説明

偏光板の製造方法、偏光板、光学フィルムおよび画像表示装置

【課題】 偏光子としてポリビニルアルコール系偏光子を用い、透明保護フィルムとして低透湿度の材料を用い、これらを水系接着剤により貼り合せる偏光板の製造方法であって、偏光度の良好な偏光板を製造することができる方法を提供すること。
【解決手段】 偏光子の少なくとも一方の面に、接着剤により透明保護フィルムを貼り合せる偏光板の製造方法であって、偏光子がポリビニルアルコール系偏光子であり、透明保護フィルムは、透湿度が150g/m2/24h以下であり、接着剤が水系接着剤であり、前記偏光子と前記透明保護フィルムを前記接着剤により貼り合せる前に、偏光子に送風工程を施し、偏光子の表面の水との接触角を20°以上にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板の製造方法に関する。また本発明は当該製造方法により得られた偏光板に関する。当該偏光板はこれ単独で、またはこれを積層した光学フィルムとして液晶表示装置(以下、LCDと略す)、エレクトロミネッセンス表示装置(以下、ELDと略す)等のフラットパネルディスプレイ、PDP等の画像表示装置を形成しうる。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイ用偏光板、特にLCDに使用されている偏光板は、一般に、主にポリビニルアルコール系フィルムを原材料としている。また、偏光板は、LCDとして十分な光学特性を得るため、ヨウ素等の二色性材料を含有したポリビニルアルコール系フィルムを延伸し、これに透明保護フィルムを貼り合せて作製したものが好ましく用いられている。前記ポリビニルアルコール系偏光子は延伸により作製されるため、収縮し易い。またPVA系フィルムは親水性ポリマーを使用していることから、特に加湿条件下においては非常に変形し易い。またフィルム自体の機械的強度が弱いため、フィルムが裂けたりする問題がある。そのため、偏光子の両側または片側には透明保護フィルムを貼り合わせて、強度を補った偏光板が用いられている。前記偏光板は、偏光子と透明保護フィルムを接着剤により貼り合わせることにより製造されている。トリアセチルセルロースとポリビニルアルコール系偏光子との接着には、主に水溶液である、ポリビニルアルコール系接着剤が用いられている。
【0003】
LCDの高精細化、高機能化にともない画面の均一性、品位の向上が求められている。また使用環境の多様化により高耐熱性、耐湿熱性、耐水性等も求められている。このような、LCDの要求特性からLCD用偏光板には、偏光子としての高耐久性が求められている。
【0004】
前記偏光板に用いられる透明保護フィルムとしては、主にトリアセチルセルロースが用いられている。しかしながら、トリアセチルセルロースは耐湿熱性が十分でない。またトリアセチルセルロースフィルムは斜め方向の入射光に対して位相差を生じる。かかる位相差は、近年、液晶ディスプレイの大型化が進むにしたがい、顕著に視野角特性に影響を及ぼす。上記の問題を解決するために、透明保護フィルムの材料としてトリアセチルセルロースの代わりに環状オレフィン系樹脂が提案されている。環状オレフィン系樹脂は透湿度が低く、また斜め方向の位相差がほとんど無い。
【0005】
しかし、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、環状オレフィン系樹脂等の透湿度が低い透明保護フィルムとポリビニルアルコール系偏光子を貼り合せて得られる偏光板の偏光度は、トリアセチルセルロースフィルムを透明保護フィルムとして用いた偏光板の偏光度に比べて低下してしまう。
【0006】
環状オレフィン系樹脂を用いた透明保護フィルムとポリビニルアルコール系偏光子とを接着する方法として、例えば、アクリル系粘着剤層を介して接着する方法が提案されている(特許文献1)。しかしながら、この方法は加熱圧着が必要であり、加熱時間も長いためポリビニルアルコール偏光子が変色してしまい、偏光度が著しく低下してしまうという問題点があった。さらには、長時間の加熱が必要なため生産効率が低く、フィルムが変形してしまうという問題がある。
【特許文献1】特開平5−212828号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、偏光子としてポリビニルアルコール系偏光子を用い、透明保護フィルムとして低透湿度の材料を用い、これらを水系接着剤により貼り合せる偏光板の製造方法であって、偏光度の良好な偏光板を製造することができる方法を提供することを目的とする。
【0008】
また本発明は当該製造方法により得られた偏光板を提供することを目的とする。また当該偏光板を積層した光学フィルム、さらには当該偏光板、光学フィルムを用いたLCD、ELD等の画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す偏光板の製造方法により前記目的に達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は以下の通りである。
【0010】
すなわち本発明は、偏光子の少なくとも一方の面に、接着剤により透明保護フィルムを貼り合せる偏光板の製造方法であって、
偏光子がポリビニルアルコール系偏光子であり、
透明保護フィルムは、透湿度が150g/m2/24h以下であり、
接着剤が水系接着剤であり、
前記偏光子と前記透明保護フィルムを前記接着剤により貼り合せる前に、偏光子に送風工程を施し、偏光子の表面の水との接触角を20°以上にすることを特徴とする偏光板の製造方法、に関する。
【0011】
前記偏光板の製造方法において、接着剤層の厚みが、30〜200nmであることが好ましい。
【0012】
前記偏光板の製造方法において、送風工程は、風速2〜10m/sにて、偏光子に送風することにより行うことが好ましい。
【0013】
前記偏光板の製造方法において、送風工程は、得られる偏光子の水分率が、10〜40重量%になるように制御することが好ましい。
【0014】
また本発明は、前記製造方法により得られた偏光板、に関する。
【0015】
また本発明は、前記偏光板が、少なくとも1枚積層されていることを特徴とする光学フィルム、に関する。
【0016】
また本発明は、前記偏光板または光学フィルムが用いられていることを特徴とする画像表示装置、に関する。
