説明

偏光板積層用保護フィルムおよび保護フィルム積層偏光板

【課題】表面に疵等が付着しても輝点欠陥となることがない保護フィルム、およびその保護フィルムを積層した保護フィルム積層偏光板を提供する。
【解決手段】光学的等方性を有するポリカーボネートフィルム8の片面にポリエステルフィルム9を積層し、他の面に絶対値が50×10−12/N以下の光弾性係数を有する低光弾性樹脂フィルム10を積層した無延伸、無配向の3層フィルムのポリエステルフィルム表面に、離型剤12を塗布して離型保護フィルム6を構成し、この離型保護フィルム6を離型剤塗布面が偏光板3と接する様にして偏光板3の片面に積層し、偏光板3の他の片面に表面保護フィルム5を積層して保護フィルム積層偏光板とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に用いる偏光板に積層する偏光板積層用保護フィルム、およびその保護フィルムを積層してなる保護フィルム積層偏光板に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に液晶表示装置に用いる偏光板は、図1に示すように偏光子1の両面に偏光子保護フィルム2を積層して偏光板3を構成する。そして偏光板3の片面には貼り合わせ用の粘着剤層4が設けられ、偏光板3の他の片面には液層表示装置の製造工程におけるハンドリングでの疵付や塵埃の付着を防止するための表面保護フィルム5が積層される。さらに粘着剤層4の表面にもハンドリングでの疵付や塵埃の付着を防止するための離型保護フィルム6が積層される。偏光板は、このように表裏に保護フィルムが積層された保護フィルム積層偏光板7の形で出荷される。
【0003】
近年の液晶表示装置は大画面化および高輝度化しており、液晶表示装置中に存在する極く小さな輝点が欠陥となる。これらの輝点は偏光子や偏光子保護フィルムに混入する極微小の異物や疵などの欠陥に起因しており、これらの欠陥が含まれる偏光板は出荷前に確実に除去する必要がある。偏光板の欠陥検査は、一般的にクロスニコル法を用いて目視検査で行われる。すなわち、2枚の偏光板をそれぞれの配向軸が直交するように重ね合わせて暗黒化させると、欠陥部分が輝点として視認されるようになり、欠陥部分を検出することが可能となる。
【0004】
この偏光板の欠陥検査においては、偏光板の両面に積層される表面保護フィルムや離型保護フィルムは元来は不要であり、これらのフィルムを除去して検査を行えばよいが、欠陥検査のハンドリングにおいて偏光板が疵付くことが不可避であるので、表面保護フィルムや離型保護フィルムが積層された状態で欠陥検査がおこなわれる。
【0005】
表面保護フィルムや離型保護フィルムとしては 従来は透明性に優れ、かつ硬くて疵付きにくい二軸延伸ポリエステルフィルムが用いられることが多かったが、二軸延伸ポリエステルフィルムにおいては延伸して配向させる際にボウイングして配向が一定にならず、クロスニコル法を用いる検査の際に直交させて重ねると暗黒化のコントラストが一定せず、またフィルムの位相差による干渉色が現れるため、異物の視認が困難になる欠点があった。
【0006】
このような配向フィルムを用いた場合の欠点を解消させるため、特許文献1は、光学的等方性を有するポリカーボネートの両面にポリエステルフィルムを積層した3層の未延伸、無配向のフィルムを表面保護フィルムとして用い、またこの表面保護フィルムの片面に離型剤を塗布してなる離型保護フィルムを構成し、これらの表面保護フィルムと離型保護フィルムを偏光板に積層することを提案している。しかし、離型保護フィルム面においては、無配向のポリエステルフィルムは軟質であるためにハンドリングの際の擦過疵が付きやすく、疵付いた極く微小な部分に応力が生じる結果、クロスニコル法を用いる欠陥検査の際に疵部が輝点として視認されるようになり、偏光板そのものに起因した欠陥と見分けが付かなくなるという欠点を有している。
【0007】
本発明に関する先行技術文献として、以下のものがある。
【特許文献1】特開2004−077783号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、偏光板に保護フィルムを積層した状態でクロスニコル法を用いて欠陥検査する際に、偏光板起因の輝点欠陥検査を容易にし、また表面に疵等が付着しても輝点欠陥となることがない偏光板積層用保護フィルム、およびその保護フィルムを偏光板に積層してなる保護フィルム積層偏光板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の偏光板積層用保護フィルムは、ポリカーボネートフィルムの片面にポリエステルフィルムを積層し、ポリカーボネートフィルムの他の面に低光弾性樹脂フィルムを積層してなることを特徴とする。
(2)本発明の保護フィルムは、前記(1)において、前記ポリカーボネートのガラス転移温度が100℃以上であることを特徴とする。
