信号処理方法、画像表示装置、テレビジョン装置
【課題】一つの画素の色を指定する4つの色の強度を指定する各信号が0になりにくい信号処理方法を提供することを目的とする。
【解決手段】信号処理方法は、一つの画素の色を指定する3つの信号を入力するステップと、入力された3つの信号から、一つの画素の色を混色によって表示するための、互いに異なる4つの色の強度を示す4つの信号を生成するステップと、を有しており、生成するステップは、入力された3つの信号を、4つの色のうちの2つの色の強度を示す2つの信号と、4つの色を混色して得られる一つの混色の強度、もしくは該4つの色のうちの複数の色を混色して得られる一つの混色の強度を示す信号と、に変換する第1の変換ステップと、混色の強度を示す信号を、2つの色と異なる他の2つの色を少なくとも含む複数の色の強度を示す複数の信号、に変換する第2の変換ステップと、を有する。
【解決手段】信号処理方法は、一つの画素の色を指定する3つの信号を入力するステップと、入力された3つの信号から、一つの画素の色を混色によって表示するための、互いに異なる4つの色の強度を示す4つの信号を生成するステップと、を有しており、生成するステップは、入力された3つの信号を、4つの色のうちの2つの色の強度を示す2つの信号と、4つの色を混色して得られる一つの混色の強度、もしくは該4つの色のうちの複数の色を混色して得られる一つの混色の強度を示す信号と、に変換する第1の変換ステップと、混色の強度を示す信号を、2つの色と異なる他の2つの色を少なくとも含む複数の色の強度を示す複数の信号、に変換する第2の変換ステップと、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一つの画素の色を指定する3つの信号から、一つの画素の色を混色によって表示するための、互いに異なる4つの色の強度を示す4つの信号を生成する信号処理方法、画像表示装置、テレビジョン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、テレビジョンやコンピュータディスプレイモニタなどのディスプレイは光の3原色を用いて画像を表示していた。すなわち、赤(R)、緑(G)、青(B)の各サブピクセルで画素を構成し、並置混色や加法混色の原理を用い、RGBの光の強度を変えることで様々な色を表示することができる。このディスプレイで再現できる色の範囲は、3原色RGBの色のベクトルの和で表される範囲である。
【0003】
図9は3原色のディスプレイで再現できる色範囲を三次元のベクトルで表したものである。図9では、例としてRGBの三次元上の位置を示す座標空間としてCIE1931表色系(XYZ表色系)を用い、Rが最大値のときの座標を(XR、YR、ZR)、Gが最大値のときの座標を(XG、YG、ZG)、Bが最大値のときの座標を(XB、YB、ZB)とする。この場合のディスプレイは、図9に示した6面体の内部の色を表示することができる。
【0004】
また、色度の観点に限れば、色再現範囲はXYZ表色系のxy色度座標(xy色度図)を用いることでも表現することができる。その場合の色再現範囲は図10の三角形で囲まれた領域となる。
【0005】
3原色のディスプレイにおいて、(XD、YD、ZD)の座標を持つ色Dは、3原色R、G、Bの係数をそれぞれr、g、b(各々0〜1の値が有効範囲)とすると「数1」のように表せる。
【0006】
【数1】
【0007】
「数1」を変形して行列計算で表すと「数2」のようになる。
【0008】
【数2】
【0009】
したがって、色Dを表示するための係数r、g、bは「数3」のように求まる。
【0010】
【数3】
【0011】
この3原色のディスプレイに対し、近年、4つ以上の原色を用いて色再現範囲を広くする試みがなされている。従来のディスプレイで表示できなかった色を再現でき、色再現性の向上や高臨場感を得ることができる。
【0012】
n原色(nは3以上の整数)のディスプレイの場合、各原色の値に対する表示色のXYZ座標(XD、YD、ZD)は「数4」のようになる。
【0013】
【数4】
【0014】
c1、c2、c3、…cnは各原色の係数、(Xc1、Yc1、Zc1)、(Xc2、Yc2、Zc2)、…(Xcn、Ycn、Zcn)は各原色のXYZ座標である。表示したいXYZ値から各原色の係数を求めるには、「数3」のように行列Mnの逆行列を計算
しなければならない。しかし、行列Mnは3×n行列であり、逆行列を直接求めることができない。
【0015】
特許文献1(特開平6−261332号公報)は、6原色を用いて従来のRGB3原色のテレビジョンで表示できなかった範囲の色を表示する方法を開示しているものである。特許文献1の第1の例では、伝送されてきた映像信号をRGB信号に変換した後xy色度座標に変換し、xy色度図上でどこに位置するかを求める。色を表示する場合は、あらかじめ6原色の中から互いに重ならない3原色の組合せを4つ選んでおく。色度図に図示すると図11のようになるが、表示したい色がこれら4つの三角形のどれに属しているかを判定し、その色が属する三角形の頂点をなす3原色を用いて表示する。
【0016】
また、特許文献2(特開2000−338950号公報)のように、4原色で表示できる三次元の色空間内において、表示したい色がどの領域にあるかを判定する手段を設けることで、入力された三刺激値をカラー画像信号に変換するシステムがある。4原色の場合、図10(A)のような立体内の色が再現可能となる。特許文献2では、表示したい色が図10(B)〜(E)のどの立体に含まれるかを判定し、その色を囲む6面体の頂点の座標を用いて「数2」と同様に計算して各原色の値を求める。どの立体に含まれるかの判定は、図12(B)〜(E)の全てについて「数2」を用いて各原色の係数を計算し、全ての係数が0〜1の範囲に入るかどうかを調べることで行っている。
【0017】
特許文献3(特開2004−152737号公報)には、三刺激値をカラー画像信号に変換する手法として、擬似逆行列を用いて3×4行列の逆変換を求める方法が例示されている。
【0018】
また、非特許文献1では、表示したい色と同じxy色度座標で、かつディスプレイで表示できる最大輝度となるように各原色の係数の比を計算し、表示したい輝度になるように
各係数に値を掛けるという方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開平6−261332号公報
【特許文献2】特開2000−338950号公報
【特許文献3】特開2004−152737号公報
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】「カラーフォーラムJAPAN’97論文集」、1997年、PP.13〜16
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
一般的な画像信号は3つの信号で画素の色を指定する。具体的にはRGB信号は、R信号、G信号、B信号によって一つの画素の色を特定する。またYCrCb信号は、Y信号とCr信号とCb信号によって一つの画素の色を特定する。YIQ信号、YUV信号も3つの信号によって一つの画素の色を特定する。また3刺激値として知られるXYZ信号もX信号、Y信号、Z信号の3つの信号によって一つの画素の色を特定する。一つの画素の色を指定する3つの信号の組を本願では画素信号と称する。一つの画素信号を構成する3つの信号は、互いにパラレルに、もしくはシリアルに入力される。3つの信号のそれぞれはアナログ信号もしくはデジタル信号の形態をとりうる。デジタル信号の場合は、2以上のビット数のデジタル信号を採用できる。2以上のビット数を持つ一つの信号の各ビットはシリアルもしくはパラレルに入力されうる。以下では一つの画素の色を指定するための3つの信号を3原色信号とも称する。なお本願でいう色とは、色度のみで決まるものではなく、明るさも属性として有する。すなわち、色度が同じ色であっても、明るさが異なる色は異なる色である。
【0022】
従来の3原色ディスプレイは一つの画素が3つの異なる色のサブピクセルによって構成されるため、入力された3原色信号から、3つのサブピクセルのそれぞれの信号レベルを決定すればよい。この場合、3つのサブピクセルの信号レベル(各サブピクセルの色の強度)は入力された3原色信号によってユニークに決めることができる。4つ以上の異なる色のサブピクセルで一つの画素を構成する場合、入力された3原色信号から4つ以上のサブピクセルの信号レベルを算出するにあたって、解がユニークに決まるとは限らない。本願発明者らは、異なる色に対応するサブピクセルを面内に配置して画素を構成することで画像を得るディスプレイにおいては、非点灯のサブピクセルの存在が、視覚的妨害感を引き起こすことがあることを見出した。そして1画素内でより多くのサブピクセルを点灯させることで視覚的妨害感を抑制できることを見出した。また、サブピクセルそれぞれはその点灯履歴に応じて特性が変化する。これはトータルの点灯時間が長いサブピクセルと、より点灯時間が短いサブピクセルとの間に特性の差(例えば同じ信号で駆動した場合の輝度の差)を生じさせる。本願発明者らは、より多くのサブピクセルを点灯させて入力信号が指定する色を表示することで、長期的には、サブピクセル間の特性の差がより生じにくくなることを見出した。各サブピクセルは、サブピクセルの色の強度を指定する信号によって駆動されるので、各色の強度を指定する信号が0になりにくい信号処理を行うことで、視覚妨害感を低減する、もしくは長期的な特性差を抑制する、という効果が得られる。本発明は、一つの画素の色を指定する4つの色の強度を指定する各信号が0になりにくい信号処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は上記目的を達成するため、信号処理方法は、
一つの画素の色を指定する3つの信号を入力するステップと、
入力された前記3つの信号から、一つの画素の色を混色によって表示するための、互いに異なる4つの色の強度を示す4つの信号を生成するステップと、を有しており、前記生成するステップは、
入力された前記3つの信号を、
前記4つの色のうちの2つの色の強度を示す2つの信号と、
前記4つの色を混色して得られる一つの混色の強度、もしくは該4つの色のうちの複数の色を混色して得られる一つの混色の強度を示す信号と、
に変換する第1の変換ステップと、
前記混色の強度を示す前記信号を、
前記2つの色と異なる他の2つの色を少なくとも含む複数の色の強度を示す複数の信号、
に変換する第2の変換ステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
一つの画素の色を指定する4つの色の強度を指定する各信号が0になりにくい信号処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のハードウエア構成の例である。
【図2】本発明のハードウエア構成の別の例である。
【図3】本発明のハードウエア構成の別の例である。
【図4】実施例1のxy色度座標を表したxy色度図である。
【図5】実施例2のxy色度座標を表したxy色度図である。
【図6】実施例4の色域を三次元ベクトルで示した図である。
【図7】実施例に係るデータ変換回路のブロック図である。
【図8】実施例に係るテレビジョン装置のブロック図である。
【図9】3原色のディスプレイの色域を三次元ベクトルで表した図である。
【図10】3原色のディスプレイの色域を表したxy色度図である。
【図11】特許文献1の第1の例の色域を表したxy色度図である。
【図12】特許文献2の色域を三次元ベクトルで表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に図面を参照して、この発明の最良な実施の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。なお、以下の実施形態の全図においては、同一または対応する部分には同一の符号を付す。
【0027】
(テレビジョン装置の実施の形態)
