説明

信号増幅装置、アンプシステムおよび信号増幅方法

【課題】パワーアンプを用いる必要が無いときに、簡易にパワーアンプの消費電力を低減することができる信号増幅装置、アンプシステムおよび信号増幅方法を提供すること。
【解決手段】本発明のアンプシステム1は、パワーアンプ部4を用いる必要が無い場合には、パワーアンプ部4における消費電力を低減させることができる。また、パワーアンプ部4における消費電力の減少は、電圧制御部12によって電圧増幅段41への給電を遮断することにより実現されるものであり、電力増幅段42への電源部10からの給電状態は変化させていない。このように、大きな電流が流れない回路である電圧増幅段41の給電の制御だけでよく、また、別の用途にも用いられるリミッタ手段を用いた制御であるから、回路規模を大きくする必要が無く、省スペースでかつ簡易にパワーアンプ部4の消費電力を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーアンプの消費電力を低減する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
オーディオ信号を増幅するアンプシステムにおいては、出力レベルが小さい信号をプリアンプにおいて増幅し、所定のレベルまで増幅した信号をパワーアンプにおいて増幅することにより大出力を得るようになっている。通常、パワーアンプは、大出力を得るために必要なレベルへの信号の増幅を主として行うものであり、プリアンプは、オーディオ信号をパワーアンプに必要な入力レベルまで増幅するとともに、音場付加、トーンコントロール、ボリューム調整などを行うものである。
【0003】
一方、このようなアンプシステムを利用する利用者は、聴取する内容によっては、パワーアンプを用いた大出力を必要とせず、プリアンプからの出力を用いて別のスピーカから出力させるだけでも十分である場合もあるが、パワーアンプはその特性から消費電力が大きく、使用しないときにはパワーアンプの機能を停止させ消費電力を低減したいという要望がある。このようにパワーアンプの機能を停止させるために、パワーアンプに供給される電源をオフする技術がある(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2004−104649号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示された技術のように、パワーアンプに供給される電源をオフする場合には、その供給電力の大きさから、リレーの接点に大きな負荷がかかるため、信頼性が低いものとなってしまう。一方、トランスより上流側でリレーを用いて供給電力が大きくなる前の段階で制御しようとすると、プリアンプ、パワーアンプのそれぞれについて、トランスを用いる必要があり、非常に大きなスペースが必要となっていた。
【0005】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、パワーアンプを用いる必要が無いときに、簡易にパワーアンプの消費電力を低減することができる信号増幅装置、アンプシステムおよび信号増幅方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するため、本発明は、入力されるオーディオ信号を電圧増幅して出力するとともに、出力信号の最大振幅が給電電圧によって制限される電圧増幅手段と、前記電圧増幅手段によって電圧増幅されたオーディオ信号の電力を増幅して出力する電力増幅手段と、前記電圧増幅手段と前記電力増幅手段とに給電する電源と、電圧の大きさを示す電圧制御信号を生成する制御信号生成手段と、前記制御信号生成手段によって生成された電圧制御信号に基づいて電圧値を決定し、当該電圧制御信号が所定値を示す場合には、当該電圧値を前記電圧増幅手段が非駆動状態となる非駆動値として決定する電圧値決定手段と、前記電源から前記電圧増幅手段への給電電圧を降圧して、前記電圧値決定手段が決定した電圧値になるように制御する電圧制御手段とを具備することを特徴とする信号増幅装置を提供する。
【0007】
また、別の好ましい態様において、前記電力増幅手段によって電力を増幅されたオーディオ信号の出力レベルを検出する出力レベル検出手段と、待機状態か否かを示す待機信号を取得する待機信号取得手段とをさらに具備し、前記制御信号生成手段は、前記待機信号取得手段によって取得した待機信号が待機状態を示す場合には、前記所定値を示す電圧制御信号を生成し、それ以外の場合には、前記出力レベル検出手段によって検出した出力レベルに基づく値を示す電圧制御信号を生成してもよい。
【0008】