【発明の効果】
【0017】
従来の偏光板の製造方法として、偏光子としてポリビニルアルコール系偏光子を用い、透明保護フィルムとして低透湿度の材料を用いて、これらをポリビニルアルコール系接着剤等の水系接着剤により貼り合わせて偏光板を製造する際には、透明保護フィルムが低透湿度であることから、貼り合せの際に、水系接着剤が偏光子側に染み込んで、偏光子の内部まで水系接着剤が入り込み、その結果として、ポリビニルアルコール系偏光子におけるヨウ素配向が崩れて、得られる偏光板は、透明保護フィルムとしてトリアセチルセルロースフィルム等を用いた偏光板に比べて、偏光度等の光学特性が低下すると考えた。
【0018】
そこで、上記本発明の偏光板の製造方法では、偏光子としてポリビニルアルコール系偏光子を用い、透明保護フィルムとして低透湿度の材料を用いて、これらをポリビニルアルコール系接着剤等の水系接着剤により貼り合わせる前に、偏光子に送風工程を施すことにより、偏光子の表面を十分に乾燥させて、偏光子の表面の水との接触角を20°以上にすることで、水系接着剤中の水成分の偏光子への浸透を防いでいる。このようにして、本発明の製造方法によれば、透明保護フィルムとして低透湿度の材料を用いた場合であっても、ポリビニルアルコール系偏光子の吸湿性を抑制することができ、光学特性の良好な偏光板が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の製造方法で用いる偏光子は、ポリビニルアルコール系偏光子である。当該偏光子としては、たとえば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性材料を吸着させて一軸延伸したもの等があげられる。これらのなかでもポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素、二色性染料などの二色性物質からなる偏光子が好適である。これら偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に、5〜80μm程度である。
【0020】
ポリビニルアルコール系フィルムとしては、ポリビニルアルコール系樹脂を、水または有機溶媒に溶解した原液を流延成膜する流延法、キャスト法、押出法等の任意の方法で成膜されたものを適宜使用することができる。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は100〜5000程度が好ましく、1400〜4000がより好ましい。
【0021】
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素等で染色し一軸延伸した偏光子は、たとえば、以下の方法により作成できる。
【0022】
染色工程においては、ポリビニルアルコール系フィルムを、ヨウ素が添加された20〜70℃程度の染色浴に1〜20分間程度浸漬し、ヨウ素を吸着させる。染色浴中のヨウ素濃度は、通常水100重量部あたり0.1〜1重量部程度である。染色浴中には、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタン等のヨウ化物等の助剤を0.02〜20重量部程度、好ましくは2〜10重量部添加してもよい。これら添加物は、染色効率を高める上で特に好ましい。また水溶媒以外に、水と相溶性のある有機溶媒が少量含有されていてもよい。
【0023】
またポリビニルアルコール系フィルムは、ヨウ素または二色性染料含有水溶液中で染色させる前に、水浴等で20〜60℃程度で0.1〜10分間程度膨潤処理されていてもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。
【0024】
染色処理したポリビニルアルコール系フィルムは、必要に応じて架橋することができる。架橋処理を行う架橋水溶液の組成は、通常水100重量部あたりホウ酸、ホウ砂、グリオキザール、グルタルアルデヒド等の架橋剤を単独又は混合して1〜10重量部程度である。架橋剤の濃度は、光学特性とポリビニルアルコール系フィルムに発生する延伸力により生じる偏光板収縮のバランスを考慮して決定される。
【0025】
架橋浴中には、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタン等のヨウ化物等の助剤を0.05〜15重量%、好ましくは0.5〜8重量%添加してもよい。これら添加剤は、偏光子の面内の均一な特性を得る点で特に好ましい。水溶液の温度は通常20〜70℃程度、好ましくは40〜60℃の範囲である。浸漬時間は、特に限定されないが、通常1秒〜15分間程度、好ましくは5秒〜10分間である。水溶媒以外に、水と相溶性のある有機溶媒が少量含有されていてもよい。
【0026】
ポリビニルアルコール系フィルムの総延伸倍率は元長の3〜7倍程度、好ましくは5〜7倍である。総延伸倍率が7倍を超える場合はフィルムが破断しやすくなる。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色または架橋しながら延伸してもよし、また延伸してからヨウ素で染色してもよい。延伸方法や延伸回数等は、特に制限されるものではなく、いずれか一工程でのみ行ってもよい。また、同一工程で複数回行ってもよい。
【0027】
またヨウ素吸着配向処理を施したポリビニルアルコール系フィルムには、さらに水温10〜60℃程度、好ましくは30〜40℃程度、濃度0.1〜10質量%のヨウ化カリウム等のヨウ化物水溶液に1秒〜1分間浸漬する工程を設けることができる。ヨウ化物水溶液中には、硫酸亜鉛、塩化亜鉛物等の助剤を添加してもよい。また、ヨウ素吸着配向処理を施したポリビニルアルコール系フィルムには、水洗工程、乾燥工程を設けることができる。
【0028】
本発明の製造方法で用いる透明保護フィルムは、透湿度が150g/m2/24h以下の低透湿度の材料を用いる。前記透湿度は0〜140g/m2/24hであることが好ましく、さらには0〜120g/m2/24hであることが好ましい。低透湿度の材料としては、たとえば、ポリカーボネート系ポリマー;アリレート系ポリマー;ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー;ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、シクロ系ないしはノルボルネン構造を有する環状オレフィン系樹脂、またはこれらの混合体を用いることができる。
