説明

健康状態を監視する方法およびシステム

健康状態を監視するためのシステムおよび方法を開示する。システムは、患者管理アプリケーション、データ記憶部、および監視装置を含む。監視装置は、光センサー、ドップラーセンサー、ならびに血液の酸素飽和度、血流量、血圧、心拍数、および心拍出量を含む健康のパラメータ値を提供するように構成された算出装置を含む。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔優先権の主張〕
本出願は、名称を「OPTICAL SENSOR APPARATUS AND METHOD OF USING SAME」とする米国特許出願第12/119,315号、名称を「DOPPLER MOTION SENSOR APPARATUS AND METHOD OF USING SAME」とする米国特許出願第12/119,339号、名称を「INTEGRATED HEART MONITORING DEVICE AND METHOD OF USING SAME」とする米国特許出願第12/119,325号、名称を「METHOD AND SYSTEM FOR MONITORING A HEALTH CONDITION」とする米国特許出願第12/119,462号(全て2008年5月12日出願)、および名称を「DOPPLER MOTION SENSOR APPARATUS AND METHOD OF USING SAME」とする米国特許出願第12/206,885号(2008年9月9日出願)の優先権を主張する。これらは全て本出願と同じ発明者によるものであり、全出願は参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0002】
〔発明の分野〕
本発明は、健康監視システムおよび方法に関し、より具体的には、心臓の挙動を監視する装置を含むシステムおよび方法に関する。
【0003】
〔開示の背景〕
心血管疾患は、世界中で高まりつつある大きな健康問題である。いくつかの研究が、西欧諸国の約15%が、1つまたは複数の心血管疾患に苦しんでいることを示す。米国では、人口のほぼ25%が罹患しており、その結果、毎年600万人超が入院している。
【0004】
心臓の動作に関するあるパラメータを監視する様々な装置が存在する。場合によっては、患者のin vivoパラメータは、ある期間にわたり監視されることを必要とする場合がある。心臓の不整脈は、心臓に血液を全身に送り出させる電気インパルスの正常なシーケンスの変化である。異常な心臓のインパルス変化は、散発的に起こるにすぎない場合があるので、不整脈の検出には連続的な監視が必要とされる場合がある。連続的な監視を行うことにより、医療関係者は、心臓の状態を特徴づけ、また、適切な治療過程を確立することができる。
【0005】
心拍数を測定する先行技術の1装置は、Medtronic(米国ミネソタ州ミネアポリス)による「Reveal」モニターである。この装置は、例えば患者の失神(卒倒)が心臓の鼓動の問題に関係しているかどうかを判断する際に使用される、植え込み型心臓モニターを含む。Revealモニターは、最大14ヶ月間、心拍数および心臓の鼓動を連続して監視する。卒倒症状の発現から目覚めた後、患者は、植え込まれたRevealモニターの上で皮膚の外側に記録装置を置き、ボタンを押して、モニターから記録装置にデータを移す。記録装置は、医師に提供され、医師は、記録装置に記憶された情報を分析して、異常な心臓の鼓動が記録されているかどうかを判断する。記録装置の使用は、自動的でも自発的(autonomic)でもなく、したがって、モニターから記録装置に情報を移すため、患者に意識があること、または別の人間の介入が必要とされる。
【0006】
別の既知のタイプの植え込み型感知装置は、トランスポンダー型装置であり、この装置では、トランスポンダーが患者に植え込まれて、その後、ハンドヘルドの電磁式読取装置で、非侵襲的にアクセスされる。後者のタイプの装置の例は、米国特許第5,833,603号に記載されている。
【0007】
多くの場合、医療関係者は、心臓の挙動および患者の状態に関する様々な異なる種類のデータを収集することに関心がある。さらに、前述のように、患者がヘルスケア提供者(HCP)を訪ねる必要なく、可能な限り多くの関連データを入手することが望ましい。関連情報には、大動脈を通って流れる血液の酸素飽和度、血圧、心拍数、血流量、1回拍出量、心拍出量、心臓の電気的活動(心電図(ECG)データを生成するため)、および体温が含まれ得る。
【0008】
〔概要〕
健康状態を監視する方法およびシステムを本明細書に開示する。
【0009】
第1の例示的な実施形態では、健康状態を監視する方法が提供される。この方法は、監視装置を提供することであって、監視装置は、血管の相対位置を感知する光センサー、血管を流れる流体の速度を感知するドップラーセンサー、ならびに光センサーおよびドップラーセンサーを操作してパラメータ値を得る算出装置を含み、算出装置は、健康状態を診断し、その健康状態に応答する1つまたは複数のプロトコル素含み、光センサー、ドップラーセンサー、および算出装置は、ハウジングに取り囲まれている、提供することと、1つまたは複数の血行動態パラメータを監視装置で算出することと、1つまたは複数の血行動態パラメータに基づいて健康状態を診断することと、健康状態に応答して機能を実行することと、を含む。
【0010】
第1の例示的な実施形態のバリエーションでは、血行動態パラメータは、酸素飽和度、一回拍出量、血圧および心拍出量のうち1つを含む。
【0011】
第1の例示的な実施形態の別のバリエーションでは、健康状態は、異常な状態である。その一例では、監視装置は、通信装置をさらに含む。1つの例示的機能は、警報を伝達することである。別の例示的機能は、連続的にパラメータ値を伝達することである。
【0012】
第1の例示的な実施形態のさらなるバリエーションでは、機能は、治療を開始することである。
【0013】
第1の例示的な実施形態のさらに別のバリエーションでは、監視装置は、通信装置をさらに含み、状態は、正常な状態であり、機能は、定期的にパラメータ値を伝達することである。
【0014】
第2の例示的な実施形態では、健康状態を監視する方法が提供される。この方法は、監視装置を提供することであって、監視装置は、血管の相対位置を感知する光センサー、血管を流れる流体の速度を感知するドップラーセンサー、光センサーおよびドップラーセンサーを操作してパラメータ値を得る算出装置であって、光センサー、ドップラーセンサーおよび算出装置はハウジングに取り囲まれる、算出装置、ならびに算出装置に連結された通信装置を含む、提供することと、コマンドを監視装置に送信することと、コマンドに応答して機能を実行することと、を含む。
【0015】
第2の例示的な実施形態のバリエーションでは、機能は、酸素飽和度、一回拍出量、血圧、心臓の鼓動、および心拍出量を含む群からパラメータを算出することである。
【0016】
第2の例示的な実施形態の別のバリエーションでは、機能は、パラメータ値を送信することである。
【0017】
第2の例示的な実施形態のさらなるバリエーションでは、算出装置は、プロトコルを含み、機能は、そのプロトコルに従ってパラメータ値を送信することである。
【0018】
第2の例示的な実施形態のさらに別のバリエーションでは、機能は、プロトコルを更新することである。
【0019】
