説明

偏光機能を有する露光装置

【課題】 偏光機能を有する露光装置に関し、収差、光散乱、偏光バラツキ、フレア、或いは、光学特性の劣化の悪影響を受けることなく偏光特性を改善する。
【解決手段】 光源1と、投影露光系2と、光源1と投影露光系2とを光学的に結合する光学光路系3とを備えた偏光露光装置の光学光路系3を構成する光路中に、偏光機能を有する反射型プリズム4、偏光機能を有する反射ミラー5、或いは、偏光機能を有する屈折型プリズム6のうちの少なくとも一つを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は偏光機能を有する露光装置に関するものであり、特に、光散乱、偏光バラツキ、フレア、或いは、光学特性の劣化の悪影響を受けることなく、光学特性を改善するための偏光機構の構成に特徴のある偏光機能を有する露光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体や液晶や磁性体や光学デバイスにおける露光方法においては、ArF、KrF、i線、g線、EUVを始めとする短波長光による露光が行われているが、近年、解像度や焦点深度を改善するために、直線偏光したp偏光或いはs偏光を用いた偏光露光が開発されている(例えば、特許文献1或いは特許文献2参照)ので、ここで、図12及び図13を参照して、従来の偏光露光装置を説明する。
【0003】
図12参照
図12は、従来の偏光露光装置の概念的構成図であり、光源70、光学光路系80、及び、投影露光系90からなる。
光源70としては、波長が248nmのKrFエキシマレーザや波長が193nmのArFエキシマレーザや、波長が13.5nmのEUVレーザが多く用いられる。
【0004】
また、光学光路系80は、光源70からの露光光、光を反射または屈折するプリズム部82(例えば、特許文献3参照)や、筒状レンズ84や光強度分布を調整するフライアイなどを備えた光路部83、光路部83からの偏光光を投影露光系90に入射する反射ミラー部85などを光学設計上の必要に応じ、任意に取捨選択して複数配置するとにより構成される。
【0005】
また、投影露光系90は、アパーチャ91、透過または反射する投影レンズ系92、ステージ93から構成され、露光光はアパーチャ91を介して投影レンズ系92の直前に配置されたレチクル94を透過または反射し、レチクル94により所定パターン形状に整形された露光光は投影レンズ系92によって縮小されてステージ93上に載置された半導体ウエハ95に投影露光されることになる。
【0006】
図13参照
さらに、光学特性を向上する場合、偏向して露光することも可能で、偏向方向を揃える偏光部81は、上図に示すように、例えば、コンデンサレンズ86によって構成され、コンデンサレンズ86の光軸に垂直方向に印加される電圧によって、光源70からのレーザ光87の偏光方向が電圧の印加方向に制御されることになる。
【0007】
或いは、偏光部81は、下図に示すように、例えば、アジマス等の配向性結晶88によって構成されても良く、この場合には、配向性結晶88に入射したレーザ光87は、配向性結晶88を透過することによって、配向方向に偏光方向が制御された偏光光89になる。
【0008】
しかし、コンデンサレンズを使用する場合、偏光光にその場では悪影響を与えないが、装置があまりに大型で、レーザ発振器付近にしか配置できない上、その後にミラーで反射されたり、レンズで屈折するたびに、ミラーの歪みや、レンズの結晶方位によって、最終的には偏光成分が本来とは異なった方向に、偏光バラツキを生じさせてしまうという問題がある。
【0009】
また、配向性結晶を透過させる場合は、これ自体の大きさは小型であるが、結晶体物質を光が透過するため、偏光をさせると同時に、結晶格子によりフレアといわれる光散乱が生じてしまうという問題がある。
【0010】
しかも、実際に実用化されているものは、この光散乱や、偏光度の傾斜、偏光バラツキなどによる悪影響を与えるという欠点を最小限にとどめるため、光路の中継点には透過型の偏光素子を配置できず、また光路の中継点に透過物を配置すると、露光装置の光路が長くなるため焦点位置の設計にも悪影響を与える等の短所も生ずるため、レーザの発振器付近に設置して偏光子自体を制御することで、光が物質を透過して発生するこれらの大きな欠点を緩和するに留めているに過ぎない。
