説明

保護装置および充電装置

【課題】充電可能な2次電池に充電する際の小型で高性能な保護装置を、周囲の温度変化に影響されず、かつ効率良く提供すること、ならびに、小型で高性能な二次電池の充電装置を効率良く提供することである。
【解決手段】本発明の保護装置は、電力を供給する回路に並列に接続され且つ閾値電圧以上の電圧により導通するスイッチング回路と、前記スイッチング回路に直列に接続された発熱素子と、前記充電電力の供給による自身の発熱、前記発熱素子からの熱、または、周囲の温度上昇により前記充電電力の供給を遮断する熱応動素子と、前記発熱素子と前記熱応動素子をバイパスし、充電回路側からスイッチング回路側へ一方向に電流を供給する電流素子とで構成する。また、本発明の充電装置は、前記保護装置を組み込んで構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は保護装置ならびに該保護装置を組み込んだ充電装置に関するもので、より詳細には充電時における二次電池の保護装置、ならびに二次電池に安全に充電することが可能な充電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
充放電可能に構成された二次電池に充電電力を供給するために充電装置が用いられる。
充電装置は二次電池が過充電状態に至り、或いは二次電池に過電流が流れると、二次電池が変形したり、最悪の場合には破裂や発火する恐れがあるため、充電装置には二次電池を保護するための工夫がなされている。
【0003】
例えば、図1に示す充電装置の保護回路10は、充電可能な二次電池11とツェナーダイオード12とを並列に接続し、二次電池11とツェナーダイオード12が並列接続された並列回路にヒューズ、PTC等からなる保護素子13が直列に、かつ、該保護素子13の付勢を加速するためにツェナーダイオード12に熱的に結合されている。さらに、保護素子13とツェナーダイオード12の回路と並列に充電器15が接続され、その充電器15のプラス電極とマイナス電極と保護素子13にはスマート回路16が接続されている(特許文献1参照)。
【0004】
前記保護回路10において、充電中に電池11が過充電状態になりスマート回路16が動作できない場合に、ツェナーダイオード12に逆方向の電流が流れてツェナーダイオード12が加熱され、その熱によって保護素子13がトリップされて電池11をスマート回路16及び充電器15から切り離すことで、二次電池11を保護する構成となっている。
【0005】
しかし、上述した保護回路10によれば、ツェナーダイオード12の熱により保護素子13を動作させるため、保護素子13の作動により電池11の電圧が低下した場合にツェナーダイオード12の発熱量が少なくなって保護素子13が十分に機能しなくなる欠点がある。また、保護回路10は、スマート回路16である半導体集積回路等を有しているために大型化する、との課題がある。
【0006】
このような欠点を解消し、保護素子が完全に機能し、かつ小型化可能な保護装置を本出願人が先に提案した(特許文献2参照)。
【特許文献1】特表2002−540756号公報
【特許文献2】特願2005−60305号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に開示されている保護装置は過充電保護が3端子PCT(正温度係数サーミスタ:Positive Temperature Coefficient)で構成されているために保護装置の過電流制御がPCTの抵抗値、抵抗比に依存し、また、3端子PCTは過電流保護範囲が周囲の温度で変化する可能性がある等、課題点があり、保護装置を設計通りに製造しうる歩留りが悪くなるという課題がある。
【0008】
本発明は、上述した従来技術の課題点を解消し、周囲の温度変化に影響されず、小型で高性能な保護装置を効率良く提供するとともに該保護装置を組み込んだ充電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の保護装置は、電力を供給する回路に並列に接続され且つ閾値電圧以上の電圧により導通するスイッチング回路と、前記スイッチング回路に直列に接続された発熱素子と、前記充電電力の供給による自身の発熱、前記発熱素子からの熱、または、周囲の温度上昇により前記充電電力の供給を遮断する熱応動素子と、前記発熱素子と前記熱応動素子をバイパスし、充電回路側からスイッチング回路側へ一方向に電流を供給する電流素子とで構成することを特徴とする。
【0010】
前記充電電力の供給先は主として二次電池である。
また、前記熱応動素子はバイメタルスイッチであることが好ましい。
また、前記発熱素子は2端子の正温度係数サーミスタであることが好ましい。
【0011】
本発明の充電装置は、二次電池を安全に充電する保護装置を有する充電装置であって、前記保護装置は、電力を供給する回路に並列に接続され且つ閾値電圧以上の電圧により導通するスイッチング回路と、前記スイッチング回路に直列に接続された発熱素子と、前記充電電力の供給による自身の発熱、前記発熱素子からの熱、または、周囲の温度上昇により前記充電電力の供給を遮断する熱応動素子と、前記発熱素子と前記熱応動素子をバイパスし、充電回路側からスイッチング回路側へ一方向に電流を供給する電流素子とで構成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、周囲の温度変化に影響されず、小型で高性能な保護装置を効率良く提供することができる、優れた効果を有するものである。
