説明

信号活性汚染除去コーティング

信号に応答して汚染物質用の汚染除去剤を生成するコーティングを表面に施すことにより汚染物質による汚染の影響を受けやすい表面を汚染除去し、電気活性コーティングを信号発生源に接続し、表面が汚染されたときに、信号を電気活性コーティングに印加し、それにより汚染物質を中和または破壊する1つまたは複数の汚染除去剤を生成する方法が提示される。この方法を実施するためのコーティングおよび新規性のあるコーティングにより保護されている物品も、提示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]
関連特許および特許出願への相互参照
本出願は、全体が参照により本明細書に組み込まれる、2005年6月21日に出願した米国仮特許出願第60/692,529号のPCT出願であり、その優先権を主張するものである。
【0002】
[0002]
政府ライセンス権利
本発明は、米国陸軍RDECOM調達センター、ナティック契約課(マサチューセッツ州ナティック)により授与された契約番号W911QY−06−C−0065の下で政府支援によってなされた。政府は、本発明に対し一定の権利を有する。
【0003】
[0003]
本発明は、汚染除去コーティングに関するものであり、より具体的には信号をコーティングに印加することにより汚染除去効果がトリガされる汚染除去コーティングに関するものである。
【背景技術】
【0004】
[0004]
さまざまな状況において、汚染物質から表面を保護する、または表面を浄化することは重要である。病院および医療施設内の機器、床、壁、カウンターなどは、定期的に消毒されなければならないことはよく知られている。給食業務用機器および施設は、洗浄され、消毒されなければならない。一部の製造および/または診断設備の特定の処理機器では、高水準の清浄度および汚染物質排除が要求される。
【0005】
[0005]
異なる状況では、人間が重傷を負ったり、死亡したりすることを減らす、または回避するために生物化学兵器の汚染除去または中和を行えることが重要である。このような状況では、極端に攻撃的で、有害な化学薬剤または生物薬剤を意図的に配備することは、露出面の大規模汚染を引き起こすことが意図されており、これは、有害な薬剤がその有効性を維持し、表面に残存する限り、生体に危険であり続ける。軍隊などの組織がこのような有害な薬剤の取り扱いに関心を持っているだけでなく、郵便、宅配便などの組織も関わっている。
【0006】
[0006]
ふつうの洗浄および消毒要件のニーズを満たす多くの消毒および洗浄方法、ならびに化合物が、当業ではよく知られている。最近、生物化学兵器により汚染された表面および物品の汚染除去に使用できる改善された、さまざまな技術および化合物に注目が集まっている。
【0007】
[0007]
米国特許第6,316,015号において、Rondelezらは、リンカーまたはスペーサー分子を介して抗生物質、殺菌剤、殺ウイルス剤、または殺真菌剤の分子を表面に結合することにより形成される高殺菌性表面について説明している。
【0008】
[0008]
米国特許第6,343,425号において、Siasらは、微粒子が付着している物品の洗浄および殺菌を行うために2Hおよび2eを含む電子プラズマにより活性化される過酸化水素を応用することについて説明している。この方法に関する他の情報については、www.a2c2.com/articles/lifejan02(06/16/05)で、「A2C2」という表題により説明されている。
【0009】
[0009]
Hoffmanらは、米国特許第6,455,751号において、生物化学剤の解毒作用について酸化剤ゲルを説明している。このゲルは、酸化剤および増粘剤またはゲル化剤を含み、汚染箇所に直接塗布される。このゲルは、粘度が高いため、傾斜した、または起伏のある表面でも流れ去ることなく残存しうる。汚染除去の後、残留物は、洗い流すことができる。
【0010】
[0010]
米国特許第6,525,237号において、Purdonらは、活性汚染除去剤、共溶媒、緩衝系、および界面活性剤を含む広範囲にわたる汚染除去製剤について説明している。製剤は、泡として汚染表面上に分注されうる。
【0011】
[0011]
生物化学剤を中和するための製剤についても、米国特許第6,566,574号においてTadrosらにより説明されている。製剤は、汚染表面に泡として施され、毒物を中和する、少なくとも2つの可溶化化合物および少なくとも1つの反応性化合物を含むことができる。
【0012】
[0012]
米国特許第6,692,694号において、Curryらは、エアロゾル光線感作物質を含む製剤を汚染表面に噴霧し、次いで、好ましくはUV光を表面に照射し、化学または生物学的汚染物質の光分解を引き起こすことを伴うプロセスを説明している。
【0013】
[0013]
最近の研究の実施例は、光触媒酸化物質を含む物質の噴霧を汚染領域に吹き付け、次いで、酸化物質のフリー・ラジカルを放出する触媒活性作用をトリガする特定の波長の高輝度光線を照射することを伴う方法を含む(米国特許出願公開第20040120844A1号)。米国特許出願公開第20040076543A1号では、電極間のギャップ領域を通る汚染物質の分解を炉心の電極に印加される高電界が引き起こす汚染除去システムについて説明している。生物学的活性コーティングは、米国特許出願公開第20040109853号で説明されており、このコーティングは、リン酸トリエステル加水分解酵素を含む生体分子組成物を含み、化学兵器で使用される種類の有機リン化合物を分解する。自己洗浄、自己汚染除去コーティングについても、米国特許出願公開第2004/0224145A1号で説明されている。このコーティングでは、紫外線を使った活性化によるヒドロキシルラジカルの形成に光化学的触媒作用を及ぼすために、アナターゼ形態のTiOなどの遷移金属酸化物が使用される。ヒドロキシルラジカルは、表面を洗浄し、コーティングの表面上の汚染物質を分解する。
【0014】
[0014]
Collinsらの最近の研究では、過酸化水素の活性化が、いくつかの有害クロロフェノールを全面破壊することができる活性過酸化水素化学種をもたらすことが報告されている。例えば、www.sciencemag.orgに掲載されているGupta,S.S.ら、Science、296:326−328(2002)およびその論文の補助資料ならびにGhosh A.ら、Pure Appl.Chem.、73(1):113−118(2001)を参照のこと。これらの研究者たちにより説明されるシステムでは、テトラアミド大環状配位子(TAML(登録商標))鉄触媒などの特定の均質アミド含有大環状化合物が、温度および圧力の周囲条件において過酸化水素と接触することで、ペンタクロロフェノールおよび2,4,6−トリクロロフェノールなどの汚染物質を数分以内に破壊する活性過酸化水素化学種を形成する。TAML(登録商標)触媒は、過酸化水素への暴露に対し安定であり、ppm(100万分の1)単位の水中濃度で機能して、過酸化水素を活性化し、広範な酸化反応ならびにある種の加水分解および/またはペルヒドロライシス反応を実行するものとして説明される。TAML(登録商標)触媒の合成および構造に関する他の情報は、米国特許第5,847,120号および第6,054,580号に記載されている。TAML(登録商標)は、カーネギーメロン大学(ペンシルバニア州ピッツバーグ所在)の登録商標である。
【0015】
[0015]
このグループは、さらに、硫化アルキルおよび二硫化アルキルの酸化破壊(Collins、T.J.ら、Abstr.of Papers、228th ACS National Mtg.、Philadelphia、PA USA、August 22−26、2004、American Chemical Society、Washington,D.C.(2004))、有機リン化合物の分解(Collins,T.J.ら、Abstr.of Papers、226th ACS National Mtg.、New York、NY、USA、Sept.7−11、2003、American Chemical Society、Washington,D.C.(2003))、生物兵器の代用となる細菌胞子の非活性化(Banerjee,D.ら、Abstr.35th Central Regional Mtg.of the Am.Chem.Soc.、Pittsburgh、PA、USA、October 19−22、2003、American Chemical Society、Washington,D.C.(2003))、およびアゾ染料の漂白(Gupta,S.S.ら、Book of Abstracts、217th ACS National Meeting、Anaheim、CA、March 21−25、1999、Am.Chem.Soc.、Washington D.C.(1999))に対する、この同じシステムの応用についても報告している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
[0016]
近年、表面汚染除去技術に著しい進歩があったにもかかわらず、利用できる方法の適用には多くの制限が残っている。例えば、現在のシステムの多くでは、汚染事象が発生した後に適用する必要がある。この事象が著しい化学または生物兵器事象である場合、汚染除去救済策を適用した人自身が危険に曝される。したがって、汚染事象が発生する前に適所に配置することが可能な汚染除去システムを実現することが有益であろう。汚染事象の発生が差し迫っていることが予想される場合、またはそのような事象が発生してしまった後の任意の時点のいずれかにおいてこのようなシステムを活性化させることができれば、なおいっそう有益であろう。さらに、このようなシステムがそれ自体、腐食または有毒物質の蒸気またはコーティングされた表面に接触すると害を及ぼす液体またはゲルなどの危険をヒトや動物にもたらすことがなければ有益であろう。また、このような方法が、望ましい場合に活性化され、汚染の危険性が去った後に、非活性化されることが可能であり、ヒトと動物に無害な状態に戻るのであれば有益であろう。このような方法を利用しやすくするシステムが、初期使用後に、すぐに使える状態に容易に戻せる場合には、なおいっそう有益であろう。さらに、この方法およびシステムが長持ちする、つまり、持続し、雨、霧、雪、または他の通常の環境事象により保護表面から浸出したり洗い落とされたりしなければ、有益であろう。また、このような方法またはシステムが、殆どどのような種類の表面にも適用できる、例えば、織物などの柔軟な材料、さらには車両、カウンタートップ、壁、床などの硬い表面にも適用できれば有益であろう。
