説明

偏光板保護フィルム、偏光板保護フィルムの製造方法、偏光板及び液晶表示装置

【課題】ドープの保存安定性を改善し、それを用いて作製した偏光板保護フィルムの幅手方向及び長手方向のムラの発生がなく、生産安定性に優れ、薄膜化が可能な光拡散性を有する偏光板保護フィルムとその製造方法を提供し、さらにこれらの偏光板保護フィルムを用いた偏光板、及び液晶表示装置を提供する。
【解決手段】アクリル系樹脂(a)と、特定のセルロースアシレート樹脂(b)を含有する偏光板保護フィルムであって、当該偏光板保護フィルムのJIS K7374に準拠した方法で測定される、光学くしの幅0.25mmのときの像鮮明度(C(0.25))及び全光線透過率(TT)が、それぞれ特定の値を満たすことを特徴とする偏光板保護フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板保護フィルム、偏光板保護フィルムの製造方法、偏光板及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(以下「LCD」ともいう。)は、バックライトユニット、液晶セル及び偏光板等から構成されている。ここで用いられている偏光板は、通常、偏光板保護フィルム(「光学フィルム)ともいう。)と偏光子(「偏光膜」ともいう。)とから構成される。偏光子としては、ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素で染色し、延伸を行ったものがよく用いられており、その両面は偏光板保護フィルムで挟まれた構造になっている。偏光板保護フィルムとしては、優れた透光性を有し偏光子との接着性に優れたセルローストリアセテート(TAC)フィルムが多く用いられている。
【0003】
近年、LCDの分野では、薄型化及びコストダウンが進んできている。液晶表示装置は、自発光型の表示装置ではないため、液晶セルの背面側(バックライト型)、あるいは、導光板のエッジ部分(エッジライト型)に冷陰極管(CCFL)やLED等の光源が配置されている。これらの光源は、一般的に線光源あるいは点光源であるため、均一に面光源化するために、光拡散シート又は光拡散フィルム(「拡散シート」又は「拡散フィルム」ともいう。)が用いられている。また、光拡散シートは、光に指向性を持たせるための部材としてよく用いられるプリズムシートと入射光との干渉、あるいは液晶セル中の画素と入射光が干渉して生じるモアレ等の干渉縞を抑制することができる。
【0004】
しかし、近年、薄型化やコストダウンの流れで、液晶表示装置の部材数の削減が進み、光拡散シートを使用しない構成のLCDが出てきている。また、光拡散シートを使用する場合でも、LCDの薄型化のために光源と光拡散シートとの距離が近くなり、そのため、従来の光拡散フィルムだけではモアレ等の干渉縞を解消することが困難になってきている。そこで、光拡散シートの代替としてバックライト側偏光板の表面に光拡散性を有するものが使用されてきている。
【0005】
例えば、特許文献1には、多孔質不定形粒子と球状粒子とを分散含有する、所定の特性の光拡散層を有する光拡散偏光板が提案され、これによって光拡散シートを省略できることが開示されている。この方法によると、確かにモアレ縞を解消することができるが、偏光板化する際に、微粒子が脱落して工程汚染を引き起こすという問題や、表示装置にしたときに正面輝度が低下してしまうという問題があった。
【0006】
また、特許文献2及び3には、透光性微粒子や架橋性微粒子を含有する光拡散フィルムを偏光板用の保護フィルムとして使用することが提案されている。しかし、この方法によっても前述したような偏光板化の際の微粒子脱落の問題や、安価に製造できないという問題があった。
【0007】
このようなことから、微粒子の脱落がなく、モアレ縞解消に十分な光拡散性と偏光板保護フィルム適性を併せもつ新しいフィルムが求められていた。
【0008】
特許文献4及び5には、複数の樹脂からなるドープを支持体上に流延し、相分離させた海島構造をもつ光拡散フィルムや、複数の樹脂の混合溶液を支持フィルム上に塗布して作製した光拡散フィルムが開示されている。この方法によれば、光拡散性を備えるフィルムを作製でき、また、微粒子を用いないので微粒子脱落の問題も解決できる。しかし、光拡散性を維持したまま偏光板保護フィルムとして用いようとすると、透過率が下がり、表示装置にしたときの輝度が低下する新たな問題があることが判明した。また、これらの技術では、相分離した樹脂が経時でゲル化し、ゲル状異物が析出する等、ドープの経時安定性が劣るため、幅手方向、長手方向にムラが発生し、連続生産するには従来の方法では不十分であった。さらに、海部分と島部分の界面で剥離が起きることにより、フィルムが脆くなっているという問題があることもわかった。
【0009】
また、支持フィルム上に複数の樹脂の混合溶液を塗布して光拡散フィルムを作製する方法は、フィルム製膜後に塗布をしなくてはならないため、コストダウンの要求が進む昨今の市場には見合わないという根本的な問題がある。
【0010】
このように、偏光板保護フィルムとして問題なく使用でき、かつ、従来の光拡散フィルムでよく問題になっていた表示装置化した際の正面輝度の低下を引き起こすことなく、十分にモアレ縞を解消することのできる光拡散フィルムを微粒子を使用しない系で作製することは従来では困難であった。
【0011】
また、上述したような二種類の樹脂が相分離することにより海島構造を有する光拡散フィルムでは、相分離した樹脂がゲル化すると表示板とした時にギラツキ感を生じ、またゲル状異物が光学フィルム中に不均一に存在することで、輝度ムラを生じるという問題があった。またこのような光拡散フィルムを表示板に用いると、画像が不鮮明になり、また正面輝度が低下しコントラストの低い表示板となってしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2000−75134号公報
【特許文献2】特開2010−277080号公報
【特許文献3】特開2010−164931号公報
【特許文献4】特開2000−239535号公報
【特許文献5】特開2002−250806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、ドープの保存安定性を改善し、それを用いて作製した偏光板保護フィルムの幅手方向及び長手方向のムラの発生がなく、生産安定性に優れ、薄膜化が可能な光拡散性の偏光板保護フィルムとその製造方法を提供することである。本発明のもう一つの課題は、当該光拡散性の偏光板保護フィルムを用いることによって、輝度ムラやギラツキ感の発生がなく、コントラスト比が高く鮮明度の高い偏光板及び液晶表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討した結果、特定の二種類の樹脂を組合せ、二種類の樹脂の水素結合力を最適化することにより、ゲル状異物の経時による発生を抑えてドープの保存安定性を改善し、その結果、幅手方向、長手方向のムラの発生がなく、薄膜化できるとともに、内部光拡散が小さい相分離光拡散フィルムを作製でき、この光拡散フィルムを偏光板に用いることによって、輝度ムラやギラツキ感がなく、コントラスト比が高く鮮明度の高い偏光板及び液晶表示装置を作製できることを見いだし本発明を完成するに至ったものである。
【0015】
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.アクリル系樹脂(a)と、下記式(1)〜(3)を満たすセルロースアシレート樹脂(b)を含有する偏光板保護フィルムであって、当該偏光板保護フィルムのJIS K7374に準拠した方法で測定される、光学くしの幅0.25mmのときの像鮮明度(C(0.25))及び全光線透過率(TT)が、それぞれ下記式(4)及び(5)を満たすことを特徴とする偏光板保護フィルム。
【0016】
式(1):4.4≦A≦6.6
式(2):0.1≦B≦0.8
式(3):0<Y+Z<2.2
ただし、A:セルロースアシレート樹脂のアシル置換基の総炭素数
B:セルロースアシレート樹脂のヒドロキシ基残基数
X:アセチル基置換度
Y:プロピオニル基置換度
Z:ブチリル基置換度
式(4):0.5%≦C(0.25)≦5.0%
式(5):85%≦(TT)≦95%
2.前記偏光板保護フィルムに含まれる粒子径20μm以上のゲル状異物の個数が100cmあたり50個以下であることを特徴とする前記第1項に記載の偏光板保護フィルム。
3.前記偏光板保護フィルムの内部ヘイズ値(Hz(i))と全ヘイズ値(Hz(t))とが、それぞれ、下記式(6)及び式(7)を満たすことを特徴とする前記第1項又は第2項に記載の偏光板保護フィルム。
【0017】
式(6):5%≦Hz(i)≦15%
式(7):15%≦Hz(t)≦55%
4.前記第1項〜第3項のいずれか一項に記載の偏光板保護フィルムの製造方法であって、樹脂ドープを調製する溶解工程、前記樹脂ドープを流延用支持体上に流延してウェブを形成する流延工程、前記ウェブから有機溶媒を蒸発させる溶媒蒸発工程、前記ウェブを流延用支持体から剥離する剥離工程、前記剥離したウェブを乾燥し延伸する乾燥及び延伸工程を有し、かつ前記樹脂ドープに含まれる粒子径20μm以上のゲル状異物の数が下記式(8)を満たすことを特徴とする偏光板保護フィルムの製造方法。
【0018】
式(8):1.0≦F(30)/F(0)≦2.0
(ただし、式中、F(0)は樹脂ドープ調製直後の粒子径20μm以上の不溶解物及びゲル状異物の数を表し、F(30)は樹脂ドープ調製後、10℃で30日経時後の粒子径20μm以上の不溶解物及びゲル状異物の数を表す。)
5.前記延伸工程において、前記剥離したウェブを10〜35%の範囲内で延伸し、膜厚を5〜25μmの範囲内にすることを特徴とする前記第4項に記載の偏光板保護フィルムの製造方法。
6.前記第1項〜第3項のいずれか一項に記載の偏光板保護フィルムが、具備されていることを特徴とする偏光板。
7.前記第1項〜第3項のいずれか一項に記載の偏光板保護フィルムが、具備されていることを特徴とする液晶表示装置。
【発明の効果】
【0019】
本発明は上記手段により、ドープの保存安定性を改善し、幅手方向及び長手方向のムラの発生がなく、生産安定性に優れ、薄膜化が可能な光拡散性の偏光板保護フィルムとその製造方法を提供することができる。また、当該偏光板保護フィルムを用いることによって、輝度ムラやギラツキ感がなく、コントラスト比が高く鮮明度の高い偏光板及び液晶表示装置を作製できることができる。
【0020】
(本発明の作用・機構)
本発明の効果の作用・機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
【0021】
本発明はアクリル系樹脂と、ヒドロキシ基の置換度を規定したセルロースアシレート樹脂とを組み合わせることを特徴としているが、その組合せの作用・機構を以下に説明する。アクリル系樹脂とセルロースアシレート樹脂とを混合して相分離を発生させるためには、双方の樹脂の極性が異なり、互いの樹脂が混ざりあわないこと(非相溶であること)が必要である。その支配的な因子はセルロースアシレート樹脂に含まれるヒドロキシ基であり、セルロースアシレート樹脂のヒドロキシ基置換度とアシル置換基の総炭素数を調節することで、相分離を引き起こすことができる。
【0022】
上記のように、互いの樹脂の極性が異なることで相分離を発生するが、一方、相分離を引き起こす樹脂は、ドープの保存状態(攪拌状態や温度履歴)により、互いの相分離が進行し、ドープ中にゲル化した異物(以下ゲル状異物)が発生する。このゲル状異物は、工程での品質不安定(作製開始直後と経時後の品質が異なる)、ゲル状異物による工程内の汚染(配管への詰まり、流延不良)等を引き起こし、製品の連続生産上、非常に好ましくない。
