説明

保護フィルム用導電性コーティング組成物及びこれを用いたコーティング膜の製造方法

【課題】本発明は、ディスプレイ素子の保護フィルム表面に帯電防止コーティング膜を形成できる導電性コーティング組成物及びこれを用いたコーティング膜の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、1〜30重量%のポリエチレンジオキシチオフェン水分散液;5〜15重量%の水溶性バインダー樹脂;0.2〜10重量%のメラミン樹脂;6〜40重量%のアルコール溶媒;5〜30重量%のジメチルスルホキシド、プロピレングリコールメチルエーテル、N−メチルピロリドン、3−エトキシプロピオン酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチルカルビトール及びこれらの混合物からなる群から選択される有機溶媒;及び10〜50重量%の水を含む。また、前記コーティング方法は、前記導電性コーティング組成物を基板にコーティングするステップ;及び前記コーティングされた組成物を乾燥するステップを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護フィルム用導電性コーティング組成物及びこれを用いたコーティング膜の製造方法に関し、詳しくは、優れた帯電防止機能を持つと共に、帯電防止機能の経時変化が少なく、ポリエチレンテレフタルレート(PET)のようなプラスチック基材に対してコーティング性に優れ、特に、LCD偏光板保護フィルム上の帯電防止コーティング膜の形成に效果的に適用できる保護フィルム用導電性コーティング組成物及びこれを用いたコーティング膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性高分子は、帯電防止及び電磁波遮蔽用コーティング膜、燃料電池、透明電極等のように多様に商用化されている。このうち、CRT、LCD、PDP等のようなディスプレイ素子の外面ガラスの帯電防止コーティング膜、半導体素子運搬用トレイ、LCD偏光板又はバックライトユニット保護フィルムなどの分野において急速に導電性高分子の商用化が進行されつつある。最近は、平板ディスプレイ素子の大型化に伴い、スクラッチ及びホコリから製品を保護できる機能の他に、静電気による製品の損傷を防止できる導電性コーティング膜が要求されている。例えば、大型LCD基板の生産過程のなかでLCD偏光板の保護フィルム除去段階において、フィルム粘着剤による静電気が発生し、このような静電気はLCDモジュールに致命的な損傷を引き起こす恐れがある。
【0003】
このような帯電防止コーティング膜の導電性成分としては、アルミニウムなどの金属、カーボンブラック、水分と反応すればイオン導電性を示す界面活性剤などの導電性添加剤を含む非導電性高分子、或いは、ポリチオフェン(polythiopene)、ポリピロール(polypyrrole)、ポリアニリン(polyaniline)などのそれら自体に導電性を持つ導電性高分子が知られている。界面活性剤は、二価の第4級アンモニウム塩型の界面活性剤が使用されているが、帯電防止特性が悪いために高品質のTFTのLCD保護フィルム用としては限界があった。また、通常の導電性高分子は、大量生産が困難であり、溶解性、光透過性、熱的安全性及び外部環境安全性が低いという短所がある。このような短所を解消して加工性、光透過度及び耐湿水性を向上させた導電性高分子物質として、ポリエチレンジオキシチオフェン(polyethylene dioxithiophene;PEDT)がバイエル(Bayer)社により開発され(特許文献1)、これを高分子酸であるポリスチレンスルホン酸でドーピングさせたBaytron PやBaytron PHが商業化されて市販されている。しかしながら、Baytron PやBaytron PHなどのPEDTも、それ自体が水分散溶液なので、高分子フィルム、ガラスなどの基板に対する接着力、膜強度、乾燥性などのコーティング性が低いという限界を持つ。
【0004】
一般的に、導電性コーティング膜は、導電性高分子、水溶性又はアルカリ可溶性バインダー及びアルコールなどの揮発性溶媒を含むコーティング組成物を、ガラスや高分子フィルムなどの基板(被コーティング物)にコーティングし、一定温度で乾燥して形成される。このようなコーティング組成物の例としては、導電性高分子であるBaytron Pと共に、バインダーとして自己乳化型ポリエステル樹脂水分散体を含む帯電防止コーティング組成物が公知となっている(特許文献2及び特許文献3)。前述したコーティング組成物は、コーティングの後に形成されたコーティング膜の表面抵抗が、初期には105〜6Ω/□であったが、10日後から急激に増加して1012Ω/□まで上昇する。よって、経時変化によって帯電防止機能が悪くなる。前記経時変化の特性が悪いので初期の低い表面抵抗は無意味になり、そして高品質及び大型LCDに適用するのには問題がある。
