説明

偏光板保護フィルム用改質組成物及びこれを用いた偏光板保護フィルムの改質方法

【課題】偏光板保護フィルム用改質組成物及びこれを用いた偏光板保護フィルムの改質方法を提供する。
【解決手段】水溶性セルロース0.01重量%から0.5重量%及び残部のアルカリ溶液を含むことを特徴とする偏光板保護フィルム用改質組成物、及び偏光板保護フィルムの片面にコロナ放電処理または大気圧プラズマ処理を行うステップと、コロナ放電処理または大気圧プラズマ処理された面を前記保護フィルム用改質組成物でコーティングするステップと、コーティングされた保護フィルムを加熱するステップと、コーティングされた保護フィルムを純水で洗浄するステップと、コーティングされた保護フィルムを乾燥するステップとを含む偏光板保護フィルムの改質方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板保護フィルム用改質組成物及びこれを用いた偏光板保護フィルムの改質方法に関し、アルカリ溶液及びセルロースを含み、保護フィルムの片面のみを親水性に改質するのに用いられる組成物及びこれを用いて保護フィルムを改質する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
偏光板は、通常、二色性染料またはヨウ素を含浸させ、延伸したポリビニルアルコール(Polyvinyl alcohol、以下、「PVA」とする)系樹脂からなる偏光素子の片面または両面に様々な保護フィルムを接着剤などを用いて貼合して製造されるものとして知られている。
【0003】
上記偏光素子と保護フィルムとを貼り付けるのに用いられ得る接着剤は、アクリル接着剤、ポリウレタン系樹脂溶液とポリイソシアネート樹脂溶液とを混合したドライラミネート用接着剤、スチレンブタジエンゴム系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ポリウレタン系接着剤、ポリエステル系アイオノマー(ionomer)型ウレタン樹脂とグリシジルオキシ基を有する化合物を含有した接着剤、熱硬化型接着剤などが知られており、特に、ポリビニルアルコール系接着剤が広く用いられる。
【0004】
上記接着剤を用いて保護フィルムを偏光素子に問題なく貼り付けるためには、保護フィルムに対して接着力を増大させる前処理が先行されることが好ましく、上記前処理工程は、例えば、一般的に疏水性である保護フィルムをKOHまたはNaOHなどのアルカリ溶液に所定時間の間浸漬させ、水洗処理を行ってアルカリ処理された上記フィルムを純水で洗浄した後、保護フィルムを乾燥器など、その他の乾燥装置に入れて乾燥させる工程を行い、疏水性のフィルム表面に−OH群を導入する親水性に改質するための処理が先行され得る。
【0005】
しかし、サイクリックオレフィン系保護フィルムの場合のように、飽和炭化水素の構造を有し、疏水性の特性を持ち、反応性が低い場合、一般的な方法では保護フィルムの表面に親水性性質を実現することが十分でないという問題がある。したがって、接着力確保のためにコロナ放電を加えて、水に対する濡れ性(wetting)を増加させる方法を利用しているが、この場合にも接着力が良くないのが実情である。
【0006】
一方、偏光板保護フィルムの片面が機能性コーティングされている場合には、上記アルカリ溶液の前処理ステップで機能性コーティング層にアルカリ性溶液が触れないようにすることが好ましい。したがって、このために、通常、機能性コーティング面上に追加の保護フィルムを貼合した後、アルカリ溶液に浸漬し、その後、追加の保護フィルムを除去する方式で機能性コーティング層の損傷を抑制することができる。しかし、このような方法は、追加的な保護フィルムを用いるようになり、費用の負担が増加するだけでなく、保護フィルムの貼合せ工程及び剥離工程が求められて工程が複雑になり、品質管理の側面でも不利な影響を及ぼす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような従来技術の問題を解決するために提案されたものであって、その目的は、偏光板保護フィルムの片面のみをコーティングによって親水性に改質することができる偏光板保護フィルム用改質組成物を提供することにある。
【0008】
また、本発明の他の目的は、上記改質組成物を用いて偏光板保護フィルムの片面のみを親水性に改質し、反対面に存在することができる機能性コーティング層の損傷を抑制しつつ、偏光素子との接着力を確保することができる偏光板保護フィルムの改質方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、上記の目的を達成するための本発明に係る偏光板保護フィルム用改質組成物は、水溶性セルロース0.01重量%から0.5重量%及び残部(すなわち、99.50重量%から99.99重量%)のアルカリ溶液を含むことを特徴とする。
