説明

偏光分光器

【課題】迷光除去率良く、単色の直線偏光を抽出する偏光分光器を提供すること。
【解決手段】波長および偏光方向に応じた方向へ光を出力する第1プリズム12と、第1プリズム12を透過した光を受け、波長および偏光方向に応じた方向へ光を出力する第2プリズム16とを備えた偏光分光器10。第1プリズム12および第2プリズムは一軸性の結晶プリズムであり、第1プリズム12の光学軸および第2プリズム16の光学軸は共に各プリズム内での光路に直交し、かつ第2プリズム16の光学軸が、第1プリズム12からの出力光のうち、第1プリズム12の光学軸に直角に偏光した直線偏光成分の偏光方向を向いている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定波長の直線偏光の選択を行なう偏光分光器、特にその迷光除去機構の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の集積化が進むにつれ、解像度を上げる手段の一つとして、光リソグラフィーの光源波長は真空紫外域へと短波長化されて来ている。また、照明光にS偏光を用いてコントラストを向上させる偏光照明や、偏光光源での露光が一般的になり、真空紫外域までスループットの高い偏光単色光を出射する材料評価用の分光器が必須となって来ている。
【0003】
単色の直線偏光を得るために、通常の分光器を通過させた光を偏光子に通すといった構成が一般的に使用されている。しかし、このような構成では偏光子のスループットによるロスが生じてしまう。そのため、分光器をダブルモノクロメータ型とし、一方のモノクロメータで波長分散を行い、もう一方のモノクロメータに波長分散と偏光子としての機能を持たせるといったことが行なわれている。この偏光分光器は一方のモノクロメータの分散素子として結晶プリズムを用いており、この結晶プリズムに波長分散素子および偏光素子としての働きをさせることで単色の直線偏光を得ている。つまり、結晶プリズムの複屈折により常光と異常光とを分離することで、直線偏光が得られる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような偏光分光器では常光と異常光の分離角が小さいため、迷光成分となる一方の直線偏光成分が十分に除去できないという問題点があった。また、一般に短波長の光に対してはサンプル等の透過媒体の吸収が大きくなるので、十分な光量を得るために分光器の出射スリット幅を広くする必要がある。しかし、上記の偏光分光器では分離角が小さいためスリット幅を広げることができず、特に真空紫外域におけるスループットは満足いくものではなかった。さらに、迷光を十分に除去するために光路長を長く取る必要があり、装置が大型化するという問題もあった。
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、迷光除去率よく、所望の波長をもつ直線偏光を抽出することのできる偏光分光器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明にかかる偏光分光器は、少なくとも二以上の波長分散素子を備え、単色の直線偏光の抽出を行なう偏光分光器であって、前記二以上の波長分散素子として、波長および偏光方向に応じた方向へ光を出力する第1プリズムと、前記第1プリズムを透過した光を受け、波長および偏光方向に応じた方向へ光を出力する第2プリズムとを備える。前記第1プリズムおよび第2プリズムは一軸性の結晶プリズムであり、前記第1プリズムの光学軸および第2プリズムの光学軸は共に各プリズム内での光路に略直交し、かつ第2プリズムの光学軸が、第1プリズムからの出力光のうち、第1プリズムの光学軸に直角に偏光した直線偏光成分の偏光方向を向いていることを特徴とする。
【0006】
上記の偏光分光器において、前記第1プリズムと第2プリズムとの間の光路上に設置され、第1プリズムから所定の方向に出射された光以外の光を遮断する中間スリットと、前記第2プリズムの後段に設置され、第2プリズムから所定の方向に出射された光以外の光を遮断する出射スリットと、を備えることが好適である。
上記の偏光分光器において、前記第1プリズムおよび第2プリズムを回転駆動し、抽出する直線偏光の波長を変更する駆動手段を備えることが好適である。
【0007】
なお、第1及び第2プリズムの光学軸が各プリズム内の光路に略直交するとは、第1及び第2プリズムが常光と異常光とを分離する偏光素子として実用上機能する程度に光学軸と光路とのなす角が90°に近ければよい。具体的には、例えばプリズムとして結晶水晶を用いたとき、89°〜91°の範囲にあれば十分である。
また、本明細書において偏光方向とは電場ベクトルの振動方向のことをいう。