【0023】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、アクリル系樹脂(a)とセルロースアシレート樹脂(b)とから構成される光拡散性の偏光板保護フィルムにおいて、セルロースアシレート樹脂のヒドロキシ基のみならず、疎水性の置換基(具体的にはアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基)を特定の条件とすることで、相分離を発生し、なおかつドープの安定性が優れ、大量生産性の高い偏光板保護フィルムを得たものである。この作用機構は推定の域を出ないが、樹脂分子内に疎水性かつ分子量の大きな炭化水素を適度に配置することで、経時による異なる樹脂同士のゲル化を抑制し、相分離を発生する機能を残したまま、ドープの安定性を改良したものと考えている。さらに、光学くしの幅0.25mmのときの像鮮明度(C(0.25))及び全光線透過率(TT)が、特定の範囲に制御されることによって、光拡散性を有しながら、コントラストが高く、透明性に優れた光拡散フィルムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】従来の液晶表示装置の構成の例を模式的に示した図。
【図2】本発明の液晶表示装置の構成の例を模式的に示した図。
【図3】溶液流延製膜方法のドープ調製工程、流延工程及び乾燥工程の一例を模式的に示した図。
【図4】内部ヘイズの測定の手順を説明する模式図。(a)はスライドガラス上にグリセリンを滴下した状態を示す模式図。(b)はグリセリン上に試料フィルムを置いた状態を示す模式図。(c)は試料フィルム上にグリセリンを滴下した状態を示す模式図。(d)グリセリン上にカバーガラスを置いた状態を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の偏光板保護フィルムは、アクリル系樹脂(a)と、下記式(1)〜(3)を満たすセルロースアシレート樹脂(b)から構成される偏光板保護フィルムであって、当該偏光板保護フィルムのJIS K7374に準拠した方法で測定される、光学くしの幅0.25mmのときの像鮮明度(C(0.25))及び全光線透過率の値(TT)が、前記式(4)及び(5)を満たすことを特徴としている。
【0026】
これは、請求項1から請求項7までの請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。 本発明の実施態様として、本発明の効果発現の観点から、前記偏光板保護フィルムに含まれる粒子径20μm以上のゲル状異物の個数が100cmあたり50個以下であることが好ましい。また、上記ゲル状異物の個数が、上記範囲であると、偏光板保護フィルム製造工程内での配管やフィルターの詰まりがなく、またフィルムとした時の面内の輝度ムラ、液晶表示装置とした時のギラツキ感が抑えられる等の効果が得られることから好ましい。
【0027】
さらに、前記偏光板保護フィルムの内部ヘイズ値(Hz(i))と全ヘイズ値(Hz(t))とが、それぞれ、前記式(6)及び式(7)を満たすことがモアレ縞の発生防止の観点から好ましい。
【0028】
本発明の偏光板保護フィルムの製造方法としては、樹脂ドープを調製する溶解工程、前記樹脂ドープを流延用支持体上に流延してウェブを形成する流延工程、前記ウェブから有機溶媒を蒸発させる溶媒蒸発工程、前記ウェブを流延用支持体から剥離する剥離工程、前記剥離したウェブを乾燥し延伸する乾燥及び延伸工程を有し、かつ前記樹脂ドープに含まれる粒子径20μm以上のゲル状異物の数が前記式(8)を満たすことを特徴とする偏光板保護フィルムの製造方法であることが、幅手方向、長手方向のムラがなく、光散乱フィルムを連続して生産できる点で好ましい。また、前記延伸工程において、前記剥離したウェブを10〜35%の範囲内で延伸し、膜厚を5〜25μmの範囲内にすることが高いコントラストを得られる点から好ましい。
【0029】
また、本発明の偏光板保護フィルムは、偏光板や液晶表示装置に好適に具備される。
【0030】
本発明の偏光板保護フィルムは、液晶表示装置のバックライト光源の光を拡散し、液晶セル面に光を均一に照射する機能を有するものであり、液晶セルのバックライト光源側に配置される偏光板の保護フィルムとして用いられる。すなわち、本発明の偏光板及び液晶表示装置は、上記本発明の光拡散性の偏光板保護フィルムが具備されているものである。 以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明を行う。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0031】
なお、本発明において「ゲル状異物」とは、2枚の偏光板をクロスニコル状態にして配置し、その間に偏光板保護フィルム等を置き、一方の偏光板の側から光を当てて、他方の偏光板の側から観察した時に反対側からの光は漏れてこないが、フィルム表面に凹凸として観測されて、透過型の顕微鏡で見たときに不定形である異物のことである。
【0032】
<アクリル系樹脂(a)>
本発明の偏光板保護フィルムに用いられるアクリル系樹脂(a)とは、アクリル系単量体及びメタクリル系単量体のうちの少なくとも一方の単量体を重合して得られるアクリル系樹脂であり、本発明においては、メタクリル系樹脂を含む意味で用いる。
【0033】
本発明に係る偏光板保護フィルムに用いられるアクリル系樹脂(a)を構成するアクリル系単量体としては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどのアクリル酸C1−10アルキル;アクリル酸フェニルなどのアクリル酸アリール;グリシジルアクリレート;N,N−ジアルキルアミノアルキルアクリレート;アクリロニトリル;トリシクロデカンなどの脂環式炭化水素基を有するアクリレート;含酸素複素環基を有するアクリレートなどが例示できる。
【0034】
また、メタクリル系単量体としては、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸ブチル、メタアクリル酸t−ブチル、メタアクリル酸イソブチル、メタアクリル酸ヘキシル、メタアクリル酸オクチル、メタアクリル酸2−エチルヘキシルなどのメタアクリル酸C1−10アルキル;メタアクリル酸フェニルなどのメタアクリル酸アリール;グリシジルメタアクリレート;N,N−ジアルキルアミノアルキルメタアクリレート;メタアクリロニトリル;トリシクロデカンなどの脂環式炭化水素基を有するメタアクリレート;含酸素複素環基を有するアクリレートなどが例示できる。
【0035】
含酸素複素環基としては、例えばオキサゾール、ベンゾピラン、テトラヒドロフラン、フラン、ラクトン、モルホリン等が挙げられ、これらは置換基を有していてもよい。含酸素複素環が置換するアクリル系単量体、メタクリル系単量体としては、アクリル酸エステルとして、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(i−、n−)、アクリル酸ブチル(n−、i−、s−、t−)、アクリル酸ペンチル(n−、i−、s−)、アクリル酸ヘキシル(n−、i−)、アクリル酸ヘプチル(n−、i−)、アクリル酸オクチル(n−、i−)、アクリル酸ノニル(n−、i−)、アクリル酸ミリスチル(n−、i−)、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸(2−エチルヘキシル)、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェネチル、アクリル酸(ε−カプロラクトン)等が挙げられ、メタクリル酸エステルとして、上記アクリル酸エステルをメタクリル酸エステルに変えたものが挙げられる。その他、不飽和酸として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸等を挙げることができる。
【0036】
これらの含酸素複素環で置換されたアクリル系単量体、メタクリル系単量体の具体例としては、たとえば、以下のものを挙げることができる。
【0037】
(例示化合物)
【化1】

これらの中では、アクリロイルモルホリン(AM−1)、メタクリロイルモルホリン(AM−2)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)が好ましいが、これは分子内に適度な極性を有するためと推定している。これらのアクリロイルモルホリン、メタクリロイルモルホリンは、たとえば、特開平11−100375号公報に記載された方法で合成することができる。
【0038】
上記単量体で構成される重合体(樹脂)は共重合体(コポリマー)でも単独重合体(ホモポリマー)でもよく、共重合性単量体には、スチレン系単量体、ビニルエステル系単量体、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸などが例示できる。これらの単量体は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0039】
アクリル系樹脂(a)の重量平均分子量(Mw)は、80000以上、1000000以下の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは、150000以上、400000以下の範囲である。重量平均分子量が80000を下回ると、十分な脆性の改善が得られず、また1000000以上であるとセルロースエステル樹脂との相溶性が劣化する。
【0040】
アクリル系樹脂(a)の重合方法としては、クメンペルオキシドやt−ブチルヒドロペルオキシドのような過酸化物重合開始剤を使用する方法、重合開始剤を通常の重合より多量に使用する方法、重合開始剤の他にメルカプト化合物や四塩化炭素等の連鎖移動剤を使用する方法、重合開始剤の他にベンゾキノンやジニトロベンゼンのような重合停止剤を使用する方法、更に特開2000−128911号又は同2000−344823号公報にあるような一つのチオール基と2級のヒドロキシ基とを有する化合物、あるいは、該化合物と有機金属化合物を併用した重合触媒を用いて塊状重合する方法等を挙げることができ、いずれも本発明において好ましく用いられるが、特に、該公報に記載の方法が好ましい。
【0041】
本発明に係るアクリル樹脂としては、市販のものも使用することができる。例えば、デルペット60N、80N(旭化成ケミカルズ(株)製)、ダイヤナールBR52、BR80,BR83,BR85,BR88(三菱レイヨン(株)製)、KT75(電気化学工業(株)製)等が挙げられる。アクリル樹脂は2種以上を併用することもできる。
【0042】
<セルロースアシレート樹脂(b)>
本発明の偏光板保護フィルムに用いられるセルロースアシレート樹脂(b)は、下記式(1)〜(3)を満たすものが用いられる。すなわち、セルロースの3つのヒドロキシ基が、それぞれアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基で置換されており、それらの総炭素数Aが式(1)と式(2)を満たし、かつプロピオニル基の置換度Yとブチリル基の置換度Zが下記式(3)を満たすものである。
【0043】
式(1):4.4≦A≦6.6
式(2):0.2≦B≦0.8
式(3):0<Y+Z<2.2
ただし、A:セルロースアシレート樹脂(b)のアシル置換基の総炭素数
B:セルロースアシレート樹脂(b)のヒドロキシ基残基数
X:アセチル基置換度
Y:プロピオニル基置換度
Z:ブチリル基置換度
セルロースアシレート樹脂(b)のアシル置換基の総炭素数Aと各置換度が上記式(1)〜(3)を満たすときに、結果として、セルロースアシレート樹脂(b)のヒドロキシ基残基数を調節することができ、アクリル系樹脂(a)と相分離を引き起こすことができる。アシル基で置換されていない部分は通常ヒドロキシ基として存在しているものである。
【0044】
(アシル置換基の総炭素数Aの説明)
本発明における、セルロースアシレート樹脂(b)のアシル置換基の総炭素数Aについて以下に説明する。
【0045】
セルロースはβ−グルコースがグリコシド結合で直鎖状に重合した樹脂で、構成単位であるグルコース単位は、2位、3位及び6位にヒドロキシ基を有している。本発明におけるセルロースアシレート樹脂は、これらのヒドロキシ基の一部をアシル基によりエステル化した重合体である。セルロースアシレート樹脂(b)のアシル置換基の総炭素数Aとは、具体的には、セルロースを構成するグルコース単位の2位、3位、6位の3つのヒドロキシ基に置換するアシル基(R−CO−)の炭素原子数の和であって、セルロースアシレート樹脂を構成するグルコース1単位中の炭素数の平均値を表している。すなわち、アシル基がアセチル基の場合は、炭素原子数2個、アシル基がプロピオニル基の場合は、炭素原子数3個、アシル基がブチリル基の場合は、炭素原子数4個を表す。アシル基として、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基が好ましい理由は、置換基の炭素鎖がブチリル基より長いと立体障害のために分子の体積が大きくなり、他の樹脂との相溶性が著しく劣り樹脂がゲル化してしまう可能性があるからである。