【特許文献1】米国特許第5,035,926号明細書
【特許文献2】韓国特許出願公開第2002−0016549号明細書
【特許文献3】特開2005−281704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
よって、本発明の目的は、帯電防止機能に優れ、帯電防止機能の経時変化の特性が向上した導電性コーティング組成物及びこれを用いたコーティング膜の製造方法を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、プラスチック基材に対する付着性及び膜強度が向上した導電性コーティング組成物及びこれを用いたコーティング膜の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は、1〜30重量%のポリエチレンジオキシチオフェン水分散液;5〜15重量%の水溶性バインダー樹脂;0.2〜10重量%のメラミン樹脂;6〜40重量%のアルコール溶媒;5〜30重量%のジメチルスルホキシド、プロピレングリコールメチルエーテル、N−メチルピロリドン、3−エトキシプロピオン酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチルカルビトール及びこれらの混合物からなる群から選択される有機溶媒;及び、10〜50重量%の水を含む導電性コーティング組成物を提供する。また、本発明は、前記導電性コーティング組成物を基板にコーティングするステップ;及び、前記コーティングされた組成物を乾燥させるステップを含む導電性コーティング膜の製造方法を提供する。
【0008】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明に使用されるポリエチレンジオキシチオフェン水分散液は、水にポリエチレンジオキシチオフェン(polyethylene dioxithiophene;PEDT)が分散されているもので、水分散液は、必要に応じてポリスチレンスルホン酸(PSS)などの少量の導電性ドーピング剤をさらに含むことができ、商業的に市販されている製品としては、バイエル(Bayer)社の商品名Baytron PやBaytron PHなどを使用することができる。水分散液において、PEDTの含量は1.4重量%である。また、全体コーティング組成物に対して、PEDT水分散液の使用量は1〜30重量%であるのが好ましい。ここで、全体コーティング組成物内のPEDTの含量を一定に維持させる場合、必要に応じてPEDT水分散液の濃度を変化させることができる。例えば、水分散液の中のPEDTの含量が2.8重量%に増加すると、全体コーティング組成物に投入されるPEDT水分散液の使用量を1/2に減少させることで、PEDTの含量を一定に維持させることができる。PEDT水分散液の使用量が1重量%未満であると、コーティング膜の表面抵抗が増加して帯電防止及び電磁波遮蔽の性能が低下するという問題があり、30重量%を超過すると、帯電防止及び電磁波遮蔽の性能の特別な向上なしに、コーティング組成物のコーティング性が低下するという問題がある。
【0009】
本発明に使用される水溶性バインダー樹脂は、導電性高分子の分散性を向上させ、生成されるコーティング膜の均一性、付着性、強度などを向上させる役割をする。バインダー樹脂としては、通常の光硬化又は熱硬化型バインダーを幅広く使用することができる。光硬化又は熱硬化型バインダー樹脂の非限定的な例としては、ポリウレタン、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルアセテート、これらの混合物などが挙げられる。特に、バインダー樹脂として水溶性熱硬化型ポリウレタン樹脂を使用する場合、形成されるコーティング膜の付着性及び強度が向上するので好ましい。また、全体コーティング組成物に対して、水溶性バインダー樹脂の使用量は5〜15重量%であるのが好ましい。水溶性バインダー樹脂の使用量が5重量%未満であると、コーティング膜の均一性、付着性及び強度が低下し、15重量%を超過すると、導電性高分子の分散性が低下され、大面積コーティング時にむらが頻繁に発生する。
【0010】
本発明に使用されるメラミン樹脂は、コーティング膜の帯電防止機能に対する経時変化の特性を向上させるためのもので、コーティングの後に時間が経過しても初期の表面抵抗を維持させる役割をする。メラミン樹脂の使用量は、全体コーティング組成物に対して0.2〜10重量%であるのが好ましい。使用量が0.2重量%未満であると、コーティング膜の経時変化の特性を十分に向上させることができず、10重量%を超過すると、コーティング膜の表面抵抗が増加し、コーティング時にむらが頻繁に発生して好ましくない。
【0011】
