説明

偏光板の製造方法

【課題】過度な逆カールが生じにくく光学特性や貼合強度が良好な偏光板の製造方法を提供する。
【解決手段】偏光フィルム21の片面にアクリル系樹脂フィルム25を、他面に透明樹脂フィルム23を貼合して偏光板を製造する方法であって、(A)偏光フィルム21をアクリル系樹脂フィルム25と透明樹脂フィルム23とで挟むように搬送する原料フィルム搬送工程と、(B)アクリル系樹脂フィルム25の外側に接触して回転する第1の貼合ロール15と、透明樹脂フィルム23の外側に接触して回転する第2の貼合ロール16とで、フィルムの積層体を挟みながら貼合を行う貼合工程と、(C)接着剤を硬化させる硬化工程と、を備える。貼合工程(B)は、透明樹脂フィルム23側における搬送方向での収縮応力よりもアクリル系樹脂フィルム25側における搬送方向での収縮応力のほうが大きくなるように、両フィルムに張力を付与した状態で偏光フィルム21に貼合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板の製造方法に関し、特に、偏光フィルムの片面にアクリル系樹脂フィルム、他面に透明樹脂フィルムが貼合された偏光板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
偏光板は、液晶表示装置の構成部材として使用されており、液晶表示装置の普及に伴って急速にその需要が増大している。そして、液晶表示装置の大型テレビなどへの適用に伴い、偏光板にも、その性能を維持あるいは改良しながら、一層の薄肉化、廉価化が求められている。
【0003】
一般に、偏光板は、二色性色素が吸着配向しているポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムの少なくとも片面、通常は両面に、透明な保護フィルムが貼合された構造になっている。偏光板の保護フィルムには、トリアセチルセルロースに代表されるセルロースアセテート系樹脂のフィルムが多く用いられており、その厚みは通例40〜120μm程度である。このようなセルロースアセテート系樹脂フィルムの偏光フィルムへの貼合には、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液からなる接着剤を用いることが多い。しかしながら、水溶性接着剤を介して偏光フィルムに保護フィルムを積層した偏光板は、湿熱条件下で長時間使用した場合に、偏光性能が低下したり、保護フィルムが偏光フィルムから剥離したりする問題があった。
【0004】
そこで、偏光フィルムの両面に貼合される保護フィルムのうち少なくとも一方を、セルロースアセテート系樹脂以外の樹脂で構成する試みがある。このような樹脂として、比較的安価な樹脂材料であるアクリル系樹脂を用いる技術が知られている。例えば、ラクトン環を含有する(メタ)アクリル系樹脂を用いた保護フィルム(特許文献1参照)が知られている。さらに、アクリル系樹脂を延伸倍率50〜200%の範囲内で一軸又は二軸延伸した保護フィルム(特許文献2参照)も開発されている。このような延伸されたアクリル系樹脂を用いることで、機械的強度と熱収縮性の優れた光学フィルムとすることができる。
【0005】
長尺状の偏光フィルムに長尺状の保護フィルムを積層した偏光板は、貼合ロールを用いたロール・トゥ・ロール貼合方式によって製造することができる。ロール・トゥ・ロール貼合方式は、接着剤を介して長尺の偏光フィルムに長尺の保護フィルムを積層し、この状態で2つの貼合ロールで狭圧することで偏光フィルムと保護フィルムを貼合する方法である。この貼合方式では、接着剤として、活性エネルギー線などで硬化する接着剤が使用されることが多い。このような硬化性接着剤は、硬化速度が早く水分による悪影響をフィルムに与えにくいため好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−122663号公報
【特許文献2】特開2008−216586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、偏光板の一層の廉価化と薄肉化を図ることを目的に、偏光フィルムの片面にアクリル系樹脂フィルム、他面に透明樹脂フィルムを備える偏光板をロール・トゥ・ロール貼合方式で製造する方法を検討した。その結果、通常の条件でロール・トゥ・ロール貼合を行うと、アクリル系樹脂フィルムと透明樹脂フィルムの収縮応力の違い等により、アクリル系樹脂フィルム側が凸になり、透明樹脂フィルム側やその表面に設けられた粘着剤層側が凹になる、いわゆる逆カールを示す傾向があることが分かった。
【0008】
偏光板を液晶セルに貼り合わせる際には、透明樹脂フィルムの外側に粘着剤層を設け、その粘着剤層を介して液晶セルに貼り合わせることになる。この際、逆カールした偏光板は、粘着剤層の側が凹状となるため、若干の逆カールであれば問題がないが、カール量が過度に大きい場合は液晶セルに貼合する際に粘着剤層の中央部に気泡を噛み込みやすくなる。このため、気泡が原因による光学特性の悪化や貼合強度の低下などの不都合が生じやすくなる。
【0009】
反対に、粘着剤層の側が凸となる、いわゆる正カールの状態も考えられる。この正カールの偏光板は、粘着剤層の中央部が凸となっているため、粘着剤層の中央部を液晶セルへ押し付け、空気を周囲に逃がしながら接着することができるため、若干の正カールであれば液晶セルへの偏光板の貼合が容易になり好ましい。しかしながら、正カールが過度に大きくなると、今度は偏光板のカールしようとする力が大きいため、液晶セルの表面に接着した偏光板の端から接着が剥がれて浮きが生じ、液晶セルから偏光板が剥離しやすくなるという不都合が生じやすい。
【0010】
本発明の目的は、過度な逆カールが生じにくく光学特性や貼合強度が良好な偏光板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は、本発明の偏光フィルムの製造方法によれば、二色性色素が吸着配向しているポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムの片面に、接着剤を介してアクリル系樹脂フィルムを貼合し、前記偏光フィルムの他面には、接着剤を介して透明樹脂フィルムを貼合して偏光板を製造する方法であって、(A)前記偏光フィルム、前記アクリル系樹脂フィルム及び前記透明樹脂フィルムをそれぞれ一定方向に、かつ前記偏光フィルムを前記アクリル系樹脂フィルムと前記透明樹脂フィルムとで挟むように搬送する原料フィルム搬送工程と、(B)前記偏光フィルムの片面に前記アクリル系樹脂フィルムを、前記偏光フィルムの他面に前記透明樹脂フィルムを、それぞれ硬化性の接着剤を介して貼合し、そして、前記アクリル系樹脂フィルムの外側に接触し、その搬送方向に回転する第1の貼合ロールと、前記透明樹脂フィルムの外側に接触し、その搬送方向に回転する第2の貼合ロールとで、前記アクリル系樹脂フィルム/前記偏光フィルム/前記透明樹脂フィルムの積層体を挟みながら前記貼合を行う貼合工程と、(C)貼合後、前記接着剤を硬化させて、前記アクリル系樹脂フィルムと前記偏光フィルム及び前記透明樹脂フィルムと前記偏光フィルムを接着させる硬化工程とを備え、前記貼合工程(B)は、前記透明樹脂フィルム側における前記搬送方向での収縮応力よりも前記アクリル系樹脂フィルム側における前記搬送方向での収縮応力のほうが大きくなるように、前記透明樹脂フィルム及び前記アクリル系樹脂フィルムに張力を付与した状態で前記偏光フィルムに貼合することにより解決される。
【0012】
この場合、前記貼合工程(B)は、前記アクリル系樹脂フィルムの外側に接触する第1の貼合ロールの周速度に対する前記透明樹脂フィルムの外側に接触する第2の貼合ロールの周速度の比が1.0105以上、1.0141以下となるように行うことが好ましい。
【0013】
あるいは、前記貼合工程(B)は、前記透明樹脂フィルムの単位断面積あたりの貼合前張力に対する前記アクリル系樹脂フィルムの単位断面積あたりの貼合前張力の比が1以上となるように行うことが好ましい。
【0014】
この場合、前記アクリル系樹脂フィルムのうち前記偏光フィルムに貼合される面とは反対側の面にプロテクトフィルムを貼合するプロテクトフィルム貼合工程を更に備えると好適である。
【0015】
また、前記透明樹脂フィルムは、延伸されていないフィルムであるか、又は一軸若しくは二軸延伸されたフィルムであることが好ましい。
【0016】
さらにまた、前記原料フィルム搬送工程(A)の途中に、前記アクリル系樹脂フィルムの前記偏光フィルムへの貼合面に前記接着剤を塗布し、前記透明樹脂フィルムの前記偏光フィルムへの貼合面に前記接着剤を塗布する接着剤塗布工程を更に備えると好適である。
【0017】
また、前記接着剤は、活性エネルギー線硬化樹脂を含有し、前記硬化工程(C)は活性エネルギー線の照射によって前記活性エネルギー線硬化樹脂を硬化することにより行われることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の偏光板の製造方法によれば、アクリル系樹脂を使用することにより安価で薄肉な偏光板を製造することができる。加えて、透明樹脂フィルム側における搬送方向での収縮応力よりもアクリル系樹脂フィルム側における搬送方向での収縮応力のほうが大きくなるように、両フィルムに張力を付与した状態で偏光フィルムに貼合している。このため、透明樹脂フィルム側よりもアクリル系樹脂フィルム側のほうにより強い収縮応力が作用し、アクリル系樹脂フィルム側に反ろうとする力が働く。このように、両フィルムの収縮応力に差を持たせることで、両フィルムの収縮応力の違いなどに起因してアクリル系樹脂フィルム側の凸状が大きくなる過度な逆カールを矯正して、逆カール量を小さくしたり、更には若干の正カールにしたりすることができる。これにより、過度な逆カールを抑制して光学特性や貼合強度に優れた偏光板を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】偏光フィルムにアクリル系樹脂フィルムと透明樹脂フィルムを貼合する工程を示した断面模式図である。
【図2】偏光板が正カール及び逆カールした状態を示した斜視図である。
【図3】カール量の測定方法を模式的に示した斜視図である。
【図4】偏光板の断面模式図である。
【図5】実施例及び比較例の結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明のいくつかの実施形態について、図を参照して説明する。なお、本発明は以下に説明する部材や配置等によって限定されず、これらの部材等は本発明の趣旨に沿って適宜改変することができる。
【0021】
以下、偏光板の製造方法について詳しく説明する。図1は、偏光フィルムにアクリル系樹脂フィルムと透明樹脂フィルムを貼合する工程を示した断面模式図である。この図に示すように、偏光板20は、二色性色素が吸着配向しているポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルム21の片面に、接着剤を介してアクリル系樹脂フィルム25を貼合する。また、偏光フィルム21の他面には、接着剤を介して透明樹脂フィルム23を貼合する。本発明の偏光板20の製造方法は、原料フィルム搬送工程(A)と、貼合工程(B)と、硬化工程(C)とを備える。さらに、本実施形態では、プロテクトフィルム貼合工程(D)を行っている。
【0022】
原料フィルム搬送工程(A)では、偏光フィルム21が一定方向に搬送されるとともに、その一方の面にアクリル系樹脂フィルム25が供給され、他方の面には透明樹脂フィルム23が供給される。原料フィルム搬送工程(A)の途中で、接着剤塗布装置12により、アクリル系樹脂フィルム25と偏光フィルム21の貼合面に接着剤を塗布し、もう一つの接着剤塗布装置13により、透明樹脂フィルム23と偏光フィルム21の貼合面に接着剤を塗布する。