【0029】
また、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルム、たとえば、(A)側鎖に置換および/または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、(B)側鎖に置換および/または非置換フェニルならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物があげられる。具体例としてはイソブチレンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体とアクリロニトリル・スチレン共重合体とを含有する樹脂組成物のフィルムがあげられる。フィルムは樹脂組成物の混合押出品などからなるフィルムを用いることができる。また、ラクトン環含有アクリル系樹脂(特開2005‐146084号公報に記載の樹脂)を用いることができる。
【0030】
前記低透湿度の材料のなかでも、環状オレフィン系樹脂が好ましい。環状オレフィン系樹脂は一般的な総称であり、たとえば、特開平3−14882号公報、特開平3−122137号公報等に記載されている。具体的には環状オレフィンの開環重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレン等のα−オレフィンとのランダム共重合体、またこれらを不飽和カルボン酸やその誘導体等で変性したグラフト変性体等が例示できる。さらには、これらの水素化物があげられる。環状オレフィンは特に限定するものではないが、例えば、ノルボルネン、テトラシクロドデセンや、それらの誘導体が例示できる。商品としては、日本ゼオン(株)製のゼオネックス、ゼオノア、JSR(株)製のアートン、TICONA社製のトーパス等があげられる。
【0031】
透明保護フィルムの厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性、薄層性などの点より1〜500μm程度である。特に1〜300μmが好ましく、5〜200μmがより好ましい。
【0032】
透明保護フィルムの偏光子と接着する面には、易接着処理を施すことができる。易接着処理としては、プラズマ処理、コロナ処理等のドライ処理、アルカリ処理等の化学処理、易接着剤層を形成するコーティング処理等があげられる。これらのなかでも、易接着剤層を形成するコーティング処理が好適である。易接着剤層の形成には、ポリオール樹脂、ポリカルボン酸樹脂、ポリエステル樹脂等の各種の易接着材料を使用することができる。なお、易接着剤層の厚みは、通常、0.01〜10μm程度、さらには0.05〜5μm程度、特に0.1〜1μm程度とするのが好ましい。
【0033】
前記透明保護フィルムの偏光子を接着させない面には、ハードコート層や反射防止処理、スティッキング防止や、拡散ないしアンチグレアを目的とした処理を施したものであってもよい。
【0034】
ハードコート処理は偏光板表面の傷付き防止などを目的に施されるものであり、例えばアクリル系、シリコーン系などの適宜な紫外線硬化型樹脂による硬度や滑り特性等に優れる硬化皮膜を透明保護フィルムの表面に付加する方式などにて形成することができる。反射防止処理は偏光板表面での外光の反射防止を目的に施されるものであり、従来に準じた反射防止膜などの形成により達成することができる。また、スティッキング防止処理は隣接層との密着防止を目的に施される。
【0035】
またアンチグレア処理は偏光板の表面で外光が反射して偏光板透過光の視認を阻害することの防止等を目的に施されるものであり、例えばサンドブラスト方式やエンボス加工方式による粗面化方式や透明微粒子の配合方式などの適宜な方式にて透明保護フィルムの表面に微細凹凸構造を付与することにより形成することができる。前記表面微細凹凸構造の形成に含有させる微粒子としては、例えば平均粒径が0.5〜20μmのシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等からなる導電性のこともある無機系微粒子、架橋又は未架橋のポリマー等からなる有機系微粒子などの透明微粒子が用いられる。表面微細凹凸構造を形成する場合、微粒子の使用量は、表面微細凹凸構造を形成する透明樹脂100重量部に対して一般的に2〜70重量部程度であり、5〜50重量部が好ましい。アンチグレア層は、偏光板透過光を拡散して視角などを拡大するための拡散層(視角拡大機能等)を兼ねるものであってもよい。
【0036】
なお、前記反射防止層、スティッキング防止層、拡散層やアンチグレア層等は、透明保護フィルムそのものに設けることができるほか、別途光学層として透明保護フィルムとは別体のものとして設けることもできる。
【0037】
前記偏光子と前記透明保護フィルムとの貼り合わせには、水系接着剤が用いられる。水系接着剤としては、イソシアネート系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ゼラチン系接着剤、ビニル系ラテックス系、水系ポリウレタン、水系ポリエステル等を例示できる。これらのなかでも、ポリビニルアルコール系接着剤が好適に用いられる。水系接着剤には、適宜に架橋剤を含有させることができる。
【0038】
前記接着剤(例えば、ポリビニルアルコール系接着剤,架橋剤を含有する場合を含む)は、通常、水溶液として用いられる。水溶液濃度は特に制限はないが、塗布性や放置安定性等を考慮すれば、0.1〜15重量%、好ましくは0.5〜10重量%、さらに好ましくは0.5〜5重量%程度である。
【0039】
なお、前記接着剤には、さらにシランカップリング剤、チタンカップリング剤などのカップリング剤、各種粘着付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐加水分解安定剤などの安定剤等を配合することもできる。
【0040】
