説明

個々のマイクロレンズまたはマイクロレンズアレイを製造するための方法

本発明は、ガラス型材料からなる個々のマイクロレンズまたはマイクロレンズアレイを製造するための方法に関する。前記方法によれば、リセス部を含む表面を備えた第1の基板が提供され、前記ガラス型材料からなる第2の基板が、少なくとも1部が重なる状態で第1の基板を覆うようにその第1の基板上に存在し、真空条件下でその第1の基板に接合される。次いでこの基板複合体を、第2の基板が軟化して第1の基板のリセス部に流入するようにテンパリングする。第1の基板とは反対側の第2の基板の面は、少なくとも1つのマイクロレンズ表面が形成されるように構成する。本発明は、マイクロレンズを形成する際に、第2の基板の軟化したガラス型材料が第1の基板の少なくとも2個のリセス部に流入し、その形状、サイズ、および配列が、形成されるマイクロレンズの表面曲率を決定することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス型材料からなる単一のマイクロレンズまたはマイクロレンズアレイの製造方法に関する。この方法によれば、インプレッション(impressions)を含んだ表面を有する第1の基板を設け、ガラス型材料からなる第2の基板を、第1の基板上に少なくとも部分的に重なるよう配置しかつ真空条件下で第1の基板に接合し、さらに基板複合体を、第2の基板が軟化して第1の基板のインプレッションに流入するようテンパリング(tempering)し、それによって、少なくとも1個のマイクロレンズ表面が形成されるように、第1の基板側とは反対の第2の基板の面を構成する。
【0002】
さらに、ガラス型材料で作製された単一のマイクロレンズまたはマイクロレンズアレイの代替の製造方法、すなわち第1の基板がインプレッションを含んだ表面を有し、ガラス型材料からなる第2の基板を、第1の基板上に少なくとも部分的に重なるよう配置し、かつ気状媒体が第1の基板と第2の基板との間のインプレッションに封入された状態で第1の基板に接合し、基板複合体を、第2の基板が軟化しかつ膨張した気状媒体がインプレッションの領域内で変位するようにテンパリングされ、それによって、少なくとも1個の凸面マイクロレンズが形成されるように、第1の基板側とは反対の第2の基板面を構成する方法について記述する。
【背景技術】
【0003】
WO 01/38240 A1は、ガラスフロープロセスを用いてマイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲のガラス製の機能的要素を製造するために、半導体基板を構成する技術を使用した、ガラス型材料からなる微小機械構成要素、特に微小光学構成要素の製造方法について述べている。第1のステップでは、従来技術の標準的なリソグラフィおよびエッチング法を用いて得ることができるインプレッションを、好ましくは平らな半導体表面に置く。次いで事前に構成された半導体基板を、例えば陽極接合を用いてガラス型材料からなる平らな基板に接合し、次いでガラス型材料の軟化温度を超える温度に加熱する。半導体材料と平らなガラス型基板とのそれぞれのインプレッションによって取り囲まれるキャビティのほぼ全体が真空または低圧である場合、軟化したガラス型材料の一部は、そのキャビティ内に流入することができる。しかし、例えば通常の圧力条件下、構成された半導体基板に平らなガラス型基板を接合させたキャビティ内に、気状媒体、例えば空気が封入されている場合は、そのキャビティ内にある気状媒体がテンパリングによって膨張し、キャビティの直接真上にある軟化したガラス型材料を変位させる。
【0004】
第1のケースでは、凹形マイクロレンズ構造が、半導体基板に対向するガラス基板表面の内側に形成される。一方、第2のケースでは、局所的な変位によって、凸形マイクロレンズ構造が得られる。どちらの場合でも、得られたマイクロレンズの曲率は、テンパリングのタイプおよび持続時間に左右されるが、特に、半導体基板内の個々のインプレッションそれぞれの形およびサイズに左右される。先に述べた従来技術の方法の助けにより、球状または楕円状の対称マイクロレンズ表面を生成することができる。
【0005】
米国特許第4,883,524号は、そこに示される図6を参照しつつ、両眼レンズの形を決定するガラスフロー法についても記述しており、2焦点レンズガラスの光学近用部の眼科用レンズの形で、凹形インプレッションに、融解ガラスが局所的に流入することが可能である。
【特許文献1】国際公開第01/38240A1号パンフレット
【特許文献2】米国特許第4,883,524号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、レンズ形状の曲率を、ほぼ望む通りに設定することができるような手法で、ガラス型材料からなる単一のマイクロレンズまたはマイクロレンズアレイを製造する方法を提供することである。特に、できるだけ費用効果のある手法で、単一の非球面レンズまたはレンズアレイを製造することが可能であるべきである。
