説明

修飾されたヒト腫瘍壊死因子受容体−1ポリペプチドまたはその断片及びその製造方法

本発明は、生体内(in vivo)または生体外(ex vivo)で腫瘍壊死因子と結合する修飾されたヒト腫瘍壊死因子受容体−1(human tumor necrosis factor receptor−1)ポリペプチドまたはその断片を提供する。本発明の修飾されたヒト腫瘍壊死因子受容体−1ポリペプチドまたはその断片は、生体内に存在するタンパク質分解酵素に対する向上した抵抗性を示し、よって、改善された生体利用率及び吸収率を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体内(in vivo)または生体外(ex vivo)で腫瘍壊死因子と結合する修飾されたヒト腫瘍壊死因子受容体−1(human tumor necrosis factor receptor−1)ポリペプチドまたはその断片及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炎症は抗原刺激により起こる身体の防御作用である。しかし、有害な抗原物質が除去された後にも炎症が発生したり、炎症反応が自己抗原のような不適切な刺激により起きたりすると、病理学的に悪化することになる。このような炎症反応には種々のサイトカインが関与し、特に、炎症調節の役割を果たすサイトカインとして腫瘍壊死因子(Tumor Necrosis Factor;以下、‘TNF’という。)が確認された。
【0003】
TNFは、腫瘍細胞を除去するタンパク質として初めて発見された(Carswell等、PNAS 72:3666−3670 1975;Old等、Science 230:630−632 1985;Beutler等、Nature 316:552−554 1985)。TNFは、単球及び大食細胞を含む多数の細胞形態において産生されるサイトカインで、炎症反応に直接関与する。少なくとも2種類のTNF(TNF−α、TNF−β)があり、これらのそれぞれは三量体として作用し、交差結合受容体により細胞内信号伝達を開始するものと知られている(Engelmann等、J.Biol.Chem 265:14497−14504)。生体内でTNFは炎症反応を誘発することによって細胞免疫反応及び防御機作を調節すると同時に、多数の互いに異なる標的細胞に対する重要な生理学的効果を有する(Selby等、Lancep 1:483 1988;Starnes等、J.Clin.Invest 82:1321 1988;Oliff等、Cell 50;555 1987;Waage等、Lancept 1:355 1987、Aggarwal等、Nat.Rev.Immunol.3:745−756 2003)。しかし、TNFが過量存在すると、リウマチ性関節炎、退行性関節炎、乾癬、クローン病などのような病的状態が発生し、これを阻害することで疾病への治癒効果があることが確認された(Feldmann等、Nat.Med.9:1245−1250 2003;Kooloos等、Drug Discov.Today 12:125−131 2007;Rutgeerts等、Gastroenterology 126:1593−1610 2004;Rothe等、Nature 364:798−802 1993;Kafrouni等、J.Leukocyte Biol.74:564−571 2003;Rahman等、Plos Pathog.2:e4 2006;Chan等、J.Biol.Chem.278:51613−61621 2003;Wajant等、Cell Death Differ.10:45−65 2003)。
【0004】
腫瘍壊死因子受容体(Tumor Necrosis Factor Receptor;以下、‘TNFR’という。)は、TNFと結合するサイトカイン受容体である。
【0005】
TNFRは、今のところ、p55−TNFRIとp75−TNFRIIと知られた2種類が発見されている。TNFRIは、哺乳類のほぼ全ての細胞で発現すると知られており、TNFRIIは、免疫システム及び内皮細胞で制約的に発現すると知られている。
【0006】
これらの両受容体は28%のアミノ酸配列の類似性を示す。両受容体とも細胞外ドメインを有し、4個のシステイン−リッチ(cysteine−rich)ドメインを有している。
【0007】
TNFRIは、細胞質部分に細胞死滅信号を起こす“デスドメイン(death domain)”を有するが、TNFRIIにはデスドメインがなく、現在までTNFRIIの機能は明確に定義されていない。また、TNFRIとTNFRIIは、リガンドであるTNF−αに対する親和力において相違する。TNFRIがTNFRIIに比べて30倍以上親和力が高いと知られている(Tartaglia等、J.Biol.Chem.268:18542−18548 1993;Bernard等、Cytokine7:759−770 1995)。この親和力の相違から、TNFRIに対する医薬品の開発が多く試みられてきている。
【0008】
細胞表面についているTNFRは、タンパク質分解酵素により切断されて水溶性TNFRを生成し、水溶性TNFRは、過量存在するTNFを中和させてTNFの濃度を調節する作用を担う。自己免疫疾患または慢性炎症では、このような調節能力を越えるTNF濃度を有していると知られている。
【0009】
人為的にTNFの信号伝達を調節するために、TNF合成阻害、TNFの放出阻害、TNFの信号伝達阻害などの、様々なTNF阻害方法が適用されてきた。TNF阻害方法のうち、TNFRとTNFとの結合を妨害してTNFの信号伝達を阻害する方法が、医薬品の開発に適用されてきた。その一例に、TNFRIIの細胞膜外部分と抗体のFc部分とを融合して作ったエタネルセプト(etanercept)と、TNFと結合する抗体としてアダリムマブ(adalimumab)、インフリキシマブ(infliximab)などが、リウマチ性関節炎、乾癬、強直性脊髄炎などの治療剤として全世界で用いられている。
【0010】
上記のリウマチ性関節炎治療剤エタネルセプトと同じ技術を適用して抗体のFcとTNFRIの細胞外ドメインとを結合させた融合タンパク質であるレネルセプト(Lenercept)についてヨーロッパ及び米国で臨床2相まで進行されたし(Furst等、J.Rheumatol.30:2123−2126 2003;Rau等、J Rheumatol.30:680−690 2003 Arbraham等、Crit Care Med.29:503−510 2001)、TNFRI二量体(dimer)とポリエチレングリコール化水溶性TNFRI(pegylated soluble TNFRI)分子に関する研究が進行された(Carl等、Ann.Rheum.Dis.58:173−181 1999;Solorzano等、J.Appl.Physiol.84:1119−1130 1998;carl等、Advanced Drug Delivery Reivews 55:1315−1336 2003;Honghui等、J.Clin.Pharmacol.45:490−497 2005;Yugal等、The American Journal of Pathology 172:1411−1418 2008)。
【0011】
また、TNFRIの免疫原性を下げると共にTNFとの結合力を高めるための方法として、アミノ酸配列を修飾する研究が進行された。特に、TNFRIのアミノ酸配列の一部を置換して抗体発生を減らしたTNFRI突然変異体、及びTNFRIとTNFとの結合力を増大させた突然変異体が知られている(米国特許第7,144,987号)。
【0012】
TNFRとTNFとの結合に関与する活性部位を見出すための多くの研究が進行されてきた。TNFRの4番目のドメインはTNFとの結合に必須のものではなく、2番目と3番目のドメインを欠失させるとTNF結合活性を喪失することが知られている(Corcoran等、Eur.J.Biochem.233:831−840 1994;Chin−Hsueh等、J.Biol.Chem.270:2874−2878 1995;Scallon等、Cytokine 7:759−770 1995)。また、TNFRIとTNFとの結合に3番目のドメインの一定部位を欠損させることができ、ヒトTNFR1ポリペプチド(配列番号1)の59番から143番までのアミノ酸からなるアミノ酸配列が、TNFRIの生物学的活性を示す部位として知られている(米国特許第6,989,147号)。
【0013】
したがって、この部位でTNFRIとTNFとの結合がなされるため、それ以外の領域では相当な添加基、脱落基または置換基を含むことができる。
【0014】
一方、TNFRIは、生体内利用率を高めるために、完全な長さのTNFRIよりはTNFRIポリペプチド断片が用いられており、タンパク質分解酵素による切断可能性を最小化しながら細胞透過率を高めるための効果的な注射剤及び経口投与用製剤とするためには、最小限の大きさに製造されることが要求される。
【0015】
また、タンパク質治療剤は、体内循環で代謝、腎臓におけるろ過作用(glomerular filteration)、及び胃腸管、組織、血液などにおけるタンパク質分解酵素による分解などのような一般的な過程により除去されるため、生体内でタンパク質固有の活性を維持しつつ、目的とする場所まで送達することは非常に困難である。特に、タンパク質分解酵素による除去は、経口、血管注射、筋肉注射などによる投与時にタンパク質治療剤の半減期に多大な影響を与える。
【0016】
タンパク質治療剤の一つとして、生体内のTNFを調節するヒト腫瘍壊死因子阻害剤が注射剤の形態で開発されているが、注射剤投与は痛み及び感染の危険などの問題を招く。そのため、注射投与回数を軽減したり経口投与したりするなどの他の方法が要求される。そのためには、ヒト腫瘍壊死因子の安全性を高めることが必須であるが、上記のタンパク質分解酵素による分解がその大きな障害となる。
【0017】
したがって、経口用タンパク質治療剤の開発における重要な目標の一つは、生物学的活性を有しながらタンパク質分解酵素には抵抗性を有するタンパク質治療剤を開発することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、生体内(in vivo)または生体外(ex vivo)でTNF阻害作用を有しながら、胃腸管、細胞質及び血液中に存在するタンパク質分解酵素に対する向上した抵抗性を有する修飾されたヒト腫瘍壊死因子受容体−1(TNFRI)ポリペプチドまたはその断片を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
特に定義しない限り、下記の用語は、本発明の詳細な説明及び特許請求の範囲で以下に定義された意味を有するとする。
【0020】
本発明で定義された“ヒト腫瘍壊死因子受容体−1”、または“ヒト腫瘍壊死因子受容体−1ポリペプチド”(以下、TNFRIまたはTNFRIポリペプチド)は、ヒト由来で、455個のアミノ酸で構成され、TNFと結合するポリペプチドのことをいう。
【0021】
本発明で定義された“ヒト腫瘍壊死因子受容体−1断片”、または“ヒト腫瘍壊死因子受容体−1ポリペプチド断片”(以下、TNFRI断片またはTNFRIポリペプチド断片)は、TNFRIの配列と互いに相応するアミノ酸の配列が100%一致し、一つ以上のアミノ酸残基が欠失しているTNFRIの一部分である。欠失したアミノ酸残基は、N末端、C末端または内部を含む、ポリペプチド内のいずれかの箇所でよい。この断片は、TNFRIと一つ以上の生物学的特性を共有する。断片の代表例は、TNFRIのN末端41番目のアミノ酸から108個または126個のアミノ酸を有するもので、これらはそれぞれ、本願においてTNFRI108、TNFRI126と命名する。
【0022】
本発明で定義された“TNFRI(突然)変異体”、“TNFRI断片(突然)変異体”または“修飾されたTNFRIポリペプチド”、“修飾されたTNFRIポリペプチド断片”は、下記に定義されるように、天然または組換え細胞から分離されたTNFRIポリペプチドまたはその断片と100%未満の配列同一性を有するTNFRIポリペプチドまたはその断片のことを指す。一般に、TNFRI変異体は、野生型または天然型TNFRIまたはTNFRI断片と約70%以上のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。配列同一性は、好ましくは約75%以上でよく、80%以上、約85%以上、90%以上の順にさらに好ましく、最も好ましくは95%以上でよい。
【0023】
本発明で定義された“単一変異体”は、ヒト腫瘍壊死因子受容体−1またはヒト腫瘍壊死因子受容体−1断片のアミノ酸配列において1箇所に突然変異が生じた変異体のことをいう。
【0024】
本発明で定義された“二重変異体”は、ヒト腫瘍壊死因子受容体−1またはヒト腫瘍壊死因子受容体−1断片のアミノ酸配列において2箇所に突然変異が生じた変異体のことをいう。
【0025】
本発明で定義された“三重変異体”は、ヒト腫瘍壊死因子受容体−1またはヒト腫瘍壊死因子受容体−1断片のアミノ酸配列において3箇所に突然変異が生じた変異体のことをいう。
【0026】
本発明で定義された“TNFRIm”は、TNFRIのアミノ酸配列のうち、N末端の41番目のアミノ酸からm個のアミノ酸配列からなるTNFRI断片のことをいう。例えば、TNFRI108断片は、TNFRI N末端41番目のアミノ酸から108個のアミノ酸配列を有するTNFRI断片である。他の例として、TNFRI126は、TNFRI N末端41番目のアミノ酸から126個のアミノ酸からなるTNFRI断片である。
【0027】
本発明で定義された“Met−TNFRIm”は、大腸菌でTNFRIを発現させるために、N末端に、TNFRIアミノ酸配列にないメチオニン(Methionine)が添加されたN末端41番アミノ酸からm個のアミノ酸個数を有するTNFRI断片のことをいう。
【0028】
本発明で定義された“xAz”は、アミノ酸配列においてA番目のアミノ酸xがzに置換されたものを意味する。例えば、K48Qは、48番のアミノ酸のリシン(Lys)がグルタミン(Gln)に置換されたものを意味する。
【0029】
本発明は、生体内(in vivo)及び/または生体外(ex vivo)でTNF阻害作用を有しながら、タンパク質分解酵素に対する向上した抵抗性を有する修飾されたTNFRIポリペプチドまたはその断片、及びその製造方法、並びにそれらの用途に関するものである。
【0030】
本発明者らは、生体内及び/または生体外で安全性の増大したTNFRI変異体を開発するために鋭意研究した結果、天然型TNFRI断片のアミノ酸配列のうち、タンパク質分解酵素により認識されて切断される1または2以上のアミノ酸を、タンパク質分解酵素により切断されないと共に物理化学的特性を大きく変化させないアミノ酸に置換することによって、タンパク質分解酵素に対する抵抗性の向上したTNFRI変異体を完成するに至った。
【0031】
したがって、本発明は、天然型TNFRIポリペプチドまたはその断片のアミノ酸配列のうち、特定位置の1または2以上のアミノ酸を修飾することによって、タンパク質分解酵素に対する抵抗性が向上した修飾されたTNFRIポリペプチドまたはその断片を提供する。
【0032】
本発明の修飾されたTNFRIポリペプチドまたはその断片は、薬剤学的生体内利用率に優れており、糖鎖を含まなくとも活性を示すことから、動物細胞の他、微生物細胞においても容易に生成することができる。
【0033】
本発明についてより詳細に説明すると、下記の通りである。
【0034】