【0010】
上記アルカリ溶液は、0.5重量%から30重量%のアルカリ剤を含む水溶液であることが好ましい。
【0011】
上記アルカリ溶液に含まれたアルカリ剤は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、ソジウム−tert−ブトキシド(sodium tert−butoxide)、ポタシウムフォスフェイト(potassium phosphate)、ポタシウムカーボネート(potassium carbonate)、ソジウムバイカーボネート(sodium bicarbonate)、ポタシウムアセテート(potassium acetate)、及びソジウムカーボネート(sodium carbonate)からなる群より選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
【0012】
上記水溶性セルロースは、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、カルボキシルメチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルヒドロキシプロピルセルロース、及びこれらの塩からなる群より選ばれることが好ましい。
【0013】
上記水溶性セルロースは、分子量が60,000から200,000であることが好ましい。
【0014】
上記水溶性セルロースは、0.01重量%から0.05重量%で含まれることが好ましい。
【0015】
上記偏光板保護フィルムは、トリアセチルセルロース、シクロオレフィンポリマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル−スチレン共重合体、及びポリカーボネートからなる群より選ばれることが好ましい。
【0016】
また、上記の目的を達成するための本発明に係る偏光板保護フィルムの改質方法は、偏光板保護フィルムの片面にコロナ放電処理または大気圧プラズマ処理を行うステップと、上記コロナ放電処理または大気圧プラズマ処理された面を水溶性セルロース0.01重量%から0.5重量%及び残部(すなわち、99.50重量%から99.99重量%)のアルカリ溶液を含む偏光板保護フィルム用改質組成物でコーティングするステップと、コーティングされた保護フィルムを加熱するステップと、コーティングされた保護フィルムを純水で洗浄するステップと、コーティングされた保護フィルムを乾燥するステップとを含むことを特徴とする。
【0017】
上記加熱するステップは、40℃〜100℃で5秒〜120秒間なされることが好ましい。
【0018】
上記乾燥するステップは、60℃〜100℃で1分〜5分間なされることが好ましい。
【0019】
上記水溶性セルロースは、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、カルボキシルメチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルヒドロキシプロピルセルロース、及びこれらの塩からなる群より選ばれることが好ましい。
【0020】
上記水溶性セルロースは、分子量が60,000から200,000であることが好ましい。
【0021】
上記水溶性セルロースは、0.01重量%から0.05重量%で含まれることが好ましい。
【0022】
上記偏光板保護フィルムは、トリアセチルセルロース、シクロオレフィンポリマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル−スチレン共重合体、及びポリカーボネートからなる群より選ばれることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の水溶性セルロースは添加されたアルカリ溶液を改質組成物として用いる場合、コーティングによって偏光板保護フィルムの片面のみを選択的に親水性に改質することができ、したがって、その反対面に存在する機能性コーティング層の保護のための追加の保護フィルムを必要とせずに、機能性コーティング層を損傷することなく保護フィルムと偏光素子との間の接着力を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
液晶ディスプレイの重要な部材である偏光板において、多様な環境で高い耐久性と信頼性を維持するため、偏光素子と保護フィルムとの間には堅固な接着性が求められる。しかし、一般的に偏光素子として用いられるポリビニルアルコール(PVA)フィルムの表面は親水性であるのに対し、保護フィルムは疏水性である場合が多く、親水性または疏水性のいずれの接着剤を用いる場合にも接着が容易でない。