まず、図8を用いて本発明が適用可能なテレビジョン装置について説明する。図8は、本発明に係るテレビジョン装置のブロック図である。テレビジョン装置は、セットトップボックス(STB)501と、画像表示装置502と、を備える。
【0028】
セットトップボックス(STB)501は、受信回路503およびI/F部504を有する。受信回路503は、チューナーやデコーダ等からなり、衛星放送や地上波等のテレビ信号、ネットワークを介したデータ放送等を受信し、復号化した映像データをI/F部504に出力する。I/F部504は、映像データを画像表示装置502の表示フォーマットに変換して画像表示装置502に画像データを出力する。
【0029】
画像表示装置502は、表示パネル200、制御回路505、駆動回路506を有する。画像表示装置502に含まれる制御回路505は、入力した画像データに表示パネル200に適した補正処理等の画像処理を施すともに、駆動回路506に画像データ及び各種制御信号を出力する。制御回路505は、一例として図7におけるタイミング発生回路404が挙げられる。駆動回路506は、入力された画像データに基づいて、表示パネル200に駆動信号を出力し、表示パネル200上にはテレビ映像が表示されることとなる。駆動回路506は、一例として図7における変調回路402や走査回路403が挙げられる。表示パネル200は、以下の実施の形態では図7に示すようにマルチ電子源401を例に挙げる。マルチ電子源401として、例えば、FED、PDP、LCDディスプレイ、LED、ELディスプレイ等の種々の表示パネルを用いることができる。
【0030】
なお、受信回路503とI/F部504は、セットトップボックス(STB)501として画像表示装置502とは別の筐体に収められていてもよいし、また画像表示装置502と同一の筐体に収められていてもよい。
【0031】
図7に示すように、マルチ電子源401を駆動する駆動回路においては、変調回路402、走査回路403、タイミング発生回路404、データ変換回路405、マルチ電源回路406および走査電源回路407を有して構成されている。この駆動回路は、画像表示装置における画像表示部の一部を構成する。
【0032】
マルチ電子源401は表示素子として表面伝導型放出素子1001を有している。ここでは表示素子として表面伝導型放出素子を用いているが、表示素子としてはスピント型の電子放出素子や、エレクトロルミネッセンス素子など種々の素子を用いることができる。なお、表示素子として表面伝導型放出素子などの電子放出素子を用いる場合は、電子放出素子が放出する電子が蛍光体に照射されることで光が生じる。この光によって画像が表示される。光の明るさは電子放出素子からの所定時間内における電子の照射量で制御することができる。電子放出素子からの電子の照射量は電子放出素子に印加される電圧の大きさ、時間幅によって制御できる。従って、走査信号の電位と変調信号の電位との電位差や走査信号印加期間内の変調信号の印加時間を制御することで所望の照射量を得ることができる。この実施形態では一つの画素はここでは赤のサブピクセル、青のサブピクセル、緑のサブピクセル、シアンのサブピクセルによって構成される。またこの実施形態での一つのサブピクセルは、一つ乃至複数の電子放出素子と、該電子放出素子からの電子が照射されることで、赤、緑、青、シアンのいずれかの色で発光する発光体で構成される。
【0033】
マルチ電子源401は複数の表示素子をマトリックス駆動できるように接続する複数の走査配線1002と複数の変調配線1003を有している。この走査配線1002に前記走査信号が印加され、変調配線1003に変調信号が印加される。
【0034】
変調回路402は入力された変調データに応じて変調信号を発生させる回路である。変調回路402は、データ変換回路405から入力された変調データに基づいて変調した変調信号を、複数の電子源にそれぞれ接続する列方向配線に与える、変調手段として機能する。
【0035】
走査回路403は、マルチ電子源401の行方向配線に接続されており、変調回路402の出力によって駆動されるべき表示素子が接続される走査配線に選択信号(走査信号)を供給する回路である。一般的には、一行ずつ順次行選択する線順次走査が行われるが、これに限定されるものではなく、飛び越し走査や複数行を選択したり面状に選択したりすることも可能である。すなわち、走査回路403は、マルチ電子源401に含まれる複数電子源のうち駆動対象となる複数の電子源が接続される行方向配線に対して所定時間に選択電位を与え、それ以外の時間に非選択電位を与えて、行選択をする選択手段として機能
する。
【0036】
タイミング発生回路404は、変調回路402、走査回路403およびデータ変換回路405のタイミング信号を発生する回路である。
【0037】
データ変換回路405は、入力された3原色信号を4原色信号に変換する回路である。4原色信号とは、一つの画素の色を混色によって表示するための、4つの異なる色の強度を指定する4つの信号の組である。これら4つの信号によって4つの異なる色のサブピクセルの駆動状態が指定される。本実施形態では、色の強度は、その色での発光の強度に相当する。発光の強度は、表示素子に印加する駆動波形の波高値の大きさや、駆動波形の持続時間によって制御することができる。また、データ変換回路405は、外部からマルチ電子源401に要求する明るさを示す階調データ(輝度データ)を変調回路402に適した駆動波形データフォーマットに変換するデータ変換を行う回路である。
【0038】
<実施例1>
本実施例を用いたディスプレイは互いに異なる4つの色(4つのサブピクセル)で1画素が構成されており、ここではそれぞれの色をR(赤)、G(緑)、C(シアン)、B(青)としている。ただし、サブピクセルの各色はこれらの組み合わせに限るものではない。以下ではサブピクセルの各色を原色と称する。それぞれの原色の最大点灯時のXYZ色度座標は、Rが(XR、YR、ZR)、Gが(XG、YG、ZG)、Cが(XC、YC、ZC)、Bが(XB、YB、ZB)とする。4原色を、混合比(k,l,m,n)で合成して得られる混色をA(XA、YA、ZA)とし、「数5」で定義する(本発明の「線型結合」に相当)。混色Aは、「数10」に示す式で、複数の原色に変換される。そのため、混色Aは、4原色のすべてを混色して得られる色であることが望ましい。すなわち、混合比は、0<k,l,m,n≦1であることが望ましい。
【0039】
混合比は、最良の見えになる値を予め求めて所定の混合比としてテーブルに設定してもよいし、入力された3原色信号の各成分の大きさに応じて混合比を動的に変更できるように複数の係数の組合せをテーブルに設定するようにしてもよい。また、混合比は、各画素の輝度差が少なくなるように設定するのが好ましい。
【0040】
【数5】
【0041】
図4は、本実施例の4原色RGCB及び混色Aをxy色度図で表したものである。図4において、四角形RGCBで囲まれた領域がディスプレイの色域である。この場合、混色Aのxy色度座標はディスプレイの色域内にある。
【0042】
今、入力された3原色信号の示す任意の色D(XD、YD、ZD)を4原色で表される4原色信号の示す色D(4原色RGCB)に変換したいとする。
【0043】
まず、4原色のうちの2つの原色と混色Aの4つの組合せ(RGA、GCA、CBA、RBA)の各々について、行列計算を行い、3色で色Dを表すための2つの原色の係数と混色Aの係数とを得る(数6〜数9)。この2つの原色と混色の係数をえるステップが本願発明の第1の変換ステップに相当する。混色Aの係数は4つの組合せの全てにおいて求
められる。
【0044】
【数6】
【0045】
【数7】
【0046】
【数8】
【0047】
【数9】
【0048】
ここで、係数r11、g11、a11は、それぞれ2つの原色RGと混色Aの係数である。具体的にはr11は、赤の強度を示す信号であり、g11は緑の強度を示す信号であり、a11は4つの原色を混ぜた混色の強度を示す信号である。図4において、色Dは領域RGAに含まれている。係数g12、c12、a12はそれぞれ2つの原色GCと混色Aの係数であり、係数c13、b13、a13はそれぞれ2つの原色CBと混色Aの係数であり、係数r14、b14、a14はそれぞれ2つの原色RBと混色Aの係数である。各原色の係数の値が0のときその原色は消灯し、1のとき最大の発光強度を表す。ここでは各係数の値は0から1の範囲の値を取るものとしているが、実際にはデジタル信号で処理するのが好適である。例えば、8ビット以上のビット数のデジタル信号、すなわち、2進数では0から255以上の範囲の値を取る信号として処理するのが好適である。
【0049】
表示したい色Dが図4に図示したxy位置(xy色度図上で三角形RGAの内側)にあるとする。この場合、2つの原色RGと混色Aにて色Dを表す「数6」の係数r11、g11、a11が全て正となる。他の組合せではいずれかの係数の値が負になる。2つの原色の係数と混色Aの係数の全てが正の値であることが、色Dがその3色で表せるということを示しており、その組合せを選択する。
【0050】
混色Aは「数5」のように4原色RGCBで表される。すなわち、正の係数a11で混色Aを表示するための4原色RGCBの係数rA、gA、cA、bAは「数10」のようになる。「数10」において、混色は混合比に従って4原色(該混色を構成する4つの色の強度を示す信号)に変換される。この変換が本願発明の第2の変換ステップに相当する
。この第2の変換ステップによって得られた4つの色の強度を示す信号のうち、色Cと色Bの強度を示す信号は第1の変換ステップでは求めていないので、第1の変換ステップで求めた信号と合成する必要はない。従って、第2の変換ステップで得られた信号をそのまま後段に出力することができる。しかしながら、第2の変換ステップで得られた4つの信号のうち、色Rと色Gについては第1の変換ステップでも有意な信号が得られているので、第1の変換ステップで得られた信号と第2の変換ステップで得られた信号とを合成する。この合成は加算によって簡便に実現することができる。ただし、単純な加算に限るものではない。例えば、4つの信号に所定の演算をさらに行う構成においては、前記加算する対象の信号については、先に前記所定の演算を行ったうえで、加算してもよい。
【0051】
以上によって、目的の色Dを表示するための4原色RGCBの係数rD、gD、cD、bDを求めることができる(数11)。ここで、「数10」におけるrA及びgAの係数k、lがゼロであっても「数11」に示される4原色RGCBの係数rD、gD、cD、bDを求めることができる。言い換えると、混色は、4原色のうちの少なくとも2つの原色を混色して得られる色でもよい。例えば、混色Aとして、図4の色度図上の、色Cと色Bを結ぶ直線上の色を採用すれば、混色Aは色Cと色Bのみに分解できる。従って、合成のステップを何ら行うことなく、第1の変換ステップで得られた色Rと色Gの信号、及び第2の変換ステップで得られた色Cと色Bの信号を、一つの画素の色を混色で表示するための4つの色の強度を示す4つの信号として用いることができる。
【0052】
なお、いずれかの係数がゼロである係数の組合せを選択する方法として、入力された3原色信号の成分の大きさを利用する方法がある。例えば、入力された3原色信号のいずれかの成分の大きさが所定値(例えば、最小値「0」から最大値「255」における所定値「192」)を超えたとき、所定値を超えた成分の係数がゼロである係数の組合せをテーブルから選択するようにしてもよい。
【0053】
【数10】
【0054】
【数11】
【0055】
色Dが他の領域にある場合、色Dを表示できる2つの原色係数と混色Aの係数とが正の値となる組合せを選択し、同様に計算することで4原色の係数を求めることができる。
【0056】
本実施例によれば、3原色信号を4原色で表される4原色信号に変換する際に、3原色を混色を含む3色に変換するため、係数の計算が簡単である。すなわち、入力する信号数と1回の変換ステップで得る信号数が同数であることで、容易に解が得られる。しかも、逆行列をメモリ等に予め記憶しておけば、「数6」〜「数10」に示す係数の計算は、加算と乗算を行うだけでよい。また、最外郭の色でない限り4原色の係数が正の値になる。その結果、4原色信号の4原色を示す各信号成分が正となるため、4つのサブピクセルのすべてを点灯できる。