本発明は、配列番号1として記載される天然型ヒトTNFRIポリペプチドまたはその断片のアミノ酸配列において、61番、68番、78番、85番、106番、107番、109番、121番、128番、133番、135番、136番、138番、141番、150番、156番、161番、200番、203番、206番及び207番からなる群から選ばれる1または2以上の位置;より好ましくは、68番、85番、109番、128番、133番、135番、136番、141番及び161番からなる群から選ばれる1または2以上の位置;最も好ましくは、68番、109番、133番、135番、136番、141番及び161番からなる群から選ばれる1または2以上の位置におけるアミノ酸修飾を含む修飾されたTNFRIポリペプチドまたはその断片を提供する。
【0035】
上記位置におけるアミノ酸修飾は、修飾されていないTNFRIポリペプチドまたはその断片に比べて、タンパク質分解酵素に対する増加した抵抗性を有させる修飾であり、アミノ酸の置換の他、タンパク質翻訳後修飾のような上記位置のアミノ酸に対する他の化学的な修飾、例えば、炭水化物部位による糖化、アシル化(acylation)(例、アセチル化(acetylation)またはサクシニル化(succinylation))、メチル化(methylation)、リン酸化(phosphorylation)、ハシル化(hasylation)、カルバミル化(carbamylation)、硫酸化(sulfation)、プレニル化(prenylation)、酸化(oxidation)、グアニジル化(guanidination)、アミジン化(amidination)、カルバミル化(carbamylation)(例、カルバモイル化(carbamoylation))、トリニトロフェニル化(trinitrophenylation)、ニトロ化(nitration)、ペグ化(PEGylation)などを含む。本発明の修飾されたTNFRIポリペプチドまたはその断片は、上記位置のアミノ酸修飾によって体内タンパク質分解酵素に対する増加した抵抗性を示す。このような化学的な修飾は、当業界で公知の通常の方法によってアミノ酸を操作することによって達成することができる。
【0036】
本発明は、配列番号1として記載される天然型ヒトTNFRIポリペプチドまたはその断片のアミノ酸配列において、61番、68番、78番、85番、106番、107番、109番、121番、128番、133番、135番、136番、138番、141番、150番、156番、161番、200番、203番、206番及び207番からなる群から選ばれる1または2以上の位置におけるアミノ酸が置換されたTNFRIポリペプチドまたはその断片を提供する。
【0037】
好ましくは、本発明は配列番号1として記載される天然型ヒトTNFRIポリペプチドまたはその断片のアミノ酸配列において、68番、85番、109番、128番、133番、135番、136番、141番及び161番からなる群から選ばれる1または2以上の位置、より好ましくは、68番、109番、133番、135番、136番、141番及び161番からなる群から選ばれる1または2以上の位置のアミノ酸が置換されたTNFRIポリペプチドまたはその断片を提供する。
【0038】
上記配列番号1として記載される天然型ヒトTNFRIポリペプチドまたはその断片のアミノ酸配列において、61番、68番、78番、85番、106番、107番、109番、121番、128番、133番、135番、136番、138番、141番、150番、156番、161番、200番、203番、206番及び207番位置のアミノ酸置換は、本来のアミノ酸がタンパク質分解酵素により認識されて切断されないと共に物理化学的特性を大きく変化させないアミノ酸に置換されたもので、好ましくは、R(Arg)はQ(Gln)またはH(His)に;E(Glu)はQ(Gln)またはN(Asn)に;K(Lys)はQ(Gln)またはN(Asn)に;D(Asp)はN(Asn)またはQ(Gln)に;M(Met)はI(Ile)またはV(Val)に;P(Pro)はA(Ala)またはS(Ser)に;Y(Tyr)はI(Ile)またはH(His)に;F(Phe)はI(Ile)またはV(Val)に;W(Trp)はH(His)またはS(Ser)に;L(Leu)はI(Ile)またはV(Val)に置換される。
【0039】
本発明は、また、配列番号1として記載される天然型ヒトTNFRIポリペプチドまたはその断片のアミノ酸配列において、K61Q、K61N、L68I、L68V、D78Q、E85N、R106H、R106Q、K107Q、M109I、R121H、R121Q、R128H、R128Q、R133Q、Y135I、Y135H、W136H、W136S、E138Q、E138N、F141I、F141V、L150I、L156I、K161Q、K161N、E200Q、K203Q、E206Q、D207Q及びD207Nからなる群から選ばれる1または2以上のアミノ酸置換を含む修飾されたTNFRIポリペプチドまたはその断片を提供する。
【0040】
好ましくは、本発明は、配列番号1として記載される天然型ヒトTNFRIポリペプチドまたはその断片のアミノ酸配列において、L68I、L68V、E85N、M109I、R128H、R133Q、Y135I、W136S、F141I、F141V、K161Q及びK161Nからなる群、好ましくは、L68I、L68V、M109I、R133Q、Y135I、W136S、F141I、F141V、K161Q及びK161Nからなる群、より好ましくはL68I、L68V、R133Q、Y135I、F141I、K161Q及びK161Nからなる群から選ばれる1または2以上のアミノ酸置換を含む修飾されたTNFRIポリペプチドまたはその断片を提供する。
【0041】
好ましくは、本発明は、上記言及したアミノ酸修飾を1個または2個含む修飾されたTNFRIポリペプチドまたはその断片を提供する。
【0042】
すなわち、本発明は、配列番号1として記載される天然型ヒトTNFRIポリペプチドまたはその断片のアミノ酸配列において、K61Q、K61N、L68I、L68V、D78Q、E85N、R106H、R106Q、K107Q、M109I、R121H、R121Q、R128H、R128Q、R133Q、Y135I、Y135H、W136H、W136S、E138Q、E138N、F141I、F141V、L150I、L156I、K161Q、K161N、E200Q、K203Q、E206Q、D207Q及びD207Nからなる群から選ばれる1または2のアミノ酸置換を含む修飾されたTNFRIポリペプチドまたはその断片を;好ましくは、配列番号1として記載される天然型ヒトTNFRIポリペプチドまたはその断片のアミノ酸配列においてL68I、L68V、E85N、M109I、R128H、R133Q、Y135I、W136S、F141I、F141V、K161Q及びK161Nからなる群から選ばれる1または2のアミノ酸置換を含む修飾されたTNFRIポリペプチドまたはその断片を;より好ましくは、配列番号1として記載される天然型ヒトTNFRIポリペプチドまたはその断片のアミノ酸配列においてL68I、L68V、R133Q、Y135I、F141I、K161Q及びK161Nからなる群から選ばれる1または2のアミノ酸置換を含む修飾されたTNFRIポリペプチドまたはその断片を提供する。
【0043】
また、上記2個のアミノ酸置換を含む修飾されたTNFRIポリペプチドまたはその断片の好ましい具体例として、本発明は、配列番号1として記載される天然型ヒトTNFRIポリペプチドまたはその断片のアミノ酸配列において、L68V、R133Q、F141V、K161Q、K161N、E200Q及びD207Nからなる群から選ばれる2個のアミノ酸置換を含む修飾されたTNFRIポリペプチドまたはその断片を提供する。好ましくは、配列番号1として記載される天然型ヒトTNFRIポリペプチドまたはその断片のアミノ酸配列においてR133Q、F141V、K161Q、K161N、E200QまたはD207Nから選ばれる1個のアミノ酸置換及びL68Vの2個のアミノ酸置換を含む修飾されたTNFRIポリペプチドまたはその断片を提供する。より好ましくは、本発明は、配列番号1として記載される天然型ヒトTNFRIポリペプチドまたはその断片のアミノ酸配列において、L68V/K161Q、L68V/K161N、またはL68V/D207Nから選ばれるアミノ酸置換を含む修飾されたTNFRIポリペプチドまたはその断片を提供する。
【0044】
上記配列番号1として記載される天然型ヒトTNFRIポリペプチドの断片は、天然型ヒトTNFRIポリペプチドと実質的に同等の効果を示す、天然型ヒトTNFRIポリペプチドの一部分を意味する。本願では、特に、配列番号1として記載される天然型ヒトTNFRIのアミノ酸配列の41番乃至211番からなるアミノ酸配列(配列番号2;TNFRI171)、配列番号1として記載される天然型ヒトTNFRIのアミノ酸配列の41番乃至166番からなるアミノ酸配列(配列番号3;TNFRI126)、配列番号1として記載される天然型ヒトTNFRIのアミノ酸配列の41番乃至148番からなるアミノ酸配列(配列番号4;TNFRI108)が用いられる。しかし、本発明の配列番号1として記載される天然型ヒトTNFRIポリペプチドの断片は、然型ヒトTNFRIポリペプチドと実質的に同等の効果を示すものであればよく、上記したTNFRI171、TNFRI126、TNFRI108に限定されることはない。
【0045】
上記修飾されたTNFRIポリペプチドの“断片”は、修飾されたTNFRIポリペプチドと実質的に同等の効果を示し、当業者により容易に製造可能な修飾されたTNFRIポリペプチドの一部分を意味する。
【0046】
そのため、本発明のタンパク質分解酵素に対する抵抗性が向上した、修飾されたTNFRIポリペプチドまたはその断片の範ちゅうには、以下に記述されるものが含まれる。
【0047】
本発明は、配列番号1として記載される天然型ヒト腫瘍壊死因子受容体−1のアミノ酸配列の41番乃至211番からなるアミノ酸配列において、61番、68番、78番、85番、106番、107番、109番、121番、128番、133番、135番、136番、138番、141番、150番、156番、161番、200番、203番、206番及び207番からなる群から選ばれる1または2以上の位置でのアミノ酸修飾;好ましくは、68番、85番、109番、128番、133番、135番、136番、141番及び161番からなる群から選ばれる1または2以上の位置でのアミノ酸修飾;より好ましくは68番、109番、133番、135番、136番、141番及び161番からなる群から選ばれる1または2以上の位置でのアミノ酸修飾を含む、修飾されたヒト腫瘍壊死因子受容体−1ポリペプチドまたはその断片(TNFRI171変異体またはその断片)を提供する。ここで、アミノ酸修飾は、上記位置におけるアミノ酸修飾について、上述した具体的な修飾及び好ましい修飾が同一に適用される。
【0048】
本発明は配列番号1として記載される天然型ヒト腫瘍壊死因子受容体−1のアミノ酸配列の41番乃至166番からなるアミノ酸配列において、61番、68番、78番、85番、106番、107番、109番、121番、128番、133番、135番、136番、138番、141番、150番、156番及び161番からなる群から選ばれる1または2以上の位置でのアミノ酸修飾;好ましくは、68番、85番、109番、128番、133番、135番、136番、141番及び161番からなる群から選ばれる1または2以上の位置でのアミノ酸修飾;より好ましくは、68番、109番、133番、135番、136番、141番及び161番からなる群から選ばれる1または2以上の位置でのアミノ酸修飾を含む修飾されたヒト腫瘍壊死因子受容体−1ポリペプチドまたはその断片(TNFRI126変異体またはその断片)を提供する。ここで、アミノ酸修飾は、上記位置におけるアミノ酸修飾に関して上述した具体的な修飾及び好ましい修飾が同一に適用される。
【0049】
本発明は、配列番号1として記載される天然型ヒト腫瘍壊死因子受容体−1のアミノ酸配列の41番乃至148番からなるアミノ酸配列において、61番、68番、78番、85番、106番、107番、109番、121番、128番、133番、135番、136番、138番及び141番からなる群から選ばれる1または2以上の位置でのアミノ酸修飾;好ましくは、68番、85番、109番、128番、133番、135番、136番及び141番からなる群から選ばれる1または2以上の位置でのアミノ酸修飾;より好ましくは、68番、109番、133番、135番、136番及び141番からなる群から選ばれる1または2以上の位置でのアミノ酸修飾を含む修飾されたヒト腫瘍壊死因子受容体−1ポリペプチドまたはその断片(TNFRI108変異体またはその断片)を提供する。ここで、アミノ酸修飾は、上記位置におけるアミノ酸修飾について、上述した具体的な修飾及び好ましい修飾が同一に適用される。
【0050】
本発明は、また、配列番号1として記載されるアミノ酸配列を有するTNFRIポリペプチドと実質的に同じポリペプチドにおいて、上述したアミノ酸修飾またはそれに相応する修飾を含む修飾されたTNFRIポリペプチドまたはその断片を提供する。上記の“配列番号1として記載されるアミノ酸配列を有するTNFRIポリペプチドと実質的に同じポリペプチド”とは、TNFRIの本質的な活性を害さない数と種類のアミノ酸修飾、すなわち、アミノ酸置換、欠失、付加またはその他の修飾を含むポリペプチドを意味する。具体的には、本発明は、配列番号1として記載されるアミノ酸配列を有するポリペプチドと90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上の相同性を有する変異体において上述のアミノ酸修飾に相応する修飾を含む、修飾されたTNFRIポリペプチドまたはその断片を提供する。
【0051】
上述の変異体は、配列番号1として記載された配列を有するポリペプチドと、本発明のタンパク質分解酵素に対する抵抗性向上のためのアミノ酸修飾を除けば、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上の配列相同性を有するもので、ヒトTNFRIポリペプチドの対立遺伝子型変異体同種型、組織特異的な同種型及びそれらの対立遺伝子型変異体、一つ以上のアミノ酸突然変異、置換、欠失、挿入または追加を有している合成変異体、核酸を翻訳することによって製造された合成分子、ヒト及び非ヒト組織及び細胞から抽出したタンパク質、キメラTNFRIポリペプチド及びその修飾された形態を含むことができる。
【0052】
上述の“相応する修飾”とは、異なる同種型であるポリペプチド同士間に比較される残基の修飾を意味する。すなわち、配列番号1として記載される天然型ヒトTNFRIポリペプチドのアミノ酸配列と配列アラインメント(sequence alignment)時に、機能的に不変であると把握される残基を有する位置における、本発明のタンパク質分解酵素に対する抵抗性の向上のためのアミノ酸修飾に相応する修飾を意味する。当業界における熟練者であれば、それらのポリペプチドから相応する残基の修飾を容易に把握することができる。例えば、当業者は、保存的で且つ同一のアミノ酸残基をガイドとして用いてTNFRIポリペプチドの配列を整列することによって、相応する残基を同定することができる。
【0053】
