傾斜圧延法によってプレートおよびシートの組織を制御する方法
金属シートまたはプレート(3)を圧延するための方法および装置が提供される。前記方法は、所定の角度で圧延機(1,2)に前記金属プレートまたはシート(3)を供給するステップを有する。前記装置は、傾斜フィードテーブル(4)、または移送テーブルおよび傾斜フィードテーブルを載置可能なエプロンを備える圧延機を有する。本発明の方法と装置を使用して、板厚方向勾配と剪断組織を改善することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剪断組織を有するか、または板厚方向の組織勾配が最小限に低減されたプレートおよびシートを作製するための製造方法および装置、あるいはこの両方に関する。
【背景技術】
【0002】
プレートまたはシートの結晶組織は、多くの用途において重要な役割を果たす。スパッタリング速度は結晶組織に依存するため、結晶組織は、薄膜を成膜するために使用されるスパッタリングターゲットの性能にとって重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
結晶組織が不均一なスパッタリングターゲットから成膜される薄膜の均一性は低くなる。体積全体で組織が均一であるプレートのみが最適な性能を与える。
【0004】
ターゲット内の粒子からのスパッタリング速度は、表面に対するその粒子の結晶面の配向に応じて決まる(Zhang et al, "Effect of Grain Orientation on Tantalum Magnetron Sputtering Yield", J. Vac. Sci. Technol. A 24(4), Jul/Aug 2006参照)。プレートの法線に対する各配向のスパッタリング速度は異なる。また、特定の結晶方向が、スパッタされた原子が飛行するのに好適な方向である(Wickersham et al, "Measurement of Angular Emission Trajectories for Magnetron-Sputtered Tantalum", J. Electronic Mat., Vol 34, No 12, 2005参照)スパッタリングターゲットの粒子は非常に小さい(一般に直径50〜100μm)ため、個々の粒子の配向が大きく影響することはない。しかし、大きな領域(直径約5cm〜10cmの領域)にわたって組織は、大きく影響しうる。このため、ターゲットの表面のある領域の組織が他のいずれかの領域の組織と異なる場合、成膜される膜の膜厚が基板全体で不均一となる可能性がある。また、表面領域の組織が、ターゲットプレートからある程度の深さの同じ領域の組織と異なる場合、後の基板(ターゲットがその深さまで使用または侵食されたあと)に成膜される膜の膜厚が、最初の基板に作製した膜の膜厚とは変わってしまう可能性がある。
【0005】
ある領域の組織が他のどの領域とも同じであれば、その組織の性質は重要でない。換言すれば、全ての粒子がプレートの法線方向(ND)に平行な111の配向を有するターゲットプレートは、全ての粒子が、NDに平行な100の配向を有するターゲットプレート、あるいは、混合の比率が領域間で一定である限り、100、111および他の粒子の混合物のターゲットプレートよりも良くも悪くもない。
【0006】
膜厚の均一性は重要である。集積回路では、数百の膜がシリコンウェハに同時に作製され、例えば、ある点で膜が薄すぎれば適切な拡散バリアが得られず、別の点で膜が厚すぎるとビアまたはトレンチをブロックしたり、後の工程で除去しなければならない領域を除去することができなくなる。成膜される膜の板厚が、設計者が指定した範囲にない場合には、デバイスが用途やサービスを満たすことができず、修復または再加工が一般に不可能であるため、試験時点までの製造原価全体が損失となる。
【0007】
ターゲットの組織が均一ではなく、このため、予測可能な均一なスパッタリング速度が得られない場合には、最新技術のスパッタ装置において、基板上の点間における膜厚の変動を制御することは不可能である。基板間およびターゲット間の膜厚の変動の、全体的ではなく部分的な制御は、試験片を使用することで行うことができる。しかし、試験片の使用は、時間とコストがかかる。
【0008】
先行技術に従って作製したターゲットでは、ターゲットプレートにおける組織の不均一性により、スパッタリング速度(衝突するアルゴンイオン当たりの、ターゲットからスパッタされるタンタル原子の平均個数として定義される)が予測不能となったり、変動しやすくなり、特定の基板に成膜される膜の膜厚の変動のほか、基板間およびターゲット間の膜厚の変動が生ずる。
【0009】
また、結晶組織は、材料の機械的挙動にも影響する。これは、異方性材料の単結晶が、異なる方向に試験したときに、機械的挙動に差が生ずることによる。単結晶材料は、さまざまな用途で使用されているが、実際に使用される材料の大多数は、多くの粒子から成る多結晶である。多結晶を形成している粒子が好適な配向(すなわち結晶組織)を有する場合、材料は、同様の配向の単結晶のようにふるまう傾向がある。材料の成形性は、材料の機械的挙動によって決まり、これは結晶組織の強力な関数である。
【0010】
また、透磁率などのその他の材料特性も、結晶組織の影響を受ける。例えば、結晶組織は、主としてトランスおよびその他の電気機械用の鉄芯として使用される方向性(grain-oriented)シリコン鋼の性能の重要な因子である。方向性シリコン鋼の高い透磁率などの磁性の改善により、エネルギーを節約することができる。良好な磁気特性を得るには、方向性シリコン鋼が、高い<110>//NDおよび<100>//RD(圧延方向)の組織(ゴス方位)を有する必要があり、この場合には、後の圧延方向への磁化が容易となる。
【0011】
結晶組織は、材料が可塑変形されると発達し、塑性変形は、変形中に活性化する特定の滑り系にのみ発生しうる。垂直歪み成分と剪断歪み成分は、温度などのその他のパラメータと共に、どの滑り系が活性化されるかを決定する。滑り系が活性化されると、粒子が特定の方位の方に回転し、結晶組織が生じる。材料の最終的な結晶組織は、出発組織と、材料内に発生する歪みの両方の強力な関数である。
【0012】
例えば、平面歪み条件でのプレートの圧延中に、プレートの板厚方向の材料が、剪断歪みと垂直歪みを同時に受ける。剪断歪みの量は、プレートの板厚方向に大きく変動する。プレートの板厚中央は、従来の圧延プロセスの対称性のため剪断歪みを受けることがないが、板厚中央から離れた位置は、剪断歪みと垂直歪みの両方を受ける。このため、プレートの板厚中央の組織はほかの位置とはかなり異なる。
【0013】
プレートの板厚方向の組織の不均一性は、「板厚方向の組織勾配」と呼ばれる。従来の圧延手順では、強い板厚方向の組織勾配を示すプレートまたはシートが作製される。板厚方向の組織勾配と組織の主成分とは、従来の圧延法で変更および制御されるパラメータ(パス当たりの板厚減少率(%)やパス間の回転など)では大きく変えることができない。
【0014】
従来の圧延法では、特定の組織成分(すなわち「圧延組織」成分)が支配的となる。bcc金属では、圧延組織成分は、bcc金属が剪断歪みを受けたときに形成される「剪断組織」成分とは異なる。bcc金属中の粒子は、剪断歪みを受けると、<110>//NDの方に回転する。fee金属ではほぼ逆の挙動が観察され、剪断歪みを受けると、<111>//NDおよび<100>//NDが主たる組織成分となる。ワークピースに導入される剪断歪みがより大きくなる程、剪断組織がより強力に発達する。
【0015】
完全にランダムな組織を有する材料(feeまたはbcc)では、体積の10.2%(粒子数で10.2%)が、NDの15°内に<100>軸を有し、体積の20.4%が、NDの15°内に<110>軸を有する。このため、fee材料は、体積の10.2%超がNDの15°内に<100>軸を有し、体積の13.8%超がNDの15°内に<111>軸を有する場合、剪断組織を有するといわれる。bcc材料は、体積の20.4%超がNDの15°内に<110>軸を有する場合、剪断組織を有するといわれる。
【0016】
塑性歪み比(r値)が大きいほど、金属の成形性が改善されることが知られており、<111>//ND組織成分が支配的であるbccまたはfee金属は、高い塑性歪み比(r値)を有する。このため、fee金属の成形性を改善するには、<111>//NDを主成分の1つとして有する剪断組織が望ましい。
【0017】
プレートまたはシートの板厚方向の剪断歪みの量は、従来の(対称)圧延法から非対称圧延プロセスに切り替えることで変えることができる。板厚方向の剪断歪みの総量を上げることができる、より詳細には、板厚中央にある程度の量の剪断歪みを与えることができるが、これは従来の圧延法では不可能であった。従来技術の非対称圧延法では、直径の異なるロール、回転速度の異なるロール、表面特性が異なり、ワークピースの上面と上ロール間、およびワークピースの裏面と下ロール間の摩擦係数が異なるロールを使用する。摩擦係数を一定に制御することが困難であるため、上と下の摩擦係数を変える非対称圧延は実際上実現不可能であり、ここではこれ以上説明しない。また、これらの従来技術の方法は、板厚方向の組織勾配を低減させるためも使用することができる。
【0018】