【0025】
したがって、従来は、保護フィルムの表面をアルカリ溶液で前処理したが、一般的に、上記前処理工程は浸漬によって行われるため、上記保護フィルムの片面が機能性コーティングされている場合、機能性コーティングが損傷されるという問題があった。
【0026】
本実施形態は、水溶性セルロースを含むアルカリ溶液を用いて保護フィルムの片面のみをコーティングによって改質することができる改質組成物に関するものである。より詳細に、本実施形態によれば、水溶性セルロース0.01重量%から0.5重量%及び残部(すなわち、99.50重量%から99.99重量%)のアルカリ溶液を含む偏光板保護フィルム用改質組成物が提供される。一般的なアルカリ溶液に水溶性セルロースを添加すると、保護フィルムの表面をコロナ放電処理または大気圧プラズマ処理した後、コーティングする過程で保護フィルムに対するアルカリ溶液のコーティング性が向上する。すなわち、アルカリ溶液だけでは保護フィルムに対するコーティングがなされず、また、コロナ放電処理または大気圧プラズマ処理後にはコーティング性がわずか改善されるが、この場合にも表面張力の影響でアルカリ溶液が直ちに固まる現象が現れる。それに対し、水溶性セルロースが添加されたアルカリ溶液を用いてコーティングを行うと、固まることなくコーティングが維持される。
【0027】
本実施形態に用いられるアルカリ溶液は、当該技術分野で通常用いられるいずれのアルカリ溶液であることができ、0.5重量%〜30重量%のアルカリ剤を含む水溶液であることが好ましい。より好ましいものは、5重量%〜15重量%のアルカリ剤を含む水溶液である。上記アルカリ溶液に用いられるアルカリ剤の例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、ソジウム−tert−ブトキシド(sodium tert−butoxide)、ポタシウムフォスフェイト(potassium phosphate)、ポタシウムカーボネート(potassium carbonate)、ソジウムバイカーボネート(sodium bicarbonate)、ポタシウムアセテート(potassium acetate)、ソジウムカーボネート(sodium carbonate)などが用いられ得るが、これに制限されるものではない。このようなアルカリ剤は、単独で用いられるか、または2種以上を組み合わせて用いることができる。このようなアルカリ剤のうち、アルカリ金属の水酸化物を用いることが好ましく、特に、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムを用いる場合、改質反応の効果が大きく、広い領域での濃度調整が可能なため、より好ましい。上記アルカリ溶液において、水酸化イオンの濃度は使用するアルカリ剤の種類などによって決定されることができ、一方、本実施形態のアルカリ溶液の溶媒は水であることが好ましい。
【0028】
上記アルカリ溶液に含まれる水溶性セルロースは、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、カルボキシルメチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルヒドロキシプロピルセルロース、及びこれらの塩からなる群より選ばれ得るが、これに制限されるものではない。
【0029】
一方、本実施形態に用いられる上記水溶性セルロースは、分子量が60,000から200,000であることが好ましく、分子量が60,000未満である場合、アルカリ溶液のコーティング膜を維持する効果が低くて処理効果が低く、不均一に改質されるという問題があり、200,000を超過する場合、よく溶解されず、粘度が高まるという問題がある。
【0030】
本実施形態は、水溶性セルロース及び残部のアルカリ溶液からなり、上記水溶性セルロースは、アルカリ溶液内に0.01重量%以上から0.5重量%以下の含量で含まれることが好ましい。水溶性セルロースが0.01重量%未満である場合、コーティング性が低下するアルカリ溶液が固まってフィルムの表面が不均一に改質される傾向があり、0.5重量%を超過する場合、水溶性セルロースがフィルムの表面に吸着されて、表面改質反応を阻害する傾向がある。より好ましくは、上記水溶性セルロースは0.01重量%以上から0.05重量%以下で含まれる。
【0031】