また、別の好ましい態様において、外部機器から通信によって待機信号を受信する受信手段をさらに具備し、前記待機信号取得手段は、前記受信手段が受信した待機信号を取得してもよい。
【0009】
また、別の好ましい態様において、前記制御信号生成手段によって生成された電圧制御信号が前記所定値を示す場合には、前記電源から前記電圧増幅手段への給電を遮断する遮断手段をさらに具備してもよい。
【0010】
また、本発明は、上記記載の信号増幅装置と、入力されるオーディオ信号を増幅して出力するプリアンプ部と、前記電力増幅部の出力されるオーディオ信号をスピーカが接続される端子に出力する第1出力部と、前記プリアンプ部から出力されるオーディオ信号を外部出力する第2出力部とを具備し、前記電圧増幅手段に入力されるオーディオ信号は、前記プリアンプ部から出力されたオーディオ信号であることを特徴とするアンプシステムを提供する。
【0011】
また、本発明は、上記記載の信号増幅装置と、オーディオ信号が入力される入力端子を複数有するオーディオ信号入力部と、前記制御信号生成手段によって生成された電圧制御信号が前記所定値を示す場合には、前記オーディオ信号入力部の入力端子のうち、予め設定された入力端子へ入力されたオーディオ信号を外部機器が接続される出力端子へ供給し、それ以外の場合には、前記オーディオ信号入力部の入力端子のいずれかに入力されるオーディオ信号を前記電圧増幅手段へ接続される経路に出力する出力選択部とを具備することを特徴とするアンプシステムを提供する。
【0012】
また、本発明は、入力されるオーディオ信号を電圧増幅して出力するとともに、出力信号の最大振幅が給電電圧によって制限される電圧増幅手段と、前記電圧増幅手段によって電圧増幅されたオーディオ信号の電力を増幅して出力する電力増幅手段と、前記電圧増幅手段と前記電力増幅手段とに給電する電源とを具備する信号増幅装置に用いられる方法であって、電圧の大きさを示す電圧制御信号を生成する制御信号生成過程と、前記制御信号生成過程によって生成された電圧制御信号に基づいて電圧値を決定し、当該電圧値を前記電圧増幅手段が非駆動状態となる非駆動値として決定する電圧値決定過程と、前記電源から前記電圧増幅手段への給電電圧を降圧して、前記電圧値決定過程において決定した電圧値になるように制御する電圧制御過程とを備えることを特徴とする信号増幅方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、パワーアンプを用いる必要が無いときに、簡易にパワーアンプの消費電力を低減することができる信号増幅装置、アンプシステムおよび信号増幅方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0015】
<実施形態>
本発明の実施形態に係るアンプシステム1は、入力されるオーディオ信号Sinに対して、音場付加、トーンコントロール、ボリューム調整などの音響処理を行うとともに、増幅処理を行ったオーディオ信号Spaを、アンプシステム1の出力端子に接続されたスピーカ2に供給し、オーディオ信号Sprをプリアンプ出力部17から出力する。スピーカ2は、入力されたオーディオ信号Spaを放音する放音手段である。以下、アンプシステム1の構成ついて図1を用いて説明する。図1は、スピーカ2が接続されたアンプシステム1の構成を示すブロック図である。
【0016】
プリアンプ部3は、入力されるオーディオ信号Sinに対して、音場付加、トーンコントロール、ボリューム調整などの音響処理を行うDSP(Digital Signal Processor)と、増幅処理を行う増幅回路とを有している。この増幅処理は、後述するパワーアンプ部4において必要な入力レベルを確保するために行われる。オーディオ信号Sinは、プリアンプ部3によって、音響処理、増幅処理が行われ、オーディオ信号Sprとして出力する。
【0017】
また、プリアンプ部3は、電源部10から電圧調整部11を介して給電される。電圧調整部11は、電源部10からの給電に係る電圧値Vaを、プリアンプ部3の各部に対して必要な電圧値に降圧して給電する。
【0018】
パワーアンプ部4は、電圧増幅段41と電力増幅段42を有する。電圧増幅段41は、電源部10から電圧制御部12を介して給電され、電力増幅段42は、電源部10から給電される。電圧制御部12は、電源部10からの給電に係る電圧値Vaを、後述する電圧値決定部16から指示される電圧値Vb(通常は、電圧値は0VからVaの間となる)になるように降圧して電圧増幅段41に給電するリミッタ制御手段となっている。
【0019】
