説明

倍力装置

【課題】比較的簡素な構成で低廉にて供給でき、入力に対し十分に倍加された押圧、引張り、押込み、引出しのための出力が得られる倍力装置を提供すること。
【解決手段】多連トグルを複数、LMガイド上を移動することによって順次連係動作するように組み合わせて成り、多連トグル1の一端6はLMガイド15に固定されて移動せず、多連トグル1の他端7及びトグルリンク機構同士の連結点は、それぞれLMガイド15に沿って摺動するスライドブロックに固定されてLMガイド15に沿って移動可能であり、他端7は出力手段に連結される自由端であって、1つのトグルリンク機構のリンク軸に、入力手段17からLMガイド15と直交する方向の入力がかかるようにし、前記1つのトグルリンク機構に隣接する両側のトグルリンク機構の各リンク軸を、ベース板上に水平移動可能に設置された係止板18の両端部に開設されたガイド孔19内に摺動可能に係止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は倍力装置、より詳細には、例えば、物体の押圧、押込み等に用いられる装置であって、互いに連係する複数の多連のトグル機構を利用することにより、入力を効率よく倍加して出力することを可能にした、省エネ効果の高い倍力装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ある物体を押圧したり押込んだりするための押圧・押込み装置は、空圧又は油圧シリンダーや、スライダ・クランク機構、トグル機構等を利用したものが多いが、従来のトグル機構を利用した押圧・押込み装置の場合は、省エネ面での配慮が十分とはいえない。即ち、これらの装置の場合、駆動に要するエネルギーに対して、押圧・押込みエネルギーの発生効率が低いのである。
【0003】
また、上記押圧・押込みエネルギーの発生効率の向上を企図したものもあるが、構造が複雑となって、コスト面でも不利となる嫌いがある。
【特許文献1】特開2004−316768号公報
【特許文献2】特開2006−292123号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、従来の押圧・押込みのための装置であって、押圧・押込みエネルギーの発生効率の向上を企図したものは、未だ押圧・押込みエネルギーの発生効率が低く、また、発生効率の良好なものは装置が複雑となってコスト高となるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、比較的簡素な構成であって比較的低廉にて供給でき、しかも、入力に対し十分に倍加された押圧、引張り、押込み、引出しのための出力が得られる倍力装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、複数のトグルリンク機構を連結した多連トグルを複数、LMガイド上を移動することによって順次連係動作するように組み合わせて成る倍力装置であって、前記多連トグルの一端は、前記LMガイドに固定されて移動することのない基端とされ、前記多連トグルの他端及び前記トグルリンク機構同士の連結点は、それぞれ前記LMガイドに沿って摺動するスライドブロックに固定されることによって前記LMガイドに沿って移動可能であり、前記多連トグルの他端は出力手段に連結される自由端であって、前記複数のトグルリンク機構のうちの1つのトグルリンク機構のリンク軸に、入力手段から前記LMガイドと直交する方向の入力がかかるようにし、前記1つのトグルリンク機構に隣接する両側のトグルリンク機構のそれぞれのリンク軸を、前記ベース板上に水平移動可能に設置された係止板の両端部に開設されたガイド孔内に摺動可能に係止させて成ることを特徴とする倍力装置である。
【0007】
例えば前記入力手段は、一対の円筒カムを、その外周カム溝同士が対称となるように単一のカム軸に設置したダブル円筒カムであって、一方の前記外周カム溝に前記1つのトグルリンク機構のリンク軸をカムフォロアとして係合させ、他方の前記外周カム溝に前記係止板に設けたカムフォロアを係合させるものとする。
【0008】
また、前記出力手段はラック・ピニオン機構又は各種歯付きベルト機構等とすることができ、前記出力手段からの外部出力は、フライホイールを介して行わせることができる。
【0009】
上記課題を解決するための請求項5に記載の発明は、複数のトグルリンク機構を連結した多連トグルを複数、LMガイド上を移動することによって順次連係動作するように三次元的に組み合わせて成る倍力装置であって、前記複数の多連トグルには、入力を受けて伝達する入力トグルと、前記入力トグルと連係して前記入力を増大させつつ伝達する両端が自由端である中継トグルと、前記中継トグルと連係して前記入力を増大させつつ伝達する一端が固定端で他端が自由端である中間トグルと、前記増大された入力を出力する出力トグルとが含まれ、前記入力手段は、一対の円筒カムを、その外周カム溝同士が対称となるように単一のカム軸に設置したダブル円筒カムであって、一方の前記外周カム溝に前記入力トグルの中間の頂点リンク軸がカムフォロアとして係合することを特徴とする倍力装置である。
【0010】
前記中間トグルから前記出力トグルへの動力伝達には、三角リンクを用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本願発明は上述したような構成であるため、比較的簡素な構成であって低廉にて供給でき、しかも、出力手段の移動距離が入力手段の絶対的移動距離よりも小となるため、入力に対し十分に倍加された押圧、引張り、押込み、引出し等のための出力が得られる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明を実施するための最良の形態について、添付図面に依拠して説明する。本発明に係る倍力装置は、複数のトグルリンク機構を連結した多連トグルを、ベース板上に配置したLMガイド上に設置して成り、その多連トグルの一端を移動することのない基端とし、他端を前記LMガイドに沿って移動する自由端とし、多連トグルがその自由端の移動方向と直交する方向の入力を受けて伸縮動作をするに伴い、入力に対して倍加された押圧力をその自由端から出力可能にした構成を基本とする。
