説明

偏光板保護フィルム及びそれを用いた偏光板

【課題】液晶表示装置のコントラストを高める偏光板保護フィルム及びそれを用いた偏光板を提供すること。
【解決手段】イソソルビドをジオール成分とするポリエステルまたはポリカーボネートと、セルロースエステルとを含有することを特徴とする偏光板保護フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置等の表示装置に使用される偏光板保護フィルム及びそれを用いた偏光板に関し、詳しくはコントラストを向上させる偏光板保護フィルム及びそれを用いた偏光板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の環境意識の高まりから、植物由来の原料によるポリマーを積極的に活用しようとする動きが高まっている。光学フィルムに使用できる植物由来ポリマーとしては各種挙げられ、その中でも特に耐熱性に優れたセルロースエステルとイソソルビド系ポリマーが注目されている。
【0003】
イソソルビド系ポリマーは、例えば特許文献1にも見られるように光学フィルムとして好ましい。しかしイソソルビド系ポリマー、特にイソソルビドをジオール成分とするポリカーボネートを偏光板保護フィルムに用いると、液晶表示装置のコントラストに対し十分満足な寄与をするものではなかった。
【0004】
一方、セルロースエステルは従来から偏光板保護フィルムに最も適したポリマーとしてよく知られ、アルカリ鹸化処理によって表面を親水化し、偏光子であるポリビニルアルコールと水系の接着剤で接着させ、全体を乾燥させて偏光板を製造するのが通例である。このとき、鹸化反応の速さ及び乾燥の速さは、より親水的である低置換度のセルロースエステルが有利であるため、総置換度を低めに設定することが好ましい。ただしその場合、鹸化反応の制御がより難しくなり、面内に鹸化処理のムラが発生しやすい。そして鹸化処理のムラは偏光板乾燥時に微妙な収縮率のムラとなるため、偏光板の軸精度均一性が落ちて液晶表示装置のコントラストを低下させるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−079191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、液晶表示装置のコントラストを高める偏光板保護フィルム及びそれを用いた偏光板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0008】
1.イソソルビドをジオール成分とするポリエステルまたはポリカーボネートと、セルロースエステルとを含有することを特徴とする偏光板保護フィルム。
【0009】
2.前記セルロースエステルの総置換度が1.5〜2.5の範囲であることを特徴とする前記1に記載の偏光板保護フィルム。
【0010】
3.前記イソソルビドをジオール成分とするポリエステルまたはポリカーボネートの重量平均分子量が3万以下であることを特徴とする前記1または2に記載の偏光板保護フィルム。
【0011】
4.前記1〜3のいずれか1項に記載の偏光板保護フィルムを偏光子の少なくとも一方の面に保護フィルムとして積層したことを特徴とする偏光板。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、液晶表示装置のコントラストを高める偏光板保護フィルム及びそれを用いた偏光板を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0014】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、イソソルビドをジオール成分とするポリエステルまたはポリカーボネートと、セルロースエステルとを含有する偏光板保護フィルム及びそれを用いた偏光板により、液晶表示装置のコントラストを高めることができることを見出し、本発明に至った次第である。
【0015】
本発明の偏光板保護フィルム及びそれを用いた偏光板が液晶表示装置のコントラストを高めることのメカニズムについて、発明者は以下のように考えた。
【0016】
イソソルビド系ポリマーはエーテル結合、セルロースエステルは水酸基に起因する水素結合性を持ち、それぞれ基本的には非晶性であるものの若干の結晶性を有する。双方のポリマーをブレンドすることにより、お互いに入り組んで結晶性を阻害することができると考えられる。よって微視的な不均一を解消し、ランダム構造を維持できるものと推定した。この仕組みはお互いの水素結合性がエーテルと水酸基という異種のものであることも起因していると考えている。
【0017】
上記双方のポリマーをブレンドすると、セルロースエステル主体のフィルムの場合は鹸化反応速度が均一になり面内収縮率ムラが解消され、偏光板の光軸精度が向上することになる。またイソソルビドポリマー主体の場合も結晶化が阻害されクロスニコル下の微弱な光漏れを防止することが出来ることになり、以上より液晶表示装置のコントラストを向上させることができると思われる。つまり本発明は、それぞれのポリマー単独ではなしえないコントラストの向上をブレンドによって達成したことになる。
【0018】
以下本発明について更に詳細に述べる。
【0019】
〔イソソルビドをジオールとするポリエステルまたはポリカーボネート〕
イソソルビドは澱粉を転移させて得られるジオール化合物であり、これと炭酸ジメチルや炭酸ジフェニルとを重縮合させることによりポリカーボネートが得られる。また、ジカルボン酸との反応ではポリエステルが得られ、これらの反応は公知のポリカーボネート化反応またはポリエステル化反応を利用して達成されるものである。ポリエステル化に用いられるジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、o−フタル酸、イソフタル酸、m−フタル酸、テレフタル酸、p−フタル酸等が挙げられる。ポリカーボネートは便宜上炭酸によるポリエステルと見なすことができるため、上記ポリエステル化に用いられるジカルボン酸として炭酸を挙げることもできる。本発明では特に、炭酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸が好ましい。2種以上のジカルボン酸の併用、およびイソソルビド以外のジオールの併用、即ちコポリマーを作成しても良い。