剪断組織を導入し、組織勾配を最小化するための上記のタイプの非対称圧延法の利用が、従来技術において報告されている。例えば、Field et al., Microstructural Development in Asymmetric Processing of Tantalum Plate, J. Electronic Mat., Vol 34, No 12, 2005;Sha et al., Improvement of recrystallization texture and magnetic property in non-oriented silicon steel by asymmetric rolling, J. Magnetism and Magnetic Mat., Vol 320, 2008;Lee and Lee., Analysis of deformation textures of asymmetrically rolled steel sheets, Internat. J. Mech. Sci., Vol 43, 2001;Lee and Lee, Texture control and grain refinement of AA1050 Al alloy sheets by asymmetric rolling, Internat. J. Mech. Sci., Vol 50, 2008;Jin et al. Evolution of texture in AA6111 Al alloy after asymmetric rolling with various velocity ratios between top and bottom rolls, Mat. Sci. and Eng., Vol 465, 2007;Jin et al. The reduction of planar anisotropy by texture modification through asymmetric rolling and annealing in AA5754, Mat. Sci. and Eng., Vol 399, 2005;Kim et al. Formation of textures and microstructures in asymmetrically cold rolled and subsequently annealed aluminum alloy 1100 sheets, J. Mat. Sci., 2003;Zhang et al. Experimental and simulation textures in an as symmetrically rolled zinc alloy sheet, Scripta Materialia, Vol 50, 2004;およびKim et al. Texture and microstructure changes in asymmetrically hot rolled AZ31 magnesium alloy sheets, Mat. Lett. 59, 2005を参照のこと。
【0019】
上で説明した非対称圧延方法は、上ロールと下ロールの直径、または上ロールと下ロールの速度を非対称にすることにより、プレートの板膜方向に、ある程度の量の剪断歪みを導入する。上ロールと下ロールのロールの直径またはロール速度の比が大きくなると、プレート内に導入される剪断歪みも増大するが、これらの比と、この方法によって導入することができる剪断歪みの量には、実用上の限界がある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
このため、本発明は、材料の結晶組織を制御して、関連する材料特性を改善し、材料の性能を向上させるための装置および圧延方法を提供する。本発明は、プレートまたはシートの板厚方向に、制御された量の剪断歪みの導入を可能にし、板厚方向の組織勾配が最小限に低減されたプレートおよびシートを実現する。スパッタリングターゲットの板厚方向の組織勾配を最小化することで、成膜する膜の膜厚の予測可能性および均一性を改善し、このため、ターゲットの使い勝手を向上させる。
【0021】
また、剪断歪みの導入により、材料(例えばfee金属)の成形性が良好となる剪断組織を提供することができ、これにより、歩留りを上げ、多くの産業で広く使用されている作業を行うための加工コストを低減できる。
【0022】
また、剪断組織の改善により、方向性シリコン鋼などの材料の磁気特性(すなわち透磁率)が改善される。方向性シリコン鋼は、トランスおよび他の電気機械用の鉄芯として使用されるため、磁気特性を改善することで、エネルギーを節約できる。
【0023】
本発明においては、ワークピース(プレートまたはシート)が、圧延機のロールの軸に平行な軸に対して所定の角度(傾斜角)傾斜される。傾斜させたワークピースがロールに供給され、導入傾斜角が圧延パス全体で維持される。本明細書で使用されるように、このプロセスは「傾斜圧延」と呼ばれる。ワークピースの板厚方向の材料が、傾斜圧延の結果、剪断される。剪断歪みの量は、通常、従来の圧延法で制御される他の圧延パラメータと共に、傾斜角によって制御することができる。ワークピースの板厚を所望の値まで低下させるために、複数のパスが使用される。
【0024】
傾斜圧延法は、異なる角度に傾斜可能なエプロンを有する特別に設計された圧延機によって行うことができる。一実施形態では、傾斜エプロンは、圧延機に一体化されている。これにより、非常に短い切換時間で、従来の圧延法と傾斜圧延法の両方に圧延機を利用することが可能となる。別の実施形態では、大がかりな変更を行わずに、圧延機に容易に設置することができる取付具により、傾斜圧延法が従来の圧延機で行われてもよい。この実施形態では、装置の最初の投資額が低く、圧延機を、従来の圧延法と傾斜圧延法の両方に使用することができるが、上で説明した特別に設計された圧延機よりも切換時間が長くなる。しかし、いずれの実施形態においても、切替に長時間を要し、装置のダウンタイムが長いほかの非対称圧延プロセスとは異なり、従来の圧延法と傾斜圧延法の間の切り替え時間が比較的短いため、生産を柔軟に行うことができる。
【0025】
したがって、一態様において、本発明は、金属プレートまたはシートの圧延方法であって、水平上方または水平下方2〜20°の角度で圧延機のローラーに前記プレートまたはシートを供給するステップを有する方法を提供する。
【0026】
追加の態様において、本発明は、所定角度で金属プレートまたはシートを圧延する装置であって、水平上方にまたは水平下方に2〜20°の角度に傾斜された傾斜フィードテーブルを備えた圧延機を有する装置を提供する。
【0027】
本発明の上記の態様および他の態様は、添付の図面、詳細な説明および添付の特許請求の範囲からより容易に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1a】シングルスタンド圧延機においてプレートを傾斜圧延する実施形態を示す図である。
【図1b】マルチスタンド圧延機においてプレートを傾斜圧延する実施形態を示す図である。
【図2a】ロール直径の異なる非対称圧延法の有限要素モデリングを示す図である。
【図2b】ロール速度の異なる非対称圧延法の有限要素モデリングを示す図である。
【図2c】傾斜圧延法の有限要素モデリングを示す図である。
【図3】直径比が1<DR<4、速度比が1<SR<4の非対称圧延法、および傾斜角が0°<TR<15°の傾斜圧延法による、1パス(板膜減少率5%)の垂直歪みと累積剪断の比を示すグラフである。
【図4】ワークピースの板厚方向の異なる位置における1パスの垂直歪みと累積剪断の比を示すグラフであり、これらの位置は、上面(TS)、上面と板厚中央間の中間点(TQ)、板厚中央(MT)、板厚中央と裏面間の中間点(BQ)、および裏面(BS)であり、グラフは、異なる減少率の影響を示すようにプロットされている。
【図5】表面(S)、表面と板厚中央間の中間点(Q)およびプレートの板厚中央(M)における、垂直歪みと累積剪断の比を示すグラフであり、図5のSの値は、図4のTSとBSの値の平均を求めて得、図5のQの値は、図4のTQとBQの値の平均を求めて得、図5のMの値は、図4のMTの値である。
【図6】圧延した板厚2インチ〜0.25インチのワークピースにおける組織勾配を最小化するための最適減少率を示す図である。
【図7】反りにより定量化した(圧延後のワークピースの曲率半径の逆数)のワークピースの反り挙動を示すグラフであり、異なる板厚のワークピースにおける厚減少率による反りの影響が示される。
【図8】傾斜圧延用の傾斜エプロンを有する特別に設計された圧延機の図である。
【図9】従来の圧延機に取り付けた傾斜圧延装置の例示的な実施形態の図である。
【図10】ワークピースのロールへの導入を示す図であり、「完全導入(perfect entry)」位置が示され、完全導入位置では、ワークピースが上ロールと下ロールに同時に接触する。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、上記に挙げた図面に更に図示される。
【0030】
特段の断りのない限り、本明細書と特許請求の範囲で使用される全ての数字は、実施例に使用するものも含め、「約」が明示的に付されていない場合であっても、数字の前に「約」が付されているものとする。また、本明細書に記載する任意の数値範囲は、その範囲内に包含される全ての部分範囲を含むことを意図する。
【0031】
A−傾斜圧延プロセス
図1に2つの実施形態を示す(図1aはシングルスタンド圧延機、図1bはマルチスタンド圧延機を示す)本発明の傾斜圧延プロセスは、ワークピースに剪断歪みを導入する改良された方法を提供する。この傾斜圧延プロセスでは、傾斜フィードテーブル(4a〜f)または傾斜エプロンを使用して、ワークピース(3)が、所定の導入傾斜角で圧延機のロール(1),(2)に供給される。傾斜フィードテーブルまたは傾斜エプロンが、ワークピースの終端が水平になるのを阻止しているため、圧延プロセスの間、導入傾斜角が保持される。
【0032】
傾斜圧延法によって材料の板膜方向に導入される剪断歪みの量は、下で説明するように、傾斜角および各パス後の板厚減少率などのパラメータを調整することによって制御することができる。本発明の方法によってワークピース内の剪断歪みの量を制御可能なことにより、プレートまたはシート内で、1)最小限の板厚方向の組織勾配、2)ワークピースの板厚にわたる剪断組織、という2種類の特別な組織を得ることができる。
【0033】
角度の選択は、傾斜圧延プロセスを使用する使用者の主たる目標が、板厚方向の組織勾配を最小化することにあるか、剪断組織を発生させることにあるかのいずれであるかに応じて決まる。好ましくは、水平上方あるいは水平下方の傾斜角は、2〜20°である。板厚方向勾配を最小化するには、傾斜角は、好ましくは3〜7°である。剪断組織を増加させるためには、傾斜角は、好ましくは10〜20°である。
【0034】
一般に、傾斜角が大きくなると、実際上、より多くの剪断組織を材料に導入することができる。しかし、板厚方向の組織勾配は、傾斜角を上げても必ずしも低下するというわけではない。板厚方向の組織勾配を最小限に低減するためには、ワークピースの所定の板厚に対して、板厚減少率と傾斜角とを併せて調整する必要がある。重要なパラメータのそれぞれを最適化するためのシミュレーション法は、以下に詳細に説明しており、当業者は、各種の影響の均衡を図り、所望の結果(剪断組織を支配的に有するか、組織勾配が最小限に低減されているプレートまたはシートの形の最終製品)を得るために、追加のシミュレーションでこれらのパラメータを調整することができる。
【0035】