【0013】
図1は本発明に係る倍力装置の原理を示す図であり、そこに示されるように本装置は、複数のトグルリンク機構1〜4を連結して成る多連トグル(図1では4連)を、ベース板上に配置したLMガイド15上に設置して成る。各トグルリンク機構1〜4は、回転自由支点であるリンク軸5において対称的に連結された一対のリンクアームで構成される。各リンクアームは同長とされる。
【0014】
多連トグルを構成するトグルリンク機構1〜4のうちの一端側のトグルリンク機構1の基端が、LMガイド15上に固定されて移動することのない固定端6(d)とされ、他端側のトグルリンク機構4の先端が、後述する出力手段に連結される自由端7(f)とされる。各トグルリンク機構1〜4同士の連結点8〜10は回転自由支点とされ、各連結点8〜10及び自由端7は、それぞれ、LMガイド15に沿って摺動するスライドブロック11〜14上に固定されることによって、LMガイド15に沿って移動可能にされる。
【0015】
図1(A)に示す例では、トグルリンク機構3に入力手段が設置されている。それは、トグルリンク機構3のリンク軸5に滑車の機能を果たすローラ16を取り付け、このローラ16に、一端(固定点e)をベース板上に水平移動可能に設置された係止板18に固定したロープ17を掛け回し、このロープ17の他端に自由端7の移動方向に直交する方向の、換言すれば、LMガイド15に直交する方向の引張り力を付与可能にしたものである。そして、この入力手段が設置されるトグルリンク機構3に隣接する両側のトグルリンク機構2、4の各リンク軸5が、係止板18の両端部に形成された、通常長孔状のガイド孔19内に遊挿されて係止される。
【0016】
この構成においてロープ17に引張り力Tnが付与されると、トグルリンク機構3のリンク軸5がLMガイド15の長さ方向に直交する方向に引かれ、その引張り力は、リンクアームを介して両側の連結点9、10に分かれて伝達され、それぞれスライドブロック12、13を、LMガイド15に沿って互いに反対方向に移動させるように作用する。但し、固定端6は移動しないので、そこからの反作用により、スライドブロック12、13は共に、固定端6とは反対の方向に移動することになる。
【0017】
このスライドブロック12、13に対する作用は、隣接するトグルリンク機構1、2、4に次々と伝達されていくが、一端が固定端6となっているトグルリンク機構1とこれに連結されているトグルリンク機構2、換言すれば、連結点8、9は、固定端6方向に移動することができず、固定端6からの反作用を受ける結果、多連トグル全体が自由端7方向に移動することになる。
【0018】
この構成例に基づく試作品(4連トグルでトグル底辺角30度)において、自由端7(f)に10kgの一定荷重Pを矢印方向に常時負荷した状態(換言すれば、10kgの出力が得られる状態)のときのロープ17の張力Tnを計測したところ、8kgであった(計測故、機構上の摩擦損出等も含まれる)。
【0019】
その際、トグルリンク機構3のリンク軸5(b)と、係止板18におけるロープ17の固定点(e)との間に張力Tが作用しており、滑車の理論等によると、各点の張力関係は、a+c=e=b=2Tn=Tとなり、この場合のTは、T=2Tn=16kgとなる。
【0020】
また、同様にP=10kgで3連トグルとした場合のTnの実測値は6kgであり、5連トグルとした場合のTnの実測値は10kgであった。これらの実測値から推定すると、6連トグルの場合には、Tnは12kgということになる。また、トグル底辺角の変化によるT=2Tnの増減割合は、一例を挙げれば、35度で14.0、32.5度で12.74、30度で11.54、27.5度で10.42のように直線的であり、力関係計算は比較的容易である。
【0021】
上記計測結果からすると、トグル底辺角を37.5〜25度とした場合のTの平均荷重は、16/2×(tan37.5°+tan25°)/tan30°=17.09kgであって、リンク長が90mmの場合のb、eの移動量は、90×(sin37.5°−sin25°)×2=33.5mmであり、その仕事量は、17.09×3.35=57.25kg・cmで、出力は10×8.125=81.25kg・cmであるので、出力効率は1.42倍ということになる。なお、上記式における8.125cmは、後述する図3の実施形態において実測して得られた(f)の移動量である(段落0026参照)。
【0022】
図1(B)は、同じく本発明に係る倍力装置の原理を説明するための図であり、連続運転可能にするために、図1(A)に示されるものにおける入力手段を、LMガイド15上に設置されてそれと平行方向に移動するダブル円筒カムに代えたものである。このダブル円筒カムは、1本のカム軸23に一対の円筒カム21、22を、それらの外周カム溝21a、22a同士が、固定端6、トグルリンク機構同士の連結点8〜10及び自由端7を結ぶ線に対して対称となるように設置したものである。そして、トグルリンク機構3のリンク軸5を一方の円筒カム21の外周カム溝21aに係合して倣うカムフォロアとし、他方の円筒カム22の外周カム溝22aに係合して倣うカムフォロワア24を、水平方向に自由移動する係止板18上に設置する。
【0023】
