説明

保水性に優れた紙−コーテング用スリップのための分岐した疎水性鎖を有するアクリル増粘剤

【課題】紙コーテング剤の製造方法での、水溶性ポリマーの紙コーテング剤の増粘剤としての使用。スリップの保水性が改良され、それによってスリップで被覆した紙の印刷適性が良くなる。
【解決手段】水溶性ポリマーは少なくとも一種のエチレン性不飽和アニオン性モノマーと、少なくとも一種のエチレン性不飽和オキシアルキル化モノマーとから成り、このエチレン性不飽和オキシアルキル化モノマーは分岐された疎水性の14〜24の炭素原子を有するアルキル、アルキルアリール、アリールアルキルまたはアリール鎖を末端に有し、少なくとも6つの炭素原子を含む2つの枝を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は保水性に優れた紙-コーテング用スリップのための分岐した疎水性鎖を有するアクリル増粘剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
被覆紙(papier couchee)の製造の最初の段階は抄紙機によって製紙用パルプを未被覆のシートに変形させることである。製紙用パルプは基本的に天然または合成の繊維と、水と、一種以上の無機材料、例えば炭酸カルシウムと、その他の各種添加剤、例えば「接着剤(collage)」とよばれる薬剤とを含む。上記の無機充填材、例えば炭酸カルシウムは「充填剤(charge de masse)」として使用される。
【0003】
第2の階段は上記で得られたシートにコーテングをする段階である。この操作では紙基材の表面上に「コーテング剤」または「スリップ」(コーテングソース(sauce de couchage)とよばれる水溶性組成物を塗布する。このコーテング剤は水と、炭酸カルシウムのような一種または複数の無機材料と、一種または複数の結合剤と、各種添加剤とを含む。コーテング剤の製造では上記無機材料、例えば炭酸カルシウムを「被覆顔料」として使用する。
【0004】
上記コーテング剤は、基材上に塗布した後に、それに含まれる水および水溶性物質または懸濁物の一部または全てが基材中へ移行する傾向を示す。従って、塗布したコーテング剤の厚さ内に、上記の水溶性物質や懸濁物を均一に保持して基材の紙への移行を遅くし、それによって最終的に得られる紙の表面条件および印刷適性を改善することが求められている。
【0005】
コーテング剤の紙中への浸入を遅くする方法は、コーテング剤のレベルで行なうか、製紙のレベルで行なうかに応じて2つの方法がある。その第1の方法は気孔率を減らし、疎水度を増加させて基材の紙の吸収特性を変えることから成る。そのためには特許文献1(日本特許第JP 06-219038号公報)に記載のよう「浸入阻止剤(inhibiteurs de la sauce)」として公知の特定の薬剤や、特許文献2(国際特許第WO 96/23105号公報)に記載のような硫酸アルミニウムと樹脂として親水性の「接着剤」が用いられ、あるいは、充填材として使われる炭酸カルシウムの表面を疎水性にする「処理」剤、例えばCl6〜Cl8脂肪酸(特許文献3、米国特許第US 5,514,212号明細書)や、アクリレート、アクリヤニトリルおよびスチレンをベースにした疎水性ポリマー(特許文献4、国際特許第WO 01/86067号公報)が用いられる。
【0006】
本出願の出願日には未公開である特許文献5(フランス特許出願第06 08927号公報)には、本発明の対象ポリマーを分散および/またはそれと一緒に研摩(grinding)した炭酸カルシウムの水性懸濁液の充填材としての使用が記載されている。この特許出願にはコーテング剤の製造方法は記載がなく、コーテング剤の濃化剤としての本発明のポリマーの驚くべき効果は記載がない。この特許出願に開示の内容は、充填材として使用した炭酸カルシウムと一緒に上記ポリマーを使用すると、コーテング剤の紙シート中への浸入を遅くでき、紙シートの疎水性度を増加できることができるということである。
【0007】
これとは対照的に、本発明はコーテング剤の粘度を増加させることによって、コーテング剤の浸入を遅くという解決策のカテゴリに入る。コーテング剤の粘度を増加させると、紙シート中への浸入が遅れる(水および水溶性物質の紙シート中への浸入が遅れる)。これは「保水性」の改良とよばれる。
【0008】
そのために水保持剤/コーテング剤濃化剤を使用することは知られている。その例はデンプン、ポリビニールアルコール(PVOH)、カルボキシメチルセルロースをベースにしたポリマー(CMC)、高度にカルボキシル化したポリマーのラテックスおよびエマルション、ポリアクリレートのようなポリカルボン酸塩や、アルカリ膨張性ポリマーである。本発明の対象であるアルカリ膨張性ポリマーやその他の上記ポリマーに関する製品は特許文献6(欧州特許第EP0509878号公報)に記載されている。
【0009】
実際に当業者が主として使用しているのはアクリル増粘剤、例えばCOATEXTM社から市販のRheocoat(登録商標)35またはBASF社から市販のSterocoll(登録商標)や、セルロース誘導体の増粘剤、例えばBASF社から市販のFinnfix(登録商標)である。しかし、セルロース誘導体の増粘剤には粉末の形をしており、設備を汚染(粉状の特徴)し、ハンドリングに問題があり(パイプ輸送が困難)、一般に水溶液にしなければならないため追加の階段を必要とするといった欠点がある。そのため当業者はアクリル重合体を好んで用いている。しかし、環境保護に関する法律がますます厳しくなり(特許文献7(国際特許第WO 2006/081501号公報)および特許文献8(欧州特許第EP 0839956号公報)を参照)、コーテング剤の製造でアクリル重合体の量を減らすことが求められている。