【0057】
<実施例2>
本実施例のディスプレイが、R、G、C、Bの4原色で1画素が構成されている例について、以下、説明する。それぞれのXYZ色度座標は、Rが(XR、YR、ZR)、Gが(XG、YG、ZG)、Cが(XC、YC、ZC)、Bが(XB、YB、ZB)とする。
【0058】
ここで、XYZ色度座標(XD、YD、ZD)にある任意の色Dを、4原色を用いて表示する場合、4原色のうちの3つの原色の組合せ全て(RGC、GCB、RCB、RGB)について行列計算を行う。4つの組合せの各々について、3原色で色Dを表すための3つの係数を得る(数12乃至数15)。これにより、異なる3つの原色の係数の組合せが4つ得られる。
【0059】
【数12】
【0060】
【数13】
【0061】
【数14】
【0062】
【数15】
【0063】
ここで、係数r21、g21、c21は、それぞれ3つの原色RGCの係数である。係数r24、g24、b24は、それぞれ3つの原色RGBの係数である。図5において、色Dは領域RGC及び領域RGBに含まれている。係数g22、c22、b22及び係数r23、c23、b23はそれぞれ3つの原色RGC及び3つの原色RCBの係数である。各原色の係数の値が「0」のときその原色は消灯し、1のとき最大の発光強度を表す。
【0064】
表示したい色Dが図5に図示したxy位置にある場合、色Dのxy色度座標は、色度図上で領域RGC及び領域RGBの内側に位置する。即ち、3つの原色RGCにて色Dを表す「数12」の係数r21、g21、c21の各々が正の値となり、3つの原色RGBにて色Dを表す「数15」の係数r24、g24、b24の各々が正の値となる。他の組合せではいずれかの係数の値が負になる。3つの原色全てが正の値であることが、色Dをその3色で表せるということを示しており、その組合せを選択する。
【0065】
即ち、同じ色Dを表すための4つの組合せ(数12乃至数15)から、色Dを表す係数の全てが正の値である2つの組合せを選択する。
【0066】
目的の色Dを表示するための4原色RGCBの係数rD、gD、cD、bDは、選択した2つの組合せの3つの原色RGC及び3つの原色RGBのそれぞれの原色の係数の値を加重平均(合成)することで得られる(数16)。
【0067】
即ち、選択された2つの組合せに関する6つの係数を使用して「数16」に示すように加重平均することにより、選択された2つの組合せのそれぞれの色度が大きくかわることなく合成できる。結果として、変換の前後に色度が大きくかわることがなく、入力された3原色信号を4原色信号に変換できる。言い換えると、同じ色Dを表す2つの組合せのそれぞれの3原色信号を色度を維持して合成できる。
【0068】
【数16】
【0069】
また、色Dが他の領域にある場合は、3つの原色の全てが正の値となる組合せを2つ選択し、それぞれの原色の係数を加重平均すればよい。加重平均の他、色度を維持して合成(所定の合成処理)するために、相加平均、重み付け相加平均、相乗平均、または重み付け相乗平均を利用してもよい。
【0070】
本実施例における“色度を維持する”ための範囲とは、人が視覚的に色が変化したと認識しない範囲であり、具体的には、“色度を維持する”ための範囲を、xy色度から計算されるu’v’色度の色差で定義すると、「Δu’v’<=0.015」の範囲(実質的に色度を維持する範囲)であるのが好ましい。
【0071】
u’、v’の求め方は、XYZ三刺激値から
u’=4X/(X+15Y+3Z)
v’=9Y/(X+15Y+3Z)
または、xy色度座標から
u’=4x/(−2x+12y+3)
v’=9y/(−2x+12y+3)
となる。
【0072】
ここで、
先の2つの組み合わせのうちの一方で得られた3つの信号によって画素の表示を行った時の色度を(u’1,v’1)、
もう一方の組み合わせで得られた3つの信号によって画素の表示を行った時の色度を(u’2,v’2)とし、
合成した結果として得られた4つの信号で画素の表示を行った時の色度を(u’,v’)とすると、
Δu’v’={(u’−u’1)2+(v’−v’1)2}(1/2)
及び、
Δu’v’={(u’−u’2)2+(v’−v’2)2}(1/2)
となる。
【0073】
これらがいずれも0.015以下になればよい。
【0074】
具体的には、「数16」において、s=t=1/2とすることでこの要件は容易に達成することができる。
【0075】
本実施例によれば、3原色信号を4原色で表される4原色信号に変換する際に、3原色信号の3原色を4原色のうちの3つの原色に変換するため、係数の計算が簡単である。しかも、逆行列をメモリ等に予め記憶しておけば、「数12」〜「数15」に示す係数の計算は、加算と乗算を行うだけでよい。また、3つの原色の組合せ2つについての6つの正の係数を合成することにより4原色RGCBの係数を求めることができる。これにより、最外郭の色でない限り4原色の係数が正の値になる。その結果、4原色信号の4原色を示す各信号成分が正となるため、一つの画素(ピクセル)を構成する4つのサブピクセルのすべてを点灯できる。
【0076】
<実施例3>
実施例1及び実施例2では、混色Aの値や色Dの値によっては、4原色RGCBのいずれかの係数が1を超える場合がある。その場合、1を超えた係数の値の1との差分を求めて、差分を他の原色で表すことにより、全ての原色の係数が0から1の値をとるようにすることができる。例えば、原色Rの係数の値が「1.1」であったとき、1との差分「0.1」を他の3つの原色GCBの係数に置換する。
【0077】
まず、各々の原色を他の3つの原色で表した場合の原色の係数をあらかじめ求めておく。「数17」はRをGCBで表す場合、「数18」はGをRCBで表す場合、「数19」はCをRGBで表す場合、「数20」はBをRGCで表す場合の数式を示す。
【0078】
【数17】
【0079】
【数18】
【0080】
【数19】
【0081】
【数20】
【0082】
ここで、係数(gR、cR、bR)、係数(rG、cG、bG)、係数(rC、gC、bC)、係数(rB、gB、cB)はそれぞれ、原色R、原色G、原色C、原色Bを他の3つの原色で表したときの係数である。XR、YR、ZR、XG、YG、ZG、XC、YC、ZC、XB、YB、ZBは、固定値であるため、「数17」〜「数20」の右辺も固定値となる。
【0083】
例えば、「数11」又は「数16」に示す各原色RGCBの係数rD、gD、cD、bDの値が最大値1を超えた場合の1との差分をそれぞれrO、gO、cO、bOとすると、差分rO、gO、cO、bOはそれぞれrO=rD−1、gO=gD−1、cO=cD−1、bO=bD−1である。この差分を他の原色で表現するための他の3つの原色の係数は「数17」〜「数20」から、それぞれ次の「数21」〜「数24」のようになる。
【0084】
【数21】
【0085】
【数22】
【0086】
【数23】
【0087】
【数24】
【0088】
例えば、実施例1または実施例2で求めた原色の係数が、Rにおいて最大値である1を超えた場合、「数21」を用いて、Rの値の1との差分を他の3つの原色GCBに割り当てるための係数を求める。次に、求めたgOR、cOR、bORを各原色の係数に加えることで、最終的な4原色RGCBの係数(rD’、gD’、cD’、bD’)が求められる(数25)。
【0089】
【数25】
【0090】
同様に、G、C、Bの原色の係数が1を超えた場合の最終的な4原色RGCBの係数は、「数26」〜「数28」のようになる。
【0091】
【数26】
【0092】
【数27】
【0093】
【数28】
【0094】
<実施例4>
本実施例のディスプレイは4原色で1画素が構成されており、それぞれの原色をR、G、C、Bとする。それぞれのXYZ色度座標は、Rが(XR、YR、ZR)、Gが(XG、YG、ZG)、Cが(XC、YC、ZC)、Bが(XB、YB、ZB)とする。
【0095】
このディスプレイが表示できる色域は、それぞれの原色のベクトル(本発明の「基底ベクトル」に相当)の線型結合で表せる範囲である(図6)。
【0096】
今、任意の色D(XD、YD、ZD)を、4原色を用いて表示したいとする。
【0097】
4原色のうちの3原色を用いた組合せRGC(図6(B))、GCB(図6(C))、RCB(図6(D))、RGB(図6(E))及び、この組合せと他の1色の係数が最大値の1である場合の組合せRGC+B(図6(F))、GCB+R(図6(G))、RCB+G(図6(H))、RGB+C(図6(I))について、「数29」〜「数36」を用いて色Dを表す4原色RGCBの係数を求める。RGC+B(図6(F))、GCB+R(図6(G))、RCB+G(図6(H))、RGB+C(図6(I))の組み合わせについては、3つの信号から4つの信号を得ることになる。ただし、得ようとする4つの信号は固定値1である信号を一つ含んでいるため、それぞれの変換ステップで3つの入力
信号から演算によって得る必要がある3つの信号であり、実施例3と同様に容易に求めることができる。
【0098】
【数29】
【0099】
【数30】
【0100】
【数31】
【0101】
【数32】
【0102】
【数33】
【0103】
【数34】
【0104】
【数35】
【0105】
【数36】
【0106】
3つの原色の係数全てが正の値であることが、色Dがその3色で表せるということを示しており、その組合せを選択する。「数33」から「数36」では左辺にはそれぞれ3つの値しか示されていない。しかしながら、解の組み合わせはそれぞれ固定値1となる値を一つ含んでいるので、3つの入力信号が、3つの変数である3つの信号と、1つの固定値である一つの信号からなる4つの色の強度を示す信号に変換されていることになる。
【0107】
ここで、例えば、色Dが3つの原色RGBの組合せと、原色Bの係数が1でかつ3つの原色RGCの組合せで表される6面体内にある場合、「数32」及び「数33」の係数の値が全て正となる。これらの組合せを選択し、原色の係数値を加重平均することで、目的の色Dを表示するための4原色RGCBの係数rD、gD、cD、bDが得られる(数37)。
【0108】
【数37】
【0109】
色Dが他の領域にある場合は、3つの原色の係数全てが正となる組合せを2つ選択し、それぞれの原色の係数を加重平均すればよい。
【0110】
本実施例によれば、3つの原色の組合せ2つを用いてRGCBの4原色を求めるため、可能な限り4原色全てを点灯することができる。
【0111】
<実施例5>
図1は実施例1、3の処理プログラムをハードウエアで実現した場合の例である。図面において、1乃至4は3原色の入力信号を、4原色の合成で得られる混色Aと4原色のうちの2原色の信号に変換する変換器、5乃至8は変換器1乃至4の出力が全て正であるか否かを判定する判定器、9は判定器5乃至8の判定結果から出力が全て正である組合せを選択して出力する選択器、10は混色Aの信号を4原色信号に変換する分配器、11は選択器から出力された2つの原色信号と分配器10から出力された4つの原色信号をそれぞれ加算する合成器、12は合成器11の出力結果に1以上の値が含まれたときに最大値が1となるように処理を行う超過処理器である。
【0112】
本実施例は、合成器11までの処理は実施例1に準じ、超過処理器12の処理は実施例3に準ずる。
【0113】
まず、XYZの信号が、それぞれ変換器1乃至4に入力される。変換器1乃至4では、実施例1の「数6」〜「数9」の計算を行い、それぞれ2つの原色信号と混色の信号を出力する。変換器1乃至4の出力は、選択器9と判定器5乃至8に入力される。判定器は変
換器からの出力が全て正であるか否かを判定し、判定結果を選択器9に出力する。選択器9は判定器5乃至8の結果に基づいて、全ての値が正である組合せの結果を出力する。選択器9の出力のうち、4原色のうちの2原色の値は合成器11に入力され、混色Aの値は分配器10に入力される。分配器10は実施例1の「数10」の計算を行い、結果を合成器11に出力する。合成器11は実施例1の「数11」の計算を行い、超過処理器12へ出力する。超過処理器12は、合成器11の出力値に最大値を超えるものがあれば実施例3の処理を行い、4原色の信号を出力する。最大値を超えるものがない場合は、合成器11の出力値をそのまま出力する。