【0023】
貼合工程(B)は、アクリル系樹脂フィルム25の外側に接触する第1の貼合ロール15と、透明樹脂フィルム23の外側に接触する第2の貼合ロール16とで、アクリル系樹脂フィルム25/偏光フィルム21/透明樹脂フィルム23の積層体を挟みながら行われる。第1の貼合ロール15と第2の貼合ロール16は、それぞれが接触するフィルムの搬送方向に回転しており、図中の曲線矢印は、その回転方向を示している。
【0024】
硬化工程(C)は、貼合工程(B)で得られた積層体に、接着剤を硬化させるためのエネルギーを硬化装置18から供給し、偏光フィルム21とアクリル系樹脂フィルム25の間、偏光フィルム21と透明樹脂フィルム23の間にある接着剤を硬化させる工程である。以下、これらの各工程について、順に説明を進めていく。
【0025】
[原料フィルム搬送工程(A)]
原料フィルム搬送工程(A)では、ロール状に巻かれた偏光フィルム21から長尺状の偏光フィルム21が繰り出される。所定の速度で送られてくる偏光フィルム21の片面には、同じくロール状に巻かれたアクリル系樹脂フィルム25から繰り出される長尺状のアクリル系樹脂フィルム25が供給される。一方、偏光フィルム21の他面には、同じくロール状に巻かれた透明樹脂フィルム23から繰り出される長尺状の透明樹脂フィルム23が供給される。
【0026】
それぞれのフィルムの搬送速度は、その製造装置に適した値に定めればよく、特に制限されないが、通常、前の工程で製造され、搬送されてくる偏光フィルム21の搬送速度に合わせた速度とされる。偏光板20の品種や品質に制約されない限り、タクトタイムが速くなるため搬送速度が大きいほうが生産性の観点から好ましい。具体的には、搬送速度としては、例えば1〜30m/分程度に設定することができる。
【0027】
それぞれのフィルムが搬送される方向は、特には限定されず、搬送工程の最後においてアクリル系樹脂フィルム25と透明樹脂フィルム23とで偏光フィルム21を挟むようになればよい。その途中段階では、例えば、偏光フィルム21の搬送方向に対して、アクリル系樹脂フィルム25や透明樹脂フィルム23が、図のように垂直に向かう方向へ搬送される部分があってもよいし、平行に搬送される部分があってもよい。また、製造装置の配置上の制約がある場合には、アクリル系樹脂フィルム25や透明樹脂フィルム23が、一旦偏光フィルム21の搬送方向と逆方向へ繰り出されてから、適当なロールによって偏光フィルム21の片面へ向かうように方向転換されて搬送されてもよい。さらに、偏光フィルム21が搬送される横手方向から垂直方向を含む適当な角度で繰り出されてから、適当なロールによって偏光フィルム21の片面へ向かうように方向転換されて搬送されてもよい。
【0028】
[プロテクトフィルム貼合工程(D)]
図示は省略するが、アクリル系樹脂フィルム25は、偏光フィルム21に貼合される面とは反対側にプロテクトフィルムが積層された状態で、原料フィルム搬送工程(A)に供することができる。プロテクトフィルムは、アクリル系樹脂フィルム25の表面を保護し、搬送及び貼合の確実さを高める役割を有している。また、プロテクトフィルムは剛性が高く、いわゆる「こし」があるため、アクリル系樹脂フィルム25やこれを備えた偏光板20に貼合することで、フィルムを保形してカールを抑制する効果もある。この場合、アクリル系樹脂フィルム25は、プロテクトフィルムを貼合するプロテクトフィルム貼合工程を経た後、原料フィルム搬送工程(A)に供される。なお、このプロテクトフィルム貼合工程(D)は、本発明において必須の工程ではなく、任意の工程である。
【0029】
アクリル系樹脂フィルム25とプロテクトフィルムの貼合には、ロールタイプラミネーターなどの貼合機を用いることができる。このプロテクトフィルム貼合工程(D)においては、アクリル系樹脂フィルム25の貼合前張力とプロテクトフィルムの貼合前張力は同じであってもよく、また、異なっても良い。
【0030】
それぞれの貼合前張力を調整する方法は特に限定されないが、例えば、貼合装置に備えられたフィルムの貼合ロールと繰り出されるフィルムロール又はピンチロールにかかるトルクを調節する方法、貼合ロールの周速度と繰り出されるフィルムロール又はピンチロールの周速度とに微差をつけて張力を発生させる方法などを採用することができる。
【0031】
[接着剤塗布工程]
偏光フィルム21とアクリル系樹脂フィルム25との間の貼合、偏光フィルム21と透明樹脂フィルム23との間の貼合は、接着剤を介して行われる。接着剤は、原料フィルム搬送工程(A)中の任意の段階で、偏光フィルム21とアクリル系樹脂フィルム25との貼合面の少なくとも一方に、偏光フィルム21と透明樹脂フィルム23との貼合面の少なくとも一方にそれぞれ塗布することができる。図では、接着剤塗布装置12を用いてアクリル系樹脂フィルム25の貼合面に、接着剤塗布装置13を用いて透明樹脂フィルム23の貼合面に、それぞれ接着剤を塗布しているが、接着剤を塗布する面としてはこれに限定されない。例えば、アクリル系樹脂フィルム25や透明樹脂フィルム23ではなく偏光フィルム21の貼合面に接着剤を塗布してもよく、あるいはアクリル系樹脂フィルム25、透明樹脂フィルム23、偏光フィルム21のすべての貼合面に接着剤を塗布してもよい。
【0032】
ただし、操作性などの観点からは、アクリル系樹脂フィルム25と透明樹脂フィルム23のそれぞれ偏光フィルム21に貼合される面に、接着剤を塗布しておくことが好ましい。すなわち、原料フィルム搬送工程(A)には、その後の貼合工程(B)に備えて、アクリル系樹脂フィルム25と透明樹脂フィルム23とにより偏光フィルム21を挟むように搬送される部分が存在するので、その部分で接着剤を塗布しておくことが好ましい。
【0033】
そこで、好ましくは、原料フィルム搬送工程(A)の途中に接着剤塗布工程が行われる。接着剤は、この接着剤塗布工程において、アクリル系樹脂フィルム25と透明樹脂フィルム23のそれぞれ偏光フィルム21へ貼合される面に塗布される。
【0034】
アクリル系樹脂フィルム25と透明樹脂フィルム23の接着面には、接着剤が塗布される前に、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、又は電子線照射処理のような表面活性化処理が施されてもよい。また、それぞれのフィルムは、必要に応じて洗浄及び乾燥処理を経ていてもよいし、易接着処理剤や表面改質剤などの塗布とそれに引き続く乾燥処理を経ていてもよい。
【0035】
接着剤塗布装置12,13の構造や塗布方法は特に限定されず、必要量の接着剤を均一に塗布できる装置と方法を採用すればよい。例えば、ドクターブレード、ワイヤーバー、ダイコーター、カンマコーター、グラビアコーターなど、各種の塗工方式が採用できる。
【0036】
[貼合工程(B)]
原料フィルム搬送工程(A)において、偏光フィルム21を挟むようにその両側から供給されるアクリル系樹脂フィルム25と透明樹脂フィルム23は、引き続く貼合工程(B)に供給される。この貼合工程(B)では、アクリル系樹脂フィルム25の外側に接触する第1の貼合ロール15と、透明樹脂フィルム23の外側に接触する第2の貼合ロール16により、これらのフィルムが貼合される。
【0037】
ここで、通常の貼合条件、すなわち、第1の貼合ロール15の周速度と第2の貼合ロール16の周速度が同じである場合は、得られる偏光板20はアクリル系樹脂フィルム25側が凸、透明樹脂フィルム23側が凹となり、かつ過度な逆カールとなりやすい。そこで、本発明では、貼合工程(B)において、透明樹脂フィルム23側における搬送方向での収縮応力よりもアクリル系樹脂フィルム25側における収縮応力のほうが大きくなるように、両フィルム23,25に張力を付与した状態で偏光フィルム21に貼合している。
【0038】
このように両フィルム23,25に張力を付与する方法としては、種々の方法があるが、例えば以下の2つの実施形態を挙げることができる。
(B−1)アクリル系樹脂フィルム25の外側に接触する第1の貼合ロール15の周速度に対する透明樹脂フィルム23の外側に接触する第2の貼合ロール16の周速度の比を1.0105以上、1.0414以下とする。
(B−2)透明樹脂フィルム23の単位断面積あたりの貼合前張力に対するアクリル系樹脂フィルム25の単位断面積あたりの貼合前張力の比を1以上とする。
以下、上記(B−1)及び(B−2)の実施形態について順に説明する。
【0039】
(B−1)第1の実施形態
本実施形態では、貼合工程(B)において、第1の貼合ロール15の周速度に対する第2の貼合ロール16の周速度の比が1.0105以上、1.0141以下となるように貼合を行う。この周速度の関係は、第1の貼合ロール15の周速度をR、第2の貼合ロール16の周速度をRとして、以下の式(1)を満たすことを意味する。
1.0105≦R/R≦1.0141 (1)
【0040】
この周速度の比により、アクリル系樹脂フィルム25は大きな力で搬送方向に沿ってフィルムが繰り出され、透明樹脂フィルム23はより小さな力で搬送方向に沿ってフィルムが繰り出される。このため、アクリル系樹脂フィルム25は透明樹脂フィルム23に比べてより張力がかかった状態となる。これにより、アクリル系樹脂フィルム25には相対的に収縮応力が、透明樹脂フィルム23には相対的に引張応力がそれぞれ付与された状態で、次の硬化工程(C)へと搬送され、接着剤が硬化される。その結果、アクリル系樹脂フィルム25と透明樹脂フィルム23の収縮応力の差により、偏光板20が平坦に近い状態となる。
【0041】
第1の貼合ロール15の周速度に対する第2の貼合ロール16の周速度の比が小さくなると、図2(a)に示すような逆カールとなりやすく、反対に周速度の比が大きくなると、図2(b)に示す正カールとなりやすい。
【0042】
第1の貼合ロール15の周速度に対する第2の貼合ロール16の周速度の比が1.0105を下回ると、逆カールのカール量が大きくなりすぎ、液晶セル40への貼合の際に気泡を噛み込みやすくなる。この周速度の比が大きくなるほど、逆カールのカール量が小さくなって平坦に近くなり、ある一定の値を超えると、今度は透明樹脂フィルム23側が凸状の正カールとなる。カール量が小さく若干の正カールであれば、粘着剤層が凸となるため偏光板20を液晶セル40に貼合する際には気泡などが入りにくくなり好ましい。しかしながら、第1の貼合ロール15の周速度に対する第2の貼合ロール16の周速度の比が1.0141を上回ると、今度は正カールのカール量が大きくなりすぎ、液晶セル40への貼合後に偏光板20が液晶セル40から剥がれやすくなるという不都合が生じやすくなる。
【0043】
正カールをプラス(+)、逆カールをマイナス(−)とした場合、カール量は−80〜+80mm程度の範囲内が好ましく、後述する実施例にも示すように、このカール量の範囲内となる周速度の比が1.0105以上、1.0141以下である。このように、第2の貼合ロール16の周速度Rを第1の貼合ロール15の周速度Rよりやや大きくし、両者の比が上記の範囲となるように設定することによって、得られる偏光板20の逆カールや正カールが過度にならず、カール量が適切に制御される。
【0044】
