説明

偏芯調整装置および偏芯調整方法ならびに回転加工装置

【課題】作業者の熟練や長時間の段取りを必要とすることなく、回転軸に対する被加工物の偏芯調整を高精度に行う。
【解決手段】主軸スピンドルの吸着面6に偏芯方向に可動に吸着保持された被加工物1の円筒部11に対して、偏芯調整装置3の作用部4に測定子8aが露出するように検出部8を内蔵させ、測定子8aで円筒部11の偏芯量を測定しつつ、作用部4で円筒部11を押圧することで被加工物1の主軸スピンドルに対する偏芯が解消する芯出しを行うようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は偏芯調整装置および偏芯調整方法ならびに回転加工装置に関し、たとえば、回転加工される被加工物の偏芯調整技術に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
回転軸対称のレンズ、プリズムなどの光学部品や当該光学部品の成形に用いられる金型は、高精度な形状はもとより、回転対称軸が上記光学部品の光軸に対して、偏芯誤差が所定の許容値以下になるように、高精度に一致している必要がある。
【0003】
このような高い精度の光学部品の回転加工においては、加工装置の回転軸の中心に対して、光軸となる被加工物の中心軸との偏芯誤差が精度規格値以下となるように、被加工物を偏芯調整して、把持させる必要がある。
【0004】
このような要求に対応する芯出し技術として、特許文献1に開示された技術が知られている。すなわち、回転駆動される主軸に取り付けたマグネットチャックに吸着されたワークに、一つの支点の回りで回動自在な支持板上に支持された二つ作用部を当接させ、支持板の支点がマグネットチャックの回転中心へ向かって移動する時に、二つの作用部がワークの外周に当接して位置偏倚したワークに対応して揺動しながらワークの位置ずれを矯正し、ワークの中心をマグネットチャックの回転中心に合わせる芯出しを行うものである。
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1の芯出し方法では、ワークの偏芯量を測定する測定器の検出部が、ワークに接する作用部とは別体となるため、調整の都度、前記測定器の検出部を個別に設置する必要があり、作業の段取りの所要時間が長くなり、加工全体のリードタイムが長くなるという技術的課題があった。
【0006】
また、2箇所の作用部が支持板上で揺動しながらワークを押圧するため、作用部の調整方向とワークの移動方向のベクトルが一致せず、ワークに与えるべき偏芯調整量と作用部の移動量とが異なり、この両者の値の関係に習熟させるために作業者の熟練や教育が必要となっていた。
【0007】
更に、支点の回りで回動する支持板は、回転自在にするために支点軸にクリアランスを設けている。よって、支持板に搭載された二つの作用部を、このクリアランス以下の精度で移動させることは困難であり、二つの作用部のワークに対する当接による偏芯調整、特にサブマイクロメートル以下の精度での偏芯調整は困難となっていた。
【特許文献1】特開2007−245241号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、作業者の熟練や長時間の段取りを必要とすることなく、回転軸に対する被加工物の偏芯調整を高精度に行うことが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の観点は、回転軸に交差する方向に可動に被加工物が吸着保持された主軸を回転させた状態で前記被加工物の外周部に調整手段を当接させて偏芯調整を行う偏芯調整装置であって、
前記調整手段の内部に、前記被加工物の前記回転軸に対する偏芯量を測定する偏芯量測定器の検出部を装着した偏芯調整装置を提供する。
【0010】
本発明の第2の観点は、回転軸に交差する方向に可動に被加工物が吸着保持された主軸を回転させるステップと、
前記被加工物の前記回転軸に対する偏芯量を測定する偏芯量測定器の検出部を備えた調整手段を当該被加工物に当接させるステップと、
前記調整手段と前記被加工物の外周部が接触した後に、前記検出部から得られる前記偏芯量の最大値と最小値の差の半分だけ、前記被加工物を押圧する方向に前記調整手段を移動させるステップと、