このダブル円筒カムのカム軸23を図示せぬモータで回転駆動することにより、カムフォロアとなるリンク軸5とカムフォロア24とが、固定端6、トグルリンク機構同士の連結点8〜10及び自由端7を結ぶ線を挟んで、互いに接近方向又は離隔方向に移動することによって多連トグルが伸縮し続ける結果、自由端7からの連続的出力が可能となる。
【0024】
この構成に基づく試作機(図3参照)において、一方の円筒カム21に巻装したロープを円筒カム21の外周接線方向に引上げた張力である引上げ荷重Z(測定10回の平均値)を、トグル連数別に実測して次の結果を得た(条件は上記実験結果1の場合と同じ)。

用いたカム曲線が微妙なため、この計測結果から各条件間の関係の計数的定義はできないが、4連の場合について試算してみると、7.8(Z)/16(T)×2=0.244=tan13.72°で、この結果は、円筒カム進み角実測値を用い、楔の原理に基づいてベクトル分解計算した結果である16×2×tan13.72°=7.81と完全に一致する。実験結果1においてはb、eの各側に16kg負荷していたが、この場合は、Zの反力を受けるカムフォロア(5、24)がロープと同じ円周上にあるので、2個の円筒カムを同軸上に対称に配したことで、楔の原理に従って有効スラスト荷重が互いに打消し合って供給入力に損失を与えず、損失は無効ラジアル荷重の2個分のみになっている。そのため、この場合のTは、実験結果1の場合のTよりも小となっている。
【0025】
以上の計測結果に基づいて、4連トグル、リンク長90mm、使用底辺角37.5〜25°、カム外径φ85として入出力仕事量関係を試算する。カム半円当りの進み量は16.76mm、カム進み角平均は7.15°、点f(P=10kg)の移動距離は81.25mmである。この結果、出力仕事量は10×0.08125×2=1.625kg・m、供給仕事量はTの平均荷重が16/2×(tan37.5°+tan25°)/tan30°=17.09kgであるので、2個分で17.09×tan7.15°×0.085π×2=1.145kg・mとなる。従って、この場合の効率は、1.65/1.145=1.44倍となる。ここでの計測データ及び計算方式は、後述の入力多連トグルに応用活用される。但し、この機構を圧縮機やプレス等に応用するには、カム軸又はカム軸に至るまでの回転伝動軸にフライホイールを設置することが必要になると考えられるが、より広範囲に有効活用するためには、回転動力に変換し、効率よく伝動得特するワンウェイクラッチを採用することが得策で(後述する図3以下参照)、また、Pの往復動は等速であることが前提となる。
【0026】
また、図2に示すように、固定点b、eの左右方向への移動を規制してLMガイドを取り付け、両端を自由点d、fにした3連トグルにおいて、自由点d、fにP1、P2の荷重を負荷し、固定点b、e各々に等加重W1、W2を加えつつ、Pが始動する際のWを、図2に示す条件通りにて実測した。その結果は、P1、P2が10kgでW1、W2が12kgであり、この結果は、図1に示す例のTと一致し、図1の作用反作用の原理で自生する原点荷重を有効活用したものと一致する(計算例省略)。ここで重要なのは、摩擦係数0.045のLMガイド2本を用いた図2に示す条件下では、P=10kgがW=12kgで始動することである。図2で底辺使用角37.5〜22°として計算すると、入力平均は12/2×(tan37.5°+tan22°)/tan30°=12.2kg、入力仕事量は12.2×2.1=25.6kg・cm、出力仕事量は10×3.61=36.1kg・cmであるので、効率は36.1/25.6=1.4倍である。なお、ここでの計測データ及び計算方法は、後述の中継多重トグルに応用活用されている。
【0027】
図3乃至図5は、上記図1及び2に示した原理に基づいて設計された本発明に係る倍力装置の実施形態を示すものであるが、この設計条件は、4連トグルでリンク長が90mm、トグル底辺角が37.5°乃至25°、カム外径がφ85であり、上記のとおり、この仕様において、カムフォロアのカム半円当り進み量は16.76mm、カム進み角平均は7.15°、f(P=10kg)の移動量は81.25mmの実測値が得られた。
【0028】
この結果、仕事量は10×0.08125×2=1.625kg・mで、供給仕事量は平均荷重が約16/2×(tan37.5°+tan25°)/tan30°=17.09kgであり、2個分で17.09×tan7.15°×0.085π×2=1.145kg・mとなるので、この場合の効率は、1.65/1.145=1.44倍ということになる。この効率は、図1の構成の場合とほぼ一致するが、連続運転に対応する入力供給方法としては、この構成のようなダブル円筒カム方式が最適と考えられる。
【0029】
図3乃至図5において、図1及び2におけると同一の符号を付した部分は同一の構成部分を指している。この実施形態においては、ベース板31上にLMガイド15が敷設され、その上に、スライドブロック11〜14を介して多連トグルが設置されている。入力手段たるダブル円筒カムは、特に図5に詳細に示されるように、LMガイド15上に2つのスライドブロック32を介して配置されて、LMガイド15の長さ方向に移動するスライドベース33上に設置される。スライドベース33は、LMガイド15の長さ方向に移動する。スライドベース33上には、LMガイド15と直角方向に延びるLMガイド34と、カム軸23を軸支する一対の支持スタンド35、36とが設置される。そして、LMガイド34には、スライドブロック37を介して、移動板18と多連トグル支持板39とが設置され、多連トグル支持板39にトグルリンク機構3のリンク軸5が固定される。
【0030】
カム軸23の駆動は、その先端に取り付けた傘歯車41に、駆動軸42の先端に取り付けた傘歯車43を噛合させることによって行う。駆動軸42は、ベース板18上において軸支されている駆動プーリ44にスプライン結合され、駆動プーリ44から回転駆動力を受けつつ、水平方向に移動することのない駆動プーリ44に対して摺動して、LMガイド15の長さ方向に移動し得るようになっている。駆動プーリ44及びこれにスプライン結合する駆動軸42は、ベース板18上に据え付けられたモータ45によって回転駆動される。