ここで、電圧制御部12の構成について、図2を用いてその一例を説明する。電圧制御部12は、電源10からの給電に係る電圧値Vaについて、npnトランジスタ121およびpnpトランジスタ122によって電圧値を制御して、電圧増幅段41に供給する。基準電圧入力回路123は、電圧値決定部16から指示される電圧値Vbに応じた基準電圧を比較器125に出力する。負帰還回路124は、npnトランジスタ121のエミッタ側の出力、すなわち電圧増幅段41に対する+電圧印加の電圧値を比較器125に負帰還させて、電圧増幅段41へ印加される+電圧の電圧値に応じた電圧値を比較器125に入力するための回路である。比較器125は、基準電圧入力回路123から入力される電圧値と、負帰還回路124から入力される電圧値との比較に基づいて、双方の電圧値が一致するようにnpnトランジスタのベース電流を制御する。なお、本実施形態においては、npnトランジスタ121およびpnpトランジスタ122を用いる構成であったが、電圧制御部12を構成する回路に応じて、用いるトランジスタを変更することができる。
【0020】
トラッキング回路126は、npnトランジスタ121のエミッタ側の出力、すなわち電圧増幅段41に対する+電圧印加の電圧値を取得し、当該電圧値に基づいてトラッキング調整を行って、pnpトランジスタのベース電流を制御することにより、電圧増幅段41に対して印加される電圧値がVbになるように、電圧増幅段41に対して印加する電圧を制御する。
【0021】
具体的には、電源部10の+端子には電圧値「+Va/2」、−端子には電圧値「−Va/2」の電圧が印加されている場合には、電圧増幅段41の+端子には電圧値「+Vb/2」、−端子には電圧値「−Vb/2」が印加される。この場合には、基準電圧入力回路123は、例えば、電圧値決定部16からの指示値「Vb」を半分の電圧値である「+Vb/2」に変換して、比較器125に入力する。一方、負帰還回路124についても、電圧増幅段41に対する+電圧印加の電圧値「+Vb/2」をそのまま比較器125に入力する。そして、比較器125は、エミッタの出力電圧が基準電圧「+Vb/2」になるように、npnトランジスタのベース電流を制御する。トラッキング回路126は、pnpトランジスタ122のエミッタ側の出力電圧が、電圧増幅段41に対する+電圧印加の電圧値「+Vb/2」の正負を反転した「−Vb/2」になるように、ベース電流を制御する。このようにして、電圧制御部12は、電源部10からの給電に係る電圧値Vaを、電圧値決定部16から指示される電圧値Vbになるように降圧して給電する。
【0022】
図1の説明に戻る。電圧増幅段41は、プリアンプ部3から出力されたオーディオ信号Sprを電圧増幅して、電力増幅段42へ出力するとともに、この出力信号の最大振幅を電圧値Vbに応じて制限するリミッタ手段を有する増幅回路である。電圧増幅段41は、入出力のインピーダンスが高く、通常、数百ミリA程度と大きな電流が流れない回路となっている。
【0023】
電力増幅段42は、電圧増幅段41から出力されるオーディオ信号を電力増幅して、オーディオ信号Spaとしてスピーカ2が接続される出力端子に出力する増幅回路である。電力増幅段42は、入力のインピーダンスが高く、出力のインピーダンスが低い。そして、電力増幅段42は、入力されるオーディオ信号の電圧に応じた電流を消費し、入力されるオーディオ信号の電圧が大きい場合には、最大10A程度の大電流を消費する一方、入力されるオーディオ信号の電圧が小さくなれば、消費電流は小さくなる。このように、電圧増幅段41から出力される信号の最大振幅が大きい場合、すなわちVbがVaに近い場合には、アンプシステム1における消費電力の大部分は、電力増幅段42において消費されていることになる。
【0024】
さらに、入力されるオーディオ信号が無音の状態であっても、電圧増幅段41と電力増幅段42に流れるアイドリング電流が、数ミリAから数百ミリA程度存在するため、消費電力が大きい。特に、出力チャンネル数が多いAVレシーバなどのアンプシステムの場合には、パワーアンプ部4も多く必要となり、その結果、無音時であっても消費電力が大きくなる。例えば、1チャンネルあたり電圧増幅段41に10ミリA、電力増幅段42に50ミリA、電源電圧がそれぞれ±60Vである場合、1チャンネルあたり7.2Wの消費電力となり、10チャンネルある場合には、無音時であっても72Wもの消費電力となる。ここで、電圧増幅段41への給電電圧が電圧制御部12によって降圧されて、後述するように、非駆動状態となった場合には、電圧増幅段41のアイドリング電流がなくなり、パワーアンプ部4全体の消費電力が低減される。
【0025】