【0007】
本発明が基にするその課題に対する解決策は、請求項1および4の特徴によって定められる。本発明の概念をさらに有利に発展させる特徴は、従属請求項に係る発明として記載されており、好ましい実施形態に関する本発明の記述に見出される。
【0008】
本発明の方法は、基本的に、WO 01/38240 A1に記載されるガラスフロー法の技術に基づくが、マイクロレンズ表面を形成するための従来の方法技術とは対照的に、半導体基板内でマイクロレンズ当たり単一のインプレッションを使用するのではなく、むしろ少なくとも2個のインプレッションが提供され、その形、サイズ、および配列は、互いの関係において、半導体基板側とは反対のガラス基板の表面にマイクロレンズ表面を形成するに至る成形プロセスを決定し、さらに、凸状輪郭が生成される局所的な材料の変位によって区別され、または、凹状または凸状の表面輪郭が生成されるように第1の基板にもたらされた、少なくとも2個のインプレッション、ないしはキャビティへの、制御された選択的な材料流入によって区別される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
方法の第1の変形例では、好ましくは単結晶シリコンウェハーの形で存在し以後半導体基板と呼ぶ、半導体材料からなる第1の基板であって、半導体技術手段によって、半導体基板の通常なら平らな上面にインプレッションが設けられた基板が提供される。インプレッションのサイズ、形状、および配置は、以下に述べるように、製造されるマイクロレンズ表面の所望の表面曲率に基づく。少なくとも2個のインプレッションは、狭い中間の畝によって互いに離れた状態で維持されるように、半導体基板の上面に互いに隣接して配置されるが、この中間の畝の幅は、通常、2個の隣接するインプレッション内の最小の横寸法よりも非常に小さく寸法決めされている。
【0010】
事前に構成した半導体基板を、陽極接合により真空条件下で、以後ガラス基板と呼ぶ第2のガラス型基板に密接に接合するが、このガラス基板は、気密になるようインプレッションを閉鎖するものであり、その結果、真空状態に支配されるキャビティが形成される。
【0011】
以下の記述では、基板複合体をテンパリングプロセスにかけるが、このプロセスではガラス型材料が軟化し、好ましくは完全に軟化したガラス型材料でキャビティが満たされるまで、そのキャビティ内を支配する真空状態によってキャビティに材料が局所的に流入する。
【0012】
半導体基板内にインプレッションのサイズ、形、および配置をもたらすことで、このインプレッションにより形成されたキャビティ内に流入するガラス型材料の量を、正確に事前に選択することが可能になる。定められた幾何形状に応じてガラス基板の幅を適切に選択することによって、半導体基板に対向する半導体基板表面のキャビティ内に向けられた材料の流れにより、投影上、キャビティ真上の領域に、表面の局所的沈降が生ずる。表面の局所的沈降は、最終的に凹面輪郭を表し、その局所的な曲率、サイズ、および形状が、マイクロレンズの光学的に有効な表面を決定する。
【0013】
半導体基板の表面に適切に形成され、適切に配置されたインプレッションないしはキャビティの相応の組み合わせと、ガラス基板の厚さの適切な選択によって、規定された曲率を有するマイクロレンズの再現性ある製造が可能になり、特に、その上、費用効果的に実現可能な簡単なプロセス技術を使って、非球面の単一レンズ又はレンズアレイの製造が可能になる。
【0014】
前述の成形手順に続き、ガラス基板を冷却した後に、半導体基板をガラス基板から分離し、単一のマイクロレンズまたはマイクロレンズアレイ全体を、研磨、研削、鋸引き、または同様のプロセスによって得る。分離そのものは、半導体基板とガラス基板との間に分離層を事前に設けることによって、すなわち例えば金属、黒鉛、または同様の分離層を設けることによって、単純化することができる。しかし、半導体とガラス基板とを分離する最も簡単な方法では、半導体そのものが、依然としてウェットケミカル作用により溶解する。
【0015】
本発明の方法では、先に述べたように凹面マイクロレンズ表面の製造が可能になるだけではなく、凸面マイクロレンズ表面の形成も可能になり、そのため2種の基本的な異なる代替方法の変形例を自由に用いることができるが、これらは本質的に、テンパリング前のキャビティ内が真空圧条件に支配されるのかまたは正常圧力条件に支配されるのかという点が異なるものである。
【0016】