本発明による導電性コーティング組成物は、全体のコーティング組成物に対し、6〜40重量%、好ましくは10〜30重量%のアルコール溶媒を含む。アルコール溶媒は、コーティング組成物の乾燥性等のコーティング性を向上させる役割をする。アルコール溶媒としては、通常、高分子コーティング組成物に使用されるアルコール化合物を幅広く使用することができ、好ましくは炭素数1〜5の低級アルコールを使用することができ、より好ましくはイソプロピルアルコール(IPA)、エタノール、これらの混合物などを使用することができ、最も好ましくは5〜20重量%のエタノールと1〜20重量%のイソプロピルアルコールとの混合物を使用することができる。アルコール溶媒の使用量が、全体コーティング組成物に対して6重量%未満であると、乾燥性が低下し、40重量%を超過すると、導電性高分子の分散性が低下し、表面抵抗が上昇するという問題がある。
【0012】
本発明によるコーティング組成物は、アルコール溶媒と共に、コーティング組成物の溶解性、分散性、乾燥性、膜均一性などのコーティング性を向上させる機能性有機溶媒をさらに含む。有機溶媒としては、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide;DMSO)、プロピレングリコールメチルエーテル(propyleneglycol methylether;PGME)、N−メチルピロリドン(N-methylpyrrolidone;NMP)、3−エトキシプロピオン酸エチル(ethyl-3-ethoxypropionate;EEP)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(propyleneglycol monomethyletheracetate;PGMEA)、ブチルカルビトール(butylcarbitol;BC)及びこれらの混合物などを使用することができ、好ましくはジメチルスルホキシドを使用する。有機溶媒の使用量は、全体のコーティング組成物に対し、5〜30重量%、好ましくは10〜30重量%である。有機溶媒の使用量が、5重量%未満であると、コーティング組成物のコーティング性が低下し成膜が不均一になり、30重量%を超過すると、コーティング性の特別な向上なしに乾燥性が低下する。
【0013】
本発明による導電性コーティング組成物の残りの成分は、水、好ましくは脱イオン水(deionized water;D.I.W)であり、水の使用量は、全体のコーティング組成物に対して10〜50重量%が好ましい。水の使用量が、10重量%未満であると、組成物の濃度が高すぎてコーティング性が低下し、50重量%を超過すると、特別な利益なしに経済的に不利になる。
【0014】
本発明によるコーティング組成物は、各成分を混合し、必要に応じて撹拌して製造できる。好ましくは、アルコール溶媒、有機溶媒及び水を混合し、撹拌した後、各々水溶性バインダー樹脂、メラミン樹脂及びポリエチレンジオキシチオフェン水分散液を、順次投入及び撹拌を繰返してコーティング組成物を製造する。また、製造されたコーティング組成物をガラスや高分子フィルム等のような基板(被コーティング物)にバーコーティング、スプレイコーティング、スピンコーティングなどの方法によりコーティングし、一定温度、例えば、約80℃で乾燥させることで、導電性コーティング膜を形成できる。基板(被コーティング物)の非限定的な例としては、ガラス、ポリメチルメタクリル酸樹脂フィルム、ポリアクリル樹脂フィルム、ポリカーボネート樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタルレート樹脂フィルム、PVC樹脂フィルムなどが挙げられる。形成されたコーティング膜は、CRT、LCD、PDPなどのようなディスプレイ素子の外面ガラスの帯電防止コーティング膜、LCD素子の偏光板又はバックライトユニット保護フィルム、半導体素子運搬用トレイ及び包装シートのコーティング膜等に適用でき、中でも、LCD偏光板保護フィルムのPET基板に最も效果的に適用できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、保護フィルム用導電性コーティング組成物及びコーティング組成物がコーティングされた被コーティング物は、帯電防止機能に優れると共に、メラミン樹脂を含むことにより、時間が経過しても初期の帯電防止機能を維持できる改善された経時変化特性を持っており、そして、水溶性溶媒の使用により環境親和的であり、ディスプレイの保護フィルムに適したコーティング性及び透明性を持つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、実施例及び比較例により、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。下記の実施例及び比較例において、百分率及び混合比は、別途の言及がなければ、重量を基準とする。
【0017】
実施例1 導電性高分子コーティング膜の製造
