説明

保持装置、インプリント装置及び物品の製造方法

【課題】モールドの形状及び位置の少なくとも一方の調整に有利な保持装置の提供。
【解決手段】モールド3を保持する保持装置は、モールド3を引きつけて保持する保持部12と、モールド3の側面に対向するように保持部に支持され、側面に力を加えてモールド3を変形させるアクチュエーター11と、モールド3の側面に対向するように保持部に支持され、力の方向における側面の位置を検出する検出器23とを有する。このとき、検出器23が位置を検出する側面内の第1領域は、アクチュエーター11が力を加える側面内の第2領域の内側にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持装置、インプリント装置及び物品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの微細化の要求が進み、従来のフォトリソグラフィ技術に加え、モールドと基板上の未硬化樹脂とを互いに押し付けて、モールドに形成された微細な凹凸パターンに対応する樹脂のパターンを基板上に形成する微細加工技術が注目を集めている。この技術は、インプリント技術とも呼ばれ、基板上に数ナノメートルオーダーの微細な構造体を形成することができる。例えば、インプリント技術の一つとして、光硬化法がある。光硬化法は、まず、基板(ウエハ)上のショット領域(インプリント領域)に紫外線硬化樹脂(インプリント樹脂、光硬化樹脂)を塗布する。次に、この樹脂(未硬化樹脂)とモールドとを互いに押し付ける。そして、紫外線を照射して樹脂を硬化させたうえで離型することにより、樹脂のパターンが基板上に形成される。
【0003】
上記技術を採用したインプリント装置は、一般に半導体プロセス中で発生するパターンの倍率誤差を補正する倍率補正機構を備える。この倍率補正機構は、駆動部や該駆動部の駆動量を制御するためのセンサー等により構成され、モールドの外周部を取り囲むように複数箇所に設置される。この場合、駆動部は、モールドに対して外力を与えることで、モールド自体を変形させ、モールドに形成されたパターン形状を補正する。このとき、パターン形状は、パターン同士の重ね合わせ精度に影響を与えるため、パターンの微細化に対応するために数nm以下の高精度な補正が必要である。例えば、特許文献1は、モールドの側面に圧縮力を加えて倍率補正を行う補正装置を開示している。また、特許文献2は、モールドの側面に圧縮力を加えるアクチュエーターをモールドの側面と支持構造体との間に設置し、アクチュエーターと支持構造体との間に設置された力センサーによりアクチュエーターの駆動量を制御するインプリント装置を開示している。
【0004】
更に、樹脂をモールドの凹凸パターンに充填する際に、充填部の気泡を抑制し、形成されるパターンの欠陥を減少させるために、モールドの外周部から充填部に向けてヘリウム等のガスを必要量供給することが望ましい。したがって、インプリント装置は、通常、モールド付近にガス供給装置を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2008−504141号公報
【特許文献2】特開2009−141328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示す補正装置は、アクチュエーター及びリンク機構により構成され、モールドの外周部側面を取り囲むように、計16個設置されている。しかしながら、パターンの高精度な形状補正が要求される場合には、更に設置個数が増加する可能性がある。この補正装置に加えて、インプリント装置では、モールドの外周部の複数箇所に、上述のようなガス供給装置やモールドの位置を計測する位置センサー等を設置する。したがって、この場合、モールドの外周部のスペースは、各種機構を配置するには十分とは言えず、更なるセンサーの設置場所を確保できない。また、ガス供給装置の配管スペースが限られるため、ガスの供給量が不十分となる可能性がある。
【0007】
また、特許文献2に示すインプリント装置のように、力センサーによって駆動量を制御する場合は、モールドと駆動部との接触摩擦による影響を受け易い。また、押印動作や離型動作により生じる種々の力によっては、力センサーの出力値が変化する。したがって、この出力値の変化に起因して駆動量の計測誤差が発生し、パターンの高精度な形状補正が困難となる場合がある。