本発明は、また、配列番号6乃至配列番号266で表現されたアミノ酸配列を含むTNFRIポリペプチドまたはその断片、好ましくは、配列番号18、19、33、52、62、69、70、73、78、79、94、95、109、128、138、145、146、149、154、155、164、165、178、179、193、212、222、229、230、233、238、239、248、249、または258乃至266で表現されたアミノ酸配列を含むTNFRIポリペプチドまたはその断片、より好ましくは、配列番号18、19、69、70、78、94、95、145、146、154、164、165、178、179、229、230、238、248、249、または261乃至263で表現されたアミノ酸を含むTNFRIポリペプチドまたはその断片を提供する。
【0054】
上記の本発明の修飾されたTNFRIポリペプチドまたはその断片は、上記アミノ酸修飾に加えて、タンパク質翻訳後修飾のような他の化学的な修飾、例えば、炭水化物部位による糖化、アシル化(acylation)(例、アセチル化(acetylation)またはサクシニル化(succinylation))、メチル化(methylation)、リン酸化(phosphorylation)、ハシル化(hasylation)、カルバミル化(carbamylation)、硫酸化(sulfation)、プレニル化(prenylation)、酸化(oxidation)、グアニジル化(guanidination)、アミジン化(amidination)、カルバミル化(carbamylation)(例、カルバモイル化(carbamoylation))、トリニトロフェニル化(trinitrophenylation)、ニトロ化(nitration)、ペグ化(PEGylation)を、タンパク質分解酵素に対する抵抗性の増加、免疫原性の減少、または生物学的活性の維持または増加のために含むことができる。
【0055】
本発明は、また、上記のTNFRIポリペプチドまたはその断片をコードする遺伝子を提供する。
【0056】
本発明のTNFRIポリペプチドまたはその断片をコードする遺伝子は、大腸菌内発現を最適化するために操作された遺伝子を含む。ヒトと大腸菌の遺伝子コドンが異なるため、ヒト遺伝子を大腸菌で発現させる場合に、発現収率が低い。そこで、本発明では、ヒトTNFRI遺伝子に基づいて大腸菌発現に適合するように操作された遺伝子、例えば配列番号5のTNFRI遺伝子を用いることができる。該遺伝子は、大腸菌発現ベクター(例えば、pET44a(Novagen、Cat.No:71122−3))に挿入してコドンなしの大腸菌細胞(例:BL21(DE3))で発現時に、ヒトTNFRI遺伝子よりも高い発現量を示す。そのため、該遺伝子を用いてTNFRI断片及びTNFRI変異体を大腸菌内で効果的に産生することができる。
【0057】
本発明は、また、上記遺伝子を含むベクターを提供する。本発明で遺伝子導入のために使用可能なベクターは、当業界に公知のベクターを用いることができ、好ましくは、図1、図5の切断地図を有するベクターを用いることができる。
【0058】
本発明は、また、上記ベクターで形質転換された微生物または動物細胞を提供する。本発明で、ベクターの形質転換のために使用可能な微生物または動物細胞は、当業界で用いられる形質転換のための公知の微生物または動物細胞とすればよく、好ましくは、大腸菌細胞、CHO細胞、HEK293細胞などを用いることができ、より好ましくは、大腸菌細胞(例えば、E.coli BL21(DE3))を用いることができる。
【0059】
本発明は、大腸菌を用いたTNFRIの製造方法を提供する。
【0060】
TNFRIは、動物細胞を用いて産生可能である(Bernie等、The Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics.301:418−426 2002;Scallon等、Cytokine.7:759−770 1995)。
【0061】
TNFRIを大腸菌で発現させる場合に、構造的に活性を持たない封入体(inclusion body)の形態で発現するから、活性を有するタンパク質へのリフォールディング(refolding)過程が要求される(Silvia等、Analytical Biochemistry 230:85−90 1995;Karin等、Cytokine.7:26−38 1995)。そのため、本発明の修飾されたTNFRIポリペプチドまたはその断片は大腸菌で封入体の形態で発現させ、これをリフォールディング過程を通じて活性を有するTNFRIにした後、これをゲルろ過クロマトグラフィ方法などで精製して得ることができる。また、本発明の修飾されたTNFRIポリペプチドまたはその断片は、親水性の融合タンパク質をつけて発現する方法、低い温度で培養する方法などを用いて大腸菌で封入顆粒の形態ではなく可溶性タンパク質の形態とすることができる。本願の実施例では、親水性のNusAタンパク質をTNFRIタンパク質のN末端に結合させることによって、大腸菌で可溶性のタンパク質としてTNFRIを製造した。
【0062】
また、本発明は、上記遺伝子を適当なベクターに導入し、このベクターで宿主細胞を形質転換し、これにより得られた形質転換体を培地で培養してTNFRIポリペプチドまたはその断片を得る、TNFRIポリペプチドまたはその断片の製造方法を提供する。
【0063】
本発明は、また、TNFにより媒介される疾病や内科症状(以下、‘TNF媒介疾病’という。)に対する治療方法を提供する。TNF媒介疾病、それに伴う後遺症及びその関連症状の例は、次の通りである:成人呼吸窮迫症候群;食欲不振;癌(例えば白血病);慢性疲労症候群;移植片対宿主拒否反応;痛覚過敏;炎症性腸疾患;神経炎症性疾患;脳虚血を含む虚血性/再潅流傷害;各々神経変性の原因となり得る外傷、癲癇、出血又は発作の結果としての脳損傷;糖尿病(例えば若年性1型糖尿病);多発性硬化症;眼病;疼痛;膵炎;肺線維症;リウマチ性疾患(例えばリウマチ性関節炎、骨関節炎、若年性(リウマチ性)関節炎、血清反応陰性多発性関節炎、強直性脊髄炎、ライター症候群及び反応性関節炎、乾癬性関節炎、腸疾患性関節炎、多発性筋炎、皮膚筋炎、強皮症、全身性硬化症、血管炎、脳血管炎、シェーグレン症候群、リウマチ熱、多発性軟骨炎及びリウマチ性多発性筋痛及び巨細胞性動脈炎);敗血性ショック;放射線療法の副作用;全身性紅斑性狼瘡;側頭下顎関節疾患;甲状腺炎及び組織移植。
【0064】
本発明は、また、上記の修飾されたTNFRIポリペプチドまたはその断片を含むリウマチ性関節炎またはTNF媒介疾病の予防または治療用組成物を提供する。
【0065】
本発明は、また、上記の修飾されたTNFRIポリペプチドまたはその断片をコードする遺伝子、該遺伝子を含むベクターまたは該ベクターで形質転換された微生物または動物細胞を含むリウマチ性関節炎またはTNF媒介疾病の予防または治療用組成物を提供する。
【0066】
本発明の薬剤学的組成物は、経口及び吸入投与の他、静脈及び皮下投与もできる。この薬剤学的組成物は、目的とする純度を有するTNFRI変異体を、薬剤学的に許容される担体、賦形剤または安定化剤と混合することによって貯蔵または投与用に製造することができる。これらの物質は、使用する投与量及び濃度において服用者に毒性がないものであり、リン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩及び他の有機酸塩のような緩衝剤;アスコルビン酸のような酸化防止剤;ポリアルギニン;タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゲラチンまたは免疫グロブリン);低分子量(約10個未満の残基を有する)ペプチド;ポリビニルピロリドンのような親水性重合体;グリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸、アルギニンのようなアミノ酸;グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む、単糖類、二糖類、およびセルロースまたはその誘導体を含むその他の炭水化物;EDTAのようなキレート剤;マンニトールまたはソルビトールのような糖アルコール;ナトリウムのような塩形成対イオン;および/または、Tween、プルロニック(Pluronics)、またはポリエチレングリコール(PEG)のような非イオン界面活性剤を含む。
【0067】
本発明の薬剤学的組成物は、注射用滅菌組成物の形態で当業界における通常の方法により製造することができる。この注射用滅菌組成物は、賦形剤、例えば、水またはごま油、落花生油または綿実油のような天然植物性オイル、またはオレイン酸エチルのような合成脂肪賦形剤中の活性化合物の溶液または懸濁液を含むことができる。該注射用滅菌組成物には、さらに緩衝剤、防腐剤、酸化防止剤などを、当業界で通常的に用いる様態で混入することができる。
【0068】
本発明の修飾されたTNFRIポリペプチドまたはその断片、またはこれをコードする遺伝子または該遺伝子を含むベクター、該ベクターで形質転換された微生物または動物細胞は、上記TNF媒介疾患の治療的に有効な量で薬剤学的組成物中に含まれる。
【0069】
上記の「治療的に有効な量」は、研究者、獣医師、医師またはその他臨床医により考えられる動物またはヒトにおいて生物学的または医学的反応を誘導する活性成分または薬学的組成物の量を意味するもので、これは、治療される疾患または障害の症状緩和を誘導する量を含む。本発明の有効成分に対する治療上有効投与量及び投与回数は、所望の効果によって変わることは当業者には自明である。そのため、投与される最適の投与量は、当業者が容易に決定することができ、疾患の種類、疾患の重症度、組成物に含まれている有効成分及び他の成分の含量、剤形の種類、及び患者の年齢、体重、一般健康状態、性別及び食餌、投与時間、投与経路及び組成物の排出率、治療期間、同時使用される薬物をはじめとする様々な因子によって調節することができる。例えば、成人に対して、本発明のTNFRI変異体を1日1回投与時に、0.01〜1,000mg/体重kg、好ましくは、0.1〜100mg/体重kgの用量で投与することが好ましい。
【0070】
また、本発明のTNFRIポリペプチドまたはその断片は、他の療法に対する付加物として投与されてもよく、治療される適応症(indication)に適する他の薬剤学的組成物と併用して投与することができる。本発明のTNFRIポリペプチドまたはその断片は、1または2以上の公知のまたは新規の抗炎症性薬物のうちの任意の薬物と別個にまたは併用して投与することができる。かかる薬物に該当する化合物に関する情報は、The Merck,Manual of Diagnosis and Therapy,Sixteenth Edition,Merck,Sharp & Dohme Research Laboratories,Merck & Co.,Rahway、NJ(1992)、及びPharmaprojects、ピージェイビーパブリケーションリミッテッドから見つけることができる。
【0071】
上記併用使用の一例として、本発明のTNFRIポリペプチドまたはその断片は、リウマチ性疾病[例えば、ライム病、若年性(リウマチ性)関節炎、骨関節炎、乾癬性関節炎、リウマチ性関節炎及び黄色ブドウ球菌誘導性(“敗血性”)関節炎]のような急性及び慢性炎症を含む、TNF媒介疾病の治療のために、非ステロイド性、抗炎症性薬物(NSAIDs)として分類される炎症調節のための第一線薬と共に用いることができる。
【0072】
上記併用使用の他の例として、本発明のTNFRIポリペプチドまたはその断片は、上記TNF媒介疾病及び多発性硬化症治療のために、一つ以上の徐々に作用する抗リウマチ性薬物(SAARDs)または疾病修飾性抗リウマチ性薬物(DMARDS)、その薬物前駆体エステルまたは薬剤学的に許容される塩のいずれかと共に使用することができる。
【0073】
上記併用使用の他の例として、本発明のTNFRIポリペプチドまたはその断片は、上記のTNF媒介疾病の治療のために、一つ以上のCOX2阻害剤、その薬物前駆体エステルまたは薬剤学的に許容される塩のいずれかと共に使用することができる。
【0074】
本発明のTNFRIポリペプチドまたはその断片は、上記のTNF媒介疾病の治療のために、一つ以上の抗菌薬、薬物前駆体エステル、または薬剤学的に許容される塩のいずれかと共に使用することができる。
【0075】
本発明のTNFRIポリペプチドまたはその断片は、上記のTNF媒介疾病の治療のために、一つ以上の次の化合物のいずれかと共に使用することができる:顆粒球菌体刺激因子タリドミド、テニダブ、チアパパント、ニメスリド、パナビア、ロリプラム、サルファサラジン(sulfasalazine);バルサラジド(balsalazide);オルサラジン(olsalazine);メサラジン(mesalazine);プレドニソロン(prednisolone);ブデソニド(budesonide);メチルプレドニソロン(methylprednisolone);ヒドロコルチゾン(hydrocortisone);メトトレキサート(methotrexate);シクロスポリン(cyclosporin);ペプチドT;(1R,3S)−シス−1−[9−(2,6−ジアミノプリニル)]−3−ヒドロキシ−4−シクロペンテンヒドロクロリド、(1R,3R)−トランス−1−[9−(2,6−ジアミノ)プリン]−3−アセトキシシクロペンタン、(1R,3R)−トランス−1−[9−アデニル]−3−アジドシクロペンタンヒドロクロリド、及び(1R,3R)−トランス−1−[6−ヒドロキシ−プリン−9−イル]−3−アジドシクロペンタン。
【0076】
本発明のTNFRIポリペプチドまたはその断片は、上記のTNF媒介疾病の治療のために、一つ以上の付加的TNF阻害剤と共に使用することができる。TNF阻害剤は、TNFの生体内合成または細胞外放出を遮断する化合物及びタンパク質であり、次のものを含む:抗TNF抗体[例えば、MAK 195F Fab抗体(Holler et al.(1993),1st International Symposiumon Cytokines in Bone Marrow Transplantation,147);CDP 571抗TNFモノクロナール抗体(Rankin et al.(1995),British Journal of Rheumatology,34:334−342);BAY X1351マウスの抗腫瘍壊死因子モノクロナール抗体(Kieft et al.(1995),7th European Congress of Clinical Microbiology and Infectious Diseases,9);CenTNF cA2抗TNFモノクロナール抗体(Elliott et al.(1994),Lancet,344:1125−1127 and Elliott et al.(1994)、Lancet、344:1105−1110)]。
【0077】
本発明は、また、上記のTNFRIポリペプチドまたはその断片を含む薬剤学的製剤を提供する。好ましくは、本発明の薬剤学的製剤は、薬剤学的に許容される賦形剤をさらに含む。
【0078】
本発明の薬剤学的製剤は、経口剤、吸入剤、注射剤、粘膜投与製剤、及び外用剤からなる群から選ばれる薬剤学的製剤でよい。
【0079】
本発明の薬剤学的製剤は、薬剤的に許容可能な希釈剤、保存剤、溶解剤、乳化剤、アジュバントまたは運搬体などを治療に効果的な量で含む。また、本発明の薬剤学的製剤は、当業界で用いられる通常の緩衝溶液(例えば、トリス緩衝液、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液)、界面活性剤(例えば、Tween 80)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メタスルファイトナトリウム)、保存剤(例えば、チメロサール、ベンジルアルコール)、そしてバルク希釈剤(例えば、乳糖、マンニトール)のような添加剤を含むことができる。これらの添加剤は、ポリ乳酸、ポリグリコール酸リポソームなどのポリマー組成物を用いて粒子性物質として提供することができる。また、本発明の薬剤学的製剤は、循環系内の持続性増加のために、ヒアルロン酸を含むことができる。本発明の薬剤学的製剤は、選択的に薬剤学的運搬体、賦形物、あるいは培地として薬剤学的に許容される液体、半固体、あるいは固体希釈物を含むことができる。これらの物質にはポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、澱粉類、砂糖、デキストロース、アカシアガム、カルシウムリン酸塩、ミネラルオイル、ココアバター、及びテオブロマオイルなどを含むことができ、これに限定されない。