【0010】
環境保護に関する法律はスリップ中に存在する下記のアクリル重合体全体に適用される:
(1)製造時にコーティング剤に添加される上記アクリル増粘剤、
(2)炭酸カルシウムの研摩(grinding)、添加他、濃縮または水溶性媒質中で濃化する段階にアクリルを分散させ、添加し、濃縮し、必要に応じて乾燥する段階や、乾燥した材料を懸濁または分散させてコーテング剤を製造
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】日本特許第JP 06-219038号公報
【特許文献2】国際特許第WO 96/23105号公報
【特許文献3】米国特許第US 5,514,212号明細書
【特許文献4】国際特許第WO 01/86067号公報
【特許文献5】フランス特許出願第06 08927号公報
【特許文献6】欧州特許第EP0509878号公報
【特許文献7】国際特許第WO 2006/081501号公報
【特許文献8】欧州特許第EP 0839956号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決しようとする技術的課題は下記である:
(1)紙シート中にコーテング剤が浸入するのを遅らせるための解決策を求めること、
(2)粉末の形をしたセルロース誘導体の増粘剤より好ましいアクリル重合体にすること。
(3)無機材料の水性懸濁液を作り、次いで予め作った乾燥無機材料を分散、懸濁する段階の両方の階段を一度に行なって、コーテング剤の製造全体で使用するアクリル重合体(濃化剤、分散剤、研摩助剤)の量を減らすこと。
【0013】
コーテング剤の粘度を増加させ、保水性を良くすることによって、紙シート中へのコーテング剤」(スリップ、コーテングソース、sauce de couchage)の移行が遅くなる。その結果、最終的に被覆シート紙の印刷適性特性が改良される。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、少なくとも一種の無機材料を含む紙のコーテング剤の製造方法でのコーテング剤濃化剤としての下記下記(a)と(b)から成る水溶性ポリマーの使用を提供する:
(a) 少なくとも一種のエチレン性不飽和アニオンモノマーと、
(b) 分岐した疎水性の飽和または不飽和のアルキル、アルキルアリール、アリールアルキルまたはアリール鎖を末端に有し、4〜21の炭素原子、好ましくは15〜20の炭素原子を有し、少なくとも6つの炭素原子を有する2つの枝を有する、少なくとも一種のエチレン性不飽和オキシアルキルモノマー。
【発明を実施するための形態】
【0015】
コーテング剤中にポリマーを導入する方法は3つあるが、3つの方法全てで、本発明のポリマーを含まない同じコーテング剤と比較して(分散剤、研摩助剤、濃化剤の)アクリルポリマーの全量が減少し、濃化および保水性の点で相当性能が改良する。
【0016】
第1の方法では無機材料を水溶媒質中に分散し、研摩し、添加しまたは濃化する階段、必要に応じて乾燥階段の前に、ポリマーを使用する。得られた水性分散液または水性懸濁液は紙コーテング剤の製造で使用される。
【0017】
第2の方法では、紙コーテング剤の製造時に上記ポリマーを添加剤として直接使用する。
【0018】
第3の方法では、無機材料を水溶媒質中に分散し、研摩し、添加しまたは濃化する階段で上記ポリマーを使用し且つ紙コーテング剤の製造時に上記ポリマーを添加剤として直接使用する。
【0019】
得られた紙コーテング剤は、このポリマーを含まない従来法の紙コーテング剤と比較して下記の利点を有する:
(1)従来のコーテング剤に含まれる量と同じ量のアクリル重合体(分散剤、研摩剤および濃化剤)を含む場合には、濃化効果がより大きく(Brookfield(登録商標)粘度は25℃で10〜100回転/分)且つ保水性量が大きく、
(2)従来のコーテング剤に含まれる量より少ない量のアクリル重合体(分散剤、研摩剤および濃化剤)を含む場合には、濃化効果(Brookfield(登録商標)粘度は25℃で10〜100回転/分)を示し且つ同じ保水量を示す。
【0020】
さらに、最終コーテング剤により良い特性を与えるとともに、上記ポリマーで(上記ポリマーを水溶媒体に分散させ、研摩し、添加し、濃縮する階段で)当業者が完全に許容できる、換言すれば、ポンプ輸送でき且つハンドリング可能な無機材料の水性分散液および懸濁液を作ることができる。具体的にはBrookfield(登録商標)粘度で100回転/分、25℃で1,000回転/分以下の水性分散液および懸濁液をえることがでる。
【0021】
この結果は、いかなる理論に拘束されるものではないが、本発明ポリマーは水中で無機材料を安定させ、分散させ、研摩させる特性を同時に発揮するためであり、疎水性基R’と紙コーテング剤に含まれるラテックスとの間の相互作用によるラテックスの存在下での濃化効果によるものと説明できると本発明者は考える。この種の相互作用が本発明ポリマーによって生じる濃化効果の原因であろう。
【0022】
アクリル酸と式(I)のモノマーのポリマーと疎水性側鎖R'は既に公知であり、側鎖R'の長さを変化させることは当業者が既に行なってきたことであるが、これまでは濃化効果が得られなかったことを考えると、上記の結果は驚くべきものである。すなわち、このポリマーは無機充填剤の分散剤として公知のものである。しかし、この分散機構は媒体は液体化(fluidification)現象によるものであり、当業者は本発明の濃化効果は知らなかった。
【0023】