【0020】
また本発明に用いる樹脂は、その特性を損なわない範囲で脂肪族ジオール類または芳香族ビスフェノール類との共重合としても良い。
【0021】
具体的にはエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどの直鎖状ジオール類や、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式アルキレン類などが挙げられ、中でも1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサンジオール、およびシクロヘキサンジメタノールが好ましい。
【0022】
芳香族ビスフェノールとしては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称“ビスフェノールA”)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,3−ビス{2−(4−ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン等が挙げられる。
【0023】
ポリカーボネートを得る手段としては、特開2009−079191号公報に、ポリエステルについては特表2002−512280号公報に、コポリマーについては特開2006−028441号公報にそれぞれ記載がなされている。
【0024】
本発明のイソソルビドをジオールとするポリエステルまたはポリカーボネートは、重量平均分子量が3000以上3万以下であることが好ましい。この範囲はセルロースエステルに対し、最も相溶性の高い範囲であり、ポリマーブレンドによる微細な相分離を起こさず、コントラストにさらに寄与するものである。また分子量が3000未満の場合は膜強度の低下につながる場合があり、好ましくない。5000以上3万以下であることがより好ましい。
【0025】
イソソルビドをジオールとするポリエステルまたはポリカーボネートの重量平均分子量は、高速液体クロマトグラフィー等を用いて公知の方法で測定することができる。
【0026】
〔セルロースエステル〕
セルロースエステルにおいて、アシル基は、脂肪族アシル基であっても、芳香族アシル基であってもよい。脂肪族アシル基の場合は、直鎖であっても分岐していても良く、さらに置換基を有してもよい。アシル基で置換されていない部分は通常水酸基として存在しているものである。これらは公知の方法で合成することができる。
【0027】
しかし、光学特性等から、セルロースの低級脂肪酸エステルを使用するのが好ましい。本発明においてセルロースの低級脂肪酸エステルにおける低級脂肪酸とは炭素原子数が5以下の脂肪酸を意味し、例えばセルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースピバレート等がセルロースの低級脂肪酸エステルの好ましいものとして挙げられる。
【0028】
セルロースエステルは、例えば、原料セルロースの水酸基を無水酢酸、無水プロピオン酸及び/または無水酪酸を用いて常法によりアセチル基、プロピオニル基及び/またはブチル基を後述の範囲内の置換度に置換することで得られる。このようなセルロースエステルの合成方法は、特に限定はないが、例えば、特開平10−45804号公報あるいは特表平6−501040号公報に記載の方法を参考にして合成することができる。あるいは特開2005−281645号公報記載のセルロースエステルを用いることができる。
【0029】
本発明のセルロースエステルは、総置換度1.5〜2.5の範囲のものが好ましい。この範囲は、イソソルビドをジオールとするポリエステルまたはポリカーボネートに対し、最も相溶性の高い範囲であり、ポリマーブレンドによる微細な相分離を起こさず、鹸化処理に際してもムラが生じにくく、コントラストにさらに寄与するものである。アセチル基、プロピオニル基、ブチル基等のアシル基の置換度は、ASTM−D817−96に準じて測定することができる。
【0030】
本発明で用いられるセルロースエステルの原料セルロースは、木材パルプでも綿花リンターでもよく、木材パルプは針葉樹でも広葉樹でもよいが、針葉樹の方がより好ましい。製膜の際の剥離性の点からは綿花リンターが好ましく用いられる。これらから作られたセルロースエステルは適宜混合して、あるいは単独で使用することができる。
【0031】
イソソルビドをジオールとするポリエステルまたはポリカーボネートとセルロースエステルとの混合比率は、相溶する範囲であれば特に制限はないが、鹸化処理による表面親水性付与、および鹸化処理の均一性の観点からは、セルロースエステルが過半数を占める事が好ましく、さらに好ましいのは、セルロースエステルが60〜95質量%であることである。また混合する場合は、ドープ作成時、それぞれの樹脂を溶融、もしくは溶解して混合することができる。
【0032】
〔可塑剤〕
本発明の偏光板保護フィルムに可塑剤として知られる化合物を添加することは、機械的性質向上、柔軟性を付与、耐吸水性付与、水分透過率の低減等のフィルムの改質の観点において好ましい。
【0033】
本発明に用いられる可塑剤としては特に限定はないが、フィルムにヘイズを発生させたりフィルムからブリードアウトあるいは揮発しないように、セルロース誘導体や他の添加剤と水素結合などによって相互作用可能である官能基を有していることが好ましい。
【0034】