(3)本発明の保護フィルムは、前記(1)または(2)において、前記ポリエステルフィルムが、エチレンテレフタレート・エチレンイソフタレート共重合体、ブチレンテレフタレート・ブチレンイソフタレート共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートのいずれかのフィルムであることを特徴とする。
(4)本発明の保護フィルムは、前記(1)〜(3)のいずれかにおいて、前記低光弾性樹脂フィルムが絶対値50×10−12/N以下の光弾性係数を有する樹脂からなることを特徴とする。
(5)本発明の保護フィルムは、前記(1)〜(3)のいずれかにおいて、前記低光弾性樹脂フィルムが絶対値10×10−12/N以下の光弾性係数を有する樹脂からなることを特徴とする。
(6)本発明の保護フィルムは、前記(1)〜(5)のいずれかにおいて、前記低光弾性樹脂フィルムがアクリル樹脂フィルムであることを特徴とする。
(7)本発明の保護フィルムは、前記(1)〜(6)のいずれかにおいて、前記保護フィルムが無配向フィルムであることを特徴とする。
(8)本発明の保護フィルム積層偏光板は、前記(1)〜(7)のいずれかに記載の保護フィルムを偏光板に積層してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の偏光板積層用保護フィルムは、光学的等方性を有するポリカーボネートフィルムの片面にポリエステルフィルムを積層し、他の片面に前記低光弾性樹脂フィルムを積層してなる無延伸無配向の3層フィルムで構成されるので、この保護フィルムに離型剤を塗布した面が偏光板と接するようにして偏光板の片面に積層し、偏光板の他の片面に表面保護フィルムを積層し、この積層体を2枚、それぞれの離型保護フィルム面が内側となるように、かつ配向軸が直交するように重ねて検査台に置いてクロスニコル法を用いて欠陥検査を行う際に、前記低光弾性樹脂フィルムにハンドリングなどで疵が付いても輝点として現れることがなく、偏光板の欠陥のみが輝点として視認されるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を説明する。
実施形態の保護フィルムを離型保護フィルムとして用いる場合は、図2に示すように基材となるポリカーボネートフィルム8の片面にポリエステルフィルム9が積層され、ポリカーボネートフィルム8の他の片面に低光弾性樹脂フィルム10が積層される。このような離型保護フィルム6は、例えば、押出法を用いて無延伸、無配向の3層フィルム11として製膜した後、ポリエステルフィルム9の表面に離型剤12を有機溶剤で希釈してロールコート法などの塗布手段を用いて塗布し、乾燥固化させて構成される。
【0012】
離型保護フィルム6は、偏光板の欠陥検査性向上の観点から、無色透明で、位相差が低いことが求められている。一方、上記のように、溶剤系離型剤がコートされることから、耐溶剤性が必要であり、また、乾燥工程を通過することから耐熱性が必要となる。
【0013】
離型保護フィルムの基材フィルムとして用いられるポリカーボネートは、耐熱性に優れ、また機械的強度も大きいが、さらにガラス転移温度が100℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましい。ガラス転移温度が100℃未満であると、離型剤コート時の乾燥工程の熱および張力により、フィルムに伸びが生じ、位相差が高くなってしてしまうおそれがある。
ポリカーボネートは二環二価フェノール類とホスゲンから誘導される炭酸エステル樹脂であり、高いガラス転移温度と耐熱性を有していることを特徴とする。
本実施形態のポリカーボネートとしては、ビス(4一オキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−オキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−オキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−オキシフェニル)イソブタン、1,1−ビス(4−オキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−オキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−オキシフェニル)ブタンなどのいずれかのビスフェノールから誘導される、ガラス転移温度が123〜171℃のポリ炭酸エステルの1種または2種以上をブレンドしてなるものを用いることが好ましい。
【0014】