【発明の効果】
【0008】
本発明にかかる偏光分光器によれば、第1プリズムの光学軸および第2プリズムの光学軸が共に各プリズム内での光路に略直交し、かつ第2プリズムの光学軸が、第1プリズムからの出力光のうち、第1プリズムの光学軸に直角に偏光した直線偏光成分の偏光方向を向いているため、第2プリズムから出射する互いに直交した直線偏光線分(常光、異常光)の分離角が大きく、容易に迷光を除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態にかかる偏光分光器の概略構成図である。本実施形態にかかる偏光分光器10は、波長分散素子としての第1プリズム12を備えた第1モノクロメータ14と、波長分散素子としての第2プリズム16を備えた第2モノクロメータ18とで構成されたダブルモノクロメータ型の分光器である。また、第1モノクロメータ14と第2モノクロメータ18との間には中間スリット20が設けられている。分光対象の光は第1モノクロメータ14、中間スリット20、第2モノクロメータ18を通り、波長選択が行なわれ、単色の直線偏光とされて出射する。
【0010】
第1プリズム12および第2プリズム16は、一軸性の結晶プリズムであれば特に限定されない。好適に使用し得るものとしては、例えば、結晶水晶等が挙げられる。
第1プリズム12と第2プリズム16は、各プリズムの光学軸が各プリズム内の光線の進行方向に略直交するように構成されている。そのため、光学軸に平行な直線偏光成分(異常光)と光学軸に垂直な直線偏光成分(常光)とでは、同一波長であっても異なる屈折率を有し、その偏光方向に応じて第1プリズム12もしくは第2プリズム16から出力する光の方向が決まる。つまり、第1プリズム12および第2プリズム16は波長分散素子としてのみでなく、常光と異常光とを分離する偏光素子としても機能する。
なお、第1及び第2プリズムの光学軸が各プリズム内の光の進行方向に略直交するとは、第1および第2プリズムが常光と異常光とを分離する偏光素子として実用上機能する程度に光学軸と光路とのなす角が90°に近ければよい。具体的には、例えば、プリズムとして結晶水晶を用いたとき、89°〜91°の範囲にあれば十分である。
【0011】
さらに、第2プリズム16の光学軸の方向(紙面に垂直方向、図では二重丸として示した)は、第1プリズム12の光学軸の方向(図の両矢印で示した方向)に垂直になるようにとられている。つまり、第1プリズム12の光学軸と平行な偏光方向を有する直線偏光成分(異常光)として第1プリズム12を通過した直線偏光成分は、第2プリズム16の光学軸と直交した偏光方向を有する直線偏光成分(常光)として第2プリズムを透過する。同様に第1プリズム12の光学軸と垂直な偏光方向を有する直線偏光成分(常光)として第1プリズム12を透過した直線偏光成分は、第2プリズム16の光学軸と平行な偏光方向を有する直線偏光成分(異常光)として第2プリズム16を透過する。このように、本実施形態では目的とする波長の直線偏光を得るために、第1プリズム12および第2プリズム16のうち、一方のプリズムでは異常光の屈折率分散、他方のプリズムでは常光の屈折率分散を利用して波長選択を行なっている。この結果、後述するように第2プリズム16による常光と異常光との分離角が大きくなる。
【0012】
第1モノクロメータ14は、入射スリット22と、第1コリメータ光学系(第1コリメータ鏡24)と、第1プリズム12と、第1集光光学系(第1集光鏡26)とを備える。入射スリット22を通り第1モノクロメータ14内に入射した光は、第1コリメータ鏡24により平行光とされ、第1プリズム12へ照射される。第1プリズム12に照射された平行光は波長分散され、波長および偏光方向に応じた方向へ出射される。第1プリズム12からの出力光は第1集光鏡26にて集光され、中間スリット20へ導かれる。中間スリット20では、第1プリズム12から所定の角度方向に出力された光のみを通過させ、それ以外の方向へ出射した光を遮断する。つまり、所望の波長および偏光方向を有する光以外の光を中間スリット18によって遮断する。
【0013】
第2モノクロメータ18では、中間スリット20を通過した光の波長分散をさらに行なう。第2モノクロメータ18は、第2コリメータ光学系(第2コリメータ鏡28)と、第2プリズム16と、第2集光光学系(第2集光鏡30)と、出射スリット32とを備える。中間スリット20を通過して第2モノクロメータ18に入射した光は、第2コリメータ鏡28により平行光とされ、第2プリズム16へ照射される。第2プリズム16からの出力光は第2集光鏡30にて集光され、出射スリット32へと導かれる。出射スリット32は、第2プリズム16から所定の角度方向に出力された光のみを通過させるように配置し、それ以外の方向へ出射した光を遮断する。よって、出射スリット32からは所望の波長および偏光方向をもつ直線偏光が出射されることとなる。