このような官能基としては、水酸基、エーテル基、カルボニル基、エステル基、カルボン酸残基、アミノ基、イミノ基、アミド基、イミド基、シアノ基、ニトロ基、スルホニル基、スルホン酸残基、ホスホニル基、ホスホン酸残基等が挙げられるが、好ましくはカルボニル基、エステル基、ホスホニル基である。
【0035】
このような可塑剤の例として、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤、カルボン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤などを好ましく用いることができるが、特に好ましくは多価アルコールエステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、分子量1000〜10万のポリメチルメタクリレートもしくはその共重合体などのアクリル系可塑剤等の非リン酸エステル系可塑剤である。多価アルコールエステルは2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルよりなり、分子内に芳香環またはシクロアルキル環を有することが好ましい。
【0036】
〔紫外線吸収剤〕
本発明の偏光板保護フィルムは、紫外線吸収剤を含有することも好ましく、用いられる紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、2−ヒドロキシベンゾフェノン系又はサリチル酸フェニルエステル系のもの等が挙げられる。例えば、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等のトリアゾール類、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン類を例示することができる。
【0037】
ここで、紫外線吸収剤のうちでも、分子量が400以上の紫外線吸収剤は、高沸点で揮発しにくく、高温成形時にも飛散しにくいため、比較的少量の添加でも効果的である。
【0038】
〔リターデーション調整剤〕
本発明の偏光板保護フィルムは、液晶表示品質の向上のために、フィルム中にリターデーション調整剤を添加したり、配向膜を形成して液晶層を設け、偏光板保護フィルムと液晶層由来のリターデーションを複合化したりすることにより光学補償能を付与することができる。特にリターデーション調整剤は、過度な延伸をせずとも所望の位相差を付与できる点で、フィルムの着色やヘイズの低減の効果が期待できる。
【0039】
リターデーションを調節するために添加する化合物は、欧州特許911,656A2号明細書に記載されているような、二つ以上の芳香族環を有する芳香族化合物をリターデーション調整剤として使用することが好ましい。例えば、下記棒状化合物が挙げられる。また二種類以上の芳香族化合物を併用してもよい。該芳香族化合物の芳香族環には、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。芳香族性ヘテロ環であることが特に好ましく、芳香族性ヘテロ環は一般に、不飽和ヘテロ環である。中でも1,3,5−トリアジン環が特に好ましい。
【0040】
〈棒状化合物〉
本発明の偏光板保護フィルムは、溶液の紫外線吸収スペクトルの最大吸収波長(λmax)が250nmより短波長である棒状化合物を含有させることが好ましい。
【0041】
リターデーション上昇剤の機能の観点では、棒状化合物は、少なくとも一つの芳香族環を有することが好ましく、少なくとも二つの芳香族環を有することが更に好ましい。棒状化合物は、直線的な分子構造を有することが好ましい。直線的な分子構造とは、熱力学的に最も安定な構造において棒状化合物の分子構造が直線的であることを意味する。熱力学的に最も安定な構造は、結晶構造解析または分子軌道計算によって求めることができる。
【0042】
〔マット剤〕
本発明の偏光板保護フィルムは、マット剤をフィルムのブロッキング防止のための滑り剤として含有することが好ましい。
【0043】
マット剤としては、無機化合物の例として、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、ITO、酸化アンチモン或いはこれらの複合酸化物、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子は珪素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素もしくはシリコーンが好ましい。
【0044】
マット剤の一次粒子の平均径は5nm〜1μmが好ましく、更に好ましいのは5〜50nmである。これらは主に平均粒径0.05〜1μm好ましくは0.05〜0.3μmの一次粒子若しくは2次凝集体として含有されることが好ましい。本発明の偏光板保護フィルム中のこれらのマット剤の含有量は0.05〜10質量%であることが好ましく、特に0.1〜1質量%が好ましい。
【0045】
〔その他添加剤〕
本発明の偏光板保護フィルムには、更に、染料、着色防止剤、結晶核剤、すべり剤、安定剤、ブロッキング防止剤、剥離助剤、蛍光増白剤、粘度調節剤、消泡剤、透明化剤、帯電防止剤、pH調整剤等を添加させてもよい。
【0046】
各種添加剤は製膜前の液状のドープにバッチ添加してもよいし、添加剤溶解液を別途用意してインライン添加してもよい。
【0047】
〔偏光板保護フィルムの製造方法〕
本発明の偏光板保護フィルムは、溶融流延製膜法、溶液流延製膜法等の公知の方法で作製することができる。
【0048】
〈溶液流延製膜法〉
(有機溶媒)
偏光板保護フィルムを溶液流延法で製造する場合のドープを形成するのに有用な有機溶媒は、イソソルビドエステル化合物、セルロースエステルからなる樹脂、その他の添加剤を同時に溶解するものであれば制限なく用いることが出来る。
【0049】