【0046】
(ヒドロキシ基残基数の説明)
本発明におけるセルロースアシレート樹脂のヒドロキシ基残基数とは、セルロースの構成単位であるグルコースの2位、3位、6位のヒドロキシ基のうち、アシル基で置換されていないヒドロキシ基の数を表し、具体的には、セルロースを構成するグルコース単位の2位、3位、6位の3つのヒドロキシ基のうち、アシル基で置換されていないヒドロキシ基の数であって、セルロースアシレート樹脂を構成するグルコース1単位中の置換されていないヒドロキシ基の数の平均値を表している。
【0047】
アシル置換基の総炭素数Aとヒドロキシ基残基数Bが、上記式(1)及び式(2)を満たすと、偏光板保護フィルムとした時に高い光拡散性を示し、かつ生産において安定したドープを得ることができる。総炭素数Aが4.4未満、若しくはヒドロキシ基残基数が0.8を超えると、セルロースエステル内の残存するヒドロキシ基が多くアクリル樹脂との極性が合わず、ドープ安定性が得られず、総炭素数Aが6.6を超える、若しくはヒドロキシ基残基数が0.2未満では、アクリルとの相溶性が高まり、相分離を引き起こさず、偏光板保護フィルムとしたときの光拡散性能が不足してしまい好ましくない。
【0048】
(置換度の説明)
アシル基置換度とは、繰り返し単位であるグルコース単位の2位、3位及び6位のヒドロキシ基がエステル化している割合の合計を表す。具体的には、グルコースの2位、3位及び6位のそれぞれのヒドロキシ基が100%エステル化した場合をそれぞれ置換度1とする。したがって、セルロースを構成するグルコースの2位、3位及び6位のすべてが100%エステル化した場合、置換度は最大で3となる。ここで、アシル基によって置換された割合を置換度X(Dsac)、プロピオニル基によって置換された割合を置換度Y(Dspr)、ブチリル基によって置換された割合を置換度Z(Dsub)で表す。アシル基で置換されていない部分は通常ヒドロキシ基として存在しているものである。本発明においては、セルロースアシレート樹脂を構成するグルコース単位中におけるプロピオニル基置換度Yとブチリル基置換度Zの合計が、上記式(3)を満たすとアクリル樹脂との相分離を引き起こし、かつ高いドープの安定性の効果が得られ、ヒドロキシ基残基数Y+Zが0では、相分離を引き起こすがドープの安定性が得られず、2.2以上では、アクリル樹脂と相溶し、相分離を起こさず、目的とする散乱が得られなくなってしまう。すなわち、Y+Zが0より大きいということは、炭素数の大きな置換基がセルロースエステル内に存在することを示し、該置換基が存在することで適度な立体障害を引き起こし、アクリル樹脂との相分離を引き起こし、かつ高いドープの安定性が得られると推定される。
【0049】
なお、アセチル基の置換度や他のアシル基の置換度は、ASTM−D817−96に規定の方法により求めたものである。
【0050】
セルロースアシレート樹脂のアシル置換基の総炭素数Aは、4.8≦A≦6.2がより好ましく、ヒドロキシ基残基数Bは、0.3≦B≦0.7がより好ましく、及プロピオニル基置換度Yとブチリル基置換度Zの合計は、0.4≦<Y+Z<≦1.6がより好ましい。この範囲であるときに、アクリル樹脂との適度な相溶性が得られ、偏光板保護フィルムとしたときの高い光拡散性を示し、かつ生産において安定したドープを得ることができる。
【0051】
本発明に係るセルロースアシレート樹脂は公知の方法により合成することができる。具体的には、特開平10−45804号公報、特開2009−161701号公報、特開2003−270442号公報などに記載の方法を参考にして合成することができる。
【0052】
セルロースアシレート樹脂の原料のセルロースは、特に限定は無いが、綿花リンター、木材パルプ(針葉樹由来、広葉樹由来)、ケナフ等を挙げることができる。
【0053】
一般的には、原料のセルロースと所定の有機酸(酢酸、プロピオン酸など)と酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸など)、触媒(硫酸など)と混合して、セルロースをエステル化し、セルロースのトリエステルができるまで反応を進める。トリエステルにおいてはグルコース単位の3個のヒドロキシ基は、有機酸のアシル基で置換されている。同時に二種類以上の有機酸を使用すると、混合エステル型のセルロースアシレート、例えば、セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートを作製することができる。次いで、セルロースのトリエステルを加水分解することで、所望のアシル基置換度を有するセルロースアシレート樹脂を合成する。その後、濾過、沈殿、水洗、脱水、乾燥などの工程を経て、セルロースアシレート樹脂を得ることができる。
【0054】
本発明に用いられる混合エステル型のセルロースアシレートは、アシル化剤として酸無水物や酸塩化物を用いて合成できる。アシル化剤が酸無水物である場合は、反応溶媒として有機酸(例えば、酢酸)や塩化メチレンが使用される。触媒としては、硫酸のような酸性触媒が用いられる。アシル化剤が酸塩化物である場合は、触媒として塩基性化合物が用いられる。工業的に最も一般的な合成方法では、セルロースをアセチル基およびプロピオニル基に対応する有機酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸)またはそれらの酸無水物を含む混合有機酸成分でエステル化してセルロースエステルを合成する。
【0055】
アセチル化剤、プロピオニル化剤、ブチリル化剤の使用量は、合成するエステルが前述した置換度の範囲となるように調整する。反応溶媒の使用量は、セルロース100質量部に対して、100〜1000質量部であることが好ましく、200〜600質量部であることが更に好ましい。酸性触媒の使用量は、セルロース100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましく、更に好ましくは、0.4〜10質量部である。
【0056】
反応温度は10〜120℃であることが好ましく、20〜80℃であることがさらに好ましい。なお、他のアシル化剤やエステル化剤(例えば、硫酸エステル化剤)を併用してもよい。また、アシル化反応が終了してから、必要に応じて加水分解(ケン化)して、置換度を調整してもよい。反応終了後、反応混合物を沈澱のような慣用の手段を用いて分離し、洗浄、乾燥することによりセルロースの混合脂肪酸エステル(例えば、セルロースアセテートプロピオネート)が得られる。
本発明に用いられるセルロースエステルは、綿花リンターから合成されたセルローストリアセテートと木材パルプから合成されたセルローストリアセテートのどちらかを単独あるいは混合して用いることができる。ベルトやドラムからの剥離性が良い綿花リンターから合成されたセルロースエステルを多く使用した方が生産効率が高く好ましい。
【0057】
<偏光板保護フィルムの構成>
また、本発明の偏光板保護フィルムは、アクリル系樹脂(a)と、下記式(1)〜(3)を満たすセルロースアシレート樹脂(b)を含有する偏光板保護フィルムであって、当該偏光板保護フィルムのJIS K7374に準拠した方法で測定される光学くしの幅0.25mmのときの像鮮明度(C(0.25))及び全光線透過率(TT)が、それぞれ下記式(4)及び(5)を満たすことを特徴としている。
【0058】
式(4):0.5%≦C(0.25)≦5.0%
式(5):85%≦(TT)≦95%
(像鮮明度(C))
本発明において、像鮮明度とは、JIS K7374:2007に準拠した方法で測定されるもので、光学くしの幅0.25mmのときの像鮮明度(C(0.25))である。この像鮮明度とは透過写像性値ともいい、画像の鮮明度を表す指標であり、具体的には、試験片を透過する光量を移動する光学くし(櫛)を通して測定し、計算によって求める。すなわち、試験片の透過光の光学軸に直交する光学くしを移動させて、光学軸上にくしの透過部分があるときの光量(M)とくしの遮光部分があるときの光量(m)を求め、両者の差(M−m)と和(M+m)との比率(C(%))が像鮮明度である。本発明においては光学くしの幅0.25mmのときの像鮮明度が上記式(4)を満たすものである。この像鮮明度が上記範囲にあるときに、コントラストの高い表示装置が得られる。
【0059】
(全光線透過率(TT))
全光線透過率とは、フィルムの透明性を表す指標で、入射光量と透過光量の比率で表すもので、可視光全波長域(380〜780nm)の光を用いて測定する。本発明においては、上記式(5)を満たすものである。また、全光線透過率が上記範囲内にあることにより、液晶表示装置に用いたときに正面輝度の高い表示装置が得られる。
【0060】
(ヘイズ値)
本発明の偏光板保護フィルムは、偏光板保護フィルムの内部ヘイズ値(Hz(i))と全ヘイズ値(Hz(t))とが、それぞれ、下記式(6)及び式(7)を満たすことが好ましい。
【0061】
式(6):5%≦Hz(i)≦15%
式(7):15%≦Hz(t)≦55%
ヘイズ値とは、偏光板保護フィルム等の試験片を透過する光の拡散度を示すものである。本発明の偏光板保護フィルムにおいては、内部ヘイズ値(Hz(i))と全ヘイズ値(Hz(t))とが、それぞれ、上記式(6)及び式(7)を満たすと、モアレ縞防止の観点から好ましい。
【0062】
これにより、モアレ縞の発生がなく、正面輝度の高い液晶表示装置が得られる。
【0063】
本発明の偏光板保護フィルムにおいては、フィルム1枚の全ヘイズ値(Hz(t))が15〜55%の範囲内にあり、かつ、(全ヘイズ値)−(外部ヘイズ値)で求められる内部ヘイズ値(Hz(i))が5〜15%の範囲内にあることが好ましい。
【0064】
全ヘイズ値が15%以上であるとモアレ縞を解消することができ、55%以下であると正面輝度の点で好ましい。全ヘイズ値のより好ましい範囲は、20〜50%以内である。 内部ヘイズ値は、モアレ縞の抑制、正面輝度の低下防止の観点から、5〜15%の範囲内にあることが好ましい。内部ヘイズ値のより好ましい範囲は、7〜12%である。
【0065】
これらのヘイズ値は、23℃55%RHの雰囲気下、日本電色株式会社製ヘイズメーターNDH2000を用いて、JIS K7136に準じて測定した値を用いることができる。
【0066】
なお、全ヘイズ値とは、本発明のフィルム1枚のヘイズ値であり、内部ヘイズ値とは、全ヘイズ値から外部ヘイズ値を差し引いた値である。内部ヘイズ値は、フィルムの両表面を屈折率1.47のグリセリンで覆い、2枚のガラス板でこれを挟持して全ヘイズと同じように測定した際の測定値を用いることができる。このようにすることで、表面の凹凸形状によるヘイズ値(すなわち外部ヘイズ値)の影響を無視し、フィルム内部のヘイズ値のみを測定することができる。
【0067】
(ゲル状異物)
ゲル状異物とは、前述したように2枚の偏光板をクロスニコル状態にして配置し、その間に偏光板保護フィルム等を置き、一方の偏光板の側から光を当てて、他方の偏光板の側から観察した時に反対側からの光は漏れてこないが、フィルム表面に凹凸として観測されて、透過型の顕微鏡で見たときに不定形である異物のことである。このゲル状異物は相分離した樹脂がゲル化したもので、このゲル状異物は少ないほどよい。本発明では、偏光板保護フィルム中における粒子径20μm以上のゲル状異物を100cm当たり50個以下とするものである。また、樹脂ドープ中におけるゲル状異物の経時による増加を抑えることで、フィルムを透過する光の異常拡散を抑制し、ギラツキ感のない表示装置を作製することができる。また製造過程においては、樹脂ドープを調製する工程において、樹脂ドープの長期保管による不溶解物及びゲル状異物の数が、式(8)を満たすとき、樹脂ドープの保管安定性が良好になり、長期の連続生産においても幅手方向、長手方向にムラの発生がなく生産性に優れる効果を有し、輝度ムラのない表示装置を作製することができる。また樹脂ドープの長期保管が可能になる。