【0031】
ここに図示されている出力手段は、ラック・ピニオン方式のものである。即ち、LMガイド15の先端部に、スライドブロック47を介してラック取付板50が設置され、その一面の上部並びに他面の下部に、それぞれラック51、52が前方に突き出るように取り付けられる。かくしてラック51、52は、LMガイド3の長さ方向に移動可能となる。
【0032】
ラック51、52はそれぞれ、フライホイール軸53にワンウェイクラッチを介して設置されたピニオン55、56に噛合する。そして、ラック取付板50の前進時には、ワンウェイクラッチの作用で一方のラック51(52)とピニオン55(56)のみが係合してフライホイール軸53を回転させ、同様に、後退時には他方のラック52(51)とピニオン56(55)のみが係合し、フライホイール軸53を上記回転と同一の方向に回転させる。そして、このフライホイール軸53から外部に出力される(図では発電機57に出力されている)。
【0033】
次いで、図6乃至図10に示された第2の実施形態について説明する。図6は第2の実施形態の全体構成を示す平面図であり、図7はそのうちの入力部と入力伝達部の構成を線図で表したものであり、図8はそのうちの入力部の構成を示すものであり、図9はそのうちの出力部の構成を示すものであり、図10は出力部の構成を線図で表したものである。なお、図6以下において、図1乃至図5におけると同じ参照符号が付された部分は、上述した第1の実施形態におけると同じ構成であるので、詳細な説明は省略する。
【0034】
この第2の実施形態の倍力装置は、それぞれ複数のトグルリンク機構を連結した多連トグルで構成されていて、立体的且つ縦横方向に配置されたLMガイド上をスライドブロックを介して移動するトグル群、即ち、入力を受ける入力トグル61(特に図7、8参照)と、入力トグル61からの入力を伝達する、両端が自由端とされる第1乃至第3の中継トグル76、81、96(特に図7、8参照)と、中継トグル76、81、96と連係し、伝達された入力を増大させつつ次段の多連トグルに伝達する、一端が固定端で他端が自由端である中間トグル121と、増大された入力を出力する第1乃至第3の出力トグル140、150、160(特に図9、10参照)とから成るものである。
【0035】
この第2の実施形態における入力手段は、ダブル円筒カムとこのダブル円筒カムに駆動される入力トグル61とから成る(図6乃至図8参照)。ダブル円筒カムを構成する一方の円筒カム21に対するカムフォロア62は、裏面に、ベース板1上に敷設された一対のLMガイドに沿って摺動するスライドブロックが固定された並行LMガイド上板65上に取り付けられており、また、入力トグル61の中間のリンク軸が他方の円筒カム22に対するカムフォロア66となる。
【0036】
入力トグル61は3連トグルであって、その一端部61aは、カム軸23と平行に配置された直交LMガイド上板67に突設された軸支板68において枢支される(特に図8参照)。直行LMガイド上板67は、ベース板1上に敷設されたLMガイド69、70に沿って、カム軸23と直交方向に移動自在にされる。また、入力トグル61のカムフォロア66の両側に位置するリンク軸71、72は、並行LMガイド上板65に設置された軸支板73、74において軸支され、軸支板73、74は、並行LMガイド上板65上に渡されたLMガイド75に沿って、リンク軸71、72の動きに追随してカム軸23と直交方向に互いに近接又は離隔するように移動自在にされる。
【0037】
入力トグル61の軸支板68において軸支される一端部61aに対する他端部61bは、入力トグル61と直交状態に配置される第1中継トグル76の上層において、第1中継トグル76の頂点リンク軸77に枢着される。第1中継トグル76の一端部76aは、カム軸23と平行に配置されたLMガイド78、79に沿って移動自在にされたスライド板80上において軸支され、また、第1中継トグル76の他端部76bは、カム軸23に対して直交方向に伸縮動作をする第2中継トグル81の頂点リンク軸82に枢支される。
【0038】
第1中継トグル76の頂点リンク軸77の両側のリンク軸63、64は、それぞれ、直交LMガイド上板67上に長さ方向に移動自在に設置された入力伝動板115、116の先端部において軸支される。また、入力トグル61のカムフォロアとなるリンク軸66の両側の長リンクアームの各中点が、入力中間支持LMガイド117に沿って自由移動する軸支板において軸支され、第1中継トグル76の頂点リンク軸77の両側の長リンクアームの各中点が、中間支持LMガイド119に沿って自由移動する軸支板118においてそれぞれ軸支される。
【0039】
かくして、カム軸23が回転駆動されて円筒カム21、22が回転すると、カムフォロア62、66が相互近接動作又は相互離隔動作し、カムフォロア66からは直接、また、カムフォロア62からは並行LMガイド上板65及び軸支板73、74を介して、入力トグル61に入力が伝達される。その結果入力トグル61は、その長リンクが軸支板に支持されて、カム軸23と直交方向に伸縮する。
【0040】
そして、この入力トグル61の伸縮に伴い、入力トグル61の他端部61bによって第1中継トグル76の頂点リンク軸77が押され又は引かれ、また同時に、リンク軸63、64が、入力伝動板115、116に引かれ又は押されることにより、第1中継トグル76は、その長リンクアームが一対の軸支板118に支持されつつ、カム軸23と平行方向に伸縮する。
【0041】
