説明

偏光撮像装置の製造方法、及び製造装置

【課題】 効率良く高精度の位置合わせが可能な偏光撮像装置の製造方法、及び製造装置を提供する。
【解決手段】 撮像素子12と、領域分割偏光フィルタ11とを貼り合わせてなり、撮像画像の偏光情報を取得可能な偏光撮像装置の製造方法において、
撮像素子12及び領域分割偏光フィルタ11のいずれかに接着剤を塗布する工程と、偏光照明手段13からの偏光照明を、領域分割偏光フィルタ11を介して撮像素子12上に照射し、撮像素子12が検出する信号が所望の光強度パターンとなるように、撮像素子12と領域分割偏光フィルタ11との配置を調整して貼り合わせる工程と、前記接着剤を硬化させて、撮像素子12と領域分割偏光フィルタ11とを固着させる工程と、を順次実施する偏光撮像装置の製造方法、及び該製造方法を実施する製造装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
撮像素子と、複数の異なる偏光成分を透過する領域を分割して有する領域分割偏光フィルタとを貼り合わせてなり、撮像画像の偏光情報を取得可能な偏光撮像装置の製造方法、及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な撮像装置における画像の撮像原理は、被写体からの光の強さ(輝度情報)を検出し、検出された輝度情報に基づいて画像を形成することによる。
一方、近年では、被写体形状や表面状態などのセンシングとして、撮像画像の偏光情報を利用する技術がある。これは、特定偏光した光、または非偏光の自然光を照射された被写体からの反射光(鏡面反射光、または拡散反射光)が、表面の向きや視点という幾何学的要因によって種々の部分偏光を呈することを利用するものである。この偏光情報の取得のためには、被写体各画素の部分偏光状態を、偏光画像として取得する必要がある。
【0003】
偏光画像を取得する技術としては、それぞれ透過軸が異なる2つ以上の偏光子の領域を有する偏光フィルタアレイを、CCDなどの撮像素子の前段に設置して偏光画像情報を取得する撮像装置によるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
このような撮像素子にフィルタアレイを配置するカラー撮像装置は、例えば、CCDやCMOSなどの撮像素子上に、カラーフィルタが形成されているカラーフィルタ基板を貼り合わせることにより製造される。撮像素子とフィルタとを貼り合わせる際の位置合わせ方法としては、例えば、撮像素子が形成されている基板のアライメントマークと、カラーフィルタ基板を構成しているガラス基板のアライメントマークとが同じ位置に来るように、交互に各々のアライメントマークを顕微鏡観察することにより行われていた。
【0004】
しかしながら、このような顕微鏡を用いた目視による位置合わせは、熟練を要する煩雑な作業であるとともに、時間と労力を要するという問題があった。また、アライメントマークの観察は、アライメントマークが形成された基板を少なくとも1枚は透過して観察するため、微細なアライメントマークを精度よく合致させることは、高分解能かつ長焦点の高価な顕微鏡を用いても難しいという問題があった。
【0005】
これに対し、顕微鏡による目視によらず、撮像素子上に貼り合わされるカラーフィルタ基板の位置を調整する方法としては、カラーフィルタ板のフィルタ部を介して受光素子アレイ上に光を照射させ、このカラーフィルタ板と受光素子アレイとを相対的に移動させながら受光素子アレイからの出力を検出して位置合わせする方法が提案されている(例えば、特許文献2、3参照)。
具体的には、カラーフィルタ板のフィルタ部を除いた部分に遮光膜を形成し、受光素子アレイ上にこのカラーフィルタ板を位置させると共に、カラーフィルタ板のフィルタ部を介して受光素子アレイ上に光を照射させ、このカラーフィルタ板と受光素子アレイとを相対的に移動させながら受光素子アレイからの出力を検出する方法が提案されている。この方法によれば、受光アレイからの最大出力が得られる時、受光素子アレイに対するカラーフィルタ板の位置合わせが完了する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献2に記載されたような位置合わせ方法を適応して撮像素子上に領域分割偏光フィルタを貼り合わせる場合、領域分割偏光フィルタにフィルタ部を除いた部分に別途遮光膜を形成する必要がある。このため、遮光膜をもたない態様の撮像装置には適用できないという問題がある。