【0114】
<実施例6>
図2は本発明をハードウエアで実現した場合の別の例である。図面において、13乃至16は3原色の入力信号を4原色のうちの3つの原色の値に変換する変換器、17乃至20は変換器13乃至16の出力が全て正であるか否かを判定し、全てが正であれば変換器の出力値を出力する判定器、21は判定器の出力結果を加重平均する合成器、22は合成器の出力結果に最大値以上の値が含まれたときに最大値が1となるように処理を行う超過処理器である。
【0115】
本実施例は合成器21までの処理は実施例2に準じ、超過処理器22の処理は実施例3に準ずる。
【0116】
まず、XYZの信号が、それぞれ変換器13乃至16に入力される。変換器13乃至16では、実施例2の「数12」〜「数15」の計算を行い、3つの原色信号を出力する。変換器13乃至16の出力はそれぞれ判定器17乃至20に入力される。判定器は、変換器の出力結果が全て正であるか否かを判定し、全てが正である場合変換器の出力結果をそのまま出力し、一つでも負の値が含まれたときには結果を出力しない。合成器21は判定器17乃至20からの出力結果を実施例2の「数16」を用いて合成して出力する。超過処理器22は合成器21の出力値に最大値を超えるものがあれば実施例3の処理を行い、4原色の信号を出力する。最大値を超えるものがない場合は、合成器21の出力値をそのまま出力する。
【0117】
<実施例7>
図3は本発明をハードウエアで実現した場合の別の例である。図面において、23乃至30は3原色の入力信号を4原色のうちの3つの原色の値に変換する変換器、31乃至38は変換器23乃至30の出力が全て正であるか否かを判定し、全てが正であれば変換器の出力値を出力する判定器、39は判定器の出力結果を加重平均する合成器である。
【0118】
本実施例の動作は、実施例4に準ずる。
【0119】
まず、XYZの信号が、それぞれ変換器23乃至30に入力される。変換器23乃至30では、実施例4の「数29」〜「数36」の計算を行い、3つの原色信号を出力する。変換器23乃至30の出力はそれぞれ判定器31乃至38に入力される。判定器は、変換器の出力結果が全て正であるか否かを判定し、全てが正である場合変換器の出力結果をそのまま出力し、一つでも負の値が含まれたときには結果を出力しない。合成器39は判定器31乃至38からの出力結果を実施例4の「数37」を用いて合成して出力する。
【0120】
なお、実施例1乃至7では、表色系としてCIE1931表色系を用いているが、他の表色系を用いることも可能である。
【0121】
また、実施例5乃至7では、入力する色信号にXYZを用いているが、RGBなど3つの信号で色を指定する他の表色系の色信号も用いることができる。例えばRGB信号を直
接変換することも、RGB信号をXYZ信号に変換してから上の各実施例の変換を行うことも可能である。
【0122】
また、実施例5乃至7ではハードウエア構成の例を示しているが、本発明を実施できればハードウエア構成は上記実施例に限定するものではない。
【0123】
また、L*a*b*空間のような他の色空間を利用してもよい。
【0124】
また、ディスプレイのサブピクセルの色としては、赤のサブピクセルと青のサブピクセルと緑のサブピクセルとシアンのサブピクセルを用いる構成を好適に採用できるが、これに限るものではない。サブピクセルの色は、自発光型のディスプレイであれば発光体の材料を選択することで任意に選ぶことができる。また液晶ディスプレイのように光源が出力する光から特定の波長をフィルタで選択する構成のディスプレイであれば、フィルタの光学特性を設定することでサブピクセルの色を任意に設定することができる。例えば赤のサブピクセルを採用する場合、そのサブピクセルの赤の色度は、NTSCで規定する赤の色度と同一のものである必要はない。他のサブピクセルの色についても同様である。
【0125】
本実施例よれば、(1)4原色のうちの2原色と4原色を混色した混色1色との3つの色を用いて三刺激値を3色に変換し混色を4原色に変換する、あるいは(2)複数の3原色の組合せを加重平均することにより、色域の最外郭以外では4原色全てを点灯することが可能となるため画質を改善し、視覚的妨害感を防ぐことができる。また、割り算を用いない簡単な方法により処理速度を向上できる信号処理方法を実現できる。
【符号の説明】
【0126】
1〜4、13〜16、23〜30 変換器
5〜8、17〜20、31〜38 判定器
9 選択器
10 分配器
11、21、39 合成器
12、22 超過処理器
【技術分野】
【0001】
本発明は、一つの画素の色を指定する3つの信号から、一つの画素の色を混色によって表示するための、互いに異なる4つの色の強度を示す4つの信号を生成する信号処理方法、画像表示装置、テレビジョン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、テレビジョンやコンピュータディスプレイモニタなどのディスプレイは光の3原色を用いて画像を表示していた。すなわち、赤(R)、緑(G)、青(B)の各サブピクセルで画素を構成し、並置混色や加法混色の原理を用い、RGBの光の強度を変えることで様々な色を表示することができる。このディスプレイで再現できる色の範囲は、3原色RGBの色のベクトルの和で表される範囲である。
【0003】
図9は3原色のディスプレイで再現できる色範囲を三次元のベクトルで表したものである。図9では、例としてRGBの三次元上の位置を示す座標空間としてCIE1931表色系(XYZ表色系)を用い、Rが最大値のときの座標を(XR、YR、ZR)、Gが最大値のときの座標を(XG、YG、ZG)、Bが最大値のときの座標を(XB、YB、ZB)とする。この場合のディスプレイは、図9に示した6面体の内部の色を表示することができる。
【0004】
また、色度の観点に限れば、色再現範囲はXYZ表色系のxy色度座標(xy色度図)を用いることでも表現することができる。その場合の色再現範囲は図10の三角形で囲まれた領域となる。
【0005】
3原色のディスプレイにおいて、(XD、YD、ZD)の座標を持つ色Dは、3原色R、G、Bの係数をそれぞれr、g、b(各々0〜1の値が有効範囲)とすると「数1」のように表せる。
【0006】
【数1】
【0007】
「数1」を変形して行列計算で表すと「数2」のようになる。
【0008】
【数2】
【0009】
したがって、色Dを表示するための係数r、g、bは「数3」のように求まる。
【0010】
【数3】
【0011】
この3原色のディスプレイに対し、近年、4つ以上の原色を用いて色再現範囲を広くする試みがなされている。従来のディスプレイで表示できなかった色を再現でき、色再現性の向上や高臨場感を得ることができる。
【0012】
n原色(nは3以上の整数)のディスプレイの場合、各原色の値に対する表示色のXYZ座標(XD、YD、ZD)は「数4」のようになる。
【0013】
【数4】
【0014】
c1、c2、c3、…cnは各原色の係数、(Xc1、Yc1、Zc1)、(Xc2、Yc2、Zc2)、…(Xcn、Ycn、Zcn)は各原色のXYZ座標である。表示したいXYZ値から各原色の係数を求めるには、「数3」のように行列Mnの逆行列を計算
しなければならない。しかし、行列Mnは3×n行列であり、逆行列を直接求めることができない。
【0015】
特許文献1(特開平6−261332号公報)は、6原色を用いて従来のRGB3原色のテレビジョンで表示できなかった範囲の色を表示する方法を開示しているものである。特許文献1の第1の例では、伝送されてきた映像信号をRGB信号に変換した後xy色度座標に変換し、xy色度図上でどこに位置するかを求める。色を表示する場合は、あらかじめ6原色の中から互いに重ならない3原色の組合せを4つ選んでおく。色度図に図示すると図11のようになるが、表示したい色がこれら4つの三角形のどれに属しているかを判定し、その色が属する三角形の頂点をなす3原色を用いて表示する。
【0016】
また、特許文献2(特開2000−338950号公報)のように、4原色で表示できる三次元の色空間内において、表示したい色がどの領域にあるかを判定する手段を設けることで、入力された三刺激値をカラー画像信号に変換するシステムがある。4原色の場合、図10(A)のような立体内の色が再現可能となる。特許文献2では、表示したい色が図10(B)〜(E)のどの立体に含まれるかを判定し、その色を囲む6面体の頂点の座標を用いて「数2」と同様に計算して各原色の値を求める。どの立体に含まれるかの判定は、図12(B)〜(E)の全てについて「数2」を用いて各原色の係数を計算し、全ての係数が0〜1の範囲に入るかどうかを調べることで行っている。
【0017】
特許文献3(特開2004−152737号公報)には、三刺激値をカラー画像信号に変換する手法として、擬似逆行列を用いて3×4行列の逆変換を求める方法が例示されている。
【0018】
また、非特許文献1では、表示したい色と同じxy色度座標で、かつディスプレイで表示できる最大輝度となるように各原色の係数の比を計算し、表示したい輝度になるように
各係数に値を掛けるという方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開平6−261332号公報
【特許文献2】特開2000−338950号公報
【特許文献3】特開2004−152737号公報
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】「カラーフォーラムJAPAN’97論文集」、1997年、PP.13〜16
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
一般的な画像信号は3つの信号で画素の色を指定する。具体的にはRGB信号は、R信号、G信号、B信号によって一つの画素の色を特定する。またYCrCb信号は、Y信号とCr信号とCb信号によって一つの画素の色を特定する。YIQ信号、YUV信号も3つの信号によって一つの画素の色を特定する。また3刺激値として知られるXYZ信号もX信号、Y信号、Z信号の3つの信号によって一つの画素の色を特定する。一つの画素の色を指定する3つの信号の組を本願では画素信号と称する。一つの画素信号を構成する3つの信号は、互いにパラレルに、もしくはシリアルに入力される。3つの信号のそれぞれはアナログ信号もしくはデジタル信号の形態をとりうる。デジタル信号の場合は、2以上のビット数のデジタル信号を採用できる。2以上のビット数を持つ一つの信号の各ビットはシリアルもしくはパラレルに入力されうる。以下では一つの画素の色を指定するための3つの信号を3原色信号とも称する。なお本願でいう色とは、色度のみで決まるものではなく、明るさも属性として有する。すなわち、色度が同じ色であっても、明るさが異なる色は異なる色である。
【0022】
従来の3原色ディスプレイは一つの画素が3つの異なる色のサブピクセルによって構成されるため、入力された3原色信号から、3つのサブピクセルのそれぞれの信号レベルを決定すればよい。この場合、3つのサブピクセルの信号レベル(各サブピクセルの色の強度)は入力された3原色信号によってユニークに決めることができる。4つ以上の異なる色のサブピクセルで一つの画素を構成する場合、入力された3原色信号から4つ以上のサブピクセルの信号レベルを算出するにあたって、解がユニークに決まるとは限らない。本願発明者らは、異なる色に対応するサブピクセルを面内に配置して画素を構成することで画像を得るディスプレイにおいては、非点灯のサブピクセルの存在が、視覚的妨害感を引き起こすことがあることを見出した。そして1画素内でより多くのサブピクセルを点灯させることで視覚的妨害感を抑制できることを見出した。また、サブピクセルそれぞれはその点灯履歴に応じて特性が変化する。これはトータルの点灯時間が長いサブピクセルと、より点灯時間が短いサブピクセルとの間に特性の差(例えば同じ信号で駆動した場合の輝度の差)を生じさせる。本願発明者らは、より多くのサブピクセルを点灯させて入力信号が指定する色を表示することで、長期的には、サブピクセル間の特性の差がより生じにくくなることを見出した。各サブピクセルは、サブピクセルの色の強度を指定する信号によって駆動されるので、各色の強度を指定する信号が0になりにくい信号処理を行うことで、視覚妨害感を低減する、もしくは長期的な特性差を抑制する、という効果が得られる。本発明は、一つの画素の色を指定する4つの色の強度を指定する各信号が0になりにくい信号処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は上記目的を達成するため、信号処理方法は、