傾斜角は、パスに応じて、水平上方または水平下方のいずれかである。プレートの圧延(シングルスタンド圧延機)では、後から重力によってワークピースを傾斜フィードテーブルに配置するため、角度は水平上方でなければならない。シートの圧延にマルチスタンド圧延機を使用する場合には、垂直方向を省スペース化し、傾斜圧延の効果をシートの上半分と下半分に均一に分散させるために、傾斜角の方向が、好ましくは交互に変更されうる。
【0036】
ワークピース内の歪みは、従来技術において公知の用語である「変形組織」に直接影響する。特に金属加工プロセスを冷間(室温近傍あるいは室温未満)、または暖間(室温を超えるが再結晶温度未満)で実施した場合には、金属加工法(この場合、圧延法)を使用して材料に歪みを与えたのち、ワークピースが、再結晶のため、ワークピースの温度を再結晶温度より昇温することにより、好ましくは焼鈍される。ワークピースが、金属加工作業中に再結晶温度を越える温度に達した場合には、動的再結晶が発生し、金属加工後の焼鈍ステップが不要となることがある。再結晶中にワークピースの組織が変化することがあり、この場合に得られる組織は「再結晶組織」と呼ばれる。しかし、ワークピースの再結晶組織は、変形組織の強力な関数である。このため、本発明の傾斜圧延法の利点は、冷間圧延、暖間圧延、または熱間圧延について得ることができる。
【0037】
金属プレートまたはシートは、所定の傾斜で複数回ロールを通過する、換言すれば、2パス、3パス、4パス、5パスまたはそれ以上のパスとなりうる。パスは、ワークピースが所望の板厚に達するまで繰り返される。特に板厚方向の組織勾配を最小化するために、ワークピースの板厚中央に対して対称的な組織が望ましい場合、最終板厚に達するまでのパス数の最小値が、好ましくは、少なくとも4以上となるように、板厚減少率を調整する必要がある。最大減少率の別の考慮事項として、圧延機への荷重が挙げられる。板厚減少率は、圧延機に過度の荷重をかけてしまう減少率よりも低い値に維持する必要がある。本発明の傾斜圧延法とほかの非対称圧延法で圧延したワークピースで発生する剪断歪みレベルを比較するために、有限要素シミュレーションを使用した。
【0038】
有限要素シミュレーションでは、実験で実施するのは非常に困難な、ワークピース内での歪みの量と方向の計算が可能となる。有限要素シミュレーションは、本明細書においては、他の非対称圧延法と比較した傾斜圧延法の効果を定量化するためのツールとして使用する。有限要素ソフトウェアパッケージとして、米国オハイオ州コロンバス所在のScientific Forming Technologies社から入手可能なDeform 2−Dを、全シミュレーションに使用した。
【0039】
シミュレーションは、1パスで0.5インチの初期板厚のワークピースを圧延する設定とした。図2は、直径比が4の圧延(図2a)、速度比が4の圧延(図2b)と、傾斜角が10°の傾斜圧延(図2c)の各プロセスのシミュレーション設定を示す。シミュレーションのあるセットでは、ワークピースの板厚減少率を1パスにつき5%とし、別のセットでは1パスにつき10%とした。全てのシミュレーションにおいて、摩擦係数0.5と、剪断摩擦モデルとを使用した。
【0040】
ロール速度の異なる圧延のシミュレーションでは、上ロールと下ロールの直径を16インチに設定した。高速ロール(図2bの1)の回転速度は、1ラジアン/秒とし、低速ロール(図2bの2)の速度を、求めるロール速度比を基に変更した。ロールサイズの異なる圧延のシミュレーションでは、図2aの大ロール(1)の直径を16インチに固定し、図2aの小ロール(2)の直径を、求めるロール直径比を基に変更した。ロール直径の異なる圧延では、1ラジアン/秒の回転速度を使用した。
【0041】
傾斜圧延のシミュレーションでは、ロールの直径として16インチ、ロール速度として1ラジアン/秒(約10回転数/分)を使用した。
【0042】
摩擦係数、ロールの直径およびロール速度は、シミュレーション結果に定量的に影響するが、異なるプロセスの定性的評価のためにシミュレーション結果から得られる結論が、これらのパラメータの選択によって大きく影響されることはない。
【0043】
また、図2はワークピースがロールから湾曲して出る様子を示し、その影響は「反り」として知られている。
【0044】
ワークピース材料として、bcc金属であるタンタルを選択した。材料内に発生する剪断歪みの量は、材料が異なる場合であっても、所定の圧延パラメータのセットに対して非常に似てくる。しかし、剪断歪みによって得られる組織は、材料に応じて変わる。このため、剪断歪みのシミュレーション結果は、シミュレーションで選択した材料によって大きく影響されることはない。
【0045】
材料がロールを通過するたびに、剪断歪みが蓄積されていく。材料が入口で一方向に剪断され、材料が圧延の中立点を通過すると、剪断方向が変化する。正と負の剪断成分の絶対値を加算して、「累積」剪断歪みを計算した。板厚方向の平均累積剪断歪みは、ワークピースの上面から裏面に等間隔で設定した5点における剪断歪みの平均値を求めることによって計算した。
【0046】
図3は、初期板厚が0.5インチ、減少率が5%の1パスにおける、異なるプロセスの垂直歪みと累積剪断の比を示す。直径比(DR)とロール速度比(SR)を1〜4の範囲で変更した。0〜15°の範囲の傾斜角(TR)をシミュレーションした。直径比(DR)、速度比(SR)の1と、傾斜角度(TR)の0は、従来の圧延に対応する。図3に明示的に示されていない傾斜角、ロール直径およびロール速度の値に対する累積剪断歪みを得るために、線形補間を行った。
【0047】
図3は、傾斜角(TR)5°の傾斜圧延法により、ロール直径比(DR)が1.6の非対称圧延法を使用することにより得られる剪断歪みと同様の剪断歪みが得られることを示す。
【0048】
傾斜角15°の傾斜圧延法により、ロール直径比が2の非対称圧延法を使用することにより得られる剪断歪みと同様の剪断歪みが得られる。また、図3は、傾斜角5°の傾斜圧延法で得られる剪断歪みが、ロール速度比(SR)が4の非対称圧延法を使用することにより得られる剪断歪みよりも大きかったことも示す。
【0049】
傾斜圧延法を含む非対称圧延法のいずれかによって導入される剪断歪みの量は、ワークピースの板厚と、パス当たりの板厚減少率とに応じて決まる。例えば、同じ板厚(0.5インチ)と高い減少率(例えば10%)について、傾斜圧延と他の非対称圧延法とを比較すると、図3に示す結果とは僅かに異なる結果が得られる。
【0050】
パス当たりの板厚減少率が10%の場合、5°の傾斜圧延法について、板厚方向に平均値を求めた剪断歪みの量は、直径比1.65および速度比4の非対称圧延法によって得られる剪断歪みの量と同等であった。傾斜角10°の傾斜圧延法では、直径比が2の場合と同様の剪断歪みが得られた。
【0051】
上記の結果に鑑みると、傾斜圧延プロセスは、各方法の制限を考慮を考慮すると、他の非対称圧延法よりも、より有効に材料に剪断歪みを導入すると結論付けることができる。5°もの低い傾斜角により、直径比1.6の非対称圧延法またはロール速度比4の非対称圧延法と同等、またはそれ以上の剪断歪みが得られる。ロール直径比1.6または速度比4の非対称圧延法では、圧延機でプロセスを実施することが実用上困難となるが、15°または20°の傾斜角までの傾斜圧延は実用上困難ではない。
【0052】
ワークピースの板厚方向の剪断歪みは、傾斜圧延の1パスでは、板厚中央に対して均一でも対称でもない。図4は、傾斜角5%、パス当たりの減少率が5〜15%の傾斜圧延法について、ワークピースの板厚方向の異なる位置における剪断歪みの有限要素シミュレーション結果を示す。なお、これらの位置は、上面(TS)、上面から4分の1の点(TQ)、板厚中央(MT)、裏面から4分の1の点(BQ)、および裏面(BS)である。また、図4は、パス当たりの減少率が15%である従来の圧延における剪断歪みも示す。
【0053】
剪断歪みをワークピースの上半分と下半分に均一に分散させるために、ワークピースが、傾斜圧延パスごと、あるいは2パスごとなどの定期間隔で反転されうる。ワークピースの反転の頻度は、ワークピースの板厚方向の剪断歪みの均一性の要件に応じて決まる。板厚方向の組織勾配を最小化するにはに、板厚方向の剪断歪みの変動を低減させる必要がある。上面および裏面(S)、上面および裏面から4分の1の点(Q)、ならびに板厚中央(M)の平均剪断歪みを図5にプロットする。シミュレーションにおいて、傾斜圧延法は、板厚中央(M)において、従来の圧延(TR=0°)のゼロから剪断歪みを明らかに増加させており、その値は、減少率に僅かに依存するが、表面(S)および板厚の4分の1の点(Q)の剪断歪みと同様の値である。板厚0.5インチのワークピースでは、パス当たり6%の減少率と5°の傾斜角を使用して、板厚方向の組織勾配を最小限に低減できる。傾斜角が一定のときに、異なる板厚のワークピースについて、板厚方向の組織勾配を最小化するパス当たりの最適減少率が存在する。図6は、傾斜角5°のときに、0.25インチ〜2インチの板厚におけるワークピースの最適減少率を示す。他の角度についても、上で説明したようにシミュレーションを使用して、最適減少率を求めることができる。
【0054】
従来の圧延中のワークピースの反りは、反りのためにロールにワークピースを供給することが困難となる場合、またはワークピースの前端が、圧延機の出口側のエプロンに当たってこれを損傷する場合には、生産における大きな問題となりうる。これらの実際面での困難に加えて、反りは、ワークピースの垂直歪みに影響し、更なる歪みを発生させ、組織を不均一化する。圧延中にワークピースが反ると、反りによる更なる歪みが材料内に引き起こされる。反りによる歪みは、表面近傍で最大となり、板厚中央でゼロに低下する。組織に対する反りの影響は、反りによる最大歪みと、圧延中の垂直歪みとを比較することによって評価することができる。また、反りは、以下に従って最小化しない限り、傾斜圧延法および他の非対称圧延法でも発生することがある。
【0055】
ワークピースの反りは、ロール速度の異なる非対称圧延法において、特定の板厚に対して減少率を最適化することによって最小限に低減できることが知られている。例えば、Shivpuri et al., 'Finite element investigation of curling in non-symmetric rolling of flat stock', Int. J. of Mech. Sci, Vol. 30, 1988;およびKnight et al., 'Investigations into the influence of asymmetric factors and rolling parameters on strip curvature during hot rolling', J. Mat. Proc. Tech., Vol. 134, 2003を参照のこと。