【課題を解決するための手段】
【0017】
[0017]
したがって、簡単にいうと、本発明は、コーティング中に活性過酸化物を生成する新規性のある方法を対象とし、この方法は、過酸化物源および過酸化物活性化触媒を含むコーティングを実現する工程と、過酸化物源に過酸化物を生成させる工程と、過酸化物を触媒に接触させて活性過酸化物を生成する工程とを含む。
【0018】
[0018]
本発明は、さらに、汚染物質による汚染の影響を受けやすい表面の汚染除去を行う新規性のある方法も対象とし、この方法は、電位がコーティングに印加されたときにその汚染物質用の汚染除去剤を生成するコーティングを表面に施す工程と、電気活性コーティングを電位の発生源に接続する工程と、表面が汚染された場合に、電位を電気活性コーティングに印加し、それにより、汚染除去剤を生成し、汚染物質を破壊する工程とを含む。
【0019】
[0019]
本発明は、さらに、表面に対する新規性のあるコーティングを対象とし、コーティングは、耐久性のあるマトリックス中に過酸化物源および過酸化物活性化触媒を含む。
【0020】
[0020]
本発明は、さらに、コーティングと接触している汚染物質用の汚染除去剤を生成するコーティングを含む新規性のある電気活性汚染除去コーティングを対象とし、この汚染除去剤は、電位がコーティングに印加されたときに生成される。
【0021】
[0021]
本発明は、さらに、汚染物質による汚染の影響を受けやすい表面用の電気活性汚染除去コーティングを形成する新規性のある方法も対象とし、この方法は、少なくとも1つのプラス電極(positive electrode)と少なくとも1つのマイナス電極(negative electrode)を表面に施す工程と、プラス電極とマイナス電極上で導電性またはイオン伝導性であるマトリックスを含む層を施す工程とを含み、マトリックスは、過酸化物活性化触媒を含み、酸素、水蒸気、および過酸化水素を通すことができる。
【0022】
[0022]
本発明は、さらに、上述のコーティングのうちのいずれか1つでコーティングされた新規性のある物品も対象とする。本発明は、さらに、新規性のあるセンサ活性汚染除去コーティング・システムも対象とし、本明細書で説明されている電気活性汚染除去コーティングのうちのいずれか1つと、電位発生源と、電位発生源とコーティングの電極とを相互接続する電極リードと、電気リード内に配置され、コーティングへの電位印加を制御するスイッチと、スイッチの動作を制御するセンサとを備える。
【0023】
[0023]
本発明によっていくつかの利点がもたらされることがわかっているが、中でも、汚染事象が発生する前に適所に配置することが可能な汚染除去システムを実現すること、汚染事象の発生が差し迫っていることが予想される場合、またはそのような事象が発生してしまった後の任意の時点のいずれかにおいて、活性化できるそのようなシステムの実現、それ自体ヒトまたは動物に危険を及ぼさないそのようなシステムの実現、望ましい場合に活性化され、汚染の危険が去った後に、非活性化されることが可能であり、ヒトおよび動物にとって無害な状態に戻るそのような方法の提供、初期使用後にすぐに使える状態に容易に戻せるそのような方法の提供、長持ちし、雨、霧、雪、または他の通常環境事象により保護表面から浸出したり洗い流されたりすることのないそのような方法およびシステムの提供、ならびに殆どどのような種類の基板にも施すことができるそのような方法またはシステムの実現が挙げられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
[0024]
本発明によれば、汚染された表面は、汚染除去剤を生成する表面コーティングを使用することにより汚染除去されうることが発見された。コーティングは、汚染する前に表面に施される。表面が汚染された後、コーティングは、汚染除去剤を形成し、これは、コーティングの表面に向かって移動し、表面上に堆積された汚染物質と接触してこれを破壊するか、または中和する。本発明のコーティングは、耐久性があり、水に不溶性であり、浸出を生じず、異なる種類の汚染除去剤を生成するように設計できる。
【0025】
[0025]
本発明のコーティングの特に有用な実施形態では、汚染除去剤の生成または放出が信号によりトリガされる。これは、一般に、電位をコーティングに印加することである。この特徴には、コーティングは、汚染事象よりも十分前に影響を受けやすい表面に施され、次いで、必要なときのみ−通常は、汚染事象が発生した後に−活性化されるようにできるという利点がある。このシステムの新規性のある一実施形態では、コーティングは、最終的に空気と水とから汚染除去剤を生成するように設計できる。したがって、コーティングが活性化された後、またコーティングに含まれる水および酸素の蓄積が尽きた後、これらの蓄積は、単にコーティングを空気および/または水に曝すだけで回復させることができる。したがって、コーティングは、空気および/または水への暴露により繰り返し活性化され、回復され、何度も繰り返して活性化されうる。このような特徴は、汚染事象と汚染事象との間に表面処理を再開するのが困難であるか、または危険である領域においてコーティングが使用される場合に非常に有利である。
【0026】
[0026]
さらに、本発明のコーティングおよび方法では、多くのヨウ素ベースの汚染除去システムの利用を制限している日光、または熱作用による非活性化の問題が生じない。これは、ヨウ素およびヨウ化物が光化学反応であり、ヨウ素が揮発性であるためであり、したがって、加熱されると処理中の表面から空気中へと拡散する傾向を持つ。
【0027】
[0027]
本発明のコーティングは、殆どどのような種類の基板の表面でも使用できるように適合させることが可能である。本発明のコーティングを施すことができる基板の実施例としては、金属、プラスチック、木材、織物、ガラス、セラミック、またはこれらのいずれかの混合物がある。本発明のコーティングおよび本発明の方法は、織物およびフィルムなどの曲げやすい基板の表面に施された場合に特に有用である。これらの用途では、本発明の保護コーティングは、衣類、テント、保護シェルターなどに施すことができる。
【0028】
[0028]
殆どのどのような基板も、本発明のコーティングおよび方法の使用に適しているが、例えば、環境に露出される表面など、汚染の影響を受けやすい表面を有する基板であるのが好ましい。基板は、硬いか、または柔らかいか、または殆どどのようなきめのものであってよく、限定はしないが、金属、プラスチック、木材、織物、粘土、紙などを含む殆どどのような材料からも形成することができる。本発明のコーティングおよび方法が一般に使用される基板としては、神経ガス、毒素、および生物兵器などの有害な薬剤に曝される可能性のあるテント、保護被覆およびシェルター、車両の外装面、および機器があり、その表面は、調理および給食機器、ならびに病院および公共医療サービス機器などにおいて、きれいであること、および殺菌されていることが重要である。さらに、本発明のコーティングおよび方法は、例えば、塗装面などの基材表面に施された殆どどのようなプリコートにも施すことができる。
【0029】
[0029]
「表面」または「面」という用語は、本明細書において基板−対象となるコーティングが施される材料または物品−に関して使用される場合、これは、汚染の影響を受けやすい、汚染除去能力が望まれている材料または物品の表面を意味する。これらの表面は、一般に、外面、つまり、周囲環境に曝される材料または物品の表面である。「表面」という用語が、本明細書において、本発明のコーティングに関して使用される場合、これは、基板に接触するか、または基板に最も近いコーティングの表面ではなく、コーティングの外面のことである。
【0030】
[0030]
本発明は、表面に対するコーティングを含み、このコーティングは、耐久性のあるマトリックス中に過酸化物源および過酸化物活性化触媒を含む。
【0031】
[0031]
本発明は、さらに、コーティングと接触している汚染物質用の汚染除去剤を生成するコーティングを含む電気活性汚染除去コーティングを含み、この汚染除去剤は、電位がコーティングに印加されたときに生成される。
【0032】
[0032]
本明細書で使用されているように、「電気活性汚染除去コーティング」という用語は、電位がコーティングに印加されたときに汚染除去特性を示す基板の表面上のコーティングを意味する。汚染除去剤を生成するために電位をコーティングに印加することは、本明細書では、「電気活性」と呼ばれる。好ましくは、コーティングは、電気活性前よりも電気活性中の方が大きな汚染除去特性を示す。一実施形態では、電気活性コーティングは、電位がコーティングに印加されたときに、酸化剤などの汚染除去剤を生成する。
【0033】
[0033]
好ましい一実施形態では、本発明のコーティングの成分は、耐久性のマトリックスである。これは、ポリマー、ゲル、樹脂、または後述のように、イオン伝導性および/または導電性を持つことができる、硬化した後に非水溶性の、耐久性のある固体の、または剛性のある、またはゲル状のマトリックスを形成する他の構造材料の1つまたは複数の層とすることができる。本発明のコーティングは、イオン伝導性を持つことができると言われた場合、電荷がイオン種としてコーティング内を移動することができることを意味する。本発明のコーティングは、導電性を持つことができると言われた場合、電子または正孔がイオン芯の移動なしでコーティング内を移動することができることを意味する。
【0034】
[0034]
本発明のコーティングは、基板表面に付着し、コーティングが、いったん施され、硬化が必要であれば硬化された後に、コーティングされた物品の通常使用による除去に対し耐性を持つ程度に耐久性を有することが好ましい。さらに、コーティングは、非水溶性であることが好ましい。本明細書で、これらの用語が使用されとき、2重量%を超えない硬化されたコーティングが24時間の間25℃の水に浸けた後溶解する場合に非水溶性である。コーティングの1%を超えない部分が溶解することが好ましく、コーティングの0.5重量%を超えない部分がこれらの条件の下で溶解することはより好ましい。好ましい一実施形態では、本発明のコーティングは、フォーム、液剤などを表面に塗布することにより表面上に形成されうる一時的コーティングから区別される。しかし、本発明の他の実施形態では、フォーム、液体、および他のそのような形態の使用が望ましい場合がある。
【0035】
[0035]
本発明のコーティングが汚染除去剤として過酸化水素を生成する電気活性コーティングである場合、コーティングは、水蒸気および酸素を通すことができることが好ましい。さらに、コーティングは、活性過酸化水素がコーティングの表面に向かって移行し活性水素が表面に存在する汚染物質と接触できるように活性過酸化水素に対する十分な透過性を持つことが好ましい。