一つの画素の色を指定する3つの信号を入力するステップと、
入力された前記3つの信号から、一つの画素の色を混色によって表示するための、互いに異なる4つの色の強度を示す4つの信号を生成するステップと、を有しており、前記生成するステップは、
入力された前記3つの信号を、
前記4つの色のうちの2つの色の強度を示す2つの信号と、
前記4つの色を混色して得られる一つの混色の強度、もしくは該4つの色のうちの複数の色を混色して得られる一つの混色の強度を示す信号と、
に変換する第1の変換ステップと、
前記混色の強度を示す前記信号を、
前記2つの色と異なる他の2つの色を少なくとも含む複数の色の強度を示す複数の信号、
に変換する第2の変換ステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
一つの画素の色を指定する4つの色の強度を指定する各信号が0になりにくい信号処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のハードウエア構成の例である。
【図2】本発明のハードウエア構成の別の例である。
【図3】本発明のハードウエア構成の別の例である。
【図4】実施例1のxy色度座標を表したxy色度図である。
【図5】実施例2のxy色度座標を表したxy色度図である。
【図6】実施例4の色域を三次元ベクトルで示した図である。
【図7】実施例に係るデータ変換回路のブロック図である。
【図8】実施例に係るテレビジョン装置のブロック図である。
【図9】3原色のディスプレイの色域を三次元ベクトルで表した図である。
【図10】3原色のディスプレイの色域を表したxy色度図である。
【図11】特許文献1の第1の例の色域を表したxy色度図である。
【図12】特許文献2の色域を三次元ベクトルで表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に図面を参照して、この発明の最良な実施の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。なお、以下の実施形態の全図においては、同一または対応する部分には同一の符号を付す。
【0027】
(テレビジョン装置の実施の形態)
まず、図8を用いて本発明が適用可能なテレビジョン装置について説明する。図8は、本発明に係るテレビジョン装置のブロック図である。テレビジョン装置は、セットトップボックス(STB)501と、画像表示装置502と、を備える。
【0028】
セットトップボックス(STB)501は、受信回路503およびI/F部504を有する。受信回路503は、チューナーやデコーダ等からなり、衛星放送や地上波等のテレビ信号、ネットワークを介したデータ放送等を受信し、復号化した映像データをI/F部504に出力する。I/F部504は、映像データを画像表示装置502の表示フォーマットに変換して画像表示装置502に画像データを出力する。
【0029】
画像表示装置502は、表示パネル200、制御回路505、駆動回路506を有する。画像表示装置502に含まれる制御回路505は、入力した画像データに表示パネル200に適した補正処理等の画像処理を施すともに、駆動回路506に画像データ及び各種制御信号を出力する。制御回路505は、一例として図7におけるタイミング発生回路404が挙げられる。駆動回路506は、入力された画像データに基づいて、表示パネル200に駆動信号を出力し、表示パネル200上にはテレビ映像が表示されることとなる。駆動回路506は、一例として図7における変調回路402や走査回路403が挙げられる。表示パネル200は、以下の実施の形態では図7に示すようにマルチ電子源401を例に挙げる。マルチ電子源401として、例えば、FED、PDP、LCDディスプレイ、LED、ELディスプレイ等の種々の表示パネルを用いることができる。
【0030】
なお、受信回路503とI/F部504は、セットトップボックス(STB)501として画像表示装置502とは別の筐体に収められていてもよいし、また画像表示装置502と同一の筐体に収められていてもよい。
【0031】
図7に示すように、マルチ電子源401を駆動する駆動回路においては、変調回路402、走査回路403、タイミング発生回路404、データ変換回路405、マルチ電源回路406および走査電源回路407を有して構成されている。この駆動回路は、画像表示装置における画像表示部の一部を構成する。
【0032】
マルチ電子源401は表示素子として表面伝導型放出素子1001を有している。ここでは表示素子として表面伝導型放出素子を用いているが、表示素子としてはスピント型の電子放出素子や、エレクトロルミネッセンス素子など種々の素子を用いることができる。なお、表示素子として表面伝導型放出素子などの電子放出素子を用いる場合は、電子放出素子が放出する電子が蛍光体に照射されることで光が生じる。この光によって画像が表示される。光の明るさは電子放出素子からの所定時間内における電子の照射量で制御することができる。電子放出素子からの電子の照射量は電子放出素子に印加される電圧の大きさ、時間幅によって制御できる。従って、走査信号の電位と変調信号の電位との電位差や走査信号印加期間内の変調信号の印加時間を制御することで所望の照射量を得ることができる。この実施形態では一つの画素はここでは赤のサブピクセル、青のサブピクセル、緑のサブピクセル、シアンのサブピクセルによって構成される。またこの実施形態での一つのサブピクセルは、一つ乃至複数の電子放出素子と、該電子放出素子からの電子が照射されることで、赤、緑、青、シアンのいずれかの色で発光する発光体で構成される。
【0033】
マルチ電子源401は複数の表示素子をマトリックス駆動できるように接続する複数の走査配線1002と複数の変調配線1003を有している。この走査配線1002に前記走査信号が印加され、変調配線1003に変調信号が印加される。
【0034】
変調回路402は入力された変調データに応じて変調信号を発生させる回路である。変調回路402は、データ変換回路405から入力された変調データに基づいて変調した変調信号を、複数の電子源にそれぞれ接続する列方向配線に与える、変調手段として機能する。
【0035】
走査回路403は、マルチ電子源401の行方向配線に接続されており、変調回路402の出力によって駆動されるべき表示素子が接続される走査配線に選択信号(走査信号)を供給する回路である。一般的には、一行ずつ順次行選択する線順次走査が行われるが、これに限定されるものではなく、飛び越し走査や複数行を選択したり面状に選択したりすることも可能である。すなわち、走査回路403は、マルチ電子源401に含まれる複数電子源のうち駆動対象となる複数の電子源が接続される行方向配線に対して所定時間に選択電位を与え、それ以外の時間に非選択電位を与えて、行選択をする選択手段として機能
する。
【0036】
タイミング発生回路404は、変調回路402、走査回路403およびデータ変換回路405のタイミング信号を発生する回路である。
【0037】
データ変換回路405は、入力された3原色信号を4原色信号に変換する回路である。4原色信号とは、一つの画素の色を混色によって表示するための、4つの異なる色の強度を指定する4つの信号の組である。これら4つの信号によって4つの異なる色のサブピクセルの駆動状態が指定される。本実施形態では、色の強度は、その色での発光の強度に相当する。発光の強度は、表示素子に印加する駆動波形の波高値の大きさや、駆動波形の持続時間によって制御することができる。また、データ変換回路405は、外部からマルチ電子源401に要求する明るさを示す階調データ(輝度データ)を変調回路402に適した駆動波形データフォーマットに変換するデータ変換を行う回路である。
【0038】
<実施例1>
本実施例を用いたディスプレイは互いに異なる4つの色(4つのサブピクセル)で1画素が構成されており、ここではそれぞれの色をR(赤)、G(緑)、C(シアン)、B(青)としている。ただし、サブピクセルの各色はこれらの組み合わせに限るものではない。以下ではサブピクセルの各色を原色と称する。それぞれの原色の最大点灯時のXYZ色度座標は、Rが(XR、YR、ZR)、Gが(XG、YG、ZG)、Cが(XC、YC、ZC)、Bが(XB、YB、ZB)とする。4原色を、混合比(k,l,m,n)で合成して得られる混色をA(XA、YA、ZA)とし、「数5」で定義する(本発明の「線型結合」に相当)。混色Aは、「数10」に示す式で、複数の原色に変換される。そのため、混色Aは、4原色のすべてを混色して得られる色であることが望ましい。すなわち、混合比は、0<k,l,m,n≦1であることが望ましい。
【0039】
混合比は、最良の見えになる値を予め求めて所定の混合比としてテーブルに設定してもよいし、入力された3原色信号の各成分の大きさに応じて混合比を動的に変更できるように複数の係数の組合せをテーブルに設定するようにしてもよい。また、混合比は、各画素の輝度差が少なくなるように設定するのが好ましい。
【0040】
【数5】
【0041】
図4は、本実施例の4原色RGCB及び混色Aをxy色度図で表したものである。図4において、四角形RGCBで囲まれた領域がディスプレイの色域である。この場合、混色Aのxy色度座標はディスプレイの色域内にある。
【0042】
今、入力された3原色信号の示す任意の色D(XD、YD、ZD)を4原色で表される4原色信号の示す色D(4原色RGCB)に変換したいとする。
【0043】
まず、4原色のうちの2つの原色と混色Aの4つの組合せ(RGA、GCA、CBA、RBA)の各々について、行列計算を行い、3色で色Dを表すための2つの原色の係数と混色Aの係数とを得る(数6〜数9)。この2つの原色と混色の係数をえるステップが本願発明の第1の変換ステップに相当する。混色Aの係数は4つの組合せの全てにおいて求
められる。
【0044】
【数6】
【0045】
【数7】
【0046】
【数8】
【0047】
【数9】
【0048】
ここで、係数r11、g11、a11は、それぞれ2つの原色RGと混色Aの係数である。具体的にはr11は、赤の強度を示す信号であり、g11は緑の強度を示す信号であり、a11は4つの原色を混ぜた混色の強度を示す信号である。図4において、色Dは領域RGAに含まれている。係数g12、c12、a12はそれぞれ2つの原色GCと混色Aの係数であり、係数c13、b13、a13はそれぞれ2つの原色CBと混色Aの係数であり、係数r14、b14、a14はそれぞれ2つの原色RBと混色Aの係数である。各原色の係数の値が0のときその原色は消灯し、1のとき最大の発光強度を表す。ここでは各係数の値は0から1の範囲の値を取るものとしているが、実際にはデジタル信号で処理するのが好適である。例えば、8ビット以上のビット数のデジタル信号、すなわち、2進数では0から255以上の範囲の値を取る信号として処理するのが好適である。
【0049】
表示したい色Dが図4に図示したxy位置(xy色度図上で三角形RGAの内側)にあるとする。この場合、2つの原色RGと混色Aにて色Dを表す「数6」の係数r11、g11、a11が全て正となる。他の組合せではいずれかの係数の値が負になる。2つの原色の係数と混色Aの係数の全てが正の値であることが、色Dがその3色で表せるということを示しており、その組合せを選択する。