本発明の偏光板は、前記ポリビニルアルコール系偏光子と前記透明保護フィルムを前記水系接着剤により貼り合せることにより製造するが、前記偏光子と前記透明保護フィルムを前記接着剤により貼り合せる前に、偏光子に送風工程を施し、偏光子の表面の水との接触角を20°以上にする。接触角が20°より小さい場合には、偏光子への水の浸透を抑えることができず、光学特性の良好な偏光板を得るのは困難である。前記接触角は21°以上、さらには22°以上であるのが好ましい。なお、接触角は接着性の点から50°以下であるのがよい。
【0041】
なお、偏光子への送風工程は、前記偏光子の製造にあたっての洗浄工程後における乾燥工程として設けることができ、また当該乾燥工程の後に別工程として設けることができるが、前記送風工程は、前述のように、偏光子表面を十分に乾燥させて、偏光子表面の接触角を20°以上にするために行われるものであり、単に偏光子の乾燥を促進させるために行われるものではない。送風工程を伴うことなく、単に偏光子の乾燥のみを促進させると、偏光子の破断等が生じる。
【0042】
送風工程は、風速2〜10m/sにて偏光子に送風することが好ましい。風速が2m/s未満では、風速が小さく偏光子表面の接触角を20°以上にするのが困難である。一方、風速が10m/sを超えると、風速が大きくなりすぎて、乾燥が進みすぎて、偏光子が破断して偏光子の製膜ができなくなる。送風工程における風速は、3〜8m/sであるのが好ましく、さらには4〜8m/sであるのが好ましい。
【0043】
送風工程は、偏光子の片面に透明保護フィルムを貼り合せる場合には、偏光子の片面または両面から送風工程を施すことができるが、偏光子の両面に透明保護フィルムを貼り合せる場合には、偏光子の両面から送風工程を施す。送風工程は、カウンターフロー式により施すことができる。偏光子と前記送風手段との距離は10〜100cm程度、好ましくは10〜50cmとするのが好ましい。前記風速は、乾燥炉内における風速であり、ミニベーン型デジタル風速計により測定することができる。
【0044】
また、送風工程における温度は、20〜80℃程度であり、好ましくは25〜60℃、より好ましくは30〜50℃である。当該温度が、20℃未満では、偏光子の表面の接触角を20°以上にするのに時間がかかり過ぎ生産性の点で好ましくない。一方、80℃を超えると乾燥が進みすぎて、偏光子が破断して偏光子の製膜ができなくなる。また、送風工程における処理時間は、0.5〜10分間程度であり、好ましくは1〜7分間、より好ましくは2〜5分間である。なお、送風工程における温度、処理時間は、風速との関係を考慮して、偏光子の表面の接触角が20°以上になるように制御される。
【0045】
また送風工程は、得られる偏光子の水分率が10〜40重量%になるように制御することが好ましい。前記偏光子の水分率はさらには15〜30重量%、さらには18〜25重量%、が制御されることが好ましい。
【0046】
本発明の偏光板の製造方法では、前記送風工程の施された偏光子と、透明保護フィルムとを接着剤により貼り合せるが、接着剤の塗布は、前記偏光子、透明保護フィルムのいずれの側に行ってもよく、また両者に行ってもよい。塗布操作は特に制限されず、ロール法、噴霧法、浸漬法等の各種手段を採用できる。前記接着剤の塗布は、乾燥後に形成される接着剤層の厚みが、30〜200nm程度になるように行なうのが好ましい。前記接着剤層の厚さは、さらに好ましくは50〜110nmである。30nm未満では塗布が困難になる場合があり、また外観欠点が生じやすくなる場合がある。一方200nmを超える場合には保持水分量が多くなり、光学特性を低下させる場合があり好ましくない。
【0047】
接着剤を塗布した後は、偏光子と透明保護フィルムをロールラミネーター等により貼り合わせる。貼り合わせ後には、乾燥工程を施し、塗布乾燥層からなる接着剤層を形成する。乾燥温度は、5〜150℃程度、好ましくは30〜120℃で、120秒間以上、さらには300秒間以上である。
【0048】
本発明の偏光板は、実用に際して他の光学層と積層した光学フィルムとして用いることができる。その光学層については特に限定はないが、例えば反射板や半透過板、位相差板(1/2や1/4等の波長板を含む)、視角補償フィルムなどの液晶表示装置等の形成に用いられることのある光学層を1層または2層以上用いることができる。特に、本発明の偏光板に更に反射板または半透過反射板が積層されてなる反射型偏光板または半透過型偏光板、偏光板に更に位相差板が積層されてなる楕円偏光板または円偏光板、偏光板に更に視角補償フィルムが積層されてなる広視野角偏光板、あるいは偏光板に更に輝度向上フィルムが積層されてなる偏光板が好ましい。
【0049】
反射型偏光板は、偏光板に反射層を設けたもので、視認側(表示側)からの入射光を反射させて表示するタイプの液晶表示装置などを形成するためのものであり、バックライト等の光源の内蔵を省略できて液晶表示装置の薄型化を図りやすいなどの利点を有する。反射型偏光板の形成は、必要に応じ透明保護層等を介して偏光板の片面に金属等からなる反射層を付設する方式などの適宜な方式にて行なうことができる。
【0050】
反射型偏光板の具体例としては、必要に応じマット処理した透明保護フィルムの片面に、アルミニウム等の反射性金属からなる箔や蒸着膜を付設して反射層を形成したものなどがあげられる。また前記透明保護フィルムに微粒子を含有させて表面微細凹凸構造とし、その上に微細凹凸構造の反射層を有するものなどもあげられる。前記した微細凹凸構造の反射層は、入射光を乱反射により拡散させて指向性やギラギラした見栄えを防止し、明暗のムラを抑制しうる利点などを有する。また微粒子含有の透明保護フィルムは、入射光及びその反射光がそれを透過する際に拡散されて明暗ムラをより抑制しうる利点なども有している。透明保護フィルムの表面微細凹凸構造を反映させた微細凹凸構造の反射層の形成は、例えば真空蒸着方式、イオンプレーティング方式、スパッタリング方式等の蒸着方式やメッキ方式などの適宜な方式で金属を透明保護層の表面に直接付設する方法などにより行うことができる。
【0051】
反射板は前記の偏光板の透明保護フィルムに直接付与する方式に代えて、その透明フィルムに準じた適宜なフィルムに反射層を設けてなる反射シートなどとして用いることもできる。なお反射層は、通常、金属からなるので、その反射面が透明保護フィルムや偏光板等で被覆された状態の使用形態が、酸化による反射率の低下防止、ひいては初期反射率の長期持続の点や、保護層の別途付設の回避の点などより好ましい。
