説明

保護素子

【課題】 小型・薄型化を図り、可溶合金ヒューズ素子は抵抗発熱素子の発熱に感応して確実な作動をして信頼性を向上させる保護素子とそれを用いた保護装置を提供する。
【解決手段】 セラミックチップ体12と、その表面に配置した可溶合金ヒューズ素子20、スルーホール24内に配置した抵抗発熱素子25、および裏面に配置した導出用リード15〜17を具備する。発熱素子25は所定の抵抗値の抵抗体からなるが、スルーホール24内に埋設配置して充填状態にあるので、抵抗体の加熱が熱伝導良好なセラミックチップ体12を介在して可溶合金ヒューズ素子20を正確かつ迅速に作動させる。特に、抵抗発熱素子25の耐電力を大きくし、スペース効率を有効に発揮できるので低背化や小型薄型化に有利となる実用的効果を奏する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パターン電極を形成したセラミックチップ体に、リフロー処理に耐える可溶合金ヒューズ素子を表面搭載した小型化・薄型化の保護素子、特に、抵抗発熱素子をセラミックチップ体のスルーホールに配設し、導出端子を裏面側に設けた保護素子およびそれを用いた保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被保護機器の過電流により生ずる過大発熱を検知したり、周囲温度の異常過熱に感応したりして作動する非復帰型保護素子は、機器の安全を図るために、電気回路を所定の動作温度で作動して電気回路を遮断する。その一例が、機器に生ずる異常を検知する信号電流により抵抗を発熱させ、その発熱でヒューズ素子を作動させる保護素子がある。特許文献1および2は、異常時に発熱する抵抗をセラミックス基板上に設けた膜抵抗を用いた保護素子と、この保護素子を利用してリチウムイオン二次電池の過充電モードで電極表面に生成したデンドライトによる性能劣化や発火防止や充電時に電池が所定電圧以上の充電防止をする保護装置である。
【0003】
通常、携帯情報端末機器では主電源に保存特性や耐漏液性に優れた高密度エネルギーのリチウムイオン二次電池やリチウムポリマ二次電池が利用されるが、エネルギー密度が高く異常時にはそのエネルギーが一挙に放出されて危険な状態に曝される可能性が高くなる。こうした二次電池での過充電および過放電を防止し安全を確保するために復帰型と非復帰型の二重の保護回路を設けている。例えば、特許文献3は、電池電圧が設定電圧を越えたとき充電電流を遮断する復帰型保護回路、およびこの保護回路が何らかの原因で作動しない場合に利用する温度ヒューズの非復帰型保護回路を備える保護装置を開示する。抵抗付き温度ヒューズは、絶縁基板にガラスエポキシ樹脂を使用して低価格化を図った保護素子を特許文献4が示し、鉛フリー可溶合金を用いた抵抗付ヒューズを特許文献5で開示する。さらに、発熱用抵抗体を絶縁基板内に積層し、この抵抗体上の絶縁基板に可溶金属片を設ける抵抗付ヒューズを特許文献6が開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07−153367号
【特許文献2】特開平08−161990号
【特許文献3】特開平10−056742号
【特許文献4】特開2005−129352号
【特許文献5】特開2005−150075号
