説明

信号灯および電光表示板の着雪防止装置

【課題】氷点下30℃以下の場所に設置されている信号灯や電光表示板でも、降雪時にランプへの着雪を防止して確実に視認することができる信号灯および電光表示板の着雪防止装置を提供するものである。
【解決手段】中空平板状の金属ケース2の前後面に窓枠3A、3Bを形成して、ここに耐熱ガラス板4A、4Bを取付けて密閉し、この密閉した金属ケース2内の窓枠部分を避けた位置に、発熱線5をガラス管6内に挿着した赤外線ヒーター7を取付け、この中空平板状の金属ケース2を信号灯13の前方を覆うように取付け、金属ケース2内の空気を赤外線ヒーター7で高温に加熱して、金属ケース前面の耐熱ガラス板4A、4Bに付着した雪を融雪するようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号灯および電光表示板の表面に付着した雪を融かす着雪防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
積雪地帯の道路や鉄道の線路に沿って多数の信号灯が設置されているが、信号灯のフードカバーの上に積もった雪が、信号灯の前方に垂れ下がってきて前方を遮って視認性が悪くなる問題がある。このためフードカバーの上に発熱体を取付けて、積雪センサーの信号により、発熱体に通電してフードカバーを加熱して融雪する装置(特許文献1)がある。
【0003】
しかしながら、吹雪の時や、列車の通過時に巻上げられた雪が、信号灯のレンズ面に直接付着すると視認性が悪くなる問題がある。しかしながらこのレンズ面に付着した雪を融雪する有効な手段がなかった。このため、レンズ面のガラスを、両ガラスの間に発熱線を挟み込んだ熱線入りガラスで形成して、付着した雪を融雪することも考えられるが、この熱線入りガラスは、最高温度が50℃程度にしか上昇せず、また最高温度に上昇するまでに60分程度かかるため即効性に欠け、しかも外気温が氷点下30℃以下の場所では、ガラスの表面温度が上がらず、着雪を防止することができない問題がある。またガラスの表面温度を上げるため、発熱線への通電量を増やして高温にすると、熱線入りガラスは電熱線がガラスに密着しているので180℃以上になると局部的に高温となって膨張し、ガラスが割れる問題があり実用化できなかった。
【特許文献1】特開2003−303399号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記問題を改善し、氷点下30℃以下の場所に設置されている信号灯や電光表示板でも、降雪時にランプへの着雪を防止して確実に視認することができる信号灯および電光表示板の着雪防止装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1記載の信号灯および電光表示板の着雪防止装置は、中空平板状の金属ケースの前後面に窓枠を形成して、この窓枠に耐熱ガラス板を取付けてケース内を密閉し、この密閉した金属ケース内に電熱ヒーターを取付けて、この中空平板状の金属ケースを信号灯や電光表示板の発光体の前方を覆うように取付け、金属ケース内の空気を前記電熱ヒーターで高温に加熱して、金属ケース前面の耐熱ガラス板に付着した雪を融雪するようにしたことを特徴とするものである。
【0006】
本発明の請求項2記載の信号灯および電光表示板の着雪防止装置は、請求項1において、電熱ヒーターが、発熱線をガラス管内に挿着した赤外線ヒーターで形成され、この赤外線ヒーターを密閉した金属ケース内の窓枠部分を避けた位置に取付けたことを特徴とするものである。
【0007】
本発明の請求項3記載の信号灯および電光表示板の着雪防止装置は、請求項2において、ガラス管の表面を黒色に塗装したことを特徴とするものである。
【0008】
本発明の請求項4記載の信号灯および電光表示板の着雪防止装置は、請求項1において、更に金属ケースの背面側に、信号灯や電光表示板の発光体の前方を囲むようにフードカバーを取付けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る請求項1記載の信号灯および電光表示板の着雪防止装置によれば、中空平板状に形成された金属ケース内の狭い空間の空気が電熱ヒーターにより効率よく加熱されて、更に耐熱ガラス板が面状で均一に加熱されるので、従来の熱線入りガラスのように局部的な加熱膨張による破損がなく、高温度に加熱することができる。このため信号灯や電光表示板の前方に取り付けることにより、氷点下の降雪時でも、雪が融雪される温度に耐熱ガラス板の表面温度を保持することができ、雪の付着を防止して信号灯や電光表示板のランプの光を遠くからでも視認することができる。