第2の例示的な実施形態のバリエーションでは、機能は、治療を開始することである。その一例では、治療は電気ショックである。その別の例では、治療は薬剤を送達することである。
【0020】
第3の例示的な実施形態では、健康状態を監視するシステムが提供される。このシステムは、血管の相対位置を感知する光センサー、血管を流れる流体の速度を感知するドップラーセンサー、ならびに光センサーおよびドップラーセンサーを操作してパラメータ値を得る算出装置を含む監視装置であって、光センサーおよびドップラーセンサーおよび算出装置はハウジングに取り囲まれている、監視装置と、監視装置にデータを送信し監視装置からパラメータ値を受信する、患者監視アプリケーションと、パラメータ値を記憶するデータ記憶部(data store)と、を含む。
【0021】
第3の例示的な実施形態の1つのバリエーションでは、パラメータ値は、酸素飽和度、一回拍出量、血圧、および心拍出量のうち1つまたは複数を含む。
【0022】
第3の例示的な実施形態の別のバリエーションでは、パラメータ値は、心臓の鼓動を含む。
【0023】
添付図面と共に理解される本発明の実施形態に関する以下の説明を参照することで、本発明の特徴、およびそれらを達成する方法がより明らかになり、本発明自体が、よりよく理解されるであろう。
【0024】
対応する参照符号は、いくつかの図面にわたって、対応する部品を示す。図面は、本発明の実施形態を表すが、これらの図面は、必ずしも縮尺どおりではなく、ある特徴部は、本発明をよりよく例示および説明するために、強調されているかもしれない。本明細書で述べる例示は、本発明の実施形態をいくつかの形態で例示しており、そのような例示は、いかなる方法によっても、本発明の範囲を制限するものと解釈されるものではない。
【0025】
〔発明の実施形態の詳細な説明〕
以下に論じる実施形態は、包括的であること、または、以下の詳細な説明に開示される正確な形態に本発明を限定することを意図したものではない。むしろ、実施形態は、当業者がそれらの教示を利用できるように、選択され説明されている。
【0026】
図1および図2は、本発明の一実施形態によるシステムを示す。システム100は、患者102の上に位置付けられた監視装置1と、携帯情報端末またはBlackberryデバイスとして具現化される外部通信装置120と、を含む。外部通信装置は、リレーユニット、電話、およびコンピュータとしてそれぞれ具現化された通信装置110、132、および142など、無線またはインターネット通信を受信することができる任意の装置であってよい。通信装置120および132、ならびにオプションの通信装置110は、テレコミュニケーションネットワーク130を通じて無線で情報を伝送する。通信装置110はまた、テレコミュニケーションネットワーク130を使用せずに監視装置1と無線で通信するためにブルートゥースアダプタまたは別のアダプタも含むことができる。テレコミュニケーションネットワーク130は、数字140で表されるインターネットに動作可能に接続され、インターネットは、テレコミュニケーションネットワークから通信装置142へ情報を伝送する。一実施形態では、システム100は、ウェブページを含み、かつサーバー144に存在する、ウェブサイト(不図示)をさらに含む。別の実施形態では、システム100は、患者102の心臓に治療を施すように構成された心臓装置150も含む。
【0027】
システム100は、患者管理アプリケーション200、およびデータ記憶部210を含む。患者管理アプリケーション200は、監視装置1および他の算出装置からデータを受信するように、またデータ記憶部210にデータを記憶させるように構成された、プログラムである。患者管理アプリケーション200は、サーバー144の中にある。患者管理アプリケーション200は、クライアントプログラムがインターネットを通じてアクセス可能な通信装置内にある、クライアント/サーバーアプリケーションであってよい。データ記憶部210は、患者102に関するデータを記憶する。データは、例えば、住所、保険情報、連絡情報、および患者102を特定の監視装置1と関連付け、感知装置へのアクセスを可能にするための装置識別情報などの患者情報を含む患者のプロフィール212を含むことができる。データは、関連する監視装置1から回収された基準値、測定値およびパラメータ値を含む値214も含むことができる。患者管理アプリケーション200は、患者の健康を管理する上でHCPを助けるために様々な方法で値を表示することができる。データは、プロトコル216も含んでよい。
【0028】
患者管理アプリケーション200は多くの機能を有する。患者管理アプリケーションは、監視装置1からデータを回収する。患者管理アプリケーションはまた、基準値およびプロトコルを更新する。患者管理アプリケーションはまた、監視装置1にコマンドを送信する。一実施形態では、患者管理アプリケーション200は、コマンドを監視装置1に送り、監視装置1は、コマンドに応答して機能を実行する。別の実施形態では、HCPが外部通信装置を使用して、患者管理アプリケーション(client management application)200と通信し、患者管理アプリケーション200はHCPの通信に応答して監視装置1と通信する。別の実施形態では、HCPが、インターネット経由でアクセスできるウェブサイトを通じて患者管理アプリケーション200にアクセスする。
【0029】
図3は、概して複数の構成要素を含む監視装置1を描く。構成要素のうち1つまたは複数は、本発明による方法の適用に合うように監視装置1に組み込まれてよい。監視装置1は、算出装置20、通信装置30、エネルギー貯蔵装置40、光センサー組立体2、プローブ50Aおよび50Bを含むECGセンサー(以下まとめてECGセンサー50という)、ドップラーセンサー60、および温度センサー70を含んでよく、これらの構成要素はそれぞれ、ボード80に取り付けられ、算出装置20と電子通信している。これらの構成要素は、ハウジング90に取り囲まれている。
【0030】
システム100は、監視装置1とデータを交換するように構成された1つまたは複数の通信装置と、監視装置1を動作可能に接続する。データは、コマンド、測定値、パラメータ値および基準値、ならびにプロトコルを含む。監視装置1は、測定値を取得し、プロトコルに従ってそれらの測定値を処理し(これには、多くの場合、異常な状態を診断するために基準値および診断プロフィールと測定値を比較することが伴われる)、次に、診断に基づき、応答プロフィールに従って機能を実行する。
【0031】
コマンドは、外部通信装置から算出装置20に与えられる命令である。概して、コマンドは、機能を実行する命令である。機能は、データの送信、治療の実行、基準値の更新、およびプロトコルの更新を含む。
【0032】
基準値は、患者の正常な状態または安定した状態を表す。監視装置1は、基準値でプログラムされてよく、または、患者102の上に装置が置かれた際に測定値を収集するように、また、初期測定値もしくはパラメータを基準値として記憶するように、プログラムされてもよい。算出装置20に関してさらに詳細に以下で説明するように、パラメータ値は、脈拍数、酸素飽和度、心拍出量および血圧といった血行動態パラメータ、ならびに温度を含む。
【0033】