【0011】
さらに、これらで発生した光散乱は消えることなく、光学経路に配置したミラー、レンズ、或いは、筒状レンズなどを経るにしたがって悪影響が次第に大きくなるため、最終的にレチクルやウエハ上に露光される光は、レンズ端の歪みや、ミラー湾曲や、筒状レンズ反射などにより、収差、偏光バラツキ、フレアなどの悪影響を受けるという問題がある。
【0012】
図14参照
図14は、レンズ端における光散乱の説明図であり、レンズ端を透過する度に光散乱が重畳されて偏光バラツキが大きくなる。
【0013】
図15参照
図15は、筒状レンズおける光散乱の説明図であり、筒状レンズに入射した偏光光は筒状レンズ内部における多重反射により光散乱等の悪影響を受けて偏光バラツキが大きくなる。
【0014】
図16参照
図16は、レチクル照射時における偏光バラツキの説明図であり、上段図はアパーチャのない場合のX偏光バラツキ或いはY偏光バラツキを示している。
【0015】
また、中段図は、一般的な2点開口アパーチャのX偏光バラツキ、或いは、一般的な4点開口アパーチャのX,Y方向偏光バラツキを示している。
なお、4点開口アパーチャのX,Y方向偏光バラツキについては、配向性結晶を互いに配向方向の異なる2領域から構成することによって、X,Y方向偏光成分を同時に有するように構成した場合を示している。
【0016】
また、下段図は、ダイポールアパーチャのX偏光バラツキ或いはクロスポールアパーチャ(例えば、特許文献4参照)のX,Y方向偏光バラツキを示している。
なお、ダイポールアパーチャのX偏光バラツキについては、配向性結晶を互いに配向方向の異なる2領域から構成することによって、互いに逆平行のX方向偏光成分を同時に有するように構成した場合を示しており、また、クロスポールアパーチャのX,Y方向偏光バラツキについては、配向性結晶を互いに配向方向の異なる2領域から構成することによって、X,Y方向偏光成分を同時に有するように構成した場合を示している。
【特許文献1】特開2005−116831号公報
【特許文献2】特開2006−041540号公報
【特許文献3】特開2002−008964号公報
【特許文献4】特開2001−135570号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上述のように、従来の方法では、これらが原因で、マスクパターンに照射されるまでの長い光路上の悪影響で、最適な偏光方向とならず、実際に5%前後も偏光方向が傾き、1%前後の偏光バラツキまで生じるため、目的とする光学特性に応じた最適な偏光方向とすることができなかった。
【0018】
特に、近年の露光技術の発展や、解像寸法の微細化に伴って、収差や、偏光バラツキや、フレアや、光散乱による光学特性への悪影響による寸法差や寸法バラツキ、必要とされる光学特性などの要求が厳しくなり、偏光度のズレや偏光バラツキや光学特性の劣化を可能な限り低減することが非常に重要な課題となっている。
【0019】
したがって、本発明は、収差、光散乱、偏光バラツキ、フレア、或いは、光学特性の劣化の悪影響を受けることなく、露光時や偏光時の光学特性を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
図1は本発明の原理的構成図であり、ここで図1を参照して、本発明における課題を解決するための手段を説明する。
図1参照
上記課題を解決するために、本発明は、光源1と、投影露光系2と、光源1と投影露光系2とを光学的に結合する光学光路系3とを備えた偏光機能を有する露光装置において、光学光路系3を構成する光路中に、偏光機能を有する反射型プリズム4、偏光機能を有する反射ミラー5、或いは、偏光機能を有する屈折型プリズム6のうちの少なくとも一つを設けたことを特徴とする。
【0021】
このように、光学光路系3を構成する光路中に設ける反射型プリズム4、反射ミラー5、或いは、屈折型プリズム6の少なくとも一つに偏光機能を設けることにより、露光光に対して石英以外の物質をできるだけ透過させずに、フレアを始めとするような結晶格子を透過したときの悪影響を受けることなく、したがって、加工精度等の制約を受けることなく一方向に偏光成分を整えなおすことができ、それによって、マスクパターンに応じた偏光方向や、解像寸法の微細化や、焦点深度の拡大などの、必要とする光学特性に合わせて最適な偏光方向とすることができる。
