説明

偽造防止用紙

【課題】感熱記録層をスレッドにして、紙に漉き込むなどして、温度により透明度が可逆的に変化する偽造防止策を施した偽造防止用紙を提供すること。
【解決手段】温度に依存して透明度が可逆的に変化する感熱記録層10を具備した基材フィルム20がスレッド30として紙40に漉き込まれ、または、埋め込まれ、あるいは、紙から部分的に表出している。感熱記録層10は、支持体1、アンカー層2、光反射性金属層3、接着層4、記録層5、保護層6が順次積層してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣、株券、債権、商品券、宝くじ、証書等の有価証券類や、運転免許証、社員証、学生証等の個人証明書類、またはパスポートのVISAページ、IDページ、表紙や通帳の本文ページ等に使用する偽造防止用紙に関するもので、さらに詳しくは、電子複写機による偽造や変造行為がきわめて困難な偽造防止策を施した偽造防止用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙は紙幣をはじめ、宝くじ、商品券等の金銭的価値を有する有価証券やパスポート、運転免許証等の身分証明書、セキュリティラベル等のブランドプロテクションとして幅広く使用されている。
【0003】
それらの有価証券用紙、身分証明書用紙等は容易に偽造または変造できないように、紙自身に透かしを入れたり、マイクロ文字や凹版印刷、隠し文字、蛍光印刷等の特殊な印刷を施したり、金属光沢を有する箔やホログラム箔などを転写またはシールで施したりしている。
【0004】
しかしこれらの偽造防止策は、いずれも周囲の温度状況により変化することはなかった。
【0005】
一方、温度に依存してその透明度が可逆的に変化する感熱記録媒体としては、例えば、特許文献1にあるような、室温近くの特定温度T0より高い温度に二つの状態転移温度T1、T2を有しており、記録層をT2以上に加熱し且つ保持した後T0以下に冷却すると白濁し、その光散乱性が増大して最大遮光状態になる一方、この白濁状態にある記録層をT1以上T2未満に加熱し且つ保持した後にT0以下に冷却するとその光散乱性が減少して透明の状態になる構成のものがあげられる(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
上記先行技術文献を示す。
【特許文献1】特許第2701624号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、例えば、特許文献1に記載の感熱記録層をスレッドにして、紙に漉き込み、あるいは紙に埋め込み、あるいは、紙から部分的に表出させて、温度に依存して透明度が可逆的に変化する偽造防止策を施した偽造防止用紙を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1の発明は、温度に依存して透明度が可逆的に変化する感熱記録層を具備した基材フィルムがスレッドとして紙に漉き込まれていることを特徴とする偽造防止用紙である。
【0009】
本発明の請求項2の発明は、温度に依存して透明度が可逆的に変化する感熱記録層を具備した基材フィルムがスレッドとして紙に埋め込まれていることを特徴とする偽造防止用紙である。
【0010】
本発明の請求項3の発明は、温度に依存して透明度が可逆的に変化する感熱記録層を具
備した基材フィルムがスレッドとして紙から部分的に表出していることを特徴とする偽造防止用紙である。
【0011】
このように本発明によれば、温度に依存して透明度が可逆的に変化する感熱記録層を具備した基材フィルムがスレッドとして紙に漉き込まれている、あるいは埋め込まれている、さらには部分的に表出しているので、可変情報をスレッドに入れることができ、オンデマンドスレッドが可能になる。
また、温度によって白濁する性質を応用し、白濁部分と透明部分の光透過性の違いにより紙上部からパターンで見ることができ、白すかし用紙のように見える。
さらに、スレッドにすることでコピー機等での複写が不可能となる。
【発明の効果】
【0012】
このように本発明の偽造防止用紙は、つぎのような効果がある。すなわち、感熱記録層を具備した基材フィルムをスレッドとして用紙に漉き込む、あるいは埋め込む、部分的に表出させることで偽造防止効果を高めることができる。温度に依存してその透明度が可逆的に変化する感熱記録層をスレッドにすることで、また、可変情報をスレッドに入れることができ、オンデマンドスレッドが可能になる。温度により白濁する性質を応用し、白濁部分と透明部分の光透過性の違いにより、紙上部からパターンで見えることができ、白すかし用紙のように見える。さらに、スレッドにすることによりコピー機等での複写が不可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明を一実施形態に基づいて以下に詳細に説明する。
本発明の偽造防止用紙(100)は、例えば図1、図2に示すように、温度に依存して透明度が可逆的に変化する感熱記録層(10)を具備した基材フィルム(20)がスレッド(30)として紙に漉き込まれている、あるいは、紙に埋め込まれている、あるいは、紙から部分的に表出しているものである。
【0014】
先ず、感熱記録層(10)を説明する。感熱記録層(10)は、特許第2701624号明細書にも記載されているように、透明なポリエステルシートから成る基材フィルムである支持体(1)と、この支持体上に設けられたアンカー層(2)と、アンカー層上に設けられた光反射性金属層(3)と、この光反射性金属層上に設けられた接着層(4)と、接着層上に設けられた記録層(5)と、この記録層上に設けられた保護層(6)とでその主要部が構成されている。