先に述べたように、半導体基板とガラス基板との接合を真空条件下で実施する場合、いわゆる中間の畝領域によって分離される少なくとも2個のインプレッション、それぞれのキャビティは、半導体基板表面に配置しなければならない。中間の畝領域は、少なくとも2個のインプレッションの間でスタンプ状または島状に盛り上がるが、このようなインプレッションは、互いに離して配列され、または貫通する「トラフ」の形で中間の畝領域を完全に閉じ込めるように構成することができる。中間の畝領域の横方向の延びは、前述の中間の畝よりも何倍も大きい。隣接するインプレッションに対する中間の畝領域の配列のより正確な概念は、特に以下の好ましい実施形態で述べる。
【0017】
そのようなタイプの事前に構成された半導体基板とガラス基板との陽極接合と、その後に行われるガラス型材料の軟化温度を超える温度でのテンパリングの結果、中間の畝領域上の軟化したガラス型材料は、設けられた隣接するインプレッションに流入し始め、それによって、半導体基板側とは反対のガラス基板表面の中間の畝領域に、凸面輪郭が得られる。凸状形態の曲率挙動とその形状およびサイズは、対応する中間の畝領域およびその寸法についてのインプレッションの形、サイズ、および配列よって正確に定めることができる。この方法について記述された変形例のさらなる詳細は、好ましい実施形態に関するさらなる記述で決定される。
【0018】
凸レンズ表面の製造方法の第2の代替例は、加熱により膨張する気状媒体、例えば空気が、インプレッションによってもたらされたキャビティ内に封入されるように、正常圧力条件下で半導体基板とガラス基板とを接合することを提供する。キャビティ内での温度依存性の気状媒体の膨張によって、半導体基板側とは反対のガラス基板表面に凸状隆起が得られるように、キャビティの直接真上の軟化ガラス材料が局所的に変位する。隆起の曲率は、半導体基板表面に配置されたキャビティ/インプレッションの形、サイズ、および配列によって、同様に定めることができる。
【0019】
前述の成形プロセスを用いて、半導体基板側とは反対のガラス基板上面に形成される表面曲率を決定することができる他、半導体基板内のインプレッション、ないしはキャビティの、形、サイズ、および配列によって、ガラス基板上面に形成されるマイクロレンズの横方向の延びおよび球面輪郭も、決定することができる。
【0020】
先に述べた凸面または凹面輪郭の製造方法の変形に関わらず、製造されるマイクロレンズの周辺部の範囲を正確に確定ないしは設定するために、構成された半導体基板側とは反対のガラス基板の上面に別の半導体基板を配置することが特に有益である。その基板は、製造されるマイクロレンズの所望の幾何形状に適合されたリセス部を、好ましくは開口の形で予め備えたものである。上記別の半導体基板内の開口は、陽極接合によって第2の半導体基板とガラス基板表面とを接合させる前に、第1の半導体基板のインプレッションの配列に倣って反対側に位置するように、位置合わせする。ガラス基板と上記別の半導体基板との通常の平面接合も、ガラス基板が軟化するテンパリング中に維持される。
【0021】
凸状ならびに凹状形態のマイクロレンズ表面の場合、上記別の半導体基板の開口によって決定される、マイクロレンズ表面を取り囲む範囲画定縁部の線形性は、影響を受けることがなく、それによって、形成されるマイクロレンズの周辺端部を正確に決定することが可能になる。
【0022】
先に述べたように、本発明の方法によれば、ほとんどの任意の所望の湾曲レンズ表面を持つマイクロレンズ、好ましくは2〜3マイクロメートルから最大1mmおよびそれ以上に及ぶ寸法の非球面レンズ表面を持つ、マイクロレンズの製造が可能になる。そのようなタイプのレンズは、ほとんどの任意の所望の球面輪郭、好ましくは円形または長方形のレンズ形状を有することができる。
【0023】
しかし、単一のマイクロレンズを製造する他に、本発明の方法は、特に、例えばCCDアレイ配列上に光学結像させるためのマイクロシステム技術で使用されるような、アレイ状に配列されたレンズを製造するのにも適している。
【0024】
前述のテンパリングと、それに対応して続けて行われるガラス基板を凝固するための冷却の終了後、ガラス基板の両面から、例えばそれ自体が知られているエッチングなどを用いて半導体基板を除去することができる。代替の技術、例えばグラインドオフ(grinding off)なども用いることができる。特にその目的は、ガラス充填インプレッションを持つ基板をガラス基板から分離して、平面を生成することである。用途に応じ、前述の手法により製造されたマイクロレンズ、又はマイクロレンズアレイは、切削または研削プロセスを用いて、アレイ状配列に切り離しまたは選択することができる。
【0025】