【0056】
同じ概念は、傾斜圧延法にも適用させることができる。図7(傾斜角5°)に示すシミュレーション結果は、板厚および減少率を変えた場合の、ロールから出るワークピースの反りを示す。シミュレーションでは最大減少率が20%である点に留意されたい。反りは、反っているワークピースの曲率半径の逆数を計算することによって定量化した。図7のグラフは、各板厚について反りがゼロとなる減少率が存在し、場合によってはこのような減少率が2つ存在することを示す。図7は、傾斜角5°で圧延するプレートの反りを最小化するための圧延計画(schedule)を最適化するための指標として使用することができる。下記の表1は、反りを最小化するための、傾斜角5°で圧延する板厚の異なるワークピースの減少率の範囲を示す。左の列は、反りによるワークピースの表面近傍の最大歪みが垂直歪みの20%未満となる好適な減少率を示す。右の列は、反りによる最大歪みを圧延による垂直歪みの10%未満に維持するに使用可能な、より好適な減少率を示す。
【0057】
【表1】
【0058】
ここで使用するように、「実質的に反りがない」という文言は、最大反り歪みが、垂直歪みの10%以下となることを指す。これは、上で説明したように、所定の減少率を使用することによって実現することができる。
【0059】
また、ワークピースの反りがパス間、あるいはワークピース間で一定であることを保証するために、ロールの粗さと潤滑を制御することが必要である。上ロールと下ロールのロールの粗さと潤滑に差があると、上ロールとワークピース間の摩擦係数と、下ロールとワークピース間の摩擦係数とが変わってしまう。摩擦係数のこのばらつきは、反り挙動のばらつきの原因となり、所定の傾斜角およびワークピースの板厚に対して減少率を最適化した場合であっても、過度の反りが発生する場合がある。摩擦係数の均一性を上げるために、ロールとワークピースを好ましくは潤滑剤で潤すことが望ましい。
【0060】
最終的な組織を決定する別の重要な因子として、ワークピースの出発組織がある。出発ワークピースの組織が良好でない場合、本発明の方法による傾斜圧延法の利点を得ることは困難である。例えば、圧延前の出発ワークピースの組織が不均一な場合には、傾斜圧延で発生する歪みが実質的に均一であっても、傾斜圧延の後の組織が不均一になる可能性が高い。
【0061】
最終製品の要件に応じて、ワークピースが、任意選択で一部のパスでは傾斜圧延され、ほかのパスでは従来法によって圧延されてもよい。最終製品の追加の要件を満たすために、従来の圧延法で使用される圧延手法(practice)が好ましくは使用される。
【0062】
B−傾斜ロールの取付具
金属プレートおよび/またはシートを圧延するための従来の圧延機が当業界で公知である。代表的な圧延機では、ワークロールのそれぞれが、実質的に直径が等しく、実質的に同じ圧延速度で作動する。
【0063】
ロールの軸に平行な軸に対してエプロンを傾斜可能とするために、従来の圧延機を、再設計して製造することができる。このような圧延機の模式図を図8に示す。圧延機フレーム(6a〜b)によって上(1)ロールと下(2)ロールが支持されている。任意選択で異なる角度に傾斜されるエプロン(5a〜b)によって、ワークピース(3)が所定の傾斜角でロール(1),(2)に供給される。エプロン(5a〜b)は、アーム(7a〜b)の位置を調整することによって傾斜させることができる。エプロンの傾斜は、どのような方法によっても行うことができ、当業者が設計することができる。好ましくは、エプロンは、下で説明する完全導入を確実にするために、垂直方向と圧延方向の両方に移動可能である。
【0064】
傾斜圧延は、特別に設計された圧延機を使用する代わりに、大がかりな変更を行わずに、従来の圧延機に取り付けることができる傾斜ロール取付具によっても行うことができる。これにより、生産設備の柔軟性が向上する。
【0065】
本発明の方法において使用することができる傾斜ロール取付具の実施形態が、図9に示されており、この図は、ワークロール(1),(2)、圧延機フレーム(6a〜b)およびエプロン(8)を有する圧延機を示す。傾斜ロール取付具は、任意選択の移送テーブル(9)、任意選択のクロスバー(10)および傾斜フィードテーブル(4)などの部品を備える。傾斜フィードテーブル(4)は、ロールの軸に平行な軸に対してテーブルを回転させることにより、特定の傾斜角で製造されても、傾斜角を可変に製造されてもよい。導入傾斜角を維持して、ワークピースがワークロール(1),(2)に供給される。ワークピースがロールの間を移動すると、ワークピースが水平に押される傾向があり、ワークピースの終端が、傾斜フィードテーブルに押し付けられ、傾斜フィードテーブルに抗力が生ずる。任意選択で、傾斜フィードテーブルに、図10のローラー(12)が設けられてもよい。図10の傾斜フィードテーブルのローラー(12)は、ワークピースと傾斜フィードテーブル間の摩擦を低減させることにより、抗力を低下させる。移送テーブル(9)にローラーが設けられている場合には、ロールにワークピースを移送するのが容易となる。
【0066】
取付具がワークロールに引き込まれないように、取付具が、圧延機フレーム(6a〜b)に取り付けられたクロスバー(10)によって支持されている。エプロンを構造的に強く支持する場合には、クロスバーに代えて、傾斜フィードテーブルがエプロン(8)にボルト留めされてもよい。圧延機フレーム(6a〜b)とクロスバー(10)間のシム(11a〜b)により、傾斜フィードテーブルの水平の調整が可能となり、図10のエプロン(5)と傾斜フィードテーブル(4)間のシム(13)により、垂直方向の調整が可能となる。水平方向と垂直方向の調整は、「完全導入」を確実に行うためには必要である。図10に示す実施形態では、傾斜取付具が圧延機の一方にのみ取り付けられているが、任意選択で、必要に応じて同じ取付具が両側に取り付けられてもよい。2つの傾斜取付具を使用するために、第1の取付具が、ロールの一方の面に取り付けられ、第2の取付具が、反対の面に取り付けられ、ロールの幅の半分のみを覆っている。
【0067】
ワークピースは、傾斜圧延プロセスと同様に、従来の圧延法でも反りやすい。あるパスでワークピースが反ると、次のパスのために、ロールにワークピースを供給することが困難となる。これは、従来の圧延法と傾斜圧延法の両方において困難な問題となりうる。この問題は、ワークロールの幅の半分を傾斜圧延に使用して、図9に示すように対応することができる。ワークロールの幅のもう半分は、図9に示す「自由パス」または従来の圧延法に利用可能である。この実施形態では、傾斜圧延中に、1)ワークピースの平滑矯正と、2)次の傾斜ロールパスのために、傾斜取付具が取り付けられている側へのワークピースの移送、の2つの目的を達成することができる。自由パス中、上ロールと下ロール間のロール間隙は、板厚が減少しないか、減少してもその量が僅かとなるような値に設定される。自由パスでは、ワークピースの板厚が減少しないが、ワークピースが平滑矯正される。ワークピースが、圧延機の傾斜ロール取付具を取り付けた側に戻されると、ワークピースが、手作業で、あるいは吸着カップを有するクレーンを使用して、移送テーブルに配置されうる。次に、ワークピースを、手作業で、あるいは液圧式押出機を使用して、次のパスのワークロールに容易に押し込むことができる。
【0068】
ワークピース全体で傾斜圧延法の利点を得るために、傾斜圧延中に傾斜角を維持する必要がある。ワークピースは、終端が傾斜フィードテーブルから離れると、水平に押される傾向がある。このような状態が発生すると、傾斜圧延法が従来の圧延法に代わり、傾斜圧延法の利点を圧延される材料において得ることができなくなる。
【0069】
この影響を最小化するには、ワークロールと傾斜フィードテーブル(15)の先端の間の距離を最小限に短くすることが重要である。図10は、傾斜フィードテーブル(15)の先端の拡大図を示す。傾斜フィードテーブル(4)のローラー(12a〜c)は、ワークピース(3)と傾斜フィードテーブル(4)間の摩擦を低減させる重要な機能を有する。ロールを支持するための空き空間が非常に限られている傾斜フィードテーブルで、ローラーをロール(1),(2)にできるだけ接近させるための要件は、ローラーおよび傾斜フィードテーブルの設計の重要な考慮事項となる。傾斜フィードテーブル(15)の先端にテーパ角度(14)を設けることにより、十分な強度でローラーを支持するための十分な空間が提供される一方、ロールをできるだけ接近させることが可能となる。
【0070】
また、ワークピースの上端と下端の両方が、上ロールと下ロールに同時に接触する「完全導入」のための条件でワークピースがロールに供給されない場合にも、傾斜角度を維持することができなくなる。完全導入が行われない場合には、ワークピースの傾斜角が、傾斜フィードテーブルの傾斜角からずれてしまう。
【0071】
完全導入は、傾斜角の制御に加えて、ワークピースと傾斜フィードテーブル間に広い接触面積を維持するためにも必要とされる。ワークピースが完全導入の条件で供給されない場合、テーブルの先端あるいはワークピースの終端で、ワークピースと傾斜フィードテーブル間の接触が面接触から線接触に小さくなってしまう。線接触により、傾斜フィードテーブルまたはワークピースに過度の接触圧がかかり、テーブルまたはワークピースが破損されうる。
【0072】
完全導入を行うためには、傾斜フィードテーブルの先端を正確に配置する必要があり、この位置は、板厚とパス当たり減少率との関数として変動しうる。テーブルの先端を、完全導入を確実にするように垂直方向に配置したのち、テーブルの先端を、好ましくは、先端をできるだけロールに接近させるように水平方向に配置する。このため、傾斜フィードテーブル(4)は、垂直方向と圧延方向に移動するように調整可能とする必要がある。傾斜フィードテーブル(4)は、図10のシムの高さ(13)と、図9のシムの高さ(11a〜b)をそれぞれ変えることによって、垂直方向と圧延方向に調整することができる。また、ワークピースの平坦度は、完全導入の条件にも寄与する。完全導入に関して本明細書で説明した調整は、平坦なワークピースではより正確に行うことができる。
【0073】