基準値は、目標値および許容可能な変動範囲もしくは限界を含んでよい。パラメータ値は、そのパラメータ値が基準目標値または範囲外に外れると異常を示すことができる。いくつかの実施形態では、パラメータ値は、例えば移動平均などの統計値を生成することができ、パラメータ統計値が予想した量を超えて基準統計値と異なる場合に異常が検出される。
【0034】
1つの異常な医学的状態は、心不整脈である。算出装置20は、例えば、心律動が不規則で不整脈を示すかどうかを決定するために測定値の分析を行うように構成されることができる。他の異常な状態は、低酸素飽和度、低心拍出量、および高血圧または低血圧を含む。他の異常な状態は、様々な血行動態パラメータ値の組み合わせによって左右され得る。
【0035】
プロトコルは、診断プロフィールおよび応答プロフィールを含む。診断プロフィールは、異常な状態を診断する決定基準を算出装置20に与える。応答プロフィールは、診断に応答して機能を実行する命令を算出装置20に与える。最初に、1つまたは複数のプロトコルが、監視装置1内にプログラムされ得る。第1のプロトコルの応答プロフィールは、異常な状態に応答して、第2のプロトコルに切り替わるよう算出装置20に命令することができる。一実施形態では、プロトコルは、通信装置30を通じて算出装置20にダウンロードされてよい。
【0036】
1.監視装置
本出願を通じて、監視装置1について行う言及は、前記参照により本明細書に組み込まれるIntegrated Deviceの出願に記載される監視装置1を指す。また、光センサー組立体2について行う言及は、前記参照により本明細書に組み込まれるOptical Sensor Apparatusの出願に記載される光センサー組立体2を指す。さらに、ドップラーセンサー60への言及は、前記参照により本明細書に組み込まれるDoppler Motion Sensorの出願に記載されるドップラーセンサー60を指す。監視装置1、光センサー組立体2およびドップラーセンサー60についての完全な説明は、本出願では繰り返さない。
【0037】
通信信号とは、信号の情報をコード化するように設定または変更された特性のうち1つまたは複数を有する信号を意味する。非限定的な例として、通信信号は、音響媒体、RF媒体、赤外媒体、他の無線媒体、および前記のうちいずれかの組み合わせを含む。リレーユニット110が、患者の身体の外側に位置する、例えば患者のベルトにクリップで留められる。リレーユニット110は、通信装置30からの送信を受信する受信機、および、通信信号を別の外部通信装置に再送信する送信機を含むことができる。リレーユニット110はまた、インターネットへ接続されるか、またはヘルスケア提供者のコンピュータに直接接続されるように、固定され、かつ配線で接続されていてもよい。同様に、リレーユニット110は、ヘルスケア提供者から通信信号を受信し、その信号を通信装置30に送信することができる。
【0038】
光センサー組立体2は、複数の光子エミッター、および複数の光信号を検出する複数の光子検出器を含む。エミッターおよび検出器は、大動脈に面する。算出装置20は、複数のエミッターおよび検出器を操作し、複数の光信号を処理して、大動脈の場所およびサイズ、ならびに大動脈を通って流れる血液の酸素飽和度を表す光学的測定値を得る。
【0039】
ドップラーセンサー60は、複数の超音波を放射および検出する。算出装置20は、ドップラーセンサー60も操作し、光センサー組立体2を用いて得た光学的測定値を活用して複数の超音波を処理して、心拍数、血流量、一回拍出量、血圧、および心拍出量を表すドップラー測定値を得る。
【0040】
ECGセンサー50は、心臓をポンプ式に動かす電気信号を検出する。温度センサー70は、患者の温度を測定する。エネルギー貯蔵装置40は、本明細書に開示された方法の様々な実施形態に従って、算出装置20、様々なセンサー、および収集データまたはその収集データに関する情報を送信するように構成された通信装置30に電力を与える。センサー、算出装置20、通信装置30、およびエネルギー貯蔵装置40はハウジング90に取り囲まれている。
【0041】
複数のセンサーおよび前述した他の構成要素を監視装置1に統合することで、患者の身体の1つの場所に取り付けられる単一の装置が、心拍出量を含む、心臓の挙動に関する包括的パラメータ群を正確に測定することができる。さらに、監視装置1は、別の装置による分析のため未加工データをエクスポートする他の感知装置とは反対に、パラメータの分析を行い、「オンボード」分析に応答した機能を実行することができる。前記の通り、監視装置1はまた、無線でまたは別の方法で他の装置と通信し、情報を与え、コマンドおよびデータを受信する。したがって、監視装置1は、人間による介入なしで、データの収集、分析、および通信を行う。
【0042】
「患者」とは、人間または動物を意味する。本発明による一実施形態では、監視装置1は、患者の身体において皮下に植え込まれる。しかしながら、監視装置1は、様々な植え込み技術を用いて異なる場所に植え込まれ得ることが理解されるべきである。例えば、監視装置1は、胸郭の下で胸腔内に植え込まれてよい。ハウジング90は、円形または楕円形のディスクの形状に形成されてよく、寸法は、25セント硬貨を2枚重ねたのとおおよそ同じである。さらに具体的には、ハウジング90は、直径が約3cm、厚さが約1cmであってよい。当然のことながら、ハウジング90は、適用に応じて、様々な他の形状およびサイズで構成されてよい。光センサー組立体2、ドップラーセンサー60、ECGセンサー50、および温度センサー70は、内側を向いて位置付けられ、一方、エネルギー貯蔵装置40のエネルギーカプラー構成要素は、外側を向く。
【0043】
監視装置1は、ペースメーカー、心臓再同期療法(CRT)装置、植え込み型除細動器(ICD)などといった、植え込み型心臓装置150と統合され得る。そのような実施形態では、監視装置1は、植え込み型心臓装置と通信し、植え込み型心臓装置から、また、監視装置自体のセンサーから、外部装置へ情報を与えることができる。多くの植え込み型心臓装置が現在よく理解され、日常的に処方されているので、監視装置1をそのような他の装置に統合することにより、市場で受け入れられるための有効な手段がもたらされ得る。
【0044】
前記の統合は、監視装置1の構成要素と心臓装置とを組み合わせることにより達成され得る。心臓装置が算出装置を含む場合、例えば、本発明に従って機能を実行するアルゴリズムが、第2の算出装置を加える代わりに心臓装置の算出装置と組み合わせられてよい。同様に、エネルギー貯蔵装置および通信装置は、重複(duplication)を防ぎコストを下げるために組み合わせられてよい。
【0045】
監視装置1は、患者の身体の外側に位置付けられ得る。支持部材が設けられて、監視装置1を身体の外部に支持する。支持部材は、監視装置1に永続的または一時的に連結されることができる。支持部材は、支持部材を患者の身体に接着連結する接着層を含むことができ、または、患者の身体に対して監視装置1を保持するための、弾性であってよいベルトを含むことができる。
【0046】
監視装置1は、超音波機器などの外部マッピングシステムの助けを借りて、植え込まれるか、または患者の上に位置付けられることができる。適切に設置することで、目的の血管、例えば大動脈が、監視装置1の様々なセンサーの感知範囲内に確実に位置する。例えば、監視装置1は、患者の胸部または背中の上で、本明細書に記載する方法で取得される測定値の、肋骨による干渉を減少させる場所に、位置付けられてよい。
【0047】