例えば、塩素系有機溶媒としては、塩化メチレン、非塩素系有機溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン等を挙げることが出来、塩化メチレン、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトンを好ましく使用し得る。
【0050】
ドープには、上記有機溶媒の他に、1〜40質量%の炭素原子数1〜4の直鎖または分岐鎖状の脂肪族アルコールを含有させることが好ましい。ドープ中のアルコールの比率が高くなるとウェブがゲル化し、金属支持体からの剥離が容易になり、また、アルコールの割合が少ない時は非塩素系有機溶媒系での樹脂の溶解を促進する役割もある。
【0051】
特に、メチレンクロライド、及び炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖状の脂肪族アルコールを含有する溶媒に樹脂を、少なくとも計15〜45質量%溶解させたドープ組成物であることが好ましい。
【0052】
炭素原子数1〜4の直鎖または分岐鎖状の脂肪族アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールを挙げることが出来る。これらの内ドープの安定性、沸点も比較的低く、乾燥性もよいこと等からエタノールが好ましい。
【0053】
(溶液流延法)
溶液流延法では、樹脂および添加剤を溶剤に溶解させてドープを調製する工程、ドープをベルト状もしくはドラム状の金属支持体上に流延する工程、流延したドープをウェブとして乾燥する工程、金属支持体から剥離する工程、延伸または幅保持する工程、更に乾燥する工程、仕上がったフィルムを巻き取る工程により行われる。
【0054】
ドープ中の樹脂の濃度は、濃度が高い方が金属支持体に流延した後の乾燥負荷が低減できて好ましいが、樹脂の濃度が高過ぎると濾過時の負荷が増えて、濾過精度が悪くなる。これらを両立する濃度としては、10〜35質量%が好ましく、更に好ましくは、15〜25質量%である。
【0055】
流延(キャスト)工程における金属支持体は、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、金属支持体としては、ステンレススティールベルト若しくは鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられる。
【0056】
キャストの幅は1〜4mとすることができる。流延工程の金属支持体の表面温度は−50℃〜溶剤が沸騰して発泡しない温度以下に設定される。温度が高い方がウェブの乾燥速度が速くできるので好ましいが、余り高すぎるとウェブが発泡したり、平面性が劣化する場合がある。
【0057】
好ましい支持体温度としては0〜100℃で適宜決定され、5〜30℃が更に好ましい。または、冷却することによってウェブをゲル化させて残留溶媒を多く含んだ状態でドラムから剥離することも好ましい方法である。
【0058】
金属支持体の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風または冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法がある。温水を用いる方が熱の伝達が効率的に行われるため、金属支持体の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。
【0059】
温風を用いる場合は溶媒の蒸発潜熱によるウェブの温度低下を考慮して、溶媒の沸点以上の温風を使用しつつ、発泡も防ぎながら目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。
【0060】
特に、流延から剥離するまでの間で支持体の温度および乾燥風の温度を変更し、効率的に乾燥を行うことが好ましい。
【0061】
偏光板保護フィルムが良好な平面性を示すためには、金属支持体からウェブを剥離する際の残留溶媒量は10〜150質量%が好ましく、更に好ましくは20〜40質量%または60〜130質量%であり、特に好ましくは、20〜30質量%または70〜120質量%である。
【0062】
残留溶媒量は下記式で定義される。
【0063】
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
なお、Mはウェブまたはフィルムを製造中または製造後の任意の時点で採取した試料の質量で、NはMを115℃で1時間の加熱後の質量である。
【0064】
また、偏光板保護フィルム或いは樹脂の乾燥工程においては、ウェブを金属支持体より剥離し、更に乾燥し、残留溶媒量を1質量%以下にすることが好ましく、更に好ましくは0.1質量%以下であり、特に好ましくは0〜0.01質量%以下である。
【0065】
フィルム乾燥工程では一般にロール乾燥方式(上下に配置した多数のロールにウェブを交互に通し乾燥させる方式)やテンター方式でウェブを搬送させながら乾燥する方式が採られる。
【0066】
(延伸工程)
本発明の偏光板保護フィルムは位相差の調整の為に、延伸処理を行うことが好ましい。
【0067】
延伸工程では、偏光板保護フィルムの長手方向(MD方向)、及び幅手方向(TD方向)に対して、逐次または同時に延伸することができる。互いに直交する2軸方向の延伸倍率は、それぞれ最終的にはMD方向に1.0〜3.0倍、TD方向に1.07〜3.0倍の範囲とすることが好ましい。
【0068】
例えば、複数のロールに周速差をつけ、その間でロール周速差を利用してMD方向に延伸する方法、ウェブの両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を進行方向に広げてMD方向に延伸する方法、同様に横方向に広げてTD方向に延伸する方法、或いはMD/TD方向同時に広げてMD/TD両方向に延伸する方法などが挙げられる。