特許文献9(欧州特許第EP 1,294,476号公報)に記載のポリマーはアクリル酸のようなアニオン性モノマーと式(I)のモノマーとから成り、式(I)のモノマーのR'は1〜5の炭素原子を有するわずかに疎水性の基である。このポリマーは特に炭酸カルシウムの優れた分散剤である。
【特許文献9】欧州特許第EP 1,294,476号公報
【0024】
特許文献10(欧州特許第EP 1,565,504号公報)に記載のアクリル酸と式(I)のモノマーとのコポリマーでは、R'は極めて広く、1〜40の炭素原子を有する。このポリマーは紙コーテング剤の光学的白色度を改善し、炭酸カルシウムの分散階段にコーテング剤に加えられる。
【特許文献10】欧州特許第EP 1,565,504号公報
【0025】
特許文献11および特許文献12にも同じ化学構造が記載されているが、それぞれ研摩助剤および被覆された紙シートの白色度を改善する薬剤である。
【特許文献11】欧州特許第EP 1,569,970号公報
【特許文献12】欧州特許第EP 1,572,764号公報
【0026】
特許文献13(国際特許第WO 2007/069037号公報)では、アクリル酸とR'が1〜40の炭素原子を有する式(I)のモノマーで、R'がメチル基である好ましい実施例のポリマーは水中での紙コーテング剤の保持が常に改善し、粘度を比較的低いレベルに保つことができる。
【特許文献13】国際特許第WO 2007/069037号公報
【0027】
特許文献14(欧州特許第EP 0892020号公報)および特許文献15(欧州特許第EP 0892111号公報)は、R'として少なくとも22の炭素原子を有する特定の疎水性ラジカルを選択することで、アクリル酸と式(I)のモノマーのポリマーを新水性(炭酸カルシウム)または疎水性(タルク)の両方の無機材料を効果的に分散でき、水中で研摩できるることを明らかにしている。
【特許文献14】欧州特許第EP 0892020号公報
【特許文献15】欧州特許第EP 0892111号公報
【0028】
結論として、従来法で既にR'の多くの可能性が予測されており、その各々は分散性、研摩助剤性、白色度または光学的白化度が改善されたポリマーにするもので、紙コーテング剤を濃化するものではないことは明らかである。本発明者の長所の一つは、異なるR'を選ぶことで濃化に至るとまず最初に信じていたことである。
【0029】
本発明者の別の長所は、少なくとも6つの炭素原子を有する2つの枝を有する、14〜21の炭素原子を有する分岐した疎水性鎖を特に選択したことによって、上記R'を同定できたことである。こうした選択を開示したものはこれまでに無く、提案もされておらず、この選択によって健著な技術的効果が得られる、すなわち、従来法に対応する濃化性能の場合、紙コーテング剤中のアクリルポリマーの量を減らすことができることを予測させるものも無かった。
【0030】
従って、本発明の対象は少なくとも一種の無機材料を含む紙のコーテング剤の製造方法でのコーテング剤濃化剤としての使用であって、下記(a)と(b):
(a) 少なくとも一種のエチレン性不飽和アニオンモノマーと、
(b) 分岐した疎水性の飽和または不飽和のアルキル、アルキルアリール、アリールアルキルまたはアリール鎖を末端に有し、4〜21の炭素原子、好ましくは15〜20の炭素原子を有し、少なくとも6つの炭素原子を有する2つの枝を有する、少なくとも一種のエチレン性不飽和オキシアルキルモノマーと、
から成る水溶性ポリマーの使用にある。
【0031】
上記の少なくとも一種の無機材料を含む紙のコーテング剤の製造方法でのコーテング剤濃化剤としての水溶性ポリマーの使用では、上記水溶性ポリマーが、各モノマーが下記の重量百分率で表される(合計は100%)ことに特徴がある:
(a)5%〜95%、好ましくは50%〜95%、さらに好ましくは70%〜95%の少なくとも1種のエチレン性−不飽和アニオン性モノマー、
(b)5%〜95%、好ましくは5%〜50%、さらに好ましくは5%〜30%の分岐した疎水性の飽和または不飽和のアルキル、アルキルアリール、アリールアルキルまたはアリール鎖を末端に有し、4〜21の炭素原子、好ましくは15〜20の炭素原子を有し、少なくとも6つの炭素原子を有する2つの枝を有する、少なくとも一種のエチレン性不飽和オキシアルキルモノマー。
【0032】
上記の少なくとも一種の無機材料を含む紙のコーテング剤の製造方法でのコーテング剤濃化剤としての水溶性ポリマーの使用ではさらに、上記モノマー(a)が、アクリル酸、メタアクリル酸およびこれらの混合物の中から選択される点に特徴がある。
【0033】
上記の少なくとも一種の無機材料を含む紙のコーテング剤の製造方法でのコーテング剤濃化剤としての水溶性ポリマーの使用ではさらに、上記モノマー(b)が下記式(I)のモノマーである点に特徴がある:
【0034】

【0035】
(ここで、
m、n、p、qは整数で、m、n、pは150以下、qは0以上で、m、nおよびpの中の少なくとも一つの整数はゼロではなく、
Rは重合可能な不飽和官能基、好ましくはビニル基およびアクリル酸、メタアクリル酸およびマレイン酸のエステル基、さらには不飽和ウレタン基、例えばアクリルウレタン、メタアクリルウレタン、α−α'−ジメチル−イソプロペニルベンジルウレタン、アリルウレタン、置換または未置換のアリールまたはビニルエーテル基、エチレン性不飽和アミドまたはイミド基を有する基、
1およびR2は水素原子またはアルキル基を表し、互いに同一でも異なっていてもよく、
R'は置換基を有していてもよい14〜21の炭素原子、好ましくは15〜20の炭素原子を有する分岐した疎水性のアルキル、アルキルアリール、アリールアルキルまたはアリール鎖を表し、少なくとも6つの炭素原子を有する2つの枝を有し、特に好ましくはR'は2−ヘキシル1−デカニル、2−オクチル、1−デカニルおよびこれらの混合物である)