算出装置20は、複数の構成要素を含む。これらの構成要素は、別個の構成要素であるかのように本明細書に記載されているが、構成要素は、特定用途向け集積回路などの単一の装置に組み合わせられてよい。図4に示すように、算出装置20は、A/D変換器22(光信号をデジタル信号にも変換する)、プロセッサ24、メモリ26、プログラム28、データ29、入力23、および出力25を含む。メモリ26は、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリ、または他のメモリテクノロジーを含み得るが、これらに限定されない。A/D変換器22、プロセッサ24およびメモリ26は、集積回路の中に構築されてよい。集積回路は、エミッターアレイ100、検出器アレイ200、および通信装置30をさらに含むことができる。
【0048】
プログラム28は、データ29に応答してタスクを実行するようプロセッサ24に指示する、コンピュータ命令を表す。プログラム28は、メモリ26中に存在する。データ29は値およびプロトコルを含み、これもメモリ26中に存在する。基準データは、外部入力に応答して、または経時的に収集された測定データの特性に応答して、ROMに記憶されてよく、または経時的に変更され得るようRAMに記憶されてもよい。測定値に応答するプロトコルも設けられてよい。プロトコルは、持続性メモリに記憶されてよく、または、RAMなど非持続性メモリに記憶されてもよい。
【0049】
算出装置20は、異常な状態、特に、重篤または危険な状態と判断される状態、が検出されると、通信装置30に警報を送信させるように構成されることができる。能動的プロトコル(active protocol)の診断プロフィールは、状態が正常であるか異常であるか、そして異常である場合は重篤度を決定する、基準を与える。そのプロトコルの応答プロフィールは、その診断に応答する基準を与える。警報の送信は、応答の一例である。警報は、警報装置を始動させるため、または治療行為を行うよう患者に警告するために使用されることができる。治療行為は、身体活動を終了させるか、または低減させる場合がある。警報は、全地球測位(GPS)情報を救急施設に与えることもできる。図1を参照すると、異常な状態は、存在することが発見されると、外部通信装置110、120、132および/または142に表示されることもできる。警報は、状態に対応するテキストメッセージまたはコードを含むことができる。プロトコルに従って、算出装置20はまた、異常な状態の検出に応答して連続的に、新しい測定サイクルおよび測定を開始することもできる。
【0050】
算出装置20は、応答プロフィールに従って、またはコマンドに応答して、治療を開始することもできる。監視装置1は、通信装置30を通じて、警報に応答して治療を実行せよという外部コマンドを受信することができる。オプションとして、プロトコルに基づいて、異常な状態は、治療を施すように構成された装置に、そのような治療を実行する(deliver)よう指示するために、用いられてもよい。治療には、例えば電気ショックまたは薬剤送達が含まれ得る。
【0051】
パラメータ値および/または他の情報が、外部装置に通信されることができる。パラメータ値は、メモリ26に記憶され、また通信装置30によって無線で送信されることができる。通信装置30からの通信信号は、異常な状態に応答して、外部で受信したコマンドに応答して、メモリの使用が所定量を超えるたびに、またはエネルギー貯蔵レベルが低いと判断されるたびに(後者の2つの状態は、メモリのオーバーフローの結果としてのデータロス、もしくはエネルギーロスを防ぐために確立された)、定期的に(例えば1日に1回、1週間に1回など)作動されることができる。監視装置1が通信装置30に加えて通信装置を含み得ることも理解されるべきである。例えば、通信装置30がセルラーモデムである場合、監視装置1は、バックアップブルートゥースまたはRF通信装置も含むことができる。このようなバックアップ装置は、1回または複数回の試みの後、セルラーモデムが(例えば、利用可能な電力が低い、ネットワーク範囲が不良などのため)情報を送信できないことが明らかになった状況で望ましい場合がある。このような状況では、算出装置20は、バックアップ通信装置を作動させて、情報または警報を、代替的な外部通信装置に送信することができる。
【0052】
代わりに、または、前記送信に加えて、算出装置20は、要求されたデータ、または要求されたデータを表す情報を通信装置30に送信させることによって、(例えばヘルスケア提供者から)通信装置30により受信されたデータの要求に応答するよう、プログラムされることができる。
【0053】
通信信号は、状態への注意を患者に喚起するように、患者の近くの設備により受信されるか、またはヘルスケア提供者、親族、もしくは他の所定のレシピエントによって、遠隔的に(ネットワークを介してなど)受信されることができる。
【0054】
光センサー組立体2、ドップラーセンサー60、ECGセンサー50、および温度センサー70のそれぞれ、またはいくつかのデザインがモジュール式であってよいことが理解されるべきである。したがって、例えば、複数の異なるドップラーセンサー60が、異なる性能特性(例えば異なる出力周波数)を有するように生産されてよい。適用に応じて、複数のセンサーのうちいずれかが、監視装置1に取り付けられて、所望の性能を達成することができる。いったん監視装置1が、選択されたセンサーを備えると、算出装置20は、その選択されたセンサーに適応するように様々なアルゴリズムを適合させるようプログラムされてよい。このように、算出装置20、通信装置30などを含む基本的監視装置1は、様々なセンサーのうちいずれかと共に「特注で」製造され、選択されたセンサーと共に動作するようプログラムされることができる。
【0055】
光センサー組立体2、ドップラーセンサー60および温度センサー70は、電力を節約するために(少なくとも通常条件下では)比較的まれに測定値を入手するよう作動されるものとして本明細書に記載されているが、バッテリテクノロジーが改善されているので、これらのセンサーの作動頻度を増大させ得ることが理解されるべきである。また、監視装置1が外部で着用される場合、コネクタ85を用いて感知装置85に電力を与えることができ、それにより、電力消費問題を排除し、これらのセンサーの頻繁な運転、または連続した運転すら、可能にする。さらに、コネクタ85は、他のセンサーを監視装置1に動作可能に接続するために使用されてもよい。
【0056】
本発明の一実施形態では、通信装置30は、例えば携帯電話システムおよび/またはNOKIAモデル番号KNL1147−VなどGPS衛星システムによる、双方向通信装置である。代替的実施形態では、通信装置30は、情報を送信することができるが、情報またはコマンドを受信しない。
【0057】
本発明による一実施形態で、エネルギー貯蔵装置40を再充電するシステムが提供され得る。算出装置20は、エネルギー貯蔵装置40からエネルギーを受け取る。エネルギー貯蔵装置40は、バッテリなどのエネルギー貯蔵構成要素を含む。オプションとして、監視装置1は、エネルギー貯蔵装置40を充電するために外部供給源からエネルギーを受け取るエネルギーカプラーを含んでもよい。
【0058】
