説明

信号処理装置

【課題】温度変化によるゼロ点シフトをより小さくした信号処理装置を実現する。
【解決手段】物理量を検出器で測定信号として検出すると共にこの物理量に関連する温度を温度センサで温度信号として検出し前記測定信号に対してこの温度信号を用いて温度補償をして出力する信号処理装置において、前記物理量がゼロのときの信号に対して前記検出器が配置された場所における一定時間内の最大温度と最低温度における誤差信号を予め求め、この誤差信号をもとに前記温度補償して出力された信号を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理量を検出器で測定信号として検出すると共にこの物理量に関連する温度を温度センサで温度信号として検出し前記測定信号に対してこの温度信号を用いて温度補償をして出力する信号処理装置に係り、特に、検出器が設置された場所における温度変化による出力誤差の影響を改良した信号処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図4は従来の信号処理装置の構成を示すブロック図である。この場合の信号処理装置の例として2線式信号伝送器を示してある。10はプロセス変数などの物理量を電気信号に変換して伝送する2線式信号伝送器であり、直流電源11から負荷12を介して電力が供給される。直流電源11と負荷12は受信計器13に格納されている。
【0003】
電気信号は伝送線L1、L2により2線式信号伝送器10に電流信号ILとして伝送され、負荷12の両端に生じる電圧変化を検出して受信計器13はプロセス変数を知る。
【0004】
電流信号ILは、例えば配管中の圧力に対応したレンジに設定された2線式信号伝送器10により4〜20mAの統一電流に変換されて負荷側の受信計器13に伝送されると共にモニタ8に例えば4桁でデジタル表示される。
【0005】
以上の全体構成に対して、2線式信号伝送器10は次のように構成される。1は圧力/差圧などを検出して測定信号に変換する検出器であり、変換された測定信号はアナログ/デジタル変換器(A/D)2でデジタル信号に変換され、マイクロプロセッサ(μP)3を介してメモリ4の中のランダムアクセスメモリ部分に格納される。
【0006】
また、温度センサ5は、検出器1、或いは2線式信号伝送器10の内部の温度を検出して、温度信号としてアナログ/デジタル変換器2に出力し、ここでデジタル信号に変換してマイクロプロセッサ3を介してメモリ4の中のランダムアクセスメモリの所定部分に格納される。
【0007】
マイクロプロセッサ3は、これらの格納されたデジタル信号を用いてメモリ4の例えばリードオンリメモリ部分に書き込まれた演算手順によりリニアライズ、温度補償などの所定の演算を実行し、デジタル/アナログ変換器(D/A)6を介して出力回路7に出力される。
【0008】
一方、マイクロプロセッサ3での所定の演算結果は、内蔵のモニタ8に必要な桁数でデジタル表示される。出力回路7はデジタル/アナログ変換器6でアナログ信号に変換された電圧信号を4〜20mAの統一された電流信号ILに変換して伝送線L1、L2を介して受信計器13に伝送する。
【0009】
また、出力回路7は電流信号ILの一部を用いて2線式信号伝送器10の内部回路の電源を作る。この場合に、例えばモニタ8には電流信号ILに対応する値がデジタル表示される。
【0010】
IFC9はハンドヘルドターミナル(図示省略)とデータ通信をするためのインターフエイスであり、伝送線L1、L2とマイクロプロセッサ3との間に接続され、伝送線L1、L2からのデジタル信号を並列データとしてマイクロプロセッサ3に伝送し、逆にマイクロプロセッサ3からのデータを直列信号として伝送線L1、L2側に伝送する機能をもつ。
【0011】
なお、差圧/圧力検出器に温度補償を施した先行技術としては下記の特許文献が知られている。
【0012】
【特許文献1】特開平5−259632号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
以上のような2線式信号伝送器10は、検出器1の測定信号に対して温度補償が実行されている。即ち、差圧/圧力伝送器の温度補正は、製造工程内で差圧/圧力伝送器を恒温槽に入れて恒温槽の温度を変化させ、その際のデータを使用して誤差温度補正を実施している。
【0014】