なお、偏光板20のカール量は、次のようにして測定される。まず、ロール状の偏光板20の流れ方向(MD)に沿って適当な大きさに偏光板20を裁断する。大きさとしては、250mm×300mm、あるいは400mm×700mmなどのように任意の大きさに裁断される。カール量を示すときには、測定されたサイズを明記する必要がある。そして、図3に示すように、その偏光板20にカールが発生している場合は凸になっている側を下に向けて、またカールが発生していない場合はどちらかの面を下に向けて、基準面(例えば、水平なテーブルの上)に置き、温度22℃、相対湿度60%の環境下で1時間静置する。この図では、偏光板20にカールがないと仮定したときの面を、四角形ABCDで表される仮想面(図中の点線で示す面)として表示している。最初にカールが観察されなかった場合、温度22℃、相対湿度60%の環境下で1時間静置後に下が凸になっていれば、そのまま以下に示す方法でカール量を測定するが、1時間静置後に上が凸になっていれば、その偏光板20の表裏を反転させて、以下に示す方法でカール量を測定する。一方、1時間静置後にも最初に置いた状態でカールが観察されなければ、偏光板20の表裏を反転させ、表裏反転した状態でもカールが観察されなければカール量はゼロと判定し、表裏反転した状態でカールが観察されれば、その状態にて、以下に示す方法でカール量を測定する。カールが観察される場合には、図に示すように、凸になっている側を下に向けて、カール量を測定することになる。
【0045】
図3(a)は透明樹脂フィルム23側が凹、アクリル系樹脂フィルム25側が凸の、逆カールした偏光板20を示している。逆カールした偏光板20では、アクリル系樹脂フィルム25側を下にして基準面に設置する。逆カールした偏光板20では、仮想面における一つの角AがA1の位置になり、別の角B、C及びDがそれぞれB1、C1及びD1の位置になる。すなわちこの図では、偏光板20の四つの角A1、B1、C1及びD1がすべて浮いている状態を表示しているが、偏光板20の四つの角のうち、一つ、二つ又は三つが浮き上がらない場合もある。もちろん、カールがまったくなければ、四つの角A1、B1、C1、D1がすべて仮想面の四角形ABCDと一致することになる。この状態で偏光板20の四つの角A1、B1、C1及びD1のそれぞれについて、基準面からの高さHを測定し、それらの最大値をもってカール量とする。
【0046】
一方、図3(b)は透明樹脂フィルム23側が凸、アクリル系樹脂フィルム25側が凹の、正カールした偏光板20を示している。正カールした偏光板20では、透明樹脂フィルム23側を下にして基準面に設置する。上記の逆カールと同様に、偏光板20の四つの角A1、B1、C1、D1のそれぞれについて、基準面からの高さHを測定し、それらの最大値をもってカール量とする。
【0047】
貼合ロール15,16を構成する表面の材質は、ステンレス鋼、銅合金、クロムメッキ処理品のような金属類;ポリウレタン、ポリフルオロエチレン、シリコーンのようなゴム類;酸化クロム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウムの1種又は2種以上を溶射して得られるセラミック類;などが挙げられる。なかでも、第1の貼合ロール15はゴムロールとし、第2の貼合ロール16は金属ロールとすることが好ましい。すなわち、比較的薄肉で剛性が弱いアクリル系樹脂フィルム25には表面に弾性のあるゴムロールを当て、一般にアクリル系樹脂フィルム25よりは比較的剛性が高い透明樹脂フィルム23側には金属ロールを当てることにより、両者の周速度の差によって生じる応力を効果的かつ均一にフィルムに与えることができる。
【0048】
(B−2)第2の実施形態
本実施形態では、透明樹脂フィルム23の単位断面積あたりの貼合前張力に対する、アクリル系樹脂フィルム25の単位断面積あたりの貼合前張力の比が1以上となるように貼合を行う。すなわち、透明樹脂フィルム23よりもアクリル系樹脂フィルム25のほうにより大きな張力をかけた状態で貼合することで、アクリル系樹脂フィルム25のほうにより大きな収縮応力を発生させ、過度な逆カールを抑制している。ここで、貼合前張力は、貼合前のフィルムにフィルムの搬送方向に沿った方向に引っ張ることで付与することができる。具体的には、例えばロール状のアクリル系樹脂フィルム25を繰り出す繰出しロール(不図示)よりも、偏光板20をロール状に巻き取る巻取りロール(不図示)のほうが巻取り力が大きくなるように、両ロールの回転速度に差を持たせる方法が挙げられる。
【0049】
ここで、単位断面積あたりの貼合前張力とは、フィルムの幅方向における単位断面積あたりにフィルムにかかる貼合前張力を意味しており、具体的には、以下の式(2)で表すことができる。
単位断面積あたりの貼合前張力(N/mm)=フィルムの貼合前張力(N)/フィルム幅方向の断面積(mm) (2)
例えば、フィルムの貼合前張力が1000N、フィルム幅方向の断面積が2000mmである場合、単位断面積あたりの貼合前張力は0.50(N/mm)となる。
【0050】
本実施形態では、以下の式(3)を満たすように単位断面積あたりの貼合前張力の比を調整する。
単位断面積あたりの貼合前張力の比=アクリル系樹脂フィルム25の単位断面積あたりの貼合前張力/透明樹脂フィルム23の単位断面積あたりの貼合前張力≧1 (3)
【0051】
この貼合前張力の比は、1以上であることが好ましい。この貼合前張力の比が1を下回ると、アクリル系樹脂フィルム25側が大きな凸状となる過度な逆カールが生じやすくなる。貼合前張力の比の上限は特には限定されないが、2以下であることが好ましい。貼合前張力の比が2を上回ると、今度は逆に過度な正カールとなりやすくなるためである。
【0052】
なお、第1の実施形態(B−1)の周速度比と第2の実施形態(B−2)の貼合前張力比は、いずれか一方のみでも逆カールを抑制する効果があるが、周速度比と貼合前張力比の両方の条件を満たすことで、より高い効果を得ることができる。すなわち、第1の貼合ロール15の周速度比に対する第2の貼合ロール16の周速度比が1.0105以上、1.0414以下となるようにしつつ、透明樹脂フィルム23の単位断面積あたりの貼合前張力に対するアクリル系樹脂フィルム25の単位断面積あたりの貼合前張力の比を1以上とする。これにより、透明樹脂フィルム23よりもアクリル系樹脂フィルム25により大きな収縮応力を生じさせ、過度な逆カールをより確実に抑制することが可能となる。
【0053】
[硬化工程(C)]
貼合工程(B)から搬送されてくるアクリル系樹脂フィルム25/接着剤(図示せず)/偏光フィルム21/接着剤(図示せず)/透明樹脂フィルム23の順で貼合された積層体は、硬化工程(C)において、上記の接着剤が硬化され、アクリル系樹脂フィルム25及び透明樹脂フィルム23がそれぞれ偏光フィルム21に接着されて、偏光板20となる。図では、貼合ロール15,16によって貼合された積層体が硬化装置18へ送り込まれ、そこで硬化処理が施されるようになっている。硬化処理は、接着剤の種類に応じて、活性エネルギー線の照射、加熱、乾燥などにより行うことができる。
【0054】
接着剤としては、活性エネルギー線の照射により硬化する活性エネルギー線硬化性接着剤を用いることが好ましい。この場合、硬化工程(C)は、活性エネルギー線の照射により行われる。接着剤の硬化に用いられる活性エネルギー線は、例えば、波長が1pm〜10nmのX線、波長が10〜400nmの紫外線、波長が400〜800nmの可視光線などであってもよい。なかでも、取扱いの容易さ、硬化性接着剤組成物の調製の容易さ及びその安定性、並びにその硬化性能の観点から、紫外線が好ましく用いられる。紫外線の光源には、例えば、波長400nm以下に発光分布を有する、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプなどを用いることができる。
【0055】
紫外線の照射強度は、接着剤の種類や照射時間によって決定され、特に制限されないが、例えば、開始剤の活性化に有効な波長領域の照射強度が0.1〜300mW/cmとなるように設定することが好ましく、更には1〜200mW/cmとなるように設定することがより好ましい。硬化性接着剤組成物への光照射強度が0.1mW/cmを下回ると、硬化反応時間が長くなって、照射時間を長くしなければ硬化しなくなるので、生産性の面で不利になる。一方、光照射強度が300mW/cmを超えると、ランプから輻射される熱や硬化性接着剤組成物の重合時の発熱により、硬化性接着剤組成物の黄変や偏光フィルム21の劣化を生じることがある。
【0056】
紫外線の照射時間も、接着剤の種類や照射強度によって決定され、特に制限されないが、例えば、照射強度と照射時間の積で表される積算光量が10〜5,000mJ/cmとなるように設定することが好ましく、更には50〜1,000mJ/cmとなるように設定することがより好ましい。硬化性接着剤組成物への積算光量が10mJ/cmを下回ると、開始剤由来の活性種の発生が十分となりにくく、得られる接着剤層の硬化が不十分になりやすい。一方、積算光量が5,000mJ/cmを超えると、照射時間が非常に長くなるので、生産性の面で不利になりやすい。
【0057】
硬化工程(C)を活性エネルギー線の照射により行う場合、硬化された接着剤層の厚みは、通常1μm以上、50μm以下であるが、適度の接着力を保って偏光板20を薄くする観点から、20μm以下が好ましく、更には10μm以下がより好ましい。
【0058】
以上、偏光板20の製造方法の一実施形態について説明した。なお、上述した実施形態では、原料フィルム搬送工程(A)を行っている間に、アクリル系樹脂フィルム25にプロテクトフィルムを貼合するプロテクトフィルム貼合工程(D)を行い、その後、貼合工程(B)と硬化工程(C)を行っている。しかしながら、プロテクトフィルム貼合工程(D)を行うタイミングとしては、上述した原料フィルム搬送工程(A)の間に限定されない。例えば、原料フィルム搬送工程(A)、貼合工程(B)、硬化工程(C)を行い、アクリル系樹脂フィルム25/偏光フィルム21/透明樹脂フィルム23の積層体を製造した後で、プロテクトフィルム貼合工程(D)を行ってアクリル系樹脂フィルム25の表面にプロテクトフィルムを貼合してもよい。
【0059】
(偏光板20)
次に、偏光板20について説明する。図4に示すように、偏光板20は、アクリル系樹脂フィルム25と、偏光フィルム21と、透明樹脂フィルム23と、がこの順で積層された層構成を備えている。以下、偏光板20を構成する各層について説明する。
【0060】
(1)偏光フィルム21
偏光フィルム21は、自然光を直線偏光に変換する機能を有する部材である。偏光フィルム21としては、一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素を吸着配向させたものを用いることができる。ポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化したものを用いることができ、ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体などが例示される。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、アンモニウム基を有するアクリルアミド類などが挙げられる。
【0061】
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常85〜100モル%程度であり、好ましくは98モル%以上である。ポリビニルアルコール系樹脂は変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマールやポリビニルアセタールなども使用することができる。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常1,000〜10,000程度であり、好ましくは1,500〜5,000程度である。
【0062】