【0022】
この場合、偏光機能を有する反射型プリズム4としては、透明誘電体または透明導電体等の透明物質からなるプリズムとプリズムに偏光電界を印加するコンデンサ機構、或いは、透明物質からなるプリズムとプリズムの背面に設けられた導電体または誘電体または誘磁体と導電体または誘電体または誘磁体に偏光電界を印加するコンデンサ機構、或いは、透明物質からなるプリズムとプリズムの背面に設けられた配向性結晶または光学偏光素子のいずれかの構成を採用すれば良い。
【0023】
このような構成とすることによって、反射型プリズム4において、反射型プリズム4自体に偏光方向を発現させたり、或いは、裏面から表面に偏光方向を転写することができ、それによって、露光光が配向性結晶等を透過せずに偏光可能になるので、偏光バラツキが少なく、且つ、フレアを始めとする結晶の光散乱などの悪影響も受けることがない。
【0024】
また、偏光機能を有する反射ミラー5としては、反射誘電体または反射導電体等の反射物質からなるミラーとミラーに偏光電界を印加するコンデンサ機構、或いは、反射物質からなるミラーとミラーの背面に設けられた導電体または誘電体または誘磁体と導電体または誘電体または誘磁体に偏光電界を印加するコンデンサ機構、反射物質からなる配向性結晶のミラー偏光機構、或いは、反射物質体からなるミラーとミラーの背面に設けられた配向性結晶または光学偏光素子のいずれかの構成を採用すれば良い。
【0025】
この場合も、上述のように構成することによって、反射ミラー5において、反射ミラー5自体に偏光方向を発現させたり、或いは、裏面から表面に偏光方向を転写することができ、それによって、露光光が配向性結晶等を透過せずに偏光可能になるので、偏光バラツキが少なく、且つ、フレアを始めとする結晶の光散乱などの悪影響も受けることがない。
【0026】
また、偏光機能を有する屈折型プリズム6としては、透明誘電体または透明導電体等の透明物質からなるプリズムとプリズムに偏光電界を印加するコンデンサ機構、或いは、透明物質からなるプリズムとプリズムの背面に設けられた誘電体または誘磁体と誘電体または誘磁体に偏光電界を印加するコンデンサ機構のいずれかの構成を採用すれば良い。
【0027】
この場合も、上述のように構成することによって、屈折型プリズム6において、屈折型プリズム6自体に偏光方向を発現させたり、或いは、裏面から表面に偏光方向を転写することができ、それによって、露光光が配向性結晶等を透過せずに偏光可能になるので、偏光バラツキが少なく、且つ、フレアを始めとする結晶の光散乱などの悪影響を少なくした状態で変形照明が可能になる。
【0028】
この屈折型プリズム6の場合、露光光は屈折型プリズム6を透過するので、投影露光系2の直前に配置することが望ましく、それによって、偏光バラツキが少なく、且つ、フレアを始めとする結晶の光散乱などの悪影響をより少なくすることができる。
【0029】
また、偏光機能を2次元面に分割配置しても良く、それによって、露光光の偏光方向をX方向偏光とY方向偏光とを混在させたり、或いは、X方向偏光と−X方向偏光とを混在させたりすることができる。
【0030】
即ち、2次元面に偏光素子を多数配置し、これら素子は各々を独立した偏光方向とすることで、偏光方向は2次元分布、または3次元分布で任意の方向で可変な設定となり、この結果できるだけ偏光方向を統一または調整して露光することで、マスクパターンの形状や、解像寸法の微細化や、焦点深度の向上を始めとした目的とする光学特性ごとに偏光方向を連続的に可変にすることができる。
【0031】
この場合の偏光機能を担う導電体としては、Co,Mn,Cr,Ti.Fe、Pt、1r,Rh,Ru、Ag,In、Tl、Si,Al、Ga、Sn、Bi、Pb、Zn、Sbを始めとする金属元素のいずれかまたはそれらの合金等を用いれば良い。
【0032】
