説明

偏光板用粘着剤組成物およびこれを利用した偏光板

【課題】過酷な使用環境条件においても、優れた耐久性と光漏れ防止性とを兼ね備えた偏光板用粘着剤組成物を提供すること。
【解決手段】次の成分(A)および(B)(A)少なくとも次の成分(a1)ないし(a3)を共重合することにより得られる重量平均分子量が100万〜200万であるアクリル系ポリマー100質量部(a1)(メタ)アクリル酸アルキルエステル50〜94.9質量%(a2)芳香環含有モノマー5〜40質量%(a3)官能基含有モノマー0.1〜10質量%(B)石油系液状粘着付与樹脂1〜20質量部(C)硬化剤0.01〜2質量部(D)シランカップリング剤0.01〜1質量部を含有することを特徴とする偏光板用粘着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板用粘着剤組成物に関し、より詳細には、複屈折を低減し、偏光板の寸法変化によって生じる応力を緩和することによって光漏れを有効に防止し、さらに高い耐久性を備えた偏光板用粘着剤組成物およびこれを用いた偏光板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶素子は、液晶材料が2枚の基板間に挟まれた構造を有しており、この基板の表面には粘着剤層を介して偏光板が貼着されている。近年、液晶素子は、車両搭載用、屋外計器用、パソコンのディスプレイ、テレビ等用途が拡大しており、それに伴い使用環境も非常に過酷になってきている。
【0003】
このような過酷な使用環境下においては、偏光板に使用される粘着剤に、発泡、ハガレ、キレツ等が生じる場合があった。また、ディスプレイの大型化に伴って、偏光板の寸法変化に対して粘着剤が追従できず、光漏れが生じて表示品質が低下するという問題があった。
【0004】
上記問題を解決するために、出願人は既に、芳香環含有モノマー、官能基含有モノマー等を共重合させたアクリル系ポリマー、イソシアネート系架橋剤、シランカップリング剤を用い、アクリル系ポリマーの重量平均分子量の範囲および重量平均分子量と数平均分子量の比を一定の範囲に調整した粘着剤組成物を提案している(特許文献1)。また、特定の屈折率を有する固体のタッキファイヤーを用いることによって、屈折率を調整し耐久性を向上させた粘着剤組成物が提案されている(特許文献2および3)。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のように芳香環含有モノマーを共重合して光漏れ性を制御するためには比較的多量の芳香環含有モノマーを共重合する必要があり、このような芳香環含有モノマーはガラス転移温度が高く粘着剤の柔軟性を低下させてしまうため基材密着性や粘着剤の追従性が悪くなり光漏れを生じさせるおそれがあった。また、上記特許文献2、3のように固体のタッキファイヤーを使用すると粘着剤の追従性を悪化させてしまうという問題があった。
【特許文献1】特開2007−138056号公報
【特許文献2】特開2006−342258号公報
【特許文献3】特開2007−84762号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明は、耐久性に優れるとともに、高い追従性を有し光漏れ防止効果に優れる偏光板用粘着剤組成物を提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、芳香環含有モノマーを共重合させたアクリル系ポリマーに、液状の石油系粘着付与樹脂を添加することによって、応力緩和性を付与するとともに、アクリル系ポリマー中の芳香環含有モノマーの共重合量が少ない量であっても高い耐光漏れ性を発揮させることができ、芳香環含有モノマーのようなガラス転移温度の高いモノマーを多量に使用する必要が無く、得られる粘着剤層の追従性を損なうことがないことを見いだした。
また、石油系粘着付与樹脂はアクリル系ポリマーの光弾性率を調整して複屈折を低減することができるため、光漏れ防止性が著しく向上し、さらにその配合量は少量であっても十分な効果が得られるためブリードなどによって耐久性が損なわれることもないことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
次の成分(A)および(B)
(A)少なくとも次の成分(a1)ないし(a3)を共重合することにより得られる重
量平均分子量が100万〜200万であるアクリル系ポリマー 100質量部
(a1)(メタ)アクリル酸アルキルエステル 50〜94.9質量%
(a2)芳香環含有モノマー 5〜40 質量%
(a3)官能基含有モノマー 0.1〜10 質量%
(B)石油系液状粘着付与樹脂 1〜20質量部
(C)硬化剤 0.01〜2質量部
(D)シランカップリング剤 0.01〜1質量部