【0069】
製膜工程のこれらの幅保持或いは幅手方向の延伸はテンターによって行うことが好ましく、ピンテンターでもクリップテンターでもよい。
【0070】
テンター内などの製膜工程でのフィルム搬送張力は温度にもよるが、フィルム幅あたり120N/m〜200N/mが好ましく、140N/m〜200N/mがさらに好ましい。140N/m〜160N/mが最も好ましい。
【0071】
延伸する際の温度は、偏光板保護フィルムのガラス転移温度をTgとすると(Tg−30)〜(Tg+100)℃、より好ましくは(Tg−20)〜(Tg+80)℃、さらに好ましく(Tg−5)〜(Tg+20)℃である。
【0072】
偏光板保護フィルムのTgは、フィルムを構成する材料種及び構成する材料の比率によって制御することができる。本発明の用途においてはフィルムの乾燥時のTgは110℃以上が好ましく、さらに120℃以上が好ましい。
【0073】
従ってガラス転移温度は190℃以下、より好ましくは170℃以下であることが好ましい。このとき、フィルムのTgはJIS K7121に記載の方法などによって求めることができる。
【0074】
延伸する際の温度は150℃以上、延伸倍率は1.15倍以上にすると、表面が適度に粗れる為好ましい。フィルム表面を粗らす事は、滑り性を向上させるのみでなく、表面加工性、特にハードコート層の密着性が向上するため好ましい。算術平均粗さRaは、好ましくは2.0nm〜4.0nm、より好ましくは2.5nm〜3.5nmである。
【0075】
〈溶融製膜法〉
溶融製膜法は、樹脂および可塑剤などの添加剤を含む組成物を、流動性を示す温度まで加熱溶融し、その後、流動性の樹脂を含む溶融物を流延することをいう。
【0076】
加熱溶融する成形法は、更に詳細には、溶融押出成形法、プレス成形法、インフレーション法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法などに分類できる。これらの成形法の中では、機械的強度および表面精度などの点から、溶融押出し法が好ましい。溶融押出しに用いる複数の原材料は、通常予め混錬してペレット化しておくことが好ましい。
【0077】
ペレット化は、公知の方法でよく、例えば、乾燥樹脂や可塑剤、その他添加剤をフィーダーで押出し機に供給し1軸や2軸の押出し機を用いて混錬し、ダイからストランド状に押出し、水冷または空冷し、カッティングすることでできる。
【0078】
添加剤は、押出し機に供給する前に混合しておいてもよいし、それぞれ個別のフィーダーで供給してもよい。
【0079】
粒子や酸化防止剤等少量の添加剤は、均一に混合するため、事前に混合しておくことが好ましい。
【0080】
押出し機は、剪断力を抑え、樹脂が劣化(分子量低下、着色、ゲル生成等)しないようにペレット化可能でなるべく低温で加工することが好ましい。例えば、2軸押出し機の場合、深溝タイプのスクリューを用いて、同方向に回転させることが好ましい。混錬の均一性から、噛み合いタイプが好ましい。
【0081】
以上のようにして得られたペレットを用いてフィルム製膜を行う。もちろんペレット化せず、原材料の粉末をそのままフィーダーで押出し機に供給し、そのままフィルム製膜することも可能である。
【0082】
上記ペレットを1軸や2軸タイプの押出し機を用いて、押出す際の溶融温度を200〜300℃程度とし、リーフディスクタイプのフィルターなどで濾過し異物を除去した後、Tダイからフィルム状に流延し、冷却ロールと弾性タッチロールでフィルムをニップされ、冷却ロール上で固化させる。
【0083】
供給ホッパーから押出し機へ導入する際は真空下または減圧下や不活性ガス雰囲気下にして酸化分解等を防止することが好ましい。
【0084】
押出し流量は、ギヤポンプを導入するなどして安定に行うことが好ましい。また、異物の除去に用いるフィルターは、ステンレス繊維焼結フィルターが好ましく用いられる。
【0085】
ステンレス繊維焼結フィルターは、ステンレス繊維体を複雑に絡み合った状態を作り出した上で圧縮し接触箇所を焼結し一体化したもので、その繊維の太さと圧縮量により密度を変え、濾過精度を調整できる。
【0086】
可塑剤や粒子などの添加剤は、予め樹脂と混合しておいてもよいし、押出し機の途中で練り込んでもよい。均一に添加するために、スタチックミキサーなどの混合装置を用いることが好ましい。
【0087】
冷却ロールと弾性タッチロールでフィルムをニップする際のタッチロール側のフィルム温度はフィルムのTg以上Tg+110℃以下にすることが好ましい。このような目的で使用する弾性体表面を有するロールは、公知のロールが使用できる。
【0088】
弾性タッチロールは挟圧回転体ともいう。弾性タッチロールとしては、登録特許3194904号、登録特許3422798号、特開2002−36332号、特開2002−36333号などで開示されているタッチロールを好ましく用いることができる。これらは市販されているものを用いることもできる。
【0089】
冷却ロールからフィルムを剥離する際は、張力を制御してフィルムの変形を防止することが好ましい。
【0090】
また、上記のようにして得られたフィルムは、冷却ロールに接する工程を通過後、前記延伸操作により延伸することが好ましい。
【0091】
巻き取る前に、製品となる幅に端部をスリットして裁ち落とし、巻き中の貼り付きやすり傷防止のために、ナール加工(エンボッシング加工)を両端に施してもよい。ナール加工の方法は凸凹のパターンを側面に有する金属リングを加熱や加圧により加工することができる。なお、フィルム両端部のクリップの把持部分は通常、フィルムが変形しており製品として使用できないので切除されて、再利用される。
【0092】
<鹸化処理>
本発明の偏光板保護フィルムは、偏光子に貼り合わせる前に鹸化処理をすることが好ましい。特に、セルロースエステルが50%以上である場合に鹸化処理による接着性向上が得られやすい。