【0008】
更に、モールドの交換時における位置変化も、パターン同士の重ね合わせ精度に影響を与える。したがって、モールドの交換時の位置ずれを監視し、また、この位置ずれを補正した際に発生する駆動部からの熱を抑える必要がある。更に、押印動作、及び離型動作時には、モールドに力が働くため、モールドの変形量及び位置を監視する必要がある。
【0009】
本発明は、モールドの形状及び位置の少なくとも一方の調整に有利な保持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様は、モールドを保持する保持装置であって、モールドを引きつけて保持する保持部と、モールドの側面に対向するように保持部に支持され、側面に力を加えてモールドを変形させるアクチュエーターと、モールドの側面に対向するように保持部に支持され、力の方向における側面の位置を検出する検出器とを有し、検出器が位置を検出する側面内の第1領域は、アクチュエーターが力を加える側面内の第2領域の内側にあることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の第2の態様は、モールドを保持する保持装置であって、モールドを引きつけて保持する保持部と、モールドの側面に対向するように保持部に支持され、側面に力を加えてモールドを変形させるアクチュエーターと、モールドの側面に対向するように保持部に支持され、力の方向における側面の位置を検出する検出器と、モールドの位置が目標値となるように、検出器の出力に基づいてアクチュエーターを制御する制御部とを有することを特徴とする。
【0012】
更に、本発明の第3の態様は、モールドを保持する保持装置であって、モールドを引きつけて保持する保持部と、モールドの側面に対向するように保持部に支持され、側面に力を加えてモールドを変形させるアクチュエーターと、モールドの側面に対向するように保持部に支持され、力の方向における側面の位置を検出する検出器と、保持部の引きつけの力を低減させて、モールドの位置及び形状の少なくとも一方が目標値となるように、検出器の出力に基づいてアクチュエーターを制御する制御部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、例えば、モールドの形状及び位置の少なくとも一方の調整に有利な保持装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係るインプリント装置の構成を示す概略図である。
【図2】第1実施形態に係るモールドの保持装置の構成を示す概略図である。
【図3】倍率補正機構の構成を示す概略図である。
【図4】第1実施形態に係るインプリント装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】第2実施形態に係るモールドの保持装置の構成を示す概略図である。
【図6】第4実施形態に係るインプリント装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について図面等を参照して説明する。
【0016】
(インプリント装置)
まず、本発明の実施形態に係るインプリント装置の構成について説明する。図1は、インプリント装置の構成を示す概略図である。本実施形態におけるインプリント装置は、半導体デバイス製造工程に使用される、被処理基板であるウエハ上(基板上)に対してモールドの凹凸パターンを転写する加工装置であり、インプリント技術の中でも光硬化法を採用した装置である。なお、以下の図において、モールドに対する紫外線の照射軸に平行にZ軸を取り、該Z軸に垂直な平面内で後述のモールドベースに対してウエハが移動する方向にX軸を取り、該X軸に直交する方向にY軸を取って説明する。本発明のインプリント装置1は、照明系ユニット2と、モールド3と、モールド保持装置4と、ウエハ5と、ウエハステージ6と、塗布装置7と、モールド搬送装置8と、制御装置9とを備える。
【0017】
照明系ユニット2は、インプリント処理の際に、モールド3に対して紫外線10を照射する照明手段である。この照明系ユニット2は、光源と、該光源から射出された紫外線をインプリントに適切な光に調整するための複数の光学素子から構成される。また、モールド3は、外周部が矩形であり、ウエハ5に対する対向面に所定のパターン(例えば、回路パターン等の凹凸パターン)が3次元状に形成された型(型材、金型)である。凹凸パターンの表面は、ウエハ5の表面との密着性を保つために、高平面度に加工されている。なお、モールド3の材質は、石英等、紫外線を透過させることが可能な材料である。