【特許文献6】特開2006−221919号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、小型モバイルPCの急速な普及に伴い、表面実装技術手法の利用や使用電池パックの小型化・薄型化が求められ保護素子のチップ化が高まっている。前述の特許文献1、2および6は、ある種の合金を使用したヒューズエレメントと抵抗膜の組み合わせについて言及しているが、そのどれもが抵抗膜を基板の水平方向に形成している。通常、この抵抗膜には異常時に電池電圧が印加されるため、その電圧範囲に対して尤度のある面積を設計しておかなければならず、水平方向の寸法短縮には限界があった。また、特許文献5が示す抵抗付ヒューズは、セラミック製絶縁基板の表面に単体または2個の低融点可溶合金ヒューズ素子を実装し、裏面にリードと共に厚膜抵抗の発熱素子を実装して構成する。可溶合金は平板の箔状態で基板上の電極間に実装され、裏面には膜抵抗が比較的広い面積に設けられるので必然的に所要する実装面積が大きく、保護素子としての取付けに大きなスペースが要求される。これは小型・薄型化が要求される携帯情報機器などへの適用に不都合を生ずると共に組立や製造上で問題が残されていた。一方、膜状抵抗体を形成するに際して、酸化ルテニウム系ペーストを印刷し、800℃を超える温度で焼成して均一な厚膜抵抗を得ると同時に特性面で所望の抵抗値を得るのは難しく、厚膜抵抗のトリミング調整が手間のかかる作業となり低コスト化が難しかった。加えて、抵抗膜は体積的に小さく、耐電力が小さくなるほか、有機基板への抵抗膜の焼付けが出来ない。また、引き出し用リードを取り付ける裏面側への形成上、絶縁処理が必要となって満足する小型化・薄型化の保護素子が提供できず、コンパクトで可及的に低背面化を図ることが難しかった。それ故に、安定した動作温度で作動する保護素子として、製造加工性を含めて改良された保護素子およびこれを使用した機器回路用保護装置の提供が望まれていた。
【0006】
したがって、本発明は上述する欠点に鑑み提案されたもので、チップ基板のスルーホール内に抵抗発熱素子を配置することに着目し、パターン電極を形成したセラミック基板上に、リフロー処理に耐える可溶合金ヒューズ素子を表面搭載し、複数エレメントを一括処理後にチップ分割して小型化・薄型化したチップタイプ保護素子の提供を目的とする
【0007】
本発明の別の目的は、セラミック基板のスルーホールに発熱素子を配設し、導出端子を裏面側に設けた保護素子とこの保護素子を用いる電池パック等の保護装置の提供を目的とする。具体的には、セラミックチップ体の一方の面に可溶合金ヒューズ素子、他方の面に導出用の電極部またはリードを配設すると共にセラミックチップ体に形成したスルーホールに抵抗発熱体を配置した新規かつ改良された保護素子を提供し、製造の簡素化と作業の効率性を高めて、ローコスト化と小型化を両立させ、性能面の向上と実装スペースの有効活用が図れる新規かつ改良された保護素子およびそれを用いる保護装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、複数個のスルーホールを有し、その一つには抵抗発熱素子が埋設され、表裏両面には複数個のパターン電極を配設したセラミックチップ体と、このセラミックチップ体の一方の面である表面パターン電極間に表面実装用リフローはんだで接続した可溶合金ヒュ−ズ素子と、このセラミックチップ体の他方の面である裏面パターン電極に接続配置した複数個の導出用リ−ドとを備え、チップ体表裏両面のパタ−ン電極間を導通スルーホールまたは導通ハーフスルーホールにより接続し、抵抗発熱素子の発熱を直接またはセラミック材の熱伝導を介し可溶合金ヒューズ素子を昇温して作動させる保護素子が提供される。ここで、抵抗発熱素子は1個のスルーホールに配置したチップ抵抗体または所定の抵抗値を持つ抵抗充填物であって、その抵抗値はスルーホールに充填する抵抗材料の選定により調整され、かつ表面側の可溶合金ヒューズ素子はリフロー処理に影響されない可溶合金と円滑な溶断動作を保証するフラックス材料が選定されて裏面側のパターン電極に接続して配線の簡素化構造を特徴とする。すなわち、可溶合金ヒューズ素子はリフロー処理により溶断せず、リフロー処理後もヒューズ機能を損なわないものである。さらに、ヒューズ素子は、必要に応じて、2個以上の可溶合金からなり、それぞれの可溶合金の溶断する温度を同一または異なる温度に選定することもできる。また、好ましくは、導出用リ−ドが平角状導体からなり、その平坦面を他方の面のパターン電極にはんだ接続する保護素子を開示する。