また、偏光機能の担う誘電体としては、金属の酸化物、金属窒化物、PZT誘電体等のペロブスカイト構造を有する強誘電体や誘磁性体、C60分子等のフラーレン骨格を有する誘電体、或いは、高分子構造を有する有機物や樹脂やポリマーを用いれば良い。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、光学系のプリズム底部や反射ミラー面に偏光機能を持たせるているので、露光光を石英以外の物質をできるだけ透過させないようにすることができ、フレアを始めとするような結晶格子を透過したときの悪影響を受けることなく、一方向に偏光成分を整えることができ、それによって、偏光方向を可能な限り最適化した状態で露光を成し遂げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明は、光源と投影露光系とを光学的に結合する光学光路系を構成する光路中に、それ自体に偏光方向を発現させたり、或いは、裏面から表面に偏光方向を転写させた反射型プリズム、反射ミラー、或いは、屈折型プリズムのうちの少なくとも一つを設けたことを特徴とするものである。
【0035】
この場合、それ自体に偏光方向を発現させるためには、プリズムやミラーに偏光電界を印加するコンデンサ機構を設ければ良いし、裏面から表面に偏光方向を転写させる場合には、プリズムやミラーの背面に設けられた導電体または誘電体または誘磁体に偏光電界を印加するコンデンサ機構を設ければ良い。
【実施例1】
【0036】
ここで、図2乃至図7を参照して、本発明の実施例1の偏光露光装置を説明する。
図2参照
図2は、本発明の実施例1の偏光露光装置の概念的構成図であり、光源10、光学光路系20、及び、投影露光系60からなる。
光源10としては、従来の偏光露光装置と同様に、波長が248nmのKrFエキシマレーザや波長が193nmのArFエキシマレーザや、波長が13.5nmのEUVレーザが用いられる。
【0037】
また、光学光路系20は、光源10からの露光光の偏光方向を揃える偏光部21、偏光部21からの偏光光を偏向する偏光機能付き反射プリズム30、筒状レンズ23を備えた光路部22、光路部22からの偏光光を変形照明用に整形する偏光機能付き屈折型プリズム40、整形された偏光光を投影露光系60に入射する偏光機能付き反射ミラー部50によって構成される。
【0038】
また、投影露光系60は、アパーチャ61、投影レンズ系62、ステージ63から構成され、整形された偏光光はアパーチャ61を介して投影レンズ系62の直前に配置されたレチクル64を透過し、レチクル64により所定パターン形状に整形された偏光光は投影レンズ系62によって縮小されてステージ63上に載置された半導体ウエハ65に投影露光されることになる。
【0039】
図3参照
図3は、本発明の実施例1の偏光機能付き反射型プリズムの概念的構成図であり、石英製プリズム31の底面に電界印加機構32を設けて偏光用コンデンサを構成したものであり、石英製プリズム31は誘電体であるので電界を印加することによって電圧の印加方向に偏光方向を発現することができる。
無偏光または偏光バラツキを有する入射光33は、偏光機能付き反射型プリズム30を透過する際に、石英製プリズム31の底面に発現した偏光方向に規制されて偏光バラツキの少ない出射光34となって出射される。
【0040】
図4参照
図4は、本発明の実施例1の偏光機能付き屈折型プリズムの概念的構成図であり、石英製プリズム41の底面に電界印加機構42を設けて偏光用コンデンサを構成したものであり、この場合も石英製プリズム41は誘電体であるので電界を印加することによって電圧の印加方向に偏光方向を発現することができる。
無偏光または偏光バラツキを有する入射光43は、偏光機能付き屈折型プリズム40を透過する際に、石英製プリズム41の底面に発現した偏光方向に規制されて偏光バラツキの少ない変形照明用の出射光44となって出射される。
【0041】
図5参照
図5は、本発明の実施例1の偏光機能付き反射ミラーの概念的構成図であり、反射ミラー51の反射面に電界印加機構52を設けて偏光用コンデンサを構成したものであり、この場合も反射ミラー51は誘電体で構成されるので電界を印加することによって電圧の印加方向に偏光方向を発現することができるる。
無偏光または偏光バラツキを有する入射光53は、偏光機能付き反射ミラー50で反射される際に、反射ミラー51の反射面に発現した偏光方向に規制されて偏光バラツキの少ない出射光54となって出射される。
【0042】
図6参照
図6は、本発明の効果の説明図であり、ここでは、光学光路系20に偏光機能付き反射型プリズム30のみを設け、屈折型プリズム及び反射ミラーとして偏光機構を有さない屈折型プリズム及び反射ミラーを用いた場合の光強度分布の光学シミュレーション結果を示している。