【0007】
よって、本発明の課題は、撮像素子上に領域分割偏光フィルタを貼り合わせてなる偏光撮像装置において、撮像素子の上に領域分割偏光フィルタを貼り合わせる場合に、顕微鏡を用いてアライメントマークを合致させることなく、またフィルタの周囲に遮光膜を形成することなく、効率良く高精度の位置合わせが可能な偏光撮像装置の製造方法、及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る偏光撮像装置の製造方法、及び製造装置は、以下のとおりである。
〔1〕 光信号を電気信号に変換する撮像素子と、複数の異なる偏光成分をそれぞれ透過させる複数の領域が所定のパターンで配列されてなる領域分割偏光フィルタとを貼り合わせてなり、撮像画像の偏光情報を取得可能な偏光撮像装置の製造方法において、
前記撮像素子及び前記領域分割偏光フィルタのいずれかに接着剤を塗布する工程と、
偏光照明手段からの偏光照明を、前記領域分割偏光フィルタを介して前記撮像素子上に照射し、前記撮像素子が検出する信号が所望の光強度パターンとなるように、前記撮像素子と前記領域分割偏光フィルタとの配置を調整して貼り合わせる工程と、
前記接着剤を硬化させて、前記撮像素子と前記領域分割偏光フィルタとを固着させる工程と、を順次実施することを特徴とする偏光撮像装置の製造方法である。
〔2〕 前記偏光照明の偏光方向が、前記領域分割偏光フィルタの分割された少なくとも1つの領域において、偏光成分が透過する偏光方向と直交することを特徴とする前記〔1〕に記載の偏光撮像装置の製造方法である。
〔3〕 前記撮像素子と前記領域分割偏光フィルタとを貼り合わせる工程の前に、前記撮像素子と前記領域分割偏光フィルタとを接着する基準面の平行出し工程を実施することを特徴とする前記〔1〕または〔2〕に記載の偏光撮像装置の製造方法である。
〔4〕 光信号を電気信号に変換する撮像素子と、複数の異なる偏光成分をそれぞれ透過させる複数の領域が所定のパターンで配列されてなる領域分割偏光フィルタとを貼り合わせてなり、撮像画像の偏光情報を取得可能な偏光撮像装置の製造装置であって、
光源及び偏光フィルタを有する偏光照明手段と、前記領域分割偏光フィルタを支持するチャック手段と、前記領域分割偏光フィルタの位置を調整する位置調整手段と、前記撮像素子を支持するチャック手段と、前記撮像素子の位置を調整する位置調整手段と、接着剤分注手段と、接着剤硬化手段と、前記撮像素子が検出した信号をモニターする信号検出手段と、前記領域分割偏光フィルタ及び前記撮像素子の位置調整を制御する位置調整制御手段と、を備え、前記〔1〕に記載の偏光撮像装置の製造方法を実施することを特徴とする偏光撮像装置の製造装置である。
〔5〕 前記撮像素子と前記領域分割偏光フィルタとを接着する基準面の平行出しを実施する平行出し手段をさらに備えることを特徴とする前記〔4〕に記載の偏光撮像装置の製造装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果として、請求項1の発明によれば、光信号を電気信号に変換する撮像素子と、複数の異なる偏光成分をそれぞれ透過させる複数の領域が所定のパターンで配列されてなる領域分割偏光フィルタとを貼り合わせてなり、撮像画像の偏光情報を取得可能な偏光撮像装置の製造方法において、前記撮像素子及び前記領域分割偏光フィルタのいずれかに接着剤を塗布する工程と、偏光照明手段からの偏光照明を、前記領域分割偏光フィルタを介して前記撮像素子上に照射し、前記撮像素子が検出した信号が所望の光強度パターンとなるように、前記撮像素子と前記領域分割偏光フィルタとの配置を調整して貼り合わせる工程と、前記接着剤を硬化させて、前記撮像素子と前記領域分割偏光フィルタとを固着させる工程と、を順次実施するため、効率良く高精度に前記撮像素子と前記領域分割偏光フィルタとの位置合わせが可能である。
請求項2の発明によれば、請求項1に記載の偏光撮像装置の製造方法において、前記偏光照明の偏光方向が、前記領域分割偏光フィルタの分割された少なくとも1つの領域において、偏光成分が透過する偏光方向と直交するため、より高精度に前記撮像素子と前記領域分割偏光フィルタとの位置合わせが可能である。