を含む偏芯調整方法を提供する。
【0011】
本発明の第3の観点は、回転軸に交差する方向に可動に被加工物が吸着保持される主軸と、
前記主軸とともに回転する前記被加工物に当接する加工工具と、
前記主軸とともに回転する前記被加工物の外周部に当接する調整手段に当該被加工物の前記回転軸に対する偏芯量を測定する偏芯量測定器の検出部を具備した偏芯調整装置と、
を含む回転加工装置を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、作業者の熟練や長時間の段取りを必要とすることなく、回転軸に対する被加工物の偏芯調整を高精度に行うことが可能な技術を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
[実施の形態1]
図1は、本発明の一実施の形態である偏芯調整装置の構成および作用の一例を示す側面図であり、図2は、本実施の形態の偏芯調整装置の構成の一例を示す略断面図、図3は、本実施の形態の偏芯調整装置の構成の一例を示す正面図、図4は、本実施の形態の偏芯調整装置の作用の一例を示す線図、図5は、本実施の形態の偏芯調整装置の作用の一例を示すフローチャートである。
【0014】
また、図6は、本実施の形態の偏芯調整装置を備えた回転加工装置の構成の一例を示す側面図である。
[構成]
まず、図6を参照して、本実施の形態の回転加工装置5の全体構成の一例を説明する。
【0015】
図6には、一例として、回転軸対称の被加工物1を加工するための機械加工装置としての回転加工装置5が例示されている。
本実施の形態の回転加工装置5のベース5aの上には、被加工物1を把持して加工するため、ACサーボモータ等の回転装置を空気静圧軸受け、油静圧軸受けや転がり軸受けのいずれかで支持され、主軸回転軸Aに対し高精度に軸回転をする主軸スピンドル2(主軸)が備え付けられている。
【0016】
回転加工装置5の主軸スピンドル2の内部は中空の吸引孔2aになっており、主軸スピンドル2の先端の吸着面6の中央には、吸引孔2aに直結する複数の吸着穴6aが設けられている。
【0017】
回転加工装置5の主軸スピンドル2の吸着面6の反対側から真空ポンプ2b等の真空吸引装置により真空吸引を行い、吸引孔2aを通じ吸着面6に密着した被加工物1を吸着穴6aで真空吸着可能になっている。また、真空ポンプ2bには、空圧レギュレータ2cが設けられており、この空圧レギュレータ2cの圧力調整機能によって吸着穴6aから被加工物1に作用する真空吸引力を変化させることができる。
【0018】
回転加工装置5のベース5aには、刃物台5bが載置され、この刃物台5bには、たとえば、切削工具、研削工具、研磨工具等の加工工具5cが搭載されている。
そして、主軸スピンドル2に保持されて回転する被加工物1に、加工工具5cを当接させることにより、切削、研削、研磨等の任意の回転機械加工が行われる。
【0019】
この場合、ベース5aの上には、さらに、主軸スピンドル2に上述のように吸着保持された被加工物1の主軸回転軸Aに対する偏芯を補正する芯出しを行うための偏芯調整装置3(調整手段)が設けられている。
【0020】
偏芯調整装置3および刃物台5bは、少なくともX軸方向(押し出し方向)とZ軸方向の2軸方向に移動できる送り機構としてのスライド機構5dを介してベース5aに搭載されている。
【0021】
Z軸方向は、図6の紙面の左右方向で主軸スピンドル2の主軸回転軸Aの方向である。また、X軸方向は、図6の紙面に垂直で、Z軸方向に直交する方向であり、偏芯調整装置3の主軸スピンドル2に対する相対的な変位方向(押し出し方向)である。
【0022】
この場合、偏芯調整装置3の変位方向であるX軸方向は少なくとも0.1μm以下の精度で移動制御できるようにしている。
図2は、上述の偏芯調整装置3の構成例を示している。ここで、偏芯調整装置3の被加工物1の円筒部11を押して偏芯調整をする端面である作用部4(押し出し作用部)は、主軸スピンドル2の主軸回転軸Aに対し平行で、X軸およびZ軸方向を含む平面に対し垂直な方向の平面となっている。
【0023】
また、偏芯調整装置3は、偏芯調整時に掛かる力に対し、作用部4のたわみ量が0.1μm以下となるような剛性構造となっており、且つ剛体材料で構成されている。