【0014】
さらに、本実施形態の偏光分光器10は、第1プリズム12および第2プリズム16を波長分散方向に回転駆動する駆動手段(第1駆動部34、第2駆動部36)が設けられている。第1駆動部34は、第1プリズム12への光の入射角を変更し、中間スリット20を通過する光の波長の選択を行なう。同様に第2駆動部36は、第2プリズム16への光の入射角を変更し、出射スリット32から出射する光の波長の選択を行なう。駆動手段の制御は、コンピュータ等で構成された制御手段38によって行われる。第1駆動部34および第2駆動部36は従来同様カム等を用いて構成すればよい。ただし、本実施形態では第1プリズム12では異常光の屈折率分散で波長選択し、第2プリズム16では常光の屈折率分散で波長選択を行なう、もしくは、第1プリズム12では常光の屈折率分散で波長選択し、第2プリズム16では異常光の屈折率分散で波長選択を行なう、というように両者で利用する屈折率分散が異なるため、第1駆動部34および第2駆動部36はそれぞれ異なるカムを使用する必要がある。また、異常光はプリズム内での光の進行方向に応じて屈折率が変化するため、そのことも考慮に入れる必要がある。
以上が本実施形態の概略構成であり、以下にその作用について説明する。
【0015】
通常、プリズムによる波長分散は、波長に依存した屈折率の違いによりプリズムからの出射方向が波長に応じて異なることを利用している。つまり、固定したスリットに対し、プリズムを波長分散方向に回転することで、目的の波長の光がスリットを通過するように設定する。しかし、本実施形態ではプリズムをその光学軸が光路に直交するように配置しているので、偏光方向が光学軸に平行な直線偏光(異常光)と偏光方向が光学軸に垂直な直線偏光(常光)とでは異なる屈折率分散をもつ。このため、偏光方向の違いによってもプリズムからの出射方向が異なる。本実施形態では、このようなプリズムの複屈折を利用して所定波長の直線偏光を得ている。
【0016】
以下に図2〜4を参照して、本実施形態の偏光分光器の第1及び第2プリズムの作用を説明する。ここでは、第1プリズムと第2プリズムが同種の正の一軸性結晶である場合を想定して説明を行う。
図2に第1プリズム12の作用の説明図を示す。なお、図ではプリズムとして、底面が直角三角形の柱状で、直角三角形の直角を挟む2面の一方に反射膜を設けたものを示したが、これに限定されず、他の形状のプリズムを用いてもよい。また、図2での第1プリズム12の光学軸方向は図面の上下方向(図の両矢印方向)とした。偏光分光器により最終的に取り出したい光は、図2に示した直線偏光成分Aであり、この直線偏光成分Aは偏光方向が紙面に平行(図の両矢印方向)で波長λをもつものとする。第1プリズム12へ入射した光は、その波長および偏光方向へ応じた方向へ第1プリズム12から出射していくが、そのうち直線偏光成分Aは中間スリットを通過し得る方向へと出射する。ここで、直線偏光成分Bとして、直線偏光成分Aと同一の波長λで、直線偏光成分Aと直交する偏光方向(紙面に垂直、図中二重丸印で示した)をもつものを考える。すると、直線偏光成分Aは第1プリズム12を異常光として透過するのに対し、直線偏光成分Bは第1プリズム12を常光として透過する。そのため、直線偏光成分Bは、直線偏光成分Aとは異なる方向へ出射し、中間スリットによって遮断される。
【0017】
しかし、直線偏光成分Aと直交した偏光方向を持っていても、波長が異なる場合、直線偏光成分Aと同じ方向へ出射していく直線偏光成分(直線偏光成分C)も存在する。常光の屈折率n、異常光の屈折率nの波長依存性を示した模式的なグラフ(図3)から分かるように、波長λの異常光(直線偏光成分A)に対する屈折率n(λ)は、異なる波長λ−Δλの常光(直線偏光成分C)に対する屈折率n(λ−Δλ)と同じであり、これらの光は共に第1プリズム12から同じ方向へ出射される。そのため、図2に示したように、中間スリットを通過する光には、目的とする直線偏光成分Aのみならず、迷光成分である直線偏光成分Cも混じることになる。この迷光成分の除去は次に述べるように、第2モノクロメータにて行なわれる。
【0018】
図4は第2プリズムの作用の説明図である。上で述べたように、第1モノクロメータ、中間スリットを通過した光束には、互いに偏光方向が直交し、異なる波長を持つ光が混在することになる。つまり、第2プリズム16に照射される光には、偏光方向が紙面に平行で波長λの直線偏光成分Aと、偏光方向が紙面垂直方向で波長λ−Δλの直線偏光成分Cとが主に含まれることになる。