取付具の別の利点として、従来の圧延機に15分以内に容易に取り付けることができるという点が挙げられる。取付は、圧延機の大がかりな変更を必要としない。圧延機は、従来の圧延法に使用したのちに、生産を大きく中断せずに傾斜圧延法に切り替えることができる。
【実施例】
【0074】
本発明を以下の実施例を用いて説明するが、これらの実施例は限定することを意図するものではない。
【0075】
下に示す2つの実施例では粉末冶金によって作製したタンタルワークピースを、圧延の出発ワークピース材料として使用した。粉末冶金によって作製したワークピースの組織は、ランダムに近いことが知られている。前の加工の影響を分離できるように、ランダムな組織を有するワークピースを出発材料として使用すると、傾斜圧延の効果を明確に観察することができる。
【0076】
実施例1(比較例)
米国特許第6,521,173号明細書に従って、板厚7〜8mmの3枚のプレートを作製した。下に挙げるプロセス(ステップ1〜6)により、直径165mmおよび厚さ81mmのパックを得た。詳細には、この操作は以下の通りである。
1)粉末を60〜90%の密度に冷間等方圧加圧加工(CIP)。
2)プレスしたプリフォームをスチール缶に封入し、缶を排気および封止。
3)プリフォームを密度100%のビレットに熱間等方圧加圧加工(HIP)。
4)スチール缶を除去。
5)ビレットを焼鈍。
バンドソーまたは任意の類似の適切な切断装置を使用して、プレートに圧延するために適した、ホッケーパックの形状を有するスライスに切断。
【0077】
パックは、従来法(厚さ33mmでの焼鈍ステップを含む)で圧延し、従来法で仕上げ加工を行った。圧延では、パス当たり15%の減少を使用し、パス間で90°回転させた。ワークピースは反転しなかった。
【0078】
各プレートの中央、各プレート径の中間点および各プレートの端部からサンプルを採取し(2サンプル、十分に離間)、水平方向と垂直方向の両方において10μmのステップを使用して、EBSDによって組織を求めた。平均結晶粒径は、約ASTM 7(28ミクロンALI)であった。サンプルの上面から裏面までの組織を示すテクスチャーマップを得たのち、板厚方向の組織勾配を定量化するために、テクスチャーマップを以下のように数学的に分析した。
1)マップを、上半分(H1)と下半分(H2)の2つの部分に分ける。
2)高さ90μm、全幅(この例では1.64mm)の切り欠孔を有するマスクを、切り欠孔の上端が、マップの下端に一致するように、マップの上に置く。ウィンドウの高さにほぼ3つの粒子が入り、EBSDのステップが整数(この場合9ステップ)となるように選択されている点に注意されたい。
3)<100>//NDの15°内の粒子が占める切り欠孔内の面積の割合と、<111>//NDの15°内の粒子が占める切り欠孔内の面積の割合とを求める。
4)マスクを10μm下に移動させ、計算を繰り返す。
5)切り欠孔の下端がマップの下端に一致するまで、操作4を繰り返す。
6)板厚の半分のそれぞれについて、このデータを分析して、以下を決定する。
a)100のデータを通る最良適合直線の勾配(1mm当たりの%)(100勾配)。
b)111のデータを通る最良適合直線の勾配(1mm当たりの%)(111勾配)。
【0079】
3つの標本の上半分と下半分の両方の、この分析の結果を以下に示す。
【0080】
【表2】
【0081】
実施例2(本発明)
上で説明したのと同じ粉末冶金プロセス(ステップ1〜6)を使用して、板厚7.5mmのプレートを作製し、直径165mmおよび厚さ42mmのパックを得た。
【0082】
次に、これを所定の板厚に圧延した。5°の傾斜角を使用した。各パスで、ピースの板厚を5〜10%ずつ減少させた。各パスの後、各ピースを垂直軸に対して45°回転させた。ピースは、4パスごとに反転させた。圧延後のピースの最終的な板厚は、7.5mmであった。仕上げ加工(焼鈍など)は、従来の方法で実施した。
【0083】
プレートの中央、プレート径の中間点およびプレートの端部からサンプルを採取し、水平方向と垂直方向の両方において15μmのステップを使用して、EBSDによって組織を求めた。平均結晶粒径は、約ASTM 6 1/2(32ミクロンALI)であった。結果を、実施例1と同様に計算した。
【0084】
【表3】
【0085】
データ点の数が少ないものの、従来技術と本発明の方法の統計的な比較は、有用でありうる。表4に、実施例1(比較例)と実施例2(本発明)の組織勾配の変動を比較する。表2と表3に挙げた組織勾配値の絶対値を使用して、実施例1のプレート1,2,3と実施例2のプレートとについて、最大−最小範囲、組織勾配の平均と標準偏差を得た。表4は、本発明に記載の方法により、100成分と111成分の両方について、組織勾配が大幅に低減されたことを示している。
【0086】
【表4】
【0087】
本発明の特定の実施形態を、説明のために上で説明したが、添付の特許請求の範囲に記載の本発明を逸脱しない範囲で、本発明の詳細をさまざまに変更することができることは、当業者に明らかであろう。
【技術分野】
【0001】
本発明は、剪断組織を有するか、または板厚方向の組織勾配が最小限に低減されたプレートおよびシートを作製するための製造方法および装置、あるいはこの両方に関する。
【背景技術】
【0002】
プレートまたはシートの結晶組織は、多くの用途において重要な役割を果たす。スパッタリング速度は結晶組織に依存するため、結晶組織は、薄膜を成膜するために使用されるスパッタリングターゲットの性能にとって重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
結晶組織が不均一なスパッタリングターゲットから成膜される薄膜の均一性は低くなる。体積全体で組織が均一であるプレートのみが最適な性能を与える。
【0004】
ターゲット内の粒子からのスパッタリング速度は、表面に対するその粒子の結晶面の配向に応じて決まる(Zhang et al, "Effect of Grain Orientation on Tantalum Magnetron Sputtering Yield", J. Vac. Sci. Technol. A 24(4), Jul/Aug 2006参照)。プレートの法線に対する各配向のスパッタリング速度は異なる。また、特定の結晶方向が、スパッタされた原子が飛行するのに好適な方向である(Wickersham et al, "Measurement of Angular Emission Trajectories for Magnetron-Sputtered Tantalum", J. Electronic Mat., Vol 34, No 12, 2005参照)スパッタリングターゲットの粒子は非常に小さい(一般に直径50〜100μm)ため、個々の粒子の配向が大きく影響することはない。しかし、大きな領域(直径約5cm〜10cmの領域)にわたって組織は、大きく影響しうる。このため、ターゲットの表面のある領域の組織が他のいずれかの領域の組織と異なる場合、成膜される膜の膜厚が基板全体で不均一となる可能性がある。また、表面領域の組織が、ターゲットプレートからある程度の深さの同じ領域の組織と異なる場合、後の基板(ターゲットがその深さまで使用または侵食されたあと)に成膜される膜の膜厚が、最初の基板に作製した膜の膜厚とは変わってしまう可能性がある。
【0005】
ある領域の組織が他のどの領域とも同じであれば、その組織の性質は重要でない。換言すれば、全ての粒子がプレートの法線方向(ND)に平行な111の配向を有するターゲットプレートは、全ての粒子が、NDに平行な100の配向を有するターゲットプレート、あるいは、混合の比率が領域間で一定である限り、100、111および他の粒子の混合物のターゲットプレートよりも良くも悪くもない。
【0006】
膜厚の均一性は重要である。集積回路では、数百の膜がシリコンウェハに同時に作製され、例えば、ある点で膜が薄すぎれば適切な拡散バリアが得られず、別の点で膜が厚すぎるとビアまたはトレンチをブロックしたり、後の工程で除去しなければならない領域を除去することができなくなる。成膜される膜の板厚が、設計者が指定した範囲にない場合には、デバイスが用途やサービスを満たすことができず、修復または再加工が一般に不可能であるため、試験時点までの製造原価全体が損失となる。
【0007】
ターゲットの組織が均一ではなく、このため、予測可能な均一なスパッタリング速度が得られない場合には、最新技術のスパッタ装置において、基板上の点間における膜厚の変動を制御することは不可能である。基板間およびターゲット間の膜厚の変動の、全体的ではなく部分的な制御は、試験片を使用することで行うことができる。しかし、試験片の使用は、時間とコストがかかる。
【0008】
先行技術に従って作製したターゲットでは、ターゲットプレートにおける組織の不均一性により、スパッタリング速度(衝突するアルゴンイオン当たりの、ターゲットからスパッタされるタンタル原子の平均個数として定義される)が予測不能となったり、変動しやすくなり、特定の基板に成膜される膜の膜厚の変動のほか、基板間およびターゲット間の膜厚の変動が生ずる。
【0009】
また、結晶組織は、材料の機械的挙動にも影響する。これは、異方性材料の単結晶が、異なる方向に試験したときに、機械的挙動に差が生ずることによる。単結晶材料は、さまざまな用途で使用されているが、実際に使用される材料の大多数は、多くの粒子から成る多結晶である。多結晶を形成している粒子が好適な配向(すなわち結晶組織)を有する場合、材料は、同様の配向の単結晶のようにふるまう傾向がある。材料の成形性は、材料の機械的挙動によって決まり、これは結晶組織の強力な関数である。
【0010】
また、透磁率などのその他の材料特性も、結晶組織の影響を受ける。例えば、結晶組織は、主としてトランスおよびその他の電気機械用の鉄芯として使用される方向性(grain-oriented)シリコン鋼の性能の重要な因子である。方向性シリコン鋼の高い透磁率などの磁性の改善により、エネルギーを節約することができる。良好な磁気特性を得るには、方向性シリコン鋼が、高い<110>//NDおよび<100>//RD(圧延方向)の組織(ゴス方位)を有する必要があり、この場合には、後の圧延方向への磁化が容易となる。
【0011】
結晶組織は、材料が可塑変形されると発達し、塑性変形は、変形中に活性化する特定の滑り系にのみ発生しうる。垂直歪み成分と剪断歪み成分は、温度などのその他のパラメータと共に、どの滑り系が活性化されるかを決定する。滑り系が活性化されると、粒子が特定の方位の方に回転し、結晶組織が生じる。材料の最終的な結晶組織は、出発組織と、材料内に発生する歪みの両方の強力な関数である。