本発明について、本発明の概念全体の範囲または精神を限定しようとすることなく、添付図面を参照しながら好ましい実施形態を使用して、以下に記述する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1は、凹レンズ表面を持ったマイクロレンズを生成することができる、6つのプロセスステップを示す。第1のプロセスステップでは、その目的は、好ましくは単結晶シリコンを含みかつ以後シリコンウェハー1と呼ぶ半導体材料からなるベース基板、すなわち例えば、ドライエッチングなどのエッチングプロセスによってシリコンウェハー1の表面に配置することができる、インプレッション1の形の構造を有する半導体材料からなるベース基板を提供することである。以下に詳細に述べるように、インプレッション1の形状、サイズ、および配列は、最終的に形成されるマイクロレンズの表面曲率および形状に、決定的に重要なものである。図1の好ましい実施形態によりシリコンウェハー1の表面に配置されたインプレッション1は、幅の広い中央インプレッションを有し、その両側には追加のインプレッションが、横方向に徐々に狭くなる距離で隣接している。単一のインプレッションのそれぞれは、狭い中間の畝2によって、隣接するインプレッションとは切り離されている。これから生成されるレンズ表面の曲率に応じて、単一のインプレッション1の形状、サイズ、および配列は、図1に示されるインプレッションから外れたものでもよい。
【0027】
次のプロセスステップでは、インプレッション1が設けられたシリコンウェハー1の表面3に、ガラス型材料からなる基板、例えばパイレックス(登録商標)ガラスまたはボロフロートガラスからなるガラスウェハー4を、陽極接合により真空条件下で接合する。使用される接合技法が、必要とされる高いプロセス温度に耐えることができる場合には、例えば接着技法などの代替の接合技法も、当然ながらガラスウェハー4をシリコンウェハー1に接合するのに利用することができる。
【0028】
シリコンウェハー1側とは反対のガラスウェハー4の上面5には、好ましくはやはり陽極接合を利用して、リセス部6を有する別のシリコンウェハー2を接合するが、このリセス部6の形状およびサイズは、シリコンウェハー1内のインプレッション1の配列に一致するものであり、かつガラスウェハー4の上面5で、インプレッション1に対向してそれに相応するように位置合わせされている。
【0029】
次の、プロセスステップ4に示されるテンパリングプロセスでは、ガラスウェハー4のガラス型材料が軟化し、プロセスステップ4に示すように、インプレッション1によって決定されたキャビティ内に流入してそのキャビティを完全に満たす。インプレッション1によって決定されたキャビティへの軟化したガラス型材料のフロープロセスは、そのキャビティ内を支配する真空によって支援される。シリコンウェハー1のキャビティの形状、サイズ、および配列は、キャビティに流入するガラスの量を選択的に設定することができる。ガラスウェハー4の厚さを相応に選択することにより、前述のガラス型材料のキャビティへの流入が原因で、材料の局所的沈降が生じ、シリコンウェハー2の開口6内に正確に作り出されていく。シリコンウェハー2の開口6によって決定された線形の範囲画定縁部7は、作り出されていくマイクロレンズの幾何形状を決定し、その表面は、軟化したガラス型材料の沈降によって形成される。これらが図1のプロセスステップ4に描かれている。
【0030】
キャビティ内に封じられた真空の他、軟化したガラス型材料での材料の沈降は、インプレッション1によって決定されたキャビティが、対応する軟化ガラス材料で完全に満たされるように、通常の条件下、好ましくは1バールで実施されるテンパリングによって支援することができる。このように、キャビティ内に流入するガラス材料の全体積は、最終的には材料の沈降によってガラス基板4の上面5にある特定の曲率を得るために、インプレッション1で定められた体積によって、前もって正確に決定することができる。しかし、インプレッション1により画定されたキャビティは、最大サイズ、又は広がりを超えてはならず、インプレッションの幾何形状および配列は、最終的には選択されたガラスウェハー4の厚さに依存する。したがって、インプレッション1の形、ガラスウェハー4のガラス材料について選択された厚さおよび密度、ならびに選択されたテンパリング条件が、種々の流動挙動と、ガラスウェハー4のガラス表面5に得られる曲率および形状を決定する。
【0031】
テンパリングおよびその後に行われる冷却によってガラス材料を成形した後、シリコンウェハー1および2をガラス基板4から除去する。最も単純な場合、これはウェットケミカルエッチングによって行う。最後に、ガラスウェハーの底面を、例えば表面の研削およびその後に行われる研磨によって、平らにしなければならない。図1のプロセスステップ5および6を参照されたい。
【0032】
例えば低温で融解する金属またはグラファイト層などの、対応する分離層を、ガラス基板4の表面とシリコンウェハー1および2との間に設けることもでき、したがって、従来のエッチング技法を用いることなく、シリコンウェハーをガラス基板4の表面から分離することも可能になる。
【0033】
図1を参照しつつ提示した方法によれば、定められた凹形表面曲率を有するマイクロレンズの製造を、非常に高い再現性を持って行うことが可能になる。