ここで、第2プリズム16の光学軸方向は紙面に垂直、つまり第1プリズムの光学軸方向に対して垂直方向にとられている。よって、第1プリズムを異常光として透過した直線偏光Aは第2プリズム16を常光として透過し、第1プリズムを常光として透過した直線偏光Cは第2プリズム16を異常光として透過することとなる。また、光学軸はプリズム内の光路に直交しているため、図3のグラフから分かるように、第2プリズム16における、直線偏光成分A(波長λ)に対する屈折率はn(λ)となり、直線偏光成分C(波長λ−Δλ)に対する屈折率はn(λ−Δλ)となる。そのため、第2プリズム16から出射する直線偏光成分Aと直線偏光成分Cはそれぞれ異なる方向へと向かう。その結果、直線偏光成分Aのみが出射スリットを通過して偏光分光器から取り出され、直線偏光成分Cは出射スリットにて遮断され、迷光が除去される。
【0019】
一方、従来の偏光分光器では、例えば図1の第1プリズム12の光学軸をプリズム内の光の光路に略平行にとった構成を採用し、第1プリズム12に波長分散素子のみの機能を負わせていた。このため、第1プリズムは光の偏光方向に関係なく波長のみに依存した屈折率を持つ。そして、第2プリズムのみを分散素子および偏光素子として用い、同一波長をもつ常光と異常光とを分離することによって直線偏光を得ていた。図5に示すように、第1プリズムの光学軸を光路に平行にとると、第1プリズムでは常光、異常光の区別なく波長分散される。一方、図6に示すように第2プリズムは光学軸をプリズム内の光路に直交させており、プリズムの複屈折性を利用して常光と異常光の分離を行なう。しかし、このような従来の場合は本発明とは異なり、第2プリズムに同一波長をもつ互いに直交する直線偏光が入射することになる。そのため、従来の例では、同一波長λを持つ常光と異常光を分離することとなり、この場合の常光と異常光との屈折率差はn(λ)−n(λ)となる。
【0020】
しかしながら、本実施形態では、異なる波長を持つ常光と異常光に対する屈折率の差を利用して互いに直交する直線偏光成分(直線偏光成分A、直線偏光成分C)を分離しているため、それらの屈折率差はn(λ−Δλ)−n(λ)となる。これは、図3のグラフから明らかなように、同一波長における常光と異常光との屈折率差n(λ)−n(λ)よりも大きい。常光と異常光との分離角(プリズムからの出射角度の差)は、屈折率差の絶対値が大きい程大きいため、本実施形態の偏光分光器によれば、第2プリズムにおける分離角を従来よりも大きく取れることが分かる。
【0021】
具体例として第1および第2プリズムに水晶プリズムを用いた場合における、本実施形態の偏光分光器での常光と異常光との屈折率差と、従来の偏光分光器での常光と異常光との屈折率差とを比較する。まず、水晶の複屈折分散(常光の屈折率:n,異常光の屈折率:n)は下記の式で表される(R.W.Ward, 14th Piezoelectric Devices Conference and Exhibition, Sept.15-17, 1992, Table1)。
=3.53445+0.008067/(λ−0.0127493)+0.002682/(λ−0.000974)+127.2/(λ−108)
=3.5612557+0.00844614/(λ−0.0127493)+0.00276113/(λ−0.000974)+127.2/(λ−108)
また、上式の複屈折分散のグラフを図7に示す。
【0022】
目的とする直線偏光(直線偏光成分A)の波長λを215nmとすると、この光は本実施形態にかかる偏光分光器の第1プリズムを異常光として透過するため、屈折率はn(215nm)=1.64となる。上式より、波長205nmの常光がこれと等しい屈折率をもつことが分かる。したがって、第2プリズムに入射する光は、波長215nmの直線偏光成分Aと、それと直交した偏光方向をもつ波長205nmの直線偏光成分Cとが混ざったものとなる。この直線偏光成分Cが迷光となる。
【0023】
第2プリズムでは直線偏光成分Aが常光として透過し、直線偏光成分Cが異常光として透過するため、第2プリズムの直線偏光成分Aに対する屈折率はn(215nm)=1.630であり、直線偏光成分Cに対する屈折率はn(205nm)=1.655となる。よって、本実施形態の偏光分光器では、複屈折はΔn=n(205nm)−n(215nm)=0.025となる。
一方、従来のように一のプリズムにて同一波長の常光線と異常光線とを分離する場合、波長215nmにおける光に対する常光線、異常光線の屈折率はそれぞれ、n(215nm)=1.630、n(215nm)=1.642であるから、複屈折はΔn’=n(215nm)−n(215nm)=0.012となる。よって本実施形態での複屈折Δnは、従来のものでの複屈折Δn’の約2倍となる。複屈折が約2倍になると常光と異常光との分離角、分離距離も約2倍となる。
