説明

信号変換システム

【課題】従来のシグマ−デルタ変換器が持っているアイドルトーン問題、フラットゾーン問題等を改善する。
【解決手段】信号変換システムは、補償モジュールと、補償モジュールに接続されている変換モジュールとを備えている。補償モジュールは、動的な信号に従って第1の補償信号を調整して、第1の補償信号を第1の入力信号に加えるために動作可能である。補償モジュールは、また、出力信号から、動的な信号の蓄積を表す、第2の補償信号を減算するために動作可能である。変換モジュールは、第1の入力信号と第1の補償信号の合計である第2の入力信号を受信して、この第2の入力信号を出力信号に変換するために動作可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は信号変換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
シグマ−デルタ変調は、ノイズシェーピング(shaping)およびエラーフィードバックを用いて、高解像度信号を低解像度信号にエンコードする方法である。このような技術を用いることにより、シグマ−デルタ変換器(例えば、アナログ−デジタル変換器、デジタル−アナログ変換器)は、低コストアナログ素子を用いても、非常に高い解像度を比較的容易に達成することができる。しかし、従来のシグマ−デルタ変換器には、いくつかの問題、例えば、アイドルトーン(idle tone)問題、フラットゾーン(flat zone)問題等がある。例えば、従来のシグマ−デルタ変換器の入力信号がDC(直流)入力である場合、例えば、入力信号が一定レベルを有する場合、シグマ−デルタ変換器は、変換器の出力を妨害し得るパターンノイズ(アイドルトーン)を発生する可能性がある。加えて、入力信号が特定のレベルの近くの比較的狭い範囲内で変化するレベルを有する場合、変換器の出力は、出力が比較的重大なエラーを有することができるように、入力信号が変化する時にも変化しない実質的に一定のレベルを有することができる。このような比較的狭い範囲は、フラットゾーンまたはデッドゾーンと呼ばれ得る。特定のレベルは、シグマ−デルタ変換器の性質によって決定される。例えば、特定のレベルは、0V、±(1/2)VREF、±(1/3)VREF等の値を有することができる。VREFは、シグマ−デルタ変換器の動作のための基準レベルである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
一実施形態において、信号変換システムは、補償モジュールと、補償モジュールに接続されている変換モジュールとを備えている。補償モジュールは、動的な(dynamic)信号に従って第1の補償信号を調整して、第1の補償信号を第1の入力信号に加えることができる。補償モジュールは、出力信号から、動的な信号の蓄積を表す、第2の補償信号を減算することもできる。変換モジュールは、第1の入力信号と第1の補償信号の合計である第2の入力信号を受信して、この第2の入力信号を出力信号に変換することができる。
【0004】
請求された内容の実施形態の特徴および効果は、以下の詳細な説明が進むにつれて明らかになるであろう。そして、図面を参照する際に、同一の番号は同一の部分を表すものとする。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】本発明の一実施形態による信号変換システムの一例のブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態による信号変換システムの一例のブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態による信号変換システムの一例のブロック図である。
【図4】本発明の一実施形態による信号変換システムによって実行される動作の例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下、本発明の実施形態に対する言及が詳細になされる。本発明がこれらの実施形態に関連して記載されるが、それらが本発明をこれらの実施形態に限定することを意図しているわけではないことは理解されよう。反対に、本発明は、添付の請求項によって定義される本発明の精神および範囲に含まれる代替、変更および等価物をカバーすることを意図している。
【0007】
ここに記載されている実施形態は、ある形のコンピュータが使用可能な媒体上にあるコンピュータが実行可能な命令の一般的な文脈、例えば一つ以上のコンピュータまたは他のデバイスによって実行されるプログラムモジュールの中で述べられ得る。一般的に、プログラムモジュールは、ルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造等を含み、特定のタスクを実行したり、あるいは特定の抽象的データ型を実現する。プログラムモジュールの機能は、様々な実施形態の中で要求される時、結合または分散され得る。以下の詳細な説明のいくつかの部分は、コンピュータメモリ内のデータビット上の手順、ロジックブロック、処理および動作の他のシンボリック表現に関して示されている。これらの説明および表現は、データ処理技術の当業者によって、他の当業者に最も効果的にそれらの仕事の内容を伝えるために用いられる手段である。本出願において、手順、ロジックブロック、プロセス等は、所望の結果に導くステップまたは命令の首尾一貫したシーケンスであると理解される。ステップは、物理量の物理的操作を要求するものである。通常、必ずしも必要ではないが、これらの量は、コンピュータシステムの中で格納、転送、結合、比較、さもなければ操作され得る電気または磁気信号の形をとる。
【0008】
ただし、これら及び類似の用語の全ては、適切な物理量に関連付けられたものであり、これらの物理量に対する便宜上のラベルに過ぎないことを心に留めておくべきである。以下の説明から明らかである時に特に別途述べない限り、本出願の全体にわたって、「調整」「加算」「減算」「変換」「算出」「生成」「比較」「蓄積」「受信」等のような用語を用いている記述は、コンピュータシステムまたは同様の電子計算装置の動作およびプロセスを意味することは認められる。それは、コンピュータシステムのレジスタおよびメモリの中の物理的(電子的)な量として表されるデータを操作して、コンピュータシステムメモリまたはレジスタ、または他のこのような情報記憶、伝送または表示装置の中の物理的な量として同様に表される他のデータに変換する。
【0009】
さらに、本発明の以下の詳細な説明の中で、多数の具体的な詳細が、本発明の完全な理解を提供するために示される。しかしながら、本発明が、これらの具体的な詳細なしで実施され得ることは、当業者によって認められるであろう。他の例においては、本発明の態様を不必要に曖昧にしないように、周知の方法、手順、コンポーネント、および回路は、詳細には記載されない。
【0010】
一実施形態において、信号変換システムが提供される。このような一実施形態において、信号変換システムは、入力信号を出力信号に変換することができる。信号ディザリング(dithering)の適用によって、出力信号は、入力信号を比較的正確に表すことができる。より詳しくは、入力信号は、比較的ビジー(busy)なために、ディザ(dither)信号、例えば、疑似乱数信号に加えられ得る。加えて、ディザ信号と等価なレベルを表す、補償信号は、入力信号を適切に表すために、出力信号から減算され得る。その結果、アイドルトーン問題およびフラットゾーン問題は減少し得る一方で、信号変換システムは、入力信号を適切に表すように、出力信号を生成することができる。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態による、信号変換システム100の一例のブロック図である。図1に示したように、信号変換システム100は、変換モジュール102と、信号発生器104と、補償モジュール106とを備えている。
【0012】
一実施形態において、信号発生器104は、動的な信号130を発生するために用いられ得る。信号発生器104に接続されている補償モジュール106は、動的な信号130に従って、(図1には示されていない)第1の補償信号を調整することができる。補償モジュール106は、第1の補償信号を第1の入力信号、例えば、入力信号136に加えることもでき、かつ、出力信号128から、動的な信号130の蓄積を表す、(図1には示されていない)第2の補償信号を減算することもできる。補償モジュール106に接続されている変換モジュール102は、補償モジュール106から、第2の入力信号、例えば、入力信号122を受信することができ、かつこの入力信号122を出力信号128に変換することができる。一実施形態において、入力信号122は、入力信号136と第1の補償信号の合計である。