【0010】
また請求項2記載の信号灯および電光表示板の着雪防止装置によれば、電熱ヒーターが、赤外線ヒーターで形成されているので、金属ケース内を短時間で高温度に加熱することができる。
【0011】
また請求項3記載の信号灯および電光表示板の着雪防止装置によれば、赤外線ヒーターのガラス管表面には黒色の塗料が塗布されて、発熱線からの光が金属ケース内に漏れないように遮蔽されているので、発光体の光の透過が妨げられず視認性を向上させることができる。
【0012】
また請求項4記載の信号灯および電光表示板の着雪防止装置によれば、金属ケースの背面側にフードカバーを取付け、このフードカバーを信号灯や電光表示板の発光体の前方を囲むように取付けたので、この内側への雪の侵入を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下本発明の実施の一形態を図1ないし図3を参照して詳細に説明する。図において1は着雪防止装置を示すもので、この着雪防止装置1は、アルミニウム板やステンレス鋼板などで形成され、上部が半円形に形成された中空平板状の金属ケース2の前面に円形の窓枠3Aが3個上下に間隔をおいて取付けられている。また金属ケース2の背面には、長方形の上部が半円形に形成された窓枠3Bが取付けられている。ケース前面の前記3個の円形の窓枠3Aには。それぞれ3枚の円形の耐熱ガラス板4Aが嵌め込まれ、またケース背面の窓枠3Bには、長方形の上部が半円形に形成された耐熱ガラス板4Bが嵌め込まれている。
【0014】
また中空平板状の金属ケース2内の、上下に隣接する円形の窓枠3A、3Aの間と、内側底部には窓枠3Aを避けた位置に、3本の赤外線ヒーター7が横方向に取付けられている。
【0015】
前記耐熱ガラス板4A、4Bは面状に熱を加えた場合に、600℃以下の温度でガラス面が破損しない程度の耐熱性を有するものを使用する。また赤外線ヒーター7は図4に示すように、炭素繊維やニクロム線などの発熱線5を中空円筒状の耐熱性のガラス管6内に装着したもので、その左右両端に接続端子8が取付けられ、この接続端子8はリード線9を介して図示しない電源に接続されている。
【0016】
またガラス管6の表面には、黒色の塗料10が塗布され、発熱線5からの光が金属ケース2内に漏れないように遮蔽している。また11は温度センサーで、図示しない制御装置に接続され、金属ケース2内の温度が例えば100℃以下になると電源のスイッチがオンして赤外線ヒーター7に通電され、200℃を越えると電源のスイッチがオフして赤外線ヒーター7が停止するようになっている。
【0017】
上記構成の着雪防止装置1を信号灯13に取付ける場合、図1ないし図3に示すように中空平板状の金属ケース2の背面側に上部が湾曲したフードカバー14を取付け、このフードカバー14を信号灯13のランプ15の前方と側方を囲むように背面板16に取付ける。
【0018】
降雪時には、図示しない電源をオンして赤外線ヒーター7に通電すると、発熱線5が発熱して、中空平板状に形成された金属ケース2内の狭い空間内の空気が加熱される。金属ケース2内の空気が加熱されると、耐熱ガラス板4A、4Bも加熱され、この表面からも放熱するが、氷点下30℃以下の場所に設置する場合には、耐熱ガラス板4A、4Bの表面温度が例えば5℃以上に保持されるように赤外線ヒーター7の温度を設定すると、表面に付着した雪は融雪されて付着が防止される。またランプ15の前方と側方を囲むようにフードカバー14が取付けられているので、雪が侵入しない。この結果、着雪防止装置1の前後2枚の耐熱ガラス板4A、4B、4を透過して信号灯13のランプ15の光を遠くからでも視認することができる。
【0019】
またこの場合、ガラス管6の表面には黒色の塗料10が塗布され、発熱線5からの光が金属ケース2に漏れないように遮蔽されているので、ランプ15の光の透過が妨げられない。このように、中空平板状をなす金属ケース2内の狭い空間の空気を加熱するので、短時間で効率よく加熱され、更に耐熱ガラス板4A、4Bが面状に均一に加熱されるので、従来の熱線入りガラスのようにガラス面が局部的に加熱されて破損することがなく、高温度に加熱することができる。