【0024】
以上説明したように、本実施形態の偏光分光器によれば、第1プリズムの光学軸および第2プリズムの光学軸は共に各プリズム内での光路に略直交し、第2プリズムの光学軸が、第1プリズムの光学軸の方向に直角に偏光した、第1プリズムからの出力光の直線偏光成分と同じ方向になるよう設置されているため、第2プリズムにて互いに直交した直線偏光成分間の分離角が大きくなり、迷光の除去が容易となる。
また、一般に短波長の光に対してはサンプルセルなどの透過媒体の吸収が大きくなるので、十分な光量を得るために出射スリット幅を広くする必要があるが、本実施形態の偏光分光器は分離角が大きいため出射スリット幅を広くとることが可能である。そのため、本実施形態の偏光分光器によれば、真空紫外域の光でも高いスループットを得ることができる。
また、分離角が大きいことから第2プリズムから出射スリットまでの光路長を小さくとることができ、装置の小型化も達成できる。
【0025】
上記の説明では、第1モノクロメータでは異常光の屈折率分散で波長選択し、第2モノクロメータでは常光の屈折率分散で波長選択を行なった例を示したが、これを逆にして第1モノクロメータでは常光の屈折率分散で波長選択し、第2モノクロメータでは異常光の屈折率分散で波長選択を行なうようにしてもよい。
また、上記の例では第1プリズムおよび第2プリズムが共に正の一軸性結晶を用いた場合を説明したが、第1プリズムおよび第2プリズムが共に負の一軸性結晶であってもよい。すなわち、第1および第2プリズムが同種のものであればよい。
また、上記の例ではダブルモノクロメータの例を説明したが、第1モノクロメータの前段、第1モノクロメータと第2モノクロメータの間、第2モノクロメータの後段、等に通常の波長分散機能のみをもつモノクロメータ(例えば、光学軸を光路と平行に設置したプリズム等を分散素子として使用したもの)をさらに組み合わせた構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態にかかる偏光分光器の概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態にかかる偏光分光器の第1プリズムの作用の説明図である。
【図3】結晶プリズムにおける常光と異常光の屈折率の波長依存性を示す模式図である。
【図4】本発明の実施形態にかかる偏光分光器で第2プリズムの作用の説明図である。
【図5】従来の偏光分光器のプリズムの作用の説明図である。
【図6】従来の偏光文光器のプリズムの作用の説明図である。
【図7】水晶の常光と異常光の屈折率の波長依存性を示すグラフである。
【符号の説明】
【0027】
10 偏光分光器
12 第1プリズム
14 第1モノクロメータ
16 第2プリズム
18 第2モノクロメータ
20 中間スリット
22 入射スリット
24 第1コリメータ鏡
26 第1集光鏡
28 第2コリメータ鏡
30 第2集光鏡
32 出射スリット
34 第1駆動部(駆動手段)
36 第2駆動部(駆動手段)
38 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも二以上の波長分散素子を備え、単色の直線偏光の抽出を行なう偏光分光器であって、
前記二以上の波長分散素子として、波長および偏光方向に応じた方向へ光を出力する第1プリズムと、前記第1プリズムを透過した光を受け、波長および偏光方向に応じた方向へ光を出力する第2プリズムとを備え、
前記第1プリズムおよび第2プリズムは一軸性の結晶プリズムであり、
前記第1プリズムの光学軸および第2プリズムの光学軸は共に各プリズム内での光路に略直交し、
かつ第2プリズムの光学軸が、第1プリズムからの出力光のうち、第1プリズムの光学軸に直角に偏光した直線偏光成分の偏光方向を向いていることを特徴とする偏光分光器。
【請求項2】
請求項1記載の偏光分光器において、
前記第1プリズムと第2プリズムとの間の光路上に設置され、第1プリズムから所定の方向に出射された光以外の光を遮断する中間スリットと、
前記第2プリズムの後段に設置され、第2プリズムから所定の方向に出射された光以外の光を遮断する出射スリットと、を備えたことを特徴とする偏光分光器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の偏光分光器において、
前記第1プリズムおよび第2プリズムを回転駆動し、抽出する直線偏光の波長を変更する駆動手段を備えたことを特徴とする偏光分光器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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