【0018】
モールド保持装置4は、モールド3を保持、及び固定するための保持装置である。このモールド保持装置4は、モールド3に圧縮力を加えることにより、モールド3に形成された凹凸パターンを所望の形状に補正する倍率補正機構11と、吸着力や静電力によりモールド3を引きつけて保持するモールドベース(保持部)12とを備える。また、モールド保持装置4は、モールドベース12を駆動する不図示のベース駆動機構を備える。ベース駆動機構は、具体的には、ウエハ5上に形成された紫外線硬化樹脂にモールド3を押し付けるために、モールドベース12をZ軸方向に駆動する駆動系である。駆動機構に採用するアクチュエーターは、少なくともZ軸方向で駆動するものであれば、特に限定するものではなく、リニアモーターやエアシリンダー等が採用可能である。若しくは、紫外線硬化樹脂からモールド3を引き離す離型動作の際に、硬化した紫外線硬化樹脂が破壊しないように高精度に離型動作を行うために、粗動作及び微動作を分割して実施するアクチュエーターであっても良い。なお、この押印動作、及び離型動作は、上記のように、一方のモールド3をZ方向に駆動することで実現しても良いが、例えば、他方のウエハステージ6(ウエハ5)をZ方向に駆動することで実現しても良い。
【0019】
ウエハ5は、例えば、単結晶シリコンからなる被処理基板であり、被処理面には、成形部となる紫外線硬化樹脂(以下、単に「樹脂」と表記する)が塗布される。また、ウエハステージ6は、ウエハ5を真空吸着により保持し、かつ、XY平面内を自由に移動可能な基板保持手段である。ウエハステージ6を駆動するためのアクチュエーターとしては、リニアモーターが採用可能であるが、特に限定するものではない。また、塗布装置(ディスペンサー)7は、ウエハ5上に未硬化の樹脂を塗布する塗布手段である。樹脂は、紫外線を受光することにより硬化する性質を有する光硬化樹脂(インプリント材)であって、製造する半導体デバイスの種類により適宜選択される。更に、モールド搬送装置8は、モールド3を搬送し、モールドベース12に対してモールド3を設置する搬送手段である。
【0020】
制御装置9は、インプリント装置1の各構成要素の動作、及び調整等を制御する制御部である。制御装置9は、不図示であるが、インプリント装置1の各構成要素に回線により接続された、磁気記憶媒体等の記憶手段を有するコンピュータ、又はシーケンサ等で構成され、プログラム又はシーケンスにより各構成要素の制御を実行する。特に、本実施形態では、制御装置9は、モールドベース12のクランプ力(引きつけ力)を適宜調整し、かつ、後述のモールド保持装置4を構成する倍率補正機構11及びガス供給装置等の動作を制御する。なお、制御装置9は、インプリント装置1と一体で構成しても良いし、若しくは、インプリント装置1とは別の場所に設置し、遠隔で制御する構成としても良い。
【0021】
(第1実施形態)
次に、本発明の第1実施形態に係るモールド保持装置について説明する。図2は、上記インプリント装置1に設置される、本実施形態に係るモールド保持装置4の構成を示すウエハ5側から見た斜視図である。モールド保持装置4は、モールド3の4方側面の領域に対してそれぞれ対向するように、複数の倍率補正機構11と、該倍率補正機構11と同列に配置され、モールド3の側面に隣接する領域にガス(気体)を供給(回収)するための複数の配管13とを備える。本実施形態では、図2に示すように、倍率補正機構11をモールド3の1側面に対して5個、即ち、モールド3の周囲に計20個設置する。同様に、配管(供給配管、及び回収配管)13を2つの倍率補正機構11の間に、モールドの1側面に対して6箇所、即ち、モールド3の周囲に計24箇所設置する。なお、倍率補正機構11の設置個数は、所望のパターン形状や精度によって適宜変更してもよい。また、配管13の個数や形状も、十分な量のガスが供給可能であれば適宜変更してよい。更に、配管13は、不図示のガス供給装置からヘリウム等のガスを必要量供給するものであるが、供給するガスの漏出は、通常ウエハステージ6に設置される位置計測用の干渉計等の測長器の測長誤差を引き起こす原因となるため、十分な排気(回収)が必要である。
【0022】
