補強部材を埋設するように成形された弾性体の一方の表面から他方の表面に向かう有底穴を、前記支持孔の軸線に沿って少なくとも前記支持孔を通過するまで、前記弾性体に形成する工程と、
前記他方の表面側の弾性体を前記有底穴が貫通するまで除去して前記保持孔を形成する工程とを有することを特徴とする保持治具の製造方法。
【請求項2】
前記弾性体は、前記他方の表面側が前記除去される分だけ厚く成形されていることを特徴とする請求項1に記載の保持治具の製造方法。
【請求項3】
前記有底穴は、前記弾性体の厚さの94〜98%の深さまで形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の保持治具の製造方法。
【請求項4】
前記有底穴は、ドリルによる穴あけ加工によって、形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の保持治具の製造方法。
【請求項5】
前記有底穴は、前記支持孔の軸線と共通する軸線を有するように、形成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の保持治具の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−96966(P2011−96966A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−251937(P2009−251937)
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】