【0043】
図6における縦軸は光強度比を示し、横軸はウエハ上での解像パターンの中心からの位置を示している。
露光光の偏光状態は半導体ウエハ65上のレジストパターンの側壁形状や線幅バラツキに反映され、従来技術による実際の偏光度と偏光バラツキや従来技術による最大の偏光度と偏光バラツキに比べて、本発明の偏光度と偏光バラツキの方が光強度分布が改善されていることが分かる。
【0044】
図7参照
図7は図6の一部を拡大した図であり、半導体ウエハ65上で45nmパターンを解像する場合、本発明の場合には、2nm以上の寸法差や寸法バラツキを改善することが可能になる。
【0045】
図8参照
図8は、従来技術により露光したレジストパターンの説明図であり、断面形状が台形状の線状レジストパターンの線幅バラツキが、偏光度と偏光バラツキにより規定される。
しかし、本発明によれば、偏光方向が光学系の最終端で出来るだけバラツキの少ない統一された偏光方向になることによって線幅バラツキやDOFを始めとする光学特性を向上することができる。
【0046】
このように、本発明の実施例1においては、反射型プリズム、変形照明形成用の屈折型プリズム、及び、反射ミラーに偏光機能を持たせており、偏光方向を偏光用コンデンサにより操作可能となるため、配向性結晶を用いる必要がなく、フレアは光散乱の影響により偏光バラツキの悪影響を受けることがなくなる。
【0047】
即ち、本発明による反射型プリズムの場合には、偏光光が透過するのは石英製プリズムのみであり、配向性結晶等の結晶体物質を透過しないので光散乱等の悪影響を受けることがない。
また、本発明による反射ミラーの場合には反射だけであるので、材料の透過率や屈折率、格子構造による光散乱や加工精度等の制約を受けることがない。
【0048】
さらに、本発明による変形照明形成用の屈折型プリズムの場合も、変形照明形状が変わる度に偏光方向を最適に調整できるため、従来技術による光源付近での透過型偏光よりも、偏光度や偏光バラツキをはるかに少なく抑えるように微調整して偏光することができる。
【実施例2】
【0049】
次に、図9を参照して、本発明の実施例2の偏光露光装置を説明するが、偏光露光装置の基本的構成は上記の実施例1の偏光露光装置と同様であるので、実施例2の偏光露光装置に用いる偏光機能付き反射型プリズムを説明する。
図9参照
図9は、実施例2の偏光露光装置に用いる偏光機能付き反射型プリズムの概念的構成図であり、石英製プリズム31の底面に配置した誘電体板36と電界印加機構37とを設けて偏光用コンデンサを構成したものである。
偏光バラツキを有する入射光33は、偏光機能付き反射型プリズム35を透過する際に、偏光用コンデンサにより石英製プリズム31の底面に転写した偏光方向に規制されて偏光バラツキの少ない変形照明用の出射光34となって出射される。
【0050】
本発明の実施例2においては、誘電体板36と電界印加機構37とにより偏光用コンデンサを構成しているので、石英製プリズム31の構成に影響を与えることなく偏光機能を持たせることができる。
【実施例3】
【0051】
次に、図10を参照して、本発明の実施例3の偏光露光装置を説明するが、偏光露光装置の基本的構成は上記の実施例1の偏光露光装置と同様であるので、実施例3の偏光露光装置に用いる偏光機能付き屈折型プリズムを説明する。
図10参照
図10は、実施例3の偏光露光装置に用いる偏光機能付き屈折型プリズムの概念的構成図であり、石英製プリズム41の底面に配置した石英製の誘電体板46と電界印加機構47とを設けて偏光用コンデンサを構成したものである。
偏光バラツキを有する入射光43は、偏光機能付き屈折型プリズム45を透過する際に、偏光用コンデンサにより石英製プリズム41の底面に転写した偏光方向に規制されて偏光バラツキの少ない変形照明用の出射光44となって出射される。
【0052】
本発明の実施例3においては、上述の実施例2と同様に、誘電体板46と電界印加機構47とにより偏光用コンデンサを構成しているので、石英製プリズム41の構成に影響を与えることなく偏光機能を持たせることができる。
また、この場合、偏光光は、誘電体板46も透過することになるが、誘電体板46は石英製であるので、配向性結晶の場合のようにフレア等が発生することがない。
【実施例4】