【0080】
本発明の薬剤学的製剤は、また、胃腸管環境、そして腸内における生物学的な活性を有する物質の分泌から保護されるようにする安定した添加物質を含む。
【0081】
本発明の薬剤学的製剤は、公知の技術、例えば、混合、溶解、顆粒化、ドラジェ化(dragee−making)、研和(levigating)、乳化、カプセル化、封入(entrapping)または錠剤化工程を用いて製造される。
【0082】
本発明の薬剤学的製剤は、液体(例:懸濁液、エリキシル及び/または溶液)、または固体(例:粉末、錠剤及び/またはカプセル)形態であり、デポー(depot)形態に剤形化することができる。該デポー製剤は、非デポー製剤よりも一般的に長時間作用性である。該デポー製剤は、適切な重合体または疎水性物質(例:適切なオイルのうちエマルジョン)またはイオン交換樹脂または難溶性誘導体(例えば難溶性塩)を用いて製造する。また、本発明の薬剤学的製剤は、リポソーム及びエマルジョンのような送達システムを含む。特定送達システムは、疎水性化合物を含む製剤を含めて特定薬剤学的製剤を製造するのに有用であり、ジメチルスルホキシドのような有機溶媒を用いることができる。本発明の他の様態として、本発明の薬剤学的製剤は、薬剤学的製剤を特定組織や細胞類型に送達するように考案された一つ以上の組織特異的送達分子を含む。例えば、特定の様態において、薬剤学的製剤は、組織特異的抗体で被覆されたリポソームを含む。
【0083】
好ましくは、本発明の薬剤学的製剤は、固体形態の経口投与製剤にすることができる。固体投与形態は、錠剤、カプセル、丸薬、トローチ、ペレットなどの形態を含む。
【0084】
リポソームやプロテイノイドカプセル化も、本発明の組成物を製剤化するのに用いることができる。これらのリポソームは、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルイノシトール(PI)、及びスフィンゴミエリン(SM)のようなリン脂質、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリメチルオキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール、及びポリアスパラギン酸塩アミドのような親水性ポリマーで製造することができる。
【0085】
一方、本発明の薬剤学的製剤中に含まれた上記のTNFRIポリペプチドまたはその断片は、必要によっては、経口投与を効果的にするために化学的に修飾することができる。一般に、化学的な修飾は、TNFRI変異体ポリペプチド内に1または2以上の残基をつけることに相当する。ここで、残基は、タンパク質分解酵素に抵抗性を持たせる物質、または、胃腸管から血流中への吸収を助ける物質でよい。好ましくは、上記化学的修飾のための残基は、本発明の薬剤学的製剤の全体的な安全性を増加させることで、人体内で循環時間を増加させる化学的修飾のための残基でよい。これら残基の例は、ポリエチレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールとの共同複合体、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン及びポリポリプロリンなどでよい。使用可能な他のポリマーには、ポリ−1,3−ジオキサン及びポリ−1,3,6−チオキソケインなどがある。最も好ましくは、ポリエチレングリコール残基(ペグ化)が用いられる。
【0086】
本発明の経口投与用形態の薬剤学的製剤の吸収率を増加させるための運搬体として、ソジウムN−(8−[2−ヒドロオキシベンゾイル]アミノ)カプリレート(SNAC)のような修飾されたアリファティックアミノ酸の塩を用いることができる。
【0087】
本発明の薬剤学的製剤は、顆粒や粒子の大きさが略1mmのペレット形態の多重微粒子状に製剤化することができる。この場合、製剤は、カプセル形態でもよく、多重微粒子状の製剤は、粉末、軽く押された充填物、あるいは錠剤などの形態でもよい。また、該製剤は圧縮によって製造されてもよい。
【0088】
本発明の薬剤学的製剤は、また、発色剤や香辛料をさらに含み、例えば、リポソームやミクロスフェアカプセルの形態に製剤化することができる。
【0089】
また、本発明の薬剤学的製剤内有効成分である上記のTNFRIポリペプチドまたはその断片の吸収を増加させるために、脂肪酸、オレイン酸、リノレン酸などのような添加剤を用いることができる。
【0090】
一方、本発明の薬剤学的製剤は、放出制御性製剤でよい。このような製剤内有効成分である上記のTNFRIポリペプチドまたはその断片は、非活性の担体に含まれて、拡散あるいは溶解の機転によって制御されて放出される。また、この放出制御性製剤は、徐々に分解される担体、例えば、アルギン酸、多糖類などを含むことができる。該放出制御性製剤の他の形態には、OROS治療システム(Osmotic Release Oral delivery System、アルジャ社製)に基づく形態でよい。この放出制御性製剤は、半透過性膜内に本発明の有効成分であるTNFRI変異体が充填され、その内部に水が流入することで当該有効成分を一つの小さい孔を通して浸透圧効果にてはみ出させる。また、本発明の放出制御性製剤は、腸溶性コーティング物質でコーティングすることによって、遅延された薬物放出効果を示すことができる。
【0091】
本発明の薬剤学的製剤はまた、フィルムでコーティングされたタブレットの形態でよく、このフィルムコーティングに用いられる物質には、次の2群がある。第一の群は、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキセチルセルロース、メチルヒドロキシル−エチルセルロース、ヒドロキシルプロピルセルロース、ヒドロキシプロピル−メチルセルロース、ソジウムカルボキシ−メチルセルロース、プロビドンそしてポリエチレングリコールなどのような非腸溶性物質であり、第二の群は、フタル酸のエステルのような腸溶性物質である。具体的には、腸溶性物質には、腸溶性高分子、すなわち、腸溶性セルロース誘導体、腸溶性アクリル酸系共重合体、腸溶性マレイン酸系共重合体、腸溶性ポリビニル誘導体、及びこれらの混合物からなる群から選ばれるいずれかが用いられる。腸溶性セルロース誘導体は、ヒプロメロースアセテートスクシネート、ヒプロメロースフタレート、ヒドロキシメチルエチルセルロースフタレート、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートスクシネート、セルロースアセテートマレート、セルロースベンゾエートフタレート、セルロースプロピオネートフタレート、メチルセルロースフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース及びエチルヒドロキシエチルセルロースフタレートから選ばれる1または2以上の腸溶性アクリル酸系共重合体は、スチレン−アクリル酸共重合体、アクリル酸メチル−アクリル酸共重合体、アクリル酸メチルメタクリル酸共重合体、アクリル酸ブチル−スチレン−アクリル酸共重合体、メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体(例えば、オイドラギットL100、オイドラギットS、デグザ社製)、メタクリル酸・アクリル酸エチル共重合体(例えば、オイドラギットL100−55、デグザ社製)、及びアクリル酸メチル−メタクリル酸−アクリル酸オクチル共重合体から選ばれる1または2以上の腸溶性マレイン酸系共重合体は、酢酸ビニル−マレイン酸無水物共重合体、スチレン−マレイン酸無水物共重合体、スチレン−マレイン酸モノエステル共重合体、ビニルメチルエーテル−マレイン酸無水物共重合体、エチレン−マレイン酸無水物共重合体、ビニルブチルエーテル−マレイン酸無水物共重合体、アクリロニトリル−アクリル酸メチル・マレイン酸無水物共重合体、及びアクリル酸ブチル−スチレン−マレイン酸無水物共重合体から選ばれる1または2以上、または上記腸溶性ポリビニル誘導体は、ポリビニルアルコールフタレート、ポリビニルアセタールフタレート、ポリビニルブチレートフタレート、及びポリビニルアセトアセタールフタレートから選ばれる1または2以上である。
【0092】
上記コーティング物質の混合物が最適のフィルムコーティングのために用いられてもよい。フィルムコーティングは、ファンコーター、流動層造粒機または圧縮コーティング機で行うことができる。
【0093】
本発明の放出制御性薬剤学的製剤は、また、持続放出のために、成形品、例えばフィルムまたはマイクロカプセル形態の半透過性固相疎水性重合体マトリックス内に、本発明のTNFRIポリペプチドまたはその断片を含むことができる。この持続放出のためのマトリックスの例は、ポリエステル、ヒドロゲル[例:Langer等、J.Biomed.Mater.Res.,15:167−277,1981及びLanger,Chem.Tech.,12:98−105,1982に記載されたポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)またはポリ(ビニルアルコール)]、ポリ乳酸(米国特許第3773919号、ヨーロッパ特許第58,481号)、L−グルタミン酸及びガンマエチル−L−グルタメートの共重合体(Sidman等、Biopolymers,22:547−556,1983)、非分解性エチレン−ビニルアセテート(上記のLanger等の文献)、分解性乳酸−グリコール酸共重合体(例:リュープロンデポー(Lupron Depot)(商標)(乳酸−グリコール酸共重合体および酢酸ロイプロリドからなる注射用ミクロスフェア)及びポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸(ヨーロッパ特許第133988号)を含む。
【0094】
カプセル化したタンパク質が長期間体内に滞留すると、37℃で湿気に露出された結果、変性または凝集することがあり、その結果、生物学的活性の損失、免疫原性の変化を招くことがある。そのため、関連メカニズムに基づいて公知の方法を用いてタンパク質安定化を達成することができる。例えば、凝集メカニズムがジスルフィド交換を通じた分子間S−S結合を形成するものと知られた場合、スルフヒドリル残基を変性し、酸性溶液から凍結乾燥し、水分含量を調節し、適当な添加剤を使用し、特定重合体マトリックス組成物を開発することによって安定化させることができる。
【0095】
本発明は、また、本発明のTNFRI変異体、及びこれを含む薬剤学的製剤の使用方法を提供する。当該薬剤学的製剤は、注射、経口投与、鼻腔内投与、経皮投与、または他の方法を用いた投与が可能である。該方法には、静脈内(intravenous)、真皮内(intradermal)、筋肉内(intramuscular)、乳房内(intramammary)、腹腔内(intraperitoneal)、髄腔内(intrathecal)、眼内(intraocular)、肺内(intrapulmonary)あるいは皮下注射(subcutaneous injection)、舌下(sublingual)、肛門(anal)、膣(vaginal)、外科的注入(surgical implantation)などがある。この治療は、単回投与または一定期間にわたる反復投与でよい。
【0096】
また、本発明の薬剤学的製剤は、肺を通した送達方法によって伝えられてもよい。本発明の薬剤学的製剤は、ほ乳動物の肺を通して息をする間に送達され、それは肺の上皮細胞を通りながら血流中に吸収される。
【0097】
肺を通した薬物の送達のために考案された様々な機械的装置を、本発明の薬剤学的製剤の肺を通した送達のために用いることができる。これらは、ネブライザー、目盛り付き用量吸入器、及び粉吸入器などを含め、当業界で市販されている種々の機器を含む。
【0098】
本発明の薬剤学的製剤は、これらの装置への適用を最適化するために適切に製剤化することができる。一般に、それぞれの製剤は、適用された装置の形態によって特異的であり、場合によって、希釈剤、アジュバント、または運搬体にさらに推進剤を適切に併用することができる。
【0099】
肺を通した送達のための本発明の薬剤学的製剤は、粒子性物質とすることが好ましく、それの平均粒径は、略10μm以下である。最も好ましくは、0.5〜5μmにし、遠くの肺まで効果的に送達されるようにする。
【0100】
肺を通した送達のための本発明の薬剤学的製剤は、また、運搬体として、トレハロース、マンニトール、キシリトール、スクロース、ラクトース及びソルビトールのような炭水化物を含むことができる。上記製剤には、ジパルミトイルホスファチジルコリン(Dipalmitoylphosphatidylcholine、DPPC)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(Dioleoylphoshatidylethanolamine、DOPE)、ジステアロイルホスファチジルコリン(Distearoylphosphatidylcholine、DSPC)及びジオレオイルホスファチジルコリン(Dioleoylphosphatidylcholine、DOPC)などをさらに挙げることができる。なお、当該製剤は、天然または合成界面活性剤を含むことができる。該製剤は、なお、ポリエチレングリコール環状デキストランのようなデキストラン胆汁酸と他の関連した誘導体、及び緩衝溶液の製剤として用いられるアミノ酸をさらに含むことができる。
【0101】
また、本発明の薬剤学的製剤の肺を通した送達のために、リポソーム、マイクロカプセルまたはミクロスフェア、包接錯体または運搬体の他の形態が用いられてもよい。
【0102】
本発明の薬剤学的製剤をネブライザーを用いて肺に送達する場合に、ジェットまたは超音波を共に使用することができる。ネブライザーに適用するための本発明の薬剤学的製剤は、溶液1ml当たり略0.1〜25mgのTNFRI変異体を含む。また、このネブライザー用製剤は、緩衝溶液と単糖類を含み、これらは、例えば、タンパク質安定化及び浸透圧安定に寄与する。なお、当該ネブライザー用製剤は、エアロゾルの形成において溶液の原子化に起因するタンパク質の凝集を誘発する表面を減らす目的で界面活性剤を含むことができる。
【0103】
目盛り付き用量吸入器のための本発明の薬剤学的製剤は、一般に、本発明のTNFRI変異体を含む組成物を細かい粉にして、界面活性剤の補助下に推進剤に混合した形態である。該推進剤は、クロロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、あるいはジクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタノール、及び1,1,1,2−テトラフルオロエタンのようなヒドロカーボン、またはこれらの組み合わせでよい。上記使用可能な適切な界面活性剤は、ソルビタントリオレート及び大豆レシチンを含む。オレイン酸も同様、界面活性剤に用いることができる。
【0104】