次に、倍率補正機構11の構成について説明する。図3は、倍率補正機構11の構成を示す概略図であり、特に、図3(a)は、図2のA―A´断面を示す図であり、図3(b)は、モールド3側から見た斜視図である。図3に示すように、倍率補正機構11は、本体を形成する支持部材20と、該支持部材20に設置された接触部材21とアクチュエーター22とを備える。支持部材20は、Y軸方向側面がコの字型の立方体部材であり、モールドベース12の側面に固定される。接触部材21は、接触面21aをモールド3の外周部の側面内の領域に接触させ、該領域に対して力(圧縮力)を加えるようにX軸方向に移動可能な立方体部材である。以下、接触部材21(接触面21a)がこの側面内に接触する領域を「第2領域」と定義する。また、アクチュエーター22は、接触部材21の移動軸と同軸に設置され、接触部材21に対して駆動力(圧縮力)を伝達する駆動手段である。このアクチュエーター22としては、例えば、ピエゾ素子、空圧アクチュエーター、又は直動モーター等が利用可能である。なお、接触部材21とアクチュエーター22との設置位置(相対位置)は、任意であり、本実施形態のように、アクチュエーター22が接触部材21の移動軸と同軸に設置されなくてもよい。
【0023】
更に、倍率補正機構11は、モールド3の位置、及び変形を計測するための位置センサー(検出器)23を備える。位置センサー23としては、光学式、渦電流式、又は静電容量式等のセンサーが利用可能である。ここで、本実施形態の接触部材21には、接触面21aの中心部から部材内部に向けて孔部21bが形成されており、位置センサー23は、孔部21bの内側に配置される。即ち、位置センサー23が位置を検出するモールド3の外周部の側面内の領域(以下、「第1領域」と定義する)は、アクチュエーター22が力を加える第2領域の内側にある。この場合、更に接触部材21には、孔部21bに対して垂直方向に貫設された導入口21cが形成されており、位置センサー23は、モールドベース12に固定され、かつ、導入口21cを介して孔部21bに導入されるセンサー支持部材25に保持される。即ち、位置センサー23は、実質的に接触部材21には接しておらず、また、接触部材21も、位置センサー23に接することなく移動可能である。なお、本実施形態では、図3に示すように、接触面21aの全面がモールド3の側面の領域に接する構成としているが、例えば、接触面21aのある一部分(例えば、計測位置を中心とした複数点)が接する構成としてもよい。
【0024】
次に、モールド保持装置4を設置したインプリント装置1によるインプリント処理動作について説明する。図4は、インプリント処理の動作シーケンスを示すフローチャートである。制御装置9は、動作シーケンスを開始すると、まず、モールド搬送装置8によりモールド3をモールドベース12に設置させる(ステップS101)。次に、制御装置9は、モールド保持装置4の各々の倍率補正機構11のうち少なくとも3箇所の倍率補正機構11に設置された3個の位置センサー23を使用してモールド3の位置を計測させる(ステップS102)。なお、この状態では、倍率補正機構11の接触部材21は、モールド3に接触していない。次に、制御装置9は、位置センサー23が計測した計測値(出力)が予め設定した許容範囲に入っているかどうかを判断する(ステップS103)。ここで、制御装置9が、計測値が許容範囲に入っていないと判断した場合(NO)、倍率補正機構11を駆動し、所望の位置及び形状の少なくとも一方を目標値として、モールド3の位置を調整する(ステップS104)。ステップS104にてモールド3の位置を調整した後は、再度ステップS102に戻る。次に、ステップS103にて、制御装置9が、計測値が許容範囲に入っていると判断した場合は(YES)、モールド3の凹凸パターンが所望の形状になるように倍率補正機構11を駆動し、倍率の補正を実施する(ステップS105)。この場合、倍率補正機構11は、接触部材21を適宜モールド3に押し付けることにより、モールド3の形状を凹形に変形させる。このときの変形量は、制御装置9が位置センサー23にて計測された計測値に基づいて決定する。
【0025】