図1に示すように、離型保護フィルム6は粘着剤層4を介して偏光板3に粘着積層されるが、欠陥検査を行った後に容易に剥離除去するために、図2に示すように離型保護フィルム6の片面には離型剤12が塗布される。離型剤12は有機溶剤で希釈してロールコート法などの塗布手段を用いて塗布され、乾燥固化させて用いられるが、無配向のポリカーボネートフィルムは耐溶剤性に乏しく、有機溶剤が付着すると収縮したり、白濁して不透明になるので、離型剤12を塗布する側のポリカーボネートフィルム8の片面にはポリエステルフィルム9を積層している。
ポリエステルフィルム9としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルスルホンカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロテルフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、3,3−ジエチルコハク酸、グルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、ダイマー酸、セバシン酸、スベリン酸、ドデシルカルボン酸などのカルボン酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキサメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、デカメチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2.2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパンなどのジオールを、それぞれ1種重縮合してなるホモポリマー、またはジカルボン酸1種以上とジオール2種以上を重縮合してなる共重合体、あるいはジカルボン酸2種以上とジオール1種以上を重縮合してなる共重合体、およびこれらのホモポリマーや共重合体を2種以上ブレンドしてなるブレンド樹脂のいずれかのポリエステル樹脂からなるポリエステルフィルム9を用いることができる。
【0015】
ポリエステルフィルム9は、離型剤12を希釈する有機溶剤が付着しても収縮することがないように、結晶化速度が大きいことが好ましい一方、離型剤12を塗布した後に乾燥固化するために、フィルムに搬送に必要な軽度の張力を負荷して加熱オーブンを通過させる際に、負荷した張力によって搬送方向に延伸されて1軸配向し、加熱オーブンを通過する際に熱固定されて配向結晶が生じ、フィルムの位相差が不均一とならないように結晶化速度が小さいことが好ましい、という相反する特性が求められる。この相反する特性を満足させるポリエステルフィルムとして、エチレンテレフタレート・エチレンイソフタレート共重合体、ブチレンテレフタレート・ブチレンイソフタレート共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートのいずれかのフィルムを挙げることができる。
【0016】
離型保護フィルム6は、偏光板検査時のハンドリングで表面に擦過による疵が付きやすい。この擦過による疵は、肉眼で見分けられる大きな疵の場合はそれ自体で欠陥として検出されるが、肉眼で見分けられないような小さな疵が付いた場合でも、疵付くことにより疵付き部分の樹脂に応力が負荷されて局部的に位相差が高くなり輝点として検出されるようになる。そのため、本実施形態の離型保護フィルムは、基材となるポリカーボネートフィルム8に、樹脂に応力が負荷されても位相差が高くなりにくい低光弾性樹脂フィルム10が積層されている。
低光弾性樹脂フィルムとしては、絶対値が50×10−12/N以下、より好ましくは10×10−12/N以下の光弾性係数を有する樹脂からなるフィルムを挙げることができる。光弾性係数の絶対値が50×10−12/Nを超える樹脂からなるフィルムを用いた場合は、樹脂表面に疵が付くと疵付き部分の樹脂に応力が負荷されて局部的に位相差が高くなり、クロスニコル法を用いる欠陥検査において輝点として検出されるので好ましくない。
【0017】
これらの低い光弾性係数を有する樹脂としては、ノルボルネン、テトラシクロドデセンやそれらの誘導体などの環状オレフィン樹脂からなるフィルムやアクリル樹脂フィルム、共重合ポリカーボネート樹脂フィルムを挙げることができる。アクリル樹脂としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルなどのメタクリル酸エステルからなるホモポリマーおよび、これらメタクリル酸エステルと共重合性を有するモノマーとの共重合体が挙げられる。