待機信号取得部13は、待機状態か否かを示す待機信号を取得し、待機状態の期間を示す待機期間信号を制御信号出力部15に出力する。待機状態の期間を示す待機期間信号は、例えば、「0」を待機状態、「1」をそれ以外の状態(以下、通常状態という)を示すようなステップ信号としたり、待機状態と通常状態とを切り換えるタイミングのみパルス信号としたりすればよく、待機状態の期間が特定できればどのような信号であってもよい。このような待機状態か通常状態かを示す待機信号は、利用者が図示しない操作手段を操作して待機状態か通常状態かを設定し、操作手段は、設定された状態を示す待機信号を出力するようにすればよい。
【0026】
出力レベル検出部14は、パワーアンプ部4から出力されたオーディオ信号Spaの出力レベルを検出し、検出した出力レベルの平均レベルを示すレベル信号を制御信号出力部15に出力する。
【0027】
制御信号出力部15は、待機信号取得部13から出力される待機期間信号と、出力レベル検出部14から出力されるレベル信号とに基づいて、電圧の大きさを示す値である電圧制御信号を生成して電圧値決定部16に出力する。具体的には、待機期間信号に基づいて特定される状態が待機状態である場合には、所定値(本実施形態においては「0」とする)を示す電圧制御信号を生成する。一方、通常状態である場合には、レベル信号が示す平均レベルに応じた値を示す電圧制御信号を生成する。ここで、平均レベルが一定レベル以上の大きさになると、電圧制御信号が示す値が小さくなる、すなわち電圧の大きさが小さくなるように設定されている。
【0028】
電圧値決定部16は、制御信号出力部15から出力された電圧制御信号に基づいて、電圧値Vbを決定し、上述したように電圧増幅段41への給電電圧が、決定した電圧値Vbになるように電圧制御部12を制御する。このとき、電圧制御信号が所定値である「0」を示している場合には、電圧値決定部16は、電圧値Vbを0Vとして決定し、結果として電圧制御部12に電圧増幅段41への給電を遮断させる。なお、この電圧値Vbは、電圧増幅段41が非駆動状態となる電圧値(非駆動値)であれば、必ずしも0Vでなくてもよい。
【0029】
一方、電圧値決定部16は、制御信号出力部15から出力された電圧制御信号が所定値「0」以外である場合には、その値に基づいて、電圧値Vbを決定し、電圧増幅段41へ電圧値Vbを印加させる。例えば、電圧制御信号が示す値を電圧値Vbとしてもよいし、電圧制御信号が示す値が「0」〜「1」の間を示している場合には、これを電圧値Vaに対する割合として算出される値を電圧値Vbとしてもよい。このように、オーディオ信号Spaの出力レベルに応じたフィードバックをかけて、電圧値Vbを制御することにより、当該出力レベルが大きくなりすぎて、パワーアンプ部4、スピーカ2などに与える負荷が大きくなりすぎることを防ぐことができ、電圧制御部12は、電圧増幅段41のリミッタ手段を制御するリミッタ制御手段としての機能を有することになる。
【0030】
プリアンプ出力部17は、プリアンプ部3から出力されるオーディオ信号Sprを外部機器が接続されるプリアンプ出力端子に供給する。なお、プリアンプ出力部17は、待機信号取得部13から待機期間信号を取得し、待機期間信号が特定する状態が待機状態である場合に、オーディオ信号Sprをプリアンプ出力端子に供給させ、通常状態である場合には、プリアンプ出力端子へのオーディオ信号Sprの供給を停止するようにしてもよい。また、待機期間信号が特定する状態に応じて、接続される外部機器の電源を制御する制御信号を出力する制御信号出力端子を設けてもよい。
【0031】
次に、アンプシステム1の動作について説明する。待機信号が示す状態は通常状態であるものとする。
【0032】
通常状態においては、入力されたオーディオ信号Sinは、プリアンプ部3における音響処理および増幅処理され、さらにパワーアンプ部4において増幅処理されたオーディオ信号Spaがスピーカ2に供給される。これにより利用者は、パワーアンプ部4において増幅された大出力の放音を聴取することができる。
【0033】
そして、利用者は、パワーアンプ部4において増幅処理されたオーディオ信号Spaをスピーカ2から放音させる必要が無い場合には、操作手段を操作して待機状態へ切り換える。これにより、待機信号が示す状態が待機状態となり、電圧制御部12は、電圧増幅段41へ印加される給電電圧を電圧増幅段41が非駆動状態とするように降圧し、電圧増幅段41への給電が遮断される。これにより、増幅処理をする必要がないパワーアンプ部4における消費電力が低減することになる。一方、プリアンプ出力部17は、オーディオ信号Sprの外部機器への供給を通常状態、待機状態にかかわらず続けている。これにより、利用者は、プリアンプ部3における音響処理および増幅処理されて出力されたオーディオ信号Sprの放音をプリアンプ出力部17のプリアンプ出力端子に接続される外部機器から聴取することができる。
【0034】
