説明

保水性と透水性を兼備した敷石ブロック体およびその成形方法

【課題】保水性と透水性に優れ、比較的比重が小さく、使用時には適度な強度を備え、植物に対する病原菌の繁殖を防ぐことができ、使用後には比較的簡単に破砕させることができ、土壌に戻し易い特性を備える敷石ブロック体の提供。
【解決手段】 本発明の敷石ブロック体は、直径0.5±0.1mmφの鹿沼土100重量部に対し、山砂のシルト分5〜15重量部と、ピートモス1〜5重量部と、無機系固化剤であるポルトランドセメント15〜30重量部及びノニオン系界面活性剤0.1〜0.5重量部からなる組成混合物を成形し、該成形物への散水によりその成形状態のまま固化して、該固化物が保水性と透水性を兼備することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保水性と透水性に優れ、軽量で、無菌状態を保持することが可能で、且つ使用後には容易に破砕できて、簡単に土壌に戻すことのできる敷石ブロック体およびその成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水耕栽培における高設栽培システムは、所定面積に対する栽培株数が入れ込め、ベッド幅は極限まで小さくして収量増を図ったプラントとして知られている。更に、このシステムは水耕であるので、水に有機肥料などを溶解させて定期的に散布するやり方で植物を栽培している。
しかしながら、前記システムには、一方ではいくつかの欠点がある。すなわち、ベッド幅が小さいということは栽培株数が高密度となり収量増が期待できる反面、ベッド幅が小さいためにベッドへの水散布時には多量の有機肥料などが水と共に前記システムの下部床土に飛散して、軟質床土にしてしまい、歩き難くなってしまう。更に、該軟質床土は各種病原菌の温床と化し、遂には繁殖して、栽培植物への思わぬ弊害を生じさせてしまう。この各種病原菌への解決方法として、該床土の消毒が一般的に提案される方法であるが、この方法は一時的な解決にはなるが、該床土を劣化することになり恒久的な解決方法にはならない。また栽培植物への影響も大となる。
一方、従来技術として、消石灰、生石灰及びセメントと粘土を含む原料を粒状に硬化させたものを床下に配置する建築内の調湿方法が提案されている(特許文献1)。又、セメントに水及下水汚染焼却灰を混練りしてセメントスラリーを形成して多孔質硬化体とする機能性セメント硬化体の提案がある(特許文献2)。
しかし、これらには、水耕栽培等の床用の構造体として必要とされる透水性と保水性とのバランス等に配慮した構成はなく、床用構造体として不充分なものでしかなかった。
【特許文献1】特開2002−114556
【特許文献2】特開2003−2727
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで本発明は、吸水及び排水機能に優れた鹿沼土の特性を利用し、水耕栽培等の床面敷石として、(1)保水性と透水性に優れ、(2)比較的比重が小さく、使用時には適度な強度を備え、(3)植物に対する病原菌の繁殖を防ぐ無機質材料で、
(4)容易に成形加工ができ、(5)使用後には比較的簡単に破砕することができ、土壌に戻し易い、敷石ブロック体およびその成形方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記目的を達成するために、請求項1記載の本発明敷石ブロック体は、直径0.5±0.1mmφの鹿沼土100重量部に対し、山砂のシルト分5〜15重量部と、ピートモス1〜5重量部と、無機系固化剤であるポルトランドセメント15〜30重量部及びノニオン系界面活性剤0.1〜0.5重量部からなる組成混合物を成形し、該成形物への散水によりその成形状態のまま固化して、該固化物が保水性と透水性を兼備することを特徴とする。
【0005】
請求項2記載の発明にあっては、曲げ強度が1.5〜2.5MPaであることを特徴とする。
【0006】
請求項3記載の本発明敷石ブロック体の成形方法は、直径0.5±0.1mmφの鹿沼土100重量部に対し、山砂のシルト分5〜15重量部と、ピートモス1〜5重量部と、無機系固化剤であるポルトランドセメント15〜30重量部及びノニオン系界面活性剤0.1〜0.5重量部に水15〜20部を混合して組成混合物とし、該組成混合物を型枠内に入れ、該型枠を振動しながらプレス圧を印加して成形した後、脱型・養生することを特徴とする。
