説明

保湿剤、並びに、それを用いた皮膚外用剤

【課題】高い水溶性と、優れた保湿性能を有する保湿剤、並びに、それを用いた皮膚外用剤を提供する。
【解決手段】多糖類を酸化することにより前記多糖類の一級水酸基を選択的にカルボキシル基またはその塩に変換したポリウロン酸からなる保湿剤及び当該保湿剤を含有する皮膚外用剤。N−アセチルグルコサミンまたはグルコースからなる多糖類、例えばキチンまたはセルロース、を酸化したポリウロン酸を用いることが好ましい。ポリウロン酸の重量平均分子量を5,000から200,000の範囲とすることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品、医薬部外品、化粧品などの皮膚外用剤に使用する為の保湿剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
皮膚はそのバリア機能により外界の刺激から生体を守っている。
皮膚は外側から表皮、真皮、皮下組織からなっており、更に表皮の最外層に角質が存在する。
角質層は10〜20の層になった角質細胞からなる細胞が最後にたどりつく部分であり、外側にいくほど、核のない死んだ細胞がみられるが、水分を保持し、乾燥を防ぐ働きなど、角質層のバリア機能は肌の美しさに大きく関係している。
角質細胞内には、アミノ酸、尿素、乳酸などの天然保湿因子が存在し、これらが水と結合することで、水分を保持し、皮膚の柔軟性を保っている。
一般に、乾燥、紫外線などの外的要因や加齢、老化や内臓疾患、ストレスなどの内的要因によって皮膚の角質水分量が減少し、皮膚のバリア機能の低下をもたらし、肌荒れやドライスキン、各種皮膚炎を引き起こしているといわれている。
従って、化粧品分野や皮膚科の領域では、角質水分量を維持する保湿剤の開発が不可欠である。
【0003】
従来の保湿剤としては、例えば、グリセリンなどの多価アルコール類、アミノ酸や尿素、コラーゲン、ホホバ油やオリーブオイル、スクワランなどの天然油脂、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸などが用いられることが多い。
特にヒアルロン酸の保湿効果は優れていると言われている。
更に、ヒアルロン酸より効果は劣るものの、その代替としてより安価なアルギン酸やキトサン、キチン誘導体などの保湿剤としての利用が検討されている。(特許文献1参照)
【0004】
【特許文献1】特開平11−139954号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、これらの保湿剤は長時間使用した場合の皮膚への刺激が懸念されたり、効果の持続性、および安定性の面で十分であるとは言えない。
また、原料の安定供給やコストの面を考えると課題が多い。
また、こうした保湿剤は水溶液粘度が高いものが多く、有効成分の含有率に制限があるものや、様々な塩や他の成分の混在する系内では安定に溶解状態を保つことができないものが多い。
【0006】
本発明はかかる従来技術の問題点を解決すべく、環境や人体への悪影響が少なく、安定供給が可能であるという多糖類本来の利点を生かしつつ、高い水溶性と、優れた保湿性能を有する保湿剤、並びに、それを用いた皮膚外用剤を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、多糖類を酸化することにより前記多糖類の一級水酸基を選択的にカルボキシル基またはその塩に変換したポリウロン酸を主成分とする保湿剤である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記ポリウロン酸が、N−アセチルグルコサミンまたはグルコースからなる多糖類を酸化してなることを特徴とする請求項1に記載の保湿剤である。
【0009】
請求項3に記載の発明は、前記ポリウロン酸の重量平均分子量が5,000から200,000の範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載の保湿剤である。
【0010】
請求項4に記載の発明は、前記ポリウロン酸が、セルロースまたはキチンを酸化してなることを特徴とする請求項1に記載の保湿剤である。
【0011】