エネルギーカプラーの一例は、外部の電磁信号を受信し、それらの信号を電気エネルギーに変換してエネルギー貯蔵構成要素を再充電する、誘導コイルなどの電磁装置である。外部電磁装置が、電磁信号を生成し、この電磁信号は、エネルギー貯蔵装置40によって受信され、電気エネルギーに変換される。エネルギー貯蔵装置40は、算出装置20に充電信号を提供することができる。算出装置20は、充電信号を基準充電信号と比較し、低充電通信信号(low charge communication signal)を開始し、患者および/またはヘルスケア提供者に警告することができる。代わりに、電圧センサーなどの検出器は、エネルギー貯蔵装置40の充電を監視し、充電が閾値より低くなると算出装置20に信号を与えるために使用されてよい。電磁装置は、監視装置1の近くに置かれて、エネルギー貯蔵装置40を充電することができる。
【0059】
代わりに、またはさらに、エネルギーは、超音波振動の形で与えられてよい。例えば、圧電性トランスデューサーが監視装置1に含まれてよい。超音波振動は、外部から与えられてよい。トランスデューサーは、超音波振動により駆動されると電気を生成する。本明細書に示すように、エネルギーまたは電力は、コネクタ85を通じて監視装置1に提供されてもよい。
【0060】
2.診断および操作
心臓の状態を適切に診断することが重要である。不適切な診断は、不適切な治療につながる可能性があり、不適切な治療は、患者の死、または重篤で持続的な障害を生じる場合がある。潜在的な害のため、多くの警告を使用するのは自然なことである。しかしながら、多くの警告は、治療費を高くし、このことは、全体として、社会に費用を課すことになる。適切な診断により、治療費が減少し得ると共に、患者の状態も改善すると思われる。
【0061】
心不全は、心臓が身体にわたって十分量の血液を送り出す能力を損なう、構造的または機能的な心臓の障害により生じ得る。心不全は、心筋梗塞(心筋が酸素不足になり損傷を受ける)および高血圧(血液を送り出すのに必要な収縮力を増大させ、しばしば心筋を厚くし、心筋の機能を変化させる)を含む、損傷または過負荷によって、心筋の能率を低減する状態により引き起こされる。
【0062】
異常を監視し、その異常に瞬間的に応答することに加え、潜在的に致命的な出来事を防ぐために慢性心不全の患者の生理学的履歴を作り出すことが重要である。心不全は、慢性的かつうっ血性、または、非代償性である場合がある。非代償性心不全は、慢性心不全の患者が急性症状を発症した場合に生じる。症状は、関係する心臓の側、すなわち右か左、不全のタイプ、拡張期または収縮期のいずれであるか、異常が低心拍出量によるものであるかどうか、ならびに、(機能分類に基づいた)その異常により受けた機能損傷の度合いに基づいている。
【0063】
心不全については、普遍的に許容される診断基準はない。様々な基準には、Framingham、BostonおよびDuke基準(関連する研究にちなんで名づけられた)が含まれる。ニューヨーク心臓協会の機能分類(New York Heart Association Functional Classification)では、症状の重篤度を分類し、これは、治療に対する反応を評価するのに使用され得る。クラスIの患者は、いかなる活動においても制限がなく、通常の活動では何の症状も感じない。クラスIIの患者は、わずかな軽い活動制限を受けるが、安静時または軽い作業では快適である。クラスIIIの患者は、あらゆる活動の著しい制限を受け、安静時のみ快適である。クラスIVの患者は、あらゆる身体的活動に不快さを感じ、安静時にも症状を感じる。患者の分類は、診断に応答するプロトコルを識別するためにプログラムされ、使用されることができる。
【0064】
心臓の仕事量を増大する状態は、経時的に、心臓自体に変化を及ぼすので、治療における対応した変化を伴う患者の再分類につながり得る変化について心臓の動作を監視することが重要である。心臓の変化には、心室の過負荷による収縮性すなわち収縮力の低下;一回拍出量の低下;収縮末期容量の増加(通常、収縮性の低下により引き起こされる);拡張末期容量の低下(通常、心室充満の障害により引き起こされる);予備容量の減少;および心拍出量を維持するため交感神経活動の増加により刺激された心拍数の増加、が含まれる。
【0065】
左側不全の主な呼吸器症状は、作業時の息切れ(呼吸困難)または安静時の息切れ、および疲れやすさ(easy fatigueability)である。他の症状には、横になっているときの(on reclining)息切れの増加、および睡眠中、通常は寝ついてから数時間後の重篤な息切れが含まれる。身体への血液循環不良は、めまいおよび錯乱につながる。心臓の右側は、脱酸素化血液を送り出し、右側の不全は、周辺組織のうっ血につながる。心不全は、いくつかある原因の中でも介入性の疾病、心筋梗塞、不整脈、および非管理の高血圧の結果として、容易に代償不全になり得る。心不全の可能性があることを示す全身兆候は、横方向に変位した心尖拍動(心臓が拡大しているとき)、代償不全の場合のギャロップリズム(余分な心音)、および心不全の原因(例えば大動脈弁狭窄)として、または心不全の結果として心臓弁膜症を示す場合のある心臓の雑音を含む。心エコー図は、起こり得る心不全のこれらの全身兆候を識別するのに使用されることができる。
【0066】
収縮期機能障害により生じる心不全は、心臓のポンプ機能の不全である。これは、駆出率の低下(50%未満、多くの場合それより著しく低い)により特徴付けられる。通常、駆出率は50%〜70%でなければならない。心室収縮の強度は、弱まり、適切な一回拍出量を生じるのには不十分であり、その結果、不十分な心拍出量を生じる。心室は不適切に空になっているので、心室の拡張末期圧および容量が増加する。心臓の左側では、圧力の増大により、肺水腫が生じる。心臓の右側では、圧力の増大により、従属的な末梢性浮腫が生じる。ドップラーセンサー60は、心臓機能の重要な決定要素である一回拍出量(SV)を決定するのに使用されることができる。
【0067】
拡張期機能障害による心不全は、心室の適切な弛緩不全であり、典型的には、より硬い心室壁を表す。これにより、心室の不十分な充満が生じ、このことは、不十分な一回拍出量を生じる。心室弛緩不全はまた、拡張末期圧の上昇をもたらし、これにより、浮腫が生じる。拡張期機能障害は、収縮期機能が保護されている場合、生理学的危期を除いて(except in physiologic extremes)現れないことがあるので、患者は、安静時には完全に無症状であるかもしれない。しかしながら、拡張期機能障害は、心拍数および血圧の増大に高感受性である。突然の頻脈の発症は、作業、熱、または脱水症状によって起こり得る。ECGセンサー50は、心拍数を基準値と比較することにより、心拍数の増加を追跡することができる。血圧の上昇は、同様にドップラーセンサー60で識別され得る。パラメータは、拡張期機能障害を潜在的に診断するために、やがて相互に関係させられることができる。
【0068】
仮定上のシナリオは、心不全の事象に応答するプロトコルを例証するために説明する。このシナリオは、仮定上の症状に基づいている。
【0069】
第1のケースでは、患者は、65歳で、その事象の2年前に前壁心筋梗塞にかかっていた。事象前の1年間、彼は、うっ血性心不全にかかった。これは、軽い作業時の(on mild effort)呼吸困難、疲れ、および安静時のまれな息切れ事象に特徴付けられる。彼のニューヨーク心臓協会の機能クラスは、II〜IIIと定められた。この患者は、ACE阻害剤、βブロッカー、およびスピロノラクトンを含む薬物療法を受け、これにより、いくらか機能が改善された。全身の脱力感およびいくらかの息切れを経験したあと、患者はHCPに電話し(called)、自分の症状を伝えた。