このようなポリビニルアルコール系樹脂を製膜したものが、偏光フィルム21の原反フィルムとして用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂を製膜する方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法で製膜することができる。ポリビニルアルコール系原反フィルムの厚みは特に限定されないが、例えば5〜150μm程度である。
【0063】
偏光フィルム21は、通常、このようなポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色することにより二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、ホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程、を経て製造される。
【0064】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの一軸延伸は、二色性色素による染色の前、染色と同時、又は染色の後に行うことができる。一軸延伸を染色の後で行う場合には、この一軸延伸は、ホウ酸処理の前に行ってもよいし、ホウ酸処理中に行ってもよい。また、複数の段階で一軸延伸を行うこともできる。一軸延伸には、周速度の異なるロール間で一軸に延伸する方法や、熱ロールを用いて一軸に延伸する方法などが採用できる。また、一軸延伸は、大気中で延伸を行う乾式延伸であってもよいし、水等の溶剤を用いてポリビニルアルコール系樹脂フィルムを膨潤させた状態で延伸を行う湿式延伸であってもよい。延伸倍率は、通常3〜8倍程度である。
【0065】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの二色性色素による染色は、例えば、二色性色素を含有する水溶液にポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬する方法により行うことができる。二色性色素として、具体的にはヨウ素や二色性染料が用いられる。なお、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、染色処理の前に水に浸漬して膨潤させる処理を施しておくことが好ましい。
【0066】
二色性色素としてヨウ素を用いる場合は、通常、ヨウ素及びヨウ化カリウムを含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液におけるヨウ素の含有量は、水100重量部あたり、通常0.01〜1重量部程度であり、ヨウ化カリウムの含有量は、水100重量部あたり、通常0.5〜20重量部程度である。染色に用いる水溶液の温度は、通常20〜40℃程度である。また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常20〜1,800秒程度である。
【0067】
一方、二色性色素として二色性染料を用いる場合は、通常、水溶性二色性染料を含む水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液における二色性染料の含有量は、水100重量部あたり、通常1×10−4〜10重量部程度であり、好ましくは1×10−3〜1重量部程度である。この水溶液は、硫酸ナトリウムなどの無機塩を染色助剤として含有していてもよい。染色に用いる二色性染料水溶液の温度は、通常20〜80℃程度である。また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常10〜1,800秒程度である。
【0068】
二色性色素による染色後のホウ酸処理は、染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸含有水溶液に浸漬することにより行うことができる。ホウ酸含有水溶液におけるホウ酸の含有量は、水100重量部あたり、通常2〜15重量部程度であり、好ましくは5〜12重量部程度である。二色性色素としてヨウ素を用いる場合、このホウ酸含有水溶液はヨウ化カリウムを含有することが好ましい。ホウ酸含有水溶液におけるヨウ化カリウムの含有量は、水100重量部あたり、通常0.1〜15重量部程度であり、好ましくは5〜12重量部程度である。ホウ酸含有水溶液への浸漬時間は、通常60〜1,200秒程度であり、好ましくは150〜600秒程度、更に好ましくは200〜400秒程度である。ホウ酸含有水溶液の温度は、通常50℃以上であり、好ましくは50〜85℃、より好ましくは60〜80℃である。
【0069】
ホウ酸処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、通常、水洗処理される。水洗処理は、例えば、ホウ酸処理されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水に浸漬することにより行うことができる。水洗処理における水の温度は、通常5〜40℃程度であり、浸漬時間は、通常1〜120秒程度である。
【0070】
水洗後は乾燥処理が施されて、偏光フィルム21が得られる。乾燥処理は、熱風乾燥機や遠赤外線ヒーターを用いて行うことができる。乾燥処理の温度は、通常30〜100℃程度であり、好ましくは50〜80℃である。乾燥処理の時間は、通常60〜600秒程度であり、好ましくは120〜600秒である。
【0071】
こうしてポリビニルアルコール系樹脂フィルムに、一軸延伸、二色性色素による染色とホウ酸処理が施され、偏光フィルム21が得られる。偏光フィルム21の厚みは、例えば2〜40μm程度とすることができる。
【0072】
このようにして得られた偏光フィルム21は、そのまま原料フィルム搬送工程(A)へと供するのが好ましい。これにより、ポリビニルアルコール系樹脂の原反フィルムから始まって、偏光板20を製造するまで連続的に生産することができる。
【0073】
(2)アクリル系樹脂フィルム25
アクリル系樹脂フィルム25は、偏光フィルム21の表面の摩損防止や補強などの機能を有する部材であり、アクリル系樹脂から構成される。ここで、アクリル系樹脂とは、(メタ)アクリル系樹脂を意味し、アクリル系樹脂とメタクリル系樹脂の両方を含む概念である。以下、アクリル系樹脂について説明する。
【0074】
(2−1)アクリル系樹脂
アクリル系樹脂は、上述したように(メタ)アクリル系樹脂であり、アクリル酸エステルやメタクリル酸エステルの重合体を意味する。メタクリル酸エステルの重合体としては、例えば、メタクリル酸アルキルを主体とする重合体からなるものが好ましい。メタクリル酸アルキルの単量体組成は、全単量体の合計100重量%を基準として、メタクリル酸アルキルが、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、更に好ましくは90重量%以上であり、かつメタクリル酸アルキルが99重量%以下である。なお、アクリル系樹脂としては、メタクリル酸アルキルの単独重合体であってもよいし、メタクリル酸アルキル50重量%以上とメタクリル酸アルキル以外の単量体50重量%以下との共重合体であってもよい。メタクリル酸アルキルとしては、通常、そのアルキル基の炭素数が1〜4のものが用いられ、中でもメタクリル酸メチルが好ましく用いられる。
【0075】
また、メタクリル酸アルキル以外の単量体は、分子内に1個の重合性炭素−炭素二重結合を有する単官能単量体であってもよいし、分子内に2個以上の重合性炭素−炭素二重結合を有する多官能単量体であってもよい。特に、単官能単量体が好ましく用いられ、その例としては、アクリル酸メチルやアクリル酸エチルのようなアクリル酸アルキル、スチレンやアルキルスチレンのようなスチレン系単量体、アクリロニトリルやメタクリロニトリルのような不飽和ニトリルが挙げられる。共重合成分としてアクリル酸アルキルを用いる場合、その炭素数は通常1〜8である。
【0076】
また、アクリル系樹脂としては、グルタルイミド誘導体、グルタル酸無水物誘導体、ラクトン環構造などを有しないことが好ましい。これらのアクリル系樹脂は、アクリル系樹脂フィルム25として十分な機械強度や耐湿熱性が得られない場合がある。
【0077】
(2−2)ゴム弾性体粒子
柔軟性を向上させてハンドリング性を高めるため、アクリル系樹脂には、ゴム弾性体粒子を配合してもよい。ゴム弾性体粒子は、ゴム弾性体を含有する粒子であり、ゴム弾性体のみからなる粒子であってもよいし、ゴム弾性体の層を有する多層構造の粒子であってもよい。ゴム弾性体としては、例えば、オレフィン系弾性重合体、ジエン系弾性重合体、スチレン−ジエン系弾性共重合体、アクリル系弾性重合体が挙げられる。中でも、アクリル系樹脂フィルム25の表面硬度や耐光性、透明性の点から、アクリル系弾性重合体が好ましく用いられる。
【0078】
アクリル系弾性重合体は、アクリル酸アルキルを主体とする重合体であるのが好ましく、アクリル酸アルキルの単独重合体であってもよいし、アクリル酸アルキル50重量%以上とアクリル酸アルキル以外の単量体50重量%以下との共重合体であってもよい。アクリル酸アルキルとしては、通常、そのアルキル基の炭素数が4〜8のものが用いられる。また、アクリル酸アルキル以外の単量体の例としては、メタクリル酸メチルやメタクリル酸エチルのようなメタクリル酸アルキル、スチレンやアルキルスチレンのようなスチレン系単量体、アクリロニトリルやメタクリロニトリルのような不飽和ニトリル等の単官能単量体や、(メタ)アクリル酸アリルや(メタ)アクリル酸メタリルのような不飽和カルボン酸のアルケニルエステル、マレイン酸ジアリルのような二塩基酸のジアルケニルエステル、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートのようなグリコール類の不飽和カルボン酸ジエステル等の多官能単量体が挙げられる。
【0079】
アクリル系弾性重合体を含有するゴム弾性体粒子は、アクリル系弾性重合体の層を有する多層構造の粒子であるのが好ましく、アクリル系弾性重合体の外側にメタクリル酸アルキルを主体とする重合体の層を有する2層構造のものであってもよいし、更にアクリル系弾性重合体の内側にメタクリル酸アルキルを主体とする重合体の層を有する3層構造のものであってもよい。なお、アクリル系弾性重合体の外側又は内側に形成される層を構成するメタクリル酸アルキルを主体とする重合体の単量体組成の例は、先にアクリル系樹脂の例として挙げたメタクリル酸アルキルを主体とする重合体の単量体組成の例と同様である。このような多層構造のアクリル系ゴム弾性体粒子は、例えば特公昭55−27576号公報に記載の方法により、製造することができる。
【0080】
ゴム弾性体粒子としては、その中に含まれるゴム弾性体の数平均粒径が10〜300nmのものが使用される。これにより、接着剤を用いてアクリル系樹脂フィルム25を偏光フィルム21に積層したときに、アクリル系樹脂フィルム25が接着剤層から剥がれ難くすることができる。このゴム弾性体の数平均粒径は、好ましくは50nm以上、250nm以下である。
【0081】
最外層がメタクリル酸メチルを主体とする重合体であり、その中にアクリル系弾性重合体が包み込まれているゴム弾性体粒子においては、それを母体のアクリル系樹脂に混合すると、ゴム弾性体粒子の最外層が母体のアクリル系樹脂と混和するため、その断面において、酸化ルテニウムによるアクリル系弾性重合体への染色を施し、電子顕微鏡で観察した場合、そのゴム弾性体粒子が、最外層を除いた状態の粒子として観察される。具体的には、内層がアクリル系弾性重合体であり、外層がメタクリル酸メチルを主体とする重合体である2層構造のゴム弾性体粒子を用いた場合には、内層のアクリル系弾性重合体部分が染色されて単層構造の粒子として観察される。また、最内層がメタクリル酸メチルを主体とする重合体であり、中間層がアクリル系弾性重合体であり、最外層がメタクリル酸メチルを主体とする重合体である3層構造のゴム弾性体粒子を用いた場合には、最内層の粒子中心部分が染色されず、中間層のアクリル系弾性重合体部分のみが染色された2層構造の粒子として観察されることになる。