請求項3の発明によれば、請求項1または2に記載の偏光撮像装置の製造方法において、前記撮像素子と前記領域分割偏光フィルタとを貼り合わせる工程の前に、前記撮像素子と前記領域分割偏光フィルタとを接着する基準面の平行出し工程を実施するため、極めて高精度に前記撮像素子と前記領域分割偏光フィルタとの位置合わせが可能である。
請求項4の発明によれば、光信号を電気信号に変換する撮像素子と、複数の異なる偏光成分をそれぞれ透過させる複数の領域が所定のパターンで配列されてなる領域分割偏光フィルタとを貼り合わせてなり、撮像画像の偏光情報を取得可能な偏光撮像装置の製造装置であって、光源及び偏光フィルタを有する偏光照明手段と、前記領域分割偏光フィルタを支持するチャック手段と、前記領域分割偏光フィルタの位置を調整する位置調整手段と、前記撮像素子を支持するチャック手段と、前記撮像素子の位置を調整する位置調整手段と、接着剤分注手段と、接着剤硬化手段と、前記撮像素子が検出した信号をモニターする信号検出手段と、前記領域分割偏光フィルタ及び前記撮像素子の位置調整を制御する位置調整制御手段と、を備え、請求項1に記載の偏光撮像装置の製造方法を実施する製造装置であるため、前記撮像素子と前記領域分割偏光フィルタとの配置精度に優れた偏光撮像装置を効率よく製造することができる。
請求項5の発明によれば、請求項4に記載の偏光撮像装置の製造装置において、前記撮像素子と前記領域分割偏光フィルタとを接着する基準面の平行出しを実施する平行出し手段をさらに備えるため、前記撮像素子と前記領域分割偏光フィルタとの配置精度に極めて優れた偏光撮像装置を効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の偏光撮像装置の製造装置の構成の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の偏光撮像装置の製造装置の構成の他の例を示す要部概略図である。
【図3】本発明の偏光撮像装置の製造方法の工程を示すフローチャートである。
【図4】撮像素子へ接着剤を塗布する流れを説明する図である。
【図5】撮像素子と領域分割偏光フィルタとの接着する基準面の平行出し調整を説明する図である。
【図6】撮像素子における偏光画像情報と、領域分割偏光フィルタにおける偏光情報との配置関係を示す模式図である。
【図7】無偏光な光を照射した場合の撮像素子の検出信号を示す図である。
【図8】特定の偏光方向に設定された光を照射した場合の撮像素子の検出信号を示す図である。
【図9】特定の偏光方向に設定された光を照射した場合の撮像素子の検出信号を示す図である。
【図10】撮像素子と領域分割偏光フィルタとを貼り合わせたときのギャップ状態と、撮像素子の検出信号との対応を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る偏光撮像装置の製造方法、及び製造装置について図面を参照して説明する。なお、本発明は以下に示す実施例の実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0012】
〔製造装置〕
図1は、本発明の偏光撮像装置の製造装置の構成の一例を示す概略図である。
図1に示すように、製造装置は、光信号を電気信号に変換する撮像素子12と、複数の異なる偏光成分をそれぞれ透過させる複数の領域が所定のパターンで配列されてなる領域分割偏光フィルタ11とを、所望の配置調整をして貼り合わせるための装置であり、偏光照明手段13と、領域分割偏光フィルタチャック手段14と、領域分割偏光フィルタ位置調整手段15と、撮像素子チャック手段16と、撮像素子位置調整手段17と、接着剤分注(ディスペンス)手段20と、接着剤硬化照明手段21と、撮像素子12からの検出信号をモニターする信号検出手段18と、撮像素子12および領域分割偏光フィルタ11の位置調整を制御する位置調整制御手段19とから構成される。
【0013】
偏光照明手段13は、所望の偏光方向を設定して偏光照明できればよく、光源13a、偏光フィルタ13b、及びレンズ13cで構成される。