を含有することを特徴とする偏光板用粘着剤組成物である。
【0009】
また本発明は、偏光フィルムの少なくとも一方の面に上記偏光板用粘着剤組成物から形成される粘着剤層を設けてなる偏光板である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の偏光板用粘着剤組成物は、優れた耐久性を有し、高温高湿条件においても発泡、ハガレ、キレツ等の発生を抑制することができる。また、偏光板の寸法変化に柔軟に追従し、応力を緩和するとともに、複屈折を低減することによって、光漏れを有効に防止することが可能なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の偏光板用粘着剤組成物に用いる成分(A)のアクリル系ポリマーは、少なくとも、成分(a1)(メタ)アクリル酸アルキルエステル、成分(a2)芳香環含有モノマーおよび成分(a3)官能基含有モノマーを共重合して得られるものである。
【0012】
成分(a1)の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、特に限定されるものではないが、炭素数1〜12の分岐していてもよいアルキル基を有するものが好ましく、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらのうち、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレートが高分子量化が容易で耐久性が向上するため特に好ましい。
【0013】
また、成分(a2)の芳香環含有モノマーは、構造中に芳香族基を含む共重合可能な化合物であり、成分(A)のアクリル系ポリマーの光弾性率を調整し、複屈折を低減する作用を有する。この芳香環含有モノマーとして、具体的には、フェニルアクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル化β−ナフトールアクリレート、ビフェニル(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等が挙げられる。これらのうち、フェノキシエチルアクリレート、ベンジルアクリレートが、粘着剤としての柔らかさを維持できるため好ましく用いられる。
【0014】
成分(A)中の成分(a1)および(a2)の含有量は、成分(a1)が50〜94.9質量%(以下、単に「%」で示す)、好ましくは70〜90%であり、成分(a2)が5〜40%、好ましくは5〜29%である。
【0015】
成分(A)は、上記成分(a1)および(a2)のモノマーの他に、官能基含有モノマー(a3)を共重合させることで、官能基含有モノマーの官能基が硬化剤との反応点として作用し、粘着力、耐久性を向上させることができる。この官能基含有モノマー(a3)としては水酸基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー、アミノ基含有モノマーなどが挙げられる。
【0016】
水酸基含有モノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、クロロ−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アリルアルコール等が例示できる。
【0017】
カルボキシル基含有モノマーの例としては、(メタ)アクリル酸、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、3−カルボキシプロピル(メタ)アクリレート、4−カルボキシブチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸及び無水マレイン酸などを挙げることができる。
【0018】
アミノ基含有モノマーの例としては、アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ビニルピリジンなどを挙げることができる。
【0019】
官能基含有モノマー(a3)として、上記したモノマーの1種または2種以上を用いることができるが、これらのうち、(メタ)アクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが上述の(a1)、(a2)モノマーとの共重合性が良好であるため好ましく用いられる。
【0020】
成分(A)中の成分(a3)の含有量は、通常0.1〜10%、好ましくは、1〜5%である。
【0021】
成分(A)の製造に当たっては、上記以外の共重合可能なモノマーを使用することもできる。この共重合され得るモノマーの例としては、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリレート;アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート等のアセトアセチル基含有(メタ)アクリレート;酢酸ビニル、塩化ビニル並びに(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