以下に述べる第2及び第3の中継トグル81、96についても、入力がダブル円筒カムから前段の多連トグルに代わること以外、基本的には同様の構成にて同様の動作をする。即ち、これらの各多連トグルは、いずれも作用反作用の原理にて連動し、各中継トグル76、81、96を経る度に入力トグル61の入力移動距離が短縮され、逆に、次第に増大していく動力が伝達される。
【0042】
第2中継トグル81は、その長リンクアーム83、84の各中心部が、固定板85上にカム軸23と直交方向に配置されたLMガイド86に沿って移動自在にされた軸支板87、88上において軸支され、また、頂点リンク軸82の両側のリンク軸89、90が、スライド板80上にカム軸23と直交方向に配置されたLMガイド92に沿って移動自在にされた、長尺伝動板93、94の先端部において軸支されることにより支持される。
【0043】
軸支板87、88はLMガイド86上において、また、長尺伝動板93、94はLMガイド92上において、それぞれ互いに近接し又は離隔するように動作する。この軸支板87、88及び長尺伝動板93、94の水平移動動作は、第2中継トグル81の頂点リンク軸82が、第1中継トグル76の他端部76bによって引かれ,又は押されることに伴って起こる。
【0044】
第2中継トグル81の先端は、繋ぎ板95を介して第3中継トグル96の頂点リンク軸97に連結される。繋ぎ板95は機構の密集化を避けるために配置されるものであって、カム軸23と直交方向のLMガイド上を自由移動する。第3中継トグル96の両端部は、それぞれカム軸23と平行に移動自在にされた横長伝達板99、100に枢着されて支持される。そして、頂点リンク軸97の両側の長リンクアーム101、102の中間部が、それぞれ中間支持板103、104において軸支される。中間支持板103、104は、固定板105上にカム軸23に平行に敷設されたLMガイド106に沿って移動自在にされる。
【0045】
また、頂点リンク軸97の両側のリンク軸107、108は、それぞれ水平自由伝動板109、110の先端において軸支される。水平自由伝動板109、110はそれぞれ、カム軸23に平行に敷設されたLMガイド111に沿って、互いに近接方向又は離隔方向に移動自在に支持される。
【0046】
第3中継トグル96の伸縮動作は、横長伝達板99、100を介して中間トグル121に伝達される。即ち、中間トグル121は一端が固定点122とされ、固定点122を基端としてカム軸23と直交するLMガイド123上で伸縮動作するもので、その頂点リンク軸124が、横長伝達板100から延びる中間水平支持板125の先端部において軸支される。
【0047】
また、その頂点リンク軸124の両側のリンク軸125、126は、それぞれ水平自由支持板127、128において軸支される。水平自由支持板127、128はそれぞれ、伝達板99上のカム軸23に直交するLMガイド129に沿って、互いに近接方向又は離隔方向に移動自在にされる。そして、頂点リンク軸124の両側の長リンクアーム131、132の中間部が、それぞれLMガイド123に沿って移動自在の中間支持板において軸支される。
【0048】
中間トグル121の伸縮動作は、その先端部に取り付けられた第1繋ぎ金具133を介して、一端が固定点141である第1出力トグル140の先端に設置された第1三角リンク142に伝達され、これを受けて第1出力トグル140が、その各長リンクアームの中間点が、カム軸23に直交するLMガイド143上において支持されて伸縮動作する。第1三角リンク142は、その一辺が第1出力トグル140先端部の短リンクアームを構成するもので、その第1繋ぎ金属133との連結点であるリンク軸144が第1繋ぎ金属133に引かれ、又は押されることにより、LMガイド143に沿って移動しつつ、隣接する長リンクアーム145との連結点であるリンク軸146を支点に回動する。
【0049】
この多重トグル(第1出力トグル)の特徴は、図9に示されるように、一端が原点固定(固定端141)で、自由端に設けた二等辺の第1三角リンク142のリンク軸144から入力Tを受け、リンク軸147を介して出力Pが伝達される、即ち、第1三角リンク142だけが受伝動を司り、頂点支え等も不要なシンプルな機構である点にある。その動作は、例えば、中間トグル121から入力Tを得てリンク軸144はやや円弧状に仮想線表示部から実線表示部に移動し、同時にリンク軸147は出力Pを発揮しつつ、仮想線表示部から実線表示部に至る。4連トグル底辺角40°、リンク長150mmでP=10kgを負荷した状態で点bでの入力はT=8.21kgを実測した。この動力の利得は4連トグルの固定端141に自生する反力Qは、LMガイド143と平行の方向に常にQ+T=Pの関係にあり、Pは一定荷重のため、Tの減少分=Qの増加分ということになる。既述のT=8.21kgは実測値であるので、抵抗損失分も含まれている。また、このTは梃子の理の長さ比と底辺角の変化により2次曲線的に変化する物理現象であり、その変化状況は直線計算に対し、底辺角使用範囲を10°〜40°とした場合に0.704倍となるので、一旦直線計算した後に修正する。
【0050】
即ち、図9において、例えばリンク長を90mmとした場合、b´における入力T´=T×tan10°/tan40°×15.63/84.57=8.21×0.176/0.839×15.63/84.57=0.318kg(T=8.21kgの実測は底辺角40°で、梃子の理の長さ比は57.85/57.85=1)であるので、入力平均は(8.21+0.32)/2=4.265kgであり、これに実際値修正を加えて4.265×0.704=2.99kgとなる。従って、入力仕事量は片道で2.99×0.196=0.586kg・mであり、出力仕事量は片道で10×0.158=1.58kg・mであるので、効率は1.58/0.586=2.7倍となる。これ等の計測データ及び計算方式は、各出力多連トグル140、150、160において応用活用される。