【0053】
次に、図11を参照して、本発明の実施例4の偏光露光装置を説明するが、偏光露光装置の基本的構成は上記の実施例1の偏光露光装置と同様であるので、実施例4の偏光露光装置に用いる偏光機能付き反射ミラーを説明する。
図11参照
図11は、実施例4の偏光露光装置に用いる偏光機能付き反射ミラーの概念的構成図であり、反射ミラー51の反射面に配置した誘電体板56と電界印加機構57とを設けて偏光用コンデンサを構成したものである。
偏光バラツキを有する入射光53は、偏光機能付き反射ミラー55を透過する際に、偏光用コンデンサにより反射ミラー51の反射面に転写した偏光方向に規制されて偏光バラツキの少ない変形照明用の出射光54となって出射される。
【0054】
本発明の実施例4においては、上述の実施例2と同様に、誘電体板56と電界印加機構57とにより偏光用コンデンサを構成しているので、反射ミラー51の構成に影響を与えることなく偏光機能を持たせることができる。
【0055】
以上、本発明の各実施例を説明してきたが、本発明は各実施例に記載した条件・構成に限られるものではなく、各種の変更が可能であり、例えば、実施例1においては、光学光路系に偏光機能付き反射型プリズム、偏光機能付き屈折型プリズム、及び、偏光機能付き反射ミラーを配置しているが、全てを配置する必要はなく、反射型プリズム、変形照明用の屈折型プリズム、及び、反射ミラーのうちの少なくとも一つに偏光機能を持たせれば良いものである。
【0056】
また、上記実施例2乃至実施例4についても同様であり、実施例2乃至実施例4の偏光機能付き屈折型プリズム、及び、偏光機能付き反射ミラーの内の一つを光学光路系に配置しても良いし、或いは、その内の2つ或いは3つ全てを配置しても良いものである。
【0057】
さらには、上記の実施例1に示した偏光機能付き屈折型プリズム、及び、偏光機能付き反射ミラーの一部を実施例2乃至実施例4の偏光機能付き屈折型プリズム、及び、偏光機能付き反射ミラーで置き換えても良いものである。
【0058】
また、上記の各実施例においては、偏光機能付き屈折型プリズム、及び、偏光機能付き反射ミラーに発現される偏光方向或いは転写される偏光方向を位置方向としているが、電界印加機構を複数に分割して、2次元的に互いに異なった方向の偏光方向分布を持つように構成しても良いものである。
【0059】
また、上記の実施例2及び実施例4においては、反射型であり、偏光光は誘電体板を透過しないので、誘電体の透過率や屈折率等の制約を受けることがないので、誘電体としては、SiO2 等の金属酸化物、SiN等の金属窒化物、PZT素子等の誘電体、ペロブスカイト構造を有する強誘電体、或いは、フラーレン骨格を有するC60を代表とする分子構造による誘電体、または、高分子構造を持つ有機物や樹脂やポリマーを用いても良いものである。
【0060】
また、上記の実施例2及び実施例4においては、反射型であり、偏光光は誘電体板を透過しないので、誘電体板の代わりに導電体板を用いても良いものであり、導電体としては、Mn,Cr,Ti,Fe,Pt,Ir,Rh,Ru,Ag,In,Tl,Si,Al、Ga,Sn,Bi,Pb,Zn,Sbを始めとする金属元素或いはそれらの合金を用いても良いものである。
【0061】
さらには、誘電体板または導電体板に限られるものではなく、誘磁体板を用いても良いものであり、この場合も誘磁体板に電界を印加することによって偏光方向を発現させて反射プリズムの底面或いは反射ミラーの反射面に偏光方向を転写することができる。
なお、この場合の誘磁体としては、上述の誘電体材料或いは導電体材料に磁場を印加することにより、誘磁体として用いることができる。
【0062】
また、上記実施例2及び実施例4においては、電界印加機構を伴わない偏光制御機構を設けても良いものであり、例えば、アジマス等の配向性結晶や偏光子等の光学偏光素子を反射型プリズムの底面或いは反射ミラーの反射面に設けも良いものである。
この場合も反射型であるので、配向性結晶等を用いても配向性結晶等を透過することがないので、フレア等の悪影響を受けることがない。
【0063】
また、上記の各実施例においては、屈折型プリズムを反射ミラーの前段に配置しているが、アパーチャの直前になるように屈折型プリズムを反射ミラーの後段に配置しても良いものである。
【0064】