本実施形態に用いられるアルカリ溶液は、当該技術分野で通常用いられるいずれのアルカリ溶液であることができ、0.5重量%〜30重量%の水溶液であることが好ましい。より好ましくは、5重量%〜15重量%の水溶液であり、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、ソジウム−tert−ブトキシド(sodium tert−butoxide)、ポタシウムフォスフェイト(potassium phosphate)、ポタシウムカーボネート(potassium carbonate)、ソジウムバイカーボネート(sodium bicarbonate)、ポタシウムアセテート(potassium acetate)、ソジウムカーボネート(sodium carbonate)などのアルカリ剤の少なくとも1種が用いられ得るが、これに制限されるものではない。
【0032】
偏光板保護フィルム用改質組成物によって親水性に改質され得る偏光板保護フィルムは、トリアセチルセルロース、シクロオレフィンポリマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル−スチレン共重合体、及びポリカーボネートからなる群より選ばれ、ただし、これに制限されるものではない。
【0033】
本実施形態の他の観点によると、上記本実施形態の改質組成物を用いて偏光板保護フィルムを改質する方法が提供され、より詳細には、偏光板保護フィルムの片面にコロナ放電処理または大気圧プラズマ処理を行うステップと、上記コロナ放電処理または大気圧プラズマ処理された面を水溶性セルロース0.01重量%から0.5重量%及び残部(すなわち、99.50重量%から99.99重量%)のアルカリ溶液を含む偏光板保護フィルム用改質組成物でコーティングするステップと、コーティングされた保護フィルムを加熱するステップと、コーティングされた保護フィルムを純水で洗浄するステップと、コーティングされた保護フィルムを乾燥するステップとを含む偏光板保護フィルムの改質方法が提供される。
【0034】
本実施形態によると、親水性に改質しようとする保護フィルムの片面に、まずコロナ放電処理または大気圧プラズマ処理を行い、上記保護フィルムの偏光素子に接合される側の表面を処理することにより、保護フィルムと偏光素子との接着力を高めることができる。コロナ放電処理も大別すると大気圧プラズマ処理に含まれるが、本明細書では、コロナ放電によるプラズマ領域に直接被処理体を露出させることをコロナ放電処理といい、プラズマ領域と被処理体の表面とが離れていることを大気圧プラズマ処理という。コロナ放電処理は、工業的な実用例が豊富で低費用であることに対し、処理体表面の物理的なダメージが大きいという短所がある。一方、大気圧プラズマ処理は、実用例は比較的少なく、費用もコロナ処理より高いが、処理体表面のダメージが少なくて、処理強度をかなり高く設定することができるという長所がある。したがって、処理対象となる保護フィルムのダメージと処理後の接着性の改善水準の関係とを考慮して好ましい処理法を選択することができ、連続工程では、コロナ放電処理を利用するが、連続工程が必要でない場合には、大気圧プラズマ処理でも同じ効果を得ることができる。後続的に、これらの処理が行なわれたポリマーフィルムの処理面は親水化される。
【0035】
コロナ放電処理及び大気圧プラズマ処理は、それぞれ接触角が好ましい範囲になるように処理条件を決定することができ、変動される処理条件としては、印加電圧、周波数、雰囲気ガス種、処理時間などがある。上記処理条件は、工程条件に応じて出力が変わることができるもので、当該技術分野の熟練者によって適切に決定され得る。
【0036】
上記のように、コロナ放電処理または大気圧プラズマ処理された表面を水溶性セルロース0.01重量%から0.5重量%及び残部(すなわち、99.50重量%から99.99重量%)のアルカリ溶液を含む偏光板保護フィルム用改質組成物でコーティングする。水溶性セルロースが0.01重量%未満である場合、コーティング性が低下してアルカリ溶液が固まり、フィルムの表面が不均一に改質されるという問題があり、0.5重量%を超過する場合、水溶性セルロースがフィルムの表面に吸着されて表面改質反応を阻害するという問題がある。より好ましくは、上記アルカリ溶液は0.01重量%以上0.05重量%以下で含まれる。
【0037】
上記アルカリ溶液に含まれる水溶性セルロースは、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、カルボキシルメチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルヒドロキシプロピルセルロース、及びこれらの塩からなる群より選ばれることが好ましいが、これに制限されるものではない。さらに、本実施形態に用いられる上記水溶性セルロースは、分子量が60,000から200,000であることが好ましい。
【0038】