次に、制御装置9は、ウエハステージ6を駆動してウエハ5を塗布装置7の塗布位置まで移動させ、塗布装置7によりウエハ5の表面上に樹脂を塗布させる(ステップS106)。次に、制御装置9は、ウエハステージ6を駆動して、ウエハ5を押印位置までの移動させる(ステップS107)。次に、制御装置9は、樹脂が塗布されたウエハ5の処理領域にモールド3を押し付ける押印動作を実施し、モールド3に形成された凹凸パターン内に樹脂を充填する(ステップS108)。次に、制御装置9は、この状態で紫外光をモールド3の凹凸パターン内に充填された樹脂に照射し、樹脂をウエハ5の表面上で凝固(硬化)させる(ステップS109:硬化処理)。次に、制御装置9は、モールド3をウエハ5から離す離型動作を実施する(ステップS110)。そして、制御装置9は、更に次のインプリント処理があるかどうかを判断し、あると判断した場合は(YES)、再度ステップS102に移行し、一方、ないと判断した場合は(NO)、インプリント処理を終了する(ステップS111)。
【0026】
以上のように、制御装置9は、位置センサー23によるモールド3の位置及び変形に関する計測値が予め設定した許容範囲に入っているかどうかを判断する。即ち、位置センサー23には、良好な計測精度が求められる。そこで、本発明では、位置センサー23を、上記のように接触部材21に接することなく、かつ、計測位置が実際にモールド3に圧縮力を与える接触面21aの中心部となるように配置するので、より計測精度を向上させることができる。更に、本発明では、位置センサー23を接触部材21の内部に配置するので、配管13を設置するスペースを広く確保することができる。
【0027】
なお、上記樹脂の充填動作、及び離型動作の際、モールド3には力が加わるため、モールド3の位置ずれが発生する可能性がある。そこで、例えば、モールド3の位置及び変形を、位置センサー23で逐一監視させてもよい。この場合、制御装置9は、例えば、ステップS110での離型動作後、ステップS102と同様に位置センサー23でモールド3の位置を計測し、位置ずれが許容範囲に入っていない場合には、ステップS104と同様のモールド3の位置調整を実施すればよい。また、ステップS104におけるモールド3の位置調整の別の手段として、制御装置9は、位置センサー23により計測された位置ずれ量を、ウエハステージ6を駆動させることにより調整しても良い。また、本実施形態では、モールド保持装置4は、複数の配管13を備えるものとして説明したが、例えば、配管13を設置せず、アクチュエーター22と位置センサー23との組からなる倍率補正機構11を複数有するのみとしてもよい。
【0028】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係るモールド保持装置について説明する。図5は、本実施形態に係るモールド保持装置の構成を示す概略図である。なお、図5において、図2に示すモールド保持装置4と同一構成のものには同一の符号を付し、説明を省略する。図5(a)に示すモールド保持装置30は、モールドベース12の外周部の側面のうち、隣り合う2側面に第1実施形態と同様の倍率補正機構11を設置し、一方、前記2側面に対向する他の2側面にそれぞれ位置決め板31a、31bを設置する。位置決め板31a、31bは、モールド3の側面の長さと略同一の長手寸法を有する立方体部材であり、モールド3の側面と面で接触する。この構成によれば、第1実施形態のモールド保持装置4と比較して、倍率補正機構11の個数を削減することができ、モールド3の凹凸パターンの倍率補正を簡易的に実施することが可能となる。
【0029】
一方、図5(b)に示すモールド保持装置40は、上記モールド保持装置30を変形したものであり、上記位置決め板31a、31bに対応する第2の位置決め板41a、41bには、配管13より供給されたガスを回収するための回収路42が形成されている。この回収路42は、第2の位置決め板41a、41bのウエハ5に対向する面に任意の個数の回収口を有し、該回収口から回収したガスは、回収路42を通じて不図示のガス回収装置に導入される。この構成によれば、上記効果に加え、配管13より供給されたガスを、配管13と対向する場所に位置する回収路42で効率良く回収することができるので、ウエハステージ6の周辺に漏出するガス量を減少させることができる。また、図5(b)中の矢印に示すように、ウエハステージ6の移動方向と、ガスの供給方向とを同一方向とすることで、ガスの供給、及び回収の効率を更に向上させることが可能となる。なお、これとは反対に、第2の位置決め板41a、41b側からガスを供給し、倍率補正機構11側でガスを回収する構成としても良い。この場合、ウエハステージ6の駆動方向は、図中矢印とは反対方向とすることが望ましい。
