説明

偏波合成装置

【課題】偏波合成後の偏波間の光強度差を、簡素な構成により低減する。
【解決手段】光変調器1は、入射面から入射された偏波の異なる2つの光LO,LEを出射面上の離間した2点から出射させる複屈折媒質110と、前記2点から出射された偏波の異なる2つの光が導入されるよう配置された光ファイバ112と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏波合成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の偏波合成装置として、特許文献1には、偏波面が直交した2つの光を複屈折結晶に入射して一方の偏波(異常光)の光路を結晶内で屈折させ、同一光軸上に両偏波の光を出射させるようにした構成が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−204118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような偏波合成装置において、偏波合成された2つの偏波間に光強度の差が生じることがある。従来、偏波合成後に偏波間の光強度のバランスをとるためには、複屈折結晶の前段に光減衰器を設け、偏波合成する前に2つの偏波の光強度を調整する必要がある。しかしながら、光減衰器を追加することは部品点数の増加につながり、偏波合成装置の構成の簡素化の面で好ましくない。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、偏波合成後の偏波間の光強度差を、簡素な構成により低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、入射面から入射された偏波の異なる2つの光を出射面上の離間した2点から出射させる複屈折媒質と、前記2点から出射された偏波の異なる2つの光が導入されるよう配置された光ファイバと、を備えることを特徴とする偏波合成装置である。
【0007】
また、本発明は、上記の偏波合成装置において、前記光ファイバは、前記導入された2つの光の強度差が最小となる位置に配置されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、上記の偏波合成装置において、前記複屈折媒質の長さは、前記入射された2つの光を前記出射面上の同一点から出射させるのに必要な長さとは異なる長さに設定されていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上記の偏波合成装置において、前記入射面に入射される2つの光の離間距離は、前記複屈折媒質に入射された2つの光が前記出射面上の同一点から出射されるのに必要な離間距離とは異なる離間距離に設定されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上記の偏波合成装置において、前記入射面に入射される2つの光は非平行であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上記の偏波合成装置において、前記入射面のうち、前記入射面に入射される一方の光の入射位置の部分が、前記一方の光の光軸に対して傾斜していることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記の偏波合成装置において、前記複屈折媒質の前段にレンズを備え、前記複屈折媒質に入射される2つの光が前記レンズを通過する位置は、前記レンズの光軸に対し非対称な位置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、偏波合成後の偏波間の光強度差を、簡素な構成により低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態による偏波合成装置の構成を示す上面図である。
【図2】偏波合成された2つの光の光強度差と光路a,b間の光軸間隔dとの関係を説明するための図である。
【図3】偏波合成された2つの光の光強度差と光路a,b間の光軸間隔dとの関係を説明するための図である。
【図4】偏波合成された2つの光の光強度差と光路a,b間の光軸間隔dとの関係を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
図1は、本発明の一実施形態による偏波合成装置の構成を示す上面図である。この偏波合成装置は、2つの変調光を偏波合成する光変調器1であって、LN基板上に導波路及び変調電極が形成された変調器本体10と、変調器本体10からの出力光を偏波合成する空間コリメート光学系による偏波合成部20とを有している。なお、変調電極については図示を省略する。
【0016】
変調器本体10は、マッハツェンダー導波路MAの両アームにマッハツェンダー導波路MB,MCが設けられ、マッハツェンダー導波路MBの両アームにマッハツェンダー導波路101,102が、マッハツェンダー導波路MCの両アームにマッハツェンダー導波路103,104が、それぞれ設けられた入れ子構造を有する。即ち、入力ファイバ105からマッハツェンダー導波路MAの入力導波路106へ導入された入力光は、アーム上のマッハツェンダー導波路MBとMCへ分岐して入力される。また、マッハツェンダー導波路MBへの入力光は、マッハツェンダー導波路101と102へ分岐して入力され、マッハツェンダー導波路MCへの入力光は、マッハツェンダー導波路103と104へ分岐して入力される。更に、マッハツェンダー導波路101と102からの出力光は、マッハツェンダー導波路MBにより合波され、マッハツェンダー導波路MAのアーム108へ導入され、マッハツェンダー導波路103と104からの出力光は、マッハツェンダー導波路MCにより合波され、マッハツェンダー導波路MAのアーム109へ導入される。