【0022】
成分(A)は、溶液重合法、塊状重合法、乳化重合法及び懸濁重合法等の従来公知の重合法により製造することができるが、乳化剤や懸濁剤等の重合安定剤を含まない溶液重合法及び塊状重合法により製造したものが好ましい。
【0023】
上記のようにして得られる成分(A)の重量平均分子量は100〜200万であり、好ましくは120〜180万である。重量平均分子量が100万未満であると、高温環境下で発泡が生じやすく、200万よりも大きいと粘着剤塗工時の塗工性が悪くなる。なお、本明細書において重量平均分子量とは、実施例中に記載した測定方法により求められる値を意味する。
【0024】
また本発明に用いる成分(B)の石油系液状粘着付与樹脂は、成分(A)のアクリル系ポリマーの応力緩和性を与える成分である。この石油系液状粘着付与樹脂としては、スチレン系、α−スチレン系、テルペン系、芳香族変性テルペン系、水添テルペン系、キシレン樹脂系、脂肪族系等の液状粘着付与樹脂が挙げられ、このうち、スチレン系、α−スチレン系、芳香族変性テルペン系の液状粘着付与樹脂が、成分(A)のアクリル系ポリマーとの相溶性が良好であるため好ましい。また、成分(B)は、室温(25℃)で粘性を持つ液状又は半固形状を呈するものであり、その軟化点は30℃以下であることが好ましく、さらに20℃以下が好ましい。石油系粘着付与樹脂の軟化点が30℃よりも高く室温で固体であると、追従性が低下し十分な光漏れ防止効果が得られない。
【0025】
本発明の偏光板用粘着剤組成物における成分(B)の配合量は、成分(A)100質量部(以下、単に「部」で示すことがある)に対して、1〜20部であり、好ましくは5〜15部である。1部よりも少ないと応力緩和性が不十分で光漏れを生じるおそれがあり、20部よりも多いと耐久性が低下し、特に湿熱環境下ではキレツが発生するおそれがある。このような量で使用することにより、成分(A)中の芳香族環含有モノマーの使用量を低減し、得られる粘着剤の柔軟性を向上させながら、高い耐光漏れ性を付与することができる。
【0026】
本発明に用いる成分(C)の硬化剤としては、イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤等が例示でき、これらのうち、イソシアネート系硬化剤を使用すると粘着性能のバランスが良好で、基材への密着性に優れるという点で好ましく用いられる。
【0027】
イソシアネート系硬化剤の具体例として、トリレンジイソシアネート、クロルフェニレンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、テトラメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添されたジフェニルメタンジイソシアネートなどのイソシアネートモノマー及びこれらイソシアネートモノマーをトリメチロールプロパンなどと付加したイソシアネート化合物やイソシアヌレート化物、ビュレット型化合物、さらにはポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールなど付加反応させたウレタンプレポリマー型のイソシアネートなどを挙げることができる。これらのうち、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートの多価アルコール付加物が耐久性と、耐光漏れ性のバランスに優れるため好ましく用いられる。
【0028】
本発明の偏光板用粘着剤組成物における成分(C)の配合量は、成分(A)100部に対して、0.01〜2部であり、好ましくは0.1〜1部である。0.01部よりも少ないと凝集力が低下し、高温環境下で発泡が生じやすく、2質量部よりも多いとフィルムへの追従性が不足しハガレが生じたり、光漏れを生じたりする場合がある。
【0029】