【0093】
鹸化処理工程はアルカリ処理、中和、水洗、乾燥等の工程からなる。アルカリ処理工程は、0.1N〜2Nの濃度の水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウム水溶液浴中に偏光板保護フィルムを浸蹟する。浴の温度は10〜70℃、好ましくは40〜60℃であり、浸蹟時間は10秒〜5分である。中和工程は0.01〜1%の酢酸等を用いた酸水溶液浴を用いる。水洗工程は水浴中に浸蹟する。表面に付着した水滴をスクイーズしたのち、乾燥工程で乾燥させる。乾燥温度は40〜120℃が好ましい。
【0094】
迅速な鹸化処理をするためには高温のアルカリ処理が好ましいが、この場合に鹸化処理の平面内均一性を得にくい。鹸化度合いが面内で均一でない場合は、微妙な収縮・膨張率の差を生じ、貼合時または貼合後の熱で応力ムラを生じる。そのため、微視的な面内の軸精度均一性が低下し、液晶表示装置としてのコントラストを低下させやすい。本発明の偏光板保護フィルムは高温アルカリ処理でも応力ムラが出にくい。
【0095】
<偏光板>
本発明の偏光板は、偏光板保護フィルムを偏光子の少なくとも一方の面に保護フィルムとして積層されている。
【0096】
本発明の偏光板は一般的な方法で作製することができる。
【0097】
本発明の偏光板用保護フィルムの裏面側に粘着層を設け、沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の少なくとも一方の面に、積層することが好ましい。
【0098】
もう一方の面には本発明の偏光板保護フィルムを用いても、別の偏光板保護フィルムを用いてもよい。例えば、市販のセルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタック KC8UX、KC4UX、KC5UX、KC8UY、KC4UY、KC12UR、KC8UCR−3、KC8UCR−4、KC8UCR−5、KC8UE、KC4UE、KC4FR−3、KC4FR−4、KC4HR−1、KC8UY−HA、KC8UX−RHA、以上コニカミノルタオプト(株)製)等が好ましく用いられる。
【0099】
偏光板の主たる構成要素である偏光子とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光子は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがある。
【0100】
偏光子は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。
【0101】
上記粘着層に用いられる粘着剤としては、粘着層の少なくとも一部分において25℃での貯蔵弾性率が1.0×10Pa〜1.0×10Paの範囲である粘着剤が用いられていることが好ましく、粘着剤を塗布し、貼り合わせた後に種々の化学反応により高分子量体又は架橋構造を形成する硬化型粘着剤が好適に用いられる。
【0102】
具体例としては、例えば、ウレタン系粘着剤、エポキシ系粘着剤、水性高分子−イソシアネート系粘着剤、熱硬化型アクリル粘着剤等の硬化型粘着剤、湿気硬化ウレタン粘着剤、ポリエーテルメタクリレート型、エステル系メタクリレート型、酸化型ポリエーテルメタクリレート等の嫌気性粘着剤、シアノアクリレート系の瞬間粘着剤、アクリレートとペルオキシド系の2液型瞬間粘着剤等が挙げられる。
【0103】
上記粘着剤としては1液型であっても良いし、使用前に2液以上を混合して使用する型であっても良い。
【0104】
また上記粘着剤は有機溶剤を媒体とする溶剤系であってもよいし、水を主成分とする媒体であるエマルジョン型、コロイド分散液型、水溶液型などの水系であってもよいし、無溶剤型であってもよい。上記粘着剤液の濃度は、粘着後の膜厚、塗布方法、塗布条件等により適宜決定されれば良く、通常は0.1〜50質量%である。
【0105】
<液晶表示装置>
本発明の偏光板保護フィルムを貼合した偏光板を液晶表示装置に組み込むことによって、種々の視認性に優れた液晶表示装置を作製することができるが、特に大型の液晶表示装置やデジタルサイネージ等の屋外用途の液晶表示装置に好ましく用いられる。本発明の偏光板保護フィルムを貼合した偏光板は、前記粘着層等を介して液晶セルに貼合する。
【0106】
本発明の偏光板保護フィルムを貼り合わせた偏光板は反射型、透過型、半透過型LCD又はTN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型(PVA型、MVA型)、IPS型(FFS方式も含む)等の各種駆動方式のLCDで好ましく用いられる。
【0107】
特に画面が30型以上、特に30型〜54型の大画面の表示装置では、画面周辺部での白抜け等もなく、その効果が長期間維持される。
【実施例】
【0108】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0109】
《イソソルビド系ポリマーの調製》
本発明に係るイソソルビド系ポリマーはイソソルビドをジオール成分とするポリエステルまたはポリカーボネートであり、イソソルビドとジカルボン酸または炭酸との縮合重合で得られる。ポリカーボネートの合成法は特開2009−079191号公報に従って、およびポリエステルの合成法は特開2007−65484号公報の実施例1を参考にして各々のポリマーを調製した。なお、所望の分子量のポリマーが得られるように、温度、重合開始剤の量などを適宜調整した。
【0110】
表1に調製したイソソルビド系ポリマー1〜10の内容を、イソソルビドとジカルボン酸または、炭酸との組み合わせ、および得られたポリマーの重量平均分子量として示した。
【0111】