保護フィルムに改質組成物をコーティングするために利用される塗布方式としては、例えば、ディップ(dip)コート、カーテン(curtain)コート、バー(bar)コート、ロッド(rod)コート、ロール(roll)コート、グラビア(gravure)コート、ダイ(die)コートなどの塗布方法を利用することができるが、保護フィルムの片面のみを処理できるいずれの塗布方式も利用することができ、好ましくは、バーコートを利用することができる。改質組成物の塗布量は、5cc/m〜50cc/mであることが好ましいが、これに制限されるものではなく、当該技術分野の熟練者は具体的な塗布量を調節することができる。
【0039】
上記のように、片面が改質組成物でコーティングされた保護フィルムは、その後、加熱して改質反応の速度を高め、本明細書では、改質反応の速度を高めるための加温ステップを「加熱ステップ」と呼ぶ。上記加熱ステップは、40℃〜100℃で5秒〜120秒間行われることが好ましい。40℃未満の温度である場合、改質反応速度が低くて、フィルムの表面が十分に改質されないという問題があり、100℃を超過する温度である場合、改質反応が進行しすぎてむらが発生したり、アルカリ溶液が乾燥されて異物が発生する恐れがある。一方、加熱が5秒未満で行われる場合も改質反応が不十分である問題があり、120秒を超過する場合、改質組成物の乾燥による異物発生の恐れがある。
【0040】
加熱ステップで後続的に加熱された保護フィルムを洗浄してフィルムの表面に残っている改質組成物を除去する。上記洗浄ステップは、処理の最終ステップであり、その後、高温で乾燥するため、安全問題などを考慮して純水を用いることが好ましく、浸漬及びノズル噴射方式によって洗浄することができるが、これに制限されるものではない。
【0041】
最後に、上記保護フィルムを乾燥してフィルムの表面に残っている純水を除去する。上記乾燥ステップは、60℃〜100℃で1分〜5分間行われることが好ましい。60℃未満の温度である場合、乾燥が十分でなく、フィルムの表面に水分が残ってむらが発生する恐れがあり、100℃を超過する温度である場合、フィルムの光学物性や機械的物性が変化する可能性がある。一方、1分未満の場合、乾燥が不十分である問題があり、5分を超過する場合もフィルムの光学物性や機械的物性が変化する可能性があるという問題がある。
【0042】
上記本実施形態の改質方法によって改質され得る偏光板保護フィルムは、疏水性であるトリアセチルセルロース、シクロオレフィンポリマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル−スチレン共重合体、及びポリカーボネートからなる群より選ばれるが、これに制限されるものではない。
【0043】
下記の実施例は、本発明をより具体的に記述するためのものであって、本発明が下記の実施例によって制限されるものではない。
【0044】
(実施例)
[実施例1]
片面に低反射コーティングされているトリアセチルセルロース(triacetyl cellulose、TAC)フィルムを用いて機能性コーティング面の反対面である偏光素子との接着面にコロナ処理を行った後、2−ヒドロキシエチルセルロース(2−HEC)が0.01重量%添加されたKOH溶液をバーコート(bar coating)方式で導入した。上記KOHは、10重量%の濃度のものを用いた。コーティング後、80℃のオーブンで15秒間加熱した後洗浄し、80℃で1分間乾燥して片面のみが親水性に改質された偏光板保護フィルムを得た。
【0045】
[実施例2]
NaOH 15重量%濃度のアルカリ溶液を用いたことを除き、実施例1と同様の方式で片面に低反射コーティングされているトリアセチルセルロースフィルムを改質した。
【0046】
[実施例3]
2−ヒドロキシエチルセルロースが0.03重量%添加されたことを除き、実施例1と同様の方式で片面に低反射コーティングされているトリアセチルセルロースフィルムを改質した。
【0047】
[実施例4]
2−ヒドロキシエチルセルロースが0.05重量%添加されたことを除き、実施例1と同様の方式で片面に低反射コーティングされているトリアセチルセルロースフィルムを改質した。
【0048】
[実施例5]
2−ヒドロキシエチルセルロースが0.1重量%添加されたことを除き、実施例1と同様の方式で片面に低反射コーティングされているトリアセチルセルロースフィルムを改質した。
【0049】
[実施例6]
2−ヒドロキシエチルセルロースが0.5重量%添加されたことを除き、実施例1と同様の方式で片面に低反射コーティングされているトリアセチルセルロースフィルムを改質した。
【0050】
[実施例7]
カルボキシルメチルセルロースナトリウム塩が0.01重量%添加されたことを除き、実施例1と同様の方式で片面に低反射コーティングされてトリアセチルセルロースフィルムを改質した。
【0051】
[比較例1]
2−ヒドロキシエチルセルロースを添加しなかったことを除き、実施例1と同様の方式で片面に低反射コーティングされているトリアセチルセルロースフィルムを改質した。