【0052】
なお、半透過型偏光板は、上記において反射層で光を反射し、かつ透過するハーフミラー等の半透過型の反射層とすることにより得ることができる。半透過型偏光板は、通常液晶セルの裏側に設けられ、液晶表示装置などを比較的明るい雰囲気で使用する場合には、視認側(表示側)からの入射光を反射させて画像を表示し、比較的暗い雰囲気においては、半透過型偏光板のバックサイドに内蔵されているバックライト等の内蔵光源を使用して画像を表示するタイプの液晶表示装置などを形成できる。すなわち、半透過型偏光板は、明るい雰囲気下では、バックライト等の光源使用のエネルギーを節約でき、比較的暗い雰囲気下においても内蔵光源を用いて使用できるタイプの液晶表示装置などの形成に有用である。
【0053】
偏光板に更に位相差板が積層されてなる楕円偏光板または円偏光板について説明する。直線偏光を楕円偏光または円偏光に変えたり、楕円偏光または円偏光を直線偏光に変えたり、あるいは直線偏光の偏光方向を変える場合に、位相差板などが用いられる。特に、直線偏光を円偏光に変えたり、円偏光を直線偏光に変える位相差板としては、いわゆる1/4波長板(λ/4板とも言う)が用いられる。1/2波長板(λ/2板とも言う)は、通常、直線偏光の偏光方向を変える場合に用いられる。
【0054】
楕円偏光板はスーパーツイストネマチック(STN)型液晶表示装置の液晶層の複屈折により生じた着色(青又は黄)を補償(防止)して、前記着色のない白黒表示する場合などに有効に用いられる。更に、三次元の屈折率を制御したものは、液晶表示装置の画面を斜め方向から見た際に生じる着色も補償(防止)することができて好ましい。円偏光板は、例えば画像がカラー表示になる反射型液晶表示装置の画像の色調を整える場合などに有効に用いられ、また、反射防止の機能も有する。上記した位相差板の具体例としては、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレンやその他のポリオレフィン、ポリアリレート、ポリアミドの如き適宜なポリマーからなるフィルムを延伸処理してなる複屈折性フィルムや液晶ポリマーの配向フィルム、液晶ポリマーの配向層をフィルムにて支持したものなどがあげられる。位相差板は、例えば各種波長板や液晶層の複屈折による着色や視角等の補償を目的としたものなどの使用目的に応じた適宜な位相差を有するものであってよく、2種以上の位相差板を積層して位相差等の光学特性を制御したものなどであってもよい。
【0055】
また上記の楕円偏光板や反射型楕円偏光板は、偏光板又は反射型偏光板と位相差板を適宜な組み合わせで積層したものである。かかる楕円偏光板等は、(反射型)偏光板と位相差板の組み合わせとなるようにそれらを液晶表示装置の製造過程で順次別個に積層することによっても形成しうるが、前記の如く予め楕円偏光板等の光学フィルムとしたものは、品質の安定性や積層作業性等に優れて液晶表示装置などの製造効率を向上させうる利点がある。
【0056】
視角補償フィルムは、液晶表示装置の画面を、画面に垂直でなくやや斜めの方向から見た場合でも、画像が比較的鮮明にみえるように視野角を広げるためのフィルムである。このような視角補償位相差板としては、例えば位相差フィルム、液晶ポリマー等の配向フィルムや透明基材上に液晶ポリマー等の配向層を支持したものなどからなる。通常の位相差板は、その面方向に一軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムが用いられるのに対し、視角補償フィルムとして用いられる位相差板には、面方向に二軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムとか、面方向に一軸に延伸され厚さ方向にも延伸された厚さ方向の屈折率を制御した複屈折を有するポリマーや傾斜配向フィルムのような二方向延伸フィルムなどが用いられる。傾斜配向フィルムとしては、例えばポリマーフィルムに熱収縮フィルムを接着して加熱によるその収縮力の作用下にポリマーフィルムを延伸処理又は/及び収縮処理したものや、液晶ポリマーを斜め配向させたものなどが挙げられる。位相差板の素材原料ポリマーは、先の位相差板で説明したポリマーと同様のものが用いられ、液晶セルによる位相差に基づく視認角の変化による着色等の防止や良視認の視野角の拡大などを目的とした適宜なものを用いうる。
【0057】
また良視認の広い視野角を達成する点などより、液晶ポリマーの配向層、特にディスコティック液晶ポリマーの傾斜配向層からなる光学的異方性層をトリアセチルセルロースフィルムにて支持した光学補償位相差板が好ましく用いうる。
【0058】
偏光板と輝度向上フィルムを貼り合わせた偏光板は、通常液晶セルの裏側サイドに設けられて使用される。輝度向上フィルムは、液晶表示装置などのバックライトや裏側からの反射などにより自然光が入射すると所定偏光軸の直線偏光または所定方向の円偏光を反射し、他の光は透過する特性を示すもので、輝度向上フィルムを偏光板と積層した偏光板は、バックライト等の光源からの光を入射させて所定偏光状態の透過光を得ると共に、前記所定偏光状態以外の光は透過せずに反射される。この輝度向上フィルム面で反射した光を更にその後ろ側に設けられた反射層等を介し反転させて輝度向上フィルムに再入射させ、その一部又は全部を所定偏光状態の光として透過させて輝度向上フィルムを透過する光の増量を図ると共に、偏光子に吸収させにくい偏光を供給して液晶表示画像表示等に利用しうる光量の増大を図ることにより輝度を向上させうるものである。すなわち、輝度向上フィルムを使用せずに、バックライトなどで液晶セルの裏側から偏光子を通して光を入射した場合には、偏光子の偏光軸に一致していない偏光方向を有する光は、ほとんど偏光子に吸収されてしまい、偏光子を透過してこない。すなわち、用いた偏光子の特性によっても異なるが、およそ50%の光が偏光子に吸収されてしまい、その分、液晶画像表示等に利用しうる光量が減少し、画像が暗くなる。輝度向上フィルムは、偏光子に吸収されるような偏光方向を有する光を偏光子に入射させずに輝度向上フィルムで一旦反射させ、更にその後ろ側に設けられた反射層等を介して反転させて輝度向上フィルムに再入射させることを繰り返し、この両者間で反射、反転している光の偏光方向が偏光子を通過し得るような偏光方向になった偏光のみを、輝度向上フィルムは透過させて偏光子に供給するので、バックライトなどの光を効率的に液晶表示装置の画像の表示に使用でき、画面を明るくすることができる。