【0068】
式(8):1.0≦F(30)/F(0)≦2.0
(ただし、式中、F(0)は樹脂ドープ調製直後の粒子径20μm以上の不溶解物及びゲル状異物の数を表し、F(30)は樹脂ドープ作製後、10℃で30日経時後の粒子径20μm以上の不溶解物及びゲル状異物の数を表す。)
本発明に係るセルロースアシレート樹脂(b)の重量平均分子量(Mw)は、特にアクリル系樹脂(a)との相分離性、脆性の改善の観点から75000以上であり、75000〜300000の範囲であることが好ましく、100000〜240000の範囲内であることが更に好ましく、160000〜240000のものが特に好ましい。セルロースエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)が75000を下回る場合は、耐熱性や脆性の改善効果が十分ではなく、本発明の効果が得られない。本発明では二種以上のセルロース樹脂を混合して用いることもできる。
【0069】
本発明に係る偏光板保護フィルムにおいて、アクリル系樹脂(a)とセルロースアシレート樹脂(b)は、95:5〜30:70の質量比で含有されるが、好ましくは95:5〜50:50であり、更に好ましくは90:10〜60:40である。
【0070】
アクリル系樹脂(a)とセルロースアシレート樹脂(b)の質量比が、95:5よりもアクリル系樹脂(a)が多くなると、セルロースアシレート樹脂(b)による効果が十分に得られず、同質量比が30:70よりもアクリル系樹脂が少なくなると、耐湿性が不十分となる。
【0071】
アクリル系樹脂(a)、セルロースアシレート樹脂(b)の重量平均分子量(Mw)の測定方法は下記方法によることができる。
【0072】
(重量平均分子量測定方法)
重量平均分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定した。 測定条件は以下の通りである。
【0073】
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500までの13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いる。
【0074】
<添加剤>
本発明の偏光板保護フィルムには、必要に応じて各種添加剤を添加することができる。 (可塑剤)
本発明の偏光板用保護フィルムにおいては、組成物の流動性や柔軟性を向上するために可塑剤を併用することも可能である。可塑剤としては、フタル酸エステル系、脂肪酸エステル系、トリメリット酸エステル系、リン酸エステル系、ポリエステル系、あるいはエポキシ系等が挙げられる。
【0075】
この中で、ポリエステル系とフタル酸エステル系の可塑剤が好ましく用いられる。ポリエステル系可塑剤は、フタル酸ジオクチルなどのフタル酸エステル系の可塑剤に比べて非移行性や耐抽出性に優れるが、可塑化効果や相溶性にはやや劣る。
【0076】
従って、用途に応じてこれらの可塑剤を選択、あるいは併用することによって、広範囲の用途に適用できる。
【0077】
ポリエステル系可塑剤は、一価ないし四価のカルボン酸と一価ないし六価のアルコールとの反応物であるが、主に二価カルボン酸とグリコールとを反応させて得られたものが用いられる。代表的な二価カルボン酸としては、グルタル酸、イタコン酸、アジピン酸、フタル酸、アゼライン酸、セバシン酸などが挙げられる。
【0078】
特に、アジピン酸、フタル酸などを用いると可塑化特性に優れたものが得られる。グリコールとしてはエチレン、プロピレン、1,3−ブチレン、1,4−ブチレン、1,6−ヘキサメチレン、ネオペンチレン、ジエチレン、トリエチレン、ジプロピレンなどのグリコールが挙げられる。これらの二価カルボン酸及びグリコールはそれぞれ単独で、あるいは混合して使用してもよい。
【0079】
このエステル系の可塑剤はエステル、オリゴエステル、ポリエステルの型のいずれでもよく、分子量は100〜10000の範囲が良いが、好ましくは600〜3000の範囲が、可塑化効果が大きい。
【0080】
また、可塑剤の粘度は分子構造や分子量と相関があるが、アジピン酸系可塑剤の場合相溶性、可塑化効率の関係から200〜5000MPa・s(25℃)の範囲が良い。さらに、いくつかのポリエステル系可塑剤を併用してもかまわない。
【0081】
可塑剤は本発明のフィルム100質量部に対して、0.5〜30質量部を添加するのが好ましい。可塑剤の添加量が30質量部を越えると、表面がべとつくので、実用上好ましくない。
【0082】
(紫外線吸収剤)
本発明の偏光板用保護フィルムは、紫外線吸収剤を含有することも好ましく、用いられる紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、2−ヒドロキシベンゾフェノン系又はサリチル酸フェニルエステル系のもの等が挙げられる。例えば、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等のトリアゾール類、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン類を例示することができる。
【0083】
ここで、紫外線吸収剤のうちでも、分子量が400以上の紫外線吸収剤は、高沸点で揮発しにくく、高温成形時にも飛散しにくいため、比較的少量の添加で効果的に耐候性を改良することができる。
【0084】
分子量が400以上の紫外線吸収剤としては、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2−ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]等のベンゾトリアゾール系、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート等のヒンダードアミン系、さらには2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、1−[2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等の分子内にヒンダードフェノールとヒンダードアミンの構造を共に有するハイブリッド系のものが挙げられ、これらは単独で、あるいは二種以上を併用して使用することができる。これらのうちでも、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2−ベンゾトリアゾールや2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]が特に好ましい。
【0085】
(微粒子)
本発明の偏光板保護フィルムは、必要に応じて前記セルロースアシレート溶液の処理工程後に、微粒子を添加してもよい。
【0086】
該微粒子としては、無機化合物の例として、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。また、有機化合物の微粒子も好ましく使用することができる。有機化合物の例としてはポリテトラフルオロエチレン、セルロースアセテート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチレンカーボネート、アクリルスチレン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、メラミン系樹脂、ポリオレフィン系粉末、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、あるいはポリフッ化エチレン系樹脂、澱粉等の有機高分子化合物の粉砕分級物も挙げられる。あるいは又懸濁重合法で合成した高分子化合物、スプレードライ法あるいは分散法等により球型にした高分子化合物、又は無機化合物を用いることができる。
【0087】
微粒子は珪素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。 微粒子の一次粒子の平均粒径は5〜400nmが好ましく、更に好ましいのは10〜300nmである。
【0088】
これらは主に粒径0.05〜0.3μmの二次凝集体として含有されていてもよく、平均粒径100〜400nmの粒子であれば凝集せずに一次粒子として含まれていることも好ましい。
【0089】
セルロースエステル中のこれらの微粒子の含有量は0.01〜1質量%であることが好ましく、特に0.05〜0.5質量%が好ましい。
【0090】
二酸化珪素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
【0091】
酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
【0092】
重合体の例として、シリコーン樹脂、フッ素樹脂及びアクリル樹脂を挙げることができる。シリコーン樹脂が好ましく、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。 これらの中でもアエロジル200V、アエロジルR972Vが偏光板保護フィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数を下げる効果が大きいため特に好ましく用いられる。前記偏光板保護フィルムにおいては、少なくとも一方の面の動摩擦係数が0.2〜1.0であることが好ましい。
【0093】
各種添加剤は製膜前の樹脂含有溶液であるドープにバッチ添加してもよいし、添加剤溶解液を別途用意してインライン添加してもよい。特に微粒子は濾過材への負荷を減らすために、一部又は全量をインライン添加することが好ましい。
【0094】
添加剤溶解液をインライン添加する場合は、ドープとの混合性をよくするため、少量の樹脂を溶解するのが好ましい。好ましい樹脂の量は、溶剤100質量部に対して1〜10質量部で、より好ましくは、3〜5質量部である。
【0095】
本発明においてインライン添加、混合を行うためには、例えば、スタチックミキサー(東レエンジニアリング製)、SWJ(東レ静止型管内混合器 Hi−Mixer)等のインラインミキサー等が好ましく用いられる。
【0096】
(その他添加剤)
さらに、本発明の偏光板用保護フィルムには、成形加工時の熱分解性や熱着色性を改良するために各種の酸化防止剤を添加することもできる。また帯電防止剤を加えて、光学フィルムに帯電防止性能を与えることも可能である。
【0097】
本発明の偏光板用保護フィルムには、リン系難燃剤を配合した難燃アクリル系樹脂組成物を用いても良い。
【0098】
ここで用いられるリン系難燃剤としては、赤リン、トリアリールリン酸エステル、ジアリールリン酸エステル、モノアリールリン酸エステル、アリールホスホン酸化合物、アリールホスフィンオキシド化合物、縮合アリールリン酸エステル、ハロゲン化アルキルリン酸エステル、含ハロゲン縮合リン酸エステル、含ハロゲン縮合ホスホン酸エステル、含ハロゲン亜リン酸エステル等から選ばれる一種、あるいは二種以上の混合物を挙げることができる。
【0099】
具体的な例としては、トリフェニルホスフェート、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキシド、フェニルホスホン酸、トリス(β−クロロエチル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート等が挙げられる。
【0100】
<偏光板保護フィルムの製膜方法>
本発明の偏光板保護フィルムの製造方法は、樹脂ドープを調製する溶解工程、前記樹脂ドープを流延用支持体上に流延してウェブを形成する流延工程、前記ウェブから有機溶媒を蒸発させる溶媒蒸発工程、前記ウェブを流延用支持体から剥離する剥離工程、前記剥離したウェブを乾燥し延伸する乾燥・延伸工程を有し、かつ前記樹脂ドープに含まれる粒子径20μm以上のゲル状異物の数が下記式(8)を満たす方法であることが好ましい。
【0101】
式(8):1.0≦F(30)/F(0)≦2.0
(ただし、式中、F(0)は樹脂ドープ調製直後の粒子径20μm以上の不溶解物及びゲル状異物の数を表し、F(30)は樹脂ドープ調製後、10℃で30日経時後の粒子径20μm以上の不溶解物及びゲル状異物の数を表す。)