【0007】
請求項4記載の発明にあっては、プレス圧として2.94×10〜5.88×10Paを1〜2秒印加することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の敷石ブロック体は、鹿沼土の粒子径を直径0.5±0.1mmφに選択し、適正量の無機系固化剤を結合材として配合しているので、硬化後には吸水及び排水機能に優れた鹿沼土が適正な大きさの空隙を多数形成するように連結され、鹿沼土を空隙との二重の特性で保水性および透水性の機能がバランス良く発揮されるブロック体を形成することができる。また、上記敷石ブロック体全容を振動子で振動しながらプレス圧を全容に印加するので、ブロック体密度の均一化を図ることができ、且つ、製造が効率的である。更に、上記敷石ブロック体はポーラス状であるので、比重が1.2〜1.3g/cmと比較的小さく、持ち運びに便利である。無機系固化剤を利用しているので、曲げ強度が1.5〜2.5MPaとなり使用時には適度な強度を備え、床面敷石として人の踏圧等に耐える。上記敷石ブロック体を構成する組成物は無機質および界面活性剤であるので、自然土に還元可能であり、廃棄物の問題は生じない。ピートモスを配合しているので、病原菌の繁殖を防ぐことができる。
使用後に廃棄物として処理する際には、クラッシャー等で容易に破砕されて粉粒体となるのでこれを再利用又は自然土に還元することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
そこで、この発明の実施の形態を、表および図に基づいて説明する。本発明組成物の選定材料は鹿沼土、山砂のシルト分、無機系固化剤及びピートモスとし、該無機系固化剤は、ポルトランドセメント、ノニオン系界面活性剤で構成した。以下、該選定材料の特徴について説明する。
【0010】
鹿沼土は火山灰土で、火山から噴出した軽石の黄色風化物である。直径は数mm程度で、丸み形状を留めたまま風化、粘土化しているが、自然乾燥させて水分を蒸発させると丸み形状を保持したまま固くなる。この球状固化土を粉砕して0.5±0.1mmに粒子径を揃え、本発明の主材料に利用する。
鹿沼土は、土中に多量の球状非晶質アロフェンやイモゴライトが形成されていて、該アロフェンやイモゴライトが保有する中空球壁に多量の穴部の存在が通気性や保水性を高める性質を発現させている。同時に、該鹿沼土の粒子径を0.5±0.1mmφとすると、後述する如く粒子相互間に適度な間隙が形成され、前記球状非晶質の通気性や保水性の働きと協働して、より強力な透水性と吸水性と適度な蒸発性を備えることが可能となり、これを配合した粉粒体は軽量で、保水性と透水性を高めるものとなる。
【0011】
山砂のシルト分は微小粉体で、その機能は、鹿沼土は単独では構造体として脆い性格があり、そのままポルトランドセメントと共に固めると構造体として弱くなる傾向にあり、そこで上記粒子経の山砂シルト分を加えると、鹿沼土との間に作用して骨材的機能を発揮し、締め固めを強める。
【0012】
また、鹿沼土は有機物をほとんど含まないpH5の酸性土で、酸性が強いので、雑菌や害虫が発生し難いが、更に、ピートモスを加えると、鹿沼土よりも更に酸度が強くpH4を示すので、雑菌や害虫の発生を抑える効果を増強させる。ピートモスは少量の配合でも酸性度効果が大きいが、1〜5重量部が適当である。
【0013】
無機系固化剤の主構成材料であるポルトランドセメントは、山砂と界面活性剤と共に水に混合して、鹿沼土粒子を結合するための結合材となり、鹿沼土粒子同士を結合してブロック体を形成する。該ブロック体は、固化するに従って、前記鹿沼土粒子間は適度な強度となる。一方、使用後には破砕により粉粒体を形成し、廃棄時においては容易に袋詰めできる程度の粒度となる。
【0014】
ノニオン系界面活性剤は、鹿沼土粒子の濡れ性を高め、該鹿沼土粒子の表面に均一に分散することを助ける。この分散が不均一であると、ポルトランドセメントが団子状、塊状となり、強度が強くなり過ぎて不適である。該ノニオン系界面活性剤には、ノニルフェニルエーテル系重合体を用いる。その配合割合は、0.1〜0.5重量部が適正である。
【0015】