【0013】
より詳しくは、一実施形態において、変換モジュール102は、アナログ信号122をデジタル信号128に変換するために、ADC(アナログ−デジタル変換器)、例えば、シグマ−デルタADCを有している。補償モジュール106は、第1の補償信号プラス入力信号136に等しいアナログ信号122をシグマ−デルタADC102に供給し、かつ出力信号128マイナス第2の補償信号に等しい出力信号132を生成することができる。第1の補償信号は、以下のものに限定されるわけではないが、アナログ信号であり得る。第2の補償信号は、以下のものに限定されるわけではないが、デジタル信号であり得る。
【0014】
好都合にも、動的な信号130は、疑似乱数信号であり得る。疑似乱数信号130に従って調整される第1の補償信号は、シグマ−デルタADC102のためのディザ信号として用いられ得る。従って、シグマ−デルタADC102の入力信号122は、比較的ビジーであり得る。例えば、入力信号122のレベルは、実質的に一定ではないか、あるいは比較的狭い範囲内で変化しない。その結果、シグマ−デルタADC102のアイドルトーンおよびフラットゾーン問題は減少し得るので、出力信号128の出力エラーも減少し得る。
【0015】
一実施形態において、出力信号128の蓄積結果は、入力信号122の等価レベルを示している、例えば、比例している。例えば、出力信号128は、シリアルデジタル信号の列を含み得る。その各々は、対応する値を表している。出力信号128の蓄積結果は、シリアルデジタル信号に対応する複数の値を蓄積することによって得られ得る。蓄積のための動作は、以下で更に詳細に説明される。加えて、第2の補償信号の蓄積結果は、第1の補償信号の等価レベルを示し得る、例えば、比例し得る。出力信号132は、出力信号128マイナス第2の補償信号に等しいので、出力信号132の蓄積結果は、入力信号136の等価レベルを示し得る、例えば、比例し得る。
【0016】
他の実施形態では、出力信号128の値は、入力信号122の等価レベルを示している、例えば、比例している。加えて、第2の補償信号の値は、第1の補償信号の等価レベルを示し得る、例えば、比例し得る。従って、そのような実施形態において、出力信号132の値は、入力信号136の等価レベルを示し得る、例えば、比例し得る。
【0017】
図2は、本発明の一実施形態による、信号変換システム200の一例のブロック図である。図1と同じ符号を付けられた要素は、同様の機能を有しているので、ここで繰り返し説明しない。図2の例において、変換モジュール102は、入力信号136を出力信号228に変換することができる。一実施形態において、図1における出力信号128は、図2における出力信号228を含んでいる。例えば、補償モジュール106は、第1の補償信号234を入力信号136に加え、かつ出力信号228から第2の補償信号238を減算することができる。
【0018】
図2に示したように、変換モジュール102は、シグマ−デルタADCを含んでいる。より詳しくは、シグマ−デルタADC102は、積分器212、閾値検出器214および信号変換器216を含み得る。積分器212は、入力信号122および第2の信号220に従って算出される第1の信号224を積分して、この積分に従って積分信号226を生成するために用いられ得る。例えば、減算器218は、第1の信号224を積分器212に供給するために、入力信号122から第2の信号220を減算することができる。積分器212は、第1の信号224の積分値∫V224dtを示す、例えば、比例するレベルV226を有する積分信号226を生成することができる。一実施形態において、第1の信号224が正のレベルV224を有する時、積分信号226のレベルV226は増加し得る。他方、第1の信号224が負のレベルV224を有する時、積分信号レベルV226は減少し得る。
【0019】
一実施形態において、閾値検出器214は、積分器212に接続されていて、積分信号226のレベルV226を予め定められた閾値VPREと比較して、この比較に従って出力信号228を生成するために動作可能である。一実施形態において、予め定められる閾値VPREは任意である。例えば、予め定められる閾値VPREは、以下のものに限定されるわけではないが、0Vであり得る。一実施形態において、レベルV226が閾値VPREより大きくない場合、閾値検出器214は、第1のレベルVLを有する出力信号228を生成することができる。第1のレベルVLは、以下のものに限定されるわけではないが、低電圧レベル(例えば、0V)であり得る。低電圧レベルVLは、デジタル論理信号“0”として用いられ得る。レベルV226が閾値VPREより大きい場合、閾値検出器214は、第2のレベルVHを有する出力信号228を生成することができる。第2のレベルVHは、以下のものに限定されるわけではないが、低電圧レベルVLより高い高電圧レベル(例えば、1V)であり得る。高電圧レベルVHは、デジタル論理信号“1”として用いられ得る。
【0020】
一実施形態において、閾値検出器214は、積分信号レベルV226を量子化する1ビット量子化器である。1ビット量子化器214は、クロック制御された比較器を含み得る。より詳しくは、クロック制御された比較器は、予め定められた周波数fPREを有するクロック信号CLKによって起動され得る。クロック制御された比較器がクロック信号CLKによって起動される時、クロック制御された比較器は、レベルV226と予め定められた閾値VPREとの比較の結果に従って、出力信号228を生成することができる。例えば、閾値検出器214がクロック信号CLKによって起動される時にレベルV226が閾値VPREより大きい場合、閾値検出器214は、予め定められたクロック周期TPRE、例えば、TPRE=1/fPREの間、デジタル信号“1”を出力することができる。他方、レベルV226が閾値VPREより大きくない場合、閾値検出器214は、クロック周期TPREの間、デジタル信号“0”を出力することができる。
【0021】
一実施形態において、信号変換器216が、閾値検出器214に接続されていて、第2の信号220を供給して、出力信号228に従って第2の信号220のレベルV220を調整するために動作可能である。信号変換器216は、以下のものに限定されるわけではないが、デジタル信号、例えば、出力信号228をアナログ信号、例えば、第2の信号220に変換する1ビットDAC(デジタル−アナログ変換器)であり得る。
【0022】
より詳しくは、一実施形態において、出力信号228がデジタル信号“0”である時、信号変換器216は、第2の信号220を負の基準レベル-VR、例えば、V220=-VRに調整することができる。このように、第1の信号224のレベルV224は、V224=V122+VRによって与えられ得る。ここで、V122は、入力信号122のレベルである。基準レベルVRは、正、例えば、+1Vであり、レベルV122の絶対値|V122|によって決定され得る。より詳しくは、VMAXが絶対値|V122|の最大値である場合、最大値VMAXは、基準レベルVRより小さい、例えば、|V122|<VMAX<VRである。例えば、基準レベルVRが1Vに等しい場合、レベルV122は、−0.2V,0.5V,−0.6V,0.99V等と同じであり得る。従って、V122+VRに等しいレベルV224は正であり、積分信号レベルV226は増加し得る。一実施形態において、出力信号228がデジタル信号“1”である時、信号変換器216は、第2の信号220を正の基準レベルVRに調整することができる、例えば、V220=VRとすることができる。従って、第1の信号224のレベルV224は、V224=V122-VRによって与えられ得るので、負となる。従って、積分信号レベルV226は減少し得る。
【0023】
従って、第1の信号224を積分して、積分信号レベルV226を閾値VPREと比較することによって、シグマ−デルタADC102は、予め定められた周波数fPREで複数のデジタル信号228を生成することができる。デジタル信号228は、入力信号122のレベルV122を得るために用いられ得る。
【0024】
一実施形態において、第1の信号224の積分は、入力信号122の積分および第2の信号220の積分を含んでいる。例えば、第1の信号224の積分値∫V224dtは、以下の式によって与えられ得る。
【0025】
【数1】