請求項5に記載の発明は、前記ポリウロン酸のカルボキシル基の一部または全部が脱塩され、遊離のカルボキシル基を有していることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の保湿剤である。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の保湿剤を含有することを特徴とする皮膚外用剤である。
【発明の効果】
【0013】
酸化によりカルボキシル基を導入し、親水性を付与すべく改質した多糖類を用いることで、また、カルボキシル基導入の位置など構造の制御されたウロン酸残基をもつ天然多糖類由来のポリウロン酸を用いている事から、安全性、水溶性が高く、かつ十分な保湿性を有する保湿剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の保湿剤の主成分であるポリウロン酸は多糖類の酸化により得られる。
酸化前の多糖類にグルコースやN−アセチルグルコサミンを含む多糖類を用いると、酸化により得られるポリウロン酸には、グルクロン酸やN−アセチルグルコサミヌロン酸が含まれる構造となる。
これらのグルクロン酸やN−アセチルグルコサミンは、ヒアルロン酸やコンドロイチンなどに含まれ、生体への親和性が非常に高く、皮膚やその他の臓器にも存在している。
グルコースやN−アセチルグルコサミンを含む多糖類としては、でんぷんやプルラン、ヒアルロン酸などの水溶性多糖類、さらにはセルロースやキチン等を挙げることができる。原料の調達、コスト、期待される機能、また、構造をほとんど変えずに水溶化することができることからデンプン、セルロース、キチンなどの原料を用いることが好ましい。
また、得られるポリウロン酸の保湿性能の高さや、生体適合性という観点からは原料多糖類がセルロースまたはキチンであるとより好ましい。
【0015】
また、本発明の保湿剤の主成分となるポリウロン酸の重量平均分子量は5,000から1,000,000の範囲にあることを特徴としており、より好ましい重量平均分子量は5,000から50,000の範囲である。
更に化学構造が均一であることに加え、分子量がこの範囲にあると、水溶液としたときに粘度が低く、また、高濃度で溶解させる事も可能である為、効率的に機能を発揮する事ができる。
また、一部は皮膚に浸透し、角質表面だけでなく、内側から皮膚の保水性を向上させることができると考えられる。
【0016】
セルロースの6位の一級水酸基のみを選択的に酸化するとβ−1,4−結合したグルクロン酸を構成単糖とするポリウロン酸が得られる。
グルクロン酸はコンドロイチンやヒアルロン酸の構成単糖としても生体内に存在し、その保湿性能に大きく関与していると考えられる。
また、キチンはN−アセチルグルコサミンがβ−1,4−結合してなる多糖で、これもヒアルロン酸の構成単糖として体内に存在している。
しかし、キチンはこのままでは水に溶解することができず、保湿剤としては利用できない。そこで、6位の一級水酸基のみを選択的に酸化してウロン酸構造を有する多糖類とする事で、キチンに水溶性を付与でき、さらに、この酸化キチンはかなりの割合でカルボキシル基が遊離の状態で存在していても、水に溶解した状態を維持できる。
【0017】
これらのポリウロン酸を得るには、多糖類からの選択的酸化方法が有効である。
多糖類の酸化方法としては各種の方法が検討されているが、一級水酸基の酸化に対する選択性が高く、できるだけ均一構造のものを得られる酸化方法をとるべきである。
二酸化窒素などを用いたセルロースやキチンの酸化方法も知られているが、試薬の有毒性、酸化の選択性などの観点から、N−オキシル化合物の存在下、共酸化剤を用いた酸化手法が好ましい。
この選択的酸化手法は、酸化度の制御が可能で、かつピラノース環の2位や3位を酸化することなく、ほとんど全てのピラノース環6位をカルボキシル基まで酸化することができ、また水系で酸化反応を行うことが可能である。
【0018】
上記N−オキシル化合物としては、2、2、6、6−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシル(以下、TEMPO)などが好ましく用いられる。
また、上記酸化剤としては、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸や過ハロゲン酸、またはそれらの塩、ハロゲン酸化物、窒素酸化物、過酸化物など、目的の酸化反応を推進し得る酸化剤であれば、いずれの酸化剤も使用できる。