光源13aとしては、例えば、LEDやハロゲンランプなどのインコヒーレントな光源、偏光フィルタ13bとしては、例えば、ワイヤーグリッド偏光子やPVA偏光フィルムなどの一般的な偏光板、レンズ13cとしては、例えば、コリメートレンズやF値などの可変できる撮像レンズなどが挙げられる。
【0014】
領域分割偏光フィルタのチャック手段14、及び撮像素子のチャック手段16としては、例えば、ワークサイズに合わせた機械チャック、吸着チャック、静電チャックなどが挙げられる。
【0015】
領域分割偏光フィルタのチャック手段14は、位置調整時にフィルタ部を透過させる必要があるため、領域分割偏光フィルタ11の横端部を吸着する構造であることが好ましいが、透明な部材で領域分割偏光フィルタ11を吸着する構造であって、位置調整における信号検出が可能な透過領域があれば、領域分割偏光フィルタ11の中央部を吸着する構造であってもよい。
【0016】
撮像素子のチャック手段16は、撮像素子12のPCB基板を固定できればよく、ネジ固定手段であってもよい。ただし、台座はチップの干渉を防ぐためにザグリ加工したり、センサダイにひずみがかからないように平面度やネジ固定のトルクの管理をしたりすることが好ましい。
【0017】
領域分割偏光フィルタ位置調整手段15、及び撮像素子位置調整手段17は、サブミクロンで調整可能な6軸(X、Y、Z、θ、α、β)ステージで構成される。
【0018】
接着剤分注手段20は、撮像素子12及び領域分割偏光フィルタ11のいずれかに、微量の接着剤を塗布可能なディスペンサーであればよく、接着剤の滴下量を微調整するために、温度調節機構を備えることが好ましい。なお、接着剤22としては、光硬化性の接着剤が好ましい。
接着剤硬化照明手段21は、前記光硬化性の接着剤を硬化させるための照明であればよく、例えば、一般的な紫外線ランプが挙げられるが、LED紫外線光源のように発熱が少ないものが好ましい。
【0019】
撮像素子の信号検出手段18は、撮像素子12を駆動する回路からなり、USBやイーサネット(登録商標)でPCなどに接続することで画像表示を可能とする。また、撮像素子12のPCB基板に組み込まれたFPG化された部材としてもよい。
【0020】
撮像素子12及び領域分割偏光フィルタ11の位置調整を制御する位置調整制御手段19は、信号検知手段18からの信号を解析し、各ワークの位置調整手段(領域分割偏光フィルタ位置調整手段15及び撮像素子位置調整手段17)を制御するものであり、例えば、接続されたPCやステージコントローラーからなる。
【0021】
図2は、本発明の偏光撮像装置の製造装置の構成の他の例の一部を示す概略図である。
図2に示す態様の製造装置は、図1の製造装置に対し、撮像素子12と領域分割偏光フィルタ11との接着する基準面の平行出しをする平行出し手段30を追加したものである。
平行出し手段30は、レーザーとビームスプリッターとの組み合わせやオートコリメーターなどで構成される。
【0022】
〔製造方法〕
本発明の偏光撮像装置の製造方法は、上述の本発明の製造装置を用いて、光信号を電気信号に変換する撮像素子12と、複数の異なる偏光成分をそれぞれ透過させる複数の領域が所定のパターンで配列されてなる領域分割偏光フィルタ11とを貼り合わせてなり、撮像画像の偏光情報を取得可能な偏光撮像装置の製造方法であって、撮像素子12及び領域分割偏光フィルタ11のいずれかに接着剤を塗布する工程と、偏光照明手段13からの偏光照明を、領域分割偏光フィルタ11を介して撮像素子12上に照射し、撮像素子12が検出した信号が所望の光強度パターンとなるように、撮像素子12と領域分割偏光フィルタ11との配置を調整して貼り合わせる工程と、前記接着剤を硬化させて、撮像素子12と領域分割偏光フィルタ11とを固着させる工程と、を順次実施する方法である。なお、撮像素子12と領域分割偏光フィルタ11とを貼り合わせる工程の前に、接着する基準面の平行出し工程を実施してもよい。
また、偏光照明手段13からの変更照明の偏光方向が、領域分割偏光フィルタ11の分割された少なくとも1つの領域において、偏光成分が透過する偏光方向と直交することが好ましい。
【0023】
図3に、本発明の偏光撮像装置の製造方法のフローを示す。