【0036】
[0036]
本発明のコーティングが電気活性コーティングである場合、汚染除去剤の生成は、電位をコーティングに印加することにより活性化されうる。電位を本コーティングに印加するために、コーティングは、好ましくは、プラス電極とマイナス電極と接触させられ、電極間に電位が発生する。それぞれの種類の電極の1つまたは複数が使用され、実際、図6に例示されているように、それぞれの種類の多くの電極が、コーティングと接触させられうる。典型的には、電極は、電極リードを介して、電位の発生源に接続される。電極が、コーティングと一体化されるか、またはコーティングが、予め存在している電極上に施されるようにできる。
【0037】
[0037]
本発明の電気活性コーティングは、好ましくは、電極を通じて電位の発生源に接続される。これは、例えば、電池、ライン電圧、太陽電池パネル、発電機、または他の電位源などの任意の電位源としてよい。しかし、電池または他のDC電流源が好ましい。低電圧の直流がコーティングに流されるのが好ましい。この電圧は、Ag/AgCl基準電極に対し約−10ボルトと+50ボルトの間であることが好ましく、Ag/AgClに対し約−5ボルトと約+25ボルトの間であることがより好ましく、Ag/AgClに対し約−2ボルトと約+5ボルトの間であることがいっそう好ましく、Ag/AgClに対し約−1ボルトと+2ボルトの間であることがなおいっそう好ましい。
【0038】
[0038]
本明細書で使用されているように、「汚染物質」という用語は、生命過程に対する化学的または生物学的作用により、もし未処理のまま残された場合に、死亡、一時的無能力、または永続的な害をヒトまたは動物に引き起こす化学的もしくは生物学的化合物、構成要素、種、または薬剤を意味する。これは、その原産地またはその生産方法に関係なく、そのようなすべての化学物質または生物剤を含む。本発明の方法およびコーティングは、生物化学兵器、さらにはふつうの細菌、ウイルス、カビ、または他の望ましくない化学物質、毒素、または生物で汚染された表面の汚染除去に使用できる。本発明により破壊できる生物兵器は、限定することなく、栄養体および胞子体を含む、細菌、ウイルス、およびカビを含む。これらは、炭疽病、天然痘、疫病(plague)、ボツリヌス毒素、および他の疾病を発生する、または原因細菌である生物を含む。さらに、生物によって生成される化学的毒素も含まれる。
【0039】
[0039]
本発明により破壊できる化学兵器は、o−アルキルホスホノフルオリデート、サリン(GB)およびソマン(GD)、およびタブン(GA)などのo−アルキルホスホルアミドシアニダートなどの各種神経ガスG、o−アルキル、s−2−ジアルキルアミノエチルアルキルホスホノチオラート、およびVXなどの対応するアルキル化またはプロトン化塩などの各種神経ガスV、2−クロロエチルクロロメチルスルフィド、ビス(2−クロロエチル)スルフィド、ビス(2−クロロエチルチオ)メタン、1,2−ビス(2−クロロエチルチオ)エタン、1,3−ビス(2−クロロエチルチオ)−n−プロパン、1,4−ビス(2−クロロエチルチオ)−n−ブタン、1,5−ビス(2−クロロエチルチオ)−n−ペンタン、ビス(2−クロロエチルチオメチル)エーテル、およびビス(2−クロロエチルチオエチル)エーテルを含む、マスタード化合物などの発疱剤、2−クロロビニルジクロロアルシン、ビス(2−クロロビニル)クロロアルシン、トリス(2−クロロビニル)アルシン、ビス(2−クロロエチル)エチルアミン、およびビス(2−クロロエチル)メチルアミンを含む、ルイサイト、サキシトキシン、リシン、アルキルホスホニルジフルオリド、アルキルホスホナイト、クロロサリン、クロロソマン、アミトン、1,1,3,3,3,−ペンタフルオロ−2−(トリフルオロメチル)−1−プロペン、3−キヌクリジニルベンジラート、メチルホスホニルジクロリド、ジメチルメチルホストナート、ジアルキルホスホルアミジクジハライド、ジアルキルホスホルアミダート、三塩化ヒ素、ジフェニルヒドロキシ酢酸、キヌクリジン−3−オール、ジアルキルアミノエチル−2−クロリド、ジアルキルアミノエタン−2−オール、ジアルキルアミノエタン−2−チオール、チオジグリコール、ピナコリルアルコール、ホスゲン、塩化シアン、シアン化水素、クロロピクリン、オキシ塩化リン、三塩化リン、五塩化リン、アルキルホスファイト、一塩化硫黄、二塩化硫黄、および塩化チオニルを含む。
【0040】
[0040]
本発明の一実施形態の汚染除去剤は、好ましくは、コーティングに電位が印加されたときにコーティング内に発生し、コーティングの外面と接触する汚染物質と薬剤が作用可能な形で接触するのに必要な程度にコーティング内で移動可能であり、汚染物質に作用して汚染物質を破壊または中和する分子または化合物である。
【0041】
[0041]
有用な汚染除去剤の実施例は、次亜塩素酸ナトリウム、塩素、ペルオキシ一硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、ペルオキシ一硫酸アンモニウム、ペルオキシ二硫酸塩を含む、次亜塩素酸塩などの反応性酸素種、過マンガン酸カリウムを含む、過マンガン酸塩、過酸化水素などの過酸化物、および水酸化物などの求核活性剤、ならびに過酸化水素のモノアニオンおよびジアニオンを含む。求核剤は、金属錯体などの触媒に結合されうる。
【0042】
[0042]
好ましい一実施形態では、汚染除去剤は、過酸化水素およびその脱プロトン化体の一方または両方であり、活性過酸化水素が、特に好ましい。活性過酸化水素は、典型的には、過酸化水素であるか、または金属触媒に結合されたアニオン体の1つである。過酸化物と金属触媒との結果として得られる錯体は、過酸化、酸化、ペルヒドロライシス(perhydrolysis)、および加水分解のうちの1つまたは複数の反応を通じて汚染物質を破壊することがうまくできると信じられている。
【0043】
[0043]
活性過酸化物を得るために、コーティングに過酸化物活性化触媒を含めることが好ましい。有用な過酸化物活性化触媒の実施例は、エチレンジアミン四酢酸と鉄などの金属との錯体(EDTA/Fe錯体)、大環状テトラアミド配位子(TAML(登録商標))と鉄などの金属との錯体(TAML(登録商標)/金属錯体の実施例は、米国特許第5,847,120号、米国特許第6,051,704号、米国特許第6,011,152号、米国特許第6,100,394号、および米国特許第6,054,580において説明されている化合物である)、グルコン酸マンガン、次亜塩素酸ナトリウム、N−[4−(トリエチルアンモニオメチル)ベンゾイル]−カプロラクタムクロリド、ノナノイルオキシベンゼンスルホナート、ポルフィリン、フタロシアニン、酸化ルテニウム、酸化インジウム、キノンなどを含む。本発明の方法における過酸化物活性化触媒として使用できるポルフィリンおよびフタロシアニンの実施例は、図1に示されているものを含む。本発明の過酸化物活性化触媒は、TAML(登録商標)/金属錯体、およびTAML(登録商標)/Fe錯体を含む。過酸化物活性化触媒は、本発明のコーティング中のどこかに配置できる。例えば、マトリックス層全体にわたって分散されるか、またはマトリックス層の上に形成された表面層内に含まれうる。それとは別に、コーティングが施される基板に連結されるか、吸着されるか、または他の何らかの方法で貼り付けられることができる。一実施形態では、過酸化物活性化触媒は、ゲルまたはポリマー層に化学的に結合されるが、他の実施形態では、過酸化物活性化触媒は、ゲルおよび/または外側ポリマー層とブレンドされる。本発明のゲルがポリマーであってよいことは、理解されるであろう、本明細書で使用されているような「ポリマー層」という用語は、ゲルと異なる層を指す。
【0044】
[0044]
過酸化物活性化触媒は、化学結合により、または静電気力により、または細孔への吸着によりゲルおよび/またはポリマー層に結合されうる。過酸化物活性化触媒とゲルおよび/またはポリマー層との間の化学結合は、当業で知られている複数の化学結合方法のいずれかにより形成されうる。このような結合の重要な特徴は、結合の安定性または不活性、および活性化されたコーティングに見られる条件の下で過酸化水素による酸化に対する結合を形成する共役である。安定性は、触媒をゲルまたはポリマー層に結合するアルカンまたはアミドベースのリンカーによりもたらされ、アミンおよびカルボン酸基は、置換オレフィンを含む中間物質に由来するアルカンと同様に、多くの好適な触媒/ゲルまたは触媒/ポリマー複合体の基礎となる。
【0045】
[0045]
触媒をゲルまたはポリマー層に化学結合するのに使用される方法の実施例は、(a)安定性または不活性を高めるヒンダード3級アミンまたは4級アミンをもたらすようにさらに反応させることができる2級アミンを与えるベンジルクロリド(ゲルまたはポリマー層上の)と1級アミン(触媒の配位子または錯体からつり下がっている)との反応、(b)安息香酸部分(ゲルまたはポリマー層内の)と触媒または触媒に付着している配位子からつり下がっているカルボン酸または亜硝酸化合物との反応を含む。他のこのような結合方法は、当業でよく知られている。
【0046】
[0046]
他のアプローチでは、過酸化物活性化触媒は、安定カチオンまたはアニオン交換膜で固定化されうる。例えば、4級アミン官能基を触媒上に配置して正味の正電荷を与えた後、帯電触媒をNafion(登録商標)などの酸化安定イオン交換ポリマー膜内に導入するようにできる。同様の方法で、マイナスに帯電した触媒は、スルホン酸塩、カルボン酸塩、フェノラート、またはアミン二酢酸基を触媒構造に添加することにより得ることができ、またマイナスに帯電した触媒は、3級または4級アンモニウム基を含むアニオン交換膜内に導入されうる。上述の触媒/イオノマー膜のいずれかは、過酸化物生成電極の表面上にラミネートされるか、またはポリマー溶液から電極上にコーティングされ、続いて乾燥および/またはアニーリングが行われうる。
【0047】
[0047]
活性過酸化水素が汚染除去剤である本発明のコーティングの実施形態において、1つまたは複数の媒介体が含まれることが好ましい。本明細書で使用されているように、媒介体は、過酸化水素の形態で電子および水素イオンを酸素に移行させることに関与する化合物または分子であると理解される。好ましくは、媒介体は、可逆的に酸化および還元され、化学反応において水素イオンおよび電子を移動することができる。本発明のコーティングおよび方法にとって有用な媒介体の実施例は、キノン、ナフサキノン、およびアントラキノンを含む。キノンおよびアントラキノンは、置換または非置換としてよい。有用な媒介体の実施例は、キノン、ナフサキノン、アントラキノン、およびその誘導体を含む。これらのいずれかの混合物も使用できる。本発明の方法で媒介体として使用できる置換アントラキノンの一実施例は、図2に示されているような構造を有する。