【0036】
上記の少なくとも一種の無機材料を含む紙のコーテング剤の製造方法でのコーテング剤濃化剤としての水溶性ポリマーの使用ではさらに、上記水溶性ポリマーが単官能または多官能の一種または複数の中和剤、好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよびこれらの混合物の中から選択される中和剤によって部分的または完全に中和されている点に特徴がある。
【0037】
上記の少なくとも一種の無機材料を含む紙のコーテング剤の製造方法での使用ではさらに、上記水溶性ポリマーが下記(1)または(2)で使用される:
(1)紙コーテング剤中への直接導入、
(2)水溶媒体中での上記無機材料の分散、研摩(grinding)または濃縮階段、可能な場合には乾燥階段の前での使用。
【0038】
上記の少なくとも一種の無機材料を含む紙のコーテング剤の製造方法でのコーテング剤濃化剤としての水溶性ポリマーの使用ではさらに、上記無機材料が天然または沈殿炭酸カルシウム、カオリン、タルクの中からに選択され、特に好ましくは天然の炭酸カルシウム、カオリンおよびこれらの混合物、さらに好ましくは天然の炭酸カルシウムとカオリンとの混合物からに選択される点に特徴がある。
【0039】
上記の少なくとも一種の無機材料を含む紙のコーテング剤の製造方法でのコーテング剤濃化剤としての水溶性ポリマーの使用ではさらに、無機材料の乾燥重量に対する上記ポリマーの乾燥重量の百分比が0.1%〜2%、好ましくは0.2%〜0.8%である点にも特徴がる。
【実施例】
【0040】
実施例1
このテストは本発明ポリマーを添加階段または研摩段階に炭酸カルシウムの水性懸濁液中で使用する。その後、この懸濁液は紙コーテング剤の製造で使用され、得られた紙コーテング剤は、本発明ポリマーを使用しない炭酸カルシウムの水性懸濁液に由来する従来法の紙コーテング剤と比較した場合(最終的なアクリルポリマーの量(水性懸濁液に添加した分散剤または研摩助剤+コーテング剤に加えた濃化剤)は同じである)、改良された保水性および濃化性能を示す。
【0041】
実験1
この実験は従来法で、OMYATM社からSetacarb(登録商標)MEの名称で市販の炭酸カルシウム(ノルウェー大理石)から作った水性懸濁液にアクリル酸のホモポリマーを添加して使用した(炭酸カルシウムの乾燥重量に対して乾燥重量で0.2%を使用した)。アクリル酸のホモポリマーは、
(1)カルボキシル基の70モル重量%は水酸化ナトリウムで中和され、カルボキシル基の30%は生石灰で中和し、
(2)分子量は5,500g/モルである(国際特許第WO 2007/069037号公報に記載の方法で測定)。
【0042】
得られた水性懸濁液の炭酸カルシウムの含有量(乾燥重量)は全重量の74.2%で、毎分100回転で測定したBrookfield(登録商標)粘度は1,000mPa.s以下であり、これはユーザが完全に使用可能ものである。
【0043】
実験1a
この実験は本発明方法で、OMYATM社からSetacarb(登録商標)MEの名称で市販の炭酸カルシウム(ノルウェー大理石)から作った水性懸濁液に水溶性ポリマーを添加して使用した(炭酸カルシウムの乾燥重量に対して乾燥重量で0.2%を使用した)。この水溶性ポリマーは水酸化ナトリウムで完全に中和し、下記(a)と(b)から成る:
(a) 75重量%のアクリル酸、
(b) 25重量%の式(I)のモノマー(式(I)でRはメタクリレート基を表し、R’は16の炭素原子を有する分岐した疎水性鎖2−ヘキシル1−デカニルを表し、m=p=0、q=1、n=25である)
【0044】
実験1で得られたものに匹敵する水性懸濁液が得られ、その炭酸カルシウムの乾燥重量は全重量の74.1%で、100回転/毎分で測定したBrookfield(登録商標)粘度は1,000mPa.s以下であり、これはユーザが完全に使用できるものである。
【0045】
実験2
この実験は従来法で、OMYATM社からH90(登録商標)MEの名称で市販の炭酸カルシウム(ノルウェー大理石)から作った水性懸濁液にアクリル酸のホモポリマーを添加して使用した(炭酸カルシウムの乾燥重量に対して乾燥重量で0.2%を使用した)。上記アクリル酸のホモポリマーは、
(1)カルボキシル基の70モル重量%は水酸化ナトリウムで中和され、カルボキシル基の30%は生石灰で中和し、
(2)分子量は5,500g/モルである(国際特許第WO 2007/069037号公報に記載の方法で測定)。
得られた水性懸濁液の炭酸カルシウムの含有量(乾燥重量)は全重量の77.1%で、毎分100回転で測定したBrookfield(登録商標)粘度は1,500 mPa.s以下で、これは使用が難しく、特にポンプ輸送は難しい。
【0046】
実験2a
この実験は本発明方法で、OMYATM社からH9O(登録商標)MEの名称で市販の炭酸カルシウム(ノルウェー大理石)から作った水性懸濁液に水溶性ポリマーを添加して使用した(炭酸カルシウムの乾燥重量に対して乾燥重量で0.2%を使用した)。この水溶性ポリマーは水酸化ナトリウムで完全に中和し、下記(a)と(b)から成る:
(a) 75重量%のアクリル酸、
(b) 25重量%の式(I)のモノマーで、式(I)でRはメタクリレート基を表し、R’は16の炭素原子を有する分岐した疎水性鎖2−ヘキシル1−デカニルを表し、m=p=0、q=1、n=25である)
【0047】
実験2で得られたものに匹敵する水性懸濁液が得られ、その炭酸カルシウムの乾燥重量は全重量の77.4%であるが、100回転/毎分で測定したBrookfield(登録商標)粘度は1,000mPa.s以下で、これはユーザが完全に使用できるものである。