この共重合性を有するモノマーとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロへキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸2−エチルへキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−ヒドロキシジエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピルなどのメタクリル酸エステル類、および、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロへキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸2−エチルへキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸2−ヒドロキシジエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピルなどのアクリル酸エステル類、および、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和酸類などが挙げられる。また、これらホモポリマー、共重合ポリマーは任意の割合でブレンドして用いることも可能である。さらに、これらホモポリマー、共重合体の単体もしくはブレンド物に対して、耐衝撃性向上を目的としてポリアクリル酸アルキルエステルースチレン共重合体などのアクリル系ゴムや、変性アクリルエラストマーを配合して用いることも可能である。これらの低光弾性樹脂はポリカーボネートやポリエステルよりも硬質の樹脂であり、擦過による疵も付きにくい。
【0018】
基材となるポリカーボネートフィルム8の片面にポリエステルフィルム9が積層され、ポリカーボネートフィルム8の他の片面に低光弾性樹脂フィルム10が積層されてなる上記の3層フィルム11の厚さは、ポリエステルフィルム(1〜50μm)/ポリカーボネートフィルム(5〜58μm)/低光弾性樹脂フィルム(1〜50μm)で、かつ、3層フィルム11のトータル厚さが25〜60μmであることが好ましい。ポリエステルフィルム9の厚さが1μm未満であると、有機溶剤で希釈した離型剤12を塗布する際に耐溶剤性に乏しくなる。一方、50μmを超えると離型剤12を塗布した後の乾燥固化の加熱に際して形状を保持する耐熱性に乏しくなる。ポリカーボネートフィルム8の厚さが5μm未満であると、上記の加熱に際しての耐熱性に乏しく、58μmを超えると耐熱性向上効果が飽和して経済的でなくなる。低光弾性樹脂フィルム10の厚さが1μm未満であると、深い疵が付いた場合に疵がポリカーボネート層まで達してポリカーボネートに起因する応力負荷により位相差の増大が生じるようになる。一方、50μmを超えると上記の加熱に際して形状を保持する耐熱性に乏しくなる。
【0019】
上記の3層フィルム11は、例えば、共押出法などの公知のフィルム製造方法を用いて製造することができる。また、3層フィルム11は長尺帯状の形状で製造され、コイラーに巻き取ったりコイラーから巻き戻したりしながら離型剤12を塗布されるが、ポリエステルフィルム9と低光弾性樹脂フィルム10のいずれか一方、または両方に粒径が0.1〜3.0μmのシリカ粉末などの滑剤を0.05〜3重量%含有させておくと、巻き取り作業や巻き戻し作業を円滑に行うことができる。滑剤を含有していないと、特にコイラーに巻き取る作業がきわめて困難になる。滑剤の粒径および含有量が上記の範囲内であれば、偏光板3の光学的欠陥の検出に悪影響を与えることはない。
【0020】
上記の3層フィルム11のポリエステルフィルム9の表面に塗布する離型剤12としては、シリコン系離型剤、高級脂肪酸、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステル、金属石鹸、フルオロカーボンなどが好ましく挙げられ、これらのいずれかをトルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトンなどの有機溶剤に溶解または分散させて希釈した溶液、またはエマルジョンをロールコート法などの塗布方法を用いて塗布した後、100〜140℃に加熱したオーブン中を通過させて乾燥固化させる。
このように、離型剤12を有する離型保護フィルム6を、粘着剤層4を介して偏光板3に粘着積層すると、欠陥検査を経た後、液晶表示装置に取り付ける際に容易に剥離することができる。
【0021】
また、偏光板3の離型保護フィルム6を積層する側と反対の側には表面保護フィルム5が積層されているが、本実施形態の保護フィルム表面に、離型剤に替えて粘着剤層を付与することにより、表面保護フィルム5として用いることが可能である。
【実施例】
【0022】
以下、実施例にて本発明を詳細に説明する。
(3層樹脂フィルムの作成)
押出法を用いて、表1に示すポリカーボネート層の片側に表1に示すポリエステル層と、他の片側に表1に示す低光弾性樹脂層を積層してなる3層の樹脂層からなる長尺帯状の無延伸樹脂フィルム(試料番号1〜6)を作成した。比較のため、表1に示すポリカーボネート層の表裏に、表1に示すポリエステル層を積層してなる3層の樹脂層からなる無延伸樹脂フィルム(試料番号7)を作成した。