【0026】
ここで∫V122dtは入力信号122の積分値であり、∫V220dtは第2の信号220の積分値である。
【0027】
一実施形態において、出力信号228は、デジタルフィルタ208によってサンプリングされ得る。サンプリング期間TSAMの間、デジタルフィルタ208は、NSAM回、予め定められた周波数fPREで、出力信号228をサンプリングすることができ、例えば、TSAM=TPRE×NSAMである。加えて、サンプリング期間TSAMの間、VEQ224は、第1の信号224の等価レベルであり、かつVEQ122は、入力信号122の等価レベルであり得る。従って、第1の信号224の積分値
【0028】
【数2】

【0029】
は、以下の式によって与えられ得る。
【0030】
【数3】

【0031】
そして、入力信号122の積分値
【0032】
【数4】

【0033】
は、以下の式によって与えられ得る。
【0034】
【数5】

【0035】
サンプリング期間TSAMの間、N0は、デジタルフィルタ208によって閾値検出器214から受信されたデジタル信号“0”の数であり、かつN1は、デジタルフィルタ208によって閾値検出器214から受信されたデジタル信号“1”の数であり得る。数NSAMは、N0プラスN1に等しく、例えば、NSAM=N0+N1である。このように、積分器212は、N0回のクロック周期TPREの間、正のレベルV122+VRを積分することができ、かつN1回のクロック周期TPREの間、負のレベルV122-VRを積分することができる。従って、第2の信号220の積分値
【0036】
【数6】

【0037】
は、以下の式によって与えられ得る。
【0038】
【数7】

【0039】
式(1)から、以下の式を得ることができる。
【0040】
【数8】

【0041】
式(2)、(3)および(4)は、式(5)に置換され、以下の式が得られる。
【0042】
【数9】

【0043】
式(6a)は、以下のように書き直すことができる。
【0044】
【数10】

【0045】
一実施形態において、第1の信号224の積分は、積分信号レベルV226を閾値VPREと比較することによって調整され、かつ第1の信号224のレベルV224は、例えば、-2VRから2VRまでの範囲の中で変化し得るので、積分信号レベルV226は、閾値VPREおよびレベルVRによって決定される有限の範囲の中で変化し得る。従って、第1の信号224の積分値
【0046】
【数11】