重量平均分子量の測定はゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定した。条件は以下の通りである。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806,K805,K803(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔にした。
【0112】
【表1】

【0113】
《セルロースエステルの調製》
本発明に係るセルロースエステルの置換度は公知の方法で調整できる。実施例ではアセチル基、およびプロピオニル基で総置換度を変化させた。以下においては、アセチル基置換度、およびプロピオニル基置換度をそれぞれ、DSac、DSprと略記した。総置換度はDSacとDSprの和となる。
【0114】
《偏光板保護フィルムの作製》
下記の方法により、溶液流延製膜法で偏光板保護フィルム1、および溶融製膜法で偏光板保護フィルム17をそれぞれ作成した。
【0115】
<偏光板保護フィルム1の作製>
下記ドープ組成物1の材料を、順次密閉容器中に投入し、容器内温度を20℃から80℃まで昇温した後、温度を80℃に保ったままで3時間攪拌を行って、セルロースエステルを完全に溶解した。酸化ケイ素微粒子は予め添加する溶媒と少量のセルロースエステルの溶液中に分散して添加した。このドープを濾紙(安積濾紙(株)製、安積濾紙No.244)を使用して濾過し、下記ドープ組成物1を得た。
【0116】
〈ドープ組成物1〉
セルロースエステル(アセチル置換度1.92、プロピオニル置換度0.74)
100質量部
酸化ケイ素微粒子 0.2質量部
(アエロジルR972V、日本アエロジル(株)製)
チヌビン928(チバ・ジャパン(株)製) 1質量部
メチレンクロライド 300質量部
エタノール 40質量部
ブタノール 5質量部
次に、得られたドープ組成物1を、温度35℃に保温した流延ダイを通じてステンレス鋼製エンドレスベルトよりなる温度35℃の支持体上に流延して、ウェブを形成した。ついで、ウェブを支持体上で乾燥させ、ウェブの残留溶媒量が80質量%になった段階で、剥離ロールによりウェブを支持体から剥離した。
【0117】
剥離後のウェブを、上下に複数配置したロールによる搬送乾燥工程で90℃の乾燥風にて乾燥させながら搬送し、続いてテンターでウェブ両端部を把持した後、温度130℃で幅方向に延伸前の1.5倍となるように延伸した。テンターでの延伸の後、ウェブを上下に複数配置したロールによる搬送乾燥工程で、温度135℃の乾燥風にて乾燥させた。
【0118】
乾燥工程の雰囲気置換率15(回/時間)とした雰囲気内で15分間熱処理した後、室温まで冷却して巻き取り、幅1.5m、膜厚40μm、長さ4000mの長尺の偏光板保護フィルム1を作製した。またフィルムは、両端部に幅1cm、平均高さ10μmのナーリング加工を施して巻き取った。
【0119】
<偏光板保護フィルム17の作製>
下記組成で、溶融流延によりフィルム17を作製した。
【0120】
〈偏光板保護フィルム17の組成物〉
イソソルビド系ポリマー8 100質量部
Irganox 1010(チバ・ジャパン(株)製) 0.5質量部
アデカスタブPEP−36(ADEKA(株)製) 0.1質量部
スミライザーGS(住友化学(株)製) 0.2質量部
シリカ粒子(日本アエロジル(株)製R972V) 0.1質量部
上記イソソルビド系ポリマー8を70℃、3時間減圧下で乾燥を行い室温まで冷却した後、各添加剤を混合した。この混合物を同方向回転噛み合い型スクリューをもつ2軸押出機で溶融混練してストランド状に押し出し、水中を通して冷却した後ペレット状にカッティングした。
【0121】
得られたペレットを再度90℃で乾燥し、弾性タッチロールを用いた製造装置で製膜した。窒素雰囲気下、240℃にて溶融して流延ダイから第1冷却ロール上に押し出し、第1冷却ロールとタッチロールとの間にフィルムを挟圧して成形した。
【0122】
流延ダイのギャップの幅がフィルムの幅方向端部から30mm以内では0.5mm、その他の場所では1mmとなるようにヒートボルトを調整した。タッチロールとしては、その内部に冷却水として80℃の水を流した。
【0123】
流延ダイから押し出された樹脂が第1冷却ロールに接触する位置から第1冷却ロールとタッチロールとのニップの第1冷却ロール回転方向上流端の位置までの、第1冷却ローラの周面に沿った長さを20mmに設定した。
【0124】
その後、タッチロールを第1冷却ロールから離間させ、第1冷却ロールとタッチロールとのニップに挟圧される直前の溶融部の温度Tを測定した。第1冷却ロールとタッチロールとのニップに挟圧される直前の溶融部の温度Tは、ニップ上流端P2よりも更に1mm上流側の位置で、温度計(安立計器(株)製HA−200E)により測定した。測定の結果、温度Tは235℃であった。
【0125】
タッチロールの第1冷却ロールに対する線圧は50N/cmとした。この後、ロール周速差を利用して搬送方向に175℃で1.7倍に延伸し、さらにテンターに導入し、巾方向に160℃で2.1倍延伸した後、巾方向に1%緩和しながら30℃まで冷却し、その後クリップから開放し、クリップ把持部を裁ち落とし、フィルム両端に幅20mm、高さ25μmのナーリング加工を施し、巻き取り張力220N/m、テーパー40%で巻芯に巻き取った。
【0126】
巻芯の大きさは、内径152mm、外径165〜180mm、長さ1550mmであった。膜厚40μm、巻長は3500mの偏光板保護フィルム17を作製した。
【0127】
<他の偏光板保護フィルムの作製>