【0082】
なお、本明細書において、ゴム弾性体粒子の数平均粒径とは、このように、ゴム弾性体粒子を母体樹脂に混合して断面を酸化ルテニウムで染色したときに、染色されてほぼ円形状に観察される部分の径の数平均値である。
【0083】
アクリル系樹脂フィルム25を形成するアクリル系樹脂組成物は、透明なアクリル系樹脂に、数平均粒子径が10〜300nmのゴム弾性体粒子が25〜45重量%配合されている。
【0084】
アクリル系樹脂組成物は、例えば、ゴム弾性体粒子を得た後、その存在下にアクリル系樹脂の原料となる単量体を重合させて、母体のアクリル系樹脂を生成させることにより製造してもよいし、ゴム弾性体粒子とアクリル系樹脂とを得た後、両者を溶融混練等により混合することにより製造してもよい。
【0085】
アクリル系樹脂組成物には、必要に応じて、顔料や染料のような着色剤、蛍光増白剤、分散剤、熱安定剤、光安定剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、酸化防止剤、滑剤、溶剤などの配合剤を含有させてもよい。
【0086】
紫外線吸収剤は400nm以下の紫外線を吸収することで、耐久性を向上させるために添加される。紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、アクリロニトリル系紫外線吸収剤等の公知のものが使用可能である。中でも、2,2´−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2´−ヒドロキシ−3´−tert−ブチル−5´−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,4−ジ−tert−ブチル−6−(5−クロロベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール、2,2´−ジヒドロキシ−4,4´−ジメトキシベンゾフェノン、2,2´,4,4´−テトラヒドロキシベンゾフェノン等が好適に用いられる。これらの中でも、特に2,2´−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)が好ましい。
【0087】
紫外線吸収剤の濃度は、アクリル系樹脂フィルム25の波長370nm以下の透過率が、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、更に好ましくは2%以下となる範囲で選択することができる。紫外線吸収剤を含有させる方法としては、紫外線吸収剤を予めアクリル系樹脂中に配合する方法;溶融押出成形時に直接供給する方法などが挙げられ、いずれの方法が採用されてもよい。
【0088】
赤外線吸収剤としては、ニトロソ化合物、その金属錯塩、シアニン系化合物、スクワリリウム系化合物、チオールニッケル錯塩系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、トリアリルメタン系化合物、イモニウム系化合物、ジイモニウム系化合物、ナフトキノン系化合物、アントラキノン系化合物、アミノ化合物、アミニウム塩系化合物、カーボンブラック、酸化インジウムスズ、酸化アンチモンスズ、周期表4A、5A若しくは6A族に属する金属の酸化物、炭化物、ホウ化物等の赤外線吸収剤などを挙げることができる。これらの赤外線吸収剤は、赤外線(波長約800nm〜1100nmの範囲の光)全体を吸収できるように、選択することが好ましく、2種類以上を併用してもよい。赤外線吸収剤の量は、例えば、アクリル系樹脂フィルム25の800nm以上の波長の光線透過率が10%以下となるように適宜調整することができる。
【0089】
アクリル系樹脂組成物のガラス転移温度Tgは、80〜120℃の範囲内が好ましい。さらに、アクリル系樹脂組成物は、フィルムに成形したときの表面の硬度が高いもの、具体的には、鉛筆硬度(荷重500gで、JIS K5600−5−4に準拠)でB以上のものが好ましい。
【0090】
また、アクリル系樹脂組成物は、アクリル系樹脂フィルム25の柔軟性の観点から、曲げ弾性率(JIS K7171)が1500MPa以下であるのが好ましい。この曲げ弾性率は、より好ましくは1300MPa以下であり、更に好ましくは1200MPa以下である。この曲げ弾性率は、アクリル系樹脂組成物中のアクリル系樹脂やゴム弾性体粒子の種類や量などによって変動し、例えば、ゴム弾性体粒子の含有量が多いほど、一般に曲げ弾性率は小さくなる。また、アクリル系樹脂として、メタクリル酸アルキルの単独重合体を用いるよりも、メタクリル酸アルキルとアクリル酸アルキル等との共重合体を用いる方が、一般に曲げ弾性率は小さくなる。
【0091】
また、ゴム弾性体粒子として、上記3層構造のアクリル系弾性重合体粒子を用いるよりも、上記2層構造のアクリル系弾性重合体粒子を用いる方が、一般に曲げ弾性率は小さくなり、更に単層構造のアクリル系弾性重合体粒子を用いる方が、一般に曲げ弾性率は小さくなる。また、ゴム弾性体粒子中、ゴム弾性体の平均粒径が小さいほど、又はゴム弾性体の量が多いほど、一般に曲げ弾性率は小さくなる。そこで、アクリル系樹脂やゴム弾性体粒子の種類や量を上記所定の範囲で調整して、曲げ弾性率が1500MPa以下になるようにすることが好ましい。
【0092】
アクリル系樹脂フィルム25を多層構成とする場合、アクリル系樹脂組成物の層以外に存在しうる層は、その組成に特に限定はなく、例えば、ゴム弾性体粒子を含有しないアクリル系樹脂又はその組成物の層であってもよいし、ゴム弾性体粒子の含有量やゴム弾性体粒子中のゴム弾性体の平均粒径が上記の規定外であるアクリル系樹脂組成物からなる層であってもよい。
【0093】
典型的には2層又は3層構成であって、例えば、アクリル系樹脂組成物の層/ゴム弾性体粒子を含有しないアクリル系樹脂又はその組成物の層からなる2層構成であってもよいし、アクリル系樹脂組成物の層/ゴム弾性体粒子を含有しないアクリル系樹脂又はその組成物の層/アクリル系樹脂組成物の層からなる3層構成であってもよい。多層構成のアクリル系樹脂フィルム25は、アクリル系樹脂組成物の層の面を、偏光フィルム21との貼合面とすればよい。
【0094】
また、アクリル系樹脂フィルム25を多層構成とする場合、ゴム弾性体粒子や上記配合剤の各層の含有量を互いに異ならせてもよい。例えば、紫外線吸収剤及び/又は赤外線吸収剤を含有する層と、この層を挟んで紫外線吸収剤及び/又は赤外線吸収剤を含有しない層とが積層されていてもよい。また、アクリル系樹脂組成物の層の紫外線吸収剤の含有量が、ゴム弾性体粒子を含有しないアクリル系樹脂又はその組成物の層の紫外線吸収剤の含有量よりも、高くなるようにしてもよく、具体的には、前者を好ましくは0.5〜10重量%、より好ましくは1〜5重量%とし、後者を好ましくは0〜1重量%、より好ましくは0〜0.5重量%としてもよく、これにより、偏光板20の色調を悪化させることなく、紫外線を効率的に遮断することができ、長期使用時の偏光度の低下を防ぐことができる。
【0095】
アクリル系樹脂フィルム25は、延伸されていない無配向性のものでもよく、延伸されたものでもよい。延伸処理を行わない場合、膜厚が厚くなるため偏光板20の層膜厚が厚くなりやすくなるが、一方で膜厚が厚いためアクリル系樹脂フィルム25のハンドリング性が良好になる。このようなアクリル系樹脂フィルム25は、アクリル系樹脂組成物を製膜して得られた未延伸フィルム(原反フィルム)から得ることができる。反対に、延伸した場合には、位相差が発現しやすくなる一方で、延伸することでアクリル系樹脂フィルム25の膜厚が薄くなるとともに剛性も向上するという利点がある。延伸フィルムは、未延伸フィルムを任意の方法で延伸することで製造することができる。
【0096】
アクリル系樹脂は、任意の方法で製膜して未延伸フィルムとすることができる。この未延伸フィルムは、透明で実質的に面内位相差がないものが好ましい。製膜方法としては、例えば、溶融樹脂を膜状に押し出して製膜する押出成形法、有機溶剤に溶解させた樹脂を平板上に流延した後で溶剤を除去して製膜する溶剤キャスト法などを採用することができる。
【0097】
押出成形法の具体例としては、例えば、アクリル系樹脂組成物を2本の金属製ロールで挟み込んだ状態で製膜する方法が挙げられる。この場合の金属製ロールは鏡面ロールであることが好ましい。これにより、表面平滑性に優れた未延伸フィルムを得ることができる。なお、アクリル系樹脂フィルム25として多層構成のものを得る場合、アクリル系樹脂組成物を、他のアクリル系樹脂組成物と共に、多層押出後、製膜すればよい。このようにして得られる未延伸フィルムの厚みは、5〜200μmであることが好ましく、より好ましくは10μm〜85μmである。
【0098】
アクリル系樹脂からなる未延伸フィルムは、一軸延伸、二軸延伸など公知の方法で延伸することができる。延伸方法としては、テンター延伸機を用いたテンター法を挙げることができる。二軸延伸は、2つの延伸方向に同時に延伸する同時二軸延伸でもよく、所定方向に延伸した後で他の方向に延伸する逐次二軸延伸であってもよい。
【0099】
次に、アクリル系樹脂フィルム25のヘイズ値について説明する。ヘイズ値とは、フィルムに可視光を照射したときの全光線透過率に対する拡散光線透過率の割合であり、ヘイズ値が小さいほどフィルムが透明性に優れているものであることが認められる。また、内部ヘイズ値とは、フィルムのヘイズ値より、フィルムの表面形状に起因するヘイズ値(外部ヘイズ値)を差し引いた値を示す。
【0100】
アクリル系樹脂フィルム25のヘイズ値は、上述したように内部ヘイズ値が1.0%以下、より好ましくは0.5%以下であり、外部ヘイズ値が5%以下であることが好ましい。内部ヘイズ値が1.0%、外部ヘイズ値が5%を超えると、フィルムを透過する光が散乱し、液晶表示装置1に貼合した際に表示特性が低下してしまう場合がある。
【0101】
なお、アクリル系樹脂フィルム25に表面処理することで、アクリル系樹脂フィルム25単体では持ち合わせなかった機能を付与することが可能である。例えば、アクリル系樹脂フィルム25には、液晶モジュールの組立工程における表面の擦り傷防止の観点から、ハードコート処理を施すことができる。また、帯電防止処理などの表面処理を施すこともできる。ただし、アクリル系樹脂フィルム25を偏光フィルムの保護フィルムとして用い、偏光板20を形成する場合、帯電防止機能は、上記のアクリル系樹脂フィルム25に表面処理を施すことによって付与することができるほか、粘着剤層など、この基材フィルムが組み込まれた偏光板20の他の部分に付与することもできる。アクリル系樹脂フィルム25への表面処理としては、その他、反射防止処理や防汚処理なども挙げることができる。さらには、視認性向上、外光の映り込み防止、プリズムシートとカラーフィルターの干渉によるモアレ低減などの観点から、防眩処理を施すこともできる。
【0102】
(3)透明樹脂フィルム23