粉吸入器から放出される本発明の薬剤学的製剤は、本発明のTNFRI変異体を含む組成物を含む細かい乾燥粉状にし、ラクトース、ソルビトール、スクロース、マンニトール、トレハロースまたはキシリトールのような希釈剤を含むことができる。これらは、粉状の製剤を機器装置から分散させることを促すことができる。
【0105】
なお、本発明の薬剤学的製剤は、鼻腔を通した送達のための製剤でもよい。鼻を通した送達は、タンパク質治療剤が鼻に入ってきた後に直ちに血流中に入るようにし、肺に治療剤が積もることを防ぐ。鼻腔を通した送達のための本発明の薬剤学的製剤は、デキストランまたは環状デキストランなどを含む。本発明の薬剤学的製剤は、その他の粘膜組織を通して伝えられるための製剤でもよい。
【0106】
本発明の薬剤学的製剤の投与用量は、上述した疾病を治療する方法について医師により薬物の効果を変形させるような要因、例えば、年齢、状態、体重、性別、食餌、ある感染による重症度、投与時点などのその他臨床学的な条件による要因に基づいて決定しなければならない。
【0107】
本発明の薬剤学的製剤は、単回または継続的投与が可能である。ただし、初回投与後に一定の循環系濃度を維持させるために継続的な投与をすることが好ましい。効果的な投与用量及び方法は、当業界で公知の一般技術に基づいて最適化すればよく、反復投与回数は、各患者の薬動学的な因子と投与経路によって可変でよい。なお、投与用量、用法及び投与回数は、投与された薬物の物理的な状態、安全性、生体内放出速度、生体内除去率などに基づいて最適化することができる。また、投与経路に基づく適切な投与用量を、体重、体表面積、臓器の大きさによって計算することができる。適切な用量は、適切な用量−反応資料と血中濃度の資料と共に判断して確定しなければならない。最終の投与法は医師により決定されるが、医師は、薬物の非活性、患者の重症度、薬物に対する患者の反応程度、年齢、調子、体重、性別、食餌及びその他臨床学的な要因を考慮して処方しなければならない。研究が進行されるにつれて、種々の疾病及び条件に対応する適切な投与用量と処方期間に関するより多くの情報が出現すると予想される。
【発明の効果】
【0108】
本発明の修飾されたヒト腫瘍壊死因子受容体−1(TNFRI)ポリペプチドまたはその断片は、タンパク質分解酵素に対して増加した抵抗性を有するため、注射剤または経口剤として投与時に、改善された生体利用率及び吸収率を示し、よって、持続型注射剤及び経口用タンパク質製剤として有用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】図1は、NusAタンパク質をコードする遺伝子を有しているpET44aベクターにTNFRI108遺伝子を挿入して、NusAの融合されたTNFRI108を発現する大腸菌発現ベクターを作製する過程を示す模式図である。
【図2】図2は、pET44a−NusA−TNFRI108発現ベクターで形質転換された大腸菌においてNusAの融合されたTNFRI108の発現を確認し、金属親和クロマトグラフィ(Immobilized metal affinity chromatography)と疎水性クロマトグラフィ(Hydrophobic interaction chromatography)で純粋に精製した写真である。
【図3】図3は、TNF−αに対するTNFRI108断片(対照群)とTNFRI108断片単一変異体TNFRI108−68の結合力をBIAcore分析(3A)とELISA分析(3B)から確認したグラフである。
【図4】図4は、TNFRI108断片に対するTNFRI108断片単一変異体TNFRI108−14、TNFRI108−64、及びTNFRI108−68のタンパク質分解酵素抵抗性増加を確認したグラフである。
【図5】図5は、pET44aベクターにMet−TNFRI126またはMet−TNFRI171遺伝子を挿入して、Met−TNFRI126またはMet−TNFRI171を発現する大腸菌発現ベクターを作製する過程を示す模式図である。
【図6】図6Aは、ゲルろ過クロマトグラフィクロマトグラム(chromatogram)を用いてMet−TNFRI126、及びMet−TNFRI171タンパク質の溶出を確認した図(分画A4)であり、図6Bは、精製したMet−TNFRI126及びMet−TNFRI171を還元状態でSDS−PAGE方法で分析した結果を示す写真である。
【図7】図7は、TNF−αに対するMet−TNFRI126断片(対照群)とMet−TNFRI126断片変異体Met−TNFRI126−14、Met−TNFRI126−64、Met−TNFRI126−65、及びMet−TNFRI126−68の結合力をELISA方法で測定したグラフである。
【図8】図8Aは、TNF−αに対するMet−TNFRI171断片(対照群)とMet−TNFRI171断片変異体Met−TNFRI171−83、Met−TNFRI171−84、及びMet−TNFRI171−92の結合力を測定した図であり、図8Bは、Met−TNFRI171断片に対するMet−TNFRI171断片単一変異体Met−TNFRI171−83、Met−TNFRI171−84、及びMet−TNFRI171−92のタンパク質分解酵素抵抗性増加を確認したグラフである。
【図9】図9は、TNF−αに対するMet−TNFRI171断片(対照群)とMet−TNFRI171断片二重変異体Met−TNFRI171−204、Met−TNFRI171−205、及びMet−TNFRI171−206の結合力をELISA方法で確認したグラフである。
【図10】図10は、Met−TNFRI171断片に対するMet−TNFRI171断片二重変異体Met−TNFRI171−204(図10A)、Met−TNFRI171−205(図10B)、及びMet−TNFRI171−206(図10C)のタンパク質分解酵素抵抗性増加を確認したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0110】
本発明の利点及び特徴、並びにそれらを達成する方法は、後述する実施例から明確になるであろう。ただし、本発明は、以下に開示される実施例に限定されない。
【0111】
本発明のTNFRIポリペプチドまたはその断片を製造するために、既に誘電体が公開されているヒトTNFRI誘電体情報を用いた。
【0112】
TNFRI断片遺伝子を重合酵素連鎖反応(以下、PCR)方法を用いて合成し、これをベクターpGEM−T(Promega、Cat.No:A1380)にクローニングし、これを再び大腸菌発現のためのpET44a(Novagen、Cat.No:71122−3)に挿入して、微生物発現ベクターを作った(図1)。これをBL21Star(DE3)(Invitrogen、Cat.No:C6010−03)に形質転換して、NusAの融合されたTNFRI断片が細胞内可溶性タンパク質として産生されることを確認したし、発現されたTNFRIは、96ウェルプレートを用いるクロマトグラフィ方法で純粋に精製した。
【0113】
また、pET44a発現ベクターを用いてNusAのないTNFRI断片のみを発現する発現ベクターを作製した(図5)。この時、TNFRI断片は封入体(inculsion body)として発現された。封入体として発現されたTNFRI断片は、変性溶液を用いて可溶化し、リフォルディング(refolding)過程を経て活性のあるタンパク質とし、ゲルろ過クロマトグラフィ方法で精製した。
【0114】
タンパク質分解酵素に抵抗性を有する変異体を作製するために、TNFRI断片のタンパク質分解酵素による切断位置を推定した。TNFRI断片のアミノ酸配列上の胃腸管、細胞内及び血液中に存在する代表的なタンパク質分解酵素10種に対する切断位置を、Expasy(Expert Protein Analysis System)から提供するpeptide cutter(http://www.Expasy.org/tools/peptidecutter/)プログラムを用いて推定した。
【0115】
タンパク質分解酵素により切断されると予測されたアミノ酸を、構造的変化が少ないと共にタンパク質分解酵素により切断されないアミノ酸に置換するために、PAM250マトリックス(W.A Pearson,Rapid and Sensitive Sequence Comparison with FASTP and FASTA、in Methods in Enzymology,ed.R.Doolittle(ISBN 0−12−182084−X,Academic Press,SanDiego)183:63−98(1990))を用いた。先に推定された位置のアミノ酸を、PAM250マトリックスにおいて0以上の正数値を有するアミノ酸のうちタンパク質分解酵素により認識されないアミノ酸に置換して、修飾されたTNFRIポリペプチドまたはその断片を製造した。
【0116】
上記決定されたTNFRI変異体をコードする遺伝子をNusAの融合された可溶性タンパク質形態として発現するベクターを鋳型に、位置指定突然変異体生成(site−specific mutagenesis)方法で各変異体ベクターを作製した。これをBL21Star(DE3)に形質転換して、NusAの融合されたTNFRI断片を細胞内可溶性タンパク質として産生し、活性及びタンパク質分解酵素抵抗性を分析した。NusA融合による影響を確認するために、NusAのないTNFRI突然変異体を産生し、活性及びタンパク質分解酵素抵抗性を比較分析した。
【0117】
以下、本発明の修飾されたTNFRIポリペプチドまたはその断片の製造及び確認についてより詳細に説明する。
【0118】
[製造例]TNFRI遺伝子断片の作製:TNFRI171遺伝子の製造
【0119】
ヒトTNFRIは4個の細胞外ドメインを有しており、そのうち、TNFRIの3つのドメイン(TNFRI126)だけでもTNF−αに対する結合が可能であり、それ以上の欠損が存在してもTNF−αとの結合に影響がないと報告されている。そこで、配列番号1として記載されたヒトTNFRIポリペプチドの41番から171個のアミノ酸を有するTNFRI171(配列番号2)、ヒトTNFRIの41番から126個のアミノ酸を有するTNFRI126(配列番号3)、41番から108個のアミノ酸を有するTNFRI108(配列番号4)を、本発明の変異体を製造するための候補ペプチドとして選定した。このような変異体を産生するために、TNFRI171の塩基配列を、大腸菌内発現に容易となるように、大腸菌に合うコドンを用いて修飾した(配列番号5)。これを、PCR方法を用いる遺伝子合成方法で作製した。
【0120】
上記合成された大腸菌発現用TNFRI171遺伝子配列(配列番号5)を、pGEM−T(Promega、Cat.No:A1380)ベクターに挿入するために、1ulのpGEM−Tベクターに合成遺伝子3ulを添加し、1ulリガーゼ(NEB、Cat.No:M2200S)とライゲーション溶液(2x ligation buffer)を入れた後、常温で5分間反応させた。反応溶液2ulを取ってXL1−blueコンピテント細胞(competent cell)(RBC、Cat.No:RH119−J80)に入れ、37℃で2分間熱衝撃(heat shock)を加えて形質転換し、アンピシリンの含まれているLB固体培地で静置培養してコロニーを得た。このコロニーを、アンピシリンの含まれているLB液体培地で培養した後、プラスミドを分離し、PCRを使用するddNTPに蛍光物質を標識する方式で遺伝子配列を確認した(ソルジェント、韓国)。この遺伝子をpGEM−TNFRI171と命名した。以下では、TNFRI171以外のTNFRI126、TNFRI108遺伝子は、先に得られたpGEM−TNFRI171遺伝子を鋳型にPCR方法で確保した。
【0121】
[実施例1]TNFRI単一変異体の設計
【0122】
変異体作製のために、まず、タンパク質分解酵素に抵抗性を有する変異体を設計した。突然変異位置決定は、TNFRI171アミノ酸配列について、下記の表1に表示された胃腸管、細胞及び血液中に存在する代表的なタンパク質分解酵素10種に対する切断位置を、Expasy(Expert Protein Analysis System)から提供するpeptide cutter(http://www.Expasy.org/tools/peptide cutter/)プログラムを用いて推定し、推定された切断部位のアミノ酸を、構造的変化が少ないと共にタンパク質分解酵素により切断されないアミノ酸に置換した。置換されるアミノ酸の決定は、PAM250マトリックス(matrix)を用いた。PAM250マトリックスには、それぞれのアミノ酸に対して正数、0、負数の値を有する19種の対応アミノ酸を参照して、タンパク質分解酵素により切断されないと共に正数または0の値を有するアミノ酸を、置換するアミノ酸と決定した。
【0123】
【表1】

【0124】
上記の方法によって設計されたTNFRI変異体の目録は、表2に示す。
【0125】
【表2】

【0126】
*下記の実施例と関連して、上記表のxは、変異体番号1番乃至76番については108、126または171でよく、変異体番号77番乃至84番については126または171でよく、変異体番号85番乃至92番については171でよい。
【0127】
[実施例2]TNFRI108変異体の製造
【0128】
(1)TNFRI108遺伝子及び発現ベクターの製造
【0129】
大腸菌で可溶性のTNFRI108タンパク質を発現するために、NusA遺伝子を含む商業的に利用可能なpET44aベクター(Novagen、Cat.No:71122−3)を用いて発現ベクターを構成した。
【0130】
具体的に、TNFRI108遺伝子は、上記製造例で作製されたpGEM−TNFRI171プラスミドを鋳型にPCRを行って確保した。この時、pET44aベクターへのクローニングのために、5’末端にSma I、3’末端にHind III制限酵素認識部位を付加した。
【0131】
正方向プライマー:5'−ccccggggcgatgacgatgacaaagatagcgtgtgcccg−3'
【0132】
逆方向プライマー:5'−taagcttattacagggagcaattaaaacactgg−3'
【0133】
PCRは、1次変性95℃5分、2次変性95℃1分、プライマー接合60℃40秒、伸長反応72℃1分の過程中に、2次変性において伸長反応を25回反復して行った後、最終酵素反応を72℃10分行って反応を終了した。増幅された遺伝子2ulを用いてメーカーで提示した方法によってpcDNA3.3 TOPO TAベクター(Invitrogen、Cat.No:K8300−01)に挿入した。反応溶液2ulを取ってXL1−blueコンピテント細胞(competent cell)(RBC、Cat.No:RH119−J80)に入れ、42℃で1分間熱衝撃(heat shock)を加えて形質転換し、アンピシリンの含まれているLB固体培地で静置培養してコロニーを得た。このコロニーをアンピシリンの含まれているLB液体培地で培養した後、プラスミドを分離し、ddNTPに蛍光物質を標識する方式で遺伝子配列を確認し(ソルジェント、韓国)、pcDNA3.3−TNFRI108と命名した。
【0134】