しかしながら、差圧/圧力伝送器が使用されている環境は、製造工程内の温度補正時の温度環境とは大きく異なっている。よって、実際の使用環境で温度分布が発生した場合は、出力誤差が発生してしまうという問題があった。
従って本発明は、実際の使用環境での最大・最小温度ポイントで測定したゼロ点データを用いて補正を行うことにより、温度変化によるゼロ点シフトをより小さくした信号処理装置を実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は上記問題点を解決するためになされたもので、請求項1に記載の信号処理装置の発明においては、
物理量を検出器で測定信号として検出すると共にこの物理量に関連する温度を温度センサで温度信号として検出し前記測定信号に対してこの温度信号を用いて温度補償をして出力する信号処理装置において、前記物理量がゼロのときの信号に対して前記検出器が配置された場所における所定時間内の最大温度と最低温度における誤差信号を予め求め、この誤差信号をもとに前記温度補償して出力された信号を補正することを特徴とする。
【0016】
請求項2においては、請求項1に記載の信号処理装置の発明において、
前記所定時間内の最大温度と最低温度は物理量の測定が開始される前の24時間におけるデータであることを特徴とする。
【0017】
請求項3においては、請求項1または2に記載の信号処理装置の発明において、
前記物理量は差圧/圧力であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したことから明らかなように本発明の請求項1乃至3によれば、実際の使用環境での最大・最小温度ポイントで測定したゼロ点データを用いて補正を行うことにより、温度変化によるゼロ点シフトをより小さくした信号処理装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は本発明の実施形態の一例を示すブロック構成図である。なお、図4に示す従来の信号処理装置としての2線式信号伝送器と同一の機能を有する部分には同一の符号を付して適宜にその説明を省略する。本発明についても信号処理装置として2線式信号伝送器を例にとって説明する。
【0020】
2線式信号伝送器20は、検出器1、温度センサ5、アナログ/デジタル変換器(A/D)2、マイクロプロセッサ13、モニタ8、デジタル/アナログ変換器(D/A)6、出力回路7、インターフエイス回路(IFC)9などを有している点は、2線式信号伝送器10と同一であるが、メモリ21が追加されている。
【0021】
このメモリ21には、メモリ4とは異なった内容の演算プログラムが格納されている。これにより、マイクロプロセッサ(μP)13による演算が従来とは異なった演算内容となる。以下、これ等について図2に示すフローチャート図を用いて説明する。
【0022】
図2のステップ1において、使用箇所へ検出器を設置した後、電源をいれて処理が開始される。このとき入力圧はたとえば大気圧とされる。次にステップ2に移行する。ここで、温度センサ5からの温度信号Tおよび検出器1からの測定信号OUTは、A/D変換器2を介してデジタル信号に変換され、マイクロプロセッサ(μP)13の制御のもとに所定のタイミングでメモリ21の所定領域に格納される。
【0023】
メモリ21には最大温度を記憶する領域T1、最小温度を記憶する領域T2、最大温度のときの検出器1の測定信号OUTを記憶する領域O1及び最小温度のときの測定信号OUTを記憶する領域O2が設けられている。
ステップ3においては、最大温度を記憶する領域T1及び最小温度を記憶する領域T2に同じ温度が記憶され、測定信号OUTを記憶する領域O1及び最小温度のときの測定信号OUTを記憶する領域O2にも同じ測定値が記憶される。
【0024】
次に所定時間(例えば1秒)経過後ステップ4に移行し、温度センサ5からの信号実測値Tと検出器1からの実測値OUTを読み取る。
次にステップ5に移行し、ステップ4で読み取った温度Tがステップ3で記憶された最大温度値より大きいか否かが判断される。そして、ステップ4で読み取った温度Tがステップ3に記憶された最大温度値よりも大きければYESとなってステップ6に移行する。 そして、ステップ5で読み取った温度Tを最大温度を記憶する領域に記憶された温度T1のメモリに上書きする。同時にそのときの検出器1の測定値OUTをO1の記憶領域に書き込む。