【0070】
基本のシナリオでは、この患者は、監視装置1を使用することの恩恵を受けない。通常の状態では、症状は、ほぼ確実に、HCPが非代償性心不全を疑うようなものであった。典型的な応答は、移動集中治療室を派遣し患者を迎えに行くことであった。非代償性心不全が存在しなかった場合、患者を迎えに行くことは不要である。しかしながら、非代償性心不全が存在していて、患者が事象後2時間または3時間以上たってからヘルスケア施設に到着した場合、治療の遅れは、危険である場合があり、時折、生命を危うくする。
【0071】
本発明による方法の異なる実施形態を例証する、以下の代替的なシナリオでは、患者は、監視装置1を使用することの恩恵を受ける。事象前に、HCPが、患者の病歴およびニューヨーク心臓協会の機能クラスもしくは別の分類に対応するプロトコルで、監視装置1をプログラムする。プロトコルは、時々更新されてよい。
【0072】
第1のシナリオでは、電話を受けたとき、HCPは外部通信装置にアクセスして通信装置30を通じて脈拍数データを回収し、不整脈が存在するかどうかを決定する。次に、HCPは、O飽和度測定値を回収する。通常の飽和度(>98%)では、重篤な事象はほぼ確実に除外される。検査を完了するため、HCPは、電話で、患者に2〜3分間じっとしているように指示し、2〜3分間経過したら、HCPは、心拍出量および血圧を算出するよう監視装置1に命令する。この情報は、患者が実際に代償不全にかかっているかどうか決定するのに十分である。代償不全にかかっていなければ、ヘルスケア施設までの不要な移動は避けることができる。
【0073】
このシナリオでは、HCPは、外部通信装置を用いてコマンドを監視装置1に送る。HCPは、そのような通信を支援するために設けられたウェブサイトを含み得る患者管理アプリケーション200からコマンドを選択することができる。あるいは、外部通信装置は、電話132であってよく、コマンドは、通信装置30、この場合は電話のモデム、にアクセスするため電話番号をダイヤルすること、監視装置1のデータにアクセスするための数字アクセスコードを入力すること、および、その後で、データを回収するためのプロトコルに対応する数字コードを入力することを含むことができる。プロトコルは、1つのパラメータ、または2つ以上のパラメータに言及することができる。監視装置1は、一連のデータを送信することにより各コマンドに応答する。
【0074】
図5を参照すると、例示的なプロトコル群が示されている。HCPは、プロトコルAを作動させて、脈拍および酸素飽和度データを回収する。これらのパラメータは、低電力装置であるECGセンサー50および光センサー組立体2により得られるので、これらの値を得ることは、それほどエネルギーを消費しない。患者がディスプレイスクリーンを含むリレーユニット110を有する場合、プロトコルBも作動されて、患者に2分または3分間休むように指示することができる。最後に、HCPは、プロトコルCを作動させ、心拍出量および血圧の値を回収する。これらは、光センサー組立体2より多くのエネルギーを消費するドップラーセンサー60によって得られる。あるいは、患者は、既に休んでいてもよく、HCPは、プロトコルCを作動させる前に待機する必要がないかもしれない。
【0075】
いくらかの自動化を示す第2のシナリオでは、電話を受けると、HCPは、外部通信装置にアクセスして、診断プロトコルDを作動させる。プロトコルDは次に、算出装置20に、(a)脈拍および酸素飽和度のデータを送信させ、(b)待機して「待機」メッセージをリレーユニット110に送らせ、(c)心拍出量および血圧のデータを送信させる。言い換えれば、プロトコルDは、プロトコルA〜Cの作動を自動化する。HCPは、患者と電話中のままでいると共に、プロトコルDを作動させるコマンドを送り、外部通信装置の情報を受信することができる。患者がリレーユニットを持っていない場合、HCPは、患者に休むよう指示することができる。
【0076】
さらなる自動化を示す第3のシナリオでは、患者は、リレーユニットのコマンドを実行する。リレーユニット110は、無線コマンドを監視装置1に送信することができる通信装置であってよい。例えば、リレーユニット110は、患者または別の人間が不安なときに押すことができる、「パニック」ボタンと示されたボタンを含むことができる。全身の脱力感および息切れを感じたとき、患者102は、パニックボタンを押し、パニックボタンが、プロトコルEを作動させるよう監視装置1に命令する。プロトコルEは、プロトコルDを、そしてパニックボタンが押されたことをHCPに知らせるためにさらにプロトコルFを、作動させるよう算出装置20に指示する。HCPは、患者への追加指示を付けて、通信装置からリレーユニット110にメールを送ることができ、または他の任意の行動を取ることができる。プロトコルEは、患者がHCPに電話するのに必要な時間、およびHCPがプロトコルDを作動させるのに必要な時間を節約する。
【0077】
図6を参照すると、完全な自動化を示す第4のシナリオでは、監視装置1は、異常を診断し、プロトコルFに従って機能を実行する。監視装置1の診断プロフィールは、所定の時間間隔で、心臓の脈拍数、心拍出量、酸素飽和度の変化、またはこれらのパラメータの変化の組み合わせを監視するように装置に指示する。このプロフィールはまた、変化が所定量を超える場合、それらの変化を基準値と比較し、異常な状態を信号伝達するように、装置に指示する。応答プロフィールは、異常に応答して機能を実行するよう、装置に指示する。一実施形態では、監視装置1は、値が範囲内で基準値と異なる場合、メッセージまたはデータをHCPに送る。別の実施形態では、監視装置1は、値がある範囲を超えて異なる場合に、HCPに警報を送り、緊急事態を知らせる。警報は、患者の指定世話人に送られてもよく、または、ヘルスケア施設、救急車サービス、または消防署に警報を送ることすらできる。さらに、監視装置1は、患者102が読むことのできるメッセージをリレーユニット110に送ることができる。例えば、リレーユニットは、座る、休む、水を飲むなどといったことを患者に指示するメッセージを表示することができる。
【0078】
第2のケースでは、60歳の患者が、冠動脈バイパス形成術後2週間で、事象を経験する。彼は、健康で、既に1日に45分歩いており、自宅で何らかの仕事を始めていた。この患者は、動悸、いくらかの息切れ、およびめまいを経験する。症状は、バイパス形成術後最初の数週間には一般的な状態である、心房粗動/細動によるものである場合がある。このケースの診断には、脈拍、血液飽和度(blood saturation)、血圧および心拍出量のデータが必要である。データが基準値と比べて正常であるようなら、患者は、休むよう指示され、心臓のパラメータは、1〜2時間したら再びチェックされる。2回目のチェックは、患者に連絡するのに電話をかける必要なく、HCPにより行われ得る。全パラメータが安定しており、患者の気分がよくなっていれば、患者は家にいてよい。
【0079】
第3のケースでは、患者は、植え込み型ICD(除細動器)を有している。昼寝から目覚めた後、患者はいくらか錯乱し、胸の違和感を覚える。彼は、ICDが充電しているかもしれないこと、および自分に重篤な不整脈があるのかもしれないと、心配する。