【0059】
輝度向上フィルムと上記反射層等の間に拡散板を設けることもできる。輝度向上フィルムによって反射した偏光状態の光は上記反射層等に向かうが、設置された拡散板は通過する光を均一に拡散すると同時に偏光状態を解消し、非偏光状態となる。すなわち、拡散板は偏光を元の自然光状態にもどす。この非偏光状態、すなわち自然光状態の光が反射層等に向かい、反射層等を介して反射し、再び拡散板を通過して輝度向上フィルムに再入射することを繰り返す。このように輝度向上フィルムと上記反射層等の間に、偏光を元の自然光状態にもどす拡散板を設けることにより表示画面の明るさを維持しつつ、同時に表示画面の明るさのむらを少なくし、均一で明るい画面を提供することができる。かかる拡散板を設けることにより、初回の入射光は反射の繰り返し回数が程よく増加し、拡散板の拡散機能と相俟って均一の明るい表示画面を提供することができたものと考えられる。
【0060】
前記の輝度向上フィルムとしては、例えば誘電体の多層薄膜や屈折率異方性が相違する薄膜フィルムの多層積層体の如き、所定偏光軸の直線偏光を透過して他の光は反射する特性を示すもの、コレステリック液晶ポリマーの配向フィルムやその配向液晶層をフィルム基材上に支持したものの如き、左回り又は右回りのいずれか一方の円偏光を反射して他の光は透過する特性を示すものなどの適宜なものを用いうる。
【0061】
従って、前記した所定偏光軸の直線偏光を透過させるタイプの輝度向上フィルムでは、その透過光をそのまま偏光板に偏光軸を揃えて入射させることにより、偏光板による吸収ロスを抑制しつつ効率よく透過させることができる。一方、コレステリック液晶層の如く円偏光を透過するタイプの輝度向上フィルムでは、そのまま偏光子に入射させることもできるが、吸収ロスを抑制する点よりその円偏光を位相差板を介し直線偏光化して偏光板に入射させることが好ましい。なお、その位相差板として1/4波長板を用いることにより、円偏光を直線偏光に変換することができる。
【0062】
可視光域等の広い波長範囲で1/4波長板として機能する位相差板は、例えば波長550nmの淡色光に対して1/4波長板として機能する位相差層と他の位相差特性を示す位相差層、例えば1/2波長板として機能する位相差層とを重畳する方式などにより得ることができる。従って、偏光板と輝度向上フィルムの間に配置する位相差板は、1層又は2層以上の位相差層からなるものであってよい。
【0063】
なお、コレステリック液晶層についても、反射波長が相違するものの組み合わせにして2層又は3層以上重畳した配置構造とすることにより、可視光領域等の広い波長範囲で円偏光を反射するものを得ることができ、それに基づいて広い波長範囲の透過円偏光を得ることができる。
【0064】
また、偏光板は上記の偏光分離型偏光板の如く、偏光板と2層又は3層以上の光学層とを積層したものからなっていてもよい。従って、上記の反射型偏光板や半透過型偏光板と位相差板を組み合わせた反射型楕円偏光板や半透過型楕円偏光板などであってもよい。
【0065】
偏光板に前記光学層を積層した光学フィルムは、液晶表示装置等の製造過程で順次別個に積層する方式にても形成することができるが、予め積層して光学フィルムとしたものは、品質の安定性や組立作業等に優れていて液晶表示装置などの製造工程を向上させうる利点がある。積層には粘着層等の適宜な接着手段を用いうる。前記の偏光板やその他の光学フィルムの接着に際し、それらの光学軸は目的とする位相差特性などに応じて適宜な配置角度とすることができる。
【0066】
前述した偏光板や、偏光板を少なくとも1層積層されている光学フィルムには、液晶セル等の他部材と接着するための粘着層を設けることもできる。粘着層を形成する粘着剤は特に制限されないが、例えばアクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、アクリル系粘着剤の如く光学的透明性に優れ、適度な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れるものが好ましく用いうる。
【0067】
また上記に加えて、吸湿による発泡現象や剥がれ現象の防止、熱膨張差等による光学特性の低下や液晶セルの反り防止、ひいては高品質で耐久性に優れる液晶表示装置の形成性などの点より、吸湿率が低くて耐熱性に優れる粘着層が好ましい。
【0068】
粘着層は、例えば天然物や合成物の樹脂類、特に、粘着性付与樹脂や、ガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉、その他の無機粉末等からなる充填剤や顔料、着色剤、酸化防止剤などの粘着層に添加されることの添加剤を含有していてもよい。また微粒子を含有して光拡散性を示す粘着層などであってもよい。
【0069】
偏光板や光学フィルムの片面又は両面への粘着層の付設は、適宜な方式で行ないうる。その例としては、例えばトルエンや酢酸エチル等の適宜な溶剤の単独物又は混合物からなる溶媒にベースポリマーまたはその組成物を溶解又は分散させた10〜40重量%程度の粘着剤溶液を調製し、それを流延方式や塗布方式等の適宜な展開方式で偏光板上または光学フィルム上に直接付設する方式、あるいは前記に準じセパレータ上に粘着層を形成してそれを偏光板上または光学フィルム上に移着する方式などがあげられる。
【0070】
粘着層は、異なる組成又は種類等のものの重畳層として偏光板や光学フィルムの片面又は両面に設けることもできる。また両面に設ける場合に、偏光板や光学フィルムの表裏において異なる組成や種類や厚さ等の粘着層とすることもできる。粘着層の厚さは、使用目的や接着力などに応じて適宜に決定でき、一般には1〜500μmであり、5〜200μmが好ましく、特に10〜100μmが好ましい。
【0071】
粘着層の露出面に対しては、実用に供するまでの間、その汚染防止等を目的にセパレータが仮着されてカバーされる。これにより、通例の取扱状態で粘着層に接触することを防止できる。セパレータとしては、上記厚さ条件を除き、例えばプラスチックフィルム、ゴムシート、紙、布、不織布、ネット、発泡シートや金属箔、それらのラミネート体等の適宜な薄葉体を、必要に応じシリコーン系や長鎖アルキル系、フッ素系や硫化モリブデン等の適宜な剥離剤でコート処理したものなどの、従来に準じた適宜なものを用いうる。