【0009】
具体的にヒューズ素子の材料として選定される金属および可溶合金には、たとえば、97Bi−3Zn(255℃)、99.3Bi−0.5Ag−0.2Cu(258℃)、97Bi−3Ag(262℃)、Bi(272℃)、78Zn−22Al(275℃)、95Zn−5Al(382℃)、54Ge−46Al(424℃)等がある。なお、数字は合金の配合率wt.%を表している。これら無鉛合金を用いた保護素子は、245℃以上のリフローはんだ付けに耐えることができるため、表面実装部品として他のデバイスと同時に一括はんだ付けすることができる。
【0010】
また、保護素子の円滑な溶断動作を保証するため可溶合金の表面にフラックス塗布を必要とするが、上述のリフロー温度に耐えかつ250℃以上の動作温度においても合金表面から流れ落ちずに溶断動作を確実にするため、次に示す構成の高温用フラックスを用いる。このフラックスは、被覆剤として働く固形成分に、耐熱性の優れたハーゼン100以上の淡色グレード酸変性水添ロジンを10〜50部、これに軟化点が120〜190℃の範囲で選ばれるロジン変性マレイン酸樹脂またはロジン変性フェノール樹脂を5〜30部、分散改質剤としてモンタン酸ワックスまたはステアリン酸アミドまたはベヘニン酸アミドを20〜50部、熱ダレを防止するチクソ剤としてヒュームドシリカまたは有機修飾ヒュームドシリカを0.5〜10部、酸化防止剤としてジフェニルアミンまたはジシクロヘキシルアミンを0.5〜1部添加し加熱混合して基材とする。これにさらに活性剤として炭素数4〜12の飽和直鎖脂肪族ジカルボン酸を2〜10部、炭素数4〜12の飽和直鎖アミノ酸を2〜10部、炭素数1〜6の脂肪族ヒドロキシモノカルボン酸またはヒドロキシジカルボン酸またはヒドロキシトリカルボン酸を2〜10部添加し充分に混練分散させた固形フラックスを用いる。
【0011】
本発明の別の観点によれば、複数個のスルーホールを有するセラミックチップ体と、このセラミックチップ体の表裏両面に設けた複数個のパターン電極と、表面のパターン電極間にはんだ接続した可溶合金ヒュ−ズ素子と、複数個のスルーホールのうち少なくとも一つのスルーホールに配置した抵抗発熱素子と、セラミックチップ体の裏面のパターン電極に接続配置した複数個の導出用リ−ドと、表裏両面のパタ−ン電極間を接続する複数個のスルーホールのうち少なくとも二つ以上のスルーホールに埋設した導電体とを具備し、発熱素子の発熱をセラミックチップ体の熱伝導により、可溶合金ヒューズ素子を昇温感応させて作動させる保護素子、および異常信号を検知する制御素子を有する非復帰型保護装置において、制御素子は発熱素子に制御電流を通してセラミックチップ体を昇温させ、その近傍に実装したヒューズ素子を作動させることを特徴とする保護装置を開示する。ここで、制御素子は電池パック用充放電制御回路の異常状態を検知する過充電防止に使用されるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、抵抗発熱素子がセラミックチップ体のスルーホール内で垂直方向に配置形成され、水平方向の寸法短縮による小型化と抵抗膜厚省略による薄型化を達成する新規な保護素子が提供される。また、スルーホールを有するセラミックチップ体にパターン電極を設け、表面にリフロー処理に耐える可溶合金ヒュ−ズ素子、裏面に導出用電極部またはリードを設けて表裏両面のパターン電極間をスルーホール導通させるので、保護装置としての組み込みが容易で簡素化が図れると共にセラミックチップ体の熱電導を通して可溶合金ヒューズ素子に発熱を素早く伝え、可溶合金の溶融を迅速化して可溶合金ヒューズ素子を所定の作動を確実にする。
【0013】