図3に示すように、撮像素子12及び領域分割偏光フィルタ11のいずれかに接着剤を塗布し(S1)、平行出しを行うか否かを判断し(S2)、必要に応じて撮像素子12と領域分割偏光フィルタ11との接着する基準面の平行出しを行い(S3)、次いで偏光照明手段13からの偏光照明を、領域分割偏光フィルタ11を介して撮像素子12上に照射して、位置調整を行う(S4)。撮像素子12が検出した信号を確認し(S5)、撮像素子12と領域分割偏光フィルタ11とが所望の配置となるよう、領域分割偏光フィルタ11によるパターンのコントラストが最大となるよう調整し(S6)、コントラストが最大になれば、撮像素子12と領域分割偏光フィルタ11とを貼り合わせる(S7)。さらに、撮像素子12が検出した信号を確認し(S8)、撮像素子12と領域分割偏光フィルタ11とが所望の配置となるよう、領域分割偏光フィルタ11によるパターンの全領域におけるコントラストが均等かつ最大となるよう調整し(S9)、全領域のコントラストが均等かつ最大になれば、前記接着剤を硬化させて、撮像素子12と領域分割偏光フィルタ11とを固着させる(S10)。
以下、各ステップについて説明する。
【0024】
撮像素子12及び領域分割偏光フィルタ11のいずれかに接着剤を塗布するステップ(S1)について説明する。
接着剤は、撮像素子12及び領域分割偏光フィルタ11のいずれにも塗布可能であるが、図1及び2に示すように、領域分割偏光フィルタ11を上から貼り合わせる場合、領域分割偏光フィルタ11へ接着剤塗布のためには上下反転する必要があるため、撮像素子12へ接着剤を塗布するのが容易である。撮像素子12へ接着剤を塗布する流れの例を、図4に示す。
図4に示すように、撮像素子位置調整手段17が、撮像素子チャック手段16とともに撮像素子12を、接着剤分注手段20の方向へ移動させる(A)。次いで、塗布位置において接着剤分注手段20は接着剤22を撮像素子12上に適量塗布する(B)。塗布完了後、撮像素子位置調整手段17は、撮像素子チャック手段16とともに撮像素子12を、元の位置へ移動させる(C)。
なお、接着剤分注手段20が、撮像素子12の方向へ移動する態様であってもよい。
【0025】
撮像素子12と領域分割偏光フィルタ11とが接着するそれぞれの基準面の平行出しを行うステップ(S3)について説明する。平行出し調整の説明を図5に示す。
図5に示すように、平行出し調整は、平行出し手段30からの光を、撮像素子12の貼り合わせ基準面にのみ照射し、撮像素子12のあおり(基準平行)を調整する(A)。次に、平行出し手段30からの光を、領域分割偏光フィルタ11の貼り合わせ基準面に照射し、領域分割偏光フィルタ11のあおり(基準平行)を調整する(B)。
このように、撮像素子12と領域分割偏光フィルタ11とが、同じ平行出し手段30によりあおり(基準平行)調整されて、平行出しができているため、以降の位置調整が容易となる。
【0026】
次に、撮像素子12と領域分割偏光フィルタ11との位置調整(S4)として、撮像素子12が検出した信号を確認し(S5)、撮像素子12と領域分割偏光フィルタ11とが所望の配置となるよう、領域分割偏光フィルタ11によるパターンのコントラストが最大となるよう調整(S6)するステップについて説明する。
図6〜図9は、撮像素子12における偏光画像情報と、領域分割偏光フィルタ11における偏光情報との配置関係を模式的に示したものである。
図6に示すように、撮像素子12における1つの偏光画像情報P(偏光画像の1画素)は、領域分割偏光フィルタ11における4つ偏光情報a、b、c、dに基づいて生成される。
【0027】
図7に、撮像素子12と領域分割偏光フィルタ11との位置調整において、無偏光な光を照射した場合の撮像素子の検出信号43を示す。照射した光は無偏光なので、領域分割偏光フィルタ11の各領域を透過した光は、全て同じ強度となるため、図7(B)に示すように、撮像素子の検出信号43は全て同じであり、領域分割偏光フィルタ11のパターン配置が分からない。
【0028】
これに対し、図8は、撮像素子12と領域分割偏光フィルタ11との位置調整において、特定の偏光方向(ここでは紙面の上下方向)に設定された光を照射した場合の撮像素子の検出信号43を示す。照射した光は偏光した光なので、領域分割偏光フィルタ11の各領域を透過した光の強度は、各領域における偏光(透過)特性の強度となる。各領域はそれぞれ、照射偏光方向と透過方向が平行なa領域、直交するd領域、左右に45°傾斜しているb領域及びc領域である。