透明樹脂フィルム23は、透明性に優れた樹脂で構成されるものが好ましい。このような樹脂として、例えば、ポリカーボネート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、(メタ)アクリレート系樹脂、環状オレフィン系樹脂やポリプロピレン系樹脂を包含するオレフィン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース系樹脂などを挙げることができる。透明樹脂フィルム23は、延伸されていない未延伸フィルムであるか、又は一軸若しくは二軸延伸された延伸フィルムであることが好ましい。
【0103】
この透明樹脂フィルム23が延伸フィルムである場合、延伸によって適当な位相差が付与されたものとなる。位相差が付与されたフィルムは、1/4波長板や1/2波長板のような波長板であってもよいし、視野角補償フィルムなどであってもよい。位相差フィルムの膜厚は、通常10〜200μm程度であり、好ましくは20〜120μmである。
【0104】
位相差フィルムとして視野角補償フィルムを使用する場合、液晶セル40に採用されているモードを考慮する必要がある。例えば、垂直配向(Vertical Alignment:VA)モードの液晶セル40であれば、視野角補償フィルムとして、正の固有複屈折を有する高分子フィルムが一軸延伸され、屈折率楕円体がn>n≒nの関係を有するポジティブAプレート、横延伸や逐次二軸延伸が施され、n>n>nの関係を有する二軸性のフィルム、又はn≒n>nの関係を有するネガティブCプレートを用いることができる。ここで、nはフィルムの面内遅相軸(x軸)方向の屈折率、nは面内進相軸(y軸:遅相軸と面内で直交する軸)方向の屈折率、そしてnは厚み(z軸)方向の屈折率である。
【0105】
透明樹脂フィルム23としては、特に、二軸延伸された二軸性のフィルムが好ましく用いられる。二軸性の視野角補償フィルムを使用する場合、その二軸性の目安となるN係数は、次の式(4)で定義され、さらに、膜厚をdとしたときの面内の位相差値R及び厚み方向の位相差値Rthは、それぞれ次の式(5)及び(6)で定義される。
=(n−n)/(n−n) (4)
=(n−n)×d (5)
th=〔(n+n)/2−n〕×d (6)
【0106】
また、上記式(4)〜(6)から、N係数と、面内の位相差値R及び厚み方向の位相差値Rthとの関係は、次の式(7)で表すことができる。
=Rth/R+0.5 (7)
【0107】
透明樹脂フィルム23として視野角補償フィルムを用いる場合、その面内の位相差値Rは、30〜300nmの範囲、とりわけ50〜260nmの範囲にあることが好ましい。またN係数は、1.1〜7の範囲、とりわけ1.4〜5の範囲にあることが好ましい。これらの範囲から、適用される液晶表示装置に要求される視野角特性に合わせて、適宜光学特性の値を選択すればよい。
【0108】
透明樹脂フィルム23が位相差フィルムである場合、偏光フィルム21と位相差フィルムとを貼合する際には、偏光フィルム21の吸収軸と位相差フィルムの遅相軸とのなす角度を、その用途に応じて適宜選択すればよい。例えば、位相差フィルムが視野角補償フィルムである場合には、偏光フィルム21の吸収軸と視野角補償フィルムの遅相軸とのなす角度は、実質的に0°又は90°とされる。
【0109】
一方、透明樹脂フィルム23が未延伸フィルムの場合、位相差はほぼ発現せず、偏光フィルム21の保護フィルムとして機能する。未延伸フィルムとしての透明樹脂フィルム23は、液晶セル40に採用されているモードのうち、例えば、IPS(In Plane Switching)モードの液晶セル40に好適に用いることができる。
【0110】
(4)接着剤(不図示)
偏光フィルム21とアクリル系樹脂フィルム25との貼合や、偏光フィルム21と透明樹脂フィルム23との貼合には、接着剤が用いられる。この接着剤は、活性エネルギー線の照射、加熱、乾燥などによって硬化し、偏光フィルム21とアクリル系樹脂フィルム25、偏光フィルム21と透明樹脂フィルム23を、実用に足る強度で接着できるものであればよい。具体的には、例えば以下のような接着剤組成物が挙げられる。
グリシジルエーテル系エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、及びオキセタン化合物のようなカチオン重合性化合物に、光カチオン重合開始剤を配合してなるカチオン重合性の光硬化性接着剤組成物;
アクリル系化合物のようなラジカル重合性化合物に、光ラジカル重合開始剤を配合してなるラジカル重合性の光硬化性接着剤組成物;
上に示したカチオン重合性又はラジカル重合性の化合物に、熱重合開始剤、すなわち熱カチオン発生剤又は熱ラジカル発生剤を配合してなる熱硬化性接着剤組成物;
水溶性又は親水性の架橋性エポキシ化合物又はウレタン化合物に、必要に応じてポリビニルアルコール系樹脂のような反応性基を有する水溶性樹脂を配合した水溶液又は水分散液からなる水系接着剤組成物。
【0111】
エポキシ化合物は、市販品を容易に入手することが可能である。市販品の例を挙げると、それぞれ商品名で、ジャパンエポキシレジン(株)から販売されている「エピコート」、DIC(株)から販売されている「エピクロン」、東都化成(株)から販売されている「エポトート」、(株)ADEKAから販売されている「アデカレジン」、ナガセケムテックス(株)から販売されている「デナコール」、ダウケミカル社から販売されている「ダウエポキシ」、日産化学工業(株)から販売されている「テピック」などがある。
【0112】
また、飽和炭素環に直接エポキシ基が結合している脂環式エポキシ化合物も、市販品を容易に入手することができる。市販品の例を挙げると、それぞれ商品名で、ダイセル化学工業(株)から販売されている「セロキサイド」及び「サイクロマー」、ダウケミカル社から販売されている「サイラキュア」などがある。
【0113】
エポキシ化合物を含有する硬化性接着剤組成物は、さらにエポキシ化合物以外の活性エネルギー線硬化性化合物を含有してもよい。エポキシ化合物以外の活性エネルギー線硬化性化合物としては、例えば、オキセタン化合物やアクリル化合物などが挙げられる。なかでも、カチオン重合において硬化速度を向上させることができることから、オキセタン化合物を併用することが好ましい。
【0114】
オキセタン化合物も、市販品を容易に入手することができる。市販品の例を挙げると、それぞれ商品名で、東亞合成(株)から販売されている「アロンオキセタン」、宇部興産(株)から販売されている「ETERNACOLL」などがある。
【0115】
エポキシ化合物やオキセタン化合物を包含する硬化性化合物は、これらを配合してなる硬化性接着剤組成物を無溶剤とするために、有機溶剤などで希釈されていないものを用いることが好ましい。また、後述する接着剤組成物を構成する光カチオン重合開始剤や増感剤を包含する少量成分も、有機溶剤に溶解されたものよりも、有機溶剤が除去・乾燥されたその化合物単独の粉体又は液体を用いることが好ましい。
【0116】
光カチオン重合開始剤は、活性エネルギー線、例えば紫外線の照射を受けてカチオン種を発生させるものであり、それが配合された接着剤組成物に求められる接着強度及び硬化速度を与えるものであればよい。例えば、芳香族ジアゾニウム塩;芳香族ヨードニウム塩や芳香族スルホニウム塩のようなオニウム塩;鉄−アレン錯体などが挙げられる。これらの光カチオン重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよいし、異なる複数種を併用してもよい。
【0117】
光カチオン重合開始剤も市販品を容易に入手することが可能である。市販品の例を挙げると、それぞれ商品名で、日本化薬(株)から販売されている「カヤラッド」、ユニオンカーバイド社から販売されている「サイラキュア」、サンアプロ(株)から販売されている光酸発生剤「CPI」、ミドリ化学(株)から販売されている光酸発生剤「TAZ」、「BBI」、「DTS」、(株)ADEKAから販売されている「アデカオプトマー」、ローディア社から販売されている「RHODORSIL」などがある。
【0118】
光カチオン重合開始剤の配合量は、光硬化性接着剤組成物の総量100重量部に対し、通常0.5〜20重量部であり、好ましくは1〜15重量部である。その量が0.5重量部を下回ると、硬化が不十分になり、接着剤層の機械強度や接着強度を低下させることがある。また、その量が20重量部を超えると、接着剤層中のイオン性物質が増加することで接着剤層の吸湿性が高くなり、得られる偏光板20の耐久性能を低下させることがある。
【0119】
光硬化性接着剤組成物は、必要に応じて光増感剤を含有することができる。光増感剤を使用することにより、反応性が向上し、接着剤層の機械強度や接着強度をさらに向上させることができる。光増感剤としては、例えば、カルボニル化合物、有機硫黄化合物、過硫化物、レドックス系化合物、アゾ化合物、ジアゾ化合物、ハロゲン化合物、光還元性色素などが挙げられる。
【0120】
光増感剤となりうるカルボニル化合物の例を挙げると、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、及びα,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノンのようなベンゾイン誘導体;9,10−ジブトキシアントラセンのようなアントラセン化合物;ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4´−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、及び4,4´−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンのようなベンゾフェノン及びその誘導体;2−クロロアントラキノン、及び2−メチルアントラキノンのようなアントラキノン誘導体;N−メチルアクリドン、及びN−ブチルアクリドンのようなアクリドン誘導体;α,α−ジエトキシアセトフェノンのようなアセトフェノン誘導体;キサントン誘導体;フルオレノン誘導体などがある。光増感剤となりうる有機硫黄化合物の例を挙げると、2−クロロチオキサントン、及び2−イソプロピルチオキサントンのようなチオキサントン誘導体などがある。その他に、ベンジル化合物やウラニル化合物なども、光増感剤として用いることができる。これらの光増感剤は、それぞれ単独で用いてもよいし、異なる複数種を併用してもよい。
【0121】
光増感剤を配合する場合、その配合量は、光硬化性接着剤組成物の総量100重量部に対して、0.1〜20重量部の範囲とすることが好ましい。
【0122】
光硬化性接着剤組成物には、その効果を損なわない範囲で各種の添加剤を配合することができる。添加剤としては、例えば、イオントラップ剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、粘着付与剤、熱可塑性樹脂、充填剤、流動調整剤、可塑剤、消泡剤などが挙げられる。
【0123】
光硬化性接着剤組成物は、フィルムに適当な方法で塗工できる粘度を有するものであればよいが、その25℃における粘度は、10〜30,000mPa・secの範囲にあることが好ましく、50〜6,000mPa・secの範囲にあることがより好ましい。その粘度が10mPa・secを下回ると、塗工できる装置が限られ、塗工できたとしてもムラのない均質な塗膜が得られにくくなる傾向にある。一方、その粘度が30,000mPa・secを超えると、流動しにくくなって、同じく塗工できる装置が限られ、ムラのない均質な塗膜が得られにくくなる傾向にある。ここでいう粘度は、B型粘度計を用いてその組成物を25℃に調温した後、60rpmで測定される値である。
【0124】
(5)粘着剤層(不図示)