【0023】
【表1】

【0024】
(輝点発生の有無の確認)
表1に示した試料番号1〜7の樹脂フィルムを用いた離型保護フィルムを偏光板の粘着面に張り合わせたものから、100mm×100mmの大きさの試片を2枚切り出した。試料番号1〜6の樹脂フィルムについては、片方の試片の低光弾性樹脂フィルム面に、試料番号7の樹脂フィルムについては、片方の試片の片側のポリエステル樹脂面に、エッチングにより表面粗さをRa0.5μmとした鋼板(重さ1kg)を載せて引張り、表面に擦過疵を形成させた。次いで擦過疵を形成させた試片と、擦過疵を形成させない他の試片を、離型保護フィルム面が内向きになるように、かつ偏光板の配向軸が互いに直角となるようにして重ね合わせ、クロスニコル法を用いて下方からの光線により上方から試片を観察した際の輝点の発生状態を目視観察し評価した。
評価結果を表2に示す。表2に示すように、ポリカーボネート層の片側にポリエステル層と、他の片側に低光弾性樹脂層を積層してなる3層樹脂フィルムは、表面に疵が付いてもきわめて輝点が発生しにくいことが分かる。
【0025】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の偏光板積層用保護フィルムは、偏光板の欠陥検査を行う際に、ハンドリングなどで保護フィルムに疵が付いても、疵発生の応力による局部的な位相差増大が生じにくいので、疵が輝点として現れることがなく、偏光板の欠陥のみが輝点として視認され、検出欠陥精度を大幅に向上させることが可能となり、産業上の利用可能性が極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】偏光板の構成の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の保護フィルムの一実施形態を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1:偏光子
2:偏光子保護フィルム
3:偏光板
4:粘着剤層
5:表面保護フィルム
6:離型保護フィルム
7:保護フィルム積層偏光板
8:ポリカーボネートフィルム
9:ポリエステルフィルム
10:低光弾性樹脂フィルム
11:3層フィルム
12:離型剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネートフィルムの片面にポリエステルフィルムを積層し、ポリカーボネートフィルムの他の片面に低光弾性樹脂フィルムを積層してなる偏光板積層用保護フィルム。
【請求項2】
前記ポリカーボネートのガラス転移温度が100℃以上であることを特徴とする、請求項1に記載の保護フィルム。
【請求項3】
前記ポリエステルフィルムが、エチレンテレフタレート・エチレンイソフタレート共重合体、ブチレンテレフタレート・ブチレンイソフタレート共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートのいずれかのフィルムであることを特徴とする、請求項1または2に記載の保護フィルム。
【請求項4】
前記低光弾性樹脂フィルムが絶対値50×10−12/N以下の光弾性係数を有する樹脂からなることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の保護フィルム。
【請求項5】
前記低光弾性樹脂フィルムが絶対値10×10−12/N以下の光弾性係数を有する樹脂からなることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の保護フィルム。
【請求項6】
前記低光弾性樹脂フィルムがアクリル樹脂フィルムであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の保護フィルム。
【請求項7】
前記保護フィルムが無配向フィルムであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の保護フィルム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の保護フィルムを、偏光板に積層してなる保護フィルム積層偏光板。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−9413(P2008−9413A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−142605(P2007−142605)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【出願人】(390003193)東洋鋼鈑株式会社 (265)
【Fターム(参考)】