図8(B)に示すように、撮像素子の検出信号43の領域分割パターンは、照射偏光方向と透過軸方向が平行であるa領域は透過率100%の強度信号(白色)、透過軸方向が直交するd領域は透過率0%の強度信号(黒色)、透過軸方向が45°傾斜しているb、c領域は透過率50%の強度信号(灰色)となっている。(なお、透過率は、実際には損失があるが、説明を簡単にするために理想値を示した。)
【0029】
また、図9は、図8と同様に撮像素子12と領域分割偏光フィルタ11との位置調整において、特定の偏光方向(ここでは紙面の上下方向)に設定された光を照射した場合の検出信号を示したものであるが、図9では、撮像素子12と領域分割偏光フィルタ11との配置が所望の配置からずれている場合の領域分割パターンを示している。
このように、撮像素子の検出信号43は、領域分割偏光フィルタ11の偏光(透過)特性及びその配置に対応した検出信号の領域分割パターンとなっているため、予め分かっている領域分割偏光フィルタ11の特性から、理想の配置を読み取ることができ、所望の前記理想の配置(所望の光強度パターン)となるように撮像素子12と領域分割偏光フィルタ11とを位置調整することができる。
【0030】
図6〜図9に示したような、4つの偏光情報a、b、c、dを有する領域分割偏光フィルタ11を配置する場合、前記理想の配置は、領域分割パターンの各領域の光強度(白黒)のコントラストが高い配置である。撮像素子の検出信号43において、照射偏光方向に対し、偏光成分が透過する方向と平行な領域と直交する領域とのコントラストが最も高くなる配置とすることで、撮像素子12と領域分割偏光フィルタ11を非常に精度よく配置することが出来る。
【0031】
上述のステップで配置を調整した後、撮像素子12と領域分割偏光フィルタ11とを貼り合わせ(S7)、さらに、撮像素子12が検出した信号を確認し(S8)、撮像素子12と領域分割偏光フィルタ11とが所望の配置となるよう、領域分割偏光フィルタ11によるパターンの全領域におけるコントラストが均等かつ最大となるよう調整(S9)するステップについて説明する。
領域分割偏光フィルタ11の各領域への迷光を防ぐためには、撮像素子12と領域分割偏光フィルタ11との貼り合わせ間隔(ギャップ)が小さい方がよい。
図10に、撮像素子12と領域分割偏光フィルタ11とを、上述のステップS6において理想的な配置となるよう調整した後に貼り合わせた状態を模式的に示す。
【0032】
図10(A)は、理想的な配置のまま、撮像素子12と領域分割偏光フィルタ11とのギャップも非常に小さく貼り合わせた状態であり、撮像素子の検出信号43は、領域分割パターンの全領域において各領域のコントラストが均等かつ高くなっている。
これに対し、図10(B)は、撮像素子12と領域分割偏光フィルタ11とのギャップが非常に大きく貼り合わさっている状態であり、領域分割パターンの各領域への迷光のために、撮像素子の検出信号43は全領域でコントラストが低くなっている。
図10(C)は、領域分割偏光フィルタ11が撮像素子12に対して傾斜して貼り合わさった状態であり、撮像素子12と領域分割偏光フィルタ11とのギャップが小さい領域ではコントラストは高くなっているが、ギャップが大きい領域ではコントラストは低くなっている。すなわち、撮像素子の検出信号43から、撮像素子12と領域分割偏光フィルタ11との貼り合わせ間隔を読み取ることができ、撮像素子の検出信号43において、照射偏光方向に対し、偏光成分の透過軸が平行な領域と直交する領域とのコントラストが全領域において均等かつ最大となるよう配置とすることで、撮像素子12と領域分割偏光フィルタ11との間隔が極めて小さくなるように貼り合わせることが出来る。
【0033】
上述のステップにより全領域のコントラストが均等かつ最大になるよう調整した後、接着剤22を硬化させて、撮像素子12と領域分割偏光フィルタ11とを固着させるステップ(S10)について説明する。
貼り合わされた撮像素子12及び領域分割偏光フィルタ11の接着部分に対し、UV照射することにより、塗布された接着剤を硬化させ、撮像素子12及び領域分割偏光フィルタ11を固着させる。
【0034】