さらに、臭化物やヨウ化物の共存下で酸化反応を行うと、温和な条件下でも酸化反応を円滑に進行させ、カルボキシル基の導入効率を大きく改善できる。
中でも、N−オキシル化合物にはTEMPOを用い、臭化ナトリウムの存在下、酸化剤として次亜塩素酸ナトリウムを用いて酸化反応を行うことが特に好ましい。
【0019】
この方法を用いた場合、構成単糖の一級水酸基への酸化の選択性を向上させ、副反応を抑える目的で、反応温度は室温以下、より好ましくは系内を5℃以下で反応させることが望ましい。
さらに、反応中は系内をアルカリ性に保つことが好ましい。
このときのpHは9〜12、より好ましくはpH10〜11に保つとよい。
【0020】
さらにこの酸化方法は、酸化剤の量およびpHを一定に保つ際に添加されるアルカリの量により酸化度を制御することができる。
例えば、アルカリが糖残基と等モル量添加されれば、ほぼ全てのピラノース環6位の一級水酸基がアルデヒド基を経てカルボキシル基にまで酸化され、水溶性のポリウロン酸が得られる。
【0021】
また、セルロースやキチンなど結晶性の高い多糖類を原料とする場合は、均一で水溶性の高い、あるいは、分散性のよいポリウロン酸を得る為には、前処理として再生処理などの結晶性を低下させるための処理を行うことが好ましい。
セルロースの再生処理としては、キュプラアンモニウム法、ビスコース法等の公知の再生処理法を利用することができる。
また、キチンの再生処理としても、再生後キチンの結晶性が低下していれば、その処理は限定されるものではないが、例えばアルカリ再生処理が挙げられる。
キチンを高濃度のアルカリに浸漬後、氷を加えながら低温下で希釈していくことにより、粘調な液体となる。
ここに塩酸を加えて中和すると、フレーク状のキチンが析出する。
得られたキチンはほぼ非晶質化しており、これを十分に水洗して乾燥させずにまたは凍結乾燥した後に、酸化反応に供することにより、分子量低下を極力抑え、ほぼ全てのピラノース環6位の一級水酸基のみをカルボキシル基にまで酸化することができる。
【0022】
また、キチンの脱アセチル化物であるキトサンを原料に、均一反応下でN−アセチル化した材料を酸化反応に供してもよい。
例えば、キトサンを酢酸に溶解し、メタノールで希釈後、キトサン中のアミノ基量に対して1.5〜3倍モル量の無水酢酸を添加することで、容易にN−アセチル化して、再びキチンの化学構造に戻すことができる。
この操作を経て、十分に水洗したものを乾燥させずに、あるいは凍結乾燥して、酸化反応に供することにより、アルカリ再生キチン同様に6位の一級水酸基のみ選択性高く酸化される。
さらにこの場合には、無水酢酸の添加量により酸化原料のN−アセチル化度をコントロールすることも可能である。
従って、N−アセチルグルコサミンとグルコサミンおよびそれらを酸化して得られるウロン酸を構成単糖に有するポリウロン酸を得る事も可能である。
【0023】
これらの方法により得られたポリウロン酸はナトリウム等の塩として存在することが多い。本発明の保湿剤は、これらのポリウロン酸のカルボキシル基の一部あるいは全部が脱塩された遊離のカルボキシル基を有することを特徴としている。
皮膚は一般的に弱酸性の性質をもつ。
ポリウロン酸を脱塩することで、これらの水溶液も弱酸性を示す為肌への親和性が高く、保湿性能も高いため、保湿剤としての利用には適している。
脱塩の方法としては、一般的な方法が適用でき、例えば上記酸化方法により得られたポリウロン酸ナトリウム塩の水溶液に無機酸あるいは有機酸を滴下し、pHを弱酸性とした後、単離することで、目的の一部脱塩したポリウロン酸が得られる。
あるいは、イオン交換樹脂などを用いることも可能である。
また、ポリウロン酸のカルボキシル基のほぼ全てのカルボキシル基を脱塩したものと、未脱塩のポリウロン酸を混合する事でも、目的の一部脱塩化したポリウロン酸を得ることができる。
【0024】
これらのカルボキシル基は水酸基などと比べ反応性も高く、高い水溶性或いは親水性を有するため、二次修飾の反応原料としても非常に有効であり、更に酸化前後に誘導体化を行った多糖類も保湿剤として用いることができる。
また、従来の保湿剤の利用でも有効とされている、各種他の成分との混合による相乗効果も期待できる。