このように、アンプシステム1は、パワーアンプ部4において増幅処理されたオーディオ信号Spaをスピーカ2から放音させる必要が無い場合には、プリアンプ部3から出力される低出力ながら高品位なオーディオ信号Sprを外部機器に供給できるとともに、増幅処理をする必要が無いパワーアンプ部4における消費電力を低減させることができる。また、パワーアンプ部4における消費電力の減少は、電圧制御部12によって電圧増幅段41への給電を遮断する、すなわちリミッタ手段を利用することにより実現されるものであり、電力増幅段42への電源部10からの給電状態は変化させていない。このように、大きな電流が流れない回路である電圧増幅段41の給電の制御だけでよく、また、別の用途にも用いられるリミッタ手段を用いた制御であるから、回路規模を大きくする必要が無く、省スペースでかつ簡易にパワーアンプ部4の消費電力を低減することができる。
【0035】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は以下のように、さまざまな態様で実施可能である。
【0036】
<変形例1>
上述した実施形態における電圧制御部12について、リミッタ手段としての機能に追加して、さらに電源部10から電圧増幅段41への給電を遮断する遮断手段を設けてもよい。この場合は、例えば、図3に示すような構成とすればよい。そして、制御信号出力部15が生成する電圧制御信号が所定値である「0」であり、電圧値決定部16からの指示値である電圧値Vbが0Vとなる場合には、制御回路127は、スイッチ128、129をOFF状態に制御することにより電源部10からの給電を遮断し、それ以外の場合には、スイッチ128、129をON状態に制御して電源部10からの給電が可能な状態とすればよい。
【0037】
このようなスイッチ128、129は、リレー、トランジスタなどを用いることができ、スイッチ128、129の種類に応じて、制御回路127は、スイッチ128、129をON状態、OFF状態に切り換える処理を行うようにすればよい。このようにすると、電源部10から電圧増幅段41への給電を遮断することができるから、電圧増幅段41へ印加される電圧を確実に0Vとすることができ、パワーアンプ部4の消費電力を低減することができる。なお、図3に示す構成においては、スイッチ128、129は、npnトランジスタ121およびpnpトランジスタ122の各々と電源部10の端子との間に設けられていたが、npnトランジスタ121およびpnpトランジスタ122の各々と電圧増幅段41の間に設けるようにしてもよい。
【0038】
<変形例2>
上述した実施形態においては、電圧制御部12は、パワーアンプ部4から出力されるオーディオ信号Spaの出力レベルに応じて電圧増幅段41への給電に係る電圧値を変化させるリミッタ手段であったが、当該出力レベルとは関係なく電圧値を制御できる電圧制御手段としてもよい。この場合は、例えば電圧値を設定する操作手段を設け、操作手段は、制御信号出力部15に代わって、利用者の操作によって設定される電圧値に応じて電圧制御信号を生成し、電圧値決定部16に出力するようにすればよい。そして、電圧増幅段41が非駆動状態となる電圧値になるように操作手段を操作することにより、実施形態における電圧制御部12と同様に、電圧増幅段41への給電に係る電圧値を制御してパワーアンプ部4の消費電力を抑えることができる。
【0039】
<変形例3>
上述した実施形態においては、待機信号は、利用者が例えば操作手段を操作して待機状態か通常状態かを設定し、操作手段は、設定された状態を示す待機信号を出力するようにしていたが、アンプシステム1とネットワークなどを介して通信可能な通信装置から待機状態か通常状態かを設定できるようにしてもよい。この場合には、アンプシステム1は、通信装置とネットワークを介して通信可能な通信手段を設ければよい。そして、通信手段は、ネットワークを介して通信する通信装置から設定される待機状態または通常状態に応じた待機信号を生成し、待機信号取得部13に取得させればよい。このように、パワーアンプ部4の消費電力を制御するための待機状態または通常状態の切り換えは、アンプシステム1と通信可能な通信装置によって行なわれてもよい。なお、ネットワーク以外の通信として、HDMICEC(High‐Definition Multimedia Interface Consumer Electronics Control)、RS−232Cなどを用いる方法がある。
【0040】
<変形例4>
