説明

保護フィルム及びその製造方法

【課題】耐熱寸法安定性に優れ、被着体への貼付後に剥離及び浮きが発生することがなく、特に光学部品への適用において好適な保護フィルムを提供すること。
【解決手段】上記保護フィルムは、プロピレンの単独重合体及び90モル%以上のプロピレンと10モル%以下の他のα−オレフィンとの共重合体よりなる群から選択される少なくとも1種を60重量%以上含むα−オレフィン樹脂、並びに1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−メチルシクロヘキシルアミドに代表される特定の化合物100〜1,000ppmを含有するα−オレフィン樹脂組成物からなる基材フィルムの片面に粘着剤層を積層してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護フィルム及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、特に光学部品の表面保護に好適に用いられる保護フィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼板、樹脂板、自動車、光学部品等の製造中及び製造後の移送、保管の際に、傷付きや汚れ付着等から製品の表面を保護するために、製品表面に保護フィルムを貼り付けて保護することが行われている。
近年では光学部品、特に液晶ディスプレイ関連分野における各種部品の表面保護フィルムの需要が増加している。液晶ディスプレイ等の光学部品は、多数の平板状の部品を組み合わせて製造されるため、各部品の表面は非常に高度の平滑性が要求されており、部品表面への異物の混入、傷付きは極力避けなければならない。これら光学部品の製造においては、各工程で生産された部品につき、次工程へ届けられるまでの間の傷付き、汚れ等から部品を保護するため、生産後クリーンな条件下で直ちに表面保護フィルムが貼付され、その状態で保管、輸送され、部品スペックの光学検査も保護フィルムを貼り付けた状態で行われる。一度貼り付けられた表面保護フィルムは、保護フィルムを貼り付けた後の部品の製造工程、部品の保管、次工程へ届けられるまでの間に不用意に剥れないことが厳に要請される。この剥がれとは、部品端部の保護フィルムが剥離してしまう状態や、部品の端部以外で保護フィルムに浮きが生じて気泡が生じる状態を示す。剥離してしまった場合は当然保護フィルムとしての本来の機能を全く発現できないこととなる。また、かかる保護フィルムは、上記光学検査の支障とならないよう、フィッシュアイが極力少ないことが要求される。
【0003】
このような保護フィルムは、通常、樹脂からなる基材フィルムの片面上に粘着剤層を積層することにより製造される。ここで、粘着剤を積層するには、基材フィルムの片面上に粘着剤を塗布した後、これを乾燥炉中で80〜100℃程度に加熱することにより、粘着剤を硬化するとともに粘着剤層を基材フィルムへ密着する工程を経る。この工程においては、基材フィルムに加工機械(ロール)による張力及びフィルムの自重による荷重がかかった状態で加熱が行われるので、基材フィルムに歪みないし変形が生じることがあり、上記保護フィルムとして使用した際にフィルムの剥離を来たす一因となりうる。
製造後の保護フィルムは、その使用時、すなわち光学部品等の被着体に貼付された後、被着体自体の製造上の要請(例えばデバイスのアニーリング等)により、例えば100〜150℃程度の加熱がなされることがあり、このときにも基材フィルムが歪んで剥離の原因となる場合がある。
これら基材フィルムの歪みないし変形を抑制すべく、特許文献1は基材フィルムを構成する樹脂中に特定の環状有機リン酸エステル化合物を含有させることを提案している。この技術によると、基材フィルムの片面上に粘着剤層を積層する工程における基材フィルムの歪みは改善されるものの、被着体への貼付後の加熱において基材フィルムに看過できない歪みを生じ、保護フィルムの浮きないし剥離が発生しやすいとの欠点を有する。
【0004】
また、特許文献2は、フィルムタック用のセパレータフィルムの発明に関するが、二軸延伸工程を経て製造されたポリプロピレンフィルムが乾燥印刷工程における寸法安定性に優れると説明されている。しかしながらこの技術を光学部品の保護フィルムに応用すると、やはり被着体への貼付後の加熱において基材フィルムが大きな歪みを生じることとなるほか、二軸延伸フィルムは偏光性を有するため、光学検査を伴う光学部品用の保護フィルムとしては、もとより使用できるものではない。
上記のような事情のもと、特に光学部品の表面保護に好適に用いることのできる保護フィルムが熱望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−270005号公報
【特許文献2】特開平11−279497号公報
【特許文献3】特開2000−25108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、耐熱寸法安定性に優れ、被着体への貼付後に剥離及び浮きが発生することがなく、特に光学部品への適用において好適な保護フィルム及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく、保護フィルムの基材フィルムが有すべき耐熱寸法安定性の範囲を明らかにし、かかる耐熱寸法安定性を発現する樹脂組成及びフィルム成形方法の探索を行った。その結果、特定の組成のα−オレフィン樹脂及び特定の造核剤を一定の割合で含有する樹脂組成物を原料として無延伸下で成形されたフィルムが、特異的に、極めて優れた耐熱寸法安定性を発現し、しかも保護フィルム用途に要求される他の特性にも優れることを見い出して本発明を完成するに至った。
すなわち本発明によると、本発明の上記目的及び利点は、第1に、
プロピレンの単独重合体及び90モル%以上のプロピレンと10モル%以下の他のα−オレフィンとの共重合体よりなる群から選択される少なくとも1種を60重量%以上含むα−オレフィン樹脂、並びに
下記一般式(1)
【0008】
【化1】

【0009】
(式(1)中、Rはプロパン−1,2,3−トリイル基又はブタン−1,2,3,4−テトライル基であり、
は水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基であり、
がプロパン−1,2,3−トリイル基であるときkは3であり、