【0034】
ある領域全体に分散されたレンズのアレイを製造するには、シリコンウェハー1を、所望のマイクロレンズの形成に必要なそれぞれのインプレッション1でアレイ状に前もって構成しなければならない。適切に前もって構成した後に適切なレンズアレイを製造するためのプロセスステップは、前述の図1によるプロセスステップ2〜6に対応する。
【0035】
図2aおよびbは、図1に示したプロセス過程に基本的に対応する、層構造の3次元図を示す。丸形マイクロレンズを製造するために、図2aは、表面に対称的に配列された6角形の多数のプリズム形インプレッション1が設けられた、シリコンウェハー1を示す。中央の最大の6角形インプレッションの周りには、より小さい多数の6角形インプレッションが環状に配列されており、この部分に関しては、やはりこれから製造されるマイクロレンズの曲率特性に左右され、様々な形状、幾何形状、および配列のインプレッションを選択することができ、したがって図2aに示す構成されたシリコンウェハー1は、具体的な場合の例にすぎない。前もって構成されたシリコンウェハー1上には、ガラスウェハー4が設けられ、その上には、この部分に関して開口6が設けられたシリコンウェハー2が示されている。開口6は、特に図1のプロセスステップ4を参照しつつ既に述べたテンパリングによってもたらされた、マイクロレンズ表面の円形縁部を画定する。
【0036】
さらに本発明の方法によれば、例えば円柱レンズの場合のように、円からそれた周辺境界を備えるマイクロレンズの製造も可能になる。このため図2bに示すシリコンウェハー1には、図2bに示すような手法で、並行して配列されかつ中間の畝によって分離された、多数の方形インプレッション1が設けられる。構成されたウェハー1により定められた全体的な基本形に適合させて、シリコンウェハー2には、対応する方形開口を設け、この開口は、その部分に関し、テンパリングによって形成されるマイクロレンズの範囲画定縁部を決定する。
【0037】
図2aおよび2bに示される、シリコンウェハー1の基板表面を構成する実現可能な例は、円形または方形マイクロレンズを形成する代表的な場合の例にすぎず、基本的に、本発明の方法の助けにより、事実上任意の所望の形状のマイクロレンズを製造することができると結論付けることが可能である。
【0038】
図3は、図1のプロセスステップ4に示される、プロセスステップに関する方法の変形例を示す。図1とは対照的に、インプレッション1により表されるキャビティは、軟化した材料で部分的に満たされるだけである。そのようなタイプの方法の変形例は、特に、時間依存性のテンパリング制御によってテンパリングをモニタする場合に適しており、それによって、ガラス基板4の表面6に局所的に作り上げられるレンズ表面の曲率特性をモニタし、かつ相応に設定することが可能になる。
【0039】
これまでの図に示したプロセス状態では、凹曲面のマイクロレンズ表面を製造することが可能である。凸状のマイクロレンズ表面を製造するには、基本的に2つの利用可能な方法があり、その第1を図4および5に示し、第2を図6に示す。
【0040】
図4aは、シリコンウェハー1と、ガラス基板4と、シリコンウェハー2とを含む接合構造の断面を示す。さらなるプロセスステップで決定的に重要なのは、シリコンウェハー1の構成、すなわちシリコンウェハー1の表面のインプレッション1の配列であるが、次のテンパリングプロセス中、このインプレッションには軟化したガラス型材料が流入して、単一の凸状マイクロレンズ表面を形成する。構成されたシリコンウェハー1は、中間の畝領域8を備え、その両側は、いくつかのインプレッション1に直接隣接している。単一のインプレッションは、それぞれが中間の畝2によって互いに切り離されているが、この畝の横方向の寸法は、中間の畝8の横方向の延びよりも非常に小さいものである。図示される実施例では、中間の畝領域8の両側に、インプレッションによって決定された3個のキャビティK1、K2、およびK3がそれぞれ直接隣接しており、キャビティK3は、その横方向の幅が最大であり、したがって、軟化状態では流動可能なガラス型材料を受容するための最大の容積を提供する。図4に示される層の集積体も、図1のプロセスステップ2にかけるが、その場合、キャビティK1、K2、K3内に真空状態が拡がるように、ガラス基板とシリコンウェハー1との接合を真空条件下で実施する。キャビティK3の両側を取り囲む封止縁部9により、キャビティK3内は、テンパリングプロセス中確実に真空状態に維持される。
【0041】
シリコンウェハー2に配置された開口6は、投影上、開口6で決定された範囲画定縁部7がシリコンウェハー1のキャビティ上に存在するように、中間の畝領域8の真上に対称的に位置決めされることが好ましい。
【0042】