接着剤硬化手段21からのUV照射は、斜め方向から接着部分への直接照射としても、偏光照明手段13と交換してフィルタ上部から照射してもよい。UV照射時に領域分割偏光フィルタ11や撮像素子12のチャック手段14及び16とのチャック部がUV光を遮る場合は、チャックしたままプレ硬化させた後、チャックをはずした状態で本硬化することが好ましい。
【0035】
以上のように、撮像素子12と領域分割偏光フィルタ11とを貼り合わせてなる偏光撮像装置の製造において、偏光照明を領域分割偏光フィルタ11を介して撮像素子12上に照射させ、撮像素子の検出信号43の領域分割パターンのコントラストが所望の光強度パターンとなるように、撮像素子12と領域分割偏光フィルタ11との配置を調整して貼り合わせ、固着させることにより、偏光撮像装置における撮像素子12と領域分割偏光フィルタ11との配置精度を向上させることができるとともに、効率よく製造することができる。
【符号の説明】
【0036】
11 領域分割偏光フィルタ
12 撮像素子
13 偏光照明手段
13a 光源
13b 偏光フィルタ
13c レンズ
14,16 チャック手段
15,17 位置調整手段
18 信号検出手段
19 位置調整制御手段
20 接着剤分注手段
21 接着剤硬化照明手段
30 平行出し手段
41 偏光情報
42 偏光画像情報
43 撮像素子の検出信号
【先行技術文献】
【特許文献】
【0037】
【特許文献1】特開2007-086720号公報
【特許文献2】特開平2−239769号公報
【特許文献3】特開平9−237885号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光信号を電気信号に変換する撮像素子と、複数の異なる偏光成分をそれぞれ透過させる複数の領域が所定のパターンで配列されてなる領域分割偏光フィルタとを貼り合わせてなり、撮像画像の偏光情報を取得可能な偏光撮像装置の製造方法において、
前記撮像素子及び前記領域分割偏光フィルタのいずれかに接着剤を塗布する工程と、
偏光照明手段からの偏光照明を、前記領域分割偏光フィルタを介して前記撮像素子上に照射し、前記撮像素子が検出する信号が所望の光強度パターンとなるように、前記撮像素子と前記領域分割偏光フィルタとの配置を調整して貼り合わせる工程と、
前記接着剤を硬化させて、前記撮像素子と前記領域分割偏光フィルタとを固着させる工程と、を順次実施することを特徴とする偏光撮像装置の製造方法。
【請求項2】
前記偏光照明の偏光方向が、前記領域分割偏光フィルタの分割された少なくとも1つの領域において、偏光成分が透過する偏光方向と直交することを特徴とする請求項1に記載の偏光撮像装置の製造方法。
【請求項3】
前記撮像素子と前記領域分割偏光フィルタとを貼り合わせる工程の前に、前記撮像素子と前記領域分割偏光フィルタとを接着する基準面の平行出し工程を実施することを特徴とする請求項1または2に記載の偏光撮像装置の製造方法。
【請求項4】
光信号を電気信号に変換する撮像素子と、複数の異なる偏光成分をそれぞれ透過させる複数の領域が所定のパターンで配列されてなる領域分割偏光フィルタとを貼り合わせてなり、撮像画像の偏光情報を取得可能な偏光撮像装置の製造装置であって、
光源及び偏光フィルタを有する偏光照明手段と、前記領域分割偏光フィルタを支持するチャック手段と、前記領域分割偏光フィルタの位置を調整する位置調整手段と、前記撮像素子を支持するチャック手段と、前記撮像素子の位置を調整する位置調整手段と、接着剤分注手段と、接着剤硬化手段と、前記撮像素子が検出した信号をモニターする信号検出手段と、前記領域分割偏光フィルタ及び前記撮像素子の位置調整を制御する位置調整制御手段と、を備え、請求項1に記載の偏光撮像装置の製造方法を実施することを特徴とする偏光撮像装置の製造装置。
【請求項5】
前記撮像素子と前記領域分割偏光フィルタとを接着する基準面の平行出しを実施する平行出し手段をさらに備えることを特徴とする請求項4に記載の偏光撮像装置の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−156431(P2012−156431A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16137(P2011−16137)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】