がブタン−1,2,3,4−テトライル基であるときkは4であり、そして
複数存在するRはそれぞれ同一であっても相異なっていてもよい。)
で表される化合物100〜1,000ppm
を含有するα−オレフィン樹脂組成物からなる基材フィルムの片面に粘着剤層を積層してなる保護フィルムであって、
前記基材フィルムを300mm(MD方向)×100mm(TD方向)にカットして得た試験片を1,000gの荷重下80℃において10分間静置した後の第1の寸法変化率が、初期値に対して、MD方向において2.5%以下であり、TD方向において1.2%以下であり、そして
前記第1の寸法変化率測定後の試験片をさらに無荷重下100℃において15分間静置した後の第2の寸法変化率が、前記第1の寸法変化率測定後の試験片に対して、MD方向において1.2%以下であり、TD方向において0.8%以下である、前記保護フィルムによって達成される。
本発明の上記目的及び利点は、第2に、
プロピレンの単独重合体及び90モル%以上のプロピレンと10モル%以下の他のα−オレフィンとの共重合体よりなる群から選択される少なくとも1種を60重量%以上含むα−オレフィン樹脂、並びに
上記一般式(1)で表される化合物100〜1,000ppm
を含有するα−オレフィン樹脂組成物を無延伸で成形して基材フィルムとし、
前記基材フィルムの片面に粘着剤等を積層して積層フィルムとし、そして
前記積層フィルムを80〜100℃で加熱する工程を経る、上記保護フィルムを製造するための方法によって達成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の保護フィルムは、耐熱寸法安定性に優れるから、被着体への貼付後に加熱されたとしても剥離及び/又は浮きが発生することがなく、特に光学部品の保護フィルムとして好適に用いることができる。
かかる本発明の保護フィルムは、上記の如き本発明の方法によって容易に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<基材フィルム>
本発明の保護フィルムにおける基材フィルムは、
プロピレンの単独重合体及び90モル%以上のプロピレンと10モル%以下の他のα−オレフィンとの共重合体よりなる群から選択される少なくとも1種(以下、これらをまとめて「ポリプロピレン系樹脂」という。)を60重量%以上含むα−オレフィン樹脂、並びに
上記一般式(1)で表される化合物(以下、「化合物(1)」という。)100〜1,000ppm
を含有するα−オレフィン樹脂組成物からなる。
【0012】
[α−オレフィン樹脂]
上記90モル%以上のプロピレンと10モル%以下の他のα−オレフィンとの共重合体におけるα−オレフィンとしては、エチレン及び炭素数4〜10のα−オレフィンよりなる群から選択される1種以上を使用することが好ましく、その具体例としては、例えばエチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテン等を挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を使用することができる。ここで使用されるα−オレフィンとしては、エチレンが最も好ましい。
上記共重合体は、ランダム共重合体及びブロック共重合体のどちらであっても好適に使用することができる。
本発明におけるポリプロピレン系樹脂の融点としては、125℃以上であることが好ましく、125〜165℃であることがさらに好ましい。
本発明におけるポリプロピレン系樹脂につき、JIS K 7210に準拠して230℃において測定したメルトフローレート(MFR)は、1〜30g/10分であることが好ましく、3〜10g/10分であることがより好ましく、特に4〜8g/10分であることが好ましい。
本発明におけるポリプロピレン系樹脂としては、得られる基材フィルムが機械的特性に優れ、より好適な耐熱寸法安定性を発揮することができることのほか、得られる基材フィルムにおけるフィッシュアイの発生が少なくなるとの観点から、プロピレン単独重合体を含むものであることが好ましく、プロピレン単独重合体をポリプロピレン系樹脂の全体に対して50重量以上含むものであることが好ましく、70重量%以上含むものであることがより好ましく、90重量%以上含むものであることがさらに好ましく、プロピレン単独重合体のみを使用することが最も好ましい。
【0013】
基材フィルムにおけるα−オレフィン樹脂は、上記の如きポリプロピレン系樹脂を60重量%以上含むものである。このα−オレフィン樹脂としては、上記の如きポリプロピレン系樹脂のみを使用してもよく、ポリプロピレン系樹脂とともに他の樹脂を併用してもよい。ここで使用することのできる他の樹脂としては、例えばポリエチレン樹脂等を挙げることができる。この場合のポリエチレン樹脂としては、例えば高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、線状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)等を挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を使用することができる。
α−オレフィン樹脂中のポリプロピレン系樹脂の使用割合は、上記のとおり60重量%以上であるが、得られる基材フィルムの機械的特性、耐熱寸法安定性及び低フィッシュアイの観点から、80重量%以上とすることが好ましく、85重量%以上とすることがより好ましい。本発明におけるα−オレフィン樹脂としては、上記の如きポリプロピレン系樹脂のみを使用することが最も好ましい。
【0014】
[化合物(1)]
本発明における化合物(1)は、上記一般式(1)で表される化合物である。この化合物(1)は、α−オレフィン組成物から基材フィルムを製造するときに、ポリプロピレン系樹脂が結晶化する際の造核剤として機能する成分である。従って、造核機能が高いとの観点から、上記一般式(1)における基Rは、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