【0051】
第1三角リンク142の残りのリンク軸147は、LMガイド143に沿って自由移動する第2繋ぎ金具148に連結され、第2繋ぎ金具148は、一端が固定点151である第2出力トグル150の先端に設置された第2三角リンク152に連結される。かくして、第1出力トグル140の伸縮に伴う第1三角リンク142の動きが、第2繋ぎ金具148を介して第2三角リンク152に伝達されると、第2出力トグル150は、その各長リンクアームの中間点が、カム軸23に直交するLMガイド153上において支持されて伸縮動作する。
【0052】
第2三角リンク152は第1三角リンク142と同様の構成で、その一辺が第2出力トグル150先端部の短リンクアームを構成するもので、その第2繋ぎ金属148との連結点であるリンク軸154が第2繋ぎ金属148に引かれ、又は、押されることにより、LMガイド153に沿って移動しつつ、隣接する長リンクアーム155との連結点であるリンク軸156を支点に回動する。
【0053】
また、上記同様にして、第3繋ぎ金属158を介して第2出力トグル150に第3出力トグル160が連設される。即ち、第3繋ぎ金具158は、一端が固定点161である第3出力トグル160の先端に設置された第3三角リンク162に連結されることにより、第2出力トグル150の伸縮に伴う第2三角リンク152の動きが、第3繋ぎ金具158を介して第3三角リンク162に伝達されると、第3出力トグル160は、その各長リンクアームの中間点が、カム軸23に直交するLMガイド163上において支持されて伸縮動作する。
【0054】
第3三角リンク162は第1及び第2三角リンク142と同様の構成で、その一辺が第3出力トグル160先端部の短リンクアームを構成し、その第3繋ぎ金属158との連結点であるリンク軸164が第2繋ぎ金属158に引かれ、又は、押されることにより、LMガイド163に沿って移動しつつ、リンク軸166を支点に回動する。第3三角リンク162の残りのリンク軸167には出力板168が設置され、出力板168は例えば、出力手段駆動用の歯付きベルト170に連結される。なお、出力手段は歯付きベルト170に限らず、ラック・ピニオン機構その他任意の手段を採用することができる。
【0055】
この第2の実施形態を発展させて、4連トグルを合計8連にしたものについての効率計算を試みた。この試算においては、各トグルの出力・供給力等の割合関係を明らかにする便宜上、説明を最終出力多連トグルから逆に入力多連トグルへと進めていく。
【0056】
第3出力トグル160は4連で、リンク長は150mm、底辺角使用範囲は14.72〜35°で、入力Tの移動量(入力Tを受ける第3三角リンク162のリンク軸164の水平方向移動量)の片道は215mm、出力Pの移動量(出力板168が設置されたリンク軸167の移動量)の片道は178mmである(図9参照)。
【0057】
上記のとおり、トグル底辺角が40°でP=10kgのときにT=8.21kgとの実験計測値が得られており、tan40°=0.839、tan35°=0.700であることから、トグル底辺角35°での入力は、T35=8.21×0.7/0.839=6.85kg(三角リンクは二等辺三角形状であるので、底辺角35°での梃子の理の長さ比は、86.04/86.04=1)になる。また、tan14.72°=0.263であり、トグル底辺角が14.72の場合の梃子の理の長さ比は、38.11/123.29=0.309になるので、このときの入力は、T14.72=6.85×0.309/1×0.263/0.7=0.795kg、供給力平均は、(6.85+0.796)/2=3.82kgで、これに上記のようにして実際値修正を加えると3.82×0.835=3.19kgとなり、入力Tの移動量は0.215mであるので、供給仕事量は3.19×0.215=0.686kg・mとなる。
【0058】
そして、出力仕事量は、Pの移動量が0.178mであるので、10×0.178=1.78kg・mとなる。よって、出力効率は1.78/0.686=2.6倍となる(1サイクル1往復の片道を計算したもの。以下同じ)。
【0059】
試験機においては、出力多連トグルは一端を原点として回動自在に軸支させ、反対側の可動端の半リンクを図9、10に示す通り二等辺三角リンク162として、トグルリンクに関係しない底辺角(リンク軸164)に入力Tを供給し、最先端に一定荷重Pをかけた。実動機においては、この最終の多連トグル荷重Pは等速移動して、歯付ベルトからワンウエイクラッチ内蔵プーリー等を介して発電機等を駆動するものである。
【0060】
出力Pと入力Tと4連トグルの固定端161に生ずる反力Qとの間には、常にQ+T=Pの関係があり、上記動力の利得は、出力Pと入力Tの仕事量の差により発生している。そして、Pは一定荷重のため、Tの減少分=Qの増加ということになる。当然Tは実験計測値(4連トグルで底辺角40°の場合、P=10kgにてT=8.21kg)を根拠にしているので、LMガイドにおける抵抗損失分等も含まれている。また、このTの値は、梃子の理の長さ比と底辺角の変化により、二次曲線的に変化する。この底辺角使用範囲においては、実際値と直線計算値との割合は、0.835と算出された。
【0061】
第2出力トグル150は4連で、リンク長は150mm、底辺角使用範囲は37.5〜13.44°で、入力Tの移動量の片道は263mm、出力Pの移動量の片道は215mmである。出力仕事量は、上記第3出力トグル160への供給仕事量と一致し、3.19×0.215=0.686kg・mである。入力は同様に、tan37.5°=0.767よりT37.5=8.21×3.19/10×0.767/0.839=2.395kg(ここにおける3.19/10は、P=10kgでの実測値T=8.21kgをこの出力平均値に合わせるものである)、そして、tan13.44°=0.239で、梃子の理の長さ比は34.86/131.9=0.264であるので、T13.44=2.395×0.264/1×0.239/0.767=0.197kgとなる。そして、入力平均荷重は(2.395+0.197)/2=1.3kgで、これを実際値修正すると、1.03×0.78=1.014kgとなり、入力仕事量は1.014×0.263=0.267kg・mであって、出力効率は、0.686/0.267=2.57倍となる。