【0080】
1つのシナリオでは、監視装置1がICD内に、統合されるかまたは動作可能に接続されて組み込まれる。除細動が適切であるとICDが決定すれば、ICDは、その決定を監視装置1に連絡する。監視装置1は、血行動態パラメータ(脈拍、酸素飽和度、血圧、心拍出量)をチェックし、除細動が適切であることを示す異常を確認するか、またはそうではないと決定する。後者の場合、監視装置1は、ICDに充電しないよう指示する。監視装置1はまた、事象情報をHCPに送信することもできる。HCPは、血行動態パラメータを収集するよう、また、不整脈が実際に起こっていたかどうかを決定するよう、装置に問い合わせることができる。不整脈が検出されず、血行動態パラメータが正常であれば、さらなる調査は不要である。
【0081】
別のシナリオでは、監視装置1は、ICDに組み込まれない。監視装置1は、いつICDが充電されるのか検出するようにプログラムされることができる。患者は、ICDが充電されているかどうかを決定するため、電話、パニックボタン、または前述した任意の他の手段により、HCPとの通信を始めることができる。別の実施形態では、充電事象は、患者が読み取るように、リレーユニット110に表示される。他の実施形態では、他の心臓装置が、監視装置1と操作上統合され、特徴部を組み合わせることでそれらの複合的性能を改善する。
【0082】
図7は、本発明の一実施形態による患者管理方法の実施形態を示す。最初に、HCPが、患者102に使用するため監視装置1を立ち上げる。HCPは、患者の病歴情報、監視装置の識別情報、および他の情報を含む、患者102に関連する情報を備えるデータ記憶部210を配する(populates)。HCPはまた、監視装置1にダウンロードするためプロトコルを選択する。プロトコルは、監視装置1がドッキングステーションでドッキングされている間に、コネクタ85を用いてダウンロードされてよい。監視装置1は、超音波機器の助けを借りて、患者上に位置付けられる。最初の立ち上げ時、HCPは、基準測定値を入手することができ、その測定値を基準値として算出装置20に記憶させることができる。
【0083】
工程700で、監視装置1は患者102を監視する。監視は、前記の通りプロトコルFに従って、または別のプロトコルに従って行われてよい。監視には、測定値を入手するためにセンサーを作動させること、パラメータ値を算出すること、プロトコルに従って値を基準値と比較すること、および、正常または異常な状態を診断することが含まれる。値が基準範囲外である場合、監視装置1は、工程712に進むことができるか、または新しい測定サイクルを始めて、以上を診断する前にパラメータデータを確認することができる。別の状況では、監視装置1は、工程720に進み、その後、工程700に戻る。
【0084】
工程710で、監視装置1は、外部通信装置からコマンドを受信する。コマンドは、プロトコルに従ってパラメータ値を送信するか、またはプロトコルを更新するか、またはプログラムを更新するよう、監視装置1に指示することができる。
【0085】
工程712で、監視装置はプロトコルを作動させる。プロトコルは、どのパラメータを感知すべきか、どれだけのデータ(分、時間、日)を取得すべきか、および、どれほど頻繁に測定を継続すべきかを示すことができる。プロトコルは、受信したコマンドによって、または工程700からの監視プロトコルに応答して、決定される。外部通信装置はコンピュータ142であってよい。コンピュータ142は、患者管理アプリケーション200を含んでよく、または、インターネットを通じて患者管理アプリケーション200にアクセスすることができる。患者管理アプリケーション200は、利用可能なプロトコルを示すオプションメニューを提供でき、また、患者のプライバシーならびに幸福(well-being)を保護するための保護特徴部も含むことができる。外部通信装置は、また通信装置110、120および132であってもよい。この工程では、監視装置1は、算出装置20により受信される信号を生成するセンサーを作動させる。算出装置20は、信号を調節し、それらの信号を測定値に変換し、次に、測定値を分析し、パラメータ値を算出する。最後に、算出装置20は、プロトコルで与えられる追加の命令を実行する。
【0086】
別の実施形態では、通信装置は、患者管理アプリケーションを使用せずに直接監視装置1にアクセスする。通信装置は、監視装置1にダイヤルし(dial)、キーパッドによりコマンドを与える。
【0087】
工程714で、監視装置1は、プロトコルを更新するコマンドを実行する。更新には、異常な状態を決定する基準値を変えること、または異常な状態の重篤度、例えば非常事態を見分ける基準値を変えることが含まれ得る。他の更新は、工程の順序、または応答プロフィールにおける応答を変えることを含む。この工程で、追加のプロトコルを加えることができる。プロトコルは、患者の状態、病歴、または他の因子の変化を反映するように更新されてよい。
【0088】
工程716で、監視装置1は、プログラムを更新するためコマンドを実行する。プログラムは、センサーからの信号を処理するアルゴリズムを含むモジュールを含むことができる。モジュールは、特徴部が改善された、より新しいモジュールを反映するように更新されてよい。さらに、モジュールは、外部またはさらなるセンサーの追加を反映するように更新されてもよい。
【0089】
工程718で、監視装置1は機能を実行する。機能は、通信信号を送信すること、治療を行うこと、またはプロトコルの応答プロフィールで特定された他の機能を含むことができる。応答プロフィールは、どのパラメータを送信すべきか、どれだけのデータ(分、時間、日)を送信すべきか、および、どれだけ頻繁に測定を継続すべきか、を示すことができる。
【0090】
工程720で、監視装置1は測定値を記憶する。値は、工程712で作動されたプロトコルの結果として、または正常な状態の結果として、記憶されてよい。工程720は、例えば、実質的にリアルタイムで介護者に最新情報を与えるようにいったん異常な状態が検出されたら、実行されることができる。工程720は、1日に1回、1週間に1回、1ヶ月に1回などといった規則的な間隔で行われてもよい。代わりに、またはこれらの送信に加えて、算出装置20は、要求されたデータ、または要求されたデータを表す情報を通信装置30に送信させることによって、(例えばヘルスケア提供者から)通信装置30により受信されたデータの要求に応答するよう、プログラムされることができる。
【0091】
本発明は、例示的なデザインを有するものとして説明されてきたが、本発明は、本開示の趣旨および範囲内で、さらに改変されてよい。したがって、本出願は、本発明の全体的な原理を用いた、本発明のあらゆるバリエーション、使用法、または改造を含むことを意図している。さらに、本出願は、本発明が属する技術分野で既知のまたは習慣的な慣例に入る、本開示からの新発展(departures)を含むことを意図している。
【0092】
〔実施の態様〕
(1) 患者の健康状態を監視する方法において、
監視装置を提供することであって、前記監視装置は、
内部に貯蔵されたエネルギーで前記監視装置に電力供給するように動作可能なエネルギー貯蔵装置、
血管の相対位置を感知する光センサー、
前記エネルギー貯蔵装置内に貯蔵された前記エネルギーを節約するため、前記光センサーにより感知された前記血管の前記相対位置に基づいて前記血管を流れる流体の速度を感知するドップラーセンサー、ならびに、