【0048】
実験3
この実験は炭酸カルシウムを研摩する階段でアクリル酸のホモポリマーを使用する従来法の例である。炭酸カルシウムはフランス製カルサイトで、その粒子の50重量%は直径が6.7μm以上で、アクリル酸のホモポリマーは炭酸カルシウムの乾燥重量に対して1%使用する。アクリル酸のホモポリマーは、
(1)カルボキシル基の70モル重量%は水酸化ナトリウムで中和され、カルボキシル基の30%は生石灰で中和し、
(2)分子量は5,500g/モルである(国際特許第WO 2007/069037号公報に記載の方法で測定)。
得られた水性懸濁液の炭酸カルシウムの含有量(乾燥重量)は全重量の71.7%で、粒子の58.9重量%および88.5重量%はそれぞれ1μmおよび2μm以下である。毎分100回転で測定したBrookfield(登録商標)粘度は1,000mPa.s以下で、これは完全に使用可能なものである。
【0049】
実験3a
この実験は本発明で、炭酸カルシウムの研摩階段でアクリル酸のホモポリマーを使用した。炭酸カルシウム(フランス製カルサイト)の粒子の50重量%は直径が6.7μmで、アクリル酸のホモポリマーは下記(a)と(b)とから成り、水酸化ナトリウムにより中和され、炭酸カルシウムの乾燥重量に対して1重量%を使用した:
(a) 75重量%のアクリル酸、
(b) 25重量%の式(I)のモノマーで、式(I)でRはメタクリレート基を表し、R’は16の炭素原子を有する分岐した疎水性鎖2−ヘキシル1−デカニルを表し、m=p=0、q=1、n=25である)
【0050】
実験3で得られたものに匹敵する水性懸濁液が得られ、その炭酸カルシウムの乾燥重量は全重量の71.4%であり、その粒子の57.8%および87.4%はそれぞれ1μmおよび2μm以下である。さらに、100回転/毎分で測定したBrookfield(登録商標)粘度は1,000mPa.s以下で、これはユーザが完全に使用できるものである。
なお、実験3と実験3aでの研摩は国際特許第WO 0196007号公報に記載の方法に従って実行した。
【0051】
次いで、実験1〜実験3aの各々に対して下記から成る紙コーテング剤を製造した:
(1)水性懸濁液の乾燥重量100重量部の被テスト炭酸カルシウム、
(2)炭酸カルシウムの乾燥重量100重量部に対して11重量部のDOWTM CHEMICALS社からDL 966の名称で市販のブタジエンスチレン・ラテックス、
(3)炭酸カルシウムの乾燥重量100重量部に対して0.25重量部のポリビニールアルコール、
(4)炭酸カルシウムの乾燥重量100重量部に対して0.6重量部のCLARIANT社からBlancophor(登録商標)Pの名称で市販の光学的白色剤、
(5)COATEX社からRheocarb(登録商標)の名称で市販の乾燥重量で0.4重量部のアクリル増粘剤/水保持剤。
【0052】
実験1〜実験3aで得られた各コーテング剤に対して25℃、10回転/毎分および100回転/毎分でのBrookfield(登録商標)粘度とその保水性を求めた。保水性はGRADEK社の機械AAGWRを使用して求めた。この機械では「Test Blotter Paper」として公知の試験紙を測定チャンバに入れ、「Test Filter PCTE」として公知の孔の明いたプラスチックネットでカバーした。紙およびネットはGRADEK社から市販されている。次に、10mLのテストする紙コーテング剤をチャンバに加える。AAGWR機械を用いて紙コーテング剤に一定の圧力を加えて、コーテング剤中に含まれている水および水溶性物質の全てまたは一部を孔の明いたプラスチックネットを通過させて試験紙に移行させる。具体的には0.5バールの圧力を90秒間加える。実験前後の試験紙の重量差から実験中に試験紙へ移行した紙コーテング剤中に含まれていた水および水溶性物質の重量が得られる。実験1〜実験3aで得られた結果は[表1]にまとめてある。
【0053】
【表1】

【0054】
結果を比較すると、Brookfield(登録商標)粘度は本発明の方が常に高いことが分る。これは特に実験2aで顕著である。実験2aは実験2に対応するものより最初の懸濁液はより流動性があったものである。同様に、保水性も本発明の方が少ない。これは紙コーテング剤が紙基材中に移行しなかったことを意味する。従って、従来法と同じ量のアクリルポリマー(水性懸濁液の製造時に使用する分散剤、研摩剤、紙コーテング剤製造時の濃化剤)を使用しても、得られた紙の印刷適性が改良される。
【0055】
実施例2
この実験は本発明で、分散階段または濃度階段に炭酸カルシウムの水性懸濁液中に発明のポリマーを使用する例である。得られた懸濁液は改良した保水性および肥厚を示す紙コーテング剤の製造で使用し、発明のポリマーを含まない炭酸カルシウムの水性懸濁液から作られた従来法の紙コーテング剤と比較した。両方のコーテング剤は最終的に同じ量のアクリルポリマー(水性懸濁液に加えた分散剤または研摩助剤+コーテング剤に加えた濃化剤)を有している。
【0056】
実験4
この実験は研摩剤無しに研摩した炭酸カルシウム(ノルウェー大理石)のケーキを分散させるためにアクリル酸と無水マレイン酸とのコポリマー(70/30重量比)を用いた従来例を示す。炭酸カルシウムの粒子の60重量%は平均直径は1μm以上で、アクリル酸と無水マレイン酸とのコポリマーは炭酸カルシウムの乾燥重量に対して0.4%使用した。アクリル酸と無水マレイン酸とのコポリマーは、
(1)水酸化ナトリウムで完全に中和され、
(2)分子量は15,600g/モルである(国際特許第WO 2007/069037号公報に記載の方法で測定)。