【0047】
もまた、有限の範囲の中で変化し得る。一実施形態において、サンプリング期間TSAMは十分に長いので、
【0048】
【数12】

【0049】
と等しい等価レベルVEQ224は、実質的にゼロに等しい。従って、式(6b)は、以下のように書き直すことができる。
【0050】
【数13】

【0051】
従って、以下の式を得ることができる。
【0052】
【数14】

【0053】
このように、一実施形態において、値N1-N0は、入力信号122の等価レベルVEQ122に比例する。
【0054】
一実施形態において、値N1-N0は、DDC(デジタル−デジタル変換器)およびアキュムレータ(図2には示されていない)を用いて得ることができる。例えば、DDCは、デジタル信号228を符号付きデジタル信号、例えば、符号付き2進符号に変換することができる。デジタル信号228が“1”である時、対応する符号付きデジタル信号は“+1”であり得る。デジタル信号228が“0”である時、対応する符号付きデジタル信号は“−1”であり得る。アキュムレータは、例えば、“+1”,“−1”のような複数の符号付きデジタル信号をDDCから受信することができ、かつ符号付きデジタル信号を蓄積することによって値N1-N0を生成することができる。DDCは、必ずというわけではないが、デジタルフィルタ208の中に実装され得る。アキュムレータは、必ずというわけではないが、デジタルフィルタ208の中に実装され得る。
【0055】
従って、一実施形態において、デジタルフィルタ208は、デジタル信号228を蓄積することによって、値N1-N0を算出することができる。一実施形態において、デジタル信号228の蓄積結果は、N1-N0に等しい。デジタルフィルタ208は、値N1-N0に従って、デジタル信号254を生成して、入力信号122の等価レベルVEQ122を表すことができる。一実施形態において、サンプリング期間TSAMは、比較的短いので、レベルV122は、等価レベルVEQ122に等しい。一実施形態において、デジタルフィルタ208は、レベルV122を表すマルチビット(例えば、8ビット)パラレルデジタル信号254を生成する。一実施形態において、デジタルフィルタ208は、出力信号228の中に混入している高周波雑音を除去するための低域通過デジタルフィルタであるので、デジタル信号254は、比較的正確に入力信号122を表すことができる。
【0056】
一実施形態において、信号発生器104は、動的な信号130を発生する疑似乱数信号発生器であり得る。例えば、疑似乱数信号発生器104は、複数のPN130を発生するPN(疑似乱数)発生器であり得る。換言すれば、動的な信号130は、PNを含み得る。一実施形態において、第1の補償信号234のレベルV234は、対応するPN130に従って調整される。好都合にも、一実施形態において、第2の補償信号238の適用によって、信号変換システム200の出力信号、例えば、デジタル信号254は、PN130によって影響されず、適切に信号変換システム200の入力信号136を表すことができる。従って、PN発生器104は、以下のものに限定されるわけではないが、PN発生器104の設計を単純化して、PN発生器104のコストを減らすように、低品質乱数発生器であり得る。例えば、PN発生器104は、1ビットデジタル信号発生器であり得る。複数のPNは、例えば、デジタル信号“0”および“1”を含む1ビットデジタル信号であり得る。一実施形態において、PN発生器104は、LFSR(リニアフィードバックシフトレジスタ)によって実現される。例えば、比較的多量のPNが、LFSRに格納され得るので、LFSRは、シリアル形で格納されたPNを外へシフトすることによって、適切に複数のPN130を生成することができる。
【0057】
一実施形態において、補償モジュール106は、信号変換器244を含んでいる。信号変換器244は、PN130のうちの対応するPNに従って、第1の補償信号234を供給し、かつ第1の補償信号234のレベルV234を調整するために用いられ得る。より詳しくは、排他的論理和ゲート242が、PN発生器130と閾値検出器214との間に接続されていて、デジタル値D256を有するPN256を生成するために動作可能である。デジタル値D256は、D256=D130 XOR D228によって与えられ得る。ここで、D130はPN130のデジタル値であり、D228は出力信号228のデジタル値である。
【0058】
一実施形態において、信号変換器244は、デジタル信号、例えば、PN256をアナログ信号、例えば、補償信号252に変換するための1ビットDACである。信号変換器216の動作と同様に、PN256がデジタル信号“0”である時、信号変換器244は、補償信号252を負の基準レベル-VRに調整することができる。PN256がデジタル信号“1”である時、信号変換器244は、補償信号252を正の基準レベルVRに調整することができる。信号変換器244および216は、必ずというわけではないが、信号変換システム200の回路設計を単純化するために、レベルVRを有する同じ基準源に接続され得る。
【0059】
補償モジュール106は、補償信号256を第1の補償信号234に縮小するためのスケーリング回路246を更に有していてもよい。例えば、スケーリング回路246を用いることにより、第1の補償信号234のレベルV234は、以下の式によって与えられ得る。
【0060】
【数15】

【0061】
ここで、V256は、補償信号256のレベルであり、例えば、V256=±VRである。一実施形態において、MACCは、以下のものに限定されるわけではないが、自然数(例えば、16、32、64)であり得る。このように、第1の補償信号234は、正のレベルVR/MACCまたは負のレベル-VR/MACCを有する疑似乱数信号であり得る。
【0062】
好都合にも、疑似乱数信号234は、アイドルトーン問題およびフラットゾーン問題を減らすように、シグマ−デルタADC102の入力信号122を比較的ビジーに保つことができる。例えば、加算器210は、シグマ−デルタADC102に対する比較的ビジーな入力信号122を生成するように、疑似乱数信号234を入力信号136に加えることができる。一実施形態において、入力信号122のレベルV122は、以下の式によって与えられ得る。
【0063】
【数16】

【0064】
ここで、V136は、入力信号136のレベルである。式(1)および(10)により、以下の式を得ることができる。
【0065】
【数17】

【0066】
ここで、∫V136dtは、入力信号136の積分値であり、∫V234dtは、疑似乱数信号234の積分値である。
【0067】
一実施形態において、信号変換器244によって受信されたPN256がデジタル信号“1”である時、疑似乱数信号234は、クロック周期TPREの間、正のレベルVR/MACCであり得る。従って、積分器212は、クロック周期TPREの間、正のレベルVR/MACCを積分することができ、積分値はTPRE×VR/MACCによって表すことができる。同様に、信号変換器244によって受信されるPN256がデジタル信号“0”である時、疑似乱数信号234は、クロック周期TPREの間、負のレベル-VR/MACCであり得る。従って、積分器212は、クロック周期TPREの間、負のレベル-VR/MACCを積分することができ、積分値は-TPRE×VR/MACCによって表すことができる。
【0068】
一実施形態において、サンプリング期間TSAMの間、排他的論理和ゲート242は、N'1個のデジタル信号“1”およびN'0個のデジタル信号“0”を出力することができる。従って、疑似乱数信号234の積分値
【0069】
【数18】