上記した溶液流延製膜法による偏光板保護フィルム1の作製において、セルロースエステル(DSac:1.92、DSpr:0.74、総置換度2.66)を、表2で示したイソソルビド系ポリマーとセルロースエステルの組み合わせに代え、偏光板保護フィルム1と同様にして、偏光板保護フィルム2〜8、11〜14を作成した。同じように溶融製膜法による偏光板保護フィルム17の作製において、イソソルビド系ポリマー8を、表2で示したイソソルビド系ポリマーとセルロースエステルの組み合わせに代え、偏光板保護フィルム17と同様にして、偏光板保護フィルム9、10および15、16を作成した。なお、イソソルビド系ポリマー(IS)とセルロースエステル(CE)の質量配合比率は(IS/CE)で表に示した。総量は同じである。また、表2では、溶液流延製膜法は溶液、溶融製膜法は溶融、および重量平均分子量はMwと略記した。さらに偏光板保護フィルムは保護フィルムと略記した。
【0128】
<偏光板の作製>
上記偏光板保護フィルム1〜17を用いて下記に従い偏光板1〜17を作製した。
【0129】
厚さ、120μmのポリビニルアルコールフィルムを、一軸延伸(温度110℃、延伸倍率5倍)した。これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、次いで、ヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gからなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥し偏光子を得た。
【0130】
次いで、下記工程1〜4に従って偏光子と前記偏光板保護フィルム1〜17と、裏面側にはコニカミノルタオプト(株)製コニカミノルタタックKC8UYを偏光板保護フィルムとして貼り合わせてそれぞれ1〜17の偏光板を作製した。偏光子に偏光板保護フィルムを貼り合わせるにあたり、それぞれの偏光板保護フィルムにあらかじめ鹸化処理を施した。
(鹸化処理)
アルカリ浴に浸蹟した後、水浴(水温25℃)で水洗し、90℃の温風で乾燥した。アルカリ浴:2N−水酸化カリウム水溶液、温度70℃、浸蹟時間20秒。
【0131】
工程1:前記偏光子を固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒浸漬した。
【0132】
工程2:工程1で偏光子に付着した過剰の接着剤を軽く拭き除き、これを本発明の偏光板保護フィルムの上にのせ、更に裏面側にセルロースエステルフィルムコニカミノルタタックKC8UYをのせて配置した。
【0133】
工程3:工程2で積層した偏光板保護フィルムと偏光子と裏面側セルロースエステルフィルムコニカミノルタタックKC8UYを圧力20〜30N/cm、搬送スピードは約2m/分で貼合した。
【0134】
工程4:80℃の乾燥機中に工程3で作製した偏光子と偏光板保護フィルムと裏面側セルロースエステルフィルムコニカミノルタタックKC8UYとを貼り合わせた試料を2分間乾燥し、偏光板保護フィルム1〜17にそれぞれ対応する偏光板1〜17を作製した。
【0135】
<液晶表示装置の作製>
正面コントラスト測定を行う液晶パネルを以下のようにして作製し、液晶表示装置としての特性を評価した。
【0136】
SONY製40型ディスプレイKLV−40V2500の予め貼合されていた両面の偏光板を剥がして、上記作製した17種の偏光板をそれぞれ液晶セルのガラス面の両面に貼合した。
【0137】
その際、その偏光板の貼合の向きは、本発明の表面改質樹脂フィルムの面が、液晶セル側となるように、かつ、予め貼合されていた偏光板と同一の方向に吸収軸が向くように行い、偏光板1〜17にそれぞれ対応する、液晶表示装置1〜17の液晶表示装置を各々作製した。
【0138】
この液晶表示装置についてコントラストを代表する特性として、正面コントラストについて評価した。
【0139】
《評価》
(液晶表示装置の正面コントラスト)
23℃55%RHの環境で、この液晶ディスプレイのバックライトを点灯して30分そのまま放置してから測定を行った。測定にはELDIM社製EZ−Contrast160Dを用いて、液晶TVで白表示と黒表示の正面輝度を測定し、その比を正面コントラストとした。測定結果を、正面コントラストの値によって、下記のようにランク付けを行った。
◎:正面コントラスト比=700:1以上
○:正面コントラスト比=500:1以上700:1未満
△:正面コントラスト比=300:1以上500:1未満
×:正面コントラスト比=300:1未満
以上の価結果を、表2に示す。なお、表2では液晶表示装置番号を表示装置番号、正面コントラストをコントラストとそれぞれ略記した。
【0140】
【表2】

【0141】
表2に示した結果から明らかなように、本発明の偏光板保護フィルムから作成された偏光板を使用した場合は、液晶表示装置正面コントラストが良好であることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソソルビドをジオール成分とするポリエステルまたはポリカーボネートと、セルロースエステルとを含有することを特徴とする偏光板保護フィルム。
【請求項2】
前記セルロースエステルの総置換度が1.5〜2.5の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の偏光板保護フィルム。
【請求項3】
前記イソソルビドをジオール成分とするポリエステルまたはポリカーボネートの重量平均分子量が3万以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の偏光板保護フィルム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の偏光板保護フィルムを偏光子の少なくとも一方の面に保護フィルムとして積層したことを特徴とする偏光板。

【公開番号】特開2011−237511(P2011−237511A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107061(P2010−107061)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】