【0057】
得られた水性懸濁液の炭酸カルシウムの含有量(乾燥重量)は全重量の67.4%である。毎分100回転で測定したBrookfield(登録商標)粘度は1,000mPa.s以下で、これは完全に使用可能なものである。
【0058】
実験4a
この実験は本発明で、研摩剤無しに研摩した炭酸カルシウム(ノルウェー大理石)のケーキを分散させるために、炭酸カルシウムの乾燥重量に対して0.4重量%の下記水溶性ポリマーを使用した:
(a) 75重量%のアクリル酸、
(b) 25重量%の式(I)のモノマーで、式(I)でRはメタクリレート基を表し、R’は16の炭素原子を有する分岐した疎水性鎖2−ヘキシル1−デカニルを表し、m=p=0、q=1、n=25である)
【0059】
得られた水性懸濁液は実験4で得られたものに匹敵し、その炭酸カルシウムの乾燥重量は全重量の67.0%であり、100回転/毎分で測定したBrookfield(登録商標)粘度は1,000mPa.s以下で、これはユーザが完全に使用できるものである。
【0060】
実験5
この実験は炭酸カルシウム(フィンランド大理石)の水性懸濁液の濃化段階で0.8重量%アクリル酸と無水マレイン酸とのコポリマー(70/30重量比)を使用する従来法の例である。最初の固体含有率は炭酸カルシウムの乾燥重量に対して20%である。%アクリル酸と無水マレイン酸とのコポリマーは、
(1)水酸化ナトリウムで完全に中和され、
(2)分子量(国際特許第WO 2007/069037号公報に記載の方法で測定)は15,600g/モルでる。
得られた水性懸濁液の乾燥重量での炭酸カルシウムの含有量は全重量の71.5%であり、100回転/分で測定したBrookfield(登録商標)粘度は1,000のmPa.s以下で、こそれはユーザが完全に使用できるものである。
【0061】
実験5a
この実験は本発明で、最初の固体含有率が乾燥重量で20%である炭酸カルシウム(フィンランド大理石)の乾燥重量に対して水酸化ナトリウムで中和された0.8%重量%の下記水溶性ポリマーを濃化階段で使用した:
(a) 75重量%のアクリル酸、
(b) 25重量%の式(I)のモノマーで、式(I)でRはメタクリレート基を表し、R’は16の炭素原子を有する分岐した疎水性鎖2−ヘキシル1−デカニルを表し、m=p=0、q=1、n=25である)
得られた水性懸濁液は実験2で得られたものに匹敵し、その炭酸カルシウムの乾燥重量は全重量の71.4%であり、100回転/毎分で測定したBrookfield(登録商標)粘度は1,000mPa.s以下で、これは、実験2で得られたものとは違って、ユーザが完全に使用できるものである。
【0062】
実験5および実験5aではEPCOM社の熱濃化機を用いて当業者にとって周知の方法で濃化した。
【0063】
実験4〜実験5aの各々に対して以下から成る紙コーテング剤を製造した:
(1)試験する炭酸カルシウムの乾燥重量70重量部の水性懸濁液、
(2)HUBER社からHydragloss(登録商標)90の名称で市販のカオリン粉末の乾燥重量30重量部、
(3)DOWTM CHEMICALS社からDL 966の名称で市販のブタジエンスチレンラテックスを炭酸カルシウムの乾燥重量100重量部に対して乾燥重量で11重量部、
(4)炭酸カルシウムの乾燥重量100重量部に対して1重量部のポリビニールアルコール、
(5)炭酸カルシウムの乾燥重量100重量部に対して乾燥重量で1重量部の会CLARIANT社からBlancophor(登録商標)Pの名称で市販の光学的白色化剤、
(6)乾燥重量で0.8重量部のCOATEX社からRheocarb(登録商標)の名称で市販のアクリル増粘剤/水保持剤。
【0064】
実験4〜実験5aで得られた各コーテング剤のBrookfield (登録商標)粘度(25℃で10回転/分および100回転/分)と、これらの保水性とを求めた。得られた結果は[表2]に示した。
【0065】
【表2】

【0066】
結果を比較すると、本発明ではBrookfield (登録商標)粘度が常に大きく、保水性は常に小さいことが分る。これは紙コーテング剤が紙基材へ移行しなかったこうとを意味する。従って、アクリルポリマーの量(水性懸濁液の製造時の分散剤および研摩剤と、紙コーテング剤製造時の濃化剤)が従来法と同じ場合でも、紙の印刷適性が改善される。
【0067】
実施例3
この実験は研摩階段で炭酸カルシウムの水性懸濁液中に本発明ポリマーを使用する例を示す。次いで、この水性懸濁液を紙コーテング剤の製造で使用して、本発明のポリマーを含まない炭酸カルシウムの水性懸濁液に由来する従来法の紙コーテング剤と比較して、両方のコーテング剤の最終的なアクリル重合体の量(水性懸濁液に加えた分散剤または研摩助剤+とコーテング剤に加えた濃化剤)を同じにした時に保水性および濃化性が改良することを示す。
【0068】
実験6
この実験は水中で炭酸カルシウムを研摩するためにアクリル酸のホモポリマーを使用した従来技術を示す。炭酸カルシウムの50重量%は直径が2.4μm以上の粒子を有し、炭酸エステルの乾燥重量に対して下記のホモポリマーを乾燥重量で0.45%を使用した:
(1)カルボキシル基の70モル重量%は水酸化ナトリウムで中和し、カルボキシル基の30モル重量%はライムで中和し、
(2)分子量(国際特許第WO 2007/069037公報に記載の方法で測定)は5,500g/モル。
【0069】
得られた水性懸濁液の炭酸カルシウムの乾燥重量は全重量の73.9%であり、その粒子の39.6%および76.7%はそれぞれ1μmおよび2μm以下である。さらに、100回転/毎分で測定したBrookfield(登録商標)粘度は1,000mPa.s以下で、これはユーザが完全に使用できるものである。