この方法で製造すると、偏光板保護フィルム製造工程内での配管やフィルターの詰まりがなく、幅手方向、長手方向に安定した偏光板保護フィルムを製造することができるので好ましい。
【0102】
さらに、本発明の偏光板保護フィルムの製造方法としては、前記延伸工程において、前記剥離したウェブを10〜35%の範囲内で延伸し、膜厚を5〜25μmの範囲内にする製造方法であることが光拡散強度が高く、かつ透過率の高い偏光板保護フィルムを製造することができるので好ましい。
【0103】
以下に偏光板保護フィルムの製膜方法の例を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の偏光板保護フィルムの製膜方法としては、インフレーション法、T−ダイ法、カレンダー法、切削法、流延法、エマルジョン法、ホットプレス法等の製造法が使用できるが、着色抑制、異物欠点の抑制、ダイラインなどの光学欠点の抑制などの観点から流延法による溶液製膜が好ましい。
【0104】
(有機溶媒)
本発明の偏光板保護フィルムを溶液流延法で製造する場合のドープを形成するのに有用な有機溶媒は、アクリル樹脂、セルロースエステル樹脂、その他の添加剤を同時に溶解するものであれば制限なく用いることができる。
【0105】
例えば、塩素系有機溶媒としては、塩化メチレン、非塩素系有機溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン等を挙げることができ、塩化メチレン、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトンを好ましく使用し得る。
【0106】
ドープには、上記有機溶媒の他に、1〜40質量%の炭素原子数1〜4の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコールを含有させることが好ましい。ドープ中のアルコールの比率が高くなるとウェブがゲル化し、金属支持体からの剥離が容易になり、また、アルコールの割合が少ない時は非塩素系有機溶媒系でのアクリル樹脂、セルロースエステル樹脂の溶解を促進する役割もある。
【0107】
特に、メチレンクロライド、及び炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコールを含有する溶媒に、アクリル樹脂と、セルロースエステル樹脂の二種を、少なくとも計15〜45質量%溶解させたドープ組成物であることが好ましい。
【0108】
炭素原子数1〜4の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールを挙げることができる。これらの内ドープの安定性、沸点も比較的低く、乾燥性もよいこと等からエタノールが好ましい。
【0109】
以下、本発明に係る偏光板保護フィルムの好ましい製膜方法について説明する。
(1)溶解工程(樹脂ドープを調製する工程)
アクリル系樹脂、セルロースアシレート樹脂に対する良溶媒を主とする有機溶媒に、溶解釜中で該アクリル樹脂、セルロースアシレート樹脂、場合によって、その他の添加剤を攪拌しながら溶解しドープを形成する工程、あるいは該アクリル系樹脂、セルロースアシレート樹脂溶液に、場合によって、その他の添加剤溶液を混合して主溶解液であるドープを形成する工程である。
【0110】
アクリル系樹脂、セルロースアシレート樹脂の溶解には、常圧で行う方法、主溶媒の沸点以下で行う方法、主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法、特開平9−95544号公報、特開平9−95557号公報、又は特開平9−95538号公報に記載の如き冷却溶解法で行う方法、特開平11−21379号公報に記載の如き高圧で行う方法等種々の溶解方法を用いることができるが、特に主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法が好ましい。
【0111】
ドープ中のアクリル系樹脂と、セルロースアシレート樹脂は、計15〜45質量%の範囲であることが好ましい。溶解中又は後のドープに添加剤を加えて溶解及び分散した後、濾材で濾過し、脱泡して送液ポンプで次工程に送る。
【0112】
濾過は捕集粒子径0.5〜5μmで、かつ濾水時間10〜25sec/100mlの濾材を用いることが好ましい。
【0113】
この方法では、粒子分散時に残存する凝集物や主ドープ添加時発生する凝集物を、捕集粒子径0.5〜5μmで、かつ濾水時間10〜25sec/100mlの濾材を用いることで凝集物だけ除去できる。主ドープでは粒子の濃度も添加液に比べ十分に薄いため、濾過時に凝集物同士がくっついて急激な濾圧上昇することもない。
【0114】
図3は、本発明に好ましい溶液流延製膜方法のドープ調製工程、流延工程及び乾燥工程の一例を模式的に示した図である。
【0115】
必要な場合は、アクリル粒子仕込釜41より濾過器44で大きな凝集物を除去し、ストック釜42へ送液する。その後、ストック釜42より主ドープ溶解釜1へアクリル粒子添加液を添加する。
【0116】
その後主ドープ液は主濾過器3にて濾過され、これに紫外線吸収剤添加液が16よりインライン添加される。
【0117】
多くの場合、主ドープには返材が10〜50質量%程度含まれることがある。返材にはアクリル粒子が含まれることがある、その場合には返材の添加量に合わせてアクリル粒子添加液の添加量をコントロールすることが好ましい。
【0118】
アクリル粒子を含有する添加液には、アクリル粒子を0.5〜10質量%含有していることが好ましく、1〜10質量%含有していることが更に好ましく、1〜5質量%含有していることが最も好ましい。
【0119】
上記範囲内であれば、添加液は低粘度で取り扱い易く、主ドープへの添加が容易であるため好ましい。
【0120】
返材とは、偏光板保護フィルムを細かく粉砕した物で、偏光板保護フィルムを製膜するときに発生する、フィルムの両サイド部分を切り落とした物や、擦り傷などでスペックアウトした偏光板保護フィルム原反が使用される。
【0121】
また、予めアクリル系樹脂、セルロースアシレート樹脂、場合によってアクリル粒子を混練してペレット化したものも、好ましく用いることができる。
(2)流延工程
ドープを、送液ポンプ(例えば、加圧型定量ギヤポンプ)を通して加圧ダイ30に送液し、無限に移送する無端の金属ベルト31、例えばステンレスベルト、あるいは回転する金属ドラム等の金属支持体上の流延位置に、加圧ダイスリットからドープを流延する工程である。
【0122】
ダイの口金部分のスリット形状を調整でき、膜厚を均一にし易い加圧ダイが好ましい。加圧ダイには、コートハンガーダイやTダイ等があり、いずれも好ましく用いられる。金属支持体の表面は鏡面となっている。製膜速度を上げるために加圧ダイを金属支持体上に2基以上設け、ドープ量を分割して重層してもよい。あるいは複数のドープを同時に流延する共流延法によって積層構造のフィルムを得ることも好ましい。
(3)溶媒蒸発工程
ウェブ(流延用支持体上にドープを流延し、形成されたドープ膜をウェブと呼ぶ)を流延用支持体上で加熱し、溶媒を蒸発させる工程である。
【0123】
溶媒を蒸発させるには、ウェブ側から風を吹かせる方法及び/又は支持体の裏面から液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等があるが、裏面液体伝熱方法が乾燥効率が良く好ましい。又、それらを組み合わせる方法も好ましく用いられる。流延後の支持体上のウェブを40〜100℃の雰囲気下、支持体上で乾燥させることが好ましい。40〜100℃の雰囲気下に維持するには、この温度の温風をウェブ上面に当てるか赤外線等の手段により加熱することが好ましい。
【0124】
面品質、透湿性、剥離性の観点から、30〜120秒以内で該ウェブを支持体から剥離することが好ましい。
(4)剥離工程
金属支持体上で溶媒が蒸発したウェブを、剥離位置で剥離する工程である。剥離されたウェブは次工程に送られる。
【0125】
金属支持体上の剥離位置における温度は好ましくは10〜40℃であり、更に好ましくは11〜30℃である。尚、剥離する時点での金属支持体上でのウェブの剥離時残留溶媒量は、乾燥の条件の強弱、金属支持体の長さ等により50〜120質量%の範囲で剥離することが好ましいが、残留溶媒量がより多い時点で剥離する場合、ウェブが柔らか過ぎると剥離時平面性を損ね、剥離張力によるツレや縦スジが発生し易いため、経済速度と品質との兼ね合いで剥離時の残留溶媒量が決められる。
【0126】
ウェブの残留溶媒量は下記式で定義される。
【0127】
残留溶媒量(%)=(ウェブの加熱処理前質量−ウェブの加熱処理後質量)/(ウェブの加熱処理後質量)×100
尚、残留溶媒量を測定する際の加熱処理とは、115℃で1時間の加熱処理を行うことを表す。
【0128】
金属支持体とフィルムを剥離する際の剥離張力は、通常、196〜245N/mであるが、剥離の際に皺が入り易い場合、190N/m以下の張力で剥離することが好ましく、更には、剥離できる最低張力〜166.6N/m、次いで、最低張力〜137.2N/mで剥離することが好ましいが、特に好ましくは最低張力〜100N/mで剥離することである。
【0129】
本発明においては、該金属支持体上の剥離位置における温度を−50〜40℃とするのが好ましく、10〜40℃がより好ましく、15〜30℃とするのが最も好ましい。
(5)乾燥及び延伸工程
剥離後、ウェブを乾燥装置内に複数配置したロールに交互に通して搬送する乾燥装置35、及び/又はクリップでウェブの両端をクリップして搬送するテンター延伸装置34を用いて、ウェブを乾燥する。
【0130】
乾燥手段はウェブの両面に熱風を吹かせるのが一般的であるが、風の代わりにマイクロウェーブを当てて加熱する手段もある。余り急激な乾燥はでき上がりのフィルムの平面性を損ね易い。高温による乾燥は残留溶媒が8質量%以下くらいから行うのがよい。全体を通し、乾燥は概ね40〜250℃で行われる。特に40〜160℃で乾燥させることが好ましい。
【0131】
テンター延伸装置を用いる場合は、テンターの左右把持手段によってフィルムの把持長(把持開始から把持終了までの距離)を左右で独立に制御できる装置を用いることが好ましい。また、テンター工程において、平面性を改善するため意図的に異なる温度を持つ区画を作ることも好ましい。また、異なる温度区画の間にそれぞれの区画が干渉を起こさないように、ニュートラルゾーンを設けることも好ましい。
【0132】
なお、延伸操作は多段階に分割して実施してもよく、流延方向、幅手方向に二軸延伸を実施することも好ましい。また、二軸延伸を行う場合には同時二軸延伸を行ってもよいし、段階的に実施してもよい。この場合、段階的とは、例えば、延伸方向の異なる延伸を順次行うことも可能であるし、同一方向の延伸を多段階に分割し、かつ異なる方向の延伸をそのいずれかの段階に加えることも可能である。即ち、例えば、次のような延伸ステップも可能である。
【0133】
・流延方向に延伸−幅手方向に延伸−流延方向に延伸−流延方向に延伸
・幅手方向に延伸−幅手方向に延伸−流延方向に延伸−流延方向に延伸
また、同時2軸延伸には、一方向に延伸し、もう一方を、張力を緩和して収縮させる場合も含まれる。延伸工程における好ましい延伸倍率は幅手方向、長手方向ともに10〜35%の範囲内であることが好ましく、延伸後の膜厚が5〜25μmの範囲内であることが好ましい。延伸倍率と膜厚が上記範囲内であるときに、光拡散強度が高く、かつ透過率の高い偏光板保護フィルムを製造することができる。
【0134】
テンターを行う場合のウェブの残留溶媒量は、テンター開始時に20〜100質量%であるのが好ましく、かつウェブの残留溶媒量が10質量%以下になるまでテンターを掛けながら乾燥を行うことが好ましく、更に好ましくは5質量%以下である。
【0135】
テンターを行う場合の乾燥温度は、30〜160℃が好ましく、50〜150℃が更に好ましく、70〜140℃が最も好ましい。
【0136】
テンター工程において、雰囲気の幅手方向の温度分布が少ないことが、フィルムの均一性を高める観点から好ましく、テンター工程での幅手方向の温度分布は、±5℃以内が好ましく、±2℃以内がより好ましく、±1℃以内が最も好ましい。
(6)巻き取り工程
