説明

信号伝播回路

【課題】フォトカプラを用いた信号伝播回路において、フォトカプラの発光ダイオードの発光効率が経年劣化により低下して信号伝播ができなくなる。また、フォトカプラの発光ダイオード電流制限用の抵抗器の半田接合部も発熱し、経年劣化により半田クラックが発生し、信号伝播ができなくなる。
【解決手段】フォトカプラ、抵抗器、FET、パルス発生回路、フィルタ回路を備えた信号伝播回路において、パルス発生回路によりFETをON、OFF動作させて、フォトカプラと抵抗器に流れる電流を低減することにより、フォトカプラの発光ダイオードおよび抵抗器の半田接合部の経年劣化を低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトカプラを用いた信号伝播回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
信号伝播回路の一つに、フォトカプラを用いる方法がある。フォトカプラを用いることにより、送信側と受信側の回路を電気的に絶縁してパルス信号を伝播することができる。
【0003】
従来のフォトカプラを用いた信号伝播回路を図3に示す。100はフォトカプラ、101は抵抗器、105はCMOSロジックICである。図4は図3のA、C、D点の伝搬信号波形を示したものである。401はA点の電圧波形、402はA点の電流波形、403はC点の電圧波形、404はD点の電圧波形、405はA点の平均電流波形である。
【0004】
受信側に信号を伝搬するためにはフォトカプラ100の発光ダイオードに任意の電流を流す必要がある。図3の送信回路に図4の電圧波形401を入力した場合、電流波形402のパルス電流が図3のA点に流れる。このとき最大電流をIとすると、405で示すように区間Tの平均電流はIを1/2倍した電流になる。この電流が抵抗器101とフォトカプラ100の発光ダイオードに流れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−172513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的にフォトカプラの発光ダイオードに電流を流すと発光ダイオードの発光効率が低下する。発光効率が低下すると最終的にフォトカプラの出力側のフォトトランジスタがオンしなくなり、信号を受信側回路に伝播できなくなる。
また、フォトカプラの電流制限用の抵抗器についてもフォトカプラの発光ダイオードと同じ電流が流れるため、抵抗器の本体と半田接合部の温度が上昇する。半田接合部温度が、常温から高温、高温から常温、といった温度変化を繰り返すようなサイクルが生じた場合、半田接合部にクラックが生じ、伝播回路が断線し、信号を受信回路に伝播できなくなる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明によれば、フォトカプラを用いた信号伝播回路において、送信側回路に流れる電流を間引くためのFETと、前記FETをON、OFF動作させるためのパルス発生回路と、送信側回路の電流を間引いたことにより発生する不要な短パルス波形を除去するためのフィルタ回路を受信側回路に備え、信号の伝播に影響を及ぼさずに送信側の平均電流を下げてフォトカプラおよび抵抗器の半田接合部の経年劣化を低減することを特徴とする信号伝播回路。
【0008】
本発明は、フォトカプラを用いた信号伝播回路を、送信回路上に直列に接続したFETと、そのFETをON、OFF動作させるためのパルス発生回路と、FETのON、OFF動作により発生した短パルスを除去するためのフィルタ回路で構成し、FETのON、OFF動作により、フォトカプラおよび抵抗器に流れる平均電流を減らすことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、信号伝播回路の送信側回路の電流平均値を、FETをON、OFF動作させて下げることより、フォトカプラの発光ダイオード発光効率の低下、および抵抗器の半田劣化を低減できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施方法を示した図である。
【図2】本発明の実施例1の波形を示した図である。
【図3】従来の実施例を示した図である。
【図4】従来の実施例の波形を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
送信側回路の平均電流値を下げてフォトカプラの寿命および抵抗器の半田接合部劣化を低減するという目的を、FETと、任意のデューティーのパルス信号を生成するパルス発生回路と、フィルタ回路を従来の信号伝播回路に追加することにより実現した。
【実施例1】
【0012】
図1は、本発明の1実施例であって、100はフォトカプラ、101は抵抗器、102はFET、103はパルス発生回路、104はフィルタ回路、105はCMOSロジックICである。図2は図1のA点からD点の伝播信号波形であり、201はA点の電圧波形、202はB点の電圧波形、203はB点の電流波形、204はC点の電圧波形、205はD点の電圧波形、206はB点の平均電流波形である。
以上のように構成された本実施例の信号伝播回路について、以下その動作を説明する。
まず、図1の信号伝播回路の送信側回路に図2の201で示す伝播信号を入力する。図1のFET102がONのときは伝播信号が通過し、OFFのときは通過しない。つまりFET102はスイッチの役割を果たしている。FET102のON、OFFの制御は、FET102のゲートと接続しているパルス発生回路103により行う。パルス発生回路103は一定の周期でパルス信号をFET102のゲートに出力し、FET102はON、OFFを一定の周期で繰り返す。パルス発生回路103は、任意の周期とデューティーのパルス信号を繰返し出力する回路である。FET102がON、OFFを一定の周期で繰り返すことにより、伝播信号は図2の202、203のようにハイレベルの波形が一定の間隔で間引かれた波形になる。間引かれたことにより発生する短パルスの矩形波は不要な波形であるため、抵抗とコンデンサで構成したフィルタ回路104により除去する。除去後の波形は図2の204となる。後段のCMOSロジックIC105により更に低レベルの波形を除去することにより伝播信号は最終的に図2の205の波形となる。伝播信号の最終波形である205と初期入力波形である201を比較すると、フィルタ回路104の影響による波形エッジのズレはあるが、ほぼ同等の波形である。つまり、送信側回路においてFET102により伝播信号を間引いた場合でも、遜色なく信号を受信側に伝播する。
つづいて、送信側に流れる電流について説明する。FET102のON、OFF動作により送信側回路の平均電流は図2の206で示す波形となる。図3の従来回路に流れる平均電流は図4の405で示すように最大電流Iの1/2であるが、図1の信号伝播回路では1/4となる。つまり従来回路の半分である。
結果として、フォトカプラ100の発光ダイオードおよび抵抗器101に流れる平均電流が半分になるため、フォトカプラ100の発光ダイオードの発光効率の低下および抵抗器101の半田接合部の劣化を低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0013】
本発明によると、フォトカプラ、抵抗器、FET、パルス発生回路、フィルタ回路を備えた信号伝播回路において、パルス発生回路によりFETをON、OFF動作させて、フォトカプラと抵抗器に流れる電流を低減することにより、フォトカプラの発光ダイオードおよび抵抗器の半田接合部の経年劣化を低減することができる。
このことにより、環境への負荷を考慮した、長寿命で、付加価値の高い製品を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0014】
100 フォトカプラ
101 抵抗器
102 FET
103 パルス発生回路
104 フィルタ回路
105 CMOSロジックIC

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトカプラを用いた信号伝播回路において、送信側回路に流れる電流を間引くためのFETと、前記FETをON、OFF動作させるためのパルス発生回路と、送信側回路の電流を間引いたことにより発生する不要な短パルス波形を除去するためのフィルタ回路を受信側回路に備え、信号の伝播に影響を及ぼさずに送信側の平均電流を下げてフォトカプラおよび抵抗器の半田接合部の経年劣化を低減することを特徴とする信号伝播回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−124331(P2011−124331A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−279533(P2009−279533)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(000003115)東洋電機製造株式会社 (380)
【Fターム(参考)】