本発明に用いる成分(D)のシランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン,ビニルトリエトキシシラン,メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の重合性不飽和基含有ケイ素化合物、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン,3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン,2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ構造を有するケイ素化合物、3−アミノプロピルトリメトキシシラン,N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン,N−(2−アミノエチル)−3アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基含有ケイ素化合物、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらのうち、成分(A)のアクリル系ポリマー中に含まれる官能基と反応する官能基を有しているシランカップリング剤を使用すると湿熱環境下でハガレを生じさせないという点で好ましい。
【0030】
本発明の偏光板用粘着剤組成物における成分(D)の配合量は、成分(A)100部に対して、0.01〜1部であり、好ましくは0.05〜0.3部である。0.01部よりも少ないと湿熱環境下においてハガレが発生しやすくなり、2部よりも多いと高温環境下においてシランカップリング剤がブリードし、逆に剥がれやすくなってしまうため好ましくない。
【0031】
なお、本発明の偏光板用粘着剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じ、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤等の任意成分を配合しても良い。
【0032】
本発明の偏光板用粘着剤組成物の調製は、上記成分(A)ないし(D)を常法に従って混合することによって行われる。
【0033】
かくして得られた偏光板用粘着剤組成物を、支持体上の少なくとも一方の面に常法に従って、塗工後、乾燥、架橋処理して粘着剤層を形成させることにより本発明の偏光板用粘着シートが得られる。支持体としては、表面に剥離処理されたポリエステルフィルムを使用することができる。粘着剤層の厚みは、通常15〜30μm、好ましくは、20〜25μm程度である。
【0034】
また、上記偏光板用粘着剤組成物から形成される粘着剤層を、偏光フィルムの少なくとも一方の面に設けることによって、本発明の偏光板を得ることができる。偏光フィルム上に粘着剤層を設ける方法としては、偏光フィルムに上記粘着剤組成物を直接塗工し、乾燥、架橋処理して粘着剤層を形成させてもよいが、上記偏光板用粘着シートに形成された粘着剤層から偏光フィルム上に転写してもよい。偏光フィルム上に設けられる粘着剤層の厚みは、通常15〜30μm、好ましくは、20〜25μm程度である。また、本発明に使用される偏光フィルムとしては、他の機能を有する層が積層されていてもよく、具体的には、楕円偏光フィルム、位相差フィルム等も含まれる。これらのうち、特に、偏光フィルム、楕円偏光フィルムを用いた場合に、本発明の偏光板用粘着剤組成物の応力緩和性がより発揮できる。
【0035】
上記のようにして得られる本発明の偏光板が用いられる液晶素子のタイプとしては特に限定されるものではなく、TNモード、VAモード、IPSモード、OCBモード等のいずれであってもよいが、これらのうち、本発明の偏光板の光漏れ防止性がより発揮されるためTNモード液晶素子に好適に使用できる。
【実施例】
【0036】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。
【0037】
製造例1〜6
撹拌機、還流冷却器、温度計及び窒素導入管を備えた反応装置に、それぞれ表1に示す質量部の共重合性モノマーと酢酸エチルを仕込み、アゾビスイソブチロニトリル(大塚化学社製)(以下「AIBN」と略記する)0.2部を加え、反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。次いで、窒素雰囲気下で撹拌しながら60℃に昇温した後、10時間反応させた。反応終了後、酢酸エチルで希釈し、アクリル系ポリマー溶液を得た。
【0038】
製造例1〜7で製造したアクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)を下記GPC測定条件に従って測定した。その値を表1中に併せて示す。
【0039】
<GPC測定条件>
測定装置:HLC−8120GPC(東ソー社製)
GPCカラム構成:以下の5連カラム(すべて東ソー社製)
(1)TSK−GEL HXL−H (ガードカラム)
(2)TSK−GEL G7000HXL
(3)TSK−GEL GMHXL
(4)TSK−GEL GMHXL
(5)TSK−GEL G2500HXL
サンプル濃度:1.0mg/cm となるように、テトラヒドロフランで希釈
移動相溶媒:テトラヒドロフラン
流量:1.0cm/min
カラム温度:40℃
【0040】
【表1】

【0041】
実施例1
偏光板の作製:
(粘着剤組成物の調製)