一方、保護素子の可溶合金ヒューズ素子は、可溶合金ヒューズ素子はリフロー処理で溶断せず、リフロー処理後もヒューズ機能を損なわない可溶合金が選定されるので、保護装置の組立に伴うトラブル発生の軽減に役立ち、製造の簡素化で作業性の向上が図られる。セラミックチップ体のスルーホールを導電材の埋設により導通スルーホールとしてチップ体表裏間の電極パターンを接続することは、保護装置としての配線を確実で容易に可能とする。特に、発熱素子の発熱をセラミックチップ体の熱伝導により可溶合金を素早く昇温感応させるので、可溶合金ヒューズ素子は発熱素子の発熱を感知して迅速に応答しヒューズ機能を確実に達成する。しかも、発熱素子がスルーホール内に埋設配置され両面でパターン電極と接続されるので、抵抗発熱が熱伝導良好なパターン電極やセラミックチップ体を介して伝達され可溶合金ヒューズ素子を温度上昇させて確実かつ迅速に溶融温度での溶断を作動させる。同時にスルーホール内の抵抗発熱素子は耐電力を大きくし、スペースの有効活用で低背化や小型薄型化に有利となる実用的効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例1に係る保護素子の正面斜視図である。
【図2】同じく図1の組立過程に対応するセラミックチップ体の斜視図である。
【図3】同じく図2に示す実装前のセラミックチップ体の斜視図である。
【図4】同じく実施例2に係る保護素子の実装構造を示す斜視図である。
【図5】同じく図4に示す実装前のセラミックチップ体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明によれば、多数の保護素子を一括処理するために、予め用意されたセラミック用グリーンシートは複数個のチップ体からなり、それぞれ多数のスルーホールが形成される。チップ体の両面にはパターン電極が銀を主成分としたペーストで形成される。また、各チップ体の少なくとも1個のスルーホールには、酸化ルテニウム系ペーストが埋め込まれ、所望する抵抗値の抵抗発熱体が設けられる。焼結作業は、850℃前後の温度で約0.5時間焼成され、複数個のチップ体を含むセラミック製絶縁基板が作製される。この用意されたセラミック製絶縁基板は、導通スルーホールと抵抗発熱体とを有するセラミックチップ体を多数備える。また、セラミックチップ体は、両面に形成した複数個のパターン電極、表裏のパターン電極を導通接続する導通スルーホール、および抵抗発熱体を埋め込んだスルーホールを含んでいる。いわゆる、チップセグメントであり、具体的に、少なくとも一つの第1スルーホールに配置した抵抗発熱素子と、少なくとも二つ以上の導通スルーホールからなる第2スルーホールとを備えている。このセグメントにヒューズ素子と導出リードが取り付けられることで保護素子となる。
【0016】
セラミック製絶縁基板の裏面電極には導出用リードとヒューズ素子がリフロー処理を経て組み込まれる。ここで、ヒューズ素子はPbフリーの可溶合金材であって、リフロー処理により溶断せず、リフロー処理後もヒューズ機能を損なわないようなリフローに耐える材料が選定され、リフローによる一括処理での性能維持と安全性を保つ。具体的には、次のような可溶合金からヒューズ素子が選定される。すなわち、97Bi−3Zn(255℃)、99.3Bi−0.5Ag−0.2Cu(258℃)、97Bi−3Ag(262℃)、Bi(272℃)、78Zn−22Al(275℃)、95Zn−5Al(382℃)、54Ge−46Al(424℃)である。これら無鉛合金を用いた保護素子は、245℃以上のリフローはんだ付けに耐えることができるため、表面実装部品として他のデバイスと同時に一括はんだ付けすることができる。ここで、各元素記号の前に付した数字は合金の配合率(重量%)を表し、元素記号の後の括弧内には溶出温度を示している。選択された可溶合金は、はんだ箔状にして表面側のパターン電極間にリフローはんだ付けで固着される。必要に応じて、表裏両面に設けた複数の導電性パターン電極が絶縁被覆されたり、表面に搭載配置した可溶合金ヒューズ素子をセラミックキャップで封止したりされる。なお、キャップの封止するカバー範囲はセラミックチップ体の表面のパタ−ン電極と可溶合金を含めて被覆し、その被覆面積はセラミックチップ体全体の面積より小さくされる。さらに、導出用リードは平板状銅線を使用することで低背化・薄型化を図るのが好ましい。