ウェブ中の残留溶媒量が2質量%以下となってから偏光板保護フィルムとして巻き取り機37により巻き取る工程であり、残留溶媒量を0.4質量%以下にすることにより寸法安定性の良好なフィルムを得ることができる。特に0.00〜0.10質量%で巻き取ることが好ましい。
【0137】
巻き取り方法は、一般に使用されているものを用いればよく、定トルク法、定テンション法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等があり、それらを使いわければよい。
【0138】
本発明の偏光板保護フィルムは、長尺フィルムであることが好ましく、具体的には、100m〜5000m程度のものを示し、通常、ロール状で提供される形態のものである。また、フィルムの幅は1.3〜4mであることが好ましく、1.4〜2mであることがより好ましい。
【0139】
本発明の偏光板保護フィルムの膜厚に特に制限はないが、後述する偏光板保護フィルムに使用する場合は20〜200μmであることが好ましく、25〜100μmであることがより好ましく、30〜80μmであることが特に好ましい。
【0140】
<偏光板>
偏光板は、偏光子の表側及び裏側の両面を保護する2枚の偏光板保護フィルムで主に構成される。本発明の方法で製造されたフィルムは、偏光子を両面から挟む2枚の偏光板保護フィルムのうち少なくとも1枚に用いる。本発明の方法で製造されたフィルムは光拡散機能だけでなく保護フィルム性も兼ね備えているので、偏光板の製造コストを低減できる。本発明の偏光板は、画像表示装置のバックライト側の偏光板としても、視認側の偏光板としても使用することができる。バックライトユニット側偏光板に用いる場合には、本発明のフィルムが最もバックライト側になるように配置する。視認側の偏光板に用いる場合には、本発明のフィルムが最表層になるように配置する。視認側の偏光板に用いた場合には、外光の映り込み等が防止され、外光のある環境下(明室)でのコントラストを改善できる偏光板とすることができる。
【0141】
(偏光板の作製方法)
本発明の偏光板保護フィルムを用いて偏光板を作製する場合、偏光板は一般的な方法で作製することができる。本発明の偏光板保護フィルムの裏面側に粘着層を設け、沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の少なくとも一方の面に、貼り合わせることが好ましい。
【0142】
もう一方の面には本発明の偏光板保護フィルムを用いても、別の偏光板保護フィルムを用いてもよい。例えば、市販のセルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタックKC8UX、KC4UX、KC5UX、KC8UY、KC4UY、KC12UR、KC8UCR−3、KC8UCR−4、KC8UCR−5、KC8UE、KC4UE、KC4FR−3、KC4FR−4、KC4HR−1、KC8UY−HA、KC8UX−RHA、以上コニカミノルタオプト(株)製)等が好ましく用いられる。
【0143】
偏光板の主たる構成要素である偏光子とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光膜は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがある。
【0144】
偏光子は、前述したようにポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させてヨウ素等で染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。
【0145】
(粘着剤層)
上記粘着層に用いられる粘着剤としては、粘着層の少なくとも一部分において25℃での貯蔵弾性率が1.0×10Pa〜1.0×10Paの範囲である粘着剤が用いられていることが好ましく、粘着剤を塗布し、貼り合わせた後に種々の化学反応により高分子量体又は架橋構造を形成する硬化型粘着剤が好適に用いられる。
【0146】
具体例としては、例えば、ウレタン系粘着剤、エポキシ系粘着剤、水性高分子−イソシアネート系粘着剤、熱硬化型アクリル粘着剤等の硬化型粘着剤、湿気硬化ウレタン粘着剤、ポリエーテルメタクリレート型、エステル系メタクリレート型、酸化型ポリエーテルメタクリレート等の嫌気性粘着剤、シアノアクリレート系の瞬間粘着剤、アクリレートとペルオキシド系の2液型瞬間粘着剤等が挙げられる。
【0147】
上記粘着剤としては1液型であっても良いし、使用前に2液以上を混合して使用する型であっても良い。また上記粘着剤は有機溶媒を媒体とする溶剤系であってもよいし、水を主成分とする媒体であるエマルション型、コロイド分散液型、水溶液型などの水系であってもよいし、無溶剤型であってもよい。上記粘着剤液の濃度は、粘着後の膜厚、塗布方法、塗布条件等により適宜決定されれば良く、通常は0.1〜50質量%である。
【0148】
(機能性層)
本発明に係る偏光板保護フィルムには、必要に応じて、ハードコート層、帯電防止層、バックコート層、反射防止層、易滑性層、接着層、防眩層、バリアー層等の機能性層を設けることができる。
【0149】
〈ハードコート層〉
本発明に用いられるハードコート層は活性線硬化樹脂を含有し、紫外線や電子線のような活性線(活性エネルギー線ともいう)照射により、架橋反応を経て硬化する樹脂を主たる成分とする層であることが好ましい。
【0150】
活性線硬化樹脂としては、エチレン性不飽和二重結合を有する単量体を含む成分が好ましく用いられ、紫外線や電子線のような活性線を照射することによって硬化させて活性線硬化樹脂層が形成される。
【0151】
活性線硬化樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等が代表的なものとして挙げられるが、紫外線照射によって硬化する樹脂が機械的膜強度(耐擦傷性、鉛筆硬度)に優れる点から好ましい。
【0152】
紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、又は紫外線硬化型エポキシ樹脂等が好ましく用いられる。中でも紫外線硬化型アクリレート系樹脂が好ましい。
【0153】
またハードコート層には活性線硬化樹脂の硬化促進のため、光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤量としては、質量比で、光重合開始剤:活性線硬化樹脂=20:100〜0.01:100で含有することが好ましい。
【0154】
光重合開始剤としては、具体的には、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることができるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0155】
またハードコート層には、無機化合物又は有機化合物の微粒子を含むことが好ましい。 無機微粒子としては、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウム、ITO、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。特に、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム等が好ましく用いられる。
【0156】
有機粒子としては、ポリメタアクリル酸メチルアクリレート樹脂粉末、アクリルスチレン系樹脂粉末、ポリメチルメタクリレート樹脂粉末、シリコーン系樹脂粉末、ポリスチレン系樹脂粉末、ポリカーボネート樹脂粉末、ベンゾグアナミン系樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、又はポリ弗化エチレン系樹脂粉末等を添加することができる。
【0157】
これらの微粒子粉末の平均粒子径は特に制限されないが、0.01〜5μmが好ましく、更には、0.01〜1.0μmであることが特に好ましい。また、粒径の異なる二種以上の微粒子を含有しても良い。微粒子の平均粒子径は、例えばレーザー回折式粒度分布測定装置により測定することができる。
【0158】
紫外線硬化樹脂組成物と微粒子の割合は、樹脂組成物100質量部に対して、10〜400質量部となるように配合することが望ましく、更に望ましくは、50〜200質量部である。
【0159】
これらのハードコート層はグラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、インクジェット法等公知の方法を用いて、ハードコート層を形成する塗布組成物を塗布し、塗布後、加熱乾燥し、UV硬化処理することで形成できる。
【0160】
ハードコート層のドライ膜厚としては平均膜厚0.1〜30μm、好ましくは1〜20μm、特に好ましくは6〜15μmである。
【0161】
UV硬化処理の光源としては、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。
【0162】
照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、活性線の照射量は、通常5〜500mJ/cm、好ましくは5〜200mJ/cmである。
【0163】
〈バックコート層〉
本発明に係る偏光板保護フィルムは、フィルムのハードコート層を設けた側と反対側の面に、カールやくっつき防止の為にバックコート層を設けてもよい。
【0164】
バックコート層に添加される粒子としては無機化合物の例として、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、ITO、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。
【0165】
バックコート層に含まれる粒子は、バインダーに対して0.1〜50質量%が好ましい。バックコート層を設けた場合のヘイズの増加は1.5%以下であることが好ましく、0.5%以下であることが更に好ましく、特に0.1%以下であることが好ましい。
【0166】
バインダーとしては、ジアセチルセルロース等のセルロースエステル樹脂が好ましい。 〈反射防止層〉
本発明に係る偏光板保護フィルムは、ハードコート層の上層に反射防止層を塗設して、外光反射防止機能を有する反射防止フィルムとして用いることができる。
【0167】
反射防止層は、光学干渉によって反射率が減少するように屈折率、膜厚、層の数、層順等を考慮して積層されていることが好ましい。反射防止層は、支持体よりも屈折率の低い低屈折率層、若しくは支持体よりも屈折率の高い高屈折率層と低屈折率層を組み合わせて構成されていることが好ましい。特に好ましくは、三層以上の屈折率層から構成される反射防止層であり、支持体側から屈折率の異なる三層を、中屈折率層(支持体よりも屈折率が高く、高屈折率層よりも屈折率の低い層)/高屈折率層/低屈折率層の順に積層されているものが好ましく用いられる。又は、二層以上の高屈折率層と二層以上の低屈折率層とを交互に積層した4層以上の層構成の反射防止層も好ましく用いられる。
【0168】
反射防止フィルムの層構成としては下記のような構成が考えられるが、これに限定されるものではない。
【0169】
偏光板保護フィルム/ハードコート層/低屈折率層
偏光板保護フィルム/ハードコート層/中屈折率層/低屈折率層
偏光板保護フィルム/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
偏光板保護フィルム/ハードコート層/高屈折率層(導電性層)/低屈折率層
偏光板保護フィルム/ハードコート層/防眩性層/低屈折率層
反射防止フィルムには必須である低屈折率層は、シリカ系微粒子を含有することが好ましく、その屈折率は、支持体であるセルロースフィルムの屈折率より低く、23℃、波長550nm測定で、1.30〜1.45の範囲であることが好ましい。
【0170】
低屈折率層の膜厚は、5nm〜0.5μmであることが好ましく、10nm〜0.3μmであることが更に好ましく、30nm〜0.2μmであることが最も好ましい。
【0171】
低屈折率層形成用組成物については、シリカ系微粒子として、特に外殻層を有し内部が多孔質又は空洞の粒子を少なくとも一種類以上含むことが好ましい。特に該外殻層を有し内部が多孔質又は空洞である粒子が、中空シリカ系微粒子であることが好ましい。