【0048】
[0048]
媒介体は、電極に付着でき、および/またはコーティングのマトリックス全体に分散できる。図3は、炭素電極とすることができる陰極へのアントラキノンの付着、および陰極から水素イオンおよび電子を酸素に移動し過酸化水素を発生させる際のアントラキノンの機能を例示している。一実施形態では、結合されたアントラキノンを有する電極は、基板に付着され、マトリックス層で覆われるようにすることが可能である。電極に電位を印加することで、アントラキノンが還元され、4,9−ジヒドロキシアントラセンになる。マトリックス層を通じて拡散する酸素は、次いで、4,9−ジヒドロキシアントラセンにより還元され、過酸化水素となり、4,9−ジヒドロキシアントラセンは、酸化されて、アントラキノンに戻る。次いで、このサイクルは、電位がコーティングに印加されたままであり、酸素が電極のところで利用できる限り繰り返されうる。
【0049】
[0049]
図4は、過酸化物の電気活性生成の図であり、図4(A)では、媒介体が存在しない場合に電極のところで反応が発生しうることを示している。図4(B)は、同じ反応を示しているが、媒介体の存在により触媒作用が生じる。
【0050】
[0050]
本明細書で使用されているように、「汚染除去する」という言いまわしは、汚染物質をヒトまたは動物に有害な形態または量から任意の程度でヒトまたは動物にあまり有害でない形態または量に変えることを意味する。好ましくは、汚染物質が汚染除去される場合、汚染物質は、汚染除去が完了した後に接触したヒトまたは動物にとって実質的に無害なものにされる。汚染物質の汚染除去の背景状況において本明細書で使用される場合、「破壊する」という言いまわしは、汚染物質の化学構造を、元の構造に比べてヒトまたは動物にとって害が少ない化学形態に変えることを意味し、「中和する」という言いまわしは、汚染物質と、その汚染物質と結合するか、または希釈する、または他の何らかの方法で、接触するヒトまたは動物の生体系との有害な相互作用に利用されにくくする他の化合物または材料と組み合わせることを意味する。
【0051】
[0051]
本発明の好ましい一実施形態では、汚染除去剤は、過酸化物である。本発明のコーティングが、過酸化物供給源となることが好ましい。過酸化物供給源は、適宜、過酸化物の溜めとなるか、または信号活性過酸化物生成システムを含む。
【0052】
[0052]
本明細書で使用されているように、「信号活性」過酸化物生成システムは、信号に応答して過酸化物を生成する系である。本発明のコーティングを活性化する好ましい信号は、コーティングの一部または全部に電位を印加することである。信号活性システムでは、汚染除去剤は、電位がコーティングに印加される場合に生成される。汚染除去剤は、溜めから解放されることにより生成されうるか、またはコーティング内の化学反応により合成されうる。汚染除去剤が、電位の産物である場合、信号活性過酸化物生成システムは、プラス電極とマイナス電極を備え、これらは、水および/または酸素を含む導電性またはイオン伝導性マトリックスにより相互接続されている。
【0053】
[0053]
本発明の電気活性汚染除去コーティングの一実施形態は、図5に例示されている。本発明のコーティングのこの実施形態では、電位に応答して陽極と陰極の両方に過酸化水素が発生する。陽極では、水の酸化により過酸化水素が発生する。陰極では、酸素還元により過酸化水素が発生する。図に示されていないが、このシステムは、さらに、これらの電極を電位の発生源の適切な極と相互接続する電極リードを備えることができる。このシステムは、適宜、プラス電極リードまたはマイナス電極リード内に配置されるか、または電気系統内の他の場所に配置できるスイッチを備えることができ、このスイッチで、電位が電極に印加されるかどうかを制御することができる。図5に例示されているように、電極のところに過酸化水素が発生する。次いで、過酸化物が、図5では「電解質ゲル」と呼ばれているマトリックス内に拡散し、そこで、過酸化物を活性化する過酸化物活性化触媒に遭遇する。次いで、活性過酸化物は、コーティングの表面に移動して、表面上に存在する汚染物質(ここでは、生物化学兵器「CBWA」として示されている)と接触し、表面を汚染除去することができる。
【0054】
[0054]
本発明のコーティングの活性化を制御するために使用されるスイッチは、手動で活性化されるか、またはセンサからの信号により活性化されうる。本発明のコーティングが、センサにより活性化されるスイッチと組み合わせた場合、センサ活性汚染除去コーティング・システムが形成される。このようなシステムは、本発明の範囲内にある。
【0055】
[0055]
本発明のセンサ活性汚染除去コーティング・システムは、本明細書で説明されている電気活性コーティングのうちの1つによる電気活性汚染除去コーティング、電位の発生源、電位の発生源およびコーティングの電極を相互接続する電極リード、電気リード内に配置され、コーティングへの電位の印加を制御するスイッチ、およびスイッチの動作を制御するセンサを備えることができる。このセンサは、汚染物質の存在を感知するセンサとしてよく、好ましい一実施形態では、このセンサは、化学兵器および/または生物兵器の存在を感知する。好ましい一実施形態では、センサは、汚染物質の存在を感知するとスイッチを閉じて対象コーティングを活性化する。センサは、適宜、所定の時間が経過した後、または他の何らかの指示に対する応答としてスイッチを開く。スイッチが開かれると、コーティングの活性化が止まる。
【0056】
[0056]
本発明で使用される電極は、導電性材料から形成できる。好適な電極材料の実施例は、白金(任意の形態でよいが、限定はしないが、板形態、リング−ディスク形状、箔、またナノ粒子を含む)、金(表面修飾があるもの、またはないもの)、インジウム・スズ酸化物などの金属酸化物、導電性金属塩、炭素、炭素/金属複合材、固有導電性ポリマー(intrinsically conductive polymers)、カーボン・ナノチューブを含む材料、およびこれらの材料のいずれかの混合物を含む。好ましい実施形態では、電極は、炭素/白金、固有導電性ポリマー、またはカーボン・ナノチューブを含む材料などの炭素/金属複合材から形成されうる。
【0057】
[0057]
電極の一方または両方は、適宜、フッ素化スルホン酸コポリマーなどのポリマーでコーティングされ、その一実施例は、Nafion(登録商標)であり、これにより、過酸化水素の分解を低減または阻止する。好ましくは、陽極は、適宜、Nafion(登録商標)などの、フッ素化スルホン酸コポリマーでコーティングされる。
【0058】
[0058]
本発明の電極リードは、当業の電極リードに一般に使用される材料であればどのようなものでもよい。例えば、電極リードは、銀または銅などの金属から、または導電性金属化合物から、または炭素から、または固有導電性ポリマーから、または同様の材料から形成されうる。
【0059】
[0059]
本発明のコーティングの一実施例は、プラス電極とマイナス電極を備え、これらは、導電性またはイオン伝導性の非水溶性マトリックスにより相互接続されている。このコーティングは、さらに、置換または非置換キノンまたはアントラキノンから選択され、マトリックス内に存在するか、または電極に結合された媒介体、およびEDTA/Fe錯体またはTAML(登録商標)/金属錯体または触媒を使って過酸化物を活性化することが知られている他の金属錯体から選択された過酸化物活性化触媒も含む。コーティングは、さらに、プラス電極およびマイナス電極を電位発生源と相互接続するための電極リードも備える。
【0060】
[0060]
本発明のコーティングは、本明細書で説明されている構造の形成に適した技術により形成されうる。一実施形態では、電気活性汚染除去コーティングは、少なくとも1つのプラス電極と少なくとも1つのマイナス電極を基板の表面に取り付けることにより形成される。これらの電極は、構造材料が同じであっても、異なっていてもよく、また上述の電極材料のうちのいずれかから形成されうる。好ましくは、電極は、炭素/白金複合材、または固有導電性ポリマー、またはカーボン・ナノチューブを含む材料である。電極は、当業で知られている任意の方法により施されうる。
【0061】
[0061]
カーボン・ナノチューブが電極内で使用される場合、これらの電極は、基板の表面上にカーボン・ナノチューブをスピン・コーティングすることにより加工できる。これらは、すでに施されている炭素電極面に直接施され、例えばnafionおよび/またはteflonを含む溶液中で、またはポリエチレンを含む溶液中で混合物として施されうる。他の方法では、カーボン・ナノチューブは、スクリーン印刷に通常使用されるインク内に混ぜ込むことができ、また電極は、カーボン・ナノチューブを含むインクを使用するスクリーン印刷により施されうる。さらに他の方法では、電極は、ポリピロールとカーボン・ナノチューブとの電解重合により、またはカーボン・ナノチューブをゾルゲル技術と組み合わせて多孔質電極材料を生成することにより形成されうる。しかし、電極は、スクリーン印刷により施されるのが好ましい。
【0062】
[0062]
この方法の第2の工程では、プラス電極とマイナス電極上で導電性またはイオン伝導性であるマトリックスを含む層を施し、そこではマトリックスは、過酸化物活性化触媒を含み、酸素、水蒸気、および過酸化水素を通すことができる。次いで、マトリックスは、硬化が必要であれば硬化される。マトリックスは、当業で知られている任意の方法により施すことができるが、マトリックスは、スクリーン印刷により施される。
【0063】
[0063]
上述の工程のいずれかにおいて、コーティングを施すことは、1つの工程または一連の工程において1つまたは複数の層を表面に施すことを伴いうる。
【0064】
[0064]
電極およびマトリックスが施された後、マトリックスは、酸素と水を蓄積することが可能になり、電極リードは、電極と電池などの電位発生源の適切な端子との間で接続される。十分な量の酸素と水がコーティング内に蓄積している場合、活性化の準備が整っていることになる。
【0065】
[0065]
過酸化物活性化媒介体を使用するのが望ましい実施形態では、媒介体は、適宜、複数の電極のうちの1つまたは複数に適用されるか、またはマトリックス全体に分散させることができる。それとは別に、電極に結合されるとともにマトリックス全体に分散されるか、またはコーティングの外面に結合または一体となる媒介体を備えることができる。