このような化合物(1)の具体例としては、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリシクロヘキシルアミド、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラシクロヘキシルアミド、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(2−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(3−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−メチルシクロヘキシルアミド)等を挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を使用することが好ましい。
化合物(1)としては、上記一般式(1)における基Rがプロパン−1,2,3−トリイル基である化合物が好ましく、さらに化合物の入手性の観点から、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−メチルシクロヘキシルアミド)が最も好ましい。上記1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−メチルシクロヘキシルアミド)は、新日本理化(株)から「リカクリアPC−1」の商品名で市販されている。
【0015】
α−オレフィン樹脂組成物における化合物(1)の使用割合は、α−オレフィン樹脂組成物に対する重量比として、100〜1,000ppmとすることが、基材フィルムの耐熱寸法安定性と加工のコントロール性とのバランスの観点から非常に重要である。化合物(1)の使用割合は、好ましくはα−オレフィン樹脂組成物に対する重量比として250〜750ppmである。化合物(1)が100ppm未満である場合、造核機能を十分に発揮することができず、基材フィルムの耐熱寸法安定性が不足する。一方、化合物(1)が1,000ppmを超える場合には、経済性を損なうことのほか、造核機能の発現が過剰となって得られる基材フィルムの結晶化速度が必要以上に早くなり、その結果基材フィルムの製造においてダイから吐出された溶融樹脂が冷却ロールに接する前に結晶化(固化)してしまい、フィルム厚みのコントロールが困難となる場合があり、好ましくない。
【0016】
[他の成分]
本発明におけるα−オレフィン樹脂組成物は、上記の如きα−オレフィン樹脂及び化合物(1)を含有するが、本発明の効果を損なわない限り、これら以外に他の成分を含有していてもよい。
ここで使用することのできる他の成分としては、例えば着色剤等を挙げることができる。α−オレフィン組成物に着色剤を配合するのは以下のような事情による。
保護フィルムを光学部品の表面を保護する目的で用いる場合、該光学部品の片方の表面だけではなく、両面に保護フィルムを用いることがある。その場合、該光学部品の表裏が容易に判別できるよう、片面に貼付する保護フィルムを着色フィルムとするか、あるいは表裏に貼付する保護フィルムを色の相異なる着色フィルムとすることが広く行われている。
保護フィルムを着色する方法としては、例えばフィルム表面に印刷を施して着色する方法、フィルムを構成する樹脂に着色剤を配合する方法等が知られている。このうち、印刷による場合には、フィルムの成形と別の工程にて印刷を行う複数の工程が必要となって経済性に劣ること、表面に薄く均一に印刷することが困難なために印刷ムラが生じ、この印刷ムラのために光学部品の光学検査に支障を来たす場合があること、後の粘着剤積層工程にて使用される有機溶剤中に表面の印刷インキが溶出する場合があること、といった問題が生ずる。
【0017】
上記印刷による場合の問題を解決する方法として、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを製造する際に、縦方向に延伸した後にフィルムに着色インキを塗布、乾燥し、その後に横方向へ延伸することにより、一工程によって印刷ムラのない着色フィルムを得る方法が提案されている(特許文献3)。しかし、表面の印刷インキが有機溶剤に溶出する問題は依然として解決されないほか、延伸フィルムは偏光特性を有するため、光学検査を伴う光学部品の保護フィルムとしては適さない。
従って保護フィルムを着色する方法としては、基材フィルムを構成する樹脂中に着色剤を配合する方法によることが好ましい。このことにより、粘着剤層積層工程における有機溶剤中へのインキ溶出の問題が解消され、また得られる保護フィルムは着色ムラがないため光学部品の光学検査においても好適に使用することができることとなる。
【0018】
上記着色剤としては、顔料を使用することが好ましく、樹脂用の顔料として一般に用いられている有機顔料及び無機含量を好適に使用することができる。
上記有機顔料としては、例えばアゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、アニン系顔料、キナクリドン系顔料等を;
無機顔料としては、例えば酸化チタン、ベンガラ、群青、カーボンブラック、コバルトブルー等を、それぞれ挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を使用することができる。これらのうち、有機顔料を使用することが、顔料自体の二次凝集物に起因するフィッシュアイ等の欠陥の発生が少ないことのほか、α−オレフィン樹脂に対する分散性がよいことから好適である。
α−オレフィン樹脂組成物における着色剤の使用割合としては、基材フィルムの厚さ等によって適宜に設定されるべきであるが、α−オレフィン樹脂の100重量部に対して、0.01重量部〜5重量部であることが好ましい。着色剤の使用割合が0.01重量部未満であると、色相がはっきりとせず、着色の有無が判然としない場合がある。一方、着色剤の使用割合が5重量部を超えると、得られる保護フィルムの透明性(透光性)が低下するだけでなく、着色剤自体の二次凝集物に起因するフィッシュアイ等の欠陥の発生が見られる場合があり、実用的ではない。また着色剤のコスト負担も大きく経済的ではない。
【0019】
なお、この着色剤は、基材フィルムの厚み方向の全体にわたって含有されていてもよいが、顔料が溶出する懸念及びダイス内部への着色剤の付着を回避するとの観点から、基材フィルムを、着色剤を含有しないα−オレフィン樹脂組成物からなる層の1層以上と着色剤を含有するα−オレフィン樹脂組成物からなる層の1層以上とからなる多層フィルムとすることが好ましく、