【0012】
例えば、平面歪み条件でのプレートの圧延中に、プレートの板厚方向の材料が、剪断歪みと垂直歪みを同時に受ける。剪断歪みの量は、プレートの板厚方向に大きく変動する。プレートの板厚中央は、従来の圧延プロセスの対称性のため剪断歪みを受けることがないが、板厚中央から離れた位置は、剪断歪みと垂直歪みの両方を受ける。このため、プレートの板厚中央の組織はほかの位置とはかなり異なる。
【0013】
プレートの板厚方向の組織の不均一性は、「板厚方向の組織勾配」と呼ばれる。従来の圧延手順では、強い板厚方向の組織勾配を示すプレートまたはシートが作製される。板厚方向の組織勾配と組織の主成分とは、従来の圧延法で変更および制御されるパラメータ(パス当たりの板厚減少率(%)やパス間の回転など)では大きく変えることができない。
【0014】
従来の圧延法では、特定の組織成分(すなわち「圧延組織」成分)が支配的となる。bcc金属では、圧延組織成分は、bcc金属が剪断歪みを受けたときに形成される「剪断組織」成分とは異なる。bcc金属中の粒子は、剪断歪みを受けると、<110>//NDの方に回転する。fee金属ではほぼ逆の挙動が観察され、剪断歪みを受けると、<111>//NDおよび<100>//NDが主たる組織成分となる。ワークピースに導入される剪断歪みがより大きくなる程、剪断組織がより強力に発達する。
【0015】
完全にランダムな組織を有する材料(feeまたはbcc)では、体積の10.2%(粒子数で10.2%)が、NDの15°内に<100>軸を有し、体積の20.4%が、NDの15°内に<110>軸を有する。このため、fee材料は、体積の10.2%超がNDの15°内に<100>軸を有し、体積の13.8%超がNDの15°内に<111>軸を有する場合、剪断組織を有するといわれる。bcc材料は、体積の20.4%超がNDの15°内に<110>軸を有する場合、剪断組織を有するといわれる。
【0016】
塑性歪み比(r値)が大きいほど、金属の成形性が改善されることが知られており、<111>//ND組織成分が支配的であるbccまたはfee金属は、高い塑性歪み比(r値)を有する。このため、fee金属の成形性を改善するには、<111>//NDを主成分の1つとして有する剪断組織が望ましい。
【0017】
プレートまたはシートの板厚方向の剪断歪みの量は、従来の(対称)圧延法から非対称圧延プロセスに切り替えることで変えることができる。板厚方向の剪断歪みの総量を上げることができる、より詳細には、板厚中央にある程度の量の剪断歪みを与えることができるが、これは従来の圧延法では不可能であった。従来技術の非対称圧延法では、直径の異なるロール、回転速度の異なるロール、表面特性が異なり、ワークピースの上面と上ロール間、およびワークピースの裏面と下ロール間の摩擦係数が異なるロールを使用する。摩擦係数を一定に制御することが困難であるため、上と下の摩擦係数を変える非対称圧延は実際上実現不可能であり、ここではこれ以上説明しない。また、これらの従来技術の方法は、板厚方向の組織勾配を低減させるためも使用することができる。
【0018】
剪断組織を導入し、組織勾配を最小化するための上記のタイプの非対称圧延法の利用が、従来技術において報告されている。例えば、Field et al., Microstructural Development in Asymmetric Processing of Tantalum Plate, J. Electronic Mat., Vol 34, No 12, 2005;Sha et al., Improvement of recrystallization texture and magnetic property in non-oriented silicon steel by asymmetric rolling, J. Magnetism and Magnetic Mat., Vol 320, 2008;Lee and Lee., Analysis of deformation textures of asymmetrically rolled steel sheets, Internat. J. Mech. Sci., Vol 43, 2001;Lee and Lee, Texture control and grain refinement of AA1050 Al alloy sheets by asymmetric rolling, Internat. J. Mech. Sci., Vol 50, 2008;Jin et al. Evolution of texture in AA6111 Al alloy after asymmetric rolling with various velocity ratios between top and bottom rolls, Mat. Sci. and Eng., Vol 465, 2007;Jin et al. The reduction of planar anisotropy by texture modification through asymmetric rolling and annealing in AA5754, Mat. Sci. and Eng., Vol 399, 2005;Kim et al. Formation of textures and microstructures in asymmetrically cold rolled and subsequently annealed aluminum alloy 1100 sheets, J. Mat. Sci., 2003;Zhang et al. Experimental and simulation textures in an as symmetrically rolled zinc alloy sheet, Scripta Materialia, Vol 50, 2004;およびKim et al. Texture and microstructure changes in asymmetrically hot rolled AZ31 magnesium alloy sheets, Mat. Lett. 59, 2005を参照のこと。
【0019】
上で説明した非対称圧延方法は、上ロールと下ロールの直径、または上ロールと下ロールの速度を非対称にすることにより、プレートの板膜方向に、ある程度の量の剪断歪みを導入する。上ロールと下ロールのロールの直径またはロール速度の比が大きくなると、プレート内に導入される剪断歪みも増大するが、これらの比と、この方法によって導入することができる剪断歪みの量には、実用上の限界がある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
このため、本発明は、材料の結晶組織を制御して、関連する材料特性を改善し、材料の性能を向上させるための装置および圧延方法を提供する。本発明は、プレートまたはシートの板厚方向に、制御された量の剪断歪みの導入を可能にし、板厚方向の組織勾配が最小限に低減されたプレートおよびシートを実現する。スパッタリングターゲットの板厚方向の組織勾配を最小化することで、成膜する膜の膜厚の予測可能性および均一性を改善し、このため、ターゲットの使い勝手を向上させる。
【0021】
また、剪断歪みの導入により、材料(例えばfee金属)の成形性が良好となる剪断組織を提供することができ、これにより、歩留りを上げ、多くの産業で広く使用されている作業を行うための加工コストを低減できる。
【0022】
また、剪断組織の改善により、方向性シリコン鋼などの材料の磁気特性(すなわち透磁率)が改善される。方向性シリコン鋼は、トランスおよび他の電気機械用の鉄芯として使用されるため、磁気特性を改善することで、エネルギーを節約できる。
【0023】
本発明においては、ワークピース(プレートまたはシート)が、圧延機のロールの軸に平行な軸に対して所定の角度(傾斜角)傾斜される。傾斜させたワークピースがロールに供給され、導入傾斜角が圧延パス全体で維持される。本明細書で使用されるように、このプロセスは「傾斜圧延」と呼ばれる。ワークピースの板厚方向の材料が、傾斜圧延の結果、剪断される。剪断歪みの量は、通常、従来の圧延法で制御される他の圧延パラメータと共に、傾斜角によって制御することができる。ワークピースの板厚を所望の値まで低下させるために、複数のパスが使用される。
【0024】
傾斜圧延法は、異なる角度に傾斜可能なエプロンを有する特別に設計された圧延機によって行うことができる。一実施形態では、傾斜エプロンは、圧延機に一体化されている。これにより、非常に短い切換時間で、従来の圧延法と傾斜圧延法の両方に圧延機を利用することが可能となる。別の実施形態では、大がかりな変更を行わずに、圧延機に容易に設置することができる取付具により、傾斜圧延法が従来の圧延機で行われてもよい。この実施形態では、装置の最初の投資額が低く、圧延機を、従来の圧延法と傾斜圧延法の両方に使用することができるが、上で説明した特別に設計された圧延機よりも切換時間が長くなる。しかし、いずれの実施形態においても、切替に長時間を要し、装置のダウンタイムが長いほかの非対称圧延プロセスとは異なり、従来の圧延法と傾斜圧延法の間の切り替え時間が比較的短いため、生産を柔軟に行うことができる。
【0025】
したがって、一態様において、本発明は、金属プレートまたはシートの圧延方法であって、水平上方または水平下方2〜20°の角度で圧延機のローラーに前記プレートまたはシートを供給するステップを有する方法を提供する。
【0026】
追加の態様において、本発明は、所定角度で金属プレートまたはシートを圧延する装置であって、水平上方にまたは水平下方に2〜20°の角度に傾斜された傾斜フィードテーブルを備えた圧延機を有する装置を提供する。
【0027】
本発明の上記の態様および他の態様は、添付の図面、詳細な説明および添付の特許請求の範囲からより容易に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1a】シングルスタンド圧延機においてプレートを傾斜圧延する実施形態を示す図である。
【図1b】マルチスタンド圧延機においてプレートを傾斜圧延する実施形態を示す図である。
【図2a】ロール直径の異なる非対称圧延法の有限要素モデリングを示す図である。
【図2b】ロール速度の異なる非対称圧延法の有限要素モデリングを示す図である。