下記の表1に示すような成分及び含量に従い、アルコール溶媒、有機溶媒及び水を混合し、撹拌した後、水溶性ポリウレタン樹脂を投入して撹拌した。ここに、メラミン樹脂を投入及び撹拌した後、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDT)水分散液を投入及び撹拌して、コーティング組成物を製造した。ポリエチレンジオキシチオフェン水分散液としては、ポリスチレンスルホン酸でドープしたバイエル社のBaytron P(PEDT濃度1.4重量%)を使用した。下記の表1において、IPAはイソプロピルアルコール、DMSOはジメチルスルホキシド、MEKはメチルエチルケトン、D.I.Wは脱イオン水(deionized water)を示す。
【表1】

【0018】
製造されたコーティング組成物をバーコーター(bar coater)を用いてポリエチレンテレフタルレート樹脂(PET)フィルム上にコーティングし、80℃のホットプレートで1分間乾燥した後、フィルム上に形成されたコーティング膜の物性(表面抵抗、膜均一性)を測定し、10日後に表面抵抗を再測定して、下記の表2に示した。表2において、コーティング膜の表面抵抗は、SIMCO社の表面抵抗測定器であるST−3を用いて測定し、コーティング膜の均一性は、目で観察して評価した。
【表2】

【0019】
上記表2において、比較例1によるコーティング膜は、コーティング性(膜均一性)が良好であり、初期の表面抵抗が低くて帯電防止機能に優れるが、10日後の表面抵抗が大幅上昇して帯電防止機能の経時変化特性が不良であった。比較例1とは異なり、メラミン樹脂が含まれた実施例1は、初期の表面抵抗が低く、10日後の表面抵抗の増加幅も非常に小さいため、帯電防止機能の経時変化特性が非常に優れることが分かる。比較例2は、コーティングは良好であるが、初期の表面抵抗が高く、経時変化特性が不良であった。比較例3は、メラミン樹脂を含有しなくても、他の成分の含量調節により帯電防止機能及び経時変化特性が良好であるが、コーティング性が不良なので、膜にむらが発生した。比較例4は、経時変化特性を改善するために導入されたメラミン樹脂の含量が不足して、経時変化特性の向上に効果的でなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1〜30重量%のポリエチレンジオキシチオフェン水分散液;
5〜15重量%の水溶性バインダー樹脂;
0.2〜10重量%のメラミン樹脂;
6〜40重量%のアルコール溶媒;
5〜30重量%のジメチルスルホキシド、プロピレングリコールメチルエーテル、N−メチルピロリドン、3−エトキシプロピオン酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチルカルビトール及びこれらの混合物からなる群から選択される有機溶媒;及び、
10〜50重量%の水を含むことを特徴とする、導電性コーティング組成物。
【請求項2】
前記水溶性バインダー樹脂は、水溶性熱硬化型ポリウレタン樹脂であることを特徴とする、請求項1に記載の導電性コーティング組成物。
【請求項3】
前記アルコール溶媒は、5〜20重量%のエタノールと、1〜20重量%のイソプロピルアルコールとの混合物であることを特徴とする、請求項1に記載の導電性コーティング組成物。
【請求項4】
前記ポリエチレンジオキシチオフェン水分散液におけるポリエチレンジオキシチオフェンの含量は、1.4重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の導電性コーティング組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の導電性コーティング組成物を基板にコーティングするステップ;及び、前記コーティングされた組成物を乾燥するステップを含むことを特徴とする、導電性コーティング膜の製造方法。
【請求項6】
前記コーティング組成物は、
ジメチルスルホキシド、プロピレングリコールメチルエーテル 、N−メチルピロリドン、3−エトキシプロピオン酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチルカルビトール及びこれらの混合物からなる群から選択される有機溶媒、水及びアルコール溶媒を混合するステップ;
前記混合溶媒に水溶性バインダー樹脂を添加して混合するステップ;
前記混合物にメラミン樹脂を添加して混合するステップ;及び、
前記混合物にポリエチレンジオキシチオフェン水分散液を添加して混合するステップにより製造されることを特徴とする、請求項5に記載の導電性コーティング膜の製造方法。

【公開番号】特開2007−246905(P2007−246905A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−67744(P2007−67744)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(502081871)ドンジン セミケム カンパニー リミテッド (62)
【Fターム(参考)】