【0070】
は、以下の式によって与えられ得る。
【0071】
【数19】

【0072】
一実施形態において、VEQ136は、サンプリング期間TSAMの間の入力信号136の等価レベルである。従って、入力信号136の積分値
【0073】
【数20】

【0074】
は、以下の式によって与えられ得る。
【0075】
【数21】

【0076】
式(11)に従って、以下の式を得ることができる。
【0077】
【数22】

【0078】
式(2)、(12)および(13)は、式(14)に置換され、以下の式が得られる。
【0079】
【数23】

【0080】
式(15a)は、以下のように書き直すことができる。
【0081】
【数24】

【0082】
上述したように、等価レベルVEQ224は、実質的にゼロに等しいので、式(15b)は、以下のように書き直すことができる。
【0083】
【数25】

【0084】
従って、以下の式を得ることができる。
【0085】
【数26】

【0086】
一実施形態において、式(17a)および(17b)は、以下のように書き直すことができる。
【0087】
【数27】

【0088】
ここで、Kは、個数N'1とN'0の差によって決められる整数である。より詳しくは、K'は、負ではない整数(例えば、0,1,2…)であり得る。差値N'1-N'0がK'×MACCから(K'+1)×MACCまで変化する場合、整数Kは、負ではない整数K'に等しい。差値N'1-N'0が-(K'+1)×MACCから-K'×MACCまで変化する場合、整数Kは、正ではない整数-K'に等しい。
【0089】
例えば、個数N'1とN'0の差が、-MACCより大きく、MACCより小さい、例えば、|N'1-N'0|/MACC<1の時、整数Kはゼロであり得る。換言すれば、(N'1-N'0)/MACCの絶対値が1未満である時、疑似乱数信号234の積分値
【0090】
【数28】

【0091】
は、一実施形態において、出力信号228の蓄積結果N1-N0に影響するほど大きくない。従って、入力信号136の等価レベルVEQ136は、出力信号228を蓄積することによって、適切に得ることができる。例えば、式(18b)より、等価レベルVEQ136は、VEQ136=VR×(N1-N0)/NSAMによって与えられ得る。
【0092】
しかし、一実施形態において、差N'1-N'0が、-MACCより大きくない、またはMACCより小さくない、例えば、|N'1-N'0|/MACC≧1である時、整数Kはゼロではない(例えば、K=±1,±2…)。換言すれば、一実施形態において、疑似乱数信号234の積分は、出力信号228の蓄積結果N1-N0に影響し得る。好都合にも、補償モジュール106は、複数のPN256を蓄積するためのACC(アキュムレータ)248を更に有していてもよい。蓄積の結果が予め定められた値、例えば、MACC,-MACCに達する時、ACC248は、第2の補償信号238を生成することができる。第2の補償信号238を用いることによって、入力信号136の等価レベルVEQ136を適切に得ることができる。
【0093】
より詳しくは、第2の補償信号238は、キャリー信号であり得る。キャリー信号238は、符号付きデジタル信号、例えば、値“+1”,“0”,または“−1”を有する、符号付き2進符号を含み得る。(図2には示されていない)別のDDCが、PN256を複数の符号付きデジタル信号にそれぞれ変換するために、ACC248の内部または外部に実装され得る。PN256がデジタル信号“1”である時、対応する符号付きデジタル信号は“+1”であり得る。PN256がデジタル信号“0”である時、対応する符号付きデジタル信号は“−1”であり得る。一実施形態において、ACC248は、PN256の対応する符号付きデジタル信号を蓄積することによって、PN256を蓄積することができる。従って、PN256の蓄積結果は、N'1-N'0に等しくなり得る。
【0094】
蓄積結果N'1-N'0が値-MACCとMACCの間で変化する、例えば、-MACC<N'1-N'0<MACCの時、符号付きデジタル信号238は“0”であり得る。蓄積結果N'1-N'0が値MACCに達する、例えば、N'1-N'0=MACCの時、ACC248は、クロック周期TPREの間、“+1”である符号付きデジタル信号238を生成することができる。クロック周期TPREが終了する時、ACC248は、符号付きデジタル信号238を“0”にリセットすることができ、かつPN256を再度蓄積することができる。同様に、蓄積結果N'1-N'0が値-MACCに達する、例えば、N'1-N'0=-MACCの時、ACC248は、クロック周期TPREの間、“−1”である符号付きデジタル信号を生成することができる。クロック周期TPREが終了する時、ACC248は、符号付きデジタル信号238を“0”にリセットすることができ、かつPN256を再度蓄積することができる。
【0095】
一実施形態において、(出力信号228を符号付きデジタル信号に変換するための)上述したDDCは、減算器240に接続されるか、または減算器240の中に実装される。一実施形態において、出力信号228を表す符号付きデジタル信号から符号付きデジタル信号238を減算することによって、減算器240は、出力信号232を生成することができる。一実施形態において、図1における出力信号132は、図2における出力信号232を含んでいる。出力信号232は、値“+2”,“+1”,“0”,“−1”または“−2”を有する符号付きデジタル信号であり得る。そのような実施形態において、出力信号232の蓄積結果は、疑似乱数信号234の積分によって影響されず、適切に入力信号136の等価レベルVEQ136を得るために用いられ得る。例えば、デジタルフィルタ208は、等価レベルVEQ136を表すデジタル信号254を生成するために、出力信号232を蓄積することができる。
【0096】
一実施形態において、信号変換システム200は、疑似乱数信号234に基づいて実行されるディザリング動作をイネーブル/ディスエーブルにするためのコントローラ250を更に備えている。より詳しくは、コントローラ250は、入力信号136を表す出力信号254に従って、補償モジュール106をイネーブル/ディスエーブルにすることができる。
【0097】
例えば、一実施形態において、出力信号254が、入力信号136のレベルV136が値VR-VR/MACCより小さくないか、または値-VR+VR/MACCより大きくないことを示している、例えば、|V136|≧VR-VR/MACCの場合、コントローラ250は、補償モジュール106をディスエーブル/終了するための制御信号258を生成することができる。より詳しくは、絶対値|V234|がVR/MACCに等しいので、絶対値|V136|が値VR-VR/MACCより小さくない場合、以下の式を得ることができる。
【0098】
【数29】