【0066】
[0066]
本発明は、さらに、コーティング中に活性過酸化物を生成する方法も含む。この新規性のある方法は、過酸化物源および過酸化物活性化触媒を含むコーティングを供給する工程と、過酸化物源で過酸化物を生成させる工程と、過酸化物を触媒に接触させて活性過酸化物を生成する工程とを含む。
【0067】
[0067]
過酸化物供給源は、適宜、過酸化物の溜めとなるか、または信号活性過酸化物生成システムを含む。上述のように、好ましい一実施形態では、過酸化物は、過酸化水素であり、過酸化物源は、信号活性過酸化物生成システムであり、これは、プラス電極とマイナス電極を備え、これらの電極は、水および/または酸素を含む導電性またはイオン伝導性媒体により相互接続されている。
【0068】
[0068]
過酸化物源に過酸化水素を生成させる工程は、過酸化水素の生成を活性化する信号を供給することにより実行できる。好ましくは、この信号は、プラス電極とマイナス電極の間に電位を印加することであり、これにより、酸素の還元と過酸化水素の生成を引き起こす。
【0069】
[0069]
電極のところに過酸化水素を形成することを容易にするために、過酸化物源は、さらに、過酸化水素を形成する際に電子および水素イオンが酸素に移動することに関わる媒介体を含むことが好ましい。好ましい媒介体の実施例は、キノンおよびアントラキノンを含む。
【0070】
[0070]
本発明は、さらに、汚染物質による汚染の影響を受けやすい基板の表面の汚染除去を行う方法も含む。この方法は、電位がコーティングに印加されたときにその汚染物質用の汚染除去剤を形成するコーティングを表面に施し、電気活性コーティングを電位源に接続する工程と、表面が汚染されたときに、電位を電気活性コーティングに印加し、それにより、汚染除去剤を生成し、汚染物質を破壊する工程とを伴う。本発明の方法の一実施形態が図7に例示されており、そこでは、本発明のコーティングが、シェルター布を覆うポリマー・フィルムに施される。新規性のあるコーティングは、過酸化物活性化触媒およびマイクロカプセル化または電気化学的生成過酸化水素を含むことが例示されている。次いで、コーティングの表面上の、図7ではCBWAとして例示されている汚染物質が、活性過酸化水素の作用により破壊される。類似の概念が、図8に例示されており、電位(V)の発生源は、新規性のあるコーティングに接続されるように示されている。
【0071】
[0071]
上述のように、汚染物質は、化学兵器、生物兵器、細菌毒素、病原微生物、またはこれらのいずれかの混合物を含みうる。
【0072】
[0072]
本発明の方法は、さらに、電位を電気活性コーティングに印加するのを停止し、それにより汚染除去剤の生成を停止する工程を含むことができる。電位の印加が停止された後、コーティングは、空気に曝すことができ、空気から酸素がコーティング中に入り込むことが許される。また、水蒸気も、コーティング中に入り込むことが許されうる。酸素と水がコーティングに戻された後、電位を電気活性コーティングに印加し、それにより、汚染除去剤を生成し、汚染物質を破壊する工程を繰り返すことができる。
【0073】
[0073]
本発明のコーティングで覆われた物品は、さらに、本発明の範囲内に含まれる。
[0074]
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を説明するものである。本発明の請求項の範囲内の他の実施形態は、当業者には、本明細書に開示されているような本発明の明細または実施方法を考察すれば明白になるであろう。本明細書は、実施例とともに、請求項により示される本発明の範囲および精神に従い、例示のみを目的として考察されることが意図されている。これらの実施例では、すべての割合は、特に断りのない限り重量に基づいて示される。
【実施例1】
【0074】
[0075]
この実施例は、水溶液中での過酸化水素の電気活性による生成、および過酸化物活性化触媒による過酸化物のその後の活性化を例示している。
【0075】
[0076]
この実施例では、過酸化水素は、電極表面に発生し、キノンは、媒介物として含まれた。過酸化水素の発生は、ヨウ化物イオンを酸化してヨウ素にし、その後ヨウ素とデンプンを反応させて青色錯体を形成することにより示された。
【0076】
[0077]
詳細な手順では、過酸化水素(H)を、酸性水溶液(0.1MのHSOでpHを約1.8に調整した0.5MのNaSO)中で電気化学的に発生させた。白金箔(1cm)を作用電極および対極として使用し、反応時にSCEを介して−0.6Vを印加した。反応時に空気を酸素供給源として溶液中に通し泡立てた。ヒドロキノン(HQ)が存在しない場合は、Hはゆっくりと発生し、3時間後にごく少量のHが発生した。しかし、Hは、0.001M HQを加えたときに10秒間発生した。ヨードカリとデンプンの組み合わせを使用して、Hの形成を検出した。Hが発生すると、ヨウ化物は酸化されてヨウ素が生成され、次いで、これはデンプンと反応して、青色錯体を形成した。溶液中が青色に見えることは、Hが形成されたことを示していた。
【実施例2】
【0077】
[0078]
この実施例は、本発明の方法のコーティングのいくつかの実施形態の加工法を例示しており、また水溶液とコーティング中に過酸化水素を発生させる方法の実現可能性を示している。
【0078】
[0079]
材料と計装:
[0080]
スクリーン印刷により、白金を含むカーボン・ペーストをプラスチック・シートにコーティングした。Delta Technologies社から入手したPETシート上にインジウム・スズ酸化物をコーティングした。Aldrich社の白金箔および金箔を、受け取ったまま使用した。使用した窒素と酸素は、高純度のものであった。過酸化水素(30%)、ヨードカリ、塩化カルシウム、デンプン、硫酸ナトリウム、ヒドロキノン、水酸化ナトリウム、硫酸、アルギン酸ナトリウム塩、ポリ(ジアリルメチルアンモニウム・クロリド)(PDDA)、Nafion、およびポリ(4−スチレンスルホン酸ナトリウム)(PSSNa)を、Aldrichから受け取ったまま使用した。Aldrichから受け取ったピロールを、使用する前に希釈した。
【0079】
[0081]
バイオポテンショスタット(PCI4 Potentiostat/Galvanostat/ZRA、Gamry Instrumentから入手可能)を、 SCE基準電極、対極、および作用電極を備える3電極システムとともにすべての電気化学実験において使用した。作用電極には、1cm×1cmのサイズのプラスチック・シート上の白金箔と白金を含む炭素の両方を使用した。炭素電極には、スクリーン印刷された電極を使用した。すべての実験においてpH 2の硫酸ナトリウム水溶液(0.5M)を使用した。対照実験のために、実験前および実験中に、純粋窒素を溶液中に通して泡立てたが、過酸化水素を発生させるため、実験前および実験中に酸素を水溶液中に通して泡立てた。
【0080】
[0082]
ディップ・プローブ(USB200、Ocean Opticsから入手可能)を備えるUV−Visスペクトロメーターを使用して、デンプンおよびヨウ素からの青色錯体の形成を検出した。青色錯体の形成は、過酸化水素の電気化学的発生を検出するために使用される方法であった。この検査の基礎は、過酸化水素がヨウ化物を直ちに酸化し、三ヨウ化物を形成し、次いで、これがデンプンと反応して目に見える青色錯体を形成するということである。Olympus 470デジタルカメラを使用して、青色錯体が形成されたときの色変化を記録した。
【0081】
[0083]
電極表面への多層コーティングの加工:
[0084]
電極の表面へのヒドロゲルコーティングの形成に関して3つのアプローチを評価した。
【0082】
[0085]
アプローチ1: PDDA/PSSの多層を電極にコーティングした。典型的な一実施例では、メタノール、水酸化ナトリウム5%を含むエタノール、および蒸留水のそれぞれにおいて、約10分間、電極を順次超音波処理することにより、スズをドープしたインジウム・スズ酸化物(ITO)電極を洗浄した。次いで、洗浄されたITOを、30分間、70℃の重量比1:1:5(H:NH:HO)の水溶液で処理した。洗浄されたITO電極をプラスチック容器内の絶対メタノール中に保持し、使用する前に水ですすいだ。電極の表面に多層を形成するために、PDDAまたはPSSA 2.5重量%を含む別の水溶液を用意した。PDDA溶液を用意した後、希釈したHCl溶液を加えて溶液のpHを2.0に調節した。それを補完する形で、5%の水酸化ナトリウム水溶液を加えることによりPSSNa溶液のpHを9.5に調節した。コーティング実験の第1の工程において、30分間、PDDA溶液中にITO電極を浸し、次いで、DI水で洗浄し、さらに30分間、DI水中に浸し、最後に、1時間、空気中で乾燥させた。第2の工程において、30分間、PSSNa溶液中にPDDAコーティングされたITO電極を浸し、DI水で洗浄し、さらに30分間、DI水中に浸し、1時間、空気中で乾燥させた。これら2つの工程を繰り返すことにより、PDDA/PSSNaの多層を有する薄膜をITO電極の表面に形成した。このプロセスで、5または15のPDDA/PSSNa層からできている多層を形成した。
【0083】
[0086]
アプローチ2:上述のように、アプローチ1と類似しているが、ただし、PSSNa水溶液を0.5%のアルギン酸ナトリウム溶液で置き換えた手順を使用することにより、ITO電極の表面にPDDA/アルギン酸塩の多層コーティングを形成した。
【0084】
[0087]
アプローチ3:第3のアプローチでは、HQ、KI、およびデンプンを含むPDDA/アルギン酸多層を電極表面上にコーティングした。形成中に、HQ、KI、およびデンプンを0.5%のアルギン酸ナトリウム溶液に加え、形成された溶液を使用して多層コーティングを作った。
【0085】
[0088]
コーティングされたITO電極を、一晩、染料水溶液中に浸けることにより、色素分子も多層コーティング中に組み込んだ。この方法も使用して、ヒドロキノンをITO電極上の多層に組み込み、染料溶液をヒドロキノン水溶液で置き換えた。
【0086】
[0089]
炭素電極の表面へのNafion(登録商標)層の塗布:
[0090]
Nafion(登録商標)(0.05ml)を含む水溶液を炭素/白金電極の表面(1cm×0.25cm)上に塗り広げ、1時間、空気中で乾燥させた後、Nafion(登録商標)の薄層を電極の表面に形成した。Nafion(登録商標)コーティング炭素/白金電極を対電極として使用し、過酸化水素の発生実験を行った。
【0087】
[0091]