パラメータ値を得るために前記光センサーおよび前記ドップラーセンサーを操作する算出装置であって、前記算出装置は、前記患者の前記健康状態を診断し、それに応答するための1つまたは複数のプロトコルを含み、前記光センサー、前記ドップラーセンサー、および前記算出装置はハウジングに取り囲まれている、算出装置、
を含む、提供することと、
前記監視装置が前記患者により支持されるように前記監視装置を前記患者に固定することと、
前記監視装置で1つまたは複数の血行動態パラメータを算出することと、
前記1つまたは複数の血行動態パラメータに基づいて健康状態を診断することと、
前記健康状態に応答して機能を実行することと、
を含む、方法。
(2) 健康状態を監視する方法において、
監視装置を提供することであって、前記監視装置は、
患者の血管の相対位置を感知する光センサー、
エネルギー貯蔵装置、
前記血管を流れる流体の速度を感知するため選択的に作動可能な複数のセグメントを含むドップラーセンサーであって、前記選択的に作動可能な複数のセグメントのうち選択されたセグメントは、前記エネルギー貯蔵装置に貯蔵されたエネルギーを節約するため、前記血管の前記相対位置に基づいて前記速度を感知するように作動される、ドップラーセンサー、
パラメータ値を得るために前記光センサーおよび前記ドップラーセンサーを操作する算出装置であって、前記光センサー、前記ドップラーセンサー、および前記算出装置は、ハウジングに取り囲まれている、算出装置、ならびに、
前記算出装置に連結される通信装置、
を含む、提供することと、
前記監視装置にコマンドを送信することと、
前記コマンドに応答して機能を実行することと、
を含む、方法。
(3) 健康状態を監視するシステムにおいて、
監視装置であって、前記監視装置は、内部に貯蔵されたエネルギーで前記監視装置に電力供給するよう動作可能なエネルギー貯蔵装置、患者の血管の相対位置を感知する光センサー、前記エネルギー貯蔵装置に貯蔵された前記エネルギーを節約するため、前記光センサーにより感知された前記血管の前記相対位置に基づいて前記血管を流れる流体の速度を感知するドップラーセンサー、パラメータ値を得るために前記光センサーおよび前記ドップラーセンサーを操作する算出装置、を含み、前記光センサー、前記ドップラーセンサー、および前記算出装置はハウジングに取り囲まれている、監視装置と、
前記監視装置にデータを送信し、前記監視装置からパラメータ値を受信する、患者監視アプリケーションと、
パラメータ値を記憶するデータ記憶部と、
を含む、システム。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の一実施形態によるシステムの概略図である。
【図2】本発明の一実施形態によるシステムの概略図である。
【図3】本発明の一実施形態による監視装置の概略的な側面図である。
【図4】本発明の一実施形態による算出装置の概念図である。
【図5】本発明による方法の実施形態を実行するプロトコルの概念的な表示である。
【図6】本発明による方法の実施形態を実行するプロトコルの概念的な表示である。
【図7】本発明による方法のさらなる実施形態のフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の健康状態を監視する方法において、
監視装置を提供することであって、前記監視装置は、
内部に貯蔵されたエネルギーで前記監視装置に電力供給するように動作可能なエネルギー貯蔵装置、
血管の相対位置を感知する光センサー、
前記エネルギー貯蔵装置内に貯蔵された前記エネルギーを節約するため、前記光センサーにより感知された前記血管の前記相対位置に基づいて前記血管を流れる流体の速度を感知するドップラーセンサー、ならびに、
パラメータ値を得るために前記光センサーおよび前記ドップラーセンサーを操作する算出装置であって、前記算出装置は、前記患者の前記健康状態を診断し、それに応答するための1つまたは複数のプロトコルを含み、前記光センサー、前記ドップラーセンサー、および前記算出装置はハウジングに取り囲まれている、算出装置、
を含む、提供することと、
前記監視装置が前記患者により支持されるように前記監視装置を前記患者に固定することと、
前記監視装置で1つまたは複数の血行動態パラメータを算出することと、
前記1つまたは複数の血行動態パラメータに基づいて健康状態を診断することと、
前記健康状態に応答して機能を実行することと、
を含む、方法。
【請求項2】
健康状態を監視する方法において、
監視装置を提供することであって、前記監視装置は、
患者の血管の相対位置を感知する光センサー、
エネルギー貯蔵装置、
前記血管を流れる流体の速度を感知するため選択的に作動可能な複数のセグメントを含むドップラーセンサーであって、前記選択的に作動可能な複数のセグメントのうち選択されたセグメントは、前記エネルギー貯蔵装置に貯蔵されたエネルギーを節約するため、前記血管の前記相対位置に基づいて前記速度を感知するように作動される、ドップラーセンサー、
パラメータ値を得るために前記光センサーおよび前記ドップラーセンサーを操作する算出装置であって、前記光センサー、前記ドップラーセンサー、および前記算出装置は、ハウジングに取り囲まれている、算出装置、ならびに、
前記算出装置に連結される通信装置、
を含む、提供することと、
前記監視装置にコマンドを送信することと、
前記コマンドに応答して機能を実行することと、
を含む、方法。
【請求項3】
健康状態を監視するシステムにおいて、
監視装置であって、前記監視装置は、内部に貯蔵されたエネルギーで前記監視装置に電力供給するよう動作可能なエネルギー貯蔵装置、患者の血管の相対位置を感知する光センサー、前記エネルギー貯蔵装置に貯蔵された前記エネルギーを節約するため、前記光センサーにより感知された前記血管の前記相対位置に基づいて前記血管を流れる流体の速度を感知するドップラーセンサー、パラメータ値を得るために前記光センサーおよび前記ドップラーセンサーを操作する算出装置、を含み、前記光センサー、前記ドップラーセンサー、および前記算出装置はハウジングに取り囲まれている、監視装置と、
前記監視装置にデータを送信し、前記監視装置からパラメータ値を受信する、患者監視アプリケーションと、
パラメータ値を記憶するデータ記憶部と、
を含む、システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−519704(P2011−519704A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509040(P2011−509040)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【国際出願番号】PCT/IB2009/006081
【国際公開番号】WO2009/138881
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(510300740)カーディオ・アート・テクノロジーズ・リミテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】Cardio Art Technologies, Ltd.
【住所又は居所原語表記】26 Haharoshet Street, Or Yehuda, Israel
【Fターム(参考)】