【0172】
なお、低屈折率層形成用組成物には、下記一般式(OSi−1)で表される有機珪素化合物若しくはその加水分解物、あるいは、その重縮合物を併せて含有させても良い。
【0173】
一般式(OSi−1):Si(OR)
前記一般式で表される有機珪素化合物は、式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す。具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン等が好ましく用いられる。
【0174】
他に溶剤、必要に応じて、シランカップリング剤、硬化剤、界面活性剤等を添加してもよい。
【0175】
<液晶表示装置>
従来の液晶表示装置の構成の例としては、直下型では、図1(a)に示すように、光源側から、〔光源1a/拡散板3a/集光シート4a(プリズムシートなど)/上拡散シート5a/液晶パネル12a(偏光子10a/保護フィルム(位相差フィルムなど)9a/基板8a/液晶セル7a/保護フィルム11a)〕となっており、主にテレビ等大型LCDに用いられている構成である。一方、サイドライト型の構成は、図1(b)に示すように、光源1aが発光光源2a及び導光板13aで構成されており、主にモニタ、モバイル用途などの小型LCDに用いられている。
【0176】
下拡散シートは主にバックライトユニット(BLU)6aの面内輝度ムラを低減するための光拡散性の強い光学シートであり、集光シートは拡散光を液晶表示装置の正面方向(表示装置平面の法線方向)に集光させるための光学シートであり、上拡散シートは集光シートであるプリズムシートや液晶セル中の画素など周期的構造により発生するモアレを低減するための、及び下拡散シートで除去しきれない面内輝度ムラをさらに低減するために用いられる光学シートである。
【0177】
本発明の液晶表示装置においては、図2(a)及び(b)に示すように、上拡散シートの代わりに、下偏光板の偏光板保護フィルムに光拡散性を付与し(フィルム14a)、上拡散シートと同様以上の性能を発揮させるものであり、このような構成とすることで、正面輝度を低下させることなくモアレ縞を抑制することができる。さらに本発明の偏光板保護フィルムを塗布工程や複雑な工程を必要とせずに製造できること、また、このように上拡散シートを除去した構成とすることで、液晶表示装置全体のコストダウンを実現できる。
【0178】
本発明の方法で製造された偏光板保護フィルムを液晶表示装置に用いる際は、算術表面粗さRa(A)が0.08μm以上2.0μm以下の面を光源側に配置し、他方の面(B)を液晶セル側となる様に配置する。このとき、他方の面の偏光板保護フィルムとして光学補償機能があるものを用いることにより、さらに薄型化が可能となるため好ましい。また、液晶セルの基板と偏光板を貼り合わせて用いても良い。
【0179】
液晶セルの表示方法としては、ツイステットネマチック(TN)、スーパーツイステットネマチック(STN)、バーティカルアライメント(VA)、インプレインスイッチング(IPS)、オプティカリーコンペンセイテットベンドセル(OCB)等のモードの透過型、反射型、又は半透過型の液晶表示装置に好ましく用いることができる。
【0180】
光源に用いられる発光光源(発光体)としては、CCFL(Cold Cathode Fluorescent Lamp、冷陰極管)、HCFL(Hot Cathode Fluorescent Lamp、熱陰極管)、LED(Light Emitti ng Diode、発光ダイオード)、OLED(Organic light−emitting diode、有機発光ダイオード[有機EL]無機ELなどを好ましく用いることができる。
【実施例】
【0181】
以下、本発明について、実施例で具体的に説明するが、本発明の実施の態様はこれらに限定されるものではない。
【0182】
<アクリル樹脂樹脂(a1)〜(a4)の作製>
〔アクリル樹脂の調製〕
以下のアクリル樹脂(a1)〜(a4)を公知の方法によって調製した。
【0183】
樹脂(a1):モノマー質量比(MMA:MA=97:3)、Mw300000
樹脂(a2):モノマー質量比(MMA:MA:HEMA=80:5:20)、Mw350000
樹脂(a3):モノマー質量比(MMA:MA:ACMO=82:3:15)、Mw350000
樹脂(a4):モノマー質量比(MMA:MA:ACMO=82:3:15)、Mw150000
MMA:メチルメタクリレート
MA:メチルアクリレート
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
ACMO:アクリロイルモルホリン
(実施例1)
<偏光板保護フィルム1の作製>
下記組成のドープ液を調製した。まず加圧溶解タンクにメチレンクロライドとエタノールを添加した。溶剤の入った加圧溶解タンクに前記樹脂(a1)を攪拌しながら投入し、これを70℃まで加熱し、完全に溶解したのを確認した後、樹脂(b)を添加した。その後、70℃にて120分間撹拌し、ドープを調製した。
【0184】
(ドープ組成物)
・アクリル系樹脂(a):樹脂(a1) 28.4質量部
・セルロースアシレート樹脂(b):トリアセチルセルロース(置換度は表1に記載、重量平均分子量19万) 9.5質量部
・メチレンクロライド 58.1質量部
・エタノール 7.9質量部
ベルト流延装置を用い、ドープ温度35℃で22℃のステンレスバンド支持体上に均一に流延した。ステンレスバンド支持体の温度は20℃であった。
【0185】
その後、剥離可能な範囲まで乾燥させた後、ステンレスバンド支持体上からドープを剥離した。この時のドープの残留溶媒量は40質量%であった。ドープ流延から剥離までに要した時間は3分であった。ステンレスバンド支持体から10kg/mの張力で剥離させ、140℃下にてテンターで幅方向に10%延伸させた後、多数のロールで搬送させながら120℃、135℃の乾燥ゾーンで乾燥を終了させた。巻き取り張力は、初期張力10kg/m、最終巻張力8kg/mとした。以上の方法により、膜厚50μmの偏光板保護フィルム1を得た。
【0186】
<偏光板保護フィルム2〜8の作製>
偏光板保護フィルム1の作製において、アクリル系樹脂(a)、セルロースアシレート樹脂(b)を表1のように変えた以外は同様にして、偏光板保護フィルム2〜8を作製した。なお、用いたアクリル系樹脂(a)は下記の通りである。
【0187】
偏光板保護フィルム2、5用の樹脂(a):樹脂(a1)
偏光板保護フィルム3用の樹脂(a):ポリスチレン(PS)(「SX300」PSジャパン株式会社製、重量平均分子量65万)(比較用の樹脂)
偏光板保護フィルム4用の樹脂(a):ポリ塩化ビニル(PVC)(「TH800」大洋塩ビ株式会社製、重量平均分子量53万)(比較用の樹脂)
偏光板保護フィルム6用の樹脂(a):前記樹脂(a2)
偏光板保護フィルム7用の樹脂(a):前記樹脂(a3)
偏光板保護フィルム8用の樹脂(a):前記樹脂(a4)
<偏光板保護フィルム9〜29の作製>
アクリル系樹脂(a)として偏光板保護フィルム1の作製で用いた樹脂(a1)を用い、セルロースアシレート樹脂(b)として表1に記載した樹脂を用いた他は同様にして偏光板保護フィルム9〜29を作製した。
【0188】
<偏光板保護フィルム30〜33の作製>
アクリル樹脂(a)として偏光板保護フィルム1の作製で用いた樹脂(a1)を用い、セルロースアシレート樹脂(b)として表1に記載した樹脂を用い、延伸率を下記のように変更し、膜厚が表2になるようにした他は、偏光板保護フィルム1と同様にして偏光板保護フィルム30〜33を作製した。なお、膜厚はドープ流延時の膜厚を調製することで行った。
【0189】
偏光板保護フィルム30の延伸率:幅方向に5%
偏光板保護フィルム31の延伸率:幅方向に36%
偏光板保護フィルム32の延伸率:幅方向に1%
偏光板保護フィルム33の延伸率:幅方向に53%
<偏光板保護フィルム34〜36の作製>
偏光板保護フィルム9の作製において、樹脂(a1)と樹脂(b)の比率を下記のように変更した他は同様にして、フィルム34〜36を作製した。
【0190】
フィルム32:樹脂(a1):樹脂(b)=19.0質量部:19.0質量部(50:50)
フィルム33:樹脂(a1):樹脂(b)=36.0質量部:1.9質量部(95:5)
フィルム34:樹脂(a1):樹脂(b)=7.6質量部:30.3質量部(20:80)
以上のようにして作製した偏光板保護フィルムの構成を表1に示した。
【0191】
【表1】

(実施例2)
(偏光板の作製)
上記のようにして作製した偏光板保護フィルムを用いて下記方法により、偏光板を作製した。
【0192】
<偏光板1の作製>
厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルムを、35℃の水で膨潤させた。得られたフィルムを、ヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g及び水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、さらに、ヨウ化カリウム3g、ホウ酸7.5g及び水100gからなる45℃の水溶液に浸漬した。そして、得られたフィルムを、延伸温度55℃、延伸倍率6倍の条件で一軸延伸した。この一軸延伸フィルムを、水洗した後、乾燥させて、厚さ20μmの偏光子を得た。
【0193】
次いで、下記工程1〜5に従って偏光子とコニカミノルタ社製TACフィルム4UYと、裏面側には偏光板保護フィルム1を貼り合わせて偏光板を作製した。
【0194】
工程1:60℃の2モル/Lの水酸化ナトリウム溶液に90秒間浸漬し、次いで水洗し乾燥して、偏光子と貼合する側を鹸化したTACフィルムを得た。
【0195】
工程2:前記偏光子を固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒浸漬した。
【0196】
工程3:工程2で偏光子に付着した過剰の接着剤を軽く拭き除き、これを工程1で処理したTACフィルムの上にのせて配置した。
【0197】
工程4:工程3で積層したTACフィルムと偏光子と偏光板保護フィルム1を圧力20〜30N/cm、搬送スピードは約2m/分で貼合した。
【0198】
工程5:80℃の乾燥機中に工程4で作製した偏光子とTACフィルムと偏光板保護フィルム1とを貼り合わせた試料を2分間乾燥し、偏光板1を作製した。
【0199】
今回使用したTACフィルム4UYは膜厚40μm、面内位相差Roが0nm、厚さ方向位相差Rtが30nmであった。
【0200】
<偏光板2〜36の作製>
以下、偏光板保護フィルム1を偏光板保護フィルム2〜36に変更して、偏光板1の作製と同様にして、偏光板1の作製と同様にして、偏光板2〜36を作製した。
【0201】
上記のようにして作製した偏光板保護フィルムについて、(1)光学くしの幅0.25mmのときの像鮮明度(C(0.25))、(2)全光透過率(TT)、(3)偏光板保護フィルム中のゲル状異物、(4)全ヘイズ(Hz(t))、(5)内部ヘイズ(Hz(i))、(6)ドープの経時安定性(F(30)/F(0))について、以下のようにして評価を行った。
【0202】
<評価方法>
(1)光学くしの幅0.25mmのときの像鮮明度(C)の測定
作製した偏光板保護フィルムを23℃55%RHの環境にて5時間以上調湿した後、写像性測定器 ICM−1T(スガ試験機株式会社製)にて、光学くしの幅0.25mmのときの像鮮明度を測定した。なお当該測定器はJIS K 7374:2007に準拠している。
(2)全光線透過率(TT)の測定
作製した偏光板保護フィルムを、23℃55%RHの環境にて5時間以上調湿した後、V−670 紫外可視近赤外分光光度計(日本分光株式会社製)に積分球ユニットISN−723を組合せ、波長380〜780nmの光を用いて透過率測定モードにて透過率を測定した。
(3)偏光板保護フィルム中のゲル状異物の測定(個/100cm
作製した偏光板保護フィルムを、23℃55%RHの環境にて5時間以上調湿した後、試料上の5cm×5cmの範囲について光学顕微鏡(ミツトヨ社製測定顕微鏡MF)、対物レンズ20倍、接眼レンズ10倍、反射モードにてゲル状異物個数を測定し、100cmあたりの直径0.02mm(20μm)以上のゲル状異物の個数を評価した。