【0070】
実験6a
この実験は水中で炭酸カルシウム(フランス製チャコール)を研摩するためにアクリル酸の下記水溶性ポリマーを使用した本発明である。炭酸カルシウムの粒子の50重量%の直径は2.4μm以上であり、水溶性ポリマーは炭酸カルシウムの乾燥重量に対して0.45重量%を使用した:
(a) 75重量%のアクリル酸、
(b) 25重量%の式(I)のモノマーで、式(I)でRはメタクリレート基を表し、R’は16の炭素原子を有する分岐した疎水性鎖2−ヘキシル1−デカニルを表し、m=p=0、q=1、n=25である)
【0071】
得られた水性懸濁液は実験6で得られたものに匹敵し、その炭酸カルシウムの乾燥重量は全重量の73.5%で、粒子の37.8重量%および75.8重量%は1μmおよび2μm以下であり、100回転/毎分で測定したBrookfield(登録商標)粘度は1,000mPa.s以下で、これは、実験2で得られたものとは違って、ユーザが完全に使用できるものである。
【0072】
次いで、実験6および実験6aの各々に対して下記組成の紙コーテング剤を製造した:
(1)乾燥重量で100重量部のテストする炭酸カルシウムの水性懸濁液、
(2)炭酸カルシウムの乾燥重量100重量部に対して乾燥重量で8重量部のDOWTM CHEMICALS社からDL 966の名称で市販のブタジエンスチレンラテックス、
(3)乾燥重量で4重量部のROQUETTE社からAmilys(登録商標)の名称で市販のデンプン、
(4)炭酸カルシウムの乾燥重量100重量部に対して乾燥重量で1.5重量部の会CLARTANT社からBlancophor(登録商標)Pの名称で市販の光学的白色剤、
(5)乾燥重量で0.3重量部のCOATEX社からRheocarb(登録商標)の名称で市販のアクリルの増粘剤/水保持剤。
【0073】
実験6〜実験6aで得られた各コーテング剤のBrookfield (登録商標)粘度(25℃で10回転/分および100回転/分)と、これらの保水性とを求めた。得られた結果は[表3]に示した。
【0074】
【表3】

【0075】
結果を比較すると、本発明ではBrookfield (登録商標)粘度が常に大きく、保水性は常に小さいことが分る。これは紙コーテング剤が紙基材へ移行しなかったことを意味する。従って、アクリルポリマーの量(水性懸濁液の製造時の分散剤および研摩剤と、紙コーテング剤製造時の濃化剤)が従来法と同じ場合でも、紙の印刷適性が改善される。
【0076】
実施例4
この実験は、研摩階段で炭酸カルシウムの水性懸濁液中で本発明ポリマーを使用し、その懸濁液を使用して紙を製造した例を示す。本発明のポリマーを含まない炭酸カルシウムの水性懸濁液に由来する従来法の紙コーテング剤と比較して、両方のコーテング剤の最終的なアクリル重合体の量(水性懸濁液に加えた分散剤または研摩助剤+とコーテング剤に加えた濃化剤)を同じにした時に保水性および濃化性が改良することを示す。
【0077】
実験7
この実験は、炭酸カルシウム(フランス製カルサイト)の研摩階段で炭酸カルシウムの乾燥重量に対して乾燥重量で1重量%のアクリル酸のホモポリマーを使用した従来技術である。炭酸カルシウムの粒子の50重量%は直径が6.7μm以上である。アクリル酸のホモポリマーは、
(1)カルボキシル基の70モル重量%は水酸化ナトリウムで中和され、カルボキシル基の30モル重量%はライムで中和され、
(2)分子量(国際特許第WO 2007/069037号公報に記載の方法で測定)は5,500g/モル。
【0078】
実験8
この実験は、炭酸カルシウム(フランス製カルサイト)の研摩階段で本発明のアクリル酸のホモポリマーを使用した例である。炭酸カルシウムの粒子の50重量%は直径が6.7μm以上である。下記のアクリル酸のホモポリマーを水酸化ナトリウムにより中和し、炭酸エステルの乾燥重量に対して乾燥重量で1重量%を使用した:
(a) 85重量%のアクリル酸、
(b) 15重量%の式(I)のモノマーで、式(I)でRはメタクリレート基を表し、R’は16の炭素原子を有する分岐した疎水性鎖2−ヘキシル1−デカニルを表し、m=p=0、q=1、n=25である)
【0079】
実験9
この実験は、炭酸カルシウム(フランス製カルサイト)の研摩階段で本発明のアクリル酸のホモポリマーを使用した例である。炭酸カルシウムの粒子の50重量%は直径が6.7μm以上である。下記のアクリル酸のホモポリマーを水酸化ナトリウムにより中和し、炭酸エステルの乾燥重量に対して乾燥重量で1重量%を使用した:
(a) 85重量%のアクリル酸、
(b) 15重量%の式(I)のモノマーで、式(I)でRはメタクリレート基を表し、R’は20の炭素原子を有する分岐した疎水性鎖2−ヘキシル1−デカニルを表し、m=p=0、q=1、n=25である)
【0080】
実験7〜実験9の各々に対して下記組成の紙コーテング剤を製造した:
(1)乾燥重量で100重量部のテストする炭酸カルシウムの水性懸濁液、
(2)炭酸カルシウムの乾燥重量100重量部に対して乾燥重量で11重量部のDOWTM CHEMICALS社からDL 966の名称で市販のブタジエンスチレン・ラテックス、
(3)炭酸カルシウムの乾燥重量100重量部に対して乾燥重量で0.25重量部のポリビニールアルコール、
(4)炭酸カルシウムの乾燥重量100重量部に対して乾燥重量で0.6重量部のCLARIANTTM社からBlancophor(特許)Pで市販の光学的白色剤、
(5)乾燥重量0.2重量部のCOATEX社からRheocarb(登録商標)の名称で市販のアクリルの増粘剤/水保持剤。