また本発明は、前記保護装置を組み込むことで、小型で高性能な充電装置を効率良く提供することができる、優れた効果を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を図示した実施形態に基づき詳細に説明する。なお、図示する実施形態は本発明の一実施例であり、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0014】
図2は本発明の保護装置40の一実施形態を示すもので、保護装置40は、電力を供給する後述する充電器等からなる充電回路52を接続する第1端子a、第2端子b、後述するリチウム電池等再充電可能な二次電池53を装着する電池ホルダー54と接続する第3端子c、第4端子d、発熱素子45と熱応動素子46とからなる3端子プロテクタ44、電流素子47、閾値電圧以上の電圧により導通するスイッチング回路48、電圧検出器49とで構成されている。
【0015】
保護装置40は、第1端子aと第3端子cが第1配線41で接続され、第2端子bと第4端子dとが第2配線43で接続されている。
第1端子aと第3端子cとの間には電池を保護する3端子プロテクタ44が接続されている。3端子プロテクタ44は端子e、f、gを有し、端子eは第1端子aに接続され、端子fは第3端子cに接続され、端子gはMOSFET等からなるスイッチング回路48の一方に接続されている。
3端子プロテクタ44は具体的には2端子PCTからなる発熱素子45と、バイメタルスイッチからなる熱応動素子46とからなり、発熱素子45の一方の端子はプロテクタ44の端子fに他方の端子はプロテクタ44の端子gに接続され、熱応動素子46の一方の端子はプロテクタ44の端子eに、他方の端子はプロテクタ44の端子fにそれぞれ接続されている。
【0016】
本実施形態において電流素子47はダイオードからなり、後述の充電回路52を接続する第1端子a側からスイッチング回路48側へ一方向に電流を供給するようにプロテクタ44をバイパスして設けられ、即ち、前記発熱素子45と前記熱応動素子46をバイパスして設けられている。
また、電圧検出器49は第1端子aと第2端子bとの間に接続され、二次電池に過電流が流れるのを検知してスイッチング回路48を閉状態に制御する。
【0017】
図3は本発明充電装置50の一実施形態を示すもので、図示するように電力を供給する充電器等からなる充電回路52と、保護装置40と、二次電池53を装着する電池ホルダー54とで構成されている。
保護装置40は前記した構成であり詳細な説明は省略する。二次電池53に電力を供給する充電器等からなる充電回路52は保護装置40の第1端子a、第2端子b間に接続されている。
電池ホルダー54は保護装置40の第3端子c、第4端子d間に接続されている。
【0018】
上記構成の充電装置50により二次電池53を充電するには、充電する二次電池53を電池ホルダー54にセットし、第1端子aと第2端子bとの間に接続の充電回路52から二次電池53に充電電流を供給する。充電回路52からの電流は、第1端子aからプロテクタ44の熱応動素子(バイメタルスイッチ)46を介して二次電池53を充電する。図3は二次電池53を充電している状態を示し、バイメタルスイッチ46は閉じた状態にあり、充電回路52は第1の配線41と第2の配線43を介して二次電池53に電力を供給する。充電電圧は最初小さいが充電開始から時間が経つにつれて徐々に上昇する。
【0019】
充電時間が経過し、充電電圧が過充電状態になり、電圧が閾値以上の電圧に上昇し、電圧の上昇が閾値を越える値を検出器49が検知すると、スイッチング回路48を導通状態とする。スイッチング回路48が導通状態となるとプロテクタ44の発熱素子(2端子PTC)45に電流が流れ、発熱素子45が発熱する。
発熱素子45の発熱により、その温度が所定値、例えば80℃に達すると、バイメタルスイッチ(熱応動素子)46が反転してバイメタルスイッチ46は図4に示すように開状態となる。
【0020】
図4において、バイメタルスイッチ(熱応動素子)46が第1配線41を遮断し、スイッチング回路48を導通状態とすることにより、発熱素子45には二次電池53から電流が供給され、発熱素子45は発熱を続け、従って熱応動素子46は第1配線41を遮断したままの状態を自己保持する。
一方、充電回路52からの電流はバイメタルスイッチ(熱応動素子)46が第1配線41を遮断することで二次電池53と切り離された状態となり、かつ電流素子(ダイオード)47により充電回路52と二次電池53は通電しなくなるため、二次電池が過充電されることがなくなる。
二次電池が充電されたならば、即ち、検出器49が閾値を越える電圧の上昇を検知したならば、電池ホルダー54から二次電池53を取り外す。二次電池を取り外すことにより発熱素子45の発熱が止まり、バイメタルスイッチ46は自己復帰し、次の電池充電に具えることとなる。
【0021】