特に、本発明のポリウロン酸は水溶性が高く、高濃度で溶解することができる上、塩やアルコールなどその他の成分などの添加によりゲル化、不溶化することが少なく、使いやすい。
【0025】
本発明の保湿剤は粉末として得られるが、利用の際には、水溶液などの液状、フィルム状、シート状、ゲル状のものを成形して利用したり、或いはフィルムやシートなどに含浸させて利用することもできる。
【0026】
以下、本発明を実施例に基づき詳細に説明する。本発明はかかる実施形態に限定するものではない。
【実施例1】
【0027】
コンスターチ10gを蒸留水400gに加熱溶解させ冷却した。
この溶液に、蒸留水100gにTEMPOを0.18g、臭化ナトリウム2.5gを溶解した溶液を加え、11%濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液104gを滴下により添加し、酸化反応を開始した。
反応温度は常に5℃以下に維持した。
反応中は系内のpHが低下するが、0.5N−NaOH水溶液を逐次添加し、pH10.75に調整した。
そして、6位の一級水酸基の全モル数に対し、100%のモル数に対応するアルカリ添加量に達した時点で、エタノールを添加し、反応を停止した。
エタノール2.5Lにこの溶液を撹拌しながら添加して沈殿物を得た。
更にこの沈殿物を水/アセトン=1/7の混合水溶液で数回洗浄し、反応試薬や副生成物を除去し、更にアセトンで洗浄した後、乾燥させ、白色粉末を得た。
この粉末100gを水に懸濁させ、H型に再生処理したイオン交換樹脂(オルガノ株式会社:アンバーライトIR120)70mLをつめたカラムに通し、脱塩処理を行った。
処理後の水溶液を凍結乾燥し、デンプンから調製したポリウロン酸白色粉末8.7gを得た。
【0028】
生成物を0.2N−NaOH水溶液に溶解させ、0.2N−HCl水溶液で中和した水溶液の分子量測定をGPCカラムPWXL−6000とPWXL−3000を連結して、標準プルラン換算で行った。
ポリウロン酸の重量平均分子量は120,000であった。
【実施例2】
【0029】
再生セルロースとして旭化成工業(株)製ベンリーゼを用い、再生セルロース10gを蒸留水400gに懸濁し、蒸留水100gにTEMPOを0.18g、臭化ナトリウム2.5g溶解した溶液を加え、5℃以下まで冷却した。
ここに11%濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液104gを滴下により添加し、酸化反応を開始した。
反応温度は常に5℃以下に維持した。
反応中は系内のpHが低下するが、0.5N−NaOH水溶液を逐次添加し、pH10.75に調整した。
そして6位の一級水酸基の全モル数に対し、100%のモル数に対応するアルカリ添加量に達した時点で、エタノールを添加し、反応を停止させた。
1Lのエタノール中に反応液を投入して生成物を析出させ、水:アセトン=1:7よりなる溶液により充分洗浄し、ポリウロン酸ナトリウムを得た。
このポリウロン酸ナトリウム塩の5%水溶液に塩酸を添加し、pH3の水溶液とした。
3時間撹拌後、この溶液を撹拌しながら過剰のエタノールに混合し、その後1晩放置し、沈殿物を得た。
この生成物を水:アセトン=1:7よりなる溶液により充分洗浄した後、アセトンで脱水し、40℃で減圧乾燥させ、セルロースの酸化物であるポリウロン酸を得た。
ポリウロン酸の重量平均分子量は25,000であった。
【実施例3】
【0030】
和光純薬工業(株)製キチン10gを、45%水酸化ナトリウム水溶液150gに浸漬し、室温以下で2時間攪拌した。
これに周りを氷水などで冷やし、攪拌しながら砕いた氷850gを添加した。
このアルカリ処理によりキチンはほぼ溶解する。
塩酸で中和し、十分に水洗した後、乾燥しないものを酸化原料とした。
この再生キチン2.5%濃度の懸濁液200gに、蒸留水50gにTEMPO0.08g、臭化ナトリウム1.0gを溶解した溶液を加え、5℃以下まで冷却した。
ここに11%濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液35gを滴下により添加し、酸化反応を開始した。
反応温度は常に5℃以下に維持した。反応中は系内のpHが低下するが、0.5N−NaOH水溶液を逐次添加し、pH10.75に調整した。