【0099】
レベルV136およびV234が両方とも正または負の時、式(19)は、以下のように書き直すことができる。
【0100】
【数30】

【0101】
このように、値V122+VRおよびV122-VRは、両方とも正または負であり得る。これは、積分器212が、正のレベルV224のみ又は負のレベルV224のみを積分することができることを意味する。従って、閾値検出器212は、デジタル信号“1”のみ又はデジタル信号“0”のみを生成することができ、そうすると、出力信号228が入力信号122を適切に表すことができない。
【0102】
好都合にも、コントローラ250が、絶対値|V136|が値VR-VR/MACCより小さくないことを検出した時、コントローラ250は、ディザリング動作をディセーブル/終了することができる。従って、一実施形態において、ディザリング動作がイネーブルにされる時、疑似乱数信号234の大きさ、例えば、|VR/MACC|は、シグマ−デルタADC102の入力信号122を比較的ビジーにするように、比較的大きい、例えば、VR/20,VR/16である。コントローラ250の適用によって、比較的大きい大きさを有する疑似乱数信号234は、入力信号136の通常の入力範囲、例えば、-VRからVRまでに影響しない。
【0103】
一実施形態において、出力信号254が、入力信号136のレベルV136が実質的に一定であり、絶対値|V136|が値VR-VR/MACCより小さいことを示している場合、コントローラ250は、ディザリング動作をイネーブルにする制御信号258を生成することができる。より詳しくは、コントローラ250は、第1のサンプリング期間T1(T1=TSAM)の間、等価レベルVEQ136の値V1を得ることができ、第2のサンプリング期間T2(T2=TSAM)の間、等価レベルVEQ136の値V2を得ることができる。第2のサンプリング期間T2は、第1のサンプリング期間T1の次のサンプリング期間であり得る。コントローラ250は、値V1とV2の差が、予め定められた範囲内、例えば、[−ΔV,ΔV]にあるかどうかを判定することができる。値V1とV2の差が予め定められた範囲内にある、例えば、|V2-V1|<ΔVの場合、それは、入力信号136のレベルV136が実質的に一定であるので、コントローラ250が、ディザリング動作を実行するために、補償モジュール106をイネーブルにすることができることを表し得る。一実施形態において、同様の方法で、以前のサンプリング期間、例えば、第1のサンプリング期間T1の前のサンプリング期間の間の等価レベルVEQ136の値に従って、コントローラ250は、レベルV136が実質的に一定かどうかを判定することもできる。
【0104】
さらに、一実施形態において、出力信号254が、入力信号136のレベルV136が実質的に一定ではなく、例えば、比較的ビジーであり、絶対値|V136|が値VR-VR/MACCより小さいことを示している場合、補償モジュール106のディザリング動作は、イネーブルまたはディスエーブルにされ得る。
【0105】
図2の例において、信号変換器244は、PN256に従って、補償信号252をレベルVRまたは-VRに調整することができる。加えて、スケーリング回路246は、第1の補償信号234を供給するために、レベルV252をレベルV252/MACCに縮小することができる。しかし、他の実施形態では、信号変換器244は、PN256に従って、レベルV252をVR/MACCまたは-VR/MACCに調整することができる。そのような実施形態において、スケーリング回路246は除去される。信号変換器244は、補償信号252を、直接、加算器210に供給することができる。
【0106】
上述したように、一実施形態において、排他的論理和ゲート242は、出力信号228およびPN130に従ってPN256を生成するために用いられ得る。しかし、他の実施形態では、PN発生器104は、PN130を信号変換器244およびACC248に供給するために、直接、信号変換器244およびACC248に接続され得る。そのような実施形態において、排他的論理和ゲート242は除去される。さらに、一実施形態において、PN発生器104は、1ビットPN発生器である。他の実施形態において、PN発生器104は、マルチビットPN発生器である。そのような実施形態において、マルチビットPN発生器104は、信号変換器244およびACC248に対してマルチビットPN130を生成することができる。補償信号252は、2以上のレベルを有することができ、マルチビットPN130に従って、対応するレベルに調整され得る。DDCは、マルチビットPN130を、対応する符号付きデジタル信号に変換することができる。従って、ACC248は、対応する符号付きデジタル信号を蓄積して、この蓄積に従って第2の補償信号238を生成することができる。
【0107】
図2の例において、加算器210は、補償信号234を入力信号136に加えるために用いられ、減算器240は、出力信号228から補償信号238を減算するために用いられ得る。しかし、他の実施形態では、入力信号136から補償信号234を減算するために、別の減算器が加算器210を置き換え得る。そして、補償信号238を出力信号228に加えるために、別の加算器が減算器240を置き換え得る。そのような実施形態において、補償モジュール106は、補償信号234の反転したレベルを有する第1の補償信号を入力信号136に加えることができ、かつ出力信号228から補償信号238の反転したレベルを有する第2の補償信号を減算することができる。
【0108】
図3は、本発明の一実施形態による、信号変換システム300の他の例のブロック図である。図1および図2と同じ符号が付された要素は、同様の機能を有していて、ここで繰り返して記載されない。図3の例において、シグマ−デルタADC102は、入力信号136を出力信号328、例えば、デジタル信号に変換することができる。一実施形態において、図1における出力信号128は、図3における出力信号328を含んでいる。例えば、補償モジュール106は、第1の補償信号234を入力信号136に加えることができ、かつ出力信号328から第2の補償信号366を減算することができる。
【0109】
一実施形態において、閾値検出器214は、デジタルフィルタ308に接続され得る。そのような実施形態において、デジタルフィルタ308は、複数のデジタル信号228を複数の符号付きデジタル信号にそれぞれ変換するためのDDCを含んでいる。このように、デジタルフィルタ308は、デジタル信号228を表す符号付きデジタル信号を蓄積することができ、値N1-N0を表す出力信号328を生成する。一実施形態において、出力信号328の値は、値N1-N0に等しい。換言すれば、出力信号328の値は、入力信号122の等価レベルVEQ122を表すことができ、例えば、VEQ122 = VR×(N1-N0)/NSAMである。
【0110】
図3に示したように、補償モジュール106は、予め定められた個数、例えば、NSAM個のPN256を受信して、PN256の蓄積結果に従って第2の補償信号366を生成するためのデジタルフィルタ362を含んでいてもよい。デジタルフィルタ308と同様に、デジタルフィルタ362は、複数のデジタル信号256を複数の符号付きデジタル信号にそれぞれ変換するためのDDCを含んでいてもよい。デジタルフィルタ362は、デジタル信号256を表す符号付きデジタル信号を蓄積することができ、値N'1-N'0を表す補償信号364、例えば、デジタル信号を生成することができる。一実施形態において、デジタル信号364の値は、N'1-N'0に等しい。
【0111】
一実施形態において、除算回路368は、デジタル信号364を受信することができ、MACCによって割られたデジタル信号364の値N364に等しい値N366、例えば、N366=N364/MACCを有するデジタル信号366を生成することができる。従って、そのような実施形態において、デジタル信号366の値N366は、(N'1-N'0)/MACCに等しい。換言すれば、第2の補償信号366の値は、第1の補償信号234の等価レベルVEQ234を表すことができ、例えば、VEQ234 = (N'1-N'0)×VR/(MACC×NSAM)である。除算回路368は、デジタルフィルタ362の内部または外側に実装することができる。
【0112】
図3に示したように、減算器240は、デジタル信号328マイナスデジタル信号366に等しい出力信号332を生成するために、デジタル信号328からデジタル信号366を減算することができる。一実施形態において、図1における出力信号132は、図3における出力信号332を含んでいる。出力信号332の値N332は、以下の式によって与えられ得る。
【0113】
【数31】