多層コーティングを有する電極からの過酸化水素の電気化学的発生:
[0092]
多層コーティングITO電極を作用電極として使用し、過酸化水素を生成した。実験手順は、上述の手順と同じであった。
【0088】
[0093]
結果および説明:
[0094]
溶液中の過酸化水素の生成:
[0095]
一般に、過酸化水素を生成する手順は、Collins、T.J.ら「The Development of Green Oxidants、Extended Abstract of Plenary Lecture」、1997、Green Chemistry and Engineering Conference、Implementing Vision 2020 for the Environment、National Academy of Sciences、Washington、D.C.、June 23−25(1997)、Sljukic、B.ら、Journal of the Iranian Chemical Society、(2):1−25(2005)、Banks、C.E.ら、Journal of the Iranian Chemical Society、(2):60−64(2005)、Qiang、Z.ら、Water Research、(36):85−94(2002)、Pletcher、D.、Electrosynthesis、(1):4(1999)、およびDuVall、S.H.、およびMcCreery、R.L.、J.Am.Chem.Soc.、(122):6759−6764(2000)で説明されている方法に従ってパターン化されている。目標は、電極のところに過酸化水素を発生させ、次いで、UV−Visスペクトロメーターで発生させた過酸化水素を検出する手順を確立することであった。
【0089】
[0096]
酸素の還元は、過酸化水素を電気化学的に発生させるために使用される最も一般的な方法である。この方法では、酸素は、以下に示されているように過酸化水素を形成するために陰極上で還元される。
+2HO+2e−−−−H+2OH (1)
または
+2H++2e−−−−H (2)
[0097]
この方法の利点は、広いpH範囲にわたって実行できる点にある。
【0090】
[0098]
電極材料および反応条件の選択は、過酸化水素を発生させるうえで重要であると考えられているが、それは、効率的な汚染除去デバイスの重要な特徴が、CBWAに対する高速応答であるからである。これは過酸化水素が速い速度で発生することを必要とすると考えられる。過酸化水素を形成する酸素還元が、水銀、金、および炭素を含む陰極において発生し、高い収量を示すと考えられた。したがって、炭素および炭素含有白金およびITOが、初期試験の電極材料として選択された。
【0091】
[0099]
板電極を備える古典的な液体電解質電気化学セル内に過酸化水素を発生させる最初の試み(スキーム1)で、過酸化水素の生成速度は、反応媒体中の酸素の溶解度が制限されているため極端に低いことがわかった。この問題を解消するために、反応の前、および反応中に、セル内に空気を通して泡立てた。第1組の実験では、電極をpH 2の硫酸ナトリウム水溶液(0.5M)中に浸け、実験時に−0.6Vを作用電極に印加した。複数の作用電極を試験した。測定時間が過ぎた後、一定量の試験溶液をヨードカリおよびデンプンの水溶液に加えて、青色の形成を目視で検出したが、これは、以下のスキームに従って過酸化水素が生成されたことを示している。
+IO+I (1)
+I (2)
+ デンプン青色を帯びた錯体 (3)
[0100]
この試験において、実験で使用した電極毎に1時間たっても色の変化は観察されなかった。このことは、過酸化水素の発生が極端に遅いことを示唆していた。
【0092】
[0101]
過酸化水素の検出
[0102]
溶液中の触媒は、電極の表面における過酸化水素の発生を電気化学的に加速しうる。過酸化水素を電気化学的に生成するために最も一般的に使用されている触媒は、ヒドロキノン、ポルフィリン、およびカーボン・ナノチューブである。このスキームの試験では、ヒドロキノンが選択されたが、媒介体として使用する上述のようなヒドロキノンの他の誘導体も有用であることがわかる。ヒドロキノン触媒作用機構は、図3に例示されており、pH 2の硫酸ナトリウム水溶液(0.5M)中の白金電極上のヒドロキノンのサイクリック・ボルタモグラムが、図9に示されている。2つの酸化還元ピークは、それぞれ、−0.02Vと0.24Vのところで観察される。
【0093】
[0103]
表1は、1時間後に、異なる電極について観察された溶液中の過酸化水素の発生を示している。炭素/白金電極では、色の変化は、わずか15分後に明らかになった。図10および11に示されているように、白金電極における還元電流は、ヒドロキノンが反応媒体に加えられたときに劇的に増大した。溶液中で過酸化水素の電気化学的発生が観察されたが、生成速度は遅かった。
【0094】
[0104]
表1 異なる電極におけるHの発生のまとめ
番号 電極 サイズ 色変化の時間
1 炭素 0.9cm(直径) 1時間
2 炭素/白金 0.5mm×0.5mm 15分
3 白金箔 0.5mm×0.5mm 1時間
4 プラスチック上のITO 0.5mm×0.5mm 1時間
* デンプン指示薬溶液に加えられた電気化学セルから一定量を加えた後に観察された色変化
[0105]
過酸化水素の生成は、陽極における過酸化物の酸化に関係付けることができた。過酸化水素の電気化学的形成を見やすくするために、白金箔を作用電極として使用し、KIとデンプンの水溶液をこの溶液に加えた。−0.6Vを作用電極に印加してから1分後に、特徴的な青色が観察された。ヨウ化物のヨウ素への電気化学的酸化を除外するために、空気を溶液に通して泡立てなかったことを除き、同じ実験条件を使用した。そのような状況では、青色は観察されなかった。
【0095】
[0106]
過酸化水素の分解を防ぐための陽極表面へのNafion(登録商標)のコーティング:
[0107]
Nafion(登録商標)は、一連のフッ素化スルホン酸コポリマーの1つであり(Nafion(登録商標)は、DuPont社の登録商標である)、また最初の合成イオン性ポリマーである。Nafion(登録商標)は、化学的に不活性であるだけでなく、カチオンに対する選択的透過性も有し、アニオンが、成形されたフィルム上を移動するのを防ぐ。これは、電気化学系における膜として広く使用されている。従来の電気化学的生成システムでは、イオン選択的膜を使用して、陽極と陰極とを分離する。陽極側と陰極側の反応溶液は、アニオン選択的膜により分離することができ、この膜は、過酸化水素が陰極側から陽極側に拡散するのを防ぐことができ、したがって過酸化水素の分解は生じないであろう。
【0096】
[0108]
過酸化水素の全体的な生成速度は、陽極における過酸化物種の酸化の影響を受ける可能性があるため、陽極の表面をNafion(登録商標)の層でコーティングし、スーパーオキシドアニオンが陽極に拡散するのを防いだ。
【0097】
[0109]
最初の実験では、炭素/白金膜面をNafion(登録商標)の層でコーティングし、他の実験条件を上述した条件と同じに保った。電位(−0.6V)を溶液中に浸された作用電極に印加した後、反応中に定期的に一定量(0.5ml)を反応媒体から取り出し、それぞれをデンプン−KI水溶液(2ml)に加えた。理論上、反応媒体中で生成された過酸化水素の濃度は、電気化学的発生時間が長くなるほど高まり、したがって、溶液中のヨウ素錯体の量も増大し、これは、目視で、またはUV−Visスペクトロメーターにより定量的に識別できる。本発明の試験では、これら一連の水溶液は、時間の経過とともに過酸化水素の形成量が増大することを示しており、またNafion(登録商標)コーティングが陽極における過酸化水素の分解を防ぐことを示した。
【0098】
[0110]
ITO表面への多層コーティングの加工:
[0111]
上の節では、水溶液中の過酸化水素の発生が示されている。次に、コーティング中の過酸化水素の生成は、電極表面上で厚さが50から100ミクロンの範囲内であるヒドロゲルの薄層を有するデバイスを加工することにより実証された。ゲル層は、過酸化水素および反応条件に対する安定性、良好な伝導性、および触媒および電解質との親和性を必要とする。上述の層ベースの技術を使用して、ゲル層およびポリ(ジアリルメチルアンモニウム・クロリド)(PDDA)を加工し、多層コーティングの加工でアルギン酸塩を使用した。
【0099】
[0112]
プロトタイプ用に選択した基板は、ガラス、ケイ素、または炭素であったが、基板の表面を、−SO−2、−COO、および−OHなどの、負電荷を帯びた官能基で修飾し、電荷または水素結合相互作用を通じてPDDAを表面に吸着させることができる。
【0100】
[0113]
基板表面にPDDAまたはポリカチオンを吸着させた後、電荷相互作用を通じて、アルギン酸塩層をPDDAの表面に吸着させた。PDDAとアルギン酸塩との間で吸着プロセスを交互に繰り返すことで、基板の表面に多層を形成したが、多層の厚さは、この繰り返し吸着の回数により決定されうる。厚さがPDDA/アルギン酸塩層15枚分である多層をITO電極の表面上に加工した。
【0101】
[0114]
多層コーティングをITO表面に加工した後、0.8から−0.6Vまでの走査範囲、および酸素で飽和させた硫酸ナトリウムの水溶液(0.5M pH 2)中の走査速度60mV/sを使用してサイクリック・ボルタンメトリーにより検査した。ITO電極のサイクリック・ボルタモグラムが、ITO電極面上の多層があってもなくても殆ど同じであったという事実から、酸素が電極の表面に広がる拡散速度は、この多層コーティングの影響を受けないか、または遅くならないことが示唆された。
【0102】
[0115]
ヒドロキノン、KI、およびデンプンを含む5つのPDDA/アルギン酸塩層からなる多層コーティングを有するITOコーティング・ガラス電極が活性過酸化水素を生成することができるかどうかは、5分間の1%過酸化水素溶液への液浸およびゲル内に現れるヨウ素と関連する暗い黄色により検査された。最初に、黄色の代わりに青色が出現すると考えられた。しかし、デンプンがゲル内に組み込まれるか、またはロックされ、デンプンの新しい立体構造が青色の形成を妨げた可能性があることが理解された。
【0103】
[0116]
酸素で飽和されたpH 2の硫酸ナトリウム水溶液(0.5M)に浸されたヒドロキノン、KI、およびデンプンを含む5つのPDDA/アルギン酸塩層の多層でコーティングされたITOガラス電極に電位(−0.6V)を印加すると、30分後にゲル層内に黄色が出現したが、これは、電気化学的に生成した過酸化水素がヨウ化物を酸化して黄色のヨウ素を生成したことを示している。この実験では、Nafionの薄層でコーティングされたITOガラスを対極として使用したため、得られた結果では、陽極の表面において移動されたヨウ化物の酸化を除外した。この実験から、過酸化水素は、ヒドロゲル中で電気化学的に発生させることができることがはっきりわかった。