【0017】
マッハツェンダー導波路101〜104は、それぞれに設けられた変調電極とともにLN光変調器を形成している。各LN光変調器101〜104の変調電極には、不図示の駆動回路から25Gb/sの駆動信号が与えられ、各LN光変調器101〜104は、25Gb/sで変調された変調光を出力する。ここで、マッハツェンダー導波路MBのLN光変調器101と102の変調方式は、DQPSK(差動四相位相偏移変調)を用いる。マッハツェンダー導波路MCのLN光変調器103と104の変調方式も同様である。これにより、マッハツェンダー導波路MAのアーム108,109へは、それぞれ50Gb/sの変調光が入力されることになる。
【0018】
マッハツェンダー導波路MAのアーム108は、LN基板(変調器本体10)の出力側端面(図の右側端面)の近傍部分が、端面の法線に対し傾斜して設けられている。また、同様に、マッハツェンダー導波路MAのアーム109は、出力側端面の近傍部分が、端面の法線に対し傾斜して設けられている。2つのアーム108,109の傾斜角は、アーム108とアーム109がLN基板の内部で交差するような角度である。このような導波路配置により、出力導波路108からは図1中の下方へ向けて斜めに光が出射され、出力導波路109からは図1中の上方へ向けて斜めに光が出射されることとなる。なお、例えば各アーム108,109の傾斜角を4°程度とすることにより、端面から出力導波路108,109への戻り光を低減することができる。
【0019】
偏波合成部20は、変調器本体10の側から順に、コリメートレンズ111と偏波回転手段107と偏波合成素子110とコリメータ112の各光学素子が配置されてなる空間コリメート光学系として構成されている。
【0020】
コリメートレンズ111は、例えばロッドレンズであり、変調器本体10の出力側端面に装着されている。このコリメートレンズ111の焦点距離fは、出力導波路108,109から出射された2つの光がコリメートされ、且つコリメートレンズ111を通過後にこれら2つの光の伝搬方向が互いに平行となるような値が選ばれている。コリメートレンズ111から出射された2つの平行光の光軸間隔Dは、LN基板内におけるアーム108とアーム109の傾斜角、LN基板の出射端面におけるアーム108とアーム109の離間間隔、および、コリメートレンズ111の焦点距離fによって決まる値である。
【0021】
偏波回転手段107は、変調器本体10の出力導波路109から出射されてコリメートレンズ111を通過した光が伝搬する光路上に設けられ、偏波回転手段107を通過した光の偏波面を90°回転させる機能を有する。これにより、変調器本体10の出力導波路108から出射された光と偏波回転手段107を通過した光は、互いに偏波面が90°傾いた状態になる。偏波回転手段107としては、例えば、1/2波長板を用いることとする。
【0022】
偏波合成素子110は、光軸方向の長さLを有した複屈折結晶(例えば、ルチルや方解石)であり、変調器本体10の一方の出力導波路109側から偏波合成素子110へ入射した光が常光LOとして偏波合成素子110内を伝搬し、他方の出力導波路108側から偏波合成素子110へ入射した光が異常光LEとして偏波合成素子110内を伝搬するように、その光学軸の向きが設定されている。偏波合成素子110の内部では、異常光LEの光路が常光LOの光路に対して屈折する。このため、偏波合成素子110の出射端面(図の右側端面)における常光LOと異常光LEの光軸間隔dは、入射端面(図の左側端面)の光軸間隔Dよりも狭くなる。
【0023】
従来の偏波合成装置では、偏波合成素子の出射端面における常光LOと異常光LEの光軸間隔dがゼロとなるように、すなわち、偏波合成素子から2つの偏波が同一の光路上に出射されるように、偏波合成素子の光軸方向の長さLが設定されていた。しかしながら、本実施形態の偏波合成装置では、偏波合成素子110の出射端面における常光LOと異常光LEの光軸間隔dがd≠0となるように、すなわち、偏波合成素子110から2つの偏波が間隔d(≠0)だけ離間した異なる光路(光路a,光路b)上に出射されるように、偏波合成素子110の光軸方向の長さLを設定する。
【0024】
コリメータ112は、1穴フェルールの穴部にシングルモードファイバを用いたファイバコリメータを内蔵した構成を有し、このファイバコリメータが偏波合成素子110の2つの出射光光路a,bの中間に来るようにして配置される。これにより、コリメータ112には、光路a,光路bに沿って偏波合成素子110から出射された2つの変調光の両方が導入されて、50Gb/sの変調光が偏波合成されてなる100Gb/sの変調光が得られる。
【0025】
次に、偏波合成された2つの光の光強度差と光路a,b間の光軸間隔dとの関係について、図2〜図4の具体例を用いて説明する。図2〜図4において、横軸はコリメータ112のファイバコリメータが配置された位置を示している。但し、ファイバコリメータが光路aと一致した状態を原点にとり、ファイバコリメータが光路aよりも光路bの側にある状態を正にとる。また、左側の縦軸は、偏波合成素子110から光路aおよび光路b上にそれぞれ出射されてコリメータ112へ導入された光の結合損失(ロス)を示し、右側の縦軸は、光路aの結合損失と光路bの結合損失の差(ロス差)である。
【0026】
図2〜図4では、偏波合成素子110から光路a上に出射された光よりも、光路b上に出射された光の方が1dBだけ光強度が弱いものとし、また、偏波合成装置の要求仕様としてロス差(2つの光の光強度差)が1dB以下、且つロスが1.2dB以下であるとする。各図中に、要求仕様を満足する許容範囲を示す。
【0027】