以上から、上記ノニオン系界面活性剤は、ポルトランドセメントの水和反応に必要な水を鹿沼土全体に均一に行き届かせる引水の役目を持ち、ポルトランドセメントが接着を行って、鹿沼土の表面に実質的に均一な結合材となる。また山砂のシルト分が鹿沼土の締固めを助ける。この無機系固化剤で包まれた鹿沼土粒子同士は、団子状ではなく、ポーラス状に保持されたブロック体を形成でき、且つ適度な強度が保持される。
【0016】
次に、本発明の敷石ブロック体の成形方法について説明する。
表1に、本発明の保水性と透水性を兼備した敷石ブロック体の基本組成を示す。
【0017】
【表1】

【0018】
図1に示す通り、基本組成である鹿沼土1000gに対し、例えば山砂のシルト分100gと、ピートモス30gと、無機系固化剤であるポルトランドセメント250g及びノニオン系界面活性剤2gに水150gをミキサー2に投入し、撹拌羽根3により撹拌して均一な組成混合物1を生成する。
その後、図2に示す通り、該組成混合物1はレンガ大の大きさ4個取り用木型枠4に流し込み、プレス機5により該混合物を隅々に均一に充填されるように軽く全面に加圧する。プレス圧は、例えば2.94×10〜5.88×10Pa(3〜6kgf/cm)で、プレス時間は1〜2秒とする。同時に全容を振動子6で振動し、ブロック体7としての密着を図ると共に、ブロック体密度の均一化を図る。
図3に示す通り、該ブロック体7は4個の毎に成形して脱型し、2〜3日間養生する。
その後、例えば水耕栽培の床面敷石としての施工現場に該ブロック体7を設置する。該ブロック体7は、上記鹿沼土間の空隙を大きく確保し、適度な強度を保持して行く。
【0019】
そして使用時には人の踏圧に耐え得る曲げ強度1.5以上であっても、使用後にあってこれを除去する際には、2.5MPa以下の過度のものでないから、容易に崩壊させることができ、再度粉粒体となり、再利用又は自然に還元可能なものとなる。
【0020】
次いで、この発明の作用効果を、図面に基づいて説明する。
【0021】
上記の形態に基づいて製作した本発明の敷石ブロック体の曲げ強度は、ポルトランドセメントと山砂のシルト分とノニオン系界面活性剤の量で決められ、敷石ブロック体として人の踏圧等に耐え得ると共に該敷石ブロック体の廃棄時にクラッシャーなどで容易に破砕できる量は、それぞれ15部〜30部、5〜15部、0.1部〜0.5部が良い。この範囲であれば、本発明の該粉粒土の曲げ強度は、1.5〜2.5MPaが確保できる。
【0022】
上記の形態に基づいて製作した本発明の敷石ブロック体の保水性と透水性機能について説明する。
本発明の粉粒土の主構成材料である鹿沼土の粒子径は、0.5±0.1mmφのふるい目のものが用いられ、ポルトランドセメントやノニオン系界面活性剤は水と混ざり合って液状化し、結合剤の働きをする。
更に、山砂のシルト分は鹿沼土に比べて配合量が少量で且つ粒子径が小さいので、点在する程度となる。また、鹿沼土粒子間に山砂のシルト分が粒子として挿入されると、山砂のシルト分に相当する粒子分ほど鹿沼土粒子間が広がり、従って鹿沼土粒子間の空隙が広がって、益々本発明の無機質組成物の吸排水機能が増加する。その他、ピートモスは配合量が少量なので、点在する程度となる。
図4に各粉体の分布状態の一例を拡大して模式的に示す。この図は、鹿沼土の均一で相対的に大きい粒子径のものaと、山砂のシルト分の細かい粒子径のものbと、ピートモスcとが満遍なく分布し、無機系固化剤dは各粒子に付着して粒子間を結合して、各粒子間にランダムに空隙eが形成されていることを示している。この空隙eがポーラス状で空気や水が必要量だけ保存でき易くなっていることを示している。
【0023】
更に、無機系固化剤は、鹿沼土の各粒子を結合して、多数の空隙を形成する。無機系固化剤は山砂のシルト分と共にブロック体を一体に固化し、ポーラス状に保持する結合材の役割を担っている。
しかしながら、無機系固化剤の一成分であるポルトランドセメントは骨材間の接合力を大きく保持できるが、それ自体が団子状になり易く、空隙を埋め易い。即ち、ポルトランドセメント量が多量であると、ポルトランドセメントは水と反応して発熱溶融し、鹿沼土及び山砂シルト分などの回りをすっぽりと包み込んで、主剤及び骨材間の空隙を埋め易く、その結果、透水性の確保を図ることが困難となる。