粘着剤層は、粘着性を有する層であり、偏光板20を液晶セル40に貼合するために用いられる。粘着剤層を形成する粘着剤としては、例えば、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテルなどをベースポリマーとするものが挙げられる。なかでも、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤は、光学的な透明性に優れ、適度の濡れ性や凝集力を保持し、更に耐候性や耐熱性などに優れ、加熱や加湿の条件下でも、浮きや剥がれなどのセパレート問題が生じにくいため、好ましく用いられる。
【0125】
アクリル系粘着剤を構成するアクリル系ベースポリマーには、エステル部分が、メチル基、エチル基、ブチル基、又は2−エチルヘキシル基のような炭素数20以下のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルと、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルのような官能基含有(メタ)アクリル系モノマーとのアクリル系共重合体が好ましく用いられる。このようなアクリル系共重合体を含む粘着剤層は、液晶セル40に貼合した後で何らかの不具合があって剥離する必要が生じた場合に、ガラス基板に糊残りなどを生じさせることなく、比較的容易に剥離することができる。粘着剤に用いるアクリル系共重合体は、そのガラス転移温度が25℃以下であることが好ましく、0℃以下であることがより好ましい。また、このアクリル系共重合体は、通常10万以上の重量平均分子量を有する。
【0126】
粘着剤層を形成する粘着剤として、光拡散剤が分散された拡散粘着剤を用いることもできる。光拡散剤は、粘着剤層に光拡散性を付与するためのものである。光拡散剤は、粘着剤層を構成するベースポリマーと異なる屈折率を有する微粒子であればよく、無機化合物からなる微粒子や有機化合物(ポリマー)からなる微粒子を用いることができる。上記したようなアクリル系ベースポリマーを含めて、粘着剤層を構成するベースポリマーは1.4前後の屈折率を示すことが多いので、光拡散剤は、その屈折率が1〜2程度のものから適宜選択すればよい。粘着剤層を構成するベースポリマーと光拡散剤との屈折率差は、通常0.01以上であり、適用される液晶表示装置1の明るさや視認性を確保する観点からは、0.01以上0.5以下であることが好ましい。光拡散剤として用いる微粒子は、球形のもの、それも単分散に近いものが好ましく、平均粒径が2〜6μm程度の微粒子が好適に用いられる。
【0127】
無機化合物からなる微粒子としては、例えば、酸化アルミニウム(屈折率1.76)、酸化ケイ素(屈折率1.45)などを挙げることができる。また、有機化合物(ポリマー)からなる微粒子としては、例えば、メラミン樹脂ビーズ(屈折率1.57)、ポリメタクリル酸メチルビーズ(屈折率1.49)、メタクリル酸メチル/スチレン共重合体樹脂ビーズ(屈折率1.50〜1.59)、ポリカーボネートビーズ(屈折率1.55)、ポリエチレンビーズ(屈折率1.53)、ポリスチレンビーズ(屈折率1.6)、ポリ塩化ビニルビーズ(屈折率1.46)、シリコーン樹脂ビーズ(屈折率1.46)などが挙げられる。
【0128】
光拡散剤の配合量は、それが分散される粘着剤層に必要とされるヘイズ値や、それが適用される液晶表示装置1の明るさなどを考慮して適宜決められるが、通常、粘着剤層を構成するベースポリマー100重量部に対して3〜30重量部程度である。
【0129】
光拡散剤が分散された粘着剤層のJIS K 7361に従って測定されるヘイズ値は、適用される液晶表示装置1の明るさを確保するとともに、表示像のにじみやボケを生じにくくする観点から、20〜80%の範囲とすることが好ましい。
【0130】
透明な粘着剤又は拡散粘着剤を構成する各成分(ベースポリマー、光拡散剤、架橋剤など)は、酢酸エチルなどの適当な溶剤に溶かして粘着剤組成物とされる。ただし、光拡散剤などの溶剤に溶けない成分は、分散された状態となる。この粘着剤組成物を透明樹脂フィルム23や離型フィルム(不図示)上に塗布し、乾燥させることにより、粘着剤層を形成することができる。
【0131】
粘着剤層は、偏光板20に帯電する静電気を除電するために、帯電防止性を有することが好ましい。偏光板20は、粘着剤層上に積層された離型フィルムを剥離して液晶セル40に貼合するときなどに、静電気を帯びることがある。このとき、粘着剤層が帯電防止性を有していると、その静電気が速やかに除電され、液晶セル40の表示回路が破壊されたり、液晶分子が配向を乱されたりすることが抑制される。
【0132】
粘着剤層に帯電防止性を付与する方法としては、例えば、粘着剤組成物に、金属微粒子、金属酸化物微粒子、又は金属等をコーティングした微粒子等を含有させる方法;電解質塩とオルガノポリシロキサンとからなるイオン導電性組成物を含有させる方法;有機塩系の帯電防止剤を配合する方法などが挙げられる。求められる帯電防止性の保持時間は、一般的な偏光板の製造、流通及び保管期間の観点から、最低6ヶ月程度である。
【0133】
粘着剤層は、接着剤層を硬化させるため、活性エネルギー線を通す場合がある。そのため、活性エネルギー線の該当スペクトル領域に高透過率を有することが好ましい。なお、活性エネルギー線の照射により粘着剤としての諸特性が変化しないことが好ましい。
【0134】
粘着剤層は、例えば、温度23℃、相対湿度65%の環境下で3〜20日程度熟成され、架橋剤の反応を十分に進行させた後、液晶セル40への貼合に供される。
【0135】
粘着剤層の厚みは、その接着力などに応じて適宜決定されるが、通常、1〜40μm程度である。加工性や耐久性などの特性を損なうことなく、薄型の偏光板20を得るためには、粘着剤層の厚みは3〜25μm程度とすることが好ましい。また、光拡散剤が分散された粘着剤層を用いる場合、粘着剤層の厚みをこの範囲とすることにより、液晶表示装置1を正面から見た場合や斜めから見た場合の明るさを保ち、表示像のにじみやボケを生じにくくすることができる。
【0136】
(6)プロテクトフィルム(不図示)
アクリル系樹脂フィルム25のうち偏光フィルム21に貼合される面とは反対側の面には、プロテクトフィルムを積層することができる。プロテクトフィルムは、剥離可能なフィルムであり、アクリル系樹脂フィルム25の表面を損傷、摩損などから保護するための部材である。プロテクトフィルムは、透明樹脂からなる基材フィルムと、この基材フィルムの表面に積層された弱い接着性を有する粘着剤層と、により構成される。プロテクトフィルムは、偏光板20の使用時までアクリル系樹脂フィルム25に貼合されており、使用時においてはアクリル系樹脂フィルム25から剥離される。
【0137】
プロテクトフィルムは、市販品として容易に入手することができる。市販品の例を挙げると、藤森工業(株)から販売されている「マスタック」、(株)サンエー化研から販売されている「サニテクト」、日東電工(株)から販売されている「イーマスク」、東レフィルム加工(株)から販売されている「トレテック」などがある。
【0138】
(6−1)基材フィルム
基材フィルムは、透明樹脂からなるものであれば特に限定されない。このような透明樹脂としては、例えば、ポリメタクリル酸メチルに代表されるアクリル系樹脂、ポリプロピレンやポリエチレンに代表されるオレフィン系樹脂、ポリブチレンテフタレートやポリエチレンテフタレートに代表されるポリエステル系樹脂などが挙げられる。特に、透明性や均質性に優れ、なおかつこしが強く廉価であることから、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0139】
また、基材フィルムには、剛性を高めてこしを強くするために、造核剤が配合されてもよい。造核剤は、ポリマー分子中で結晶の核となる物質で、基材フィルムに配合することでポリマーの結晶化度を高めて基材フィルムの弾性率を上げる効果がある。造核剤としては、無機系造核剤又は有機系造核剤のいずれも用いることができる。無機系造核剤としては、例えば、タルク、クレイ、炭酸カルシウムなどが挙げられる。また、有機系造核剤としては、例えば、芳香族カルボン酸の金属塩類、芳香族リン酸の金属塩類などの金属塩類や、高密度ポリエチレン、ポリ−3−メチルブテン−1、ポリシクロペンテン、ポリビニルシクロヘキサンなどの高分子化合物が挙げられる。これらの中でも有機系造核剤が好ましく、更に好ましくは上記の金属塩類や高密度ポリエチレンである。また、基材フィルム中の造核剤の含有量は、0.01〜3重量%が好ましく、0.05〜1.5重量%がより好ましい。造核剤は、1種のみを用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
【0140】
基材フィルムの厚みは、15〜75μmであることが好ましい。この厚みが15μmを下回ると、取扱い性に劣ったり、本来求められる表面保護性能が低下したりすることがある。一方、この厚みが75μmを超えると、剛性が強すぎて、やはり取扱い性に劣ったり、剥離強度が高くなったりすることがある。
【0141】
基材フィルムの引張弾性率は、長尺方向(MD)において1,000MPa以上であることが好ましく、3,000MPa以上であることがより好ましい。この引張弾性率が小さすぎると、取扱い性に劣ったり、アクリル系樹脂フィルム25に貼合するときの張力に耐えられなかったりすることがある。なお、基材フィルムの表面には、防汚処理、反射防止処理、ハードコート処理、帯電防止処理などが施されていてもよい。
【0142】
(6−2)粘着剤層
粘着剤層としては、アクリル系粘着剤など、公知の再剥離用粘着剤を使用することができる。このうち特に、プロテクトフィルムのこしの強さの観点から、弾性率が高く硬さのあるアクリル系樹脂が好ましい。また、こしの強さの点からは、粘着剤層の厚みは厚いほうがよい。また、粘着剤層には、剥離時に静電気を発生させないため、帯電防止剤などが含有されていてもよい。
【0143】
アクリル系粘着剤としては、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸2−エチルヘキシルのようなアクリル酸エステルの1種又は2種以上をベースとし、これに極性モノマーが共重合されたポリマーで構成されるものが挙げられる。極性モノマーとしては例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートのような、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、エポキシ基などを有するモノマーを挙げることができる。なお、粘着剤には、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物などの架橋剤が配合されていてもよい。
【実施例】
【0144】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。以下の例において、使用量を表す部は、特にことわりがない限り重量基準である。また、各例における物性値の測定は、以下の方法により行った。
【0145】
[フィルムのカール量の測定]
先に図4を参照して行った説明に準じた方法で、プロテクトフィルムが貼着されたアクリル系樹脂フィルム、偏光板、並びに粘着剤層付き偏光板(剥離フィルムが付いた状態、及び剥離フィルムを剥がした状態)のそれぞれについて、フィルムの凸となっている側を下に向けてカール量を測定した。アクリル系樹脂フィルム側が凸となる場合を正カール、凹となる場合を逆カールとする。
【0146】
[フィルムの引張弾性率の測定]
フィルムの引張弾性率は、JIS K 7161「プラスチック−引張特性の試験方法 第1部:通則」に規定された方法で、オートグラフ(型式「AG−1」、(株)島津製作所製)を用い、温度22℃、相対湿度53%の条件にて測定した。