【0017】
一方、可溶合金ヒューズ素子の円滑な溶断動作を保証するため、使用する可溶合金の表面にフラックス被膜が設けられる。この場合、フラックス材は、上述のリフロー温度に耐えかつ250℃以上の動作温度においても可溶合金の表面から流れずに被覆状態を保ち、溶断動作を確実にする必要がある。そのためには、次に示す構成の高温用フラックスを用いる。すなわち、被覆剤として機能する固形成分に、耐熱性の優れたハーゼン100以上の淡色グレード酸変性水添ロジンを10〜50部、これに軟化点が120〜190℃の範囲で選ばれるロジン変性マレイン酸樹脂またはロジン変性フェノール樹脂を5〜30部、分散改質剤としてモンタン酸ワックスまたはステアリン酸アミドまたはベヘニン酸アミドを20〜50部、熱ダレを防止するチクソ剤としてヒュームドシリカまたは有機修飾ヒュームドシリカを0.5〜10部、酸化防止剤としてジフェニルアミンまたはジシクロヘキシルアミンを0.5〜1部添加し加熱混合して基材とする。これにさらに活性剤として炭素数4〜12の飽和直鎖脂肪族ジカルボン酸を2〜10部、炭素数4〜12の飽和直鎖アミノ酸を2〜10部、炭素数1〜6の脂肪族ヒドロキシモノカルボン酸またはヒドロキシジカルボン酸またはヒドロキシトリカルボン酸を2〜10部添加し充分に混練分散させた固形フラックスを用いる。
【0018】
本発明の上述する保護素子は、別の実施の形態である保護装置として、保護素子を使用した電池パック用充放電制御装置を構成する。すなわち、制御素子が異常を検知して信号電流を前述の発熱素子に通電するとき、抵抗発熱を生じさせて可溶合金ヒューズ素子の低融点可溶合金を溶断させる非復帰型保護回路である。なお、ここで使用される保護素子は、上述の両面に複数個のパタ−ン電極と両面のパターン電極を接続する導通用スル−ホ−ルとを有するセラミックチップ体と、このセラミックチップ体の表面側に配置したパタ−ン電極にはんだ付けした可溶合金ヒューズ素子およびスルーホール内に配置したチップ状抵抗体の発熱素子からなる。
【実施例1】
【0019】
以下、本発明に係る第一の実施例について、図面を参照しつつ詳述する。本発明に係るアキシャルリードタイプの保護素子10は、図1にその表面側を斜視図で示すように、セラミックチップ体12と、この表面側に搭載した実装部品の可溶合金ヒューズ素子やスルーホール内の抵抗発熱素子等を保護するパッケージのケースカバー14、および裏面側のパターン電極に接続された導出リード15〜17を備える。ここで、セラミックチップ体12の両面にはパターン電極が形成されており、表面側で可溶合金ヒューズ素子、裏面側で導出用リード、チップ体スルーホールに抵抗発熱素子がそれぞれ実装される。図2はパッケージのケースカバー14の装着前の状態で斜視図を示し、セラミックチップ体12に設けたパターン電極21〜23上に、フラックスを表面に被着した可溶合金ヒューズ素子20が配置され、その両端がパターン電極22および23とはんだ付けされ、中間点はパターン電極21経由で抵抗発熱素子(図示しない)に接続される。図3は図2の可溶合金ヒューズ素子20の実装前の状態の斜視図を示す。セラミックチップ体12の表面側中央の第1パターン電極21、その両側に一対の第2パターン電極22,23と、各パターン電極位置に形成の第1スルーホール24、一対の第2スルーホール26、27が形成される。このうち、スルーホール24には抵抗発熱素子25が、スルーホール26,27には導電素材28,29が埋設配置されている。なお、図示しないが、このチップ体12の裏面側に形成された3個のパターン電極は、表面側パターン電極21〜23と対応しており、抵抗発熱素子25および導電素材28,29と電気的に接続されている。