【0015】
そしてこの感熱記録層(10)は以下のような工程を経て製造される。
【0016】
すなわち、厚さ12μmの透明なポリエステルシートからなる支持体(1)上に、下記組成のアンカー層用組成物をワイヤーバーにて塗布し、100℃、5分間乾燥、かつ、熱硬化させて、乾燥膜厚が1.5μmのアンカー層(2)を形成させた。
【0017】
アンカー層用組成物
ポリエステル樹脂 10部
イソシアナート 0.1部
トリエチレンジアミン 0.01部
トルエン 45部
2−ブタノン 45部。
【0018】
このアンカー層上にアルミニウムを真空蒸着して膜厚が50nmの光反射性金属層(3)を設けた後、この光反射性金属層上に下記組成の接着層用組成物を同じくワイヤーバーにて塗布し、90℃、5分間乾燥させて乾燥膜厚が0.5μmの接着層(4)を形成した。
【0019】
接着層用組成物
ポリパラバン酸樹脂 10部
アセトン 80部
ジオキサン 10部。
【0020】
つぎに、この接着層上に下記の均一に溶解している記録層用組成物をワイヤーバーにて塗布し、110℃、3分間乾燥して乾燥膜厚9μmの記録層(5)を形成すると共に、この記録層上に下記組成からなる保護層用組成物をワイヤーバーを用いて塗布し、90℃で3分間乾燥させた後、この支持体をコンベアにのせて速度10m/min.の条件で移動させ、かつ、高さ10mの位置から高圧水銀灯(80W/cm、オゾン集光型)により紫外線を一様に照射し、保護層用組成物を光硬化させて硬化膜厚2.5μmの保護層(6)を形成して感熱記録層(10)を求めた。
【0021】
記録層用組成物
ベヘン酸 95部
脂環式ジカルボン酸化合物 5部
(1,4−シスシクロヘキサンジカルボン酸)
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体 300部
トルエン 300部
テトラヒドロフラン 1200部。
【0022】
保護層用組成物
多官能ポリエステルアクリレートエマルジョン 100部
(固形分 40重量%)
滑剤(特殊高分子シリコーン樹脂溶液) 5部
光開始剤 2部。
【0023】
基材フィルム(20)は、支持体であって、透明なプラスチックフィルムまたはシート、染料や顔料等の着色剤が混合されたプラスチックフィルムまたはシート、さらには、アルミニウム等の光反射性金属層を設けたプラスチックフィルムまたはシートが好ましく使用できる。
【0024】
基材フィルムに記録層(5)を塗布するについては、必要に応じて上述のようにあらかじめ、基材フィルム上にアンカー層(2)を塗布してから記録層を塗布することができる。
【0025】
記録層(5)を設けた基材フィルム(20)の反対面に、溶剤系または水系の接着剤層(15)をワイヤーバー等で塗布して設ける。
【0026】
最後に0.5〜20mm程度の幅にスリットして糸状のスレッド(30)とする(図3参照)。
【0027】
このスレッド(30)を紙の抄造段階で、紙(40)に漉き込んだり、紙に埋め込んだり、あるいは、紙から部分的に表出させて、本発明の偽造防止用紙(100)とする。
なお、感熱記録層は紙の抄造の段階で白濁する。
【0028】
本発明の偽造防止用紙を、例えば、商品券(50)に加工後、スレッド部分(30)を
ホットスタンプを用いる等の手法により、スレッド上に熱を加えて、部分的に感熱記録層(10)を透明にすることができる(図4参照)。
【0029】
すなわち、本発明においては、感熱記録層が温度によって白濁化する性質を応用して、白濁部分(31)と透明部分(32)の光透過性の違いにより、紙上部からパターン状に見ることができる(図5参照)。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の偽造防止用紙を製造する手順の一実施例を示すブロック説明図である。
【図2】本発明の偽造防止用紙に使用する感熱記録層の層構成の一実施例を示す断面説明図である。
【図3】本発明の偽造防止用紙に使用するスレッドの層構成の一実施例を示す断面説明図である
【図4】本発明の偽造防止用紙を使用して作製した商品券の一実施例を示す、(a)は平面説明図であり、(b)は(a)のA−A’線断面説明図である。
【図5】図4の商品券を熱でパターン化した一実施例を示す、平面説明図である。
【符号の説明】
【0031】
1‥‥支持体
2‥‥アンカー層
3‥‥光反射性金属層
4‥‥接着層
5‥‥記録層
6‥‥保護層
10‥‥感熱記録層
15‥‥接着剤層
20‥‥基材フィルム
30‥‥スレッド
31‥‥白濁部分
32‥‥透明部分
40‥‥紙
50‥‥商品券
100‥‥偽造防止用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度に依存して透明度が可逆的に変化する感熱記録層を具備した基材フィルムがスレッドとして紙に漉き込まれていることを特徴とする偽造防止用紙。
【請求項2】
温度に依存して透明度が可逆的に変化する感熱記録層を具備した基材フィルムがスレッドとして紙に埋め込まれていることを特徴とする偽造防止用紙。
【請求項3】
温度に依存して透明度が可逆的に変化する感熱記録層を具備した基材フィルムがスレッドとして紙から部分的に表出していることを特徴とする偽造防止用紙。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−133019(P2009−133019A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−308427(P2007−308427)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】