ここで再び図1を参照して、本発明の詳細な特徴を改めて説明する。
再び、図1参照
(付記1) 光源1と、投影露光系2と、前記光源1と投影露光系2とを光学的に結合する光学光路系3とを備えた偏光機能を有する露光装置のおいて、前記光学光路系3を構成する光路中に、偏光機能を有する反射型プリズム4、偏光機能を有する反射ミラー5、或いは、偏光機能を有する屈折型プリズム6のうちの少なくとも一つを設けたことを特徴とする偏光機能を有する露光装置。
(付記2) 上記偏光機能を有する反射型プリズム4が、透明物質からなるプリズムと前記プリズムに偏光電界を印加するコンデンサ機構、透明物質からなるプリズムと前記プリズムの背面に設けられた導電体または誘電体または誘磁体と前記導電体または誘電体または誘磁体に偏光電界を印加するコンデンサ機構、或いは、透明物質からなるプリズムと前記プリズムの背面に設けられた配向性結晶または光学偏光素子のいずれかからなることを特徴とする付記1記載の偏光機能を有する露光装置。
(付記3) 上記偏光機能を有する反射ミラー5が、反射物質からなるミラーと前記ミラーに偏光電界を印加するコンデンサ機構、反射物質からなるミラーと前記ミラーの背面に設けられた導電体または誘電体または誘磁体と前記導電体または誘電体または誘磁体に偏光電界を印加するコンデンサ機構、反射物質からなる配向性結晶のミラー偏光機構、或いは、反射物質からなるミラーと前記ミラーの背面に設けられた配向性結晶または光学偏光素子のいずれかからなることを特徴とする付記1記載の偏光機能を有する露光装置。
(付記4) 上記偏光機能を有する屈折型プリズム6が、透明物質からなるプリズムと前記プリズムに偏光電界を印加するコンデンサ機構、透明物質からなるプリズムと前記プリズムの背面に設けられた誘電体または誘磁体と前記誘電体または誘磁体に偏光電界を印加するコンデンサ機構、或いは、透明物質からなるプリズムと前記プリズムの背面に設けられた配向性結晶または光学偏光素子のいずれかからなることを特徴とする付記1記載の偏光機能を有する露光装置。
(付記5) 上記偏光機能を有する屈折型プリズム6を、上記投影露光系2の直前に配置したことを特徴とする付記4記載の偏光機能を有する露光装置。
(付記6) 上記偏光機能を、2次元面に分割配置したことを特徴とする付記1乃至5のいずれか1に記載の偏光機能を有する露光装置。
(付記7) 上記偏光機能を担う導電体が、Co,Mn,Cr,Ti.Fe、Pt、1r,Rh,Ru、Ag,In、Tl、Si,Al、Ga、Sn、Bi、Pb、Zn、Sbを始めとする金属元素のいずれかまたはそれらの合金からなることを特徴とする付記2乃至5のいずれか1に記載の偏光機能を有する露光装置。
(付記8) 上記偏光機能の担う誘電体が、金属の酸化物、金属窒化物、ペロブスカイト構造を有する強誘電体、フラーレン骨格を有する誘電体、或いは、高分子構造を有する有機物のいずれかからなることを特徴とする付記2または5のいずれか1に記載の偏光機能を有する露光装置。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の活用例としては、半導体デバイスの製造工程に用いる露光装置が典型的であるが、半導体装置の製造用に限られるものではなく、超伝導体デバイス、光偏向装置等の強誘電体デバイスの露光工程にも適用されるものであり、さらには、液晶表示デバイスや光学デバイスの製造工程のための露光にも適用されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の原理的構成の説明図である。
【図2】本発明の実施例1の偏光露光装置の概念的構成図である。
【図3】本発明の実施例1の偏光機能付き反射型プリズムの概念的構成図である。
【図4】本発明の実施例1の偏光機能付き屈折型プリズムの概念的構成図である。
【図5】本発明の実施例1の偏光機能付き反射ミラーの概念的構成図である。
【図6】本発明の効果の説明図である。
【図7】図6の一部を拡大した要部拡大図である。
【図8】従来技術により露光したレジストパターンの説明図である。
【図9】実施例2の偏光露光装置に用いる偏光機能付き反射型プリズムの概念的構成図である。
【図10】実施例3の偏光露光装置に用いる偏光機能付き屈折型プリズムの概念的構成図である。
【図11】実施例4の偏光露光装置に用いる偏光機能付き反射ミラーの概念的構成図である。