【0104】
[0117]
まとめ:
[0118]
この実施例では、過酸化水素は、30分以内に、ヒドロキノンの存在下で、または白金を含む電極を使用して、酸性水溶液中で電気化学的に生成された。また、Nafion(登録商標)コーティングを陽極に施すことで、陽極で発生した過酸化水素の分解が低減され、それにより反応効率が向上されることも示された。電極表面への多層コーティングの加工も示された。さらに、過酸化水素は、多層ゲルコーティングを有する電極からの電気信号に応答して生成されることが示された。
【0105】
[0119]
限定することなく、すべての論文、刊行物、特許、特許出願、プレゼンテーション、テキスト、レポート、原稿、パンフレット、書籍、インターネット投稿記事、雑誌記事、定期刊行物などを含む、本明細書で引用されているすべての文献は、全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書の文献の説明は、その著者による主張を要約することのみを目的としており、文献が従来技術を規定することは認められない。出願人は、引用された文献の正確さおよび関連性に対する異議申し立てをする権利を留保する。
【0106】
[0120]
上記に照らして、本発明のいくつかの利点が達成され、他の有利な結果が得られることは理解されるであろう。
【0107】
[0121]
当業者であれば本発明の範囲から逸脱することなく上記の方法および組成物にさまざまな変更を加えられるため、上記の説明に含まれ、付属の図面に示されているすべての事物は、例示的であり、限定することを意図していないと解釈されるものとする。それに加えて、さまざまな実施形態の複数の態様は、丸ごと、または一部だけ、入れ換えて使用できることは理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0108】
[0122]
【図1】本発明の方法の一実施形態の過酸化物活性化触媒として使用できる置換ポルフィリンおよびフタロシアニンの実施例を示す図である。
【図2】本発明の方法の一実施形態における媒介体として使用できる置換アントラキノンの実施例を示す図である。
【図3】本発明の方法の一実施形態において、電極へのアントラキノンの付着を例示し、酸素の還元により過酸化水素を生成する反応における水素イオンおよび電子の移動におけるアントラキノンの作用を示す図である。
【図4】媒介体(A)を持たず、付着した媒介体(B)を有する電極で過酸化水素を発生することを例示する図である。
【図5】電極が基板に付けられ、コーディングの表面に向かって移動し、コーティングの表面と接触している汚染物質を破壊する活性過酸化水素を発生する過酸化物活性化触媒を含む、ここでは電解質ゲルとして示されている、マトリックスで覆われている本発明のコーティングの一実施形態の構造および作用を示す図である。
【図6】本発明のコーティングの一実施形態の電極配置を示す図である。
【図7】本発明の他の実施形態の概念全体を示す図である。
【図8】本発明の他の実施形態の概念全体を示す図である。
【図9】HSOで調整され、空気を酸素供給源として使用し、pH=2である、0.5MのNaSO中の3電極系(SCE基準電極および白金対極および作用電極)に関して−0.02Vと0.24Vで酸化還元ピークが観測される白金電極の表面における10ミリモル/リットルのヒドロキノンのサイクリック・ボルタモグラムを示す図である。
【図10】HSOで調整され、3電極系(SCE基準電極および白金対極および作用電極)を使用し、酸素供給源として空気を使用し、−0.6Vの電圧を使用する、pH=2の0.5MのNaSOを電解質とする条件の下で白金電極の表面における過酸化水素の電気化学的合成に対する電流対時間応答を示すグラフである。
【図11】10ミリモル/リットルのヒドロキノンが存在していたことを除き図10について説明されているのと同じ条件の下で白金電極の表面における過酸化水素の電気化学的合成に対する電流対時間応答を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング中に活性過酸化物を生成する方法であって、
過酸化物源および過酸化物活性化触媒を含むコーティングを供給する工程と、
前記過酸化物源に過酸化物を生成させる工程と、
前記過酸化物を前記触媒に接触させて活性過酸化物を生成する工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記過酸化物源が、
過酸化物の溜め、または
信号活性過酸化物生成システム
を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記過酸化物が過酸化水素を含み、前記過酸化物源が信号活性過酸化物生成システムを備える、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記信号活性過酸化物生成システムが、
プラス電極とマイナス電極とを備え、前記電極は、
水および/または酸素を含む導電性またはイオン伝導性マトリックスにより相互接続されている、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記過酸化物源に前記過酸化水素を生成させる工程が、過酸化水素の生成を活性化する前記信号を供給する工程を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記信号が、前記プラス電極とマイナス電極の間に電位を印加し、これにより、酸素の還元と過酸化水素の生成を引き起こす工程を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記過酸化物源が、過酸化水素を形成する際に電子および水素イオンを酸素に移動することに関わる媒介体をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記媒介体が、キノン、ナフトキノン、アントラキノン、それらの誘導体、およびそれらの混合物からなる群から選択された少なくとも1つの化合物を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
過酸化物活性触媒が、エチレンジアミン四酢酸と金属との錯体、EDTA/Fe錯体、テトラアミノ大環状配位子(TAML(登録商標))と金属との錯体、TAML(登録商標)/Fe錯体、グルコン酸マンガン、次亜塩素酸ナトリウム、N−[4−(トリエチルアンモニオメチル)ベンゾイル]−カプロラクタムクロリド、ノナノイルオキシベンゼンスルホナート、ポルフィリン、フタロシアニン、酸化ルテニウム、酸化インジウム、およびキノンからなる群から選択された少なくとも1つの化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
過酸化水素の形成が生じる前記電極が、金属、白金、金、金属酸化物、インジウム・スズ酸化物、導電性金属塩、炭素、炭素/金属複合材、固有導電性ポリマー、カーボン・ナノチューブを含む材料、およびこれらの材料のいずれかの混合物から選択された材料を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
前記コーティングが、ゲル構造を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記コーティングが、水蒸気と酸素を通すことができる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記コーティングは、活性過酸化水素が前記コーティングの表面に拡散し、これにより前記活性水素が前記表面に存在する汚染物質と接触できるように活性過酸化水素に対する十分な透過性を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記コーティングが、ポリマー層および/またはゲルを含み、前記過酸化物活性化触媒が、前記ポリマー層および/または前記ゲルに化学結合される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記プラス電極または前記マイナス電極のうちの少なくとも1つは、フッ素化スルホン酸コポリマーを含むコーティングを有する、請求項4に記載の方法。
【請求項16】
汚染物質による汚染の影響を受けやすい表面の汚染除去を行う方法であって、
電位が前記コーティングに印加されたときに前記汚染物質用の汚染除去剤を生成するコーティングを前記表面に施す工程と、
前記電気活性コーティングを電位の発生源に接続する工程と、前記表面が汚染されたときに、
電位を前記電気活性コーティングに印加し、それにより、前記汚染除去剤を生成し、前記汚染物質を破壊する工程と
を含む方法。
【請求項17】