基材フィルムを、着色剤を含有しないα−オレフィン樹脂組成物からなる最外層の2層と、これらに挟持される着色剤を含有するα−オレフィン樹脂組成物からなる中間層の1層以上とを有する多層フィルムとすることが好ましい。後者の場合、着色剤を含有しないα−オレフィン樹脂組成物からなる中間層の1層以上をさらに有していてもよい。
最も好ましくは、着色剤を含有しないα−オレフィン樹脂組成物からなる最外層の2層と、これらに挟持される着色剤を含有するα−オレフィン樹脂組成物からなる中間層の1層とからなる3層フィルムとすることである。
本発明における基材フィルムを多層フィルムとする場合、各層のそれぞれが化合物(1)を含有していることが好ましく、各層のそれぞれにおける化合物(1)の含有量が上記の好ましい範囲であることがより好ましい。
【0020】
[基材フィルムの厚み]
本発明の保護フィルムにおける基材フィルムの厚みは、被着体の面積、形状等に応じて適宜に設定することができるが、10〜100μmとすることが好ましく、さらに好ましくは20〜80μmであり、特に好ましくは40〜60μmである。ここで、基材フィルムの厚みが薄すぎると、これに粘着剤を積層する工程における加熱によって、フィルムに「熱負け」によるシワが入り、製品として使用できなくなる場合がある。一方、基材フィルムの厚みが厚すぎると柔軟性に不足して巻回体製造の際にシワやコブ等の外観不良が発生する場合があり、また表面に凸凹を有する被着体に貼り付ける際に被着体の表面形状に追従できず、シワや気泡巻き込みといった不具合が起こる場合がある。
本発明における基材フィルムは、単層フィルムであってもよく、多層フィルムであってもよい。基材フィルムを多層フィルムとする場合には、同一の組成を有する多層からなるフィルムであってもよく、異なる組成を有する多層からなるフィルムであってもよい。
本発明における基材フィルムを多層フィルムとする場合には、各層の厚みを合計した総厚みが上記の推奨厚みの範囲内にあることが好ましい。
本発明の保護フィルムを着色フィルムとする場合には、上記のとおり着色剤を含有しないα−オレフィン樹脂組成物からなる最外層の2層と、これらに挟持される着色剤を含有するα−オレフィン樹脂組成物からなる中間層の1層とからなる3層フィルムとすることが最も好ましいが、この場合の各層の厚みとして好ましくは以下のとおりである。
粘着剤を積層する側及び粘着剤を積層しない側の各最外層の厚みとして、それぞれ、好ましくは3〜30μmであり、より好ましくは5〜25μmであり;
中間層の厚みとして、好ましくは3〜60μmであり、より好ましくは5〜50μmであり;そして
各層の厚みを合計した総厚みが基材フィルムの厚みとして上記した範囲内にあることが好ましい。
【0021】
[基材フィルムの製造]
本発明における基材フィルムは、上述の如き組成を有するα−オレフィン樹脂組成物を無延伸で成形することにより製造することができる。
ここで、α−オレフィン樹脂組成物は公知の方法により調製することができる。例えばα−オレフィン樹脂を構成するポリプロピレン系樹脂及び任意的にその他の樹脂の各ペレット並びに化合物(1)及び任意的に着色剤をそれぞれ所定割合で適当な混練機に投入し、好ましくは200〜300℃で、好ましくは0.1〜2分間混練した後に、本発明における基材フィルムの製造に供することができる。α−オレフィン樹脂組成物の調製に押出機を使用する場合、ダイ温度は樹脂温度と同じであることが好ましい。
このとき、化合物(1)及び任意的に使用される着色剤は、それぞれそのままの状態で組成物の調製に供してもよいが、組成物中における均一な分散の観点から、化合物(1)又は着色剤を組成物中の所望濃度よりも高濃度で含有するマスターバッチを調製しておき、該マスターバッチのペレットをα−オレフィン樹脂組成物の調製に供することとすることが好ましい。マスターバッチのベース樹脂としては、α−オレフィン樹脂を構成するポリプロピレン系樹脂を使用することが好ましい。
マスターバッチ中の化合物(1)及び着色剤の濃度としては、化合物(1)につき好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは1〜5重量%であり、着色剤につき、0.1〜10重量%、より好ましくは1〜5重量%である。
【0022】
上記の如きα−オレフィン樹脂組成物を無延伸で成形するとは、溶融したα−オレフィン樹脂組成物が固化した後、冷却ロール(チルロール)から巻取りロールまでの間に実質的に延伸されないことを意味し、溶融した組成物をフィルム状に成形する際に工程の必要上引き伸ばすことまでも禁止するものではないことは、当業者には自明であろう。また、ここでいう「無延伸」という語は、フィルムを全く延伸しない場合のほか、実質的に延伸しない場合を含む概念であり、延伸倍率1.2倍以上、好ましくは1.05倍以上の一軸以上の延伸工程を経ずに成形されたフィルムは、本発明における「無延伸」の要件を満たすものである。
かかる意味における無延伸で成形された基材フィルムを用いて製造された保護フィルムは、保護フィルムとなった後の寸法安定性について極めて優れることから、この要件は非常に重要である。延伸倍率1.2倍以上の一軸以上の延伸工程を経て成形されたフィルムは、これに粘着剤を積層する工程における熱及び張力に対しての寸法安定性には一定の優位性が見られる。しかしながら、その後に延伸の緩和が見られるため、保護フィルムとなった後の寸法安定性については非常に劣ることとなり好ましくない。また得られる基材フィルムが偏光特性を持つこととなるため、光学検査を伴う光学部品の保護フィルム用途としては好ましくない。
無延伸成形のためには、例えばインフレーション法、キャスト法等を採用することができる。特にキャスト法によって成形された無延伸フィルムが、粘着剤を積層する工程及び保護フィルムとなった後の双方において、寸法安定性に優れる点で好ましい。
本発明における基材フィルムを多層フィルムとする場合、例えばマルチマニホールド法やフィードブロック法に代表される共押出法やインラインラミネート法等の公知の方法を採用することができる。また各層をドライラミネーション等により接着剤層を介して積層してもよい。
【0023】
[基材フィルム]
上記のようにして製造された本発明における基材フィルムは、基材フィルムを300mm(MD方向)×100mm(TD方向)にカットして得た試験片を1,000gの荷重下80℃において10分間静置した後の第1の寸法変化率が、初期値に対して、MD方向において2.5%以下であり、TD方向において1.2%以下であり、そして