【図2c】傾斜圧延法の有限要素モデリングを示す図である。
【図3】直径比が1<DR<4、速度比が1<SR<4の非対称圧延法、および傾斜角が0°<TR<15°の傾斜圧延法による、1パス(板膜減少率5%)の垂直歪みと累積剪断の比を示すグラフである。
【図4】ワークピースの板厚方向の異なる位置における1パスの垂直歪みと累積剪断の比を示すグラフであり、これらの位置は、上面(TS)、上面と板厚中央間の中間点(TQ)、板厚中央(MT)、板厚中央と裏面間の中間点(BQ)、および裏面(BS)であり、グラフは、異なる減少率の影響を示すようにプロットされている。
【図5】表面(S)、表面と板厚中央間の中間点(Q)およびプレートの板厚中央(M)における、垂直歪みと累積剪断の比を示すグラフであり、図5のSの値は、図4のTSとBSの値の平均を求めて得、図5のQの値は、図4のTQとBQの値の平均を求めて得、図5のMの値は、図4のMTの値である。
【図6】圧延した板厚2インチ〜0.25インチのワークピースにおける組織勾配を最小化するための最適減少率を示す図である。
【図7】反りにより定量化した(圧延後のワークピースの曲率半径の逆数)のワークピースの反り挙動を示すグラフであり、異なる板厚のワークピースにおける厚減少率による反りの影響が示される。
【図8】傾斜圧延用の傾斜エプロンを有する特別に設計された圧延機の図である。
【図9】従来の圧延機に取り付けた傾斜圧延装置の例示的な実施形態の図である。
【図10】ワークピースのロールへの導入を示す図であり、「完全導入(perfect entry)」位置が示され、完全導入位置では、ワークピースが上ロールと下ロールに同時に接触する。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、上記に挙げた図面に更に図示される。
【0030】
特段の断りのない限り、本明細書と特許請求の範囲で使用される全ての数字は、実施例に使用するものも含め、「約」が明示的に付されていない場合であっても、数字の前に「約」が付されているものとする。また、本明細書に記載する任意の数値範囲は、その範囲内に包含される全ての部分範囲を含むことを意図する。
【0031】
A−傾斜圧延プロセス
図1に2つの実施形態を示す(図1aはシングルスタンド圧延機、図1bはマルチスタンド圧延機を示す)本発明の傾斜圧延プロセスは、ワークピースに剪断歪みを導入する改良された方法を提供する。この傾斜圧延プロセスでは、傾斜フィードテーブル(4a〜f)または傾斜エプロンを使用して、ワークピース(3)が、所定の導入傾斜角で圧延機のロール(1),(2)に供給される。傾斜フィードテーブルまたは傾斜エプロンが、ワークピースの終端が水平になるのを阻止しているため、圧延プロセスの間、導入傾斜角が保持される。
【0032】
傾斜圧延法によって材料の板膜方向に導入される剪断歪みの量は、下で説明するように、傾斜角および各パス後の板厚減少率などのパラメータを調整することによって制御することができる。本発明の方法によってワークピース内の剪断歪みの量を制御可能なことにより、プレートまたはシート内で、1)最小限の板厚方向の組織勾配、2)ワークピースの板厚にわたる剪断組織、という2種類の特別な組織を得ることができる。
【0033】
角度の選択は、傾斜圧延プロセスを使用する使用者の主たる目標が、板厚方向の組織勾配を最小化することにあるか、剪断組織を発生させることにあるかのいずれであるかに応じて決まる。好ましくは、水平上方あるいは水平下方の傾斜角は、2〜20°である。板厚方向勾配を最小化するには、傾斜角は、好ましくは3〜7°である。剪断組織を増加させるためには、傾斜角は、好ましくは10〜20°である。
【0034】
一般に、傾斜角が大きくなると、実際上、より多くの剪断組織を材料に導入することができる。しかし、板厚方向の組織勾配は、傾斜角を上げても必ずしも低下するというわけではない。板厚方向の組織勾配を最小限に低減するためには、ワークピースの所定の板厚に対して、板厚減少率と傾斜角とを併せて調整する必要がある。重要なパラメータのそれぞれを最適化するためのシミュレーション法は、以下に詳細に説明しており、当業者は、各種の影響の均衡を図り、所望の結果(剪断組織を支配的に有するか、組織勾配が最小限に低減されているプレートまたはシートの形の最終製品)を得るために、追加のシミュレーションでこれらのパラメータを調整することができる。
【0035】
傾斜角は、パスに応じて、水平上方または水平下方のいずれかである。プレートの圧延(シングルスタンド圧延機)では、後から重力によってワークピースを傾斜フィードテーブルに配置するため、角度は水平上方でなければならない。シートの圧延にマルチスタンド圧延機を使用する場合には、垂直方向を省スペース化し、傾斜圧延の効果をシートの上半分と下半分に均一に分散させるために、傾斜角の方向が、好ましくは交互に変更されうる。
【0036】
ワークピース内の歪みは、従来技術において公知の用語である「変形組織」に直接影響する。特に金属加工プロセスを冷間(室温近傍あるいは室温未満)、または暖間(室温を超えるが再結晶温度未満)で実施した場合には、金属加工法(この場合、圧延法)を使用して材料に歪みを与えたのち、ワークピースが、再結晶のため、ワークピースの温度を再結晶温度より昇温することにより、好ましくは焼鈍される。ワークピースが、金属加工作業中に再結晶温度を越える温度に達した場合には、動的再結晶が発生し、金属加工後の焼鈍ステップが不要となることがある。再結晶中にワークピースの組織が変化することがあり、この場合に得られる組織は「再結晶組織」と呼ばれる。しかし、ワークピースの再結晶組織は、変形組織の強力な関数である。このため、本発明の傾斜圧延法の利点は、冷間圧延、暖間圧延、または熱間圧延について得ることができる。
【0037】
金属プレートまたはシートは、所定の傾斜で複数回ロールを通過する、換言すれば、2パス、3パス、4パス、5パスまたはそれ以上のパスとなりうる。パスは、ワークピースが所望の板厚に達するまで繰り返される。特に板厚方向の組織勾配を最小化するために、ワークピースの板厚中央に対して対称的な組織が望ましい場合、最終板厚に達するまでのパス数の最小値が、好ましくは、少なくとも4以上となるように、板厚減少率を調整する必要がある。最大減少率の別の考慮事項として、圧延機への荷重が挙げられる。板厚減少率は、圧延機に過度の荷重をかけてしまう減少率よりも低い値に維持する必要がある。本発明の傾斜圧延法とほかの非対称圧延法で圧延したワークピースで発生する剪断歪みレベルを比較するために、有限要素シミュレーションを使用した。
【0038】
有限要素シミュレーションでは、実験で実施するのは非常に困難な、ワークピース内での歪みの量と方向の計算が可能となる。有限要素シミュレーションは、本明細書においては、他の非対称圧延法と比較した傾斜圧延法の効果を定量化するためのツールとして使用する。有限要素ソフトウェアパッケージとして、米国オハイオ州コロンバス所在のScientific Forming Technologies社から入手可能なDeform 2−Dを、全シミュレーションに使用した。
【0039】
シミュレーションは、1パスで0.5インチの初期板厚のワークピースを圧延する設定とした。図2は、直径比が4の圧延(図2a)、速度比が4の圧延(図2b)と、傾斜角が10°の傾斜圧延(図2c)の各プロセスのシミュレーション設定を示す。シミュレーションのあるセットでは、ワークピースの板厚減少率を1パスにつき5%とし、別のセットでは1パスにつき10%とした。全てのシミュレーションにおいて、摩擦係数0.5と、剪断摩擦モデルとを使用した。
【0040】
ロール速度の異なる圧延のシミュレーションでは、上ロールと下ロールの直径を16インチに設定した。高速ロール(図2bの1)の回転速度は、1ラジアン/秒とし、低速ロール(図2bの2)の速度を、求めるロール速度比を基に変更した。ロールサイズの異なる圧延のシミュレーションでは、図2aの大ロール(1)の直径を16インチに固定し、図2aの小ロール(2)の直径を、求めるロール直径比を基に変更した。ロール直径の異なる圧延では、1ラジアン/秒の回転速度を使用した。
【0041】
傾斜圧延のシミュレーションでは、ロールの直径として16インチ、ロール速度として1ラジアン/秒(約10回転数/分)を使用した。
【0042】
摩擦係数、ロールの直径およびロール速度は、シミュレーション結果に定量的に影響するが、異なるプロセスの定性的評価のためにシミュレーション結果から得られる結論が、これらのパラメータの選択によって大きく影響されることはない。
【0043】
また、図2はワークピースがロールから湾曲して出る様子を示し、その影響は「反り」として知られている。
【0044】
ワークピース材料として、bcc金属であるタンタルを選択した。材料内に発生する剪断歪みの量は、材料が異なる場合であっても、所定の圧延パラメータのセットに対して非常に似てくる。しかし、剪断歪みによって得られる組織は、材料に応じて変わる。このため、剪断歪みのシミュレーション結果は、シミュレーションで選択した材料によって大きく影響されることはない。
【0045】
材料がロールを通過するたびに、剪断歪みが蓄積されていく。材料が入口で一方向に剪断され、材料が圧延の中立点を通過すると、剪断方向が変化する。正と負の剪断成分の絶対値を加算して、「累積」剪断歪みを計算した。板厚方向の平均累積剪断歪みは、ワークピースの上面から裏面に等間隔で設定した5点における剪断歪みの平均値を求めることによって計算した。
【0046】
図3は、初期板厚が0.5インチ、減少率が5%の1パスにおける、異なるプロセスの垂直歪みと累積剪断の比を示す。直径比(DR)とロール速度比(SR)を1〜4の範囲で変更した。0〜15°の範囲の傾斜角(TR)をシミュレーションした。直径比(DR)、速度比(SR)の1と、傾斜角度(TR)の0は、従来の圧延に対応する。図3に明示的に示されていない傾斜角、ロール直径およびロール速度の値に対する累積剪断歪みを得るために、線形補間を行った。
【0047】
図3は、傾斜角(TR)5°の傾斜圧延法により、ロール直径比(DR)が1.6の非対称圧延法を使用することにより得られる剪断歪みと同様の剪断歪みが得られることを示す。
【0048】
傾斜角15°の傾斜圧延法により、ロール直径比が2の非対称圧延法を使用することにより得られる剪断歪みと同様の剪断歪みが得られる。また、図3は、傾斜角5°の傾斜圧延法で得られる剪断歪みが、ロール速度比(SR)が4の非対称圧延法を使用することにより得られる剪断歪みよりも大きかったことも示す。