前記表面が、金属、プラスチック、木材、織物、ガラス、紙、粘土、セラミック、またはこれらのいずれかの混合物から選択された材料の外面を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記汚染物質が、化学兵器、生物兵器、細菌毒素、病原微生物、またはこれらのいずれかの混合物を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記汚染物質が、アントラックス、ボツリヌス毒素、疫病、ヒトまたは動物に有害なウイルス、病原生物、またはこれらのいずれかの混合物を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記汚染物質が、発疱剤、G系神経ガス、V系神経ガス、またはこれらのいずれかの混合物を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記汚染物質が、o−アルキルホスホノフルオリデート、サリン(GB)およびソマン(GD)、o−アルキルホスホルアミドシアニダート、タブン(GA)、o−アルキル、s−2−ジアルキルアミノエチルアルキルホスホノチオラート、および対応するアルキル化またはプロトン化塩、VX、2−クロロエチルクロロメチルスルフィド、ビス(2−クロロエチル)スルフィド、ビス(2−クロロエチルチオ)メタン、1,2−ビス(2−クロロエチルチオ)エタン、1,3−ビス(2−クロロエチルチオ)−n−プロパン、1,4−ビス(2−クロロエチルチオ)−n−ブタン、1,5−ビス(2−クロロエチルチオ)−n−ペンタン、ビス(2−クロロエチルチオメチル)エーテル、ビス(2−クロロエチルチオエチル)エーテル、ルイサイト、2−クロロビニルジクロロアルシン、ビス(2−クロロビニル)クロロアルシン、トリス(2−クロロビニル)アルシン、ビス(2−クロロエチル)エチルアミン、ビス(2−クロロエチル)メチルアミン、サキシトキシン、リシン、アルキルホスホニルジフルオリド、アルキルホスホナイト、クロロサリン、クロロソマン、アミトン、1,1,3,3,3,−ペンタフルオロ−2−(トリフルオロメチル)−1−プロペン、3−キヌクリジニルベンジラート、メチルホスホニルジクロリド、ジメチルメチルホスホナート、ジアルキルホスホルアミジクジハライド、ジアルキルホスホルアミダート、三塩化ヒ素、ジフェニルヒドロキシ酢酸、キヌクリジン−3−オール、ジアルキルアミノエチル−2−クロリド、ジアルキルアミノエタン−2−オール、ジアルキルアミノエタン−2−チオール、チオジグリコール、ピナコリルアルコール、ホスゲン、塩化シアン、シアン化水素、クロロピクリン、オキシ塩化リン、三塩化リン、五塩化リン、アルキルホスファイト、一塩化硫黄、二塩化硫黄、塩化チオニル、これらのいずれかの混合物を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記汚染除去剤が、反応性酸素種、求核剤、またはこれらの混合物を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記汚染除去剤が、次亜塩素酸塩、次亜塩素酸ナトリウム、塩素、ペルオキシ一硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、ペルオキシ一硫酸アンモニウム、ペルオキシ二硫酸塩、過マンガン酸塩、過マンガン酸カリウム、過酸化物、過酸化水素、またはこれらのいずれかの混合物を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項24】
電位を前記電気活性コーティングに印加するのを停止し、それにより前記汚染除去剤の生成を停止する工程をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項25】
前記コーティングが、空気に曝され、前記空気から酸素を前記コーティングに入らせる工程をさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
さらに、水蒸気を前記コーティングに入らせる工程を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
電位を前記電気活性コーティングに印加し、それにより前記汚染除去剤を生成し、前記汚染物質を破壊する工程をさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
電位を印加する工程が、前記プラス電極と前記マイナス電極を直流源に接続する工程を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項29】
前記直流が、Ag/AgCl電極に対し、約−10ボルトから+50ボルトまでの間の電圧で供給される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記コーティングを前記表面に印加する工程が、1つまたは一連の工程において1つまたは複数の層を前記表面に施す工程を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項31】
前記表面が、織物またはフィルムである柔軟な材料の表面であり、前記層が、スクリーン印刷により施される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
表面のコーティングであって、耐久性のあるマトリックス中に過酸化物源および過酸化物活性化触媒を含むコーティング。
【請求項33】
前記耐久性のあるマトリックスが、非水溶性で、前記表面に十分に付着して通常使用時に前記表面に残る材料を含む、請求項32に記載のコーティング。
【請求項34】
前記過酸化物源が、
過酸化物の溜め、または
信号活性過酸化物生成システム
を備える、請求項32に記載のコーティング。
【請求項35】
前記過酸化物が過酸化水素を含み、前記過酸化物源が信号活性過酸化物生成システムを備える、請求項32に記載のコーティング。
【請求項36】
前記信号活性過酸化物生成システムが、
プラス電極とマイナス電極とを備え、前記電極は、
水および/または酸素を含む導電性またはイオン伝導性媒体により相互接続されている、請求項35に記載のコーティング。
【請求項37】
前記システムが、前記プラス電極と電位源のプラス極を相互接続するプラス電極リードと前記マイナス電極と電位源のマイナス極を相互接続するマイナス電極リードをさらに備える、請求項36に記載のコーティング。
【請求項38】
前記プラス電極リードまたは前記マイナス電極リード内に配置され、電位が前記電極に印加されるかどうかを制御することができるスイッチをさらに備える、請求項37に記載のコーティング。
【請求項39】
前記信号活性過酸化物生成システムが、過酸化水素を形成する際に電子および水素イオンを酸素に移動することに関わる媒介体をさらに備える、請求項36に記載のコーティング。
【請求項40】
前記媒介体が、可逆的に酸化および還元され、化学反応において水素イオンおよび電子を移動することができる化合物を含む、請求項39に記載のコーティング。
【請求項41】
前記媒介体が、キノン、アントラキノン、およびそれらの混合物からなる群から選択された少なくとも1つの化合物を含む、請求項40に記載のコーティング。
【請求項42】
過酸化物活性触媒が、エチレンジアミン四酢酸と金属との錯体、EDTA/Fe錯体、テトラアミノ大環状配位子(TAML(登録商標))と金属との錯体、TAML(登録商標)/Fe錯体、グルコン酸マンガン、次亜塩素酸ナトリウム、N−[4−(トリエチルアンモニオメチル)ベンゾイル]−カプロラクタムクロリド、ノナノイルオキシベンゼンスルホナート、ポルフィリン、フタロシアニン、酸化ルテニウム、酸化インジウム、およびキノンからなる群から選択された少なくとも1つの化合物を含む、請求項32に記載のコーティング。
【請求項43】
過酸化水素の形成が生じる前記電極が、金属、白金、金、金属酸化物、インジウム・スズ酸化物、導電性金属塩、炭素、炭素/金属複合材、固有導電性ポリマー、カーボン・ナノチューブを含む材料、およびこれらの材料の混合物から選択された材料を含む、請求項36に記載のコーティング。
【請求項44】
前記コーティングが、ゲル構造を含む、請求項33に記載のコーティング。
【請求項45】
前記コーティングが、水蒸気と酸素を通すことができる、請求項33に記載のコーティング。
【請求項46】
活性過酸化水素が前記コーティングの表面に拡散し、これにより前記活性水素が前記表面に存在する汚染物質と接触できるように活性過酸化水素に対する十分な透過性を有する、請求項33に記載のコーティング。
【請求項47】
導電性またはイオン伝導性の非水溶性マトリックスにより相互接続された
プラス電極とマイナス電極と、
キノンまたはアントラキノンから選択され、マトリックス内に存在するか、または電極に結合された媒介体と、
EDTA/Fe錯体またはTAML/金属錯体から選択された過酸化物活性化触媒と、
前記プラス電極および前記マイナス電極を電位発生源と相互接続するための電極リードと
を備える、請求項32に記載のコーティング。
【請求項48】
前記コーティングが、ポリマー層またはゲルを含み、前記過酸化物活性化触媒が、前記ポリマー層および/または前記ゲルに化学結合される、請求項32に記載のシステム方法。
【請求項49】
コーティングと接触している汚染物質用の汚染除去剤を生成する前記コーティングを含む電気活性汚染除去コーティングであって、前記汚染除去剤は、電位が前記コーティングに印加されたときに生成される電気活性汚染除去コーティング。
【請求項50】
汚染物質による汚染の影響を受けやすい表面に電気活性汚染除去コーティングを形成する方法であって、
少なくとも1つのプラス電極と少なくとも1つのマイナス電極を前記表面に施す工程と、
前記プラス電極と前記マイナス電極上で導電性またはイオン伝導性であるマトリックスを含む層を施す工程とを含み、前記マトリックスは、過酸化物活性化触媒を含み、酸素、水蒸気、および過酸化水素を通すことができる方法。
【請求項51】
電極に結合されるか、または前記マトリックス全体に分散されるか、またはその両方である過酸化物活性化媒介体が提供される、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
請求項32に記載の前記コーティングでコーティングされた物品。
【請求項53】
センサ活性汚染除去コーティング・システムであって、
請求項32に記載の電気活性汚染除去コーティングと、
電位発生源と、
前記電位発生源と前記コーティングの前記電極とを相互接続する電極リードと、
電気リード内に配置され、前記コーティングへの電位印加を制御するスイッチと、
前記スイッチの前記動作を制御するセンサと
を備えるセンサ活性汚染除去コーティング・システム。
【請求項54】
前記センサが、汚染物質の存在を感知できる、請求項53に記載のシステム。
【請求項55】
前記センサが、化学兵器および/または生物兵器の存在を感知できる、請求項54に記載のシステム。
【請求項56】
電気活性汚染除去コーティングであって、
過酸化水素を活性化して、活性過酸化水素にすることができる安定した酸化触媒を含むポリマー・コーティングを含み、前記コーティングが
2つまたはそれ以上の柔軟なポリマー電極および支持電解質ゲルと接触する電気活性汚染除去コーティング。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2009−507999(P2009−507999A)
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−529018(P2008−529018)
【出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/024091
【国際公開番号】WO2008/018856
【国際公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(504448081)ルミムーブ・インコーポレーテッド・ディー/ビー/エイ・クロスリンク・ポリマー・リサーチ (1)
【Fターム(参考)】