上述した実施形態においては、アンプシステム1は、パワーアンプ部4を1つ有している場合として説明したが、パワーアンプ部4とスピーカ2とを複数有し、各スピーカ2は、各パワーアンプ部4と対応し、各パワーアンプ部4の出力を対応するスピーカ2から放音する構成としてもよい。この場合は、電圧制御部12は、各パワーアンプ部4の電圧増幅段41への給電に係る電圧値を各々制御できるようにすればよい。そして、どのパワーアンプ部4の電圧増幅段41を制御するかを識別するために、待機信号、待機期間信号、電圧制御信号に、複数のパワーアンプ部4の各々を特定する識別情報を重畳し、電圧値決定部16は、当該識別情報に基づいて、電圧制御部12を制御して、該当するパワーアンプ部4の電圧増幅段41の電圧値を制御させるようにすればよい。このようにすれば、複数のパワーアンプ部4があっても、パワーアンプ部4ごとに消費電力を制御することができる。
【0041】
<変形例5>
上述した実施形態においては、待機状態、すなわちパワーアンプ部4の消費電力が低減されている場合には、スピーカ2にはプリアンプ部3から出力されるオーディオ信号Sprが供給されていたが、待機状態においてオーディオ信号を外部機器へ出力するようにしてもよい。この場合には、アンプシステム1は、図4に示すような構成とすればよい。以下、図4に示す構成について説明する。
【0042】
図4に示す構成は、実施形態における構成からプリアンプ出力部17を削除し、出力選択部21、信号出力部22を設けた構成であるから、出力選択部21、信号出力部22について説明し、その他の構成については説明を省略する。
【0043】
出力選択部21は、オーディオ信号が入力される入力端子を複数有し、利用者が入力端子のいずれかを操作手段の操作に応じて、いずれかの入力端子を選択して、選択した入力端子に入力されるオーディオ信号をプリアンプ部3または信号出力部22にオーディオ信号Sinとして出力する。ここで、出力選択部21は、待機信号取得部13が出力する待機期間信号を取得し、当該待機期間信号に基づいて特定される状態が待機状態である場合には、予め設定された入力端子を自動的に選択し、当該入力端子に入力されたオーディオ信号をオーディオ信号Sinとして信号出力部22に出力するようになっている。
【0044】
信号出力部22は、外部機器にオーディオ信号を供給する出力端子を有する。そして、出力選択部21から入力されたオーディオ信号Sinを、出力端子に接続された外部機器にオーディオ信号Soutとして出力する。このようにすると、待機状態、すなわちパワーアンプ部4の消費電力を低減している場合には、自動的に予め設定した特定の入力端子に入力されるオーディオ信号を外部機器に出力することができる。例えば、出力選択部21に入力されるHDMI入力をそのまま信号出力部22からHDMI出力として出力することができる。
【0045】
この予め設定する特定の入力端子については、プリアンプ部3、パワーアンプ部4において増幅処理をせず、外部機器から聴取する頻度が高いオーディオ信号が供給される入力端子として設定しておけば、利用者は、待機状態にする操作を行うだけで、パワーアンプ部4の消費電力を低減するとともに、外部機器にオーディオ信号を出力し、外部機器からの放音へ切り替えることができる。ここで、外部機器にオーディオ信号を出力している際には、オーディオ信号の経路とならないプリアンプ部3については、その機能が必要とならないから消費電力を低減するように電圧調整部11に制御させてもよい。なお、本変形例の構成に実施形態におけるプリアンプ出力部17を有する構成を適用してもよいが、この場合には、上述のように、プリアンプ部3の消費電力を低減するように電圧調整部11に制御することなく、給電状態を変えることはない。このようにプリアンプ部3を適用するか否かについては、操作手段などを用いて利用者が操作することにより設定できるようにし、その設定内容を示す信号を電圧調整部11に出力して、電圧調整部11は、設定内容を示す信号に基づいて、プリアンプ部3への給電状態を制御するようにすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】実施形態に係るアンプシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】実施形態に係る電圧制御部の構成を示すブロック図である。
【図3】変形例1に係る電圧制御部の構成を示すブロック図である。
【図4】変形例5に係るアンプシステムの構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0047】
1…アンプシステム、2…スピーカ、3…プリアンプ部、4…パワーアンプ部、41…電圧増幅段、42…電力増幅段、10…電源部、11…電圧調整部、12…電圧制御部、121…npnトランジスタ、122…pnpトランジスタ、123…基準電圧入力回路、124…負帰還回路、125…比較器、126…トラッキング回路、127…制御回路、128,129…スイッチ、13…待機信号取得部、14…出力レベル検出部、15…制御信号出力部、16…電圧値決定部、17…プリアンプ出力部、21…出力選択部、22…信号出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力されるオーディオ信号を電圧増幅して出力するとともに、出力信号の最大振幅が給電電圧によって制限される電圧増幅手段と、