製造例1により得られたアクリル系ポリマー溶液のアクリル系ポリマー(固形分)100部に対して、スチレン系の液状粘着付与樹脂としてピコラスチックA5(イーストマンコダック社製、軟化点20℃)、イソシアネート系硬化剤コロネートL(日本ポリウレタン工業(株)社製)0.3部、シランカップリング剤KBE−9007(信越化学工業社製)0.1部を添加し、粘着剤組成物を得た。
【0042】
(偏光板の作製)
得られた粘着剤組成物を剥離処理したポリエステルフィルムの表面に塗布して乾燥させることにより、厚さ25μmの粘着剤層を有する粘着シートを得た。この粘着シートを偏光フィルムの片面に貼り付け、温度23℃、湿度65%RHの条件で7日間熟成させて偏光板を得た。
【0043】
実施例2〜4、比較例1〜8
アクリル系ポリマーと粘着付与樹脂を下記表2のように代えた以外は実施例1と同様にして粘着剤組成物を得た。また、得られた粘着剤組成物を用い、実施例1と同様にして偏光板を作製した。
【0044】
上記実施例及び比較例で得られた偏光板について、耐久性および光漏れ防止性を以下の評価方法で評価した。この結果を表2にまとめて示す。
【0045】
<耐久性の評価方法>
偏光板を、100mm×100mmの大きさに裁断し、無アルカリガラス板の片面にラミネーターロールを用いて貼着し、次いで、50℃、5気圧に調整されたオートクレーブに20分間保持して、試験板を作成した。同様の試験板を2枚作成し、それぞれ、温度60℃、湿度90%RHの条件下で500時間放置、及び温度80℃の条件下で500時間放置し、以下の基準で、発泡、ハガレ、キレツの発生等を目視で観察し評価した。
(基準)
○:発泡、ハガレ、キレツ等の外観不良が認められなかった
△:発泡、ハガレ、キレツ等の外観不良がわずかに認められた
×:発泡、ハガレ、キレツ等の外観不良が明らかに認められた
【0046】
<光漏れ防止性の評価方法>
偏光板2枚を、無アルカリガラス板の表裏面に相互に直交ニコル位になるようにラミネーターロールを用いて貼着し、次いで、50℃、5気圧に調整されたオートクレーブに20分間保持して、試験板を作成した。作成した試験板を、85℃の条件下で500時間放置し、光漏れを目視で観察し、以下の基準で評価した。
(基準)
◎:光漏れは全く見られなかった
○:光漏れはほぼ見られなかった
△:わずかに光漏れが見られた
×:明らかな光漏れが見られた
【0047】
【表2】

【0048】
表2に示した評価結果から明らかなように、本発明の粘着剤組成物を用いた偏光板は、発泡、ハガレ、キレツ等が発生せず耐久性に優れ、また光漏れ防止性にも優れることが示された。一方、比較例の偏光板は、耐久性または光漏れ防止性の何れかに欠点が見られた。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の粘着剤組成物は、優れた耐久性を有し、高温高湿条件においても発泡、ハガレ、キレツ等の発生を抑制することができる。また、偏光板の寸法変化に柔軟に追従し、応力を緩和するとともに、複屈折を低減することによって、光漏れを有効に防止することが可能である。したがって、このものは偏光板用の粘着剤組成物として好適に利用可能である。
以上

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)および(B)
(A)少なくとも次の成分(a1)ないし(a3)を共重合することにより得られる重
量平均分子量が100万〜200万であるアクリル系ポリマー 100質量部
(a1)(メタ)アクリル酸アルキルエステル 50〜94.9質量%
(a2)芳香環含有モノマー 5〜40 質量%
(a3)官能基含有モノマー 0.1〜10 質量%
(B)石油系液状粘着付与樹脂 1〜20質量部
(C)硬化剤 0.01〜2質量部
(D)シランカップリング剤 0.01〜1質量部
を含有することを特徴とする偏光板用粘着剤組成物。
【請求項2】
成分(B)が、スチレン系、α−スチレン系または芳香族変性テルペン系である請求項1または2記載の偏光板用粘着剤組成物。
【請求項3】
支持体の少なくとも一方の面に請求項1ないし3のいずれかの項記載の偏光板用粘着剤組成物から形成される粘着剤層を設けてなる偏光板用粘着シート。
【請求項4】
偏光フィルムの少なくとも一方の面に請求項1ないし3の何れかの項記載の偏光板用粘着剤組成物から形成される粘着剤層を設けてなる偏光板。

【公開番号】特開2009−191149(P2009−191149A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−32895(P2008−32895)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(000202350)綜研化学株式会社 (135)
【Fターム(参考)】