また、作用部4の表面には、研磨等で面粗さを向上させるとともに、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)コーティングなどを施すことで、すべり性と剛性を高めた表面処理が行われている。
【0024】
本実施の形態の場合、偏芯調整装置3には、偏芯量を測定する偏芯量測定器7の検出部8が内蔵されている。この検出部8としては、たとえば、電気マイクロメータ等で直動式のものを使用する。
【0025】
検出部8は、ケーブル7aを介して偏芯量測定器7に接続され、検出部8の先端部に設けられた測定子8aの軸方向(X軸方向)の変位量が、電気信号として偏芯量測定器7に入力され、偏芯量測定器7のメータ部7bに数値や波形として可視化して表示される。
【0026】
すなわち、偏芯調整装置3には、主軸回転軸Aと同じ高さ、主軸回転軸Aと作用部4の平面と垂直な方向に測定できる位置にキリ穴10を設け、このキリ穴10に検出部8を挿入し、検出部8の測定子8aが作用部4におけるキリ穴10の開口部に露出する構成となっている。
【0027】
この検出部8の検出方向(この場合、X軸方向)におけるキリ穴10に対する装着位置は、偏芯調整装置3の作用部4の平面と検出部8の測定子8aの先端部9とが同じ突き出し高さになった時、偏芯量測定器7の測定範囲内で、且つ最も細かいレンジの表示範囲の中心となるような位置に設定されている。そして、この設定位置の状態で、キリ穴10と検出部8とを接着10aを介して接着固定する。
【0028】
もしくは、偏芯調整装置3の外面からキリ穴10の側面に向けて螺子穴を設け、そのねじ穴にイモ螺子(全長に螺子山が形成され、螺子穴に埋め込み可能な螺子)を通し、イモ螺子により検出部8を固定する構成でもよい。
[作用]
以下に発明の実施の形態1の作用を具体的に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
【0029】
本実施の形態1の作用を図1、図3、図4、図5等を参照して説明する。
図5には、被加工物1を回転加工装置5に把持させた後、加工前に偏芯調整を行う順序が例示されており、この図5に沿って説明を行う。
【0030】
初めに、回転加工装置5の主軸スピンドル2の主軸回転軸Aに対し、吸着面6のシフト方向(X軸方向)の偏芯誤差が規格以下の精度になるように偏芯調整を予め行い主軸スピンドル2に固定する。
【0031】
この状態で吸着面6に対して切削加工もしくは研削加工を行い、吸着面6を高い平面度と、主軸回転軸Aに対する高い垂直度を持つ状態にしておく(ステップS201)。
次に、被加工物1を吸着面6に真空吸着で保持させる。このとき、被加工物1の吸着面6に接する底面は高い平面度としておく(ステップS202)。
【0032】
その後、たとえば、コンプレッサーで圧縮された圧縮空気を真空ポンプ2bと吸引孔2aとの吸引経路の途中にある空圧レギュレータ2cに印加することで空気圧を下げる。これにより、真空ポンプ2bから吸引孔2aに作用する真空圧が下がり、吸着面6における被加工物1の真空吸着力が、たとえば、吸着面6の平面方向に動き得る程度に低下する。
【0033】
すなわち、被加工物1が吸着面6にて吸着中に、被加工物1の円筒部11をX軸方向に押したときに被加工物1が移動し始める力、すなわち静摩擦力が、たとえば0.01N以上で20.0N以下の間になるように、空圧レギュレータ2cを介して、吸着穴6aによる被加工物1の吸着力を設定する(低下させる)(ステップS203)。
【0034】
次に、偏芯調整装置3の作用部4が被加工物1の基準となる円筒部11に当接する位置まで、スライド機構5dでZ軸方向に移動させる。その後、主軸スピンドル2を、たとえば、1〜300rpmの範囲で回転させる。X軸方向のスライドで被加工物1の円筒部11と偏芯調整装置3の作用部4とが接触する方向に移動させ、回転している被加工物1の円筒部11の最大偏芯している部と偏芯調整装置3の作用部4とが接触する位置まで移動させる。
【0035】