【0020】
一方、裏面側に装着した導出用リード15〜17は平角銅線をパターン電極にはんだ付けしている。セラミックチップ体12は、焼結処理前のグリーンシートの段階で所定の形状にされ、所望するスルーホールの加工が実施される。焼結処理後に、導電パターンのパターン印刷、また、スルーホール内に抵抗体の充填処理が実施される。セラミックチップ体は所定のパターン電極や抵抗体が、同時に多数が一括形成され、所定の加工処理工程後に分離分割して個別部品にされる。セラミックチップ体は良好な絶縁性を維持するものであればアルミナ以外の絶縁材でもよく、この絶縁基板の各面に所定の形状でパターン電極が形成される。例えば、予め決められた位置の2個のスルーホールに導電体が設けられ、1個のスルーホールに抵抗体を介在させ、両面のパターン電極と電気的に接続される。ここで注目されるのはスルーホール内に配置した抵抗体は表面側にスペースを必要とせず小型薄型化に寄与するほか従来の膜抵抗体に比べて大きな体積が得られる。したがって、耐電力が大きくできるほか、膜状抵抗体のように焼付けが省略できたり、外傷を生じたりしない。取扱上での事故や不良発生もなく長期安定化が図られる。
【実施例2】
【0021】
本発明に係る別の実施例は、図4の斜視図に示す、チップタイプの保護素子30である。図4は保護カバーを除く表面側の斜視図を示しており、セラミックチップ体32の表面に可溶合金ヒューズ素子35を装着して構成され、表面実装型チップ部品として取り扱うことのできる構造である。このチップタイプの保護素子30は、セラミックチップ体32の両面にそれぞれ中央の第1パターン電極41と端面側に第2パターン電極42,43が形成され、裏面側パターン電極がそのままプリント基板上に搭載されてパターン電極間をはんだ付けされる。図5は保護カバーおよび可溶合金ヒューズ素子の装着前の状態を示す斜視図である。図5にはセラミックチップ体32の表面に設けたパターン電極群であり、中央に第1パターン電極41と端面側に一対の第2パターン電極42,43が形成され、第1パターン電極41には第1スルーホール44が、第2パターン電極42,43には基板端面に導電体溝部46,47がそれぞれセラミックチップ体32に形成される。ここで、第5図に示される中央パターン電極41の第1スルーホール44には所定の抵抗値に調整された抵抗発熱素子45が埋設される。また、セラミックチップ体32の電極パターン42および43の端面には両面のパターン電極を導通接続するように、導電体溝部46,47が形成されている。基板中央の第1パターン電極41も両面に対応して形成されており、スルーホール44に設けた抵抗発熱素子45を介してお互いに電気的に接続される。
【0022】
上述するセラミックチップ体は、可溶合金ヒューズ素子、抵抗発熱素子および保護カバーを搭載実装するまでの製作工程を、互いに多数の連結状態で加工処理される。すなわち、複数個のセラミックチップ体は、アルミナ材セラミックチップを連結状態で一括処理により製造され、搭載実装した完了直前の工程で、個別化のために分離分割される。多数のセラミックチップを連結状態にして加工処理することで、製品間のばらつきを小さくするほか、製品間の特性や性能の均一化が図られる。したがって、セラミックチップ体の端面に導電体溝部46,47の形成も、多数のチップ連合体にスルーホールに導電素材を埋設した後に、スルーホールで分離切断して行われる。