図4bは、テンパリングプロセスに続く基板層の集積の結果を示し、キャビティK1〜K3は、ガラス型材料で完全に満たされている。さらにシリコンウェハー2は、キャビティ内に材料が流入した結果、シリコンウェハー1に対して沈降しているが、マイクロレンズ表面として、凸形表面輪郭が開口6の領域内に形成されており、これは最終的には、開口6に対して中央に配列された中間の畝領域8を選択的に設けることによって引き起こされ、それによって、軟化したガラス型材料の沈降が妨げられる。しかし、むしろ軟化したガラス型材料はキャビティK1〜K3内に横方向に流入し、そのため中間の畝領域8に隣接して配置される。
【0043】
図5は、凸状マイクロレンズ表面を製造する前述の方法を首尾良く実施するのに必要な、ウェハーの3次元図を示す。シリコンウェハー1は、周囲の畝状ボーダ9を備え、これは図4に示すように真空状態を維持する働きをする。周囲ボーダ9内には、種々に寸法決めされた中間の畝領域8が設けられ、それら全体が、凸状マイクロレンズ表面を形成するのに役立つ。図示される好ましい実施形態では、種々に寸法決めされた中間の畝領域8が、ボーダ9によって囲まれたインプレッションの底部から、スタンプ状または島状に盛り上がる。図5では、インプレッションは基本的に、シリコンウェハー1の表面にできた大面積の方形リセス部であり、ボーダ9によって囲まれ、その内部では、単一の島がそれぞれ上向きに突出している。
【0044】
ガラスウェハー4は、陽極接合によって真空条件下で、前もって構成したシリコンウェハー1に接合する。同様にして、開口6を備えたシリコンウェハー2を基板4の表面に密接に接合し、その開口6が、シリコンウェハー1の中間の畝領域8上の中央に配置されるようにする。
【0045】
テンパリングプロセスによって軟化したガラス基板4のガラス型材料は、中間の畝領域8で形成された中間領域に流入し、それによって、最終的にはガラス基板4の表面5の開口6内に、凸形表面輪郭が得られる。
【0046】
図6は、凸状マイクロレンズ表面を形成する、別の可能性ある手法を示す。出発点は、図1に関するプロセスステップ1のように、前もって構成されたシリコンウェハー1であってその内部にインプレッション1が配置されたものを提供することである。図1による方法とは対照的に、ガラスウェハー4とシリコンウェハー1との陽極接合は、真空条件下で引き起こされず、正常圧力条件下で引き起こされ、その結果、インプレッション1で形成されたキャビティK1、K2、K3によって、好ましくは空気の形をとる気体が包封され、加熱したときに膨張するようになる。後続のテンパリング手順では、図6の通りに、ガラス型材料が軟化し、キャビティK1、K2、K3内に存在する空気は同時に膨張し、その結果、図6に示すような変位が生ずる。キャビティのサイズに応じて、キャビティ上のガラス型材料は、空気部分に相応して上向きに変位し、それによって凸形レンズ表面を形成する。シリコンウェハー2の開口6に対し、キャビティK1、K2、K3のサイズおよび配列をどのように選択するかによって、ほとんどの任意の所望の形の凸レンズ表面曲率を生み出すことができる。
【0047】
最後に図7は、シリコンウェハー2を形成するための代替の実施形態を示し、これは先の実施形態とは対照的に、貫通する開口6を備えず、ガラス基板4の表面5と一緒になって容積空間を閉じ込めるインプレッション6'だけを形成する。例えば、レンズ表面にさらに影響を及ぼすために、ある特定の圧力レベルをその容積内に設定することができる。
【0048】
本発明の方法の助けにより、凸状または凹状に形成されたマイクロレンズ表面である任意の所望の非球面レンズ表面を、再現性よく製作することができる。記述した方法の変形例により、プロセスステップを費用効果的に実施するのを簡単に実現することが可能になり、それによって、そのようなタイプのマイクロレンズまたはマイクロレンズアレイの極めて費用効果的な製造が可能になる。
【0049】
最後に、本発明の方法は、プラスチックポリマーで作製された、マイクロレンズまたはマイクロレンズアレイを製造するために、全く首尾良く利用できることを指摘しなければならない。ガラス型材料という用語は、材料が軟化し、材料が粘性ある流動状態に突入する温度を、その材料が有すると理解すべきである。
【0050】
特定の別の実施形態の変形例では、この方法によって得られたマイクロレンズ、又はマイクロレンズアレイを、例えば鋳造の範囲内で、正確に前もって決定されたレンズ表面を有するマイクロレンズ、又はマイクロレンズアレイを製作するための複製構造、ないしはマスターモールドとして利用することができる。さらに、得られたレンズ表面輪郭は、ガルバニック鋳造によってより堅固な母材基板に、例えばNi母材に転写することができ、それがマイクロレンズ形態のさらなる複製に役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】凹形マイクロレンズを製造するためのプロセスステップを示す図である。