前記第1の寸法変化率測定後の試験片をさらに無荷重下100℃において15分間静置した後の第2の寸法変化率が、前記第1の寸法変化率測定後の試験片に対して、MD方向において1.2%以下であり、TD方向において0.8%以下である。このような耐熱寸法変化率を有することにより、該基材フィルム上に粘着剤層を積層する工程における基材フィルムの歪みが低減されるほか、得られる保護フィルムを被着体へ貼り付けた後の加熱における歪みも低減されるため、被着体からの保護フィルムの浮きないし剥離が発生しないこととなる。
上記第1の寸法変化率は、好ましくはMD方向において2.0%以下、TD方向において1.0%以下であり;
上記第2の寸法変化率は、好ましくはMD方向において1.0%以下、TD方向において0.5%以下である。
上記第1の寸法変化率を測定する際に試験片に荷重をかけるには、試験片のMD方向を縦方向としてその上部及び下部にそれぞれ目玉クリップを装着し、下部の目玉クリップに錘をぶら下げ、上部の目玉クリップによって懸架状態とする方法によることができる。
【0024】
本発明における基材フィルムは、粘着剤を積層する工程で基材フィルムに対して加わる熱及び張力に対しての寸法安定性という観点から、引張弾性率がMD方向及びTD方向それぞれ700MPa以上であることが好ましく、900MPa以上であることがより好ましい。
本発明における基材フィルムは、フィッシュアイが非常に少ないものである。保護フィルムに用いられる基材フィルムにおいて、フィッシュアイのサイズ及び個数は非常に重要である。すなわち、基材フィルム中にサイズの大きいフィッシュアイが存在すると、これを被着体(例えば光学部品)に貼り付けて光学検査を行う際に、光学的な外乱要因となり、当該光学部品が良品であっても不良品と判断されてしまう場合がある。小さいサイズのフィッシュアイでもその個数が多い場合は同様に光学的な外乱要因となる。
本発明の基材フィルムは、長径1.0mm未満のフィッシュアイの数を5個/m以下とすることができ、さらに3個/m以下とすることができる。また、長径1.0mm以上のフィッシュアイの数を1個/mとすることができ、さらに0個/mとすることができる。従って、本発明の基材フィルムを光学部品の保護フィルム用途に用いる場合であっても、フィッシュアイに起因する光学的な外乱要因が極めて少なく、光学部品の光学検査において適正な結果を得ることができる。
【0025】
<保護フィルムの製造(粘着剤層の積層)>
本発明の保護フィルムは、上記の如き基材フィルムに粘着剤層を積層することによって製造することができる。
このとき、基材フィルムとこれに積層される粘着剤層との密着性をより高くするため、粘着剤を積層する側の基材フィルム表面に対してインライン又はオフラインで表面処理を施したうえで粘着剤を積層することが好ましい。かかる表面処理としては、例えばコロナ放電処理、フレーム(火焔)処理等を挙げることができる。これらの適当な処理により、粘着剤を積層する側の基材フィルム表面の濡れ指数を38〜46mN/mとしたうえで粘着剤層の積層工程を行うことが好ましい。
基材フィルムに積層する粘着剤の種類については特に制限はなく、例えばアクリル系、ゴム系、ウレタン系、シリコーン系等の公知の接着剤又は粘着剤を好ましく使用することができる。粘着剤層の積層方法についても特に制限はなく、公知の方法、例えば、一般に用いられるコ−ティングヘッド(例えばグラビヤ、グラビヤリバ−ス、オフセット等)の転写方法を基本とする塗工、バ−、コンマバ−等の掻き取り方法を基本とした塗工等、一般的に普及しているコ−ティング装置を用いる方法を採用することができる。
該接着剤層の厚みは、保護フィルムの用途に応じて適宜に設定することができ、例えば3〜100μmとすることができ、粘着性及び経済性のバランスの観点からは5〜50μmとすることが好ましい。
基材フィルムの片面に粘着剤等を積層して積層フィルムとした後、該積層フィルムを80〜100℃において加熱する工程を経て、粘着剤を硬化するとともに粘着剤層を基材フィルムへ密着することが好ましい。この加熱は例えば適当な乾燥炉を用いて行うことができる。加熱時間は0.1〜5分とすることが好ましく、0.5〜3分とすることがより好ましい。
【0026】
<保護フィルム>
上記の如くして製造された本発明の保護フィルムは、耐熱寸法安定性に非常に優れるものである。
本発明の保護フィルムは、基材フィルムの製造工程において実質的に延伸されていないから延伸の緩和による歪みが生じることがなく、従って被着体への貼付後に被着体の製造上の理由によって加熱された場合であっても剥離又は浮きが発生することがなく、特に光学部品への適用において極めて好適である。
【実施例】
【0027】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1
<基材フィルムの製造>
ホモ−ポリプロピレン−A(H−PP−A:住友化学(株)製、品番:FLX80E4、融点=163℃、MFR=7g/10分;230℃時)及び核剤として化合物(1)を含有するマスターバッチ−A(新日本理化(株)製の「リカクリアPC−1」を2.5重量%含有するポリプロピレンである。)を用いて以下の方法でフィルムを作成した。
中間層用のスクリュー径75mmの単軸押出機1台及び両外層用のスクリュー径50mmの単軸押出機2台の合計3台の押出機からなる3種3層構成のTダイ方式フィルム製膜装置を用いた。中間層用押出機にホモ−ポリプロピレン−A 98重量部及び化合物(1)のマスターバッチ−A 2重量部を混合した樹脂組成物(核剤含有量:500ppm)を、両外層用の押出機にホモ−ポリプロピレン−A 98重量部及びマスターバッチ−A 2重量部を混合した樹脂組成物(核剤含有量:500ppm)をそれぞれ供給し、樹脂温度250℃、滞留時間1分、Tダイ温度240℃の条件にてTダイより押出し、25℃の冷却ロールを通して、総厚み40μmの3層無延伸ポリプロピレンフィルムを得た。次いで、このフィルムの粘着剤を積層する側の表面の濡れ指数が42mN/mとなるようにコロナ放電処理を施し、さらに40℃において24時間エージングすることにより、基材フィルムを得た。
【0028】
<基材フィルムの評価>
[フィルムの基本特性の評価]