図4に示すように、セラミックチップ体32の表面側に低融点可溶合金にフラックスを被覆した可溶合金ヒューズ素子35が、その両端をパターン電極とはんだ付けして配置される。同様にして、両端面の導電体溝部46,47を経て裏面側パターン電極に電気的に接続され、これらの裏面側のパターン電極には導出端子をはんだ付けして設けることもでき、この導出端子を経由して表面実装用配線基板と電気的回路を構成する。可溶合金ヒューズ素子35は、必要に応じてセラミックキャップや絶縁被覆材により封止してパッケージ構成することもできる。ここで、セラミックチップ体32のスルーホール44に埋め込まれた抵抗体の発熱素子45はセラミックチップ体32と一体配置され熱的結合状態が保持されるので、抵抗体の発熱は直接セラミックチップ体から可溶合金ヒューズ素子に伝熱され、それにより、迅速かつ正確に所定の動作温度で作動させることができる。ここで各構成要素は可及的に小さく且つ薄くなるように形成加工される。例えば、スルーホールの直径φは、例えば、0.2mmで形成される。また、発熱素子の抵抗値はスルーホール44の表裏両面の電極パターン間で所望する抵抗値、例えば、1〜100Ωの抵抗材料やスルーホール寸法等が調整される。
【0023】
上述する実施例において、セラミックチップ体の表裏両面には3個のパターン電極がそれぞれのスルーホールを介して互いに接続され、このうち1個のスルーホールに抵抗発熱素子を埋設配置した。表面側の3個のパターン電極には可溶合金ヒューズ素子が橋渡し状に架橋されて3個のパターン電極と溶着され、それにより、低融点合金の第1の可溶体部分と第2の可溶体部分とを有するデュアルタイプ可溶合金ヒューズ素子となる。各パターン電極に溶着された低融点合金の可溶体部分にはフラックスが被着されて可溶合金ヒューズ素子となる。必要に応じ、パターン電極を含めセラミックチップ体よりやや小さめの絶縁性セラミックキャップで密閉カバーする。なお、可溶合金ヒューズ素子の低融点合金はシングルタイプの可溶体でもよいが、デュアルタイプの可溶体の場合にはそれぞれの可溶体の動作温度を同一にしたり異なるものにしたりすることができる。異なる動作温度のデュアルタイプでは温度差を動作温度のばらつきの範囲内にするのが望ましい。
【0024】
セラミックチップ体の裏面側に形成した3個のパターン電極に導出用リードや導出端子が取付られて被保護用機器と接続される。発熱素子は第1のスルーホール内に配置されており、第1のパターン電極と接続される。保護素子は、例えば、定格DC32V、10A、動作温度135℃、発熱抵抗50Ωであり、完成品の外形寸法はセラミックチップ体本体を極めて小さくできる。なお、方形状セラミックチップ体12は厚さ0.4mmのアルミナ基板であり小型化によりアルミナセラミックの所要量が大幅に削減されてコスト面での経済的メリットが得られると共に、パターン電極の形成をスクリーン印刷で実施する際に、小さい基板であるので1回の印刷で多数の印刷加工が同時にできる等製造上での経済的効果も得られる。更に、リード部材15〜17は幅0.7〜1.0mm、厚さ0.2〜0.4mmの平板状のSnめっき銅線を使用したので本体部分の厚み低減に寄与して薄型化に役立つ。
【実施例3】
【0025】
本発明に係る保護素子の実装構造は、二次電池の過充電保護回路への適用がある。メインプリント基板に搭載されるMOSFETなどの能動素子間にセラミックキャップ側を下にして嵌め込むようにして取付けられる。保護素子は上述のようにセラミックチップ体の一方の面にセラミックキャップのパッケージで封止するものは、この部分を能動素子の感熱部に近接して実装できる。また、回路部品素子間の間隙空間を利用して保護素子を実装することで、この種保護回路が使用される携帯用情報通信機器はコンパクトで小形薄型化に有利となる。また、2個以上の抵抗発熱体を使用する場合に、チップチップ体のスルーホール内に並列的に配置することで、可溶合金ヒューズ素子に対する均一な熱伝達により精度向上を図る。さらに、部品の小形化にによって、実装上、保護回路の制御素子間のスペースを有効利用して保護装置全体のコンパクト化に役立つなどの効果を奏する。