【0050】
混色Aは「数5」のように4原色RGCBで表される。すなわち、正の係数a11で混色Aを表示するための4原色RGCBの係数rA、gA、cA、bAは「数10」のようになる。「数10」において、混色は混合比に従って4原色(該混色を構成する4つの色の強度を示す信号)に変換される。この変換が本願発明の第2の変換ステップに相当する
。この第2の変換ステップによって得られた4つの色の強度を示す信号のうち、色Cと色Bの強度を示す信号は第1の変換ステップでは求めていないので、第1の変換ステップで求めた信号と合成する必要はない。従って、第2の変換ステップで得られた信号をそのまま後段に出力することができる。しかしながら、第2の変換ステップで得られた4つの信号のうち、色Rと色Gについては第1の変換ステップでも有意な信号が得られているので、第1の変換ステップで得られた信号と第2の変換ステップで得られた信号とを合成する。この合成は加算によって簡便に実現することができる。ただし、単純な加算に限るものではない。例えば、4つの信号に所定の演算をさらに行う構成においては、前記加算する対象の信号については、先に前記所定の演算を行ったうえで、加算してもよい。
【0051】
以上によって、目的の色Dを表示するための4原色RGCBの係数rD、gD、cD、bDを求めることができる(数11)。ここで、「数10」におけるrA及びgAの係数k、lがゼロであっても「数11」に示される4原色RGCBの係数rD、gD、cD、bDを求めることができる。言い換えると、混色は、4原色のうちの少なくとも2つの原色を混色して得られる色でもよい。例えば、混色Aとして、図4の色度図上の、色Cと色Bを結ぶ直線上の色を採用すれば、混色Aは色Cと色Bのみに分解できる。従って、合成のステップを何ら行うことなく、第1の変換ステップで得られた色Rと色Gの信号、及び第2の変換ステップで得られた色Cと色Bの信号を、一つの画素の色を混色で表示するための4つの色の強度を示す4つの信号として用いることができる。
【0052】
なお、いずれかの係数がゼロである係数の組合せを選択する方法として、入力された3原色信号の成分の大きさを利用する方法がある。例えば、入力された3原色信号のいずれかの成分の大きさが所定値(例えば、最小値「0」から最大値「255」における所定値「192」)を超えたとき、所定値を超えた成分の係数がゼロである係数の組合せをテーブルから選択するようにしてもよい。
【0053】
【数10】
【0054】
【数11】
【0055】
色Dが他の領域にある場合、色Dを表示できる2つの原色係数と混色Aの係数とが正の値となる組合せを選択し、同様に計算することで4原色の係数を求めることができる。
【0056】
本実施例によれば、3原色信号を4原色で表される4原色信号に変換する際に、3原色を混色を含む3色に変換するため、係数の計算が簡単である。すなわち、入力する信号数と1回の変換ステップで得る信号数が同数であることで、容易に解が得られる。しかも、逆行列をメモリ等に予め記憶しておけば、「数6」〜「数10」に示す係数の計算は、加算と乗算を行うだけでよい。また、最外郭の色でない限り4原色の係数が正の値になる。その結果、4原色信号の4原色を示す各信号成分が正となるため、4つのサブピクセルのすべてを点灯できる。
【0057】
<実施例2>
本実施例のディスプレイが、R、G、C、Bの4原色で1画素が構成されている例について、以下、説明する。それぞれのXYZ色度座標は、Rが(XR、YR、ZR)、Gが(XG、YG、ZG)、Cが(XC、YC、ZC)、Bが(XB、YB、ZB)とする。
【0058】
ここで、XYZ色度座標(XD、YD、ZD)にある任意の色Dを、4原色を用いて表示する場合、4原色のうちの3つの原色の組合せ全て(RGC、GCB、RCB、RGB)について行列計算を行う。4つの組合せの各々について、3原色で色Dを表すための3つの係数を得る(数12乃至数15)。これにより、異なる3つの原色の係数の組合せが4つ得られる。
【0059】
【数12】
【0060】
【数13】
【0061】
【数14】
【0062】
【数15】
【0063】
ここで、係数r21、g21、c21は、それぞれ3つの原色RGCの係数である。係数r24、g24、b24は、それぞれ3つの原色RGBの係数である。図5において、色Dは領域RGC及び領域RGBに含まれている。係数g22、c22、b22及び係数r23、c23、b23はそれぞれ3つの原色RGC及び3つの原色RCBの係数である。各原色の係数の値が「0」のときその原色は消灯し、1のとき最大の発光強度を表す。
【0064】
表示したい色Dが図5に図示したxy位置にある場合、色Dのxy色度座標は、色度図上で領域RGC及び領域RGBの内側に位置する。即ち、3つの原色RGCにて色Dを表す「数12」の係数r21、g21、c21の各々が正の値となり、3つの原色RGBにて色Dを表す「数15」の係数r24、g24、b24の各々が正の値となる。他の組合せではいずれかの係数の値が負になる。3つの原色全てが正の値であることが、色Dをその3色で表せるということを示しており、その組合せを選択する。
【0065】
即ち、同じ色Dを表すための4つの組合せ(数12乃至数15)から、色Dを表す係数の全てが正の値である2つの組合せを選択する。
【0066】
目的の色Dを表示するための4原色RGCBの係数rD、gD、cD、bDは、選択した2つの組合せの3つの原色RGC及び3つの原色RGBのそれぞれの原色の係数の値を加重平均(合成)することで得られる(数16)。
【0067】
即ち、選択された2つの組合せに関する6つの係数を使用して「数16」に示すように加重平均することにより、選択された2つの組合せのそれぞれの色度が大きくかわることなく合成できる。結果として、変換の前後に色度が大きくかわることがなく、入力された3原色信号を4原色信号に変換できる。言い換えると、同じ色Dを表す2つの組合せのそれぞれの3原色信号を色度を維持して合成できる。
【0068】
【数16】
【0069】
また、色Dが他の領域にある場合は、3つの原色の全てが正の値となる組合せを2つ選択し、それぞれの原色の係数を加重平均すればよい。加重平均の他、色度を維持して合成(所定の合成処理)するために、相加平均、重み付け相加平均、相乗平均、または重み付け相乗平均を利用してもよい。
【0070】
本実施例における“色度を維持する”ための範囲とは、人が視覚的に色が変化したと認識しない範囲であり、具体的には、“色度を維持する”ための範囲を、xy色度から計算されるu’v’色度の色差で定義すると、「Δu’v’<=0.015」の範囲(実質的に色度を維持する範囲)であるのが好ましい。
【0071】
u’、v’の求め方は、XYZ三刺激値から
u’=4X/(X+15Y+3Z)
v’=9Y/(X+15Y+3Z)
または、xy色度座標から
u’=4x/(−2x+12y+3)
v’=9y/(−2x+12y+3)
となる。
【0072】
ここで、
先の2つの組み合わせのうちの一方で得られた3つの信号によって画素の表示を行った時の色度を(u’1,v’1)、
もう一方の組み合わせで得られた3つの信号によって画素の表示を行った時の色度を(u’2,v’2)とし、
合成した結果として得られた4つの信号で画素の表示を行った時の色度を(u’,v’)とすると、
Δu’v’={(u’−u’1)2+(v’−v’1)2}(1/2)
及び、
Δu’v’={(u’−u’2)2+(v’−v’2)2}(1/2)
となる。
【0073】
これらがいずれも0.015以下になればよい。
【0074】
具体的には、「数16」において、s=t=1/2とすることでこの要件は容易に達成することができる。
【0075】
本実施例によれば、3原色信号を4原色で表される4原色信号に変換する際に、3原色信号の3原色を4原色のうちの3つの原色に変換するため、係数の計算が簡単である。しかも、逆行列をメモリ等に予め記憶しておけば、「数12」〜「数15」に示す係数の計算は、加算と乗算を行うだけでよい。また、3つの原色の組合せ2つについての6つの正の係数を合成することにより4原色RGCBの係数を求めることができる。これにより、最外郭の色でない限り4原色の係数が正の値になる。その結果、4原色信号の4原色を示す各信号成分が正となるため、一つの画素(ピクセル)を構成する4つのサブピクセルのすべてを点灯できる。
【0076】
<実施例3>
実施例1及び実施例2では、混色Aの値や色Dの値によっては、4原色RGCBのいずれかの係数が1を超える場合がある。その場合、1を超えた係数の値の1との差分を求めて、差分を他の原色で表すことにより、全ての原色の係数が0から1の値をとるようにすることができる。例えば、原色Rの係数の値が「1.1」であったとき、1との差分「0.1」を他の3つの原色GCBの係数に置換する。
【0077】
まず、各々の原色を他の3つの原色で表した場合の原色の係数をあらかじめ求めておく。「数17」はRをGCBで表す場合、「数18」はGをRCBで表す場合、「数19」はCをRGBで表す場合、「数20」はBをRGCで表す場合の数式を示す。
【0078】
【数17】
【0079】
【数18】
【0080】
【数19】
【0081】
【数20】
【0082】
ここで、係数(gR、cR、bR)、係数(rG、cG、bG)、係数(rC、gC、bC)、係数(rB、gB、cB)はそれぞれ、原色R、原色G、原色C、原色Bを他の3つの原色で表したときの係数である。XR、YR、ZR、XG、YG、ZG、XC、YC、ZC、XB、YB、ZBは、固定値であるため、「数17」〜「数20」の右辺も固定値となる。
【0083】
例えば、「数11」又は「数16」に示す各原色RGCBの係数rD、gD、cD、bDの値が最大値1を超えた場合の1との差分をそれぞれrO、gO、cO、bOとすると、差分rO、gO、cO、bOはそれぞれrO=rD−1、gO=gD−1、cO=cD−1、bO=bD−1である。この差分を他の原色で表現するための他の3つの原色の係数は「数17」〜「数20」から、それぞれ次の「数21」〜「数24」のようになる。
【0084】
【数21】
【0085】
【数22】
【0086】
【数23】
【0087】
【数24】
【0088】
例えば、実施例1または実施例2で求めた原色の係数が、Rにおいて最大値である1を超えた場合、「数21」を用いて、Rの値の1との差分を他の3つの原色GCBに割り当てるための係数を求める。次に、求めたgOR、cOR、bORを各原色の係数に加えることで、最終的な4原色RGCBの係数(rD’、gD’、cD’、bD’)が求められる(数25)。
【0089】
【数25】
【0090】
同様に、G、C、Bの原色の係数が1を超えた場合の最終的な4原色RGCBの係数は、「数26」〜「数28」のようになる。
【0091】
【数26】
【0092】
【数27】
【0093】
【数28】
【0094】
<実施例4>
本実施例のディスプレイは4原色で1画素が構成されており、それぞれの原色をR、G、C、Bとする。それぞれのXYZ色度座標は、Rが(XR、YR、ZR)、Gが(XG、YG、ZG)、Cが(XC、YC、ZC)、Bが(XB、YB、ZB)とする。
【0095】
このディスプレイが表示できる色域は、それぞれの原色のベクトル(本発明の「基底ベクトル」に相当)の線型結合で表せる範囲である(図6)。
【0096】
今、任意の色D(XD、YD、ZD)を、4原色を用いて表示したいとする。
【0097】
4原色のうちの3原色を用いた組合せRGC(図6(B))、GCB(図6(C))、RCB(図6(D))、RGB(図6(E))及び、この組合せと他の1色の係数が最大値の1である場合の組合せRGC+B(図6(F))、GCB+R(図6(G))、RCB+G(図6(H))、RGB+C(図6(I))について、「数29」〜「数36」を用いて色Dを表す4原色RGCBの係数を求める。RGC+B(図6(F))、GCB+R(図6(G))、RCB+G(図6(H))、RGB+C(図6(I))の組み合わせについては、3つの信号から4つの信号を得ることになる。ただし、得ようとする4つの信号は固定値1である信号を一つ含んでいるため、それぞれの変換ステップで3つの入力