実験7〜実験9で得られた各コーテング剤のBrookfield (登録商標)粘度(25℃で10回転/分および100回転/分)と、これらの保水性とを求めた。得られた結果は[表4]に示した。
【0081】
【表4】

【0082】
結果を比較すると、本発明ではBrookfield (登録商標)粘度が常に大きく、保水性は常に小さいことが分る。これは紙コーテング剤が紙基材へ移行しなかったことを意味する。従って、アクリルポリマーの量(水性懸濁液の製造時の分散剤および研摩剤と、紙コーテング剤製造時の濃化剤)が従来法と同じ場合でも、紙の印刷適性が改善される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)と(b):
(a) 少なくとも一種のエチレン性不飽和アニオンモノマーと、
(b) 分岐した疎水性の飽和または不飽和のアルキル、アルキルアリール、アリールアルキルまたはアリール鎖を末端に有し、4〜21の炭素原子、好ましくは15〜20の炭素原子を有し、少なくとも6つの炭素原子を有する2つの枝を有する、少なくとも一種のエチレン性不飽和オキシアルキルモノマーとから成る水溶性ポリマーの、少なくとも一種の無機材料を含む紙のコーテング剤の製造方法でのコーテング剤濃化剤としての使用。
【請求項2】
少なくとも一種の無機材料を含む紙のコーテング剤の製造方法でのコーテング剤濃化剤としての請求項1に記載の水溶性ポリマーの使用であって、
上記水溶性ポリマーが、各モノマーが下記の重量百分率で表される(合計は100%)ことを特徴とする使用:
(a)5%〜95%、好ましくは50%〜95%、さらに好ましくは70%〜95%の少なくとも1種のエチレン性−不飽和アニオン性モノマー、
(b)5%〜95%、好ましくは5%〜50%、さらに好ましくは5%〜30%の分岐した疎水性の飽和または不飽和のアルキル、アルキルアリール、アリールアルキルまたはアリール鎖を末端に有し、4〜21の炭素原子、好ましくは15〜20の炭素原子を有し、少なくとも6つの炭素原子を有する2つの枝を有する、少なくとも一種のエチレン性不飽和オキシアルキルモノマー
【請求項3】
モノマー(a)がアクリル酸、メタアクリル酸およびこれらの混合物の中から選択される請求項1または2に記載の、少なくとも一種の無機材料を含む紙のコーテング剤の製造方法でのコーテング剤濃化剤としての請求項1に記載の水溶性ポリマーの使用
【請求項4】
少なくとも一種の無機材料を含む紙のコーテング剤の製造方法でのコーテング剤濃化剤としての請求項1〜3のいずれか一項に記載の水溶性ポリマーの使用であって、
モノマー(b)が下記式(I)のモノマーであることを特徴とする使用:

(ここで、m、n、p、qは整数で、m、n、pは150以下、qは0以上で、m、nおよびpの中の少なくとも一つの整数はゼロではなく、
Rは重合可能な不飽和官能基、好ましくはビニル基およびアクリル酸、メタアクリル酸およびマレイン酸のエステル基、さらには不飽和ウレタン基、例えばアクリルウレタン、メタアクリルウレタン、α−α'−ジメチル−イソプロペニルベンジルウレタン、アリルウレタン、置換または未置換のアリールまたはビニルエーテル基、エチレン性不飽和アミドまたはイミド基を有する基、
1およびR2は水素原子またはアルキル基を表し、互いに同一でも異なっていてもよく、
R'は置換基を有していてもよい14〜21の炭素原子、好ましくは15〜20の炭素原子を有する分岐した疎水性のアルキル、アルキルアリール、アリールアルキルまたはアリール鎖を表し、少なくとも6つの炭素原子を有する2つの枝を有し、特に好ましくはR'は2−ヘキシル1−デカニル、2−オクチル、1−デカニルおよびこれらの混合物である)
【請求項5】
少なくとも一種の無機材料を含む紙のコーテング剤の製造方法でのコーテング剤濃化剤としての請求項1〜4のいずれか一項に記載の水溶性ポリマーの使用であって、
上記の水溶性ポリマーが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよびこれらの混合物の中から選択される一価または多価の一種または複数の中和分散剤によって部分的または完全に中和されていることを特徴とする使用。
【請求項6】
少なくとも一種の無機材料を含む紙のコーテング剤の製造方法でのコーテング剤濃化剤としての請求項1〜5のいずれか一項に記載の水溶性ポリマーの使用であって、
コーテング剤が、天然または合成の炭酸カルシウム、カオリン、タルクおよびこれらの混合物の中から選択される少なくとも一種の無機材料を含み、好ましくは天然または合成の炭酸カルシウムまたはカオリンまたはこれらの混合物であり、特に好ましくは天然の炭酸カルシウムとカオリンの混合物であることを特徴とする使用。
【請求項7】
少なくとも一種の無機材料を含む紙のコーテング剤の製造方法でのコーテング剤濃化剤としての請求項1〜6のいずれか一項に記載の水溶性ポリマーの使用であって、
無機材料の乾燥重量に対する上記ポリマーの乾燥重量の百分比が0.1%〜2%、好ましくは0.2%〜0.8%であることを特徴とする使用。

【公表番号】特表2011−506795(P2011−506795A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538933(P2010−538933)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【国際出願番号】PCT/IB2008/003368
【国際公開番号】WO2009/077829
【国際公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(398051154)コアテツクス・エス・アー・エス (35)
【Fターム(参考)】