【図2】凸状丸形レンズ(a)および円筒状方形レンズ(b)を製造するのに適切な、半導体基板を構成するための3次元図である。
【図3】図1による方法の変形例を示す図である。
【図4】凸形マイクロレンズを製造するためのプロセスステップを示す図である。
【図5】凸形マイクロレンズを製造するための、層の配列を示す3次元図である。
【図6】材料の変位によって凸形マイクロレンズを製造するための、プロセスステップを示す図である。
【図7】図4によるプロセスステップに関する、凸形マイクロレンズを製造するための方法の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0052】
1 インプレッション
2 中間の畝
3 シリコンウェハーの表面
4 ガラス基板
5 ガラス基板の表面
6 開口
7 範囲画定縁部
8 中間の畝領域
9 周囲ボーダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板に、インプレッションを含む表面を設け、該表面上に、少なくとも1部が重なるようにガラス型材料からなる第2の基板を配置し、該表面に真空条件下で接合し、該基板複合体を、第2の基板が軟化して第1の基板のインプレッション内に流入するようにテンパリングにかけ、それによって、少なくとも1つのマイクロレンズ表面が形成されるように第1の基板側とは反対の第2の基板の面を構成する、ガラス型材料からなる単一のマイクロレンズまたはマイクロレンズアレイを製造するための方法であって、
少なくとも1つのマイクロレンズ表面を形成するために、第2の基板の軟化したガラス型材料を、第1の基板の少なくとも2個のインプレッション内に流入させ、該2個のインプレッションの形状、サイズ、および配列が、形成されるマイクロレンズ表面の曲率を決定する方法。
【請求項2】
第1の基板側とは反対の位置にあるマイクロレンズ表面に凹状の表面輪郭が形成されるよう、テンパリングプロセス中に前記軟化したガラス型材料が流入する第1のインプレッションを含んだ第1の基板を提供し、
第2のインプレッションを、第1のインプレッションのそばに設けかつ中間の畝によって分離し、該第2のインプレッションには、該第2のインプレッションの形状、サイズ、および配列によって決定された、決定可能な量の軟化したガラス型材料が流入して、凹状の表面輪郭の少なくとも1つのサブドメインに、マイクロレンズ表面の定められた曲率が形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
中間の畝領域によって分離された、少なくとも2個のインプレッションを含む第1の基板であって、その上には、テンパリングプロセス中に、軟化した材料が少なくとも2個のインプレッションに横方向に流入することによって、第1の基板側とは反対の位置にあるマイクロレンズ表面に凸状表面輪郭が形成される第1の基板を提供する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
第1の基板に、インプレッションを含む表面を設け、該表面上に、少なくとも1部が重なるようにガラス型材料からなる第2の基板を配置し、該表面に、第1の基板と第2の基板との間のインプレッションに気状媒体が封入されるように接合し、該基板複合体を、第2の基板が軟化してインプレッション領域内で膨張する気状媒体によって変位するようにテンパリングにかけ、それによって、少なくとも1つの凸状マイクロレンズ表面が形成されるように第1の基板側とは反対の第2の基板の面を構成する、ガラス型材料からなる単一のマイクロレンズまたはマイクロレンズアレイを製造するための方法であって、
第1のキャビティを第2の基板と共に囲い込む、第1のインプレッションを有する第1の基板であって、該キャビティには、テンパリング中に膨張し、かつ軟化したガラス型材料を変位させる気状媒体が封入され、それによって、第1の基板側とは反対の位置に在るマイクロレンズ表面上に凸面輪郭を形成する第1の基板が提供され、
第1の基板上には、第1のインプレッションの隣で中間の畝によって分離された、少なくとも1個の第2のインプレッションが設けられ、該少なくとも1個の第2のインプレッションは、第2の基板で第2のキャビティが閉鎖され、該キャビティには、テンパリング中に膨張し、かつ軟化したガラス型材料を変位させる気状媒体が封入され、それによって、少なくとも凸面輪郭のサブドメインに、定めることのできるマイクロレンズ表面の曲率を形成する方法。
【請求項5】