【0062】
第1出力トグル140は4連で、リンク長150mmであり、底辺角使用範囲は10〜40°で、入力Tの移動量の片道は326mm、出力Pの移動量の片道は263mmである。出力仕事量は第2出力トグル150の供給仕事量と一致し、1.014×0.263=0.267kg・mである。tan40°=0.839の計測結果はこの状態での計測結果であるので、同様にT40=8.21×1.014/10×0.839/0.839=0.832kg、tan10°=0.1763、梃子の理の長さ比は26.05/140.95=0.1848で、T10=1.014×0.1848/1×0.1763/0.839=0.0394kgであるので、入力平均荷重は(0.832+0.0394)/2=0.436kgで、実際値修正を加えると0.436×0.704=0.307kgとなり、入力仕事量は0.307×0.326=0.1kg・mで、出力効率は0.267/0.1=2.67倍となる。
【0063】
中間トグル121は3連で、リンク長は250mm、底辺角使用範囲は40〜10.44°で、入力Tの移動量の片道は115×2=230mm、出力Pの移動量の片道は326mmである。出力仕事量は、片道は第1出力トグル140の供給仕事量と一致し、0.305×0.326=0.1kg・mである。3連トグルで底辺角30°における計測結果より、P=10kgでT=12kgであるので、同じ30°では0.305×12/10=0.366kg、入力平均荷重は0.366/2×(tan40°+tan10.45°)/tan30°=0.324kg、入力移動量は0.115m、入力仕事量は片側で0.324×0.115×2=0.0745kg・mとなる。故に出力効率は、0.1/0.0745=1.34倍となる。
【0064】
第3中継トグル96は3連で、リンク長は175mm、底辺角使用範囲は9.65〜40°で、入力Tの移動量の片側片道は83mm、出力Pの移動量の片側片道は115mmである。また、出力仕事量の片側片道は0.324×0.115=0.0372kg・m、入力仕事量は上記計測結果から片側片道P=10kgでW=12kg・mであり、同様に30°においては、T30=0.324×12/10=0.389kg、平均荷重は0.389/2×(tan40°+tan9.64°)/tan30°=0.34kg、入力仕事量は、片側片道が0.34×0.0831=0.0283kg・mであるので、効率は0.0372/0.0283=1.31倍である。
【0065】
第2中継トグル81は3連で、リンク長150mm、底辺角使用範囲は37.5〜12.01°で、入力Tの移動量の片側片道は60.3mm、出力Pの移動量の片側片道は83.1mmである。出力仕事量は、片側片道が0.34×0.0831=0.0283kg・m、入力片側は、同様に30°で0.34×12/10=0.408kg、平均0.408/2×(tan37.5°+tan12.01°)/tan30°=0.346kg、入力仕事量は、片側片道が0.346×0.0603=0.0209kg・mであるので、効率は0.0283/0.0209=1.35倍である。
【0066】
第1中継トグル76は3連で、リンク長は150mm、底辺角使用範囲は22.04〜37.5°で、入力Tの移動量は片側片道で34.9mm、出力Pの移動量は片側片道で60.3mmである。そして、出力仕事量は片側片道が0.346×0.0603=0.0209kg・mである。入力は同様に30°においては0.346×12/10=0.415kgで、入力平均荷重は0.415/2×(tan37.5°+tan22.04°)/tan30°=0.421kg、入力仕事量は片側片道が0.421×0.0349=0.0147kg・mである。よって、効率は0.0209/0.0147=1.42倍となる。
【0067】
入力トグル61は3連で、リンク長は150mm、底辺角使用範囲は35〜26.24°で、入力Tの移動量の片側片道は19.7mm、出力Pの移動量の片側片道は34.9mmである。出力仕事量片側片道は0.421×0.0349=0.0147kg・mである。入力片側移動量は19.7で、円筒カム外径をφ160とすれば、進み角平均のtanの値が19.71×2/160π=0.0784であるので、進み角平均は4.484°となる。そして、30°の位置での入力荷重は0.421×12/10=0.505kgであるので、入力平均荷重は0.505/2×(tan35°+tan26.24°)/tan30°=0.522kgで、入力仕事量片側片道は0.522×tan4.484°×0.16π/2=0.0103kg・mである。故に効率は0.0147/0.0103=1.43倍となる。
【0068】
以上、多連トグル8重列の効率の積算合計は、2.6×2.57×2.67×1.34×1.31×1.35×1.42×1.43=85.85倍と算出されるが、この計算例は、1.3少々から最高2倍強の効率の多連トグルを8連も重ね連ねた効果で、例えば、1連で効率が2倍であっても、発電機自身の効率を考慮すると、1連だけでは実用価値は少ない。また、上記入力トグル61を採用しない場合は、特殊な変速駆動源を採用しない限り中継トグルは機能せず、実験的には可能であっても、中継トグルが機能しない場合には増幅効果が得られず、実用効果が得られない。また、中間トグルなしでは出力トグルも(サーボ駆動リニアなどの特殊機器を用いる場合を除き)機能しない関係にある。なお、中継トグルや出力トグル等の組合せ方法は無限にあり、これ等の機能的組み合わせによって、実際の設計においては、スペースの有効活用上、極めて大きな効果を発揮する。