上記作製されたpcDNA3.3−TNFRI108ベクターとpET44aベクターにそれぞれ制限酵素(Sma I、Hind III)を添加し、37℃で3時間反応させた。制限酵素処理後に1%アガロースゲル電気泳動を行って該当の大きさのDNAバンドをかみそりで切り取り、DNA抽出キット(GeneAll、Cat.No:102−102)を用いて抽出した。抽出したpET44aベクターとTNFRI108遺伝子DNAは、リガーゼ(NEB、Cat.No:M2200S)を用いて連結反応をさせた。反応溶液2ulを取ってXL1−blueコンピテント細胞(competent cell)(RBC、Cat.No:RH119−J80)に入れて37℃で2分間熱衝撃(heat shock)を加えて形質転換し、アンピシリンの含まれているLB固体培地で静置培養してコロニーを得た。このコロニーをアンピシリンの含まれているLB液体培地で培養した後プラスミドを分離して、TNFRI108大腸菌発現ベクターを作製した(図1)。作製されたTNFRI108大腸菌発現ベクターはpET44a−NusA−TNFRI108プラスミドと命名した。
【0135】
(2)TNFRI108単一変異体をコードするDNAの製造
【0136】
位置特異的TNFRI108単一変異体を作製するために位置指定突然変異体作製(site−directed mutagenesis)方法によりTNFRI108単一変異体を作製した。TNFRI108単一変異体の作製に用いたプライマーを、下記の表3に示す。
【0137】
具体的には、上記pET44a−NusA−TNFRI108プラスミドを鋳型に、下記の表3の1〜76番変異体に該当するプライマーの各対を20pmoleになるように蒸溜水に溶かした後、Pfuポリメラーゼを用いたPCR反応を行って部位特異的変異体を作製した。増幅反応に用いられた溶液の構成は、次の通りである。pET44a−NusA−TNFRI108プラスミドDNA 1.0ul、20pmoleの正方向プライマー1.0ul、20pmoleの逆方向プライマー1.0ul、2X PrimeSTAR PCRバッファ25.0ul、200uMのdNTP 4.0ul、PrimeSTAR HS DNAポリメラーゼ(Takara、Cat.No:R044A)0.5ul及び17.5ul蒸溜水を入れて50ulの反応溶液を作った。
【0138】
PCRは、1次変性98℃5分、2次変性98℃30秒、プライマー接合55℃30秒、伸長反応72℃9分の過程中に、2次変性において伸長反応を17回反復して進行した後、最終酵素反応を72℃10分間行い、反応を終了した。
【0139】
PCR産物はDpn I酵素で37℃、2時間処理して大腸菌由来のDNAを分解し、PCRにより増幅されたDNAを確保した。DNA溶液2ulを取ってXL1−blueコンピテント細胞(RBC、Cat.No:RH119−J80)に入れ、42℃で1分間熱衝撃を加えて形質転換し、アンピシリンの含まれているLB固体培地で静置培養してコロニーを得た。このコロニーを、アンピシリンの含まれているLB液体培地で培養した後プラスミドを分離し、塩基配列分析から部位特異的な突然変異の完成を確認した。
【0140】
【表3−1】

【0141】
【表3−2】

【0142】
【表3−3】

【0143】
(3)TNFRI108及びTNFRI108変異体の発現
【0144】
上記作製したプラスミド溶液1ulを取ってBL21Star(DE3)(Invitrogen、Cat.No:C6010−03)コンピテント細胞に入れ、42℃で1分間熱衝撃(heat shock)を加えて形質転換し、アンピシリンの含まれているLB固体培地で静置培養してコロニーを得た。pET44a−NusA−TNFRI108及びTNFRI108変異体ベクターを含んでいる大腸菌(BL21 Star(DE3))を、100ug/ml濃度のアンピシリンの入っている5mlLB液体培地(BD、Cat.No:244620)に接種して37℃で16時間通気培養した。培養液を100ug/mlアンピシリンの入っている50ml培地に接種して600nmの吸光度が0.6〜0.8になるまで培養し、最終濃度が1.0mM濃度になるようにIPIPTG(isopropyl−beta−D−thigalactopyranoside)(Sigma、Cat.No:I9003)を添加して発現を誘導した。発現誘導後、37℃で3時間通気培養を続けた。培養細胞を5,000rpmで20分間遠心分離して細胞を収集した。
【0145】
(4)TNFRI108及びTNFRI108変異体の精製
【0146】
上記収集した細胞を細胞破砕後に上層液を回収し、金属親和クロマトグラフィで1次精製後に疎水性クロマトグラフィで2次精製して、純度90%以上の試料を得た。
【0147】
具体的に、上記収集した細胞を、600nm吸光度が10になるように再懸濁溶液(25mMトリス溶液(pH8.5))で再懸濁した。再懸濁した試料をソニケーター(Sonicator)(Sonics、Cat.No:VCX750)を用いて細胞破砕して、12,000rpmで20分間遠心分離して上層液を回収した。96ウェルフィルタプレート(Pall、Cat No:PN5065)に300ulハイパーセルレジン(Pall、Cat No:20093−010)をローディングし、4カラム体積の蒸溜水洗浄後に、2カラム体積の0.1M NiClを付加してニッケルイオンをレジンに結合させた。2カラム体積の蒸溜水を流した後、平衡化溶液(25mMトリス、0.1M NaCl(pH8.5))で6カラム体積で洗浄した。2カラム体積の試料を付加した後、4カラム体積の平衡化溶液を用いて結合していない試料を除去した。10カラム体積の洗浄溶液(25mMトリス、0.1M NaCl、50mMイミダゾール(Imidazole)(pH8.5))で洗浄し、カラムに結合しているTNFRI108を回収するために、2カラム体積の溶出溶液(25mMトリス、0.1M NaCl、250mMイミダゾール(pH8.5))で溶出した。
【0148】
金属親和クロマトグラフィで溶出されたタンパク質溶液に400mM濃度になるように1.0M硫酸アンモニウム((NHSO)溶液を添加した。96ウェルフィルタプレートに300ulのフェニルセファロースレジン(GE、Cat.No:17−108201)をローディングし、6カラム体積の平衡化溶液(20mMリン酸ナトリウム(NaPO)、400mM硫酸アンモニウム(pH7.0))を流した。金属親和クロマトグラフィ溶出液をカラムに付加し、2カラム体積の平衡化溶液を流して、結合していないタンパク質を除去した。10カラム体積の洗浄溶液(20mMリン酸ナトリウム(NaPO)、160mM硫酸アンモニウム(pH7.0))で洗浄して、6カラム体積の溶出溶液(20mMリン酸ナトリウム(pH7.0))で溶出した。溶出された試料を100ug/mL以上の濃度に濃縮した後、ブラッドフォード法を用いて定量した。精製した全ての試料は、SDS−PAGE分析を用いて純度を確認した(図2)。
【0149】
[実験例1]リガンド(TNF−α)とTNFRI108との結合力の確認
【0150】
細胞内可溶性タンパク質として産生されたTNFRI108断片及びTNFRI108単一変異体(TNFRI108−68)を、金属親和クロマトグラフィと疎水性クロマトグラフィ方法を用いて純粋分離した。該精製したTNFRI108断片(対照群)及びTNFRI108断片変異体はブラッドフォード法を用いて定量し、ELISA分析とBIAcore分析を用いてTNF−αとの結合力を測定した(図3)。
【0151】
具体的に、BIAcore分析は、CM5チップ(chip)を用いてBIAcore3000システムで分析した。チップの1番目のセルは、TNF−αを固定化せずに、0.05M NHS/0.2M EDC溶液を用いて活性化させ、1.0M エタノールアミン塩酸塩(ethanolamine hydrochloride)(pH8.5)で非活性化のみを行った。2番目のセルは、キネティック(kinetic)分析のために、TNF−αを800RUだけ固定化した。CM5チップを0.05M NHS/0.2M EDC溶液を用いて活性化させ、TNF−αを800RUまで固定化した。800RUのTNF−αを固定化した後、1.0Mエタノールアミン塩酸塩(pH8.5)を反応させて非活性化させた。各試料分析は、100mM NaClの含まれている25mMトリス(pH8.5)溶液を流速15uL/minで流しつつ、チップの2番目のセルのRU値から1番目のセルのRU値を引くことによって分析した。試料の注入は、キネティックモード(kinetic mode)において100ug/mLと50ug/mLをそれぞれ240秒注入し、解離時間(dissociation time)は900秒とした。再分析のために洗浄溶液(5mM NaOH、10mM NaCl)をクイック注入モード(Quickinject mode)で20秒間注入した。両濃度のセンサグラム(sensorgram)結果を、BIAcore結果プログラムを用いて処理することによって結合力を決定した(図3A)。図3で確認した通り、本発明のTNFRI108単一変異体(TNFRI108−68)は、TNFRI108と比較して同等レベルの結合力を示した。
【0152】
具体的に、ELISA分析のために96ウェルプレート(CoStar、Cat.No:2592)に1.0ug/ml濃度になるように100ul TNF−αを注入した後、4℃で16時間固定化した。洗浄溶液(0.05%Tween−20、10mM PBS、pH7.4)を用いて3回プレートを洗浄した後、1%BSAの含まれているPBS(pH7.4)溶液で2時間常温で反応させた。それぞれのウェルに約1.5ug/ml〜100ug/mLに該当する試料100ulを注入した後、常温で2時間反応させた。洗浄溶液(0.05%Tween−20、10mM PBS、pH7.4)を用いて3回プレートを洗浄した後、マウスから得たTNFR複合抗体(RnD、Cat.No:DY225)を200ng/mlになるように100ulを注入した後、常温で2時間反応させた。洗浄溶液を用いて3回プレートを洗浄した後、HRPの融合された二次抗体(RnD、Cat.No:DY225)を200倍希釈して100ulを注入し、常温で15分反応させた。洗浄溶液を用いて3回プレートを洗浄した後、基質溶液である3,3',5,5'−テトラメチルベンジジン(tetramethyl benzidine、RnD、Cat.No:DY999)を100ul注入して常温で15分反応させ、1.0M硫酸溶液(Samchun、Cat.No:S2129)50ulを注入して反応を停止させた。450、540nmのVmax読み取り器(MD、モデル名:VersaMax)を用いて吸光度を読み取った。TNFRI108とTNF−αとの結合力を、濃度による吸光度変化から確認した。(図3B)
【0153】
[実験例2]TNFRI108及びTNFRI108変異体のタンパク質分解酵素抵抗性の確認
【0154】
TNFRI108断片及びTNFRI108断片変異体のタンパク質分解酵素に対する抵抗性は、純粋分離された精製液の全体タンパク質濃度を測定して、豚のパンクレアチン(pancreatin)を総タンパク質(純粋分離したTNFRI108精製液の総タンパク質をブラッドフォード法により定量した値)量の24%になるように処理し、TNFRI108断片及びTNFRI108断片変異体の半減期(half−life)を調べることで、TNFRI108ポリペプチド断片に比べてタンパク質分解酵素に抵抗性を有するTNFRI108断片変異体を確認することができた。
【0155】
タンパク質分解酵素に抵抗性を有する変異体TNFRI108を同定するために、パンクレアチン(Sigma、Cat.No:P7545)処理による各変異体の半減期を決定した後、TNFRI108に比べて半減期の増加した変異体を選別する方法を用いた。代表的なTNFRI108−14、TNFRI108−64、TNFRI108−68変異体のパンクレアチン(パンクレアチン)処理に対する抵抗性増加結果は、図4に示す。
【0156】
具体的に、ブラッドフォード法(Bradford assay)で定量したTNFRI108(対照群)と各変異体の濃度をPBS溶液を用いて100ug/mlにした後、250ulタンパク質試料を500ul遠心分離チューブに用意した。パンクレアチン6ugの含まれている0.1Mリン酸ナトリウム30ulを試料に添加して37℃で反応させた。反応後、0分、5分、10分、15分、20分、30分、40分、60分に30ul試料を取り、5ulタンパク質分解酵素阻害剤(Roche、Cat.No:11836170001)の入っている270ulの5%BSA溶液に入れて混合した後に、液体窒素に保管した。実験し終わった試料は、ELISA定量方法(RnD、Cat.No:DY225)により切断されていない量を分析し、TNFRI108変異体の半減期を求めた。TNFRI108の半減期を基準にした時の各変異体の相対的半減期を百分率で表示した(表4)。
【0157】
【表4】

【0158】
[実施例3]TNFRI126変異体の製造
【0159】
(1)Met−TNFRI126及びMet−TNFRI126変異体を発現する発現ベクターの製造
【0160】
上記のTNFRI108を用いた単一変異体選別を、Met−TNFRI126及びMet−TNFRI126変異体を用いて確認した。このために、変異体7、8、9、10、14、64、65、68、73、74をMet−TNFRI126の形態とし、タンパク質分解酵素抵抗性を確認した。
【0161】
具体的に、Met−TNFRI126を発現するための大腸菌発現ベクターの作製は、pET44aベクターにTNFRI126遺伝子を挿入して完了した。TNFRI126遺伝子は、上記の製造例で製造されたpGEM−TNFRI171を鋳型に、下記のようなプライマーを用いてPCRを行って確保した。プライマー配列において、5'末端にNde I、3'末端にBamH I制限酵素部位を添加し、pET44aベクターのNusAタンパク質が除去されたMet−TNFRI126形態にした。
【0162】
正方向プライマー:5'−acatatggatagcgtgtgcccgc−3'
【0163】
逆方向プライマー:5'−cggatccttaacaaactgtattctgcttc−3'
【0164】
PCRは、1次変性98℃5分、2次変性98℃30秒、プライマー接合55℃30秒、伸長反応72℃1分の過程中に、2次変性において伸長反応過程を25回反復して進行させた後、次の最終酵素反応を72℃10分行って反応を終了した。増幅された遺伝子とpET44aベクターに制限酵素(Nde I、BamH I)を添加して37℃で3時間反応させた。制限酵素処理後1%アガロースゲル電気泳動を行って該当の大きさのDNAバンドをかみそりで切り取り、DNA抽出キットを用いて抽出した。50ngのpET44aベクターと200ngのMet−TNFRI126遺伝子を添加し、2Xライゲーションプレミックス10ulを入れ、最終的に滅菌された蒸溜水を入れて20ulになるようにし、反応物を常温で5分間反応させた。反応液2ulを取ってBL21 Star(DE3)細胞に入れ、37℃で2分間熱衝撃(heat shock)を加えて形質転換し、アンピシリンの含まれているLB固体培地で静置培養してコロニーを得た。コロニーをアンピシリンの含まれているLB液体培地で培養した後にプラスミドを分離し、遺伝子配列分析により遺伝子配列を確認した。上記過程から得たプラスミドをpET44a−Met−TNFRI126プラスミドと命名した(図5)。
【0165】
(2)Met−TNFRI126及びMet−TNFRI126変異体の発現
【0166】
上記作製したプラスミド溶液1ulを取ってBL21 Star(DE3)(Invitrogen、Cat.No:C6010−03)コンピテント細胞に入れ、42℃で1分間熱衝撃を加えて形質転換し、アンピシリンの含まれているLB固体培地で静置培養してコロニーを得た。発現ベクターを含んでいる大腸菌BL21 Star(DE3)を、100ug/ml濃度のアンピシリンが入っている50mlのYP培地(yeast extract:Merck、Cat.No:103753、peptone:BD、Cat.No:243620、NaCl:Merck、Cat.No:1064049025)に接種し、37℃で16時間通気培養した。培養された培地は、100ug/mlのアンピシリン含有の250mlYP培地が入っている1フラスコに、600nmの吸光度が0.1になるように接種した。37℃で培養して600nmの吸光度が3〜4の時に、最終濃度が1.0mM濃度になるようにIPTGを添加して発現を誘導した。発現誘導後、37℃で3時間さらに通気培養を続けた後、細胞を6000rpmで20分間遠心分離して細胞を収集した。