上記の方法によって得た基材フィルムにつき、下記(1)〜(4)の評価を行った。評価結果を表2に示した。
(1)ヘーズ
基材フィルムの濁りの指標として、スガ試験機(株)製、ヘイズメーター(型番:HGM−2DP)を用い、JIS K 7105に準拠してヘーズの測定を行った。
(2)引張弾性率
(株)島津製作所製、オートグラフ(型番:AG−500D)を用い、JIS K 7127に準拠して、JIS−5号試験片を使用して引張速度50mm/minにて、MD方向及びTD方向のそれぞれにつき、引張弾性率の測定を行った。
(3)フィッシュアイ
基材フィルムを500mm×500mmのサイズ(0.25m)にカットし、これを試験片とした。この試験片中に存在するフィッシュアイを目視にて観察し、発見されたフィッシュアイのそれぞれの長径を、最小単位が0.1mmの目盛り付きのルーペを用いて測定した。同様の測定を8枚の試験片(0.25m×8枚=2m)に対して行い、発見されたフィッシュアイの個数を1mあたりの個数に換算して評価した。
【0029】
(4)結晶化度
基材フィルムの結晶性の指標として、日本電子(株)製、X線回折装置(型番:JDX−3500)を用い、以下の条件でX線回折測定を行い、結晶化度を算出した。
ターゲット:銅(Cu−Kα線)
管電圧−管電流:40kV−400mA
X線入射法:垂直ビーム透過法
単色化:グラファイトモノクロメーター
発散スリット:0.2mm
受光スリット:0.4mm
検出器:シンチレーションカウンター
測定角度範囲:9.0°〜31.0°
ステップ角度:0.04°
計数時間:4.0秒
試料回転数:120回転/分
結晶化度は、回折強度曲線のピーク分離を行ったうえ、回折角2θが14.2°、17.1°、18.6°、21.4°、21.9°、25.7°及び28.6°付近に観測される結晶質のピーク面積の合計をS、16.3°付近に観測されるブロードな非晶質のピーク面積をSとしたとき、下記数式(i)
【0030】
【数1】

【0031】
によって計算によって求めた。
[耐熱寸法変化率の評価]
上記で得られた基材フィルムにつき、下記(5)及び(6)の評価を行った。評価結果を表2に示した。
(5)第1の寸法変化率
基材フィルムに粘着剤を積層した後、乾燥炉内にて温度及び張力がかかった状態における基材フィルムの歪みを調べる目的で、以下の測定を行った。
上記で得られた基材フィルムを300mm(MD方向)×100mm(TD方向)にカットし、中央部にMD方向200mm、TD方向100mmの標線を引き、試験片とした。この試験片のMD方向を縦方向としてその上部及び下部にそれぞれ目玉クリップを装着し、下部の目玉クリップに1,000gの荷重の錘をぶら下げ、上部の目玉クリップによって80℃のオーブン中に懸架状態で10分間静置して加熱した。加熱後、オーブンから試験片を取出し、荷重をかけたままの懸架状態を2分間維持して常温まで自然冷却した。冷却後、錘を取り除き、各標線の長さを物差しによって測定し、下記数式(ii)
【0032】
【数2】

【0033】
によって、第1の寸法変化率を算出した。
(6)第2の寸法変化率
保護フィルムとして被着体に貼付した後の耐熱寸法安定性を調べる目的で、以下の測定を行った。
上記第1の寸法変化率測定後の試験片を100℃のオーブン中に15分間静置して再加熱した。15分後、オーブンから再加熱後の試験片を取り出し、標線の長さを物差しによって測定し、下記数式(iii)
【0034】
【数3】

【0035】
によって、第2の寸法変化率を算出した。なお、上記数式(iii)中の「再加熱前の標線の長さ」は上記数式(ii)中の「加熱後の標線の長さ」と同義である。
[密着性の評価]
上記で得られた基材フィルムのコロナ処理面に対し、アクリル系粘着剤(綜研化学(株)製、品名:SKダイン1310)を塗布し、80℃において1分間加熱することにより、厚み10μmの粘着剤層を積層した。
この粘着剤層を有するフィルムにつき、下記(7)の評価を行った。評価結果を表2に示した。
(7)被着体との密着性
上記の方法によって粘着剤を積層した保護フィルムを100mm×100mmのアクリル板へ貼り付けた後、はみ出した部分をカットして試験片とした。この試験片を100℃のオーブンに15分間静置して加熱した。15分後、オーブンから試験片を取り出し、アクリル板と粘着フィルムの密着状態を目視にて確認し、以下の基準によって密着性を評価した。
良好:粘着フィルムの剥がれや浮きが見られなかった場合。
不良:粘着フィルム端部の剥がれ、端部以外でのフィルムの浮き(すなわち気泡混入)等が見られ、外観不良の状態であった場合。
【0036】
実施例2
中間層用及び両外層用の各押出機に供給する樹脂組成物を、ホモ−ポリプロピレン−A 96重量部及び化合物(1)のマスターバッチ−A 4重量部を混合した樹脂組成物(核剤含有量:1,000ppm)としたほかは、上記実施例1と同様にして実施して基材フィルムを得た。
この基材フィルムを用いて実施例1と同様にして各種評価を行った。評価結果は表2に示した。
実施例3
中間層用及び両外層用の各押出機に供給する樹脂組成物を、ランダム−ポリプロピレン−A(R−PP−A:(株)プライムポリマー製、品番:F327BV、融点=138℃、MFR=7g/10分;230℃時、エチレン含量=2モル%、ブテン含量2モル%)98重量部及び化合物(1)のマスターバッチ−A 2重量部を混合した樹脂組成物(核剤含有量:500ppm)としたほかは、上記実施例1と同様にして実施して基材フィルムを得た。
この基材フィルムを用いて実施例1と同様にして各種評価を行った。評価結果は表2に示した。
【0037】
実施例4
中間層用及び両外層用の各押出機に供給する樹脂組成物を、ブロック−ポリプロピレン−A(B−PP−A:日本ポリプロ(株)製、品番:BC3HF、融点=162℃、MFR=7g/10分;230℃時、エチレン含量=9モル%)98重量部及び化合物(1)のマスターバッチ−A 2重量部を混合した樹脂組成物(核剤含有量:500ppm)としたほかは、上記実施例1と同様にして実施して基材フィルムを得た。
この基材フィルムを用いて実施例1と同様にして各種評価を行った。評価結果は表2に示した。
実施例5