【0052】
[比較例2]
接着面にコロナ放電処理または大気圧プラズマ処理を行わなかったことを除き、実施例1と同様の方式で片面に低反射コーティングされているトリアセチルセルロースフィルムを改質した。
【0053】
[比較例3]
2−ヒドロキシエチルセルロースが0.005重量%添加されたことを除き、実施例1と同様の方式で片面に低反射コーティングされているトリアセチルセルロースフィルムを改質した。
【0054】
[比較例4]
2−ヒドロキシエチルセルロースが0.7重量%添加されたことを除き、実施例1と同様の方式で片面に低反射コーティングされているトリアセチルセルロースフィルムを改質した。
【0055】
[比較例5]
フィルムを浸漬したことを除き、実施例1と同様の方式で片面に低反射コーティングされているトリアセチルセルロースフィルムを改質した。
【0056】
以下において、上記実施例及び比較例によって表面を改質した低反射コーティングトリアセチルセルロースフィルムの接触角を評価した。
【0057】
1.接触角評価
片面が低反射コーティングされたトリアセチルセルロースフィルムを上記方法で表面改質した後、上記トリアセチルセルロースフィルムのコーティング面と、その反対面である接着面に対する水接触角を接触角測定機(Mouse X、Surface Tech社製品、大韓民国)で測定した。
【0058】
一般的に、水接触角は90℃より小さければ親水性を、90℃より大きければ疏水性を有すると知られている。改質された保護フィルムの接触角は、通常40℃未満であるものが好ましく、本実験で上記実施例と比較例に応じて改質された接着面に対する水接触角が35℃未満である場合を◎、35℃以上40℃未満である場合を○、40℃以上である場合を×で示した。水の接触角が40℃未満である場合、接着性が改善されて剥離などの不良が発生しにくくなる。下限値に対しては特に制限はないが、フィルムを破損しないように設定することが好ましい。コーティング面の水接触角が低いほどフィルム表面の改質反応はよくなり、接着剤で貼合したときに高い接着力を見せる。
【0059】
コーティング面の接触角は、100℃以上を◎、90℃以上100℃未満を○、90℃未満を×で示した。損傷されなかった機能性コーティング層の水接触角は100℃以上を表わす。
【0060】
接着面及びコーティング面に対する水の接触角測定結果は、下記の表1及び表2のとおりである。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】

【0063】
水溶性セルロースを含まないアルカリ溶液の改質組成物を用いるか、またはコロナ放電処理または大気圧プラズマ処理しない比較例1及び2では、フィルムに改質組成物をコーティングする場合、数秒以内に組成物が固まるため、改質組成物のコーティング膜を維持することができず、その結果、不均一に改質されたフィルムが取得された。また、比較例5で確認することができるように、浸漬処理を行った場合、機能性コーティング面の接触角が90℃未満であることが確認でき、これは、コーティング面が損傷されたことを表わす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性セルロース0.01重量%から0.5重量%及び残部のアルカリ溶液を含むことを特徴とする偏光板保護フィルム用改質組成物。
【請求項2】
前記アルカリ溶液が、0.5重量%から30重量%のアルカリ剤を含む水溶液であることを特徴とする請求項1に記載の偏光板保護フィルム用改質組成物。
【請求項3】
前記アルカリ溶液に含まれたアルカリ剤が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、ソジウム−tert−ブトキシド(sodium tert−butoxide)、ポタシウムフォスフェイト(potassium phosphate)、ポタシウムカーボネート(potassium carbonate)、ソジウムバイカーボネート(sodium bicarbonate)、ポタシウムアセテート(potassium acetate)、及びソジウムカーボネート(sodium carbonate)からなる群より選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項1または2に記載の偏光板保護フィルム用改質組成物。
【請求項4】
前記水溶性セルロースが、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、カルボキシルメチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルヒドロキシプロピルセルロース、及びこれらの塩からなる群より選ばれることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の偏光板保護フィルム用改質組成物。