信号から演算によって得る必要がある3つの信号であり、実施例3と同様に容易に求めることができる。
【0098】
【数29】
【0099】
【数30】
【0100】
【数31】
【0101】
【数32】
【0102】
【数33】
【0103】
【数34】
【0104】
【数35】
【0105】
【数36】
【0106】
3つの原色の係数全てが正の値であることが、色Dがその3色で表せるということを示しており、その組合せを選択する。「数33」から「数36」では左辺にはそれぞれ3つの値しか示されていない。しかしながら、解の組み合わせはそれぞれ固定値1となる値を一つ含んでいるので、3つの入力信号が、3つの変数である3つの信号と、1つの固定値である一つの信号からなる4つの色の強度を示す信号に変換されていることになる。
【0107】
ここで、例えば、色Dが3つの原色RGBの組合せと、原色Bの係数が1でかつ3つの原色RGCの組合せで表される6面体内にある場合、「数32」及び「数33」の係数の値が全て正となる。これらの組合せを選択し、原色の係数値を加重平均することで、目的の色Dを表示するための4原色RGCBの係数rD、gD、cD、bDが得られる(数37)。
【0108】
【数37】
【0109】
色Dが他の領域にある場合は、3つの原色の係数全てが正となる組合せを2つ選択し、それぞれの原色の係数を加重平均すればよい。
【0110】
本実施例によれば、3つの原色の組合せ2つを用いてRGCBの4原色を求めるため、可能な限り4原色全てを点灯することができる。
【0111】
<実施例5>
図1は実施例1、3の処理プログラムをハードウエアで実現した場合の例である。図面において、1乃至4は3原色の入力信号を、4原色の合成で得られる混色Aと4原色のうちの2原色の信号に変換する変換器、5乃至8は変換器1乃至4の出力が全て正であるか否かを判定する判定器、9は判定器5乃至8の判定結果から出力が全て正である組合せを選択して出力する選択器、10は混色Aの信号を4原色信号に変換する分配器、11は選択器から出力された2つの原色信号と分配器10から出力された4つの原色信号をそれぞれ加算する合成器、12は合成器11の出力結果に1以上の値が含まれたときに最大値が1となるように処理を行う超過処理器である。
【0112】
本実施例は、合成器11までの処理は実施例1に準じ、超過処理器12の処理は実施例3に準ずる。
【0113】
まず、XYZの信号が、それぞれ変換器1乃至4に入力される。変換器1乃至4では、実施例1の「数6」〜「数9」の計算を行い、それぞれ2つの原色信号と混色の信号を出力する。変換器1乃至4の出力は、選択器9と判定器5乃至8に入力される。判定器は変
換器からの出力が全て正であるか否かを判定し、判定結果を選択器9に出力する。選択器9は判定器5乃至8の結果に基づいて、全ての値が正である組合せの結果を出力する。選択器9の出力のうち、4原色のうちの2原色の値は合成器11に入力され、混色Aの値は分配器10に入力される。分配器10は実施例1の「数10」の計算を行い、結果を合成器11に出力する。合成器11は実施例1の「数11」の計算を行い、超過処理器12へ出力する。超過処理器12は、合成器11の出力値に最大値を超えるものがあれば実施例3の処理を行い、4原色の信号を出力する。最大値を超えるものがない場合は、合成器11の出力値をそのまま出力する。
【0114】
<実施例6>
図2は本発明をハードウエアで実現した場合の別の例である。図面において、13乃至16は3原色の入力信号を4原色のうちの3つの原色の値に変換する変換器、17乃至20は変換器13乃至16の出力が全て正であるか否かを判定し、全てが正であれば変換器の出力値を出力する判定器、21は判定器の出力結果を加重平均する合成器、22は合成器の出力結果に最大値以上の値が含まれたときに最大値が1となるように処理を行う超過処理器である。
【0115】
本実施例は合成器21までの処理は実施例2に準じ、超過処理器22の処理は実施例3に準ずる。
【0116】
まず、XYZの信号が、それぞれ変換器13乃至16に入力される。変換器13乃至16では、実施例2の「数12」〜「数15」の計算を行い、3つの原色信号を出力する。変換器13乃至16の出力はそれぞれ判定器17乃至20に入力される。判定器は、変換器の出力結果が全て正であるか否かを判定し、全てが正である場合変換器の出力結果をそのまま出力し、一つでも負の値が含まれたときには結果を出力しない。合成器21は判定器17乃至20からの出力結果を実施例2の「数16」を用いて合成して出力する。超過処理器22は合成器21の出力値に最大値を超えるものがあれば実施例3の処理を行い、4原色の信号を出力する。最大値を超えるものがない場合は、合成器21の出力値をそのまま出力する。
【0117】
<実施例7>
図3は本発明をハードウエアで実現した場合の別の例である。図面において、23乃至30は3原色の入力信号を4原色のうちの3つの原色の値に変換する変換器、31乃至38は変換器23乃至30の出力が全て正であるか否かを判定し、全てが正であれば変換器の出力値を出力する判定器、39は判定器の出力結果を加重平均する合成器である。
【0118】
本実施例の動作は、実施例4に準ずる。
【0119】
まず、XYZの信号が、それぞれ変換器23乃至30に入力される。変換器23乃至30では、実施例4の「数29」〜「数36」の計算を行い、3つの原色信号を出力する。変換器23乃至30の出力はそれぞれ判定器31乃至38に入力される。判定器は、変換器の出力結果が全て正であるか否かを判定し、全てが正である場合変換器の出力結果をそのまま出力し、一つでも負の値が含まれたときには結果を出力しない。合成器39は判定器31乃至38からの出力結果を実施例4の「数37」を用いて合成して出力する。
【0120】
なお、実施例1乃至7では、表色系としてCIE1931表色系を用いているが、他の表色系を用いることも可能である。
【0121】
また、実施例5乃至7では、入力する色信号にXYZを用いているが、RGBなど3つの信号で色を指定する他の表色系の色信号も用いることができる。例えばRGB信号を直
接変換することも、RGB信号をXYZ信号に変換してから上の各実施例の変換を行うことも可能である。
【0122】
また、実施例5乃至7ではハードウエア構成の例を示しているが、本発明を実施できればハードウエア構成は上記実施例に限定するものではない。
【0123】
また、L*a*b*空間のような他の色空間を利用してもよい。
【0124】
また、ディスプレイのサブピクセルの色としては、赤のサブピクセルと青のサブピクセルと緑のサブピクセルとシアンのサブピクセルを用いる構成を好適に採用できるが、これに限るものではない。サブピクセルの色は、自発光型のディスプレイであれば発光体の材料を選択することで任意に選ぶことができる。また液晶ディスプレイのように光源が出力する光から特定の波長をフィルタで選択する構成のディスプレイであれば、フィルタの光学特性を設定することでサブピクセルの色を任意に設定することができる。例えば赤のサブピクセルを採用する場合、そのサブピクセルの赤の色度は、NTSCで規定する赤の色度と同一のものである必要はない。他のサブピクセルの色についても同様である。
【0125】
本実施例よれば、(1)4原色のうちの2原色と4原色を混色した混色1色との3つの色を用いて三刺激値を3色に変換し混色を4原色に変換する、あるいは(2)複数の3原色の組合せを加重平均することにより、色域の最外郭以外では4原色全てを点灯することが可能となるため画質を改善し、視覚的妨害感を防ぐことができる。また、割り算を用いない簡単な方法により処理速度を向上できる信号処理方法を実現できる。
【符号の説明】
【0126】
1〜4、13〜16、23〜30 変換器
5〜8、17〜20、31〜38 判定器
9 選択器
10 分配器
11、21、39 合成器
12、22 超過処理器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つの画素の色を指定する3つの信号を入力するステップと、
入力された前記3つの信号から、一つの画素の色を混色によって表示するための、互いに異なる4つの色の強度を示す4つの信号を生成するステップと、を有しており、前記生成するステップは、
入力された前記3つの信号を、
前記4つの色のうちの2つの色の強度を示す2つの信号と、
前記4つの色を混色して得られる一つの混色の強度、もしくは該4つの色のうちの複数の色を混色して得られる一つの混色の強度を示す信号と、
に変換する第1の変換ステップと、
前記混色の強度を示す前記信号を、
前記2つの色と異なる他の2つの色を少なくとも含む複数の色の強度を示す複数の信号、
に変換する第2の変換ステップと、を有する信号処理方法。
【請求項2】
前記混色は、少なくとも前記他の2つの色を混色して得られる色である請求項1記載の信号処理方法。
【請求項3】
前記混色は、前記4つの色、もしくは該4つの色のうちの複数の色を所定の混合比で混色して得られた色であり、
前記第2の変換ステップでは、前記混合比にしたがって、前記混色の強度を示す信号が前記4つの色もしくは前記複数の色の強度を示す信号に変換される請求項1または請求項2に記載の信号処理方法。
【請求項4】
前記混色は、前記2つの色のうちの少なくともいずれか一方と、前記他の2つの色とを混色して得られる色であり、
さらに、
前記第2の変換ステップで得られた前記複数の信号のうちの、前記2つの色のうちの一方の色の強度を示す信号と、
前記第1の変換ステップで得られた該一方の色の強度を示す信号と、
を合成するステップを有する請求項1〜3のいずれかに記載の信号処理方法。
【請求項5】
前記第1の変換ステップを、前記2つの色の組み合わせを異ならせてそれぞれ行い、それぞれで得られた前記2つの色の強度を示す信号と前記混色の強度を示す信号との値が全て正になった第1の変換ステップの結果に基づいて前記第2の変換ステップを行う請求項1〜4のいずれかに記載の信号処理方法。
【請求項6】
一つの画素の色を指定する3つの信号を入力するステップと、
入力された前記3つの信号から、一つの画素の色を混色によって表示するための、互いに異なる4つの色の強度を示す4つの信号を生成するステップと、を有しており、前記生成するステップは、
入力された前記3つの信号を、前記4つの色のうちの3つの色の強度を示す3つの信号に変換する第1の変換ステップと、
入力された前記3つの信号を、前記3つの色の組み合わせとは異なる組み合わせの3つの色の強度を示す3つの信号に変換する第2の変換ステップと、
前記第1の変換ステップで得られる3つの信号及び前記第2の変換ステップで得られる3つの信号のうち、同じ色の強度を示す信号を合成する合成ステップと、を有する信号処理方法。
【請求項7】
前記合成ステップでは、前記第1の変換ステップによって得られた3つの信号を用いて表示を行った画素のu’v’色度を(u’1、v’1)とし、前記第2の変換ステップによって得られた3つの信号を用いて表示を行った画素のu’v’色度を(u’2、v’2)とし、合成した結果得られた4つの信号を用いて表示を行った画素のu’v’色度を(u’、v’)とするとき、
{(u’−u’1)×2+(v’−v’1)×2}×(1/2)≦0.015
及び、
{(u’−u’2)×2+(v’−v’2)×2}×(1/2)≦0.015
を満たすように合成する請求項6記載の信号処理方法。
【請求項8】
一つの画素の色を指定する3つの信号を入力するステップと、
入力された前記3つの信号から、一つの画素の色を混色によって表示するための、互いに異なる4つの色の強度を示す4つの信号を生成するステップと、を有しており、
前記生成するステップは、
入力された前記3つの信号を、前記4つの色から3つの色を抜き出す4つの組合せ、及び、前記4つの色のうちいずれか1つの色の値を最大値に固定した4つの組合せからなる8つの組合せのうちの第1の組合せの3つもしくは4つの色の強度を示す3つもしくは4つの信号に変換する第1の変換ステップと、