中間層用の押出機に供給する樹脂組成物を、ホモ−ポリプロピレン−A 75重量部、ブロック−ポリプロピレン−A 23重量部及び化合物(1)のマスターバッチ−A 2重量部を混合した樹脂組成物(核剤:500ppm)とし、両外層用の押出機に供給する樹脂組成物をホモ−ポリプロピレン−A 63重量部、ブロック−ポリプロピレン−A 23重量部、低密度ポリエチレン(LDPE:宇部丸善ポリエチレン(株)製、品番:F522N、密度=0.922g/cm、融点=108℃、MFR=5g/10分;190℃時)12重量部及び化合物(1)のマスターバッチ−A 2重量部を混合したもの(核剤含有量:500ppm)としたほかは、上記実施例1と同様にして実施して基材フィルムを得た。
この基材フィルムを用いて実施例1と同様にして各種評価を行った。評価結果は表2に示した。
【0038】
実施例6
実施例1に用いたフィルム製膜装置の3台の各押出機に実施例1と同様の樹脂組成物を供給し、樹脂温度250℃、滞留時間1分及びTダイ温度240℃の条件にてTダイより押出し、30℃の冷却ロールにて冷却後、次ロールにて130℃の余熱ロール及び延伸ロールを用いて、縦方向に1.1倍の延伸を行ったことのほかは、上記実施例1と同様にして実施して基材フィルムを得た。
この基材フィルムを用いて実施例1と同様にして各種評価を行った。評価結果は表2に示した。
実施例7
中間層用の押出機に供給する樹脂組成物を、ホモ−ポリプロピレン−A 93重量部、化合物(1)のマスターバッチ−A 2重量部及び着色剤(フタロシアニンブルー)のマスターバッチ(DIC(株)製の「PEONY HP BLUE L−83285M」を約5重量%含有するポリプロピレンである。)5重量部を混合した樹脂組成物(核剤含有量:500ppm、着色剤含有量:0.25重量%)としたほかは、上記実施例1と同様にして実施して基材フィルムを得た。
この基材フィルムを用いて実施例1と同様にして各種評価を行った。評価結果は表2に示した。
なお、上記基材フィルムは、粘着層積層時の有機溶剤への印刷インキ溶出は全く起こらないことが確認された。
【0039】
比較例1
中間層用及び両外層用の各押出機に、それぞれ、ホモ−ポリプロピレン−A 100重量部を供給したほかは、上記実施例1と同様にして実施して基材フィルムを得た。
この基材フィルムを用いて実施例1と同様にして各種評価を行った。評価結果は表2に示した。
比較例2
中間層用及び両外層用の各押出機に、それぞれ、ホモ−ポリプロピレン−A 100重量部を供給し、基材フィルム製造時の冷却ロールの温度を60℃としたほかは、上記実施例1と同様にして実施して基材フィルムを得た。
この基材フィルムを用いて実施例1と同様にして各種評価を行った。評価結果は表2に示した。
比較例3
中間層用及び両外層用の各押出機に供給する樹脂組成物を、ホモ−ポリプロピレン−A 99重量部及び核剤としてリン酸エステル化合物を含有するマスターバッチ−B((株)アデカ製の「M−801」(リン酸エステルアルミニウム塩)を5重量%含有するポリプロピレンである。)1重量部を混合した樹脂組成物(核剤含有量:500ppm)としたほかは、上記実施例1と同様にして実施して基材フィルムを得た。
この基材フィルムを用いて実施例1と同様にして各種評価を行った。評価結果は表2に示した。
【0040】
比較例4
中間層用及び両外層用の各押出機に供給する樹脂組成物をホモ−ポリプロピレン−A 99.5重量部及び核剤としてソルビトール化合物を含有するマスターバッチ−C(大日精化工業(株)製の「H200」(ソルビトール系誘導体)を10重量%含有するポリプロピレンである。)0.5重量部を混合した樹脂組成物(核剤含有量:500ppm)としたほかは、上記実施例1と同様にして実施して基材フィルムを得た。
この基材フィルムを用いて実施例1と同様にして各種評価を行った。評価結果は表2に示した。
比較例5
中間層用及び両外層用の各押出機に供給する樹脂組成物を、ブロック−ポリプロピレン−B(サンアロマー(株)製、品番:PC480A、融点=165℃、MFR=2g/10分;230℃時、エチレン含量=11モル%)98重量部及び化合物(1)のマスターバッチ−A 2重量部を混合したもの(核剤含有量:500ppm)としたほかは、上記実施例1と同様にして実施して基材フィルムを得た。
この基材フィルムを用いて実施例1と同様にして各種評価を行った。評価結果は表2に示した。
【0041】
比較例6
中間層用のスクリュー径90mmの単軸押出機が1台、両外層用のスクリュー径65mmの単軸押出機が2台の合計3台の押出機からなる3種3層構成のテンター方式逐次二軸延伸フィルム製膜装置を用い、中間層用押出機にホモ−ポリプロピレン−B((株)プライムポリマー製、品番:F300SP、融点=160℃、MFR=3g/10分;230℃時)を、両外層用押出機にホモ−ポリプロピレン−B((株)プライムポリマー製、品番:F300SP、融点=160℃、MFR=3g/10分;230℃時)をそれぞれ供給し、樹脂温度250℃、ダイ温度250℃の条件にてTダイより押出し、30℃の冷却ロールを通して約1.5mmのシートを作成し、連続して縦方向に約5倍、横方向に約10倍延伸し、総厚み40μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。次いで、このフィルムの粘着剤を積層する側の表面の濡れ指数が42mN/mとなるようにコロナ放電処理を施し、さらに40℃において48時間エージングすることにより、基材フィルムを得た。
この基材フィルムを用いて実施例1と同様にして各種評価を行った。評価結果は表2に示した。
比較例7
比較例6に用いたフィルム製膜装置の3台の押出機に供給する樹脂をランダム−ポリプロピレン−Aとし、延伸倍率を縦方向にのみ約4倍としたほかは、上記比較例6と同様にして実施して基材フィルムを得た。
この基材フィルムを用いて実施例1と同様にして各種評価を行った。評価結果は表2に示した。
【0042】
比較例8
中間層用及び両外層用の押出機に供給する樹脂組成物をランダム−プロピレン−B((株)プライムポリマー製、品番:T310E、融点=152℃、MFR=1.5g/10分;230℃時、エチレン含量=21モル%)98重量部及び化合物(1)のマスターバッチ−A 2重量部を混合した樹脂組成物(核剤含有量:500ppm)としたほかは、上記実施例1と同様にして実施して基材フィルムを得た。
この基材フィルムを用いて実施例1と同様にして各種評価を行った。評価結果は表2に示した。
比較例9