このときの円筒部11と作用部4の接触は、検出部8の高さを主軸回転軸Aと同じ高さにさせ、検出部8の向きを押し出し方向と平行にし、更に検出部8の測定子8aの先端部9と作用部4の平面部の高さが一致したときに偏芯量測定器7の表示を中心にしているので、図4に示すように、円筒部11の主軸回転軸Aに対する偏芯量は、被加工物1の円筒部11と作用部4とが接触する前は正弦波形状の数値で表示する。
【0036】
円筒部11と作用部4とが接触した後は、円筒部11の主軸回転軸Aに対する偏芯量を表す線図は、正弦波形状からある高い部分以上は固定された数値で表示する。このある正弦波からある値以上で固定された数値は、上記円筒部11と作用部4とが接触していることを表している。このとき、偏芯量測定器7の表示した数値の最大と最小の差が主軸回転軸Aに対する被加工物1の円筒部11の偏芯量ΔCとなる(ステップS204)。
【0037】
被加工物1の円筒部11と作用部4とが接触したときの偏芯量ΔCを測定し、この偏芯量ΔCの半分の量だけX軸方向に偏芯調整装置3を移動させ、被加工物1の円筒部11を偏芯調整行う。こうして偏芯調整装置3をX軸方向に移動させ、偏芯調整をした後、偏芯量測定器7で偏芯量ΔCを測定し、被加工物1の偏芯規格内に入っているかを確認する。規格内に入っていなければ、そのときの偏芯量の半分量をX軸スライドで更に移動させる(ステップS205)。
【0038】
ステップS205で偏芯規格内であれば、偏芯調整装置3を押し出し方向と反対方向、すなわち被加工物1の円筒部11から離れる方向に移動させ、円筒部11と接触しない状態にする。このときの作用部4を円筒部11から離間させるための偏芯調整装置3の移動量は、偏芯量測定器7の表示が正弦波形状を示すまでとする。そのときの偏芯量ΔC(観察される正弦波の最大振幅)を偏芯量測定器7にて測定し、偏芯規格値に入っていることを確認する(ステップS206)。
【0039】
そして、偏芯規格値に入っていることを確認できなければ(ステップS207)、ステップS205に戻る。
また、ステップS207で偏芯規格値に入っていることを確認できれば、偏芯調整を終了し、この状態で、空圧レギュレータ2cを最大の圧力に戻し、真空吸着力も最大に戻るため、加工工具5cによる加工中に被加工物1が動かないようにする(ステップS208)。
【0040】
この状態で、主軸スピンドル2とともに回転する被加工物1の加工工具5cによる切削、研削、研磨等の機械加工を行う。
[効果]
上述の実施の形態1によれば、主軸スピンドル2に対する被加工物1の真空吸着力を低下させることで被加工物1がスムーズに移動できるようになり、高剛性を持った偏芯調整装置3の高精度のX軸方向の移動で被加工物1の円筒部11を押圧することで、被加工物1の円筒部11の主軸回転軸Aに対する偏芯誤差を高精度に調整できる。
【0041】
また、偏芯量ΔCを測定する偏芯量測定器7の検出部8が偏芯調整装置3に内蔵されているため、偏芯調整を行うたびに、偏芯量測定器7の検出部8の設置の段取りの所要時間を省くことができる。
【0042】
また、被加工物1の円筒部11と偏芯調整装置3の作用部4との接触と偏芯調整に必要な移動量を偏芯量測定器7の表示から簡単に把握することができ、偏芯調整も上記偏芯量ΔCの半分だけ偏芯調整装置3を移動させれば良いので、作業者の熟練や教育は不要である。
【0043】
すなわち、作業者の熟練や長時間の段取りを必要とすることなく、主軸回転軸Aに対する被加工物1の偏芯調整を高精度に行うことが可能となる。
この結果、芯出し作業を含めた被加工物1の加工所要時間(リードタイム)の増加を防ぎ、回転加工装置5の稼働率の向上を図ることができる。
【0044】
[実施の形態2]
[構成]
図7は、本発明の他の実施の形態である偏芯調整装置の構成例を示す断面図である。
【0045】
この実施の形態2の場合、検出部8を偏芯調整装置3に螺着することで装置位置を可変にした点が上述の実施の形態1と異なっている。なお、上述の実施の形態1と共通な構成部分については同一符号を付してその説明を省略する。
【0046】
すなわち、上述の実施の形態1では、キリ穴10に検出部8を挿して接着10aを介して所定の位置に固定する例を示したが、この実施の形態2の場合には、キリ穴10の一部に螺子穴12を設ける。そして、検出部8の外周部に前記螺子穴12と螺合する螺子リング13を接着等で固定する。これにより、検出部8は、偏芯調整装置3のキリ穴10に対して回動可能に螺着され、検出部8の回動量によって、検出部8の測定子8aの作用部4に対する突き出し量を簡便かつ可変に設定可能としている。