【0030】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態として、第1実施形態の図4におけるステップS104にて、制御装置9は、倍率補正機構11の駆動力を小さくするために、モールド3が落下しない程度でクランプ力を低減させるようにモールドベース12を制御しても良い。これにより、倍率補正機構11の駆動に伴う発熱を抑えることができる。この場合、制御装置9は、モールド3の形状を調整した後、モールド3が所望の位置からずれないように、モールドベース12によるクランプ力を元に戻すように制御しうる。なお、モールドベース12のクランプ力を低減させるタイミングは、モールド3の倍率補正時及び位置調整時の少なくとも一方であり、少なくとも離型動作の際には、制御装置9は、モールド3のクランプ力が復元するように制御する。なお、樹脂の硬化を開始する前に、または、樹脂の硬化の途中から、クランプ力が復元するように制御してもよい。ここで、モールドベース12のクランプ力の制御、樹脂の充填動作、又は離型動作における、モールド3の位置ずれの監視及び補正を簡易的に行う場合は、上記第1実施形態の構成に限定されない。この場合、位置センサー23によりモールド3の位置及び変形をモニタリングできる構成であれば良いので、位置センサー23のように、接触面21aの中心部を監視する必要はない。
【0031】
(第4実施形態)
図6は、図4に示すインプリント処理動作を変更した第4実施形態に係るインプリント処理動作の一例を示すフローチャートである。図6に示すインプリント処理動作では、図4に示すインプリント処理動作と比較して、図4のステップS105に相当する倍率補正機構11による凹凸パターンの形状補正のタイミングが異なる。通常、制御装置9は、モールドベース12にモールド3を保持させた状態で倍率補正機構11を駆動させるため、倍率補正機構11の駆動時にはモールド3とモールドベース12との間に摩擦力が発生する。したがって、この場合、必要となる駆動力が大きくなる。そこで、図6に示すインプリント処理動作では、制御装置9は、倍率補正機構11による倍率補正を前記押印動作の開始後から樹脂の硬化の開始前までの期間に実施する(ステップS208)。これにより、押印動作時には、モールド3は、樹脂を介してウエハ5に接した状態となるので、モールドベース12によるクランプ力を低減させることができる。したがって、制御装置9は、このクランプ力を低減させた状態で倍率補正機構11を駆動するので、必要な駆動力を小さくすることができ、結果的に、倍率補正機構11の駆動に伴う発熱を抑えることができる。この場合、制御装置9は、ステップS208において倍率補正を実施した後に、モールド3の設置位置がずれないよう、モールドベース12によるクランプ力を戻す。なお、図6におけるその他の処理動作は、図4における各処理動作に対応しているため、説明を省略する。
【0032】
(物品の製造方法)
物品としてのデバイス(半導体集積回路素子、液晶表示素子等)の製造方法は、上述したインプリント装置を用いて基板(ウエハ、ガラスプレート、フィルム状基板)にパターンを形成する工程を含む。更に、該製造方法は、パターンが形成された基板をエッチングする工程を含みうる。なお、パターンドメディア(記録媒体)や光学素子等の他の物品を製造する場合には、該製造方法は、エッチングの代わりに、パターンが形成された基板を加工する他の処理を含みうる。本実施形態の物品の製造方法は、従来の方法に比べて、物品の性能・品質・生産性・生産コストの少なくとも1つにおいて有利である。
【0033】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0034】
上記実施形態では、例えば、図2に示すように、倍率補正機構11は、モールド3の外周部側面の領域に対して圧縮力を加えるような構成としているが、本発明は、この構成に限定されない。例えば、倍率補正機構11を、モールド3のモールドベース12側に凸部(不図示)を形成し、その凸部の領域に圧縮力を加えるような構成としてもよい。
【符号の説明】
【0035】
3 モールド
12 モールドベース
22 アクチュエーター
23 位置センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モールドを保持する保持装置であって、