【請求項5】
前記水溶性セルロースが、分子量が60,000から200,000であることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の偏光板保護フィルム用改質組成物。
【請求項6】
前記水溶性セルロースが、0.01重量%から0.05重量%で含まれることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の偏光板保護フィルム用改質組成物。
【請求項7】
前記偏光板保護フィルムが、トリアセチルセルロース、シクロオレフィンポリマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル−スチレン共重合体、及びポリカーボネートからなる群より選ばれることを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の偏光板保護フィルム用改質組成物。
【請求項8】
偏光板保護フィルムの片面にコロナ放電処理または大気圧プラズマ処理を行うステップと、
前記コロナ放電処理または大気圧プラズマ処理された面を水溶性セルロース0.01重量%から0.5重量%及び残部のアルカリ溶液を含む偏光板保護フィルム用改質組成物でコーティングするステップと、
コーティングされた保護フィルムを加熱するステップと、
コーティングされた保護フィルムを純水で洗浄するステップと、
コーティングされた保護フィルムを乾燥するステップと
を含むことを特徴とする偏光板保護フィルムの改質方法。
【請求項9】
前記加熱するステップが、40℃〜100℃で5秒〜120秒間なされることを特徴とする請求項8に記載の偏光板保護フィルムの改質方法。
【請求項10】
前記乾燥するステップが、60℃〜100℃で1分〜5分間なされることを特徴とする請求項8または9に記載の偏光板保護フィルムの改質方法。
【請求項11】
前記アルカリ溶液が、0.5重量%から30重量%のアルカリ剤を含む水溶液であることを特徴とする請求項8から10の何れか1項に記載の偏光板保護フィルムの改質方法。
【請求項12】
前記アルカリ溶液に含まれたアルカリ剤が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、ソジウム−tert−ブトキシド(sodium tert−butoxide)、ポタシウムフォスフェイト(potassium phosphate)、ポタシウムカーボネート(potassium carbonate)、ソジウムバイカーボネート(sodium bicarbonate)、ポタシウムアセテート(potassium acetate)、及びソジウムカーボネート(sodium carbonate)からなる群より選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項8から11の何れか1項に記載の偏光板保護フィルムの改質方法。
【請求項13】
前記水溶性セルロースが、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、カルボキシルメチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルヒドロキシプロピルセルロース、及びこれらの塩からなる群より選ばれることを特徴とする請求項8から12の何れか1項に記載の偏光板保護フィルムの改質方法。
【請求項14】
前記水溶性セルロースが、分子量が60,000から200,000であることを特徴とする請求項8から13の何れか1項に記載の偏光板保護フィルムの改質方法。
【請求項15】
前記水溶性セルロースが、0.01重量%から0.05重量%で含まれることを特徴とする請求項8から14の何れか1項に記載の偏光板保護フィルムの改質方法。
【請求項16】
前記偏光板保護フィルムが、トリアセチルセルロース、シクロオレフィンポリマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル−スチレン共重合体、及びポリカーボネートからなる群より選ばれることを特徴とする請求項8から15の何れか1項に記載の偏光板保護フィルムの改質方法。

【公開番号】特開2011−57985(P2011−57985A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203268(P2010−203268)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】