入力された前記3つの信号を、前記8つの組合せのうちの前記第1の組合せとは異なる第2の組合せの3つもしくは4つの色の強度を示す3つもしくは4つの信号に変換する第2の変換ステップと、
前記第1の変換ステップで得られる前記第1の組合せの3つもしくは4つの信号と前記第2の変換ステップで得られる前記第2の組合せの3つもしくは4つの信号のうち、同じ色の強度を示す信号を合成する合成ステップと、を有する信号処理方法。
【請求項9】
前記合成ステップは、
生成した前記4つの信号のいずれかの値が設定した最大値を超える場合、前記値と前記最大値との差分を他の3つの色の強度を示す信号に置換する置換ステップを有する請求項4及び6〜8のいずれかに記載の信号処理方法。
【請求項10】
3次元色空間上の点を4つの基底ベクトルからなる4次元色空間上の点に変換する信号処理方法であって、
3次元色空間上の点を、前記4つの基底ベクトルの線形結合で表される第1のベクトルと、前記4つの基底ベクトルのうちの2つの基底ベクトルと、の線型結合で表すための係数値を算出する第1のステップと、
前記第1のステップで算出された第1のベクトルの係数値から前記4つの基底ベクトルの係数値を算出する第2のステップと、
前記第1のステップで得られる2つの基底ベクトルの係数値と前記第2のステップで得られる4つの基底ベクトルの係数値から、4つの基底ベクトルの線型結合で4次元色空間上の点を表すための係数値を算出するステップと、を有する信号処理方法。
【請求項11】
3次元色空間上の点を4つの基底ベクトルからなる4次元色空間上の点に変換する信号処理方法であって、
3次元色空間上の点を、4つの基底ベクトルのうちの3つの基底ベクトルの線型結合で表すための係数値を算出する第1のステップと、
3次元色空間上の点を、前記3つの基底ベクトルの組合せとは異なる組合せの3つの基底ベクトルの線型結合で表すための係数値を算出する第2のステップと、
前記第1のステップで算出された係数値と前記第2のステップで算出された係数値から4つの基底ベクトルの線型結合で4次元色空間上の点を表すための係数値を算出する第3のステップと、を有する信号処理方法。
【請求項12】
3次元色空間上の点を4つの基底ベクトルからなる4次元色空間上の点に変換する信号処理方法であって、
3次元色空間上の点を、4つの基底ベクトルから3つの基底ベクトルを抜き出す4つの組合せと、前記4つの基底ベクトルのうちいずれか1つの基底ベクトルの係数値を最大値に固定した4つの組合せとの8つの組合せから選択された一の組合せの3つの基底ベクトルの線型結合で表すための係数値を算出する第1のステップと、
3次元色空間上の点を、前記一の組合せとは異なる他の組合せの3つの基底ベクトルの線型結合で表すための係数値を算出する第2のステップと、
前記第1のステップで算出された係数値と前記第2のステップで算出された係数値から4つの基底ベクトルの線型結合で4次元色空間上の点を表すための係数値を算出する第3のステップと、を有する信号処理方法。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項の信号処理方法を用いて、入力される信号を前記4つの信号に変換するデータ変換回路と、前記4つの信号に基づき駆動信号を出力する駆動回路と、
該駆動回路から出力される駆動信号に従って画像を表示する表示素子とを有する画像表示装置。
【請求項14】
請求項13に記載の画像表示装置と、
テレビ信号を受信して該画像表示装置に画像データを供給する受信回路とを有するテレビジョン装置。
【請求項1】
一つの画素の色を指定する3つの信号を入力するステップと、
入力された前記3つの信号から、一つの画素の色を混色によって表示するための、互いに異なる4つの色の強度を示す4つの信号を生成するステップと、を有しており、前記生成するステップは、
入力された前記3つの信号を、
前記4つの色のうちの2つの色の強度を示す2つの信号と、
前記4つの色を混色して得られる一つの混色の強度、もしくは該4つの色のうちの複数の色を混色して得られる一つの混色の強度を示す信号と、
に変換する第1の変換ステップと、
前記混色の強度を示す前記信号を、
前記2つの色と異なる他の2つの色を少なくとも含む複数の色の強度を示す複数の信号、
に変換する第2の変換ステップと、を有する信号処理方法。
【請求項2】
前記混色は、少なくとも前記他の2つの色を混色して得られる色である請求項1記載の信号処理方法。
【請求項3】
前記混色は、前記4つの色、もしくは該4つの色のうちの複数の色を所定の混合比で混色して得られた色であり、
前記第2の変換ステップでは、前記混合比にしたがって、前記混色の強度を示す信号が前記4つの色もしくは前記複数の色の強度を示す信号に変換される請求項1または請求項2に記載の信号処理方法。
【請求項4】
前記混色は、前記2つの色のうちの少なくともいずれか一方と、前記他の2つの色とを混色して得られる色であり、
さらに、
前記第2の変換ステップで得られた前記複数の信号のうちの、前記2つの色のうちの一方の色の強度を示す信号と、
前記第1の変換ステップで得られた該一方の色の強度を示す信号と、
を合成するステップを有する請求項1〜3のいずれかに記載の信号処理方法。
【請求項5】
前記第1の変換ステップを、前記2つの色の組み合わせを異ならせてそれぞれ行い、それぞれで得られた前記2つの色の強度を示す信号と前記混色の強度を示す信号との値が全て正になった第1の変換ステップの結果に基づいて前記第2の変換ステップを行う請求項1〜4のいずれかに記載の信号処理方法。
【請求項6】
一つの画素の色を指定する3つの信号を入力するステップと、
入力された前記3つの信号から、一つの画素の色を混色によって表示するための、互いに異なる4つの色の強度を示す4つの信号を生成するステップと、を有しており、前記生成するステップは、
入力された前記3つの信号を、前記4つの色のうちの3つの色の強度を示す3つの信号に変換する第1の変換ステップと、
入力された前記3つの信号を、前記3つの色の組み合わせとは異なる組み合わせの3つの色の強度を示す3つの信号に変換する第2の変換ステップと、
前記第1の変換ステップで得られる3つの信号及び前記第2の変換ステップで得られる3つの信号のうち、同じ色の強度を示す信号を合成する合成ステップと、を有する信号処理方法。
【請求項7】
前記合成ステップでは、前記第1の変換ステップによって得られた3つの信号を用いて表示を行った画素のu’v’色度を(u’1、v’1)とし、前記第2の変換ステップによって得られた3つの信号を用いて表示を行った画素のu’v’色度を(u’2、v’2)とし、合成した結果得られた4つの信号を用いて表示を行った画素のu’v’色度を(u’、v’)とするとき、
{(u’−u’1)×2+(v’−v’1)×2}×(1/2)≦0.015
及び、
{(u’−u’2)×2+(v’−v’2)×2}×(1/2)≦0.015
を満たすように合成する請求項6記載の信号処理方法。
【請求項8】
一つの画素の色を指定する3つの信号を入力するステップと、
入力された前記3つの信号から、一つの画素の色を混色によって表示するための、互いに異なる4つの色の強度を示す4つの信号を生成するステップと、を有しており、
前記生成するステップは、
入力された前記3つの信号を、前記4つの色から3つの色を抜き出す4つの組合せ、及び、前記4つの色のうちいずれか1つの色の値を最大値に固定した4つの組合せからなる8つの組合せのうちの第1の組合せの3つもしくは4つの色の強度を示す3つもしくは4つの信号に変換する第1の変換ステップと、
入力された前記3つの信号を、前記8つの組合せのうちの前記第1の組合せとは異なる第2の組合せの3つもしくは4つの色の強度を示す3つもしくは4つの信号に変換する第2の変換ステップと、
前記第1の変換ステップで得られる前記第1の組合せの3つもしくは4つの信号と前記第2の変換ステップで得られる前記第2の組合せの3つもしくは4つの信号のうち、同じ色の強度を示す信号を合成する合成ステップと、を有する信号処理方法。
【請求項9】
前記合成ステップは、
生成した前記4つの信号のいずれかの値が設定した最大値を超える場合、前記値と前記最大値との差分を他の3つの色の強度を示す信号に置換する置換ステップを有する請求項4及び6〜8のいずれかに記載の信号処理方法。
【請求項10】
3次元色空間上の点を4つの基底ベクトルからなる4次元色空間上の点に変換する信号処理方法であって、
3次元色空間上の点を、前記4つの基底ベクトルの線形結合で表される第1のベクトルと、前記4つの基底ベクトルのうちの2つの基底ベクトルと、の線型結合で表すための係数値を算出する第1のステップと、
前記第1のステップで算出された第1のベクトルの係数値から前記4つの基底ベクトルの係数値を算出する第2のステップと、
前記第1のステップで得られる2つの基底ベクトルの係数値と前記第2のステップで得られる4つの基底ベクトルの係数値から、4つの基底ベクトルの線型結合で4次元色空間上の点を表すための係数値を算出するステップと、を有する信号処理方法。
【請求項11】
3次元色空間上の点を4つの基底ベクトルからなる4次元色空間上の点に変換する信号処理方法であって、
3次元色空間上の点を、4つの基底ベクトルのうちの3つの基底ベクトルの線型結合で表すための係数値を算出する第1のステップと、
3次元色空間上の点を、前記3つの基底ベクトルの組合せとは異なる組合せの3つの基底ベクトルの線型結合で表すための係数値を算出する第2のステップと、
前記第1のステップで算出された係数値と前記第2のステップで算出された係数値から4つの基底ベクトルの線型結合で4次元色空間上の点を表すための係数値を算出する第3のステップと、を有する信号処理方法。
【請求項12】
3次元色空間上の点を4つの基底ベクトルからなる4次元色空間上の点に変換する信号処理方法であって、
3次元色空間上の点を、4つの基底ベクトルから3つの基底ベクトルを抜き出す4つの組合せと、前記4つの基底ベクトルのうちいずれか1つの基底ベクトルの係数値を最大値に固定した4つの組合せとの8つの組合せから選択された一の組合せの3つの基底ベクトルの線型結合で表すための係数値を算出する第1のステップと、
3次元色空間上の点を、前記一の組合せとは異なる他の組合せの3つの基底ベクトルの線型結合で表すための係数値を算出する第2のステップと、
前記第1のステップで算出された係数値と前記第2のステップで算出された係数値から4つの基底ベクトルの線型結合で4次元色空間上の点を表すための係数値を算出する第3のステップと、を有する信号処理方法。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項の信号処理方法を用いて、入力される信号を前記4つの信号に変換するデータ変換回路と、前記4つの信号に基づき駆動信号を出力する駆動回路と、
該駆動回路から出力される駆動信号に従って画像を表示する表示素子とを有する画像表示装置。
【請求項14】
請求項13に記載の画像表示装置と、
テレビ信号を受信して該画像表示装置に画像データを供給する受信回路とを有するテレビジョン装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−124927(P2012−124927A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−13891(P2012−13891)
【出願日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【分割の表示】特願2006−221449(P2006−221449)の分割
【原出願日】平成18年8月15日(2006.8.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【分割の表示】特願2006−221449(P2006−221449)の分割
【原出願日】平成18年8月15日(2006.8.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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