保護装置40に充電回路52が接続されていないときに、端子aと端子b間が何らかの原因でショートすると、該ショートが原因で損傷にいたる事故が発生することがある。図5に示す実施形態は、保護装置40がこのような事故を未然に防止する状態を示すものである。図5において、端子a、b間にショート抵抗Rが接続された状態で、ショート抵抗Rで端子a、b間がショートすると、二次電池53からの電流が端子d−端子b−ショート抵抗R−端子a−電流素子47−プロテクタ44の発熱素子45−端子cの回路で流れ、発熱素子45を発熱させる。発熱素子45が発熱するとその熱で熱応動素子46が図5に示すように開いて短絡を解消し、二次電池53からの電流で発熱素子45を発熱させて熱応動素子46の接点を開放状態に自己保持する。したがって、ショートに起因する損傷を未然に防止することができる。なお、二次電池53の電池容量が消耗し、発熱素子45を発熱する能力がなくなった時点で熱応動素子46の遮断は解かれるが、このときはもはや二次電池53の電力が消耗しきっているため、ショートに起因する事故の発生は生じない。
【0022】
本発明は上述したように発熱素子45を2端子PTCで構成することができ、先に提案した保護装置を構成する3端子PTCに比較し、周囲の温度変化に影響されずに確実に二次電池の充電が行え、かつ、PTC素子を歩留まり良く、安価に製造することができ、また、半導体集積回路等を使用しないため設計が容易となり、小型で高性能な保護装置を効率良く提供することができる。
また、プロテクタ44のバイパスにダイオードからなる電流素子47を接続することにより充電回路52を接続する端子a、端子b間がショートしても、該電流素子47を介して発熱素子45に通電され、熱応動素子46の接点が開の状態を維持でき、ショートが解除される時点まで熱応動素子46の接点を開の状態に自己保持し、ショートに起因する事故を未然に防止することができる。
【0023】
以上詳細に説明したように、本発明によれば、周囲の温度変化に影響されず、小型で高性能な保護装置を効率良く提供することができる。
また本発明は、前記保護装置40を組み込むことで、小型で高性能な充電装置50を効率良く提供することができる。
【0024】
上記実施形態では熱応動素子46としてバイメタルスイッチを採用したが、ヒューズ等、自己の抵抗で発熱し、或いは周囲の温度変化に対応して回路を遮断する機能を有するスイッチ材料を採用することもできる。
また、充電可能な機器として二次電池を例示したが、本発明の充電装置は二次電池以外でも再充電可能な機材に再充電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は従来の充電装置を示す回路図である。
【図2】図2は本発明保護装置の一実施形態を示す回路図である。
【図3】図3は本発明充電装置の一実施形態を示す回路図である。
【図4】図4は本発明充電装置の作動例を示す回路図である。
【図5】図5は本発明保護装置の作動例を示す回路図である。
【符号の説明】
【0026】
40:保護装置、44:端子プロテクタ、45:発熱素子、46:熱応動素子、47:電流素子、48:スイッチング回路、49:電圧検出器、50:充電装置、52: 充電回路、53:二次電池、54:電池ホルダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力を供給する回路に並列に接続され且つ閾値電圧以上の電圧により導通するスイッチング回路と、
前記スイッチング回路に直列に接続された発熱素子と、
前記充電電力の供給による自身の発熱、前記発熱素子からの熱、または、周囲の温度上昇により前記充電電力の供給を遮断する熱応動素子と、
前記発熱素子と前記熱応動素子をバイパスし、電力供給側からスイッチング回路側へ一方向に電流を供給する電流素子と
で構成されていることを特徴とする保護装置。
【請求項2】
充電電力の供給先が二次電池であることを特徴とする請求項1に記載の保護装置。
【請求項3】
熱応動素子がバイメタルスイッチであることを特徴とする請求項1に記載の保護装置。
【請求項4】
前記発熱素子は2端子の正温度係数サーミスタであることを特徴とする請求項1に記載の保護装置。
【請求項5】
二次電池を安全に充電する保護装置を有する充電装置であって、前記保護装置は、
電力を供給する回路に並列に接続され且つ閾値電圧以上の電圧により導通するスイッチング回路と、
前記スイッチング回路に直列に接続された発熱素子と、
前記充電電力の供給による自身の発熱、前記発熱素子からの熱、または、周囲の温度上昇により前記充電電力の供給を遮断する熱応動素子と、
前記発熱素子と前記熱応動素子をバイパスし、充電回路側からスイッチング回路側へ一方向に電流を供給する電流素子と
で構成されていることを特徴とする充電装置。
【請求項6】
熱応動素子がバイメタルスイッチであることを特徴とする請求項5に記載の充電装置。
【請求項7】
前記発熱素子は2端子の正温度係数サーミスタであることを特徴とする請求項5に記載の充電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−259656(P2007−259656A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−83603(P2006−83603)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(592181602)古河精密金属工業株式会社 (15)
【Fターム(参考)】