【0069】
上述したように、本発明に係る装置は入力・中継・中間・出力の個性ある4種類の多連トグルを組み合わせて、それぞれの個性を活用しながら構成されて1つの装置として機能するものである。そして、上述したように本装置の最大特徴は、それぞれ効率が1.3以上である多連トグルが幾重にも重ね連ねられることにより、最終出力は無限大となるところにあり、また、入力が限りなく平均化されるところにある。
【0070】
この発明をある程度詳細にその最も好ましい実施形態について説明してきたが、この発明の精神と範囲に反することなしに広範に異なる実施形態を構成することができることは明白なので、この発明は添付請求の範囲において限定した以外はその特定の実施形態に制約されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明に係る倍力装置の原理を示す図である。
【図2】本発明に係る倍力装置における効率の計算方法を示す図である。
【図3】本発明に係る倍力装置の一実施形態の正面図である。
【図4】図1におけるA−A線、及びB−B線に沿った断面図である。
【図5】図3に示す実施形態における入力手段を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施形態の構成を示す平面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態の入力部における動力伝達過程を示す線図である。
【図8】本発明の第2の実施形態の入力部の構成を示す平面図である。
【図9】本発明の第2の実施形態の出力部の構成を示す平面図である。
【図10】本発明の第2の実施形態の出力部の構成を示す線図である。
【符号の説明】
【0072】
1〜4 トグルリンク機構
5 リンク軸
6 固定点
7 自由端
8〜10 連結点
11〜14 スライドブロック
15 LMガイド
16 ローラ
17 ロープ
18 係止板
19 ガイド孔
21、22 円筒カム
23 カム軸
24 カムフォロア
31 ベース板
32 スライドブロック
33 スライドベース
34 LMガイド
35、36 支持スタンド
37 スライドブロック
39 多連トグル支持板
41、43 傘歯車
42 駆動軸
44 駆動プーリ
45 モータ
47 スライドブロック
50 ラック取付板
51、52 ラック
53 フライホイール軸
55、56 ピニオン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のトグルリンク機構を連結した多連トグルを複数、LMガイド上を移動することによって順次連係動作するように組み合わせて成る倍力装置であって、前記多連トグルの一端は、前記LMガイドに固定されて移動することのない基端とされ、前記多連トグルの他端及び前記トグルリンク機構同士の連結点は、それぞれ前記LMガイドに沿って摺動するスライドブロックに固定されることによって前記LMガイドに沿って移動可能であり、前記多連トグルの他端は出力手段に連結される自由端であって、前記複数のトグルリンク機構のうちの1つのトグルリンク機構のリンク軸に、入力手段から前記LMガイドと直交する方向の入力がかかるようにし、前記1つのトグルリンク機構に隣接する両側のトグルリンク機構のそれぞれのリンク軸を、前記ベース板上に水平移動可能に設置された係止板の両端部に開設されたガイド孔内に摺動可能に係止させて成ることを特徴とする倍力装置。
【請求項2】
前記入力手段は、一対の円筒カムを、その外周カム溝同士が対称となるように単一のカム軸に設置したダブル円筒カムであって、一方の前記外周カム溝に前記1つのトグルリンク機構のリンク軸をカムフォロアとして係合させ、他方の前記外周カム溝に前記係止板に設けたカムフォロアを係合させる、請求項1に記載の倍力装置。
【請求項3】
前記出力手段はラック・ピニオン機構又は歯付きベルト機構である、請求項1又は2に記載の倍力装置。
【請求項4】
前記出力手段からの外部出力は、フライホイールを介して行われる、請求項1乃至3のいずれかに記載の倍力装置。
【請求項5】
複数のトグルリンク機構を連結した多連トグルを複数、LMガイド上を移動することによって順次連係動作するように組み合わせて成る倍力装置であって、前記複数の多連トグルには、入力を受けて伝達する入力トグルと、前記入力トグルと連係して前記入力を増大させつつ伝達する両端が自由端である中継トグルと、前記中継トグルと連係して前記入力を増大させつつ伝達する一端が固定端で他端が自由端である中間トグルと、前記増大された入力を出力する出力トグルとが含まれ、前記入力手段は、一対の円筒カムを、その外周カム溝同士が対称となるように単一のカム軸に設置したダブル円筒カムであって、一方の前記外周カム溝に前記入力トグルの中間の頂点リンク軸がカムフォロアとして係合することを特徴とする倍力装置。
【請求項6】
前記中間トグルから前記出力トグルへの動力伝達に、三角リンクを用いる、請求項5に記載の倍力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−53892(P2010−53892A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−216893(P2008−216893)
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【出願人】(505137982)
【Fターム(参考)】