(4)全ヘイズ値Hz(t)の測定(%)
作製した偏光板保護フィルムを、23℃55%RHの環境にて5時間以上調湿した後、フィルムのヘイズ値をヘイズメーター(濁度計)(型式:NDH 2000、日本電色(株)製)を用いて測定した。光源は5V9Wハロゲン球、受光部はシリコンフォトセル(比視感度フィルター付き)であり、測定はJIS K−7136に準じて測定した。
(5)内部ヘイズ値Hz(i)の測定(%)
作製した偏光板保護フィルムの内部ヘイズ値を、下記の方法により測定した。ヘイズ値は全ヘイズ値Hz(t)の測定と同一の装置を用いた。
【0203】
内部ヘイズ測定は以下のように行った。図4を用いて説明する。
【0204】
まず、フィルム以外の測定器具のブランクヘイズ1(外部ヘイズ値)を測定した。
(5−1)きれいにしたスライドガラスの上にグリセリンを一滴(0.05ml)たらす。このとき液滴に気泡が入らないように注意する。ガラスは見た目がきれいでも汚れていることがあるので必ず洗剤で洗浄したものを使用する(図4(a)参照)。
(5−2)その上にカバーガラスを乗せる。カバーガラスは押さえなくてもグリセリンは広がる。
(5−3)ヘイズメーターにセットしブランクヘイズ1(外部ヘイズ値)を測定する。
【0205】
次いで以下の手順で、試料を含めたヘイズ2(全ヘイズ値)を測定した。
(5−4)スライドガラス上にグリセリン0.05mlを滴下する(図4(a)参照)。(5−5)その上に測定する試料フィルムを気泡が入らないように乗せる(図4(b)参照)。
(5−6)試料フィルム上にグリセリン0.05mlを滴下する(図4(c)参照)。
(5−7)その上にカバーガラスを乗せる(図4(d)参照)。
(5−8)上記のように作製した積層体(上から、カバーガラス/グリセリン/試料フィルム/グリセリン/スライドガラス)をヘイズメーターにセットしヘイズ2を測定する。(5−9)(ヘイズ2)−(ヘイズ1)=(本発明のセルロースエステルフィルムの内部ヘイズ値Hz(i))を算出する。
【0206】
なお、セルロースエステルフィルムは23℃55%RHにて5時間以上調湿された後に試料作製され、また上記ヘイズの測定はすべて23℃55%RHにて行った。
【0207】
また、上記測定にて使用したガラス、グリセリンを以下の通りである。
【0208】
スライドガラス:MICRO SLIDE GLASS S9213 MATSUNAMI
カバーガラス:マツナミカバーグラス 24×50mm(KN3321827)
グリセリン:関東化学製鹿特級(純度>99.0%)、屈折率1.47
(6)ドープの経時安定性(F(30)/F(0))の測定
ドープの経時安定性(F(30)/F(0))の測定は下記の方法により測定した。
(6−1)F(0)の測定
(1)作製した直後のドープをサンプル瓶に小分けし、23℃にて200rpmの条件下にて、15分間攪拌した。
【0209】
(2)スライドガラスの上に、作製したドープをバーコーターで塗る。
【0210】
(3)溶剤が揮発する前にもう1枚のスライドガラスを乗せ、ドープを2枚のガラスに挟み込む。
【0211】
(4)偏光板保護フィルム中のゲル状異物の測定と同一の装置にて、100cmあたりの直径0.02mm以上のゲル状異物数を測定し、F(0)とした。
(6−2)F(30)測定
(1)作製したドープを密閉し、冷蔵庫内(10℃)にて30日間静置した。
【0212】
(2)冷蔵庫よりドープを取りだし、23℃に加温した後、200rpmの条件下にて、15分間攪拌した。
【0213】
(3)スライドガラスの上に、作製したドープをバーコーターで塗布した。
【0214】
(4)溶剤が揮発する前にもう1枚のスライドガラスを乗せ、ドープを2枚のガラスに挟み込んだ。
【0215】
(5)偏光板保護フィルム中のゲル状異物の測定と同一の装置にて、100cmあたりの直径0.02mm以上のゲル状異物数を測定し、F(30)とした。
【0216】
以上の方法により得られたF(0)及びF(30)から、ドープの経時安定性(F(30)/F(0))を算出した。
【0217】
以上の位評価結果を表2に示した。
【0218】
【表2】

表2の結果から、本発明の偏光板保護フィルムは、ゲル状異物の発生が少なく、ドープの経時安定性に優れていることがわかる。比較例の偏光板保護フィルム2はドープの経時安定は優れているが、特に像鮮明度に劣り、ヘイズ値も小さく、実用上問題のあるレベルであった。また、偏光板保護フィルム1、3、4はゲル状異物の個数が多く、ドープの経時安定性も劣るものであり生産安定性に問題があるものであった。
【0219】
(実施例3)
<液晶表示装置の作製>
横電界型スイッチングモード型(IPSモード型)の液晶セルを含む液晶表示装置[(株)東芝製レグザ 47ZG2]から液晶パネルを取り出し、液晶セルの下側(バックライト)に配置されていた偏光板を取り除いて、該液晶セルのガラス面(表裏)を洗浄した。
【0220】
続いて、本発明の偏光板1を、本発明の偏光板保護フィルムがバックライト側になるように液晶セルにアクリル粘着剤(厚み20μm)を用いて貼着した。
【0221】
上記の方法により、液晶表示装置1を得た。
【0222】
以下同様にして、偏光板2〜36を用いて、液晶表示装置2〜36を作製した。
【0223】
<評価方法>
以上のようにして作製した液晶表示装置1〜36について、以下の方法により、液晶パネルのコントラスト比、輝度ムラ及びギラツキを評価した。
【0224】
(液晶表示装置のコントラスト比)
以下の方法、液晶セル、測定装置を用いて23℃の暗室でコントラスト比を測定した。 液晶表示装置に、白画像及び黒画像を表示させ、ELDIM社製 製品名「EZ Contrast160D」により、表示画面の方位角45°方向、極角60°方向におけるXYZ表示系のY値を測定した。そして、白画像におけるY値(YW)と、黒画像におけるY値(YB)とから、斜め方向のコントラスト比「YW/YB」を算出した。なお、方位角45°とは、パネルの長辺を0°としたときに反時計周りに45°回転させた方位を表し、極角60°とは表示画面の正面方向を0°としたときに、角度60°に傾斜した方向を表す。測定は温度23℃、湿度55%の暗室内にて行った。この値が高い方が、コントラストが高く好ましい。
【0225】
(輝度ムラ評価)
作製した液晶表示装置を暗室下で白表示させ、表示装置の中央部及び中央部を含む水平方向と垂直方向に5点ずつ計9点の測定点を定め、コニカミノルタ製分光放射輝度計CS−2000を用いて各測定点の輝度を測定し、以下の基準で輝度ムラを評価した。
【0226】
輝度ムラは、測定点9点の輝度の平均値、及び最大値、最小値を用いて、{(最大値−最小値)/平均値}×100 で表した。使用した液晶モニタは市販の状態でこの方法で輝度を測定した場合にもともと7%の輝度ムラが見られたため、この値をもとに下記基準を設けた。
【0227】
○:輝度ムラが7%より小さい
×:輝度ムラが7%以上である
(ギラツキ感)
液晶表示装置に、白、黒、赤、緑、青、カラーバーの画像を表示させ、画素に対するギラツキ感が存在するかどうかについて、研究者10人により目視官能評価した。
【0228】
なお、測定は温度23℃、湿度55%の暗室内にて行った。
【0229】
3:ギラツキ感は全くない
2:ギラツキ感はほとんどない
1:ギラツキ感が認められる
0:ギラツキ感が強い
【表3】

以上の結果より、本発明の偏光板を用いた液晶パネルは、コントラストが高く、パネルの輝度ムラ、ギラツキ感が少なく良好である。また、薄膜の偏光板保護フィルム14、15を用いた液晶表示装置14、15においてもコントラスト比、輝度ムラ、ギラツキ感において極めて良好な結果であり、液晶表示装置として十分な性能を有しているものであった。
【符号の説明】
【0230】
1a 光源
2a 発光光源
3a 下拡散シート(又は拡散板)
4a 集光シート(プリズムシート、レンズシート)
5a 上拡散シート
6a バックライトユニット
7a 液晶セル
8a 透明基板(ガラス、プラスチック)
9a 偏光板保護フィルム(又は位相差フィルム)
10a 偏光子
11a 偏光板保護フィルム
12a 液晶パネル
13a 導光板
14a 本発明の偏光板保護フィルム(拡散能付き)
1 溶解釜
3、6、12、15 濾過器
4、13 ストックタンク
5、14 送液ポンプ
8、16 導管
10 紫外線吸収剤仕込釜
20 合流管
21 混合機
30 ダイ
31 金属支持体
32 ウェブ
33 剥離位置
34 テンター装置
35 ロール乾燥装置
41 粒子仕込釜
42 ストックタンク
43 ポンプ
44 濾過器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系樹脂(a)と、下記式(1)〜(3)を満たすセルロースアシレート樹脂(b)を含有する偏光板保護フィルムであって、当該偏光板保護フィルムのJIS K7374に準拠した方法で測定される、光学くしの幅0.25mmのときの像鮮明度(C(0.25))及び全光線透過率(TT)が、それぞれ下記式(4)及び(5)を満たすことを特徴とする偏光板保護フィルム。
式(1):4.4≦A≦6.6
式(2):0.1≦B≦0.8
式(3):0<Y+Z<2.2
ただし、A:セルロースアシレート樹脂のアシル置換基の総炭素数
B:セルロースアシレート樹脂のヒドロキシ基残基数
X:アセチル基置換度
Y:プロピオニル基置換度
Z:ブチリル基置換度
式(4):0.5%≦C(0.25)≦5.0%
式(5):85%≦(TT)≦95%
【請求項2】
前記偏光板保護フィルムに含まれる粒子径20μm以上のゲル状異物の個数が100cmあたり50個以下であることを特徴とする請求項1に記載の偏光板保護フィルム。
【請求項3】
前記偏光板保護フィルムの内部ヘイズ値(Hz(i))と全ヘイズ値(Hz(t))とが、それぞれ、下記式(6)及び式(7)を満たすことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の偏光板保護フィルム。
式(6):5%≦Hz(i)≦15%
式(7):15%≦Hz(t)≦55%
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の偏光板保護フィルムを製造する偏光板保護フィルムの製造方法であって、樹脂ドープを調製する溶解工程、前記樹脂ドープを流延用支持体上に流延してウェブを形成する流延工程、前記ウェブから有機溶媒を蒸発させる溶媒蒸発工程、前記ウェブを流延用支持体から剥離する剥離工程、前記剥離したウェブを乾燥し延伸する乾燥・延伸工程を有し、かつ前記樹脂ドープに含まれる粒子径20μm以上のゲル状異物の数が下記式(8)を満たすことを特徴とする偏光板保護フィルムの製造方法。
式(8):1.0≦F(30)/F(0)≦2.0
(ただし、式中、F(0)は樹脂ドープ調製直後の粒子径20μm以上の不溶解物及びゲル状異物の数を表し、F(30)は樹脂ドープ調製後、10℃で30日経時後の粒子径20μm以上の不溶解物及びゲル状異物の数を表す。)
【請求項5】
前記乾燥・延伸工程において、前記剥離したウェブを10〜35%の範囲内で延伸し、膜厚を5〜25μmの範囲内にすることを特徴とする請求項4に記載の偏光板保護フィルムの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の偏光板保護フィルムが、具備されていることを特徴とする偏光板。
【請求項7】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の偏光板保護フィルムが、具備されていることを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−64813(P2013−64813A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202584(P2011−202584)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(303000408)コニカミノルタアドバンストレイヤー株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】