【0047】
[作用]
本実施の形態2の作用を、図7を参照して説明する。
検出部8の計測方向(この場合、X軸方向)の位置決めをする際には、検出部8を回動させると、当該検出部8に固定された螺子リング13も回転するので、回転数と螺子ピッチの量だけキリ穴10の軸方向に動く。よって、検出部8の検出方向の突き出し位置の調整を可変に設定できる。
【0048】
[効果]
本実施の形態2によれば、上述の実施の形態1の効果に加えて、検出部8の検出方向の突き出し位置調整が、検出部8を回動させるだけで容易にでき、段取りの所要時間をさらに短縮することができる、という効果が得られる。
【0049】
以上説明したように、上述の各実施の形態によれば、回転加工装置5の主軸スピンドル2に対して、回転軸対称形状を有する被加工物1を保持させる際に、主軸スピンドル2の主軸回転軸Aに対する偏芯誤差を高精度に調整でき、加工リードタイムの増加を防ぎ、回転加工装置5の稼働率の向上を図ることができる。
【0050】
なお、本発明は、上述の実施の形態に例示した構成に限らず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
たとえば、主軸に被加工物を可動に吸着保持させる手段としては、真空吸着に限らず、磁力が可変な電磁石等を用いてもよい。
[付記1]
主軸に被加工物を吸着する機構を設け、主軸回転させた状態で上記被加工物の円筒部を調整装置にて押し出しをして偏芯調整をする被加工物の偏芯調整装置において、
上記調整装置内部に被加工物の主軸回転軸に対する偏芯量を測定する偏芯量測定器の検出部を取り付けたことを特徴とする被加工物の偏芯調整装置。
[付記2]
付記1に記載する被加工物の偏芯調整装置において、
上記調整装置の押し出し作用点は主軸回転軸と押し出し方向に対し垂直な平面であり、
上記偏芯量測定器の検出部の高さ方向の取り付け位置は主軸回転軸と同じ高さ位置に取り付けてあり、
更に上記偏芯量測定器の検出部は押し出し方向に対して平行の向きになるように検出部の位置に取り付け、
且つ上記偏芯量測定器の検出部の測定子先端部と上記調整装置の平面部とが同じ突き出し位置のとき、上記偏芯量測定器の測定範囲内になるように検出部の位置に取り付けることを特徴とする被加工物の偏芯調整装置。
[付記3]
付記2に記載する被加工物の偏芯調整装置において、
上記偏芯量測定器の検出部の外周部に雄螺子を設け、上記調整装置の上記検出部が内蔵される部分に雌螺子を設けることで、検出部を回すことで検出部の押し出し方向に突き出し位置の調整ができることを特徴とする被加工物の偏芯調整装置。
[付記4]
付記1に記載する偏芯調整装置を用いる被加工物の偏芯調整方法において、
上記調整装置を移動スライドにて押し出し移動させ、上記調整装置の作用部と被加工物の円筒部の一部が接触した後の移動量は上記偏芯量測定器の示す最大値と最小値の差の半分とし、その移動量を上記移動スライドにて押し出し移動させることで、偏芯調整が終了することを特徴とする被加工物の偏芯調整方法。
[付記5]
付記4に記載する被加工物の偏芯調整方法において、
吸着する機構は真空吸引とし、偏芯調整中は上記被加工物の押し出し方向の静摩擦力が20N以下になるように真空吸着力を下げ、偏芯調整終了後は真空吸着力を加工に適した真空吸着力の状態に戻し、被加工物の加工を行うことを特徴とする被加工物の偏芯調整方法。
[付記6]
付記4に記載する被加工物の偏芯調整方法において、
上記偏芯調整後に上記調整装置を押し出しと反対方向に逃がし、被加工物と調整装置とが離れた状態で、偏芯調整装置にて被加工物の偏芯量を測定することを特徴とする被加工物の偏芯調整方法。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施の形態である偏芯調整装置の構成および作用の一例を示す側面図である。
【図2】本発明の一実施の形態である偏芯調整装置の構成の一例を示す略断面図である。
【図3】本発明の一実施の形態である偏芯調整装置の構成の一例を示す正面図である。
【図4】本発明の一実施の形態である偏芯調整装置の作用の一例を示す線図である。