前記モールドを引きつけて保持する保持部と、
前記モールドの側面に対向するように前記保持部に支持され、前記側面に力を加えて前記モールドを変形させるアクチュエーターと、
前記モールドの側面に対向するように前記保持部に支持され、前記力の方向における前記側面の位置を検出する検出器と、を有し、
前記検出器が前記位置を検出する前記側面内の第1領域は、前記アクチュエーターが前記力を加える前記側面内の第2領域の内側にある、ことを特徴とする保持装置。
【請求項2】
前記アクチュエーターは、前記第2領域に接触する接触部材を有し、
前記検出器は、前記接触部材の内側に配置されている、ことを特徴とする請求項1に記載の保持装置。
【請求項3】
前記アクチュエーターと前記検出器との組を複数有する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の保持装置。
【請求項4】
前記側面に隣接する領域に気体を供給する供給配管を有し、
前記供給配管は、2つの前記組の間に配置されている、ことを特徴とする請求項3に記載の保持装置。
【請求項5】
前記側面に隣接する領域から気体を回収する回収配管を有し、
前記回収配管は、2つの前記組の間に配置されている、ことを特徴とする請求項3に記載の保持装置。
【請求項6】
モールドを保持する保持装置であって、
前記モールドを引きつけて保持する保持部と、
前記モールドの側面に対向するように前記保持部に支持され、前記側面に力を加えて前記モールドを変形させるアクチュエーターと、
前記モールドの側面に対向するように前記保持部に支持され、前記力の方向における前記側面の位置を検出する検出器と、
前記モールドの位置が目標値となるように、前記検出器の出力に基づいて前記アクチュエーターを制御する制御部と、
を有することを特徴とする保持装置。
【請求項7】
モールドを保持する保持装置であって、
前記モールドを引きつけて保持する保持部と、
前記モールドの側面に対向するように前記保持部に支持され、前記側面に力を加えて前記モールドを変形させるアクチュエーターと、
前記モールドの側面に対向するように前記保持部に支持され、前記力の方向における前記側面の位置を検出する検出器と、
前記保持部の前記引きつけの力を低減させて、前記モールドの位置及び形状の少なくとも一方が目標値となるように、前記検出器の出力に基づいて前記アクチュエーターを制御する制御部と、
を有することを特徴とする保持装置。
【請求項8】
基板上の未硬化のインプリント材及びモールドの少なくとも一方を他方へ押し付けて前記インプリント材を硬化させ、前記基板上にパターンを形成するインプリント装置であって、
前記モールドを保持する請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の保持装置、
を含むことを特徴とするインプリント装置。
【請求項9】
基板上の未硬化のインプリント材及びモールドの少なくとも一方を他方へ押し付けて前記インプリント材を硬化させ、前記基板上にパターンを形成するインプリント装置であって、
前記モールドを引きつけて保持する保持部と、
前記モールドの側面に対向するように前記保持部に支持され、前記側面に力を加えて前記モールドを変形させるアクチュエーターと、
前記モールドの側面に対向するように前記保持部に支持され、前記力の方向における前記側面の位置を検出する検出器と、
前記押し付けの開始後から前記硬化の開始前までの期間において、前記保持部の前記引きつけの力を低減させて、前記モールドの位置及び形状の少なくとも一方が目標値となるように前記検出器の出力に基づいて前記アクチュエーターを制御する制御部と、
を有することを特徴とするインプリント装置。
【請求項10】
請求項8又は9に記載のインプリント装置を用いて基板上にパターンを形成する工程と、
前記工程においてパターンを形成された前記基板を加工する工程と、
を含むことを特徴とする物品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−23092(P2012−23092A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157845(P2010−157845)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】