比較例6に用いたフィルム製膜装置の3台の押出機のそれぞれに、ホモ−ポリプロピレン−B 98重量部及び化合物(1)のマスターバッチ−A 2重量部を混合した樹脂組成物(核剤含有量:500ppm)を供給したほかは、上記比較例6と同様にして実施して基材フィルムを得た。
この基材フィルムを用いて実施例1と同様にして各種評価を行った。評価結果は表2に示した。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
なお、表1における原料の略称は、それぞれ以下の意味である。
<ポリプロピレン系樹脂>
H−PP−A:ホモ−ポリプロピレン−A(住友化学(株)製、品番:FLX80E4、融点=163℃、MFR=7g/10分;230℃時)
H−PP−B:ホモ−ポリプロピレン−B((株)プライムポリマー製、品番:F300SP、融点=160℃、MFR=3g/10分;230℃時)
R−PP−A: ランダム−ポリプロピレン−A((株)プライムポリマー製、品番:F327BV、融点=138℃、MFR=7g/10分;230℃時、エチレン含量=2モル%、ブテン含量2モル%)
B−PP−A:ブロック−ポリプロピレン−A(日本ポリプロ(株)製、品番:BC3HF、プロピレン−エチレン−ブロック共重合体タイプ、融点=162℃、MFR=7g/10分;230℃時、エチレン含量9モル%)
<他の樹脂>
R−PP−B:ランダム−プロピレン−B((株)プライムポリマー製、品番:T310E、融点=152℃、MFR=1.5g/10分;230℃時、エチレン含量=21モル%)
B−PP−B:ブロック−ポリプロピレン−B(サンアロマー(株)製、品番:PC480A、融点=165℃、MFR=2g/10分;230℃時、エチレン含量=11モル%)
LDPE:低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン(株)製、品番:F522N、密度=0.922g/cm、融点=110℃、MFR=5.0g/10分;190℃時)
【0046】
<核剤マスターバッチ>
核剤MB−A:化合物(1)のマスターバッチ−A(新日本理化(株)製の「リカクリアPC−1」を2.5重量%含有するポリプロピレンである。)
核剤MB−B:リン酸エステル化合物のマスターバッチ−B((株)アデカ製の「M−801」(リン酸エステルアルミニウム塩)を5重量%含有するポリプロピレンである。)
核剤MB−C:ソルビトール系誘導体のマスターバッチ−C(大日精化工業(株)製の「H200」(ソルビトール系誘導体)を10重量%含有するポリプロピレンである。)
<着色剤を含有するマスターバッチ>
着色剤MB:フタロシアニンブルーマスターバッチ(DIC(株)製の「PEONY HP BLUE L−83285M」を約5重量%含有するポリプロピレンである。)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレンの単独重合体及び90モル%以上のプロピレンと10モル%以下の他のα−オレフィンとの共重合体よりなる群から選択される少なくとも1種を60重量%以上含むα−オレフィン樹脂、並びに
下記一般式(1)
【化1】

(式(1)中、Rはプロパン−1,2,3−トリイル基又はブタン−1,2,3,4−テトライル基であり、
は水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基であり、
がプロパン−1,2,3−トリイル基であるときkは3であり、
がブタン−1,2,3,4−テトライル基であるときkは4であり、そして
複数存在するRはそれぞれ同一であっても相異なっていてもよい。)
で表される化合物100〜1,000ppm
を含有するα−オレフィン樹脂組成物からなる基材フィルムの片面に粘着剤層を積層してなる保護フィルムであって、
前記基材フィルムを300mm(MD方向)×100mm(TD方向)にカットして得た試験片を1,000gの荷重下80℃において10分間静置した後の第1の寸法変化率が、初期値に対して、MD方向において2.5%以下であり、TD方向において1.2%以下であり、そして
前記第1の寸法変化率測定後の試験片をさらに無荷重下100℃において15分間静置した後の第2の寸法変化率が、前記第1の寸法変化率測定後の試験片に対して、MD方向において1.2%以下であり、TD方向において0.8%以下であることを特徴とする、前記保護フィルム。
【請求項2】
前記記載フィルムが、α−オレフィン樹脂組成物を無延伸で成形して製造されたものである、請求項1に記載の保護フィルム。
【請求項3】
長径1.0mm未満のフィッシュアイが5個/m以下であり、長径1.0mm以上のフィッシュアイが0個/mである、請求項1又は2に記載の保護フィルム。
【請求項4】
前記基材フィルムが、着色剤を含有しないα−オレフィン樹脂組成物からなる層の1層以上と着色剤を含有するα−オレフィン樹脂組成物からなる層の1層以上とからなる多層フィルムである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の保護フィルム。
【請求項5】
前記基材フィルムが、着色剤を含有しないα−オレフィン樹脂組成物からなる最外層の2層と、これらに挟持される着色剤を含有するα−オレフィン樹脂組成物からなる中間層の1層以上とを有する多層フィルムである、請求項4に記載の保護フィルム。
【請求項6】
プロピレンの単独重合体及び90モル%以上のプロピレンと10モル%以下の他のα−オレフィンとの共重合体よりなる群から選択される少なくとも1種を60重量%以上含むα−オレフィン樹脂、並びに
上記一般式(1)で表される化合物100〜1,000ppm
を含有するα−オレフィン樹脂組成物を無延伸で成形して基材フィルムとし、
前記基材フィルムの片面に粘着剤等を積層して積層フィルムとし、そして
前記積層フィルムを80〜100℃で加熱する工程を経ることを特徴とする、請求項1に記載の保護フィルムを製造するための方法。

【公開番号】特開2012−17417(P2012−17417A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−155953(P2010−155953)
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(596104050)サン・トックス株式会社 (16)
【Fターム(参考)】