【0025】
ステップ5において、ステップ4で読み取った温度Tがステップ3に記憶された最小温度値よりも小さいか同じの場合はNOとなってステップ7に移行する。そして、ステップ5で読み取った温度Tを最小温度T2のメモリに上書きし、同時にそのときの検出器1の測定値OUTをO2の記憶領域に書き込む。
【0026】
更に所定時間経過後、再度、温度信号Tおよび検出器1の測定信号OUTを読み込み、ステップ4〜8の動作を行う。
ステップ4〜8の動作を繰返しを行い、ステップ9において一定時間(24時間)経過したか否かを判断する。一定時間(24時間)経過した後ステップ10に移行し、補正係数α及びc算出のための測定は終了となる。
その結果、メモリ21には24時間にわたる最大最小温度(T1,T2)とその温度に対応した検出器1の出力が記憶される。
【0027】
その後、記憶された数値がμP13に送られ、
補正係数α=(OUT1−OUT2)/(T1−T2)
補正係数c=OUT1−(OUT1−OUT2)/(T1−T2)×T1
の算出を行う。
算出された補正係数αおよびcは、μP13の所定のメモリ領域に記録される。
【0028】
次に信号処理装置は測定モードに移行し、上記補正係数を用いてμP13は下式に基づいて差圧/圧力出力の補正を行う。
補正された出力=補正前出力−(αT+c)
【0029】
図3はゼロ点ずれ量(縦軸)と温度(横軸)の関係を示す説明図である。
図3によれば、最大温度T1のときにゼロ点がプラス側にずれ、最小温度T2のときにゼロ点がマイナス側にずれている。このずれ量は0点シフト補正係数(αT+c)を用いて補正される。即ち、実際の使用環境での最大・最小温度ポイントで測定したゼロ点データを用いて補正を行うことにより、ゼロ点シフトをより小さくすることができる。
【0030】
なお、以上の説明は、本発明の説明および例示を目的として特定の好適な実施例を示したに過ぎない。例えば実施例では補正係数算出のための一定時間を24時間としたが、24時間に限ることなく長くても短くてもよい。また、メモリ21はμP13内に格納されていてもよい。従って本発明は、上記実施例に限定されることなく、その本質から逸脱しない範囲で更に多くの変更、変形を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の信号処理装置の実施形態の一例を示すブロック構成図である。
【図2】図1に示す実施例を実行するための演算手順を示すフローチャート図である。
【図3】ゼロ点ずれ量(縦軸)と温度(横軸)の関係を示す説明図である。
【図4】従来の2線式信号伝送器の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0032】
1 検出器
2 アナログ/デジタル変換器(A/D)
3,13 マイクロプロセッサ(μP)
4,21 メモリ
5 温度センサ
6 デジタル/アナログ変換器(D/A)
7 出力回路
8 モニタ
9 IFC(インタフェース)
10,20 2線式信号伝送器
11 直流電源
12 負荷
13 受信計器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理量を検出器で測定信号として検出すると共にこの物理量に関連する温度を温度センサで温度信号として検出し前記測定信号に対してこの温度信号を用いて温度補償をして出力する信号処理装置において、前記物理量がゼロのときの信号に対して前記検出器が配置された場所における一定時間内の最大温度と最低温度における誤差信号を予め求め、この誤差信号をもとに前記温度補償して出力された信号を補正することを特徴とする信号処理装置。
【請求項2】
前記所定時間内の最大温度と最低温度は物理量の測定が開始される前の24時間におけるデータであることを特徴とする請求項1記載の信号処理装置。
【請求項3】
前記物理量は差圧/圧力であることを特徴とする請求項1記載の信号処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−96630(P2010−96630A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−267627(P2008−267627)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】