【0114】
従って、式(17b)および(21)によれば、入力信号136の等価レベルVEQ136は、出力信号332を用いることにより、適切に得ることができ、例えば、VEQ136 = VR×N332/NSAMである。
【0115】
図4は、本発明の一実施形態による、信号変換システムによって実行される動作の例のフローチャート400である。図4は、図1、図2および図3と組み合わせて記載されている。
【0116】
ブロック402において、補償モジュール106は、動的な信号130に従って第1の補償信号234を調整することができる。動的な信号130は、PN発生器104によって生成されるPNであり得る。第1の補償信号234のレベルV234は、PN130に従って調整され得る。従って、第1の補償信号234は疑似乱数信号であり得る。
【0117】
ブロック404において、補償モジュール106は、第1の補償信号234を第1の入力信号、例えば、入力信号136に加えることができる。従って、第1の補償信号234は、入力信号136と疑似乱数信号234の合計である入力信号122を比較的ビジーにすることができる。従って、シグマ−デルタADC102のアイドルトーンおよびフラットゾーン問題は、減少し得る。
【0118】
ブロック406において、変換モジュール102は、第2の入力信号、例えば、入力信号122を受信することができる。ブロック408において、変換モジュール102は、第2の入力信号122を出力信号、例えば、図1の出力信号128、図2の出力信号228または図3の出力信号328に変換することができる。一実施形態において、変換モジュール102は、シグマ−デルタADCである。
【0119】
ブロック410において、補償モジュール106は、出力信号から(動的な信号130の蓄積を表す)第2の補償信号を減算することができる。図2の例において、減算器240は、出力信号228から第2の補償信号238を減算することができ、出力信号228マイナス第2の補償信号238に等しい出力信号232を生成することができる。出力信号232の蓄積結果は、入力信号136の等価レベルVEQ136を表すことができ、例えば、比例している。図3の例において、減算器240は、出力信号328から第2の補償信号366を減算することができ、出力信号328マイナス第2の補償信号366に等しい出力信号332を生成することができる。出力信号332の値は、入力信号136の等価レベルVEQ136を表すことができ、例えば、比例している。
【0120】
従って、本発明による実施形態は、ディザリング動作に基づいて、入力信号を表す出力信号を生成するための信号変換システムを提供する。好都合にも、ディザリング動作は、比較的簡単かつ/または比較的低コストの要素、例えば、LFSR、1ビットDAC、ACC等によって実行され得る。信号変換システムは、多くの異なるアプリケーション、例えば、信号測定システム、信号監視システム等で用いられ得る。
【0121】
前述の説明および図面が本発明の実施形態を表す一方で、様々な追加、変更態様および置換が、添付の請求項で定義したような本発明の原理の精神および範囲から逸脱することなく、その中でなされ得ることは理解されよう。当業者であれば、本発明が、本発明の実施の中で用いられる、形状、構造、配置、規模、材料、要素および構成要素の多くの変更態様やその他と共に用いられ得ることを認めるであろう。それは、本発明の原理から逸脱することなく、特定の環境および動作の要求に特に適合している。ここで開示した実施形態は、従って、あらゆる点で、例示するためであり、限定するためではないと考えられるべきであり、本発明の範囲は、添付の請求項およびそれらの法律上の等価物によって示され、前述の説明に限定されない。
【符号の説明】
【0122】
102 変換モジュール
104 信号発生器
106 補償モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動的な信号に従って第1の補償信号を調整して、前記第1の補償信号を第1の入力信号に加え、かつ出力信号から、前記動的な信号の蓄積を表す第2の補償信号を減算するために動作可能な補償モジュールと、
前記補償モジュールに接続されていて、前記第1の入力信号と前記第1の補償信号の合計である第2の入力信号を受信して、前記第2の入力信号を前記出力信号に変換するために動作可能な変換モジュールとを備えている
ことを特徴とする電子システム。
【請求項2】
前記変換モジュールはADC(アナログ−デジタル変換器)であることを特徴とする請求項1に記載の電子システム。
【請求項3】
前記変換モジュールは、
前記第2の入力信号および第2の信号に従って算出される第1の信号を積分して、この積分に従って積分信号を生成するために動作可能な積分器と、
前記積分器に接続されていて、前記積分信号のレベルを予め定められた閾値と比較して、この比較に従って前記出力信号を生成するための閾値検出器と、
前記閾値検出器に接続されていて、前記第2の信号を供給して、前記出力信号に従って前記第2の信号のレベルを調整するために動作可能な信号変換器とを有している
ことを特徴とする請求項1に記載の電子システム。
【請求項4】
複数のPNを生成するために動作可能なPN(疑似乱数)発生器を更に備えていて、前記第1の補償信号のレベルは、前記PNのうちの対応するPNに従って調整される
ことを特徴とする請求項1に記載の電子システム。
【請求項5】
複数のPNを生成するために動作可能なLFSR(リニアフィードバックシフトレジスタ)を更に備えていて、前記第1の補償信号のレベルは、前記PNのうちの対応するPNに従って調整されることを特徴とする請求項1に記載の電子システム。