前記第2の基板と第1の基板との接合が、正常圧力または高圧条件下で行われる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ガラス型基板をテンパリングし冷却した後に、第2の基板を第1の基板から分離する、請求項1から5の一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の基板からの第2の基板の分離が、第1の基板をエッチング除去することによって行われる、請求項1から6の一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の基板からの第2の基板の分離が、第1の基板と第2の基板との間に分離層を設けることによって行われ、該分離層が、2つの基板を接合する前に、構造を維持する手法で、構成された表面上に犠牲層の形で付着され、該犠牲層が、熱および/または化学的作用によって破壊され、2つの基板の分離が可能になる、請求項1から7の一項に記載の方法。
【請求項9】
第1の基板と第2の基板との間に金属層を配置する、請求項1から8の一項に記載の方法。
【請求項10】
前記金属層を、前記基板の融点よりも低い融点を有する分離層として利用する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の基板の構成表面に、構造の幅Bを有するインプレッションを設け、前記第2の基板が厚さDを有し、
下記の式:
B<0.5*D
が近似的に当てはまる、請求項1から10の一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の基板が半導体基板であり、かつ/または
前記ガラス型材料がホウケイ酸ガラスである、請求項1から11の一項に記載の方法。
【請求項13】
前記半導体基板がシリコン基板であり、かつ/または
前記ホウケイ酸ガラスがPyrex(登録商標)ガラスまたはBorofloat glass(登録商標)である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の基板が半導体基板であり、かつ/または
前記ガラス型材料が、ポリマーをベースにしたプラスチック材料である、請求項1から11の一項に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の基板と、ガラス型材料からなる第2の基板との接合が、陽極接合によって、または接着法によって行われる、請求項1から14の一項に記載の方法。
【請求項16】
テンパリングプロセスが、形成されるマイクロレンズ表面のある特定の曲率が得られるように、温度および持続時間を制御することによって実行される、請求項1から15の一項に記載の方法。
【請求項17】
テンパリングプロセスの後、または第1の基板のエッチング除去の後に、ガラス基板の表面を、研削および/または研磨によって平らにする、請求項1から16の一項に記載の方法。
【請求項18】
テンパリングプロセスの前に、第3の基板を、前記第1の基板側とは反対の第2の基板の面上に配置し、
該第3の基板に、形成されるマイクロレンズの周辺輪郭を画定する範囲画定輪郭を有する、少なくとも1個のインプレッションまたは少なくとも1個の開口を設ける、請求項1から17の一項に記載の方法。
【請求項19】
前記第3の基板が、好ましくはシリコン基板の形をとる半導体基板である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
テンパリングプロセスの後、第3の基板をエッチングプロセスによって除去する、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
前記第3の基板と前記第2の基板との間で、請求項7から11の一項に記載の手段を講じる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
複製モールドを製造するためのオリジナルモールドまたはマスターモールドとしての、請求項1から21の一項に記載の方法により製造可能なマイクロレンズまたはマイクロレンズアレイの使用。
【請求項23】
マイクロレンズ表面を基板に、好ましくはポリマー基板に成型するために、ガラス型材料からなるマイクロレンズまたはマイクロレンズアレイを使用する、請求項22に記載の使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2006−521270(P2006−521270A)
【公表日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504790(P2006−504790)
【出願日】平成16年3月22日(2004.3.22)
【国際出願番号】PCT/EP2004/002993
【国際公開番号】WO2004/085323
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(500242786)フラウンホファー ゲセルシャフトツール フェールデルンク ダー アンゲヴァンテン フォルシュンク エー.ファオ. (47)
【Fターム(参考)】