【0147】
[実施例1]
(a)アクリル系樹脂フィルムの製造
(アクリル系樹脂とアクリル系弾性重合体粒子)
メタクリル酸メチル/アクリル酸メチルの重量比96/4の共重合体を、アクリル系樹脂とした。また、最内層が、メタクリル酸メチルに少量のメタクリル酸アリルを用いて重合された硬質の重合体、中間層が、アクリル酸ブチルを主成分とし、さらにスチレン及び少量のメタクリル酸アリルを用いて重合された軟質の弾性体、最外層が、メタクリル酸メチルに少量のアクリル酸エチルを用いて重合された硬質の重合体からなる3層構造の弾性体粒子であって、中間層である弾性体までの平均粒径が240nmのものを、アクリル系弾性重合体粒子とした。
【0148】
(アクリル系樹脂フィルムの作製)
上記のアクリル系樹脂と上記のアクリル系弾性重合体粒子が前者/後者=70/30の重量比で配合されているペレットを二軸押出機で溶融混練しつつ、アクリル系樹脂組成物のペレットとした。このペレットを65mmφの一軸押出機に投入し、設定温度275℃のT型ダイを介して押し出し、押し出されたフィルム状溶融樹脂の両面を、45℃に温度設定された鏡面を有する2本のポリシングロールで挟み込んで冷却し、アクリル系樹脂フィルムを作製した。
【0149】
(b)アクリル系樹脂フィルムへのプロテクトフィルムの貼合
片面に弱粘着性のアクリル系粘着剤層が設けられた厚み60μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを用意し、これをプロテクトフィルムとした。このポリエチレンテレフタレートフィルムは、長尺方向(MD)の引張弾性率が3,500MPaであった。これを、プロテクトフィルムの粘着剤層がアクリル系樹脂フィルムと重なるように、アクリル系樹脂フィルムとプロテクトフィルムをロールタイプラミネーターで貼合した。このとき、プロテクトフィルム貼着アクリル系樹脂フィルムから250mm×300mm切り出し、カールの測定を行った。このときのカール値は、最小値7.0mmで、最大値31.0mmであり、正カールであった。
【0150】
(c)偏光板の作製
ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向している偏光フィルムの片面に、上記(b)で作製したプロテクトフィルム貼着アクリル系樹脂フィルムのアクリル系樹脂フィルム側を、偏光フィルムの他面には、日本ゼオン(株)から入手した環状オレフィン系樹脂の二軸延伸フィルムであって厚み50μmの「ゼオノアフィルム」(面内の位相差値R=55nm、厚み方向の位相差値Rth=124nm)をそれぞれ貼合して、偏光板を作製した。
【0151】
貼合にあたっては、上記プロテクトフィルム貼着アクリル系樹脂フィルム及び環状オレフィン系樹脂フィルムのそれぞれ偏光フィルムへの貼合面に、紫外線硬化性接着剤組成物を塗布し、それぞれの塗布面を上記偏光フィルムの両面に重ねた後、2本の貼合ロール15,16の間に通して一体化した。ここで、第1の貼合ロール15には、表面がゴムになっているゴムロールを使用し、第2の貼合ロール16には、表面にクロムメッキが施された金属ロールを使用した。また、アクリル系樹脂フィルム側に配置された第1の貼合ロール15の周速度Rに対する、環状オレフィン系樹脂フィルム側に配置された第2の貼合ロール16の周速度Rの比(周速度の比)R/Rを1.0113とした。
【0152】
また、貼合にあたっては、上記プロテクトフィルム貼着アクリル系樹脂フィルムと環状オレフィン系樹脂フィルムのそれぞれに搬送方向(フィルムの長手方向)に沿った方向に貼合前張力を付与し、この状態で偏光フィルムに貼合した。貼合前張力は、各フィルムを繰り出す繰出しロールと、積層された偏光板を巻き取る巻取りロールの回転速度の差により生じさせた。貼合前張力の測定は、貼合ロール前に設置したテンションピックアップを用いて行った。さらに、アクリル系樹脂フィルムと環状オレフィン系樹脂フィルムのそれぞれの断面積を算出し、上記で得られた貼合前張力を断面積で除することで単位断面積あたりの貼合前張力を算出した。アクリル系樹脂フィルムの単位断面積あたりの貼合前張力をT、環状オレフィン系樹脂フィルムの単位断面積あたりの貼合前張力をTとしたとき、環状オレフィン系樹脂フィルムの単位断面積あたりの貼合前張力Tに対するアクリル系樹脂フィルムの単位断面積あたりの貼合前張力Tの比(貼合前張力比)T/Tは0.94であった。
【0153】
貼合後、メタルハライドランプを光源とする紫外線照射装置を用い、320〜400nmの波長における積算光量が200mJ/cmとなるように環状オレフィン系樹脂フィルム側から紫外線照射して接着剤を硬化させ、得られた偏光板をロールに巻き取った。
【0154】
(d)偏光板のカール評価
上記(c)で得られた偏光板から400mm×700mmのサンプルを切り出し、25℃で1時間放置した。その後、プロテクトフィルムを剥がした状態で、そのカール量を前記の方法により測定したところ、環状オレフィン系樹脂フィルム側が凹となる逆カールであり、最大値−39.0mmであった。この結果を表1に示した。
【0155】
[実施例2]
実施例1の(c)において、周速度比R/Rを1.0107とし、その他は実施例1と同様にして偏光板を作製した。得られた偏光板のカール量を(d)と同じ方法で測定したところ、環状オレフィン系樹脂フィルム側が凹となる逆カールであり、最大値−79.0mmであった。この結果を表1に示した。
【0156】
[実施例3]
実施例1の(c)において、単位断面積あたりの貼合前張力の比を1.1とし、その他は実施例1と同様にして偏光板を作製した。得られた偏光板のカール量を(d)と同じ方法で測定したところ、環状オレフィン系樹脂フィルム側が凹となる逆カールであり、最大値−4.0mmであった。この結果を表1に示した。
【0157】
[比較例1]
実施例1の(c)において、周速度比R/Rを1.0098とし、その他は実施例1と同様にして偏光板を作製した。得られた偏光板のカール量を(d)と同じ方法で測定したところ、環状オレフィン系樹脂フィルム側が凹となる逆カールであり、最大値−107.0mmであった。この結果を表1に示した。
【0158】
【表1】

【0159】
(e)データの外挿
図5は、同じ貼合前張力の比で実験した実施例1,2と比較例1で得られた結果をプロットしたグラフである。カール量のマイナス(−)は逆カール、プラス(+)は正カールであることを示している。この図に示すとおり、周速度比R/Rとカール量との間には相関関係があり、両者の関係はリニア(一次関数)の関係にあることが分かった。横軸xを周速度比、縦軸yをカール量としたとき、回帰直線は以下の式(8)で表される。また、このときの相関係数R=0.9539であった。
y=44211x−44754 ・・・(8)
【0160】
そこで、この回帰直線を外挿し、カール量が−80〜+80mmとなる範囲を求めた。その結果、周速度比R/Rは1.0105以上、1.0141以下の範囲であることが分かった。すなわち、周速度比がこの範囲内であれば、カール量が過度とならずに適切な範囲内であると考えられる。
【0161】
また、同じ周速度の比(1.0113)で実験した実施例1と実施例3を比較すると、単位断面積あたりの貼合前張力の比が1.10である実施例3のほうが、同比が0.94である実施例1よりもカール量が大幅に小さくなり、過度な逆カールが抑制されていることがわかる。したがって、単位断面積あたりの貼合前張力比は、1.0以上であることが好ましく、より好ましくは実施例3のように1.1以上であることがわかる。
【符号の説明】
【0162】
12 接着剤塗布装置、13 接着剤塗布装置、15 第1の貼合ロール、16 第2の貼合ロール、18 硬化装置、20 偏光板、21 偏光フィルム、23 透明樹脂フィルム、25 アクリル系樹脂フィルム、40 液晶セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二色性色素が吸着配向しているポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムの片面に、接着剤を介してアクリル系樹脂フィルムを貼合し、前記偏光フィルムの他面には、接着剤を介して透明樹脂フィルムを貼合して偏光板を製造する方法であって、
(A)前記偏光フィルム、前記アクリル系樹脂フィルム及び前記透明樹脂フィルムをそれぞれ一定方向に、かつ前記偏光フィルムを前記アクリル系樹脂フィルムと前記透明樹脂フィルムとで挟むように搬送する原料フィルム搬送工程と、
(B)前記偏光フィルムの片面に前記アクリル系樹脂フィルムを、前記偏光フィルムの他面に前記透明樹脂フィルムを、それぞれ硬化性の接着剤を介して貼合し、そして、前記アクリル系樹脂フィルムの外側に接触し、その搬送方向に回転する第1の貼合ロールと、前記透明樹脂フィルムの外側に接触し、その搬送方向に回転する第2の貼合ロールとで、前記アクリル系樹脂フィルム/前記偏光フィルム/前記透明樹脂フィルムの積層体を挟みながら前記貼合を行う貼合工程と、
(C)貼合後、前記接着剤を硬化させて、前記アクリル系樹脂フィルムと前記偏光フィルム及び前記透明樹脂フィルムと前記偏光フィルムを接着させる硬化工程とを備え、
前記貼合工程(B)は、前記透明樹脂フィルム側における前記搬送方向での収縮応力よりも前記アクリル系樹脂フィルム側における前記搬送方向での収縮応力のほうが大きくなるように、前記透明樹脂フィルム及び前記アクリル系樹脂フィルムに張力を付与した状態で前記偏光フィルムに貼合することを特徴とする偏光板の製造方法。
【請求項2】
前記貼合工程(B)は、前記アクリル系樹脂フィルムの外側に接触する第1の貼合ロールの周速度に対する前記透明樹脂フィルムの外側に接触する第2の貼合ロールの周速度の比が1.0105以上、1.0141以下となるように行うことを特徴とする請求項1に記載の偏光板の製造方法。
【請求項3】
前記貼合工程(B)は、前記透明樹脂フィルムの単位断面積あたりの貼合前張力に対する前記アクリル系樹脂フィルムの単位断面積あたりの貼合前張力の比が1以上となるように行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の偏光板の製造方法。
【請求項4】
前記アクリル系樹脂フィルムのうち前記偏光フィルムに貼合される面とは反対側の面にプロテクトフィルムを貼合するプロテクトフィルム貼合工程を更に備える、請求項1〜3のいずれかに記載の偏光板の製造方法。
【請求項5】
前記透明樹脂フィルムは、延伸されていないフィルムであるか、又は一軸若しくは二軸延伸されたフィルムである、請求項1〜4のいずれかに記載の偏光板の製造方法。
【請求項6】
前記原料フィルム搬送工程(A)の途中に、前記アクリル系樹脂フィルムの前記偏光フィルムへの貼合面に前記接着剤を塗布し、前記透明樹脂フィルムの前記偏光フィルムへの貼合面に前記接着剤を塗布する接着剤塗布工程を更に備える、請求項1〜5のいずれかに記載の偏光板の製造方法。
【請求項7】
前記接着剤は、活性エネルギー線硬化樹脂を含有し、前記硬化工程(C)は活性エネルギー線の照射によって前記活性エネルギー線硬化樹脂を硬化することにより行われる、請求項1〜6のいずれかに記載の偏光板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−215821(P2012−215821A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219673(P2011−219673)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】