【請求項6】
前記動的な信号はPNであることを特徴とする請求項1に記載の電子システム。
【請求項7】
前記補償モジュールは、前記第1の補償信号を供給して、前記動的な信号に従って前記第1の補償信号のレベルを調整するために動作可能な信号変換器を有していることを特徴とする請求項1に記載の電子システム。
【請求項8】
前記第1の補償信号はアナログ信号であることを特徴とする請求項1に記載の電子システム。
【請求項9】
前記補償モジュールは、複数のPNを蓄積して、前記蓄積の結果が予め定められた値に達した時に前記第2の補償信号を生成するために動作可能なアキュムレータを有していることを特徴とする請求項1に記載の電子システム。
【請求項10】
前記補償モジュールは、予め定められた個数のPNを受信して、前記PNの蓄積結果に従って前記第2の補償信号を生成するために動作可能なデジタルフィルタを有していることを特徴とする請求項1に記載の電子システム。
【請求項11】
前記第2の補償信号はデジタル信号であることを特徴とする請求項1に記載の電子システム。
【請求項12】
動的な信号に従って第1の補償信号を調整するステップと、
前記第1の補償信号を第1の入力信号に加えるステップと、
前記第1の入力信号と前記第1の補償信号の合計である第2の入力信号を受信するステップと、
前記第2の入力信号を出力信号に変換するステップと、
前記出力信号から前記動的な信号の蓄積を表す第2の補償信号を減算するステップとを有している
ことを特徴とする信号変換のための方法。
【請求項13】
ADC(アナログ−デジタル変換器)によって前記第2の入力信号を前記出力信号に変換するステップを更に有していることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の入力信号および第2の信号に従って第1の信号を算出するステップと、
前記第1の信号を積分することによって積分信号を生成するステップと、
前記積分信号のレベルを予め定められた閾値と比較するステップと、
この比較に従って前記出力信号を生成するステップと、
前記出力信号に従って前記第2の信号のレベルを調整するステップとを更に有している
ことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項15】
PN発生器によって複数のPN(疑似乱数)を生成するステップと、
前記PNのうちの対応するPNに従って前記第1の補償信号のレベルを調整するステップとを更に有している
ことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記動的な信号はPNであることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項17】
複数のPNを蓄積するステップと、
前記蓄積の結果が予め定められた値に達した時に前記第2の補償信号を生成するステップとを更に有している
ことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項18】
予め定められた個数のPNを受信するステップと、
前記PNの蓄積結果に従って前記第2の補償信号を生成するステップとを更に有している
ことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項19】
動的な信号を生成するために動作可能な信号発生器と、
前記信号発生器に接続されていて、前記動的な信号に従って第1の補償信号を調整して、前記第1の補償信号を第1の入力信号に加え、前記第1の入力信号と前記第1の補償信号の合計である第2の入力信号を変換モジュールに供給して、前記変換モジュールの出力信号から、前記動的な信号の蓄積を表す第2の補償信号を減算するために動作可能な補償モジュールとを備えている
ことを特徴とする電子システム。
【請求項20】
前記変換モジュールは、前記第2の入力信号を前記出力信号に変換するために動作可能なADC(アナログ−デジタル変換器)を有していることを特徴とする請求項19に記載の電子システム。
【請求項21】
前記信号発生器は、前記動的な信号を生成するために動作可能な疑似乱数信号発生器であることを特徴とする請求項19に記載の電子システム。
【請求項22】
前記信号発生器は、複数のPN(疑似乱数)を生成するために動作可能なLFSR(リニアフィードバックシフトレジスタ)であることを特徴とする請求項19に記載の電子システム。
【請求項23】
前記補償モジュールは、前記第1の補償信号を供給して、前記動的な信号に従って前記第1の補償信号のレベルを調整するために動作可能な信号変換器を有していることを特徴とする請求項19に記載の電子システム。
【請求項24】
前記第1の補償信号はアナログ信号であることを特徴とする請求項19に記載の電子システム。
【請求項25】
前記補償モジュールは、複数のPNを蓄積して、前記蓄積の結果が予め定められた値に達した時に前記第2の補償信号を生成するために動作可能なアキュムレータを有していることを特徴とする請求項19に記載の電子システム。
【請求項26】
前記補償モジュールは、予め定められた個数のPNを受信して、前記PNの蓄積結果に従って前記補償信号を生成するために動作可能なデジタルフィルタを有していることを特徴とする請求項19に記載の電子システム。
【請求項27】
前記補償信号はデジタル信号であることを特徴とする請求項19に記載の電子システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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