【0020】
また、降雪センサーのオン・オフ動作では車両通過時間が速いので、降雪センサー単独では間に合わないが、本発明の着雪防止装置1は、温度センサー11により耐熱ガラス板の表面温度が、例えば融雪する5℃以上に常時保持されているので、車両通過時間や運行間隔に関係なく信号灯13のランプ15の着雪を防止することができる。
【0021】
また実験によると、図5に示すように外気温が25℃の時の耐熱ガラス板4A、の表面温度は75℃で、外気温が0℃の時の耐熱ガラス板4Aの表面温度は35℃で、外気温が氷点下30℃で風速が15メートルの降雪時には、耐熱ガラス板4Aの表面温度は5℃であり、この場合も耐熱ガラス板4Aに着雪はなく、信号灯13のランプ15の光を視認することができた。なおこの場合、温度センサー11は金属ケース2内の温度が100℃以下になると電源のスイッチがオンして赤外線ヒーター7に通電され、200℃を越えると電源のスイッチがオフして赤外線ヒーター7が停止するように設定した。
【0022】
図6は本発明の他の実施の形態を示すもので、気温や制限速度、交通規制など数字や文字をLEDランプ15で表示した電光表示板17の前面に着雪防止装置1を取付けたものである。この場合も外気温が氷点下30℃の降雪時でも、着雪防止装置1の耐熱ガラス板4A、4Bの表面温度は5℃程度に維持され、着雪を防止して視認性を保持することができる。
【0023】
なお上記説明では、電熱ヒーター7を本体部2内に横方向に取付けた場合を示したが縦方向に取付けても良い。また電熱ヒーターとして赤外線ヒーター7を用いた場合について示したが、ニクロム線や、カーボン面状発熱体、抵抗金属面状発熱体などを用いることができ、また透明な抵抗薄膜を用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の他の実施の一形態による前面に着雪防止装置を取付けた信号灯の縦断側面図である。
【図2】図1の信号灯に取付けた着雪防止装置を示す正面面図である。
【図3】図1の着雪防止装置を示す水平断面図である。
【図4】着雪防止装置を示す水平断面図である。
【図5】着雪防止装置の前面耐熱ガラス板の表面温度と外気温の関係を示すグラフである。
【図6】本発明の他の実施の形態による電光表示板の着雪防止装置を示す縦断側面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 着雪防止装置
2 金属ケース
3A、3B 窓枠
4A、4B 耐熱ガラス板
6 ガラス管
7 赤外線ヒーター
8 接続端子
9 リード線
10 塗料
11 温度センサー
13 信号灯
14 フードカバー
15 ランプ
16 背面板
17 電光表示板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空平板状の金属ケースの前後面に窓枠を形成して、この窓枠に耐熱ガラス板を取付けてケース内を密閉し、この密閉した金属ケース内に電熱ヒーターを取付けて、この中空平板状の金属ケースを信号灯や電光表示板の発光体の前方を覆うように取付け、金属ケース内の空気を前記電熱ヒーターで高温に加熱して、金属ケース前面の耐熱ガラス板に付着した雪を融雪するようにしたことを特徴とする信号灯および電光表示板の着雪防止装置。
【請求項2】
電熱ヒーターが、発熱線をガラス管内に挿着した赤外線ヒーターで形成され、この赤外線ヒーターを密閉した金属ケース内の窓枠部分を避けた位置に取付けたことを特徴とする請求項1記載の信号灯および電光表示板の着雪防止装置。
【請求項3】
ガラス管の表面を黒色に塗装したことを特徴とする請求項2記載の信号灯および電光表示板の着雪防止装置。
【請求項4】
請求項1記載の信号灯および電光表示板の着雪防止装置において、更に金属ケースの背面側に、信号灯や電光表示板の発光体の前方を囲むようにフードカバーを取付けたことを特徴とする信号灯および電光表示板の着雪防止装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−305025(P2008−305025A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−149622(P2007−149622)
【出願日】平成19年6月5日(2007.6.5)
【出願人】(502230848)株式会社ニーズプロダクト (4)
【Fターム(参考)】