【図5】本発明の一実施の形態である偏芯調整装置の作用の一例を示すフローチャートである。
【図6】本発明の一実施の形態である偏芯調整装置を備えた回転加工装置の構成の一例を示す側面図である。
【図7】本発明の他の実施の形態である偏芯調整装置の構成例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 被加工物
2 主軸スピンドル
2a 吸引孔
2b 真空ポンプ
2c 空圧レギュレータ
3 偏芯調整装置
4 作用部
5 回転加工装置
5a ベース
5b 刃物台
5c 加工工具
5d スライド機構
6 吸着面
6a 吸着穴
7 偏芯量測定器
7a ケーブル
7b メータ部
8 検出部
8a 測定子
9 先端部
10 キリ穴
10a 接着
11 円筒部
12 螺子穴
13 螺子リング
A 主軸回転軸
ΔC 偏芯量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に交差する方向に可動に被加工物が吸着保持された主軸を回転させた状態で前記被加工物の外周部に調整手段を当接させて偏芯調整を行う偏芯調整装置であって、
前記調整手段の内部に、前記被加工物の前記回転軸に対する偏芯量を測定する偏芯量測定器の検出部を装着したことを特徴とする偏芯調整装置。
【請求項2】
請求項1に記載の偏芯調整装置において、
前記被加工物の外周に当接する前記調整手段の押し出し作用部は前記回転軸に対する押し出し方向に対し垂直な平面であり、
前記検出部は、当該検出部の測定子が前記回転軸と同じ高さとなる位置に、前記測定子の作動方向が前記押し出し方向に対して平行の向きになる姿勢で前記調整手段に取り付けられ、
前記測定子の先端部と前記調整手段の前記押し出し作用部とが同じ突き出し位置のとき、前記測定子の変位が測定範囲に含まれるように前記偏芯量測定器の前記測定範囲が設定されていることを特徴とする偏芯調整装置。
【請求項3】
請求項2に記載の偏芯調整装置において、
前記検出部を前記調整手段に螺合させ、前記検出部を回動させることで当該検出部の前記押し出し方向における突き出し位置を調整可能したことを特徴とする偏芯調整装置。
【請求項4】
回転軸に交差する方向に可動に被加工物が吸着保持された主軸を回転させるステップと、
前記被加工物の前記回転軸に対する偏芯量を測定する偏芯量測定器の検出部を備えた調整手段を当該被加工物に当接させるステップと、
前記調整手段と前記被加工物の外周部が接触した後に、前記検出部から得られる前記偏芯量の最大値と最小値の差の半分だけ、前記被加工物を押圧する方向に前記調整手段を移動させるステップと、
を含むことを特徴とする偏芯調整方法。
【請求項5】
請求項4に記載の偏芯調整方法において、
前記被加工物は真空吸引によって前記主軸に固定され、前記調整手段が前記被加工物に当接される偏芯調整の間は前記主軸に対する前記被加工物の可動方向の静摩擦力が0.01N以上で20N以下になるように真空吸着力を下げ、前記偏芯調整の終了後は前記真空吸着力を所望の回転加工に適した真空吸着力に戻して、前記被加工物の前記回転加工を行うことを特徴とする偏芯調整方法。
【請求項6】
請求項4に記載の偏芯調整方法において、
前記偏芯調整後に、前記調整手段を前記被加工物から離間させた状態で、前記検出部にて前記被加工物の偏芯量を測定することを特徴とする偏芯調整方法。
【請求項7】
回転軸に交差する方向に可動に被加工物が吸着保持される主軸と、
前記主軸とともに回転する前記被加工物に当接する加工工具と、
前記主軸とともに回転する前記被加工物の外周部に当接する調整手段に当該被加工物の前記回転軸に対する偏芯量を測定する偏芯量測定器の検出部を具備した偏芯調整装置と、
を含むことを特徴とする回転加工装置。

【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−166175(P2009−166175A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−6806(P2008−6806)
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】