【0167】
(3)Met−TNFRI126及びMet−TNFRI126変異体の精製
【0168】
収集した細胞を再懸濁溶液(50mMトリス、0.5mM EDTA(pH8.5))で再懸濁した。懸濁細胞の破砕は、ソニケーター(sonicator)(Sonics、Cat.No:VCX750)で行った。細胞破砕後、8000xg、10℃、30分間遠心分離し、上層液を捨て、沈殿されたペレットを35mLペレット洗浄溶液(50mMトリス、10mM EDTA、0.5%トリトンX−100(TritonX−100)(pH8.0))で懸濁し、8000xg、10℃、20分間遠心分離した。上層液を捨て、ペレットを再懸濁溶液35mLで再懸濁し、8000xg、10℃、20分間遠心分離した。この洗浄されたペレットは直ちに使用する、または、−80℃で凍結保管した。
【0169】
該得られたペレットに6mL変性溶液(6〜8M尿素(Urea)または6〜8M塩化グアニジン(Guanidine−HCl)、10mMジチオスレイトール(DTT)、2.0mM EDTA、0.2M NaCl)を添加して完全に溶解した。溶解後、0.45umシリンジフィルタを用いて溶解されていないペレットを除去した。可溶化したペレット溶液をリフォルディング溶液(50mMトリス、1.0mM EDTA、0.5mL−アルギニン(Arginine)(pH7.5))に20倍希釈し、4℃で12〜24時間ゆっくり撹はんしつつリフォルディング(refolding)を誘導した。
【0170】
リフォルディングされたMet−TNFRI126及びMet−TNFRI126変異体を精製するために、リフォルディング溶液を、3kDのアミコンウルトラ(AmiconUltra)(Millipore、Cat.No:UFC900324)を用いて20倍濃縮した。濃縮後、Superdex 75 prep grade(GE)レジンをXK25/70(GE、Cat.No:19−0146−01)カラムにパッキングしたゲルろ過クロマトグラフィを用いて精製した。
【0171】
具体的に、リフォルディングされた試料をカラムにローディングする前に4〜5カラム体積の平衡化溶液(50mMリン酸ナトリウム、100mM NaCl(pH7.0))を用いてカラムを平衡化させた。カラムに2mL試料をローディングした後、5.0mL/minの流速で平衡化溶液を流しつつ5mLずつ分画して試料を採取した。採取した試料をSDS−PAGEで分析した後、90%以上の純度を示す分画のみを取った(図6)。Met−TNFRI126とMet−TNFRI126変異体を同じ方法で精製した。
【0172】
[実験例3]リガンド(TNF−α)に対するMet−TNFRI126及びMet−TNFRI126変異体の結合力の確認
【0173】
精製して得た純度90%以上の純度を有するMet−TNFRI126(対照群)及びMet−TNFRI126変異体の濃度をブラッドフォード法を用いて定量し、ELISA分析法を用いてTNF−αに対する結合力を確認した。
【0174】
96ウェルプレートにTNFRI190(配列番号1においてTNFRIの22番目のアミノ酸から211番目のアミノ酸までの190個のアミノ酸からなるタンパク質、R&D社、Cat No:636−R1−025−CF)を1ug/ml濃度で100ulローディングした後、4℃で16時間固定化した。洗浄溶液(0.05%Tween−20、PBS、pH7.4)300ulで3回各ウェルを洗浄した後、ブロッキング溶液(5% skim milk、PBS、pH7.4)300ulを各ウェルに入れ、室温で2時間反応させた。その後、洗浄は、上述と同じ方法で行った。分析しようとする試料を500nM、125nM、31nM、7.8nM、1.9nM、0.48nM、0.12nM、0.03nMで製造した後、各ウェルに100ulずつデュプリケート(duplicate)ローディングした。試料のローディングした各ウェルに50ng/mlのTNF−αを100ulずつ入れ、室温で2時間反応させた。洗浄溶液で洗浄後に、100ug/mLのTNF−α抗体溶液を1/1000に希釈した後、各ウェルに100ulずつ入れて室温で2時間反応させた。洗浄溶液で洗浄後に、基質溶液を各ウェルに100ulずつ入れて室温で15分反応させ、基質溶液である3,3',5,5'−テトラメチルベンジジン(tetramethylbenzidine、RnD、Cat.No:DY999)を100ul注入した後、常温で15分反応させ、1.0M硫酸溶液(Samchun、Cat.No:S2129)50ulを注入して反応を停止させた。450、540nmのVmax読み取り器(MD、モデル名:VersaMax)を用いて吸光度を読み取った。
【0175】
Met−TNFRI126及びMet−TNFRI126変異体の結合力は、濃度による吸光度の変化から確認した(図7)。
【0176】
[実験例4]Met−TNFRI126及びMet−TNFRI126変異体のタンパク質分解酵素抵抗性の確認
【0177】
TNFRI108に代えてMet−TNFRI126及びMet−TNFRI126変異体を用いる以外は、上記の実験例2と同じ方法を用いてタンパク質分解酵素抵抗性を評価した(表5)。TNFRI108においてタンパク質分解酵素抵抗性の高い変異体14、64、68、73、74は、依然として高いタンパク質分解酵素抵抗性を示したし、TNFR108において低く測定された変異体9、10は、低いタンパク質分解酵素抵抗性を示した。
【0178】
【表5】

【0179】
[実施例4]TNFRI171変異体の製造
【0180】
(1)Met−TNFRI171及びMet−TNFRI171変異体を発現する発現ベクターの製造
【0181】
実施例1で設計された単一変異体のうち、TNFRIの4番目のドメインに存在する単一変異体をMet−TNFRI171として産生し、評価を行った。
【0182】
そのために、大腸菌でMet−TNFRI171及びMet−TNFRI171変異体を発現する発現ベクターを作製した。
【0183】
具体的に、Met−TNFRI171遺伝子(配列番号267)は、上記製造例で作製されたpGEM−TNFRI171プラスミドを鋳型にPCRを行った後に確保した。この時、pET44aベクターへのクローニングのために、5'末端にNde I、3'末端にBamH I制限酵素認識部位を付加した。
【0184】
PCR増幅に用いられたプライマーは、下記の通りである。
【0185】
正方向プライマー:5'−acatatggatagcgtgtgcccgc−3'
【0186】
逆方向プライマー:5'−cggatccttatgtggtgcctgagtcctc−3'
【0187】
PCRは、1次変性98℃5分、2次変性98℃30秒、プライマー接合55℃30秒、伸長反応72℃1分の過程中に、2次変性において伸長反応過程を25回反復して行った後、最終酵素反応を72℃10分行い、反応を終了した。増幅された遺伝子とpET44aベクターに制限酵素(Nde I、BamH I)を添加し、37℃で3時間反応させた。制限酵素処理後に1%アガロースゲル電気泳動を行い、該当の大きさのDNAバンドをかみそりで切り取り、DNA抽出キットを用いて抽出した。50ngのpET44aベクターと200ngのMet−TNFRI171遺伝子を添加し、2Xライゲーションプレミックス10ulを入れ、最終的に滅菌された蒸溜水を入れて20ulになるようにし、反応物を常温で5分間反応させた。反応液2ulを取ってBL21 Star(DE3)細胞に入れ、37℃で2分間熱衝撃を加えて形質転換し、アンピシリンの含まれているLB固体培地で静置培養してコロニーを得た。コロニーをアンピシリンの含まれているLB液体培地で培養した後プラスミドを分離し、遺伝子配列分析から遺伝子配列を確認した。上記過程から得られたプラスミドをpET44a−Met−TNFRI171プラスミドと命名した。
【0188】
Met−TNFRI171変異体は、pET44a−Met−TNFRI171プラスミドを鋳型に、表6の変異体に該当するプライマーを用いてPCR反応を行って作製した。
【0189】
【表6】

【0190】
増幅反応に用いられた溶液の構成は、次の通りである。pET44a−Met−TNFRI171鋳型プラスミドDNA 1.0ul、20pmoleの正方向プライマー1.0ul、20pmoleの逆方向プライマー1.0ul、2X PrimeSTAR PCRバッファ25.0ul、200uMのdNTP4.0ul、PrimeSTAR HS DNAポリメラーゼ(Takara、Cat.No:R044A)0.5ul、及び17.5ulの蒸溜水を入れ、これで50.0ulの反応溶液を作った。
【0191】
PCRは、1次変性98℃5分、2次変性98℃30秒、プライマー接合55℃30秒、伸長反応72℃9分の過程中に、2次変性において伸長反応を17回反復して行った後、最終酵素反応を72℃10分行って反応を終了した。
【0192】
PCR産物は、Dpn I酵素で37℃、2時間処理して大腸菌由来のDNAを分解し、PCRにより増幅されたDNAを確保した。DNA溶液2ulを取ってXL1−blueコンピテント細胞(competent cell)(RBC、Cat.No:RH119−J80)に入れ、42℃で1分間熱衝撃を加えて形質転換し、アンピシリンの含まれているLB固体培地で静置培養してコロニーを得た。このコロニーをアンピシリンの含まれているLB液体培地で培養した後にプラスミドを分離し、塩基配列分析から部位特異的な突然変異の完成を確認した。
【0193】
(2)Met−TNFRI171及びMet−TNFRI171変異体の発現
【0194】
作製したMet−TNFRI171及びMet−TNFRI171変異体プラスミドを抽出した後、上記の実施例3−(2)の方法で発現を誘導した。Met−TNFRI126に代えてMet−TNFRI171を用いる以外は同じ方法で発現を行った。
【0195】
(3)Met−TNFRI171及びMet−TNFRI171変異体の精製
【0196】
発現したMet−TNFRI171及びMet−TNFRI171変異体を、上記の実施例3−(3)の方法で精製した。Met−TNFRI126に代えてMet−TNFRI171を用いる以外は同じ方法で精製を行った(図6)。
【0197】
[実験例5]リガンド(TNF−α)に対するMet−TNFRI171及びMet−TNFRI171変異体の結合力の確認
【0198】
実験例3のMet−TNFRI126に代えてMet−TNFRI171を用いる以外は同じ方法で活性評価を行った。代表として、Met−TNFRI171−83、Met−TNFRI171−84、Met−TNFRI171−92変異体の結合力測定結果を、図8Aに示す。
【0199】
[実験例6]Met−TNFRI171及びMet−TNFRI171変異体のタンパク質分解酵素抵抗性の確認
【0200】
TNFRI108に代えてMet−TNFRI171及びMet−TNFRI171変異体を用いる以外は上記の実験例2と同じ方法を用いてタンパク質分解酵素抵抗性を評価した(表7)。代表として、Met−TNFRI171−83、Met−TNFRI171−84、Met−TNFRI171−92変異体のパンクレアチン処理に対する抵抗性増加結果を、図8Bに示す。
【0201】
【表7】

【0202】
[実施例5]TNFRI二重変異体の設計
【0203】
本発明者らはさらに、単一変異体において安全性の向上した突然変異体を組み合わせて、2個のアミノ酸が置換された二重変異体を設計した。二重変異体は、単一変異体においてタンパク質分解酵素に対する抵抗性が著しく増加した変異体14、64、74、83、84、85、92位置を組み合わせることで設計した。二重変異体の設計目録を表8に示す。
【0204】
【表8】

【0205】
[実施例6]Met−TNFRI171二重変異体の製造
【0206】
(1)Met−TNFRI171二重変異体を発現する発現ベクターの作製
【0207】
実施例5で設計された二重変異体は、Met−TNFRI171で産生して評価を行った。そのために、大腸菌でMet−TNFRI171二重変異体を発現する発現ベクターを作製した。
【0208】
具体的に、表8に記述された二重変異体のうち変異体201、202、204、205、206、208は、Met−TNFRI171−14単一変異体のプラスミドを鋳型に、表9に表示されたプライマーを用いてPCRを行うことによって二重変異体をコードするDNAを作製した。二重変異体のうち、変異体203はMet−TNFRI171−64単一変異体のプラスミドを鋳型に、変異体207はMet−TNFRI171−83単一変異体のプラスミドを鋳型に、変異体209はMet−TNFRI171−85単一変異体のプラスミドを鋳型に、表9に示したプライマーを用いてPCRを行うことによって、二重変異体をコードするDNAを作製した。
【0209】
増幅反応に用いられた溶液の構成は、次の通りである。上記の各鋳型プラスミドDNA1.0ul、20pmoleの正方向プライマー1.0ul、20pmoleの逆方向プライマー1.0ul、2X PrimeSTAR PCRバッファ25.0ul、200uMのdNTP 4.0ul、PrimeSTAR HS DNAポリメラーゼ(Takara、Cat.No:R044A)0.5ul、及び17.5ul蒸溜水を入れ、これで50.0ulの反応溶液を作った。
【0210】
PCRは、1次変性98℃5分、2次変性98℃30秒、プライマー接合55℃30秒、伸長反応72℃9分の過程中に、2次変性で伸長反応を17回反復して行った後、最終酵素反応を72℃10分行って反応を終了した。
【0211】
【表9】

【0212】
PCR産物は、Dpn I酵素で37℃、2時間処理して大腸菌由来のDNAを分解し、PCRにより増幅されたDNAを確保した。DNA溶液1ulを取ってXL1−blueコンピテント細胞に入れ、42℃で1分間熱衝撃を加えて形質転換し、アンピシリンの含まれているLB固体培地で静置培養してコロニーを得た。コロニーをアンピシリンの含まれているLB液体培地で培養した後にプラスミドを分離し、塩基配列分析から部位特異的な突然変異の完成を確認した。
【0213】
(2)Met−TNFRI171二重変異体の発現
【0214】
作製したMet−TNFRI171二重変異体プラスミドを抽出した後、上記の実施例3−(2)の方法で発現を誘導した。Met−TNFRI126に代えてMet−TNFRI171二重変異体を用いる以外は同じ方法で発現を行った。
【0215】
(3)Met−TNFRI171二重変異体の精製
【0216】
発現したMet−TNFRI171二重変異体を上記の実施例3−(3)の方法で精製した。Met−TNFRI126に代えてMet−TNFRI171二重変異体を用いる以外は同じ方法で精製を行った。
【0217】
[実験例7]リガンド(TNF−α)に対するMet−TNFRI171二重変異体の結合力の確認
【0218】
実験例3のMet−TNFRI126に代えてMet−TNFRI171二重変異体を用いる以外は同じ方法で活性評価を行った。代表的な二重変異体Met−TNFRI171−204、Met−TNFRI171−205、Met−TNFRI171−206変異体の結合力測定結果を、図9に示す。
【0219】
[実験例8]Met−TNFRI171二重変異体のタンパク質分解酵素抵抗性の確認
【0220】