そして6位の1級水酸基の全モル数に対し、100%のモル数に対応するアルカリ添加量に達した時点で、エタノールを添加し、反応を停止させ、1Lのエタノール中に反応液を投入して生成物を析出させ、水:アセトン=1:7よりなる溶液により充分洗浄した後、アセトンで脱水し、40℃で減圧乾燥させ、白い粉末状のポリウロン酸ナトリウム塩5.2gを得た。
さらにこのポリウロン酸ナトリウム塩を5%水溶液とし、実施例1と同じようにイオン交換樹脂で処理することにより、キチンからポリウロン酸を得た。
ポリウロン酸の重量平均分子量は13,000であった。
【0031】
<比較例1>
アルギン酸ナトリウム粘度100から150cps。
【0032】
<比較例2>
ヒアルロン酸ナトリウム(ヒアルロン酸ナトリウム)。
【0033】
<比較例3>
グリセリン。
【0034】
(保湿性評価測定サンプルの調製)
実施例1〜3および比較例1〜3の1wt%水溶液を生成した。
【0035】
(保湿性評価1)
試験管に5cm水位となるように、各保湿性評価測定サンプルをセットし、40℃25%RHの環境試験室内に150分間保管し、その時の水位を確認した。
【0036】
比較例3を用いたサンプルの水位は3.4cm、比較例2を用いたサンプルの水位は3.7cm、比較例1を用いたサンプルの水位は3.6cm、実施例3を用いたサンプルの水位は4.0cm、実施例2を用いたサンプルの水位は4.0cm、実施例1を用いたサンプルの水位は3.8cmであり、実施例1〜3を用いたサンプルは、比較例1〜3を用いたサンプルより良好な保湿性能を示した。
【0037】
(保湿性評価2)
被験者(30代女性)の下腕の内側に各保湿性評価測定サンプルを塗布した。
余分な水分をコットンで軽く抑えた後、モイスチャーチェッカーMY−707S(スカラ株式会社)にて、塗布してから500秒後の肌の水分量を測定した。
【0038】
比較例3を用いたサンプルの肌の水分量は50%、比較例2を用いたサンプルの肌の水分量は55%、比較例1を用いたサンプルの肌の水分量は52%、実施例3を用いたサンプルの肌の水分量は58%、実施例2を用いたサンプルの肌の水分量は65%、実施例1を用いたサンプルの肌の水分量は56%であり、実施例1〜3を用いたサンプルは、比較例1〜3を用いたサンプルより良好な保湿性能を示した。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の保湿剤、並びに、それを用いた皮膚外用剤は、環境や人体への悪影響が少ないという多糖類本来の利点を生かしつつ、高い親水性を付与し、十分な保湿性能を示すものであって、スキンクリームとしても利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多糖類を酸化することにより前記多糖類の一級水酸基を選択的にカルボキシル基またはその塩に変換したポリウロン酸を主成分とする保湿剤。
【請求項2】
前記ポリウロン酸が、N−アセチルグルコサミンまたはグルコースからなる多糖類を酸化してなることを特徴とする請求項1に記載の保湿剤。
【請求項3】
前記ポリウロン酸の重量平均分子量が5,000から200,000の範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載の保湿剤。
【請求項4】
前記ポリウロン酸が、セルロースまたはキチンを酸化してなることを特徴とする請求項1に記載の保湿剤。
【請求項5】
前記ポリウロン酸のカルボキシル基の一部または全部が脱塩され、遊離のカルボキシル基を有していることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の保湿剤。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の保湿剤を含有することを特徴とする皮膚外用剤。

【公開番号】特開2007−291192(P2007−291192A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−118824(P2006−118824)
【出願日】平成18年4月24日(2006.4.24)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】