図2は、光軸間隔がd=0.06mmの場合の例である。この場合、図2によれば、上記の要求仕様を満足するためには、コリメータ112のファイバコリメータを配置する位置を、0.031mm〜0.097mmとすればよく、トレランス(位置の許容範囲の幅)は0.066mmであることが分かる。但し、ロス差は最小でも0.018dBであり、ロス差を完全にゼロにすることはできない。
【0028】
図3は、光軸間隔がd=0.1mmの場合の例である。この場合、図3によれば、上記の要求仕様を満足するためには、コリメータ112のファイバコリメータを配置する位置を、0.063mm〜0.098mmとすればよく、トレランスは0.035mmであることが分かる。また、この場合には、ロス差をゼロにすることも可能である。
【0029】
図4は、光軸間隔がd=0.135mmの場合の例である。この場合、図4によれば、上記の要求仕様を満足するためには、コリメータ112のファイバコリメータを配置する位置を0.098mmとしなければならず、トレランスがほとんどないことが分かる。
【0030】
なお、d<0.06mmの範囲ではトレランスはd=0.066mmの場合よりも小さくなり、d>0.135mmの範囲では上記要求仕様を満足できるファイバコリメータの配置は存在しない。
【0031】
このように、本実施形態の偏波合成装置では、偏波合成素子110から出射される2つの偏波の光軸間隔dをd≠0とすることで、偏波合成された偏波間の光強度差を小さくすることが可能である。
【0032】
なお、光軸間隔dをd≠0とする手法としては、次のようなものがある。
(1)偏波合成素子110の長さLを、従来の長さ(d=0となるようにする場合の偏波合成素子の長さ)よりも長くまたは短くする。
(2)コリメートレンズ111から出射された2つの光の光軸間隔Dを、従来(d=0となるようにする場合のファイバコリメータ間隔)よりも大きくまたは小さくする。そのためには、前述したように、LN基板内におけるアーム108とアーム109の傾斜角、LN基板の出射端面におけるアーム108とアーム109の離間間隔、および、コリメートレンズ111の焦点距離fを調整すればよい。
(3)偏波合成素子110へ入射させる2つの光を非平行とする。そのために、例えば、偏波合成素子110の前段にレンズを設け、レンズの光軸に対し非対称な位置に2つの光を入射させレンズを通過させる。または、レンズの光軸を偏波合成素子110の光軸に対して傾かせる。
(4)偏波合成素子110の入射端面のうち、片方の光の入射位置の部分を入射光軸に対して傾斜した面にする。
【0033】
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【0034】
例えば、本発明の偏波合成装置は、上述した実施形態の光変調器にしか適用できない訳ではなく、異なる2つの偏波を合成する機能を有する他の種々の光学装置にも適用可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0035】
1…光変調器 10,11…変調器本体 20…偏波合成部 101〜104…LN光変調器 105…入力ファイバ 106…入力導波路 107…偏波回転手段 108,109…アーム 110…偏波合成素子 111…コリメートレンズ 112…コリメータ 113…出力ファイバ MA,MB,MC…マッハツェンダー導波路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射面から入射された偏波の異なる2つの光を出射面上の離間した2点から出射させる複屈折媒質と、
前記2点から出射された偏波の異なる2つの光が導入されるよう配置された光ファイバと、
を備えることを特徴とする偏波合成装置。
【請求項2】
前記光ファイバは、前記導入された2つの光の強度差が最小となる位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の偏波合成装置。
【請求項3】
前記複屈折媒質の長さは、前記入射された2つの光を前記出射面上の同一点から出射させるのに必要な長さとは異なる長さに設定されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の偏波合成装置。
【請求項4】
前記入射面に入射される2つの光の離間距離は、前記複屈折媒質に入射された2つの光が前記出射面上の同一点から出射されるのに必要な離間距離とは異なる離間距離に設定されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の偏波合成装置。
【請求項5】
前記入射面に入射される2つの光は非平行であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の偏波合成装置。
【請求項6】
前記入射面のうち、前記入射面に入射される一方の光の入射位置の部分が、前記一方の光の光軸に対して傾斜していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の偏波合成装置。
【請求項7】
前記複屈折媒質の前段にレンズを備え、前記複屈折媒質に入射される2つの光が前記レンズを通過する位置は、前記レンズの光軸に対し非対称な位置であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の偏波合成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−211971(P2012−211971A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76942(P2011−76942)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】