そこで、ポルトランドセメント及び山砂シルト分の使用量を可及的に少量とすることが望ましく、と同時に、一定の強度を保つ必要がある。そこでポルトランドセメント及び山砂シルト分の配合割合を、鹿沼土100重量部に対し、ポルトランドセメント15〜30重量部及び山砂のシルト分5〜15重量部とすることで均衡が図られる。ポルトランドセメント15部以下、及び山砂シルト分5部以下では、床面の構造体として強度が不足となり、30部及び15部以上では空隙が狭く適正なポーラス状態を保てないからである。
【0024】
次に、保水性と透水性の確保について、その発生機構を更に説明する。
鹿沼土は、該粒子の表面に存在する多量の穴部アロフェンやその内部の中空球壁イモゴライトにより、通気性や保水性を均一に高める性質を発現させている。加えて、鹿沼土の粒子径を適正な大きさに揃えることにより、適正な寸法の空隙が多量に形成され、各空隙において多量の空気や水が保存できる。即ち、鹿沼土は上記の如くそれ自身が通気性と保水性を保持する性能に優れると共に、該鹿沼土の粒子経を直径0.5±0.1mmφに粒子経を揃えることで適正な大きさの空隙が多数形成され、適量の空気や水が保存でき、二重の意味で通気性及び保水性に優れた効果を発揮するものとなる。
【0025】
更に、上記の形態に基づいて製作した本発明の敷石ブロック体は、病原菌の排除機能を発揮する。即ち、本発明の最多量な配合材料である鹿沼土は、100℃の蒸気で蒸し工程を通らせるので、病原菌の温床である有機物をほとんど含まず、且つ、該鹿沼土に配合されるピートモスは、pH4〜5の酸性土で、酸性が強いので、雑菌や害虫の発生を抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の敷石ブロック体は、水耕栽培の床面敷石に利用できる。更に、酸性度合いが強いので病原菌や雑菌などが繁殖し難く、軽量且つ適度な強度があるので、上記水耕栽培用の床面ばかりでなく、最近緑化の要求が高まっている家庭におけるベランダの床面等にも応用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、本発明の敷石ブロック体成形方法の一実施例における撹拌状態を示す断面図である。
【図2】図2は、図1に続く本発明の敷石ブロック体成形方法における加圧振動状態を示す断面図である。
【図3】図3は、図2に続く本発明の敷石ブロック体成形方法における4個に成形されたブロック体毎に脱型し養生状態を示す立面図である。
【図4】図4は、本発明の敷石ブロック体の一実施例における粒子分布を示す模式的拡大図である。
【符号の説明】
【0028】
1 組成混合物
2 ミキサー
3 撹拌羽根
4 木型枠
5 プレス機
6 振動子
7 敷石ブロック体
a 鹿沼土
b シルト
c ピートモス
d 無機系固化剤
e 空隙


【特許請求の範囲】
【請求項1】
直径0.5±0.1mmφの鹿沼土100重量部に対し、山砂のシルト分5〜15重量部と、ピートモス1〜5重量部と、無機系固化剤であるポルトランドセメント15〜30重量部及びノニオン系界面活性剤0.1〜0.5重量部からなる組成混合物を成形し、該成形物への散水によりその成形状態のまま固化して、該固化物が保水性と透水性を兼備することを特徴とする敷石ブロック体。
【請求項2】
曲げ強度が1.5〜2.5MPaであることを特徴とする請求項1記載の敷石ブロック体。
【請求項3】
直径0.5±0.1mmφの鹿沼土100重量部に対し、山砂のシルト分5〜15重量部と、ピートモス1〜5重量部と、無機系固化剤であるポルトランドセメント15〜30重量部及びノニオン系界面活性剤0.1〜0.5重量部に水15〜20部を混合して組成混合物とし、該組成混合物を型枠内に入れ、該型枠を振動しながらプレス圧を印加して成形した後、脱型・養生することを特徴とする敷石ブロック体の成形方法。
【請求項4】
プレス圧として2.94×10〜5.88×10Paを1〜2秒印加することを特徴とする請求項3記載の敷石ブロック体の成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−306684(P2006−306684A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−134043(P2005−134043)
【出願日】平成17年5月2日(2005.5.2)
【出願人】(596180423)日本硝子工業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】