TNFRI108に代えてMet−TNFRI171二重変異体を用いる以外は、上記の実験例2と同じ方法を用いてタンパク質分解酵素抵抗性を評価した(表10)。代表的な二重変異体Met−TNFRI171−204、Met−TNFRI171−205、Met−TNFRI171−206変異体のパンクレアチン処理に対する抵抗性増加結果を、図10に示す。
【0221】
【表10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1として記載された天然型ヒト腫瘍壊死因子受容体−1のアミノ酸配列において61番、68番、78番、85番、106番、107番、109番、121番、128番、133番、135番、136番、138番、141番、150番、156番、161番、200番、203番、206番及び207番からなる群から選ばれる1または2以上の位置のアミノ酸が修飾されたアミノ酸配列;
配列番号1として記載される天然型ヒト腫瘍壊死因子受容体−1のアミノ酸配列の41番乃至211番からなるアミノ酸配列において61番、68番、78番、85番、106番、107番、109番、121番、128番、133番、135番、136番、138番、141番、150番、156番、161番、200番、203番、206番及び207番からなる群から選ばれる1または2以上の位置のアミノ酸が修飾されたアミノ酸配列;
配列番号1として記載される天然型ヒト腫瘍壊死因子受容体−1のアミノ酸配列の41番乃至166番からなるアミノ酸配列において61番、68番、78番、85番、106番、107番、109番、121番、128番、133番、135番、136番、138番、141番、150番、156番及び161番からなる群から選ばれる1または2以上の位置のアミノ酸が修飾されたアミノ酸配列;または、
配列番号1として記載される天然型ヒト腫瘍壊死因子受容体−1のアミノ酸配列の41番乃至148番からなるアミノ酸配列において、61番、68番、78番、85番、106番、107番、109番、121番、128番、133番、135番、136番、138番及び141番からなる群から選ばれる1または2以上の位置のアミノ酸が修飾されたアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列を含む、修飾されたヒト腫瘍壊死因子受容体−1ポリペプチドまたはその断片。
【請求項2】
配列番号1として記載された天然型ヒト腫瘍壊死因子受容体−1のアミノ酸配列において68番、85番、109番、128番、133番、135番、141番及び161番からなる群から選ばれる1または2以上の位置のアミノ酸が修飾されたアミノ酸配列;
配列番号1として記載される天然型ヒト腫瘍壊死因子受容体−1のアミノ酸配列の41番乃至211番からなるアミノ酸配列において68番、85番、109番、128番、133番、135番、141番及び161番からなる群から選ばれる1または2以上の位置のアミノ酸が修飾されたアミノ酸配列;
配列番号1として記載される天然型ヒト腫瘍壊死因子受容体−1のアミノ酸配列の41番乃至166番からなるアミノ酸配列において68番、85番、109番、128番、133番、135番、141番及び161番からなる群から選ばれる1または2以上の位置のアミノ酸が修飾されたアミノ酸配列;または
配列番号1として記載される天然型ヒト腫瘍壊死因子受容体−1のアミノ酸配列の41番乃至148番からなるアミノ酸配列において68番、85番、109番、128番、133番、135番及び141番からなる群から選ばれる1または2以上の位置のアミノ酸が修飾されたアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の修飾されたヒト腫瘍壊死因子受容体−1ポリペプチドまたはその断片。
【請求項3】
配列番号1として記載された天然型ヒト腫瘍壊死因子受容体−1のアミノ酸配列において68番、109番、133番、135番、141番及び161番からなる群から選ばれる1または2以上の位置のアミノ酸が修飾されたアミノ酸配列;
配列番号1として記載される天然型ヒト腫瘍壊死因子受容体−1のアミノ酸配列の41番乃至211番からなるアミノ酸配列において68番、109番、133番、135番、141番及び161番からなる群から選ばれる1または2以上の位置のアミノ酸が修飾されたアミノ酸配列;
配列番号1として記載される天然型ヒト腫瘍壊死因子受容体−1のアミノ酸配列の41番乃至166番からなるアミノ酸配列において68番、109番、133番、135番、141番及び161番からなる群から選ばれる1または2以上の位置のアミノ酸が修飾されたアミノ酸配列;または
配列番号1として記載される天然型ヒト腫瘍壊死因子受容体−1のアミノ酸配列の41番乃至148番からなるアミノ酸配列において68番、109番、133番、135番及び141番からなる群から選ばれる1または2以上の位置のアミノ酸が修飾されたアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の修飾されたヒト腫瘍壊死因子受容体−1ポリペプチドまたはその断片。
【請求項4】
61番、107番、161番、203番の位置のKがQまたはNに;68番、150番、156番の位置のLがIまたはVに;78番、207番の位置のDがQまたはNに;85番、138番、200番、206番の位置のEがQまたはNに;106番、121番、128番、133番の位置のRがHまたはQに;109番の位置のMがIまたはVに;135番の位置のYがIまたはHに;136番の位置のWがHまたはSに;141番の位置のFがIまたはVに置換された、請求項1に記載の修飾されたヒト腫瘍壊死因子受容体−1ポリペプチドまたはその断片。
【請求項5】
1または2以上の位置におけるアミノ酸修飾が、K61Q、K61N、L68I、L68V、D78Q、E85N、R106H、R106Q、K107Q、M109I、R121H、R121Q、R128H、R128Q、R133Q、Y135I、Y135H、W136H、W136S、E138Q、E138N、F141I、F141V、L150I、L156I、K161Q、K161N、E200Q、K203Q、E206Q、D207Q、及びD207Nからなる群から選ばれる1または2以上のアミノ酸修飾である、請求項1に記載の修飾されたヒト腫瘍壊死因子受容体−1ポリペプチドまたはその断片。
【請求項6】
1または2以上の位置におけるアミノ酸修飾が、L68I、L68V、E85N、M109I、R128H、R133Q、Y135I、W136S、F141I、F141V、K161Q、及びK161Nからなる群から選ばれる1または2以上のアミノ酸修飾である、請求項1に記載の修飾されたヒト腫瘍壊死因子受容体−1ポリペプチドまたはその断片。
【請求項7】
1または2以上の位置におけるアミノ酸修飾が、L68I、L68V、R133Q、Y135I、F141I、K161Q、及びK161Nからなる群から選ばれる1または2以上のアミノ酸修飾である、請求項1に記載の修飾されたヒト腫瘍壊死因子受容体−1ポリペプチドまたはその断片。
【請求項8】
一つのアミノ酸修飾を含む、請求項1に記載の修飾されたヒト腫瘍壊死因子受容体−1ポリペプチドまたはその断片。
【請求項9】
アミノ酸修飾は、2個のアミノ酸修飾であり、2個のアミノ酸修飾は、R133Q、F141V、K161Q、K161N、E200QまたはD207Nから選択される1個のアミノ酸修飾とL68Vである、請求項1に記載の修飾されたヒト腫瘍壊死因子受容体−1ポリペプチドまたはその断片。
【請求項10】
アミノ酸修飾は、L68V/K161Q、L68V/K161N、またはL68V/D207Nから選ばれる、請求項1に記載の修飾されたヒト腫瘍壊死因子受容体−1ポリペプチドまたはその断片。
【請求項11】
配列番号18、19、33、52、62、69、70、73、78、79、94、95、109、128、138、145、146、149、154、155、164、165、178、179、193、212、222、229、230、233、238、239、248、249、または258−266で表現されたアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の修飾されたヒト腫瘍壊死因子受容体−1ポリペプチドまたはその断片。
【請求項12】
配列番号18、19、69、70、78、94、95、145、146、154、164、165、178、179、229、230、238、248、249、または261−263で表現されたアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の修飾されたヒト腫瘍壊死因子受容体−1ポリペプチドまたはその断片。
【請求項13】
タンパク質分解酵素に対する向上した抵抗性を有する、請求項1乃至12のいずれか1項に記載の修飾されたヒト腫瘍壊死因子受容体−1ポリペプチドまたはその断片。
【請求項14】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載のヒト腫瘍壊死因子受容体−1ポリペプチドまたはその断片の2つまたは3つ以上が共有結合により連結された、ヒト腫瘍壊死因子受容体−1ポリペプチドまたはその断片の複合体。
【請求項15】
ヒト腫瘍壊死因子受容体−1ポリペプチドまたはその断片が、さらに、糖化、アシル化、メチル化、リン酸化、ハシル化、カルバミル化、硫酸化、プレニル化、酸化、グアニジル化、アミジン化、カルバミル化、トリニトロフェニル化、ニトロ化、またはペグ化されたものである、請求項1乃至12のいずれか1項に記載の修飾されたヒト腫瘍壊死因子受容体−1ポリペプチド(TNFRIポリペプチド)またはその断片。
【請求項16】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載のヒト腫瘍壊死因子受容体−1ポリペプチドまたはその断片をコードする塩基配列を含む遺伝子。
【請求項17】
大腸菌内発現に適合するようにコドンが操作された配列番号5の塩基配列に基づいて製造された、請求項16に記載の遺伝子。
【請求項18】
請求項17に記載の遺伝子を含むベクター。
【請求項19】
請求項18に記載のベクターで形質転換された細胞。
【請求項20】
大腸菌である、請求項19に記載の細胞。
【請求項21】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載のヒト腫瘍壊死因子受容体−1ポリペプチドまたはその断片を含む薬剤学的製剤。
【請求項22】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載のヒト腫瘍壊死因子受容体−1ポリペプチドまたはその断片を含む、成人呼吸困難症候群、食欲不振、癌、慢性疲労症候群、移植片対宿主拒否反応、痛覚過敏、炎症性腸疾患、神経炎症性疾患、脳虚血を含む虚血/再潅流傷害、各々神経変性の原因になりうる外傷、癲癇、出血または発作の結果としての脳損傷、糖尿病、多発性硬化症、眼病、疼痛、膵炎、肺線維症、リウマチ性関節炎、骨関節炎、若年性(リウマチ性)関節炎、血清反応陰性多発性関節炎、強直性脊髄炎、ライター症候群及び反応性関節炎、乾癬性関節炎、腸疾患性関節炎、多発性筋炎、皮膚筋炎、強皮症、全身性硬化症、血管炎、脳血管炎、シェーグレン症候群、リウマチ熱、多発性軟骨炎及び多発性筋痛、リウマチ性及び巨細胞性動脈炎、敗血性ショック、放射線療法の副作用、全身性紅斑性狼瘡、側頭下顎関節疾患、甲状腺炎及び組織移植からなる群から選ばれるTNF媒介疾病の予防または治療用の薬剤学的組成物。
【請求項23】
成人呼吸困難症候群、食欲不振、癌、慢性疲労症候群、移植片対宿主拒否反応、痛覚過敏、炎症性腸疾患、神経炎症性疾患、脳虚血を含む虚血/再潅流傷害、各々神経変性の原因になりうる外傷、癲癇、出血または発作の結果としての脳損傷、糖尿病、多発性硬化症、眼病、疼痛、膵炎、肺線維症、リウマチ性関節炎、骨関節炎、若年性(リウマチ性)関節炎、血清反応陰性多発性関節炎、強直性脊髄炎、ライター症候群及び反応性関節炎、乾癬性関節炎、腸疾患性関節炎、多発性筋炎、皮膚筋炎、強皮症、全身性硬化症、血管炎、脳血管炎、シェーグレン症候群、リウマチ熱、多発性軟骨炎及び多発性筋痛、リウマチ性及び巨細胞性動脈炎、敗血性ショック、放射線療法の副作用、全身性紅斑性狼瘡、側頭下顎関節疾患、甲状腺炎及び組織移植からなる群から選ばれるTNF媒介疾病の予防または治療のための請求項1乃至12のいずれか1項に記載のヒト腫瘍壊死因子受容体−1ポリペプチドまたはその断片の用途。
【請求項24】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載のヒト腫瘍壊死因子受容体−1ポリペプチドまたはその断片をTNF媒介疾病の予防または治療が必要な対象に投与することを含む、TNF媒介疾病の予防または治療方法であって、
前記TNF媒介疾病は、成人呼吸困難症候群、食欲不振、癌、慢性疲労症候群、移植片対宿主拒否反応、痛覚過敏、炎症性腸疾患、神経炎症性疾患、脳虚血を含む虚血/再潅流傷害、各々神経変性の原因になりうる外傷、癲癇、出血または発作の結果としての脳損傷、糖尿病、多発性硬化症、眼病、疼痛、膵炎、肺線維症、リウマチ性関節炎、骨関節炎、若年性(リウマチ性)関節炎、血清反応陰性多発性関節炎、強直性脊髄炎、ライター症候群及び反応性関節炎、乾癬性関節炎、腸疾患性関節炎、多発性筋炎、皮膚筋炎、強皮症、全身性硬化症、血管炎、脳血管炎、シェーグレン症候群、リウマチ熱、多発性軟骨炎及び多発性筋痛、リウマチ性及び巨細胞性動脈炎、敗血性ショック、放射線療法の副作用、全身性紅斑性狼瘡、側頭下顎関節疾患、甲状腺炎及び組織移植からなる群から選ばれるものである方法。
【請求項25】
請求項16に記載の遺伝子またはこれを含むベクターを含む、成人呼吸困難症候群、食欲不振、癌、慢性疲労症候群、移植片対宿主拒否反応、痛覚過敏、炎症性腸疾患、神経炎症性疾患、脳虚血を含む虚血/再潅流傷害、各々神経変性の原因になりうる外傷、癲癇、出血または発作の結果としての脳損傷、糖尿病、多発性硬化症、眼病、疼痛、膵炎、肺線維症、リウマチ性関節炎、骨関節炎、若年性(リウマチ性)関節炎、血清反応陰性多発性関節炎、強直性脊髄炎、ライター症候群及び反応性関節炎、乾癬性関節炎、腸疾患性関節炎、多発性筋炎、皮膚筋炎、強皮症、全身性硬化症、血管炎、脳血管炎、シェーグレン症候群、リウマチ熱、多発性軟骨炎及び多発性筋痛、リウマチ性及び巨細胞性動脈炎、敗血性ショック、放射線療法の副作用、全身性紅斑性狼瘡、側頭下顎関節疾患、甲状腺炎及び組織移植からなる群から選ばれるTNF媒介疾病の予防または治療用の薬剤学的組成物。
【請求項26】
請求項16に記載の遺伝子またはこれを含むベクターを用いることを含む、請求項1乃至第12のいずれか1項に記載の修飾されたヒト腫瘍壊死因子受容体−1ポリペプチドまたはその断片の製造方法。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−507913(P2013−507913A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534123(P2012−534123)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【国際出願番号】PCT/KR2010/007160
【国際公開番号】WO2011/049350
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(508048953)ハナル バイオファーマ カンパニーリミテッド (6)
【氏名又は名称原語表記】HanAll Biopharma Co., Ltd.
【Fターム(参考)】