【符号の説明】
【0026】
10、30…保護素子、 12、32…セラミックチップ体、
14…ケースカバー(キャップ)、 15,16,17…導出リード、
20,35…可溶合金ヒューズ素子、 21,41…第1パターン電極、
22,23,42,43…第2パターン電極、 24,44…第1スルーホール、
25,45…抵抗発熱素子(チップ抵抗)、 26,27…第2スルーホール、
28,29…導電素材、
46,47…端面側導電体溝部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個のスルーホールを有するセラミックチップ体と、このチップ体の表裏両面に設けた複数個のパターン電極と、一方の面のパターン電極間にはんだ接続したリフロー処理に影響されない材料から選定した可溶合金ヒュ−ズ素子と、複数個のスルーホールのうち少なくとも一つのスルーホールに配置した抵抗発熱素子と、セラミックチップ体の他方の面のパターン電極に接続配置した複数個の導出用リ−ドと、表裏両面のパタ−ン電極間を接続する複数個のスルーホールのうち少なくとも二つ以上のスルーホールに埋設した導電体とを具備し、抵抗発熱素子の発熱を直接またはセラミックチップ体を介し可溶合金ヒューズ素子に熱電導し、昇温感応させて作動させる保護素子。
【請求項2】
前記可溶合金ヒューズ素子は少なくとも2個以上の可溶部分からなり、それぞれの可溶部分の溶断する温度を同一または異なる温度に選定したことを特徴とする請求項1に記載の保護素子。
【請求項3】
前記発熱素子は前記第1スルーホールに埋設配置され、抵抗材料の選定により抵抗値が調整されたチップ抵抗であり、前記セラミックチップ体の表面側の前記可溶合金ヒューズ素子と裏面側の前記パターン電極の導出端子とに接続したことを特徴とする請求項1または2に記載の保護素子。
【請求項4】
前記導出端子は同一方向に延びる平角状リード導体に接続され、配線基板平坦面に沿ってはんだ接続することを特徴とする請求項3に記載の保護素子。
【請求項5】
絶縁チップチップ体の表裏両面に単一の中央パターン電極とこれを挟んで一対のパターン電極を設け、表面側の一対のパターン電極間に低融点可溶合金の保護素子、裏面側の一対のパターン電極に導出端子を設け、表裏両面の前記中央パターン電極の対応位置に形成したスルーホールに発熱素子の抵抗体を埋設して両面の中央パターン電極に電気的に接続すると共に前記一対のパターン電極間を端面側導通溝部で電気的に導通させ、表面側で前記可溶合金ヒューズ素子の略中央部を前記中央スルーホールに電気的接続し、裏面側の前記中央パターン電極に第2の導出端子を設け、前記発熱素子の電流による加熱に感応して前記可溶合金を溶断して電気回路を遮断する非復帰型保護装置。
【請求項6】
前記発熱素子に通ずる電流は電池パック用充放電制御回路の異常を検知する制御素子により生成される過充放電防止に利用されることを特徴とする請求項5に記載の保護装置。
【請求項7】
前記端面スルーホールの導通は、スルーホールの端縁部に設けた外層表面導体で形成することを特徴とする請求項5に記載の保護装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−34755(P2011−34755A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−178918(P2009−178918)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(300078431)エヌイーシー ショット コンポーネンツ株式会社 (75)
【Fターム(参考)】