前記電圧増幅手段によって電圧増幅されたオーディオ信号の電力を増幅して出力する電力増幅手段と、
前記電圧増幅手段と前記電力増幅手段とに給電する電源と、
電圧の大きさを示す電圧制御信号を生成する制御信号生成手段と、
前記制御信号生成手段によって生成された電圧制御信号に基づいて電圧値を決定し、当該電圧制御信号が所定値を示す場合には、当該電圧値を前記電圧増幅手段が非駆動状態となる非駆動値として決定する電圧値決定手段と、
前記電源から前記電圧増幅手段への給電電圧を降圧して、前記電圧値決定手段が決定した電圧値になるように制御する電圧制御手段と
を具備することを特徴とする信号増幅装置。
【請求項2】
前記電力増幅手段によって電力を増幅されたオーディオ信号の出力レベルを検出する出力レベル検出手段と、
待機状態か否かを示す待機信号を取得する待機信号取得手段と
をさらに具備し、
前記制御信号生成手段は、前記待機信号取得手段によって取得した待機信号が待機状態を示す場合には、前記所定値を示す電圧制御信号を生成し、それ以外の場合には、前記出力レベル検出手段によって検出した出力レベルに基づく値を示す電圧制御信号を生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の信号増幅装置。
【請求項3】
外部機器から通信によって待機信号を受信する受信手段
をさらに具備し、
前記待機信号取得手段は、前記受信手段が受信した待機信号を取得する
ことを特徴とする請求項2に記載の信号増幅装置。
【請求項4】
前記制御信号生成手段によって生成された電圧制御信号が前記所定値を示す場合には、前記電源から前記電圧増幅手段への給電を遮断する遮断手段
をさらに具備する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の信号増幅装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の信号増幅装置と、
入力されるオーディオ信号を増幅して出力するプリアンプ部と、
前記電力増幅部の出力されるオーディオ信号をスピーカが接続される端子に出力する第1出力部と、
前記プリアンプ部から出力されるオーディオ信号を外部出力する第2出力部と
を具備し、
前記電圧増幅手段に入力されるオーディオ信号は、前記プリアンプ部から出力されたオーディオ信号である
ことを特徴とするアンプシステム。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の信号増幅装置と、
オーディオ信号が入力される入力端子を複数有するオーディオ信号入力部と、
前記制御信号生成手段によって生成された電圧制御信号が前記所定値を示す場合には、前記オーディオ信号入力部の入力端子のうち、予め設定された入力端子へ入力されたオーディオ信号を外部機器が接続される出力端子へ供給し、それ以外の場合には、前記オーディオ信号入力部の入力端子のいずれかに入力されるオーディオ信号を前記電圧増幅手段へ接続される経路に出力する出力選択部と
を具備する
ことを特徴とするアンプシステム。
【請求項7】
入力されるオーディオ信号を電圧増幅して出力するとともに、出力信号の最大振幅が給電電圧によって制限される電圧増幅手段と、前記電圧増幅手段によって電圧増幅されたオーディオ信号の電力を増幅して出力する電力増幅手段と、前記電圧増幅手段と前記電力増幅手段とに給電する電源とを具備する信号増幅装置に用いられる方法であって、
電圧の大きさを示す電圧制御信号を生成する制御信号生成過程と、
前記制御信号生成過程によって生成された電圧制御信号に基づいて電圧値を決定し、当該電圧値を前記電圧増幅手段が非駆動状態となる非駆動値として決定する電圧値決定過程と、
前記電源から前記電圧増幅手段への給電電圧を降圧して、前記電圧値決定過程において決定した電圧値になるように制御する電圧制御過程と
を備えることを特徴とする信号増幅方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−44529(P2009−44529A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−208111(P2007−208111)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】