【図12】従来の偏光露光装置の概念的構成図である。
【図13】従来の偏光露光装置の偏光部の説明図である。
【図14】レンズ端における光散乱の説明図である。
【図15】筒状レンズおける光散乱の説明図である。
【図16】レチクル照射時における偏光バラツキの説明図である。
【符号の説明】
【0067】
1 光源
2 投影露光系
3 光学光路系
4 反射型プリズム
5 反射ミラー
6 屈折型プリズム
10 光源
20 光学光路系
21 偏光部
22 光路部
23 筒状レンズ
30 偏光機能付き反射プリズム
31 石英製プリズム
32 電界印加機構
33 入射光
34 出射光
35 偏光機能付き反射プリズム
36 誘電体板
37 電界印加機構
40 偏光機能付き屈折型プリズム
41 石英製プリズム
42 電界印加機構
43 入射光
44 出射光
45 偏光機能付き屈折型プリズム
46 誘電体板
47 電界印加機構
50 偏光機能付き反射ミラー部
51 反射ミラー
52 電界印加機構
53 入射光
54 出射光
55 偏光機能付き反射ミラー
56 誘電体板
57 電界印加機構
60 投影露光系
61 アパーチャ
62 投影レンズ系
63 ステージ
64 レチクル
65 半導体ウエハ
70 光源
80 光学光路系
81 偏光部
82 反射プリズム部
83 光路部
84 筒状レンズ
85 反射ミラー部
86 コンデンサレンズ
87 レーザ光
88 配向性結晶
89 偏光光
90 投影露光系
91 アパーチャ
92 投影レンズ系
93 ステージ
94 レチクル
95 半導体ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、投影露光系と、前記光源と投影露光系とを光学的に結合する光学光路系とを備えた偏光機能を有する露光装置において、前記光学光路系を構成する光路中に、偏光機能を有する反射型プリズム、偏光機能を有する反射ミラー、或いは、偏光機能を有する屈折型プリズムのうちの少なくとも一つを設けたことを特徴とする偏光機能を有する露光装置。
【請求項2】
上記偏光機能を有する反射型プリズムが、透明物質からなるプリズムと前記プリズムに偏光電界を印加するコンデンサ機構、透明物質からなるプリズムと前記プリズムの背面に設けられた導電体または誘電体または誘磁体と前記導電体または誘電体または誘磁体に偏光電界を印加するコンデンサ機構、或いは、透明物質からなるプリズムと前記プリズムの背面に設けられた配向性結晶または光学偏光素子のいずれかからなることを特徴とする請求項1記載の偏光機能を有する露光装置。
【請求項3】
上記偏光機能を有する反射ミラーが、反射物質からなるミラーと前記ミラーに偏光電界を印加するコンデンサ機構、反射物質からなるミラーと前記ミラーの背面に設けられた導電体または誘電体または誘磁体と前記導電体または誘電体または誘磁体に偏光電界を印加するコンデンサ機構、或いは、反射物質からなる配向性結晶のミラー偏光機構、反射物質または透明物質からなるミラーと前記ミラーの背面に設けられた配向性結晶または光学偏光素子のいずれかからなることを特徴とする請求項1記載の偏光機能を有する露光装置。
【請求項4】
上記偏光機能を有する屈折型プリズムが、透明物質からなるプリズムと前記プリズムに偏光電界を印加するコンデンサ機構、透明物質からなるプリズムと前記プリズムの背面に設けられた誘電体または誘磁体と前記誘電体または誘磁体に偏光電界を印加するコンデンサ機構、或いは、透明物質からなるプリズムと前記プリズムの背面に設けられた配向性結晶または光学偏光素子のいずれかからなることを特徴とする請求項1記載の偏光機能を有する露光装置。
【請求項5】
上記偏光機能を、2次元面に分割配置したことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の偏光機能を有する露光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−47581(P2008−47581A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−219206(P2006−219206)
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】