【0072】
なお本発明において、上記した偏光板を形成する偏光子や透明保護フィルムや光学フィルム等、また粘着層などの各層には、例えばサリチル酸エステル系化合物やベンゾフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物やシアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤で処理する方式などの方式により紫外線吸収能をもたせたものなどであってもよい。
【0073】
本発明の偏光板または光学フィルムは液晶表示装置等の各種装置の形成などに好ましく用いることができる。液晶表示装置の形成は、従来に準じて行ないうる。すなわち液晶表示装置は一般に、液晶セルと偏光板または光学フィルム、及び必要に応じての照明システム等の構成部品を適宜に組立てて駆動回路を組込むことなどにより形成されるが、本発明においては本発明による偏光板または光学フィルムを用いる点を除いて特に限定はなく、従来に準じうる。液晶セルについても、例えばTN型やSTN型、π型などの任意なタイプのものを用いうる。
【0074】
液晶セルの片側又は両側に偏光板または光学フィルムを配置した液晶表示装置や、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたものなどの適宜な液晶表示装置を形成することができる。その場合、本発明による偏光板または光学フィルムは液晶セルの片側又は両側に設置することができる。両側に偏光板または光学フィルムを設ける場合、それらは同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
【0075】
次いで有機エレクトロルミネセンス装置(有機EL表示装置)について説明する。一般に、有機EL表示装置は、透明基板上に透明電極と有機発光層と金属電極とを順に積層して発光体(有機エレクトロルミネセンス発光体)を形成している。ここで、有機発光層は、種々の有機薄膜の積層体であり、例えばトリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層と、アントラセン等の蛍光性の有機固体からなる発光層との積層体や、あるいはこのような発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層の積層体や、またあるいはこれらの正孔注入層、発光層、および電子注入層の積層体等、種々の組み合わせをもった構成が知られている。
【0076】
有機EL表示装置は、透明電極と金属電極とに電圧を印加することによって、有機発光層に正孔と電子とが注入され、これら正孔と電子との再結合によって生じるエネルギーが蛍光物資を励起し、励起された蛍光物質が基底状態に戻るときに光を放射する、という原理で発光する。途中の再結合というメカニズムは、一般のダイオードと同様であり、このことからも予想できるように、電流と発光強度は印加電圧に対して整流性を伴う強い非線形性を示す。
【0077】
有機EL表示装置においては、有機発光層での発光を取り出すために、少なくとも一方の電極が透明でなくてはならず、通常酸化インジウムスズ(ITO)などの透明導電体で形成した透明電極を陽極として用いている。一方、電子注入を容易にして発光効率を上げるには、陰極に仕事関数の小さな物質を用いることが重要で、通常Mg−Ag、Al−Liなどの金属電極を用いている。
【0078】
このような構成の有機EL表示装置において、有機発光層は、厚さ10nm程度ときわめて薄い膜で形成されている。このため、有機発光層も透明電極と同様、光をほぼ完全に透過する。その結果、非発光時に透明基板の表面から入射し、透明電極と有機発光層とを透過して金属電極で反射した光が、再び透明基板の表面側へと出るため、外部から視認したとき、有機EL表示装置の表示面が鏡面のように見える。
【0079】
電圧の印加によって発光する有機発光層の表面側に透明電極を備えるとともに、有機発光層の裏面側に金属電極を備えてなる有機エレクトロルミネセンス発光体を含む有機EL表示装置において、透明電極の表面側に偏光板を設けるとともに、これら透明電極と偏光板との間に位相差板を設けることができる。
【0080】
位相差板および偏光板は、外部から入射して金属電極で反射してきた光を偏光する作用を有するため、その偏光作用によって金属電極の鏡面を外部から視認させないという効果がある。特に、位相差板を1/4波長板で構成し、かつ偏光板と位相差板との偏光方向のなす角をπ/4に調整すれば、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
【0081】
すなわち、この有機EL表示装置に入射する外部光は、偏光板により直線偏光成分のみが透過する。この直線偏光は位相差板により一般に楕円偏光となるが、とくに位相差板が1/4波長板でしかも偏光板と位相差板との偏光方向のなす角がπ/4のときには円偏光となる。
【0082】
この円偏光は、透明基板、透明電極、有機薄膜を透過し、金属電極で反射して、再び有機薄膜、透明電極、透明基板を透過して、位相差板に再び直線偏光となる。そして、この直線偏光は、偏光板の偏光方向と直交しているので、偏光板を透過できない。その結果、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
【実施例】
【0083】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。
【0084】
(透湿度)
透明保護フィルムの透湿度を、JIS Z0208の透湿度試験(カップ法)に準じて、温度40℃、湿度92%RHの雰囲気中、面積1m2の試料を24時間に通過する水蒸気のg数を測定した。
【0085】
(接触角)
偏光子の表面を、自動接触角計CA‐V型(協和界面科学社製)により、水に対する接触角を測定した。
【0086】
(偏光子および偏光板の水分率)
偏光子または偏光板を、100×100mmの大きさに切り出して、このサンプルの初期重量を測定した。続いて、このサンプルを120℃で2時間乾燥し、乾燥重量を測定して、下記式により水分率を測定した。水分率(重量%)={(初期重量−乾燥重量)/初期重量}×100。重量の測定はそれぞれ3回ずつ行い、その平均値を用いた。
【0087】
実施例1
(偏光子の作製)
厚さ80μmのポリビニルアルコールフィルムを、5重量%(重量比:ヨウ素/ヨウ化カリウム=1/10)のヨウ素水溶液中で染色した。次いで、3重量%のホウ酸および2重量%ヨウ化カリウムを含む水溶液に浸漬し、さらに4重量%のホウ酸および3重量%のヨウ化カリウムを含む水溶液中で5.5倍まで延伸した後、5重量%のヨウ化カリウム水溶液に浸漬し、延伸を行った。その後、カウンターフロー方式で、得られたフィルムの両側(送風手段との距離:30cm)から、30℃の環境下で、風速3m/sで5分間、送風工程を施し、厚さ30μmの偏光子を得た。得られた偏光子の水分率は、25%であった。
【0088】
(接着剤)
ポリビニルアルコール系樹脂(平均重合度:1200,ケン化度:98.5モル%)100部に対し、メチロールメラミン30部を、30℃の温度条件下に、純水に溶解し、固形分濃度3.7%に調整した水溶液を調製した。これを接着剤として用いた。
【0089】
(偏光板の作製)
透明保護フィルムとして、ノルボルネン系樹脂フィルム(日本ゼオン(株)製,商品名:ゼオノア,厚さ40μm,透湿度6g/m2/24h)を用いた。上記透明保護フィルムの片面に、上記ポリビニルアルコール系接着剤を乾燥後の接着剤層の厚みが55nm程度となるように塗布し、23℃の温度条件下で偏光子の両面に接着剤付きの前記透明保護フィルムをロール機で貼り合せた後、55℃で6分間乾燥して偏光板を作成した。得られた偏光板の水分率は3重量%であった。
【0090】
実施例2〜4、比較例1〜3
実施例1において、偏光子の作製にあたり、風速の厚さを表1に示すように変えたこと以外は実施例1と同様にして、偏光子を作製した。得られた偏光子の接触角、水分率を表1に示す。また、各例で得られた偏光子を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、偏光板を作製した。得られた偏光板の水分率を表1に示す。
【0091】
比較例4
実施例1において、偏光子の作製にあたり、送風工程を施す代わりに、乾燥工程として、30℃で5分間の乾燥を施したこと以外は実施例1と同様にして、偏光子を作製した。得られた偏光子の接触角、水分率を表1に示す。また、前記で得られた偏光子を用いたこと、透明保護フィルムとして、トリアセチルセルロースフィルム(厚さ40μm,透湿度500g/m2/24h)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、偏光板を作製した。得られた偏光板の水分率を表1に示す。
【0092】
比較例5
実施例1において、偏光子の作製にあたり、送風工程を施す代わりに、乾燥工程として、40℃で5分間の乾燥を施したこと以外は実施例1と同様にして、偏光子を作製した。得られた偏光子の接触角、水分率を表1に示す。また、前記で得られた偏光子を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、偏光板を作製した。得られた偏光板の水分率を表1に示す。
【0093】
(評価)
実施例および比較例で得られた偏光板について、下記評価を行った、結果を表1に示す。
【0094】
(偏光度)
偏光板を打ち抜いて2cm×2cmの大きさのもの2枚を用意し、互いの吸収軸が直交するように重ねた状態で、分光光度計[(株)村上色彩技術研究所製の製品名「DOT‐3」]を用いて測定した。
【0095】
(耐湿熱性)
得られた偏光板サンプルを、60℃の温水に3時間浸漬した後に、サンプルの端部の剥がれ量(mm)を測定した。剥がれ量(mm)の測定は、ノギスおよび金尺を用いて行なった。
【0096】
【表1】

【0097】
表1から、実施例では、低透湿度の材料を透明保護フィルムに用いており、得られる偏光板は耐湿熱性が良好であり、かつ、偏光子の製造工程において、送風工程を施し、偏光子の表面の水との接触角を20°以上に制御することで、偏光度が良好な偏光板が得られている。比較例1、2では偏光子の表面の水との接触角を20°未満であり、偏光度が、実施例に比べて低い。比較例3では、風速が大きく、偏光子が破断して、偏光子を製膜できなかった。なお、偏光子の水分率が高い比較例の方が実施例に比べて接着剤層が厚くなっているが、これは、偏光子が小さい、即ち偏光子の水分率が多いと、偏光子中の水分が接着剤へ移動し、接着剤成分が膨潤した厚みが増すことが予想される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光子の少なくとも一方の面に、接着剤により透明保護フィルムを貼り合せる偏光板の製造方法であって、
偏光子がポリビニルアルコール系偏光子であり、
透明保護フィルムは、透湿度が150g/m2/24h以下であり、
接着剤が水系接着剤であり、
前記偏光子と前記透明保護フィルムを前記接着剤により貼り合せる前に、偏光子に送風工程を施し、偏光子の表面の水との接触角を20°以上にすることを特徴とする偏光板の製造方法。
【請求項2】
接着剤層の厚みが、30〜200nmであることを特徴とする請求項1記載の偏光板の製造方法。
【請求項3】
送風工程は、風速2〜10m/sにて、偏光子に送風することにより行うことを特徴とする請求項1または2記載の偏光板の製造方法。
【請求項4】
送風工程は、得られる偏光子の水分率が、10〜40重量%になるように制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の偏光板の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法により得られた偏光板。
【請求項6】
請求項5記載の偏光板が、少なくとも1枚積層されていることを特徴とする光学フィルム。
【請求項7】
請求項5記載の偏光板または請求項6記載の光学フィルムが用いられていることを特徴とする画像表示装置。

【公開番号】特開2008−129258(P2008−129258A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−313103(P2006−313103)
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】