【0049】
傾斜圧延法を含む非対称圧延法のいずれかによって導入される剪断歪みの量は、ワークピースの板厚と、パス当たりの板厚減少率とに応じて決まる。例えば、同じ板厚(0.5インチ)と高い減少率(例えば10%)について、傾斜圧延と他の非対称圧延法とを比較すると、図3に示す結果とは僅かに異なる結果が得られる。
【0050】
パス当たりの板厚減少率が10%の場合、5°の傾斜圧延法について、板厚方向に平均値を求めた剪断歪みの量は、直径比1.65および速度比4の非対称圧延法によって得られる剪断歪みの量と同等であった。傾斜角10°の傾斜圧延法では、直径比が2の場合と同様の剪断歪みが得られた。
【0051】
上記の結果に鑑みると、傾斜圧延プロセスは、各方法の制限を考慮を考慮すると、他の非対称圧延法よりも、より有効に材料に剪断歪みを導入すると結論付けることができる。5°もの低い傾斜角により、直径比1.6の非対称圧延法またはロール速度比4の非対称圧延法と同等、またはそれ以上の剪断歪みが得られる。ロール直径比1.6または速度比4の非対称圧延法では、圧延機でプロセスを実施することが実用上困難となるが、15°または20°の傾斜角までの傾斜圧延は実用上困難ではない。
【0052】
ワークピースの板厚方向の剪断歪みは、傾斜圧延の1パスでは、板厚中央に対して均一でも対称でもない。図4は、傾斜角5%、パス当たりの減少率が5〜15%の傾斜圧延法について、ワークピースの板厚方向の異なる位置における剪断歪みの有限要素シミュレーション結果を示す。なお、これらの位置は、上面(TS)、上面から4分の1の点(TQ)、板厚中央(MT)、裏面から4分の1の点(BQ)、および裏面(BS)である。また、図4は、パス当たりの減少率が15%である従来の圧延における剪断歪みも示す。
【0053】
剪断歪みをワークピースの上半分と下半分に均一に分散させるために、ワークピースが、傾斜圧延パスごと、あるいは2パスごとなどの定期間隔で反転されうる。ワークピースの反転の頻度は、ワークピースの板厚方向の剪断歪みの均一性の要件に応じて決まる。板厚方向の組織勾配を最小化するにはに、板厚方向の剪断歪みの変動を低減させる必要がある。上面および裏面(S)、上面および裏面から4分の1の点(Q)、ならびに板厚中央(M)の平均剪断歪みを図5にプロットする。シミュレーションにおいて、傾斜圧延法は、板厚中央(M)において、従来の圧延(TR=0°)のゼロから剪断歪みを明らかに増加させており、その値は、減少率に僅かに依存するが、表面(S)および板厚の4分の1の点(Q)の剪断歪みと同様の値である。板厚0.5インチのワークピースでは、パス当たり6%の減少率と5°の傾斜角を使用して、板厚方向の組織勾配を最小限に低減できる。傾斜角が一定のときに、異なる板厚のワークピースについて、板厚方向の組織勾配を最小化するパス当たりの最適減少率が存在する。図6は、傾斜角5°のときに、0.25インチ〜2インチの板厚におけるワークピースの最適減少率を示す。他の角度についても、上で説明したようにシミュレーションを使用して、最適減少率を求めることができる。
【0054】
従来の圧延中のワークピースの反りは、反りのためにロールにワークピースを供給することが困難となる場合、またはワークピースの前端が、圧延機の出口側のエプロンに当たってこれを損傷する場合には、生産における大きな問題となりうる。これらの実際面での困難に加えて、反りは、ワークピースの垂直歪みに影響し、更なる歪みを発生させ、組織を不均一化する。圧延中にワークピースが反ると、反りによる更なる歪みが材料内に引き起こされる。反りによる歪みは、表面近傍で最大となり、板厚中央でゼロに低下する。組織に対する反りの影響は、反りによる最大歪みと、圧延中の垂直歪みとを比較することによって評価することができる。また、反りは、以下に従って最小化しない限り、傾斜圧延法および他の非対称圧延法でも発生することがある。
【0055】
ワークピースの反りは、ロール速度の異なる非対称圧延法において、特定の板厚に対して減少率を最適化することによって最小限に低減できることが知られている。例えば、Shivpuri et al., 'Finite element investigation of curling in non-symmetric rolling of flat stock', Int. J. of Mech. Sci, Vol. 30, 1988;およびKnight et al., 'Investigations into the influence of asymmetric factors and rolling parameters on strip curvature during hot rolling', J. Mat. Proc. Tech., Vol. 134, 2003を参照のこと。
【0056】
同じ概念は、傾斜圧延法にも適用させることができる。図7(傾斜角5°)に示すシミュレーション結果は、板厚および減少率を変えた場合の、ロールから出るワークピースの反りを示す。シミュレーションでは最大減少率が20%である点に留意されたい。反りは、反っているワークピースの曲率半径の逆数を計算することによって定量化した。図7のグラフは、各板厚について反りがゼロとなる減少率が存在し、場合によってはこのような減少率が2つ存在することを示す。図7は、傾斜角5°で圧延するプレートの反りを最小化するための圧延計画(schedule)を最適化するための指標として使用することができる。下記の表1は、反りを最小化するための、傾斜角5°で圧延する板厚の異なるワークピースの減少率の範囲を示す。左の列は、反りによるワークピースの表面近傍の最大歪みが垂直歪みの20%未満となる好適な減少率を示す。右の列は、反りによる最大歪みを圧延による垂直歪みの10%未満に維持するに使用可能な、より好適な減少率を示す。
【0057】
【表1】
【0058】
ここで使用するように、「実質的に反りがない」という文言は、最大反り歪みが、垂直歪みの10%以下となることを指す。これは、上で説明したように、所定の減少率を使用することによって実現することができる。
【0059】
また、ワークピースの反りがパス間、あるいはワークピース間で一定であることを保証するために、ロールの粗さと潤滑を制御することが必要である。上ロールと下ロールのロールの粗さと潤滑に差があると、上ロールとワークピース間の摩擦係数と、下ロールとワークピース間の摩擦係数とが変わってしまう。摩擦係数のこのばらつきは、反り挙動のばらつきの原因となり、所定の傾斜角およびワークピースの板厚に対して減少率を最適化した場合であっても、過度の反りが発生する場合がある。摩擦係数の均一性を上げるために、ロールとワークピースを好ましくは潤滑剤で潤すことが望ましい。
【0060】
最終的な組織を決定する別の重要な因子として、ワークピースの出発組織がある。出発ワークピースの組織が良好でない場合、本発明の方法による傾斜圧延法の利点を得ることは困難である。例えば、圧延前の出発ワークピースの組織が不均一な場合には、傾斜圧延で発生する歪みが実質的に均一であっても、傾斜圧延の後の組織が不均一になる可能性が高い。
【0061】
最終製品の要件に応じて、ワークピースが、任意選択で一部のパスでは傾斜圧延され、ほかのパスでは従来法によって圧延されてもよい。最終製品の追加の要件を満たすために、従来の圧延法で使用される圧延手法(practice)が好ましくは使用される。
【0062】
B−傾斜ロールの取付具
金属プレートおよび/またはシートを圧延するための従来の圧延機が当業界で公知である。代表的な圧延機では、ワークロールのそれぞれが、実質的に直径が等しく、実質的に同じ圧延速度で作動する。
【0063】
ロールの軸に平行な軸に対してエプロンを傾斜可能とするために、従来の圧延機を、再設計して製造することができる。このような圧延機の模式図を図8に示す。圧延機フレーム(6a〜b)によって上(1)ロールと下(2)ロールが支持されている。任意選択で異なる角度に傾斜されるエプロン(5a〜b)によって、ワークピース(3)が所定の傾斜角でロール(1),(2)に供給される。エプロン(5a〜b)は、アーム(7a〜b)の位置を調整することによって傾斜させることができる。エプロンの傾斜は、どのような方法によっても行うことができ、当業者が設計することができる。好ましくは、エプロンは、下で説明する完全導入を確実にするために、垂直方向と圧延方向の両方に移動可能である。
【0064】
傾斜圧延は、特別に設計された圧延機を使用する代わりに、大がかりな変更を行わずに、従来の圧延機に取り付けることができる傾斜ロール取付具によっても行うことができる。これにより、生産設備の柔軟性が向上する。
【0065】
本発明の方法において使用することができる傾斜ロール取付具の実施形態が、図9に示されており、この図は、ワークロール(1),(2)、圧延機フレーム(6a〜b)およびエプロン(8)を有する圧延機を示す。傾斜ロール取付具は、任意選択の移送テーブル(9)、任意選択のクロスバー(10)および傾斜フィードテーブル(4)などの部品を備える。傾斜フィードテーブル(4)は、ロールの軸に平行な軸に対してテーブルを回転させることにより、特定の傾斜角で製造されても、傾斜角を可変に製造されてもよい。導入傾斜角を維持して、ワークピースがワークロール(1),(2)に供給される。ワークピースがロールの間を移動すると、ワークピースが水平に押される傾向があり、ワークピースの終端が、傾斜フィードテーブルに押し付けられ、傾斜フィードテーブルに抗力が生ずる。任意選択で、傾斜フィードテーブルに、図10のローラー(12)が設けられてもよい。図10の傾斜フィードテーブルのローラー(12)は、ワークピースと傾斜フィードテーブル間の摩擦を低減させることにより、抗力を低下させる。移送テーブル(9)にローラーが設けられている場合には、ロールにワークピースを移送するのが容易となる。
【0066】
取付具がワークロールに引き込まれないように、取付具が、圧延機フレーム(6a〜b)に取り付けられたクロスバー(10)によって支持されている。エプロンを構造的に強く支持する場合には、クロスバーに代えて、傾斜フィードテーブルがエプロン(8)にボルト留めされてもよい。圧延機フレーム(6a〜b)とクロスバー(10)間のシム(11a〜b)により、傾斜フィードテーブルの水平の調整が可能となり、図10のエプロン(5)と傾斜フィードテーブル(4)間のシム(13)により、垂直方向の調整が可能となる。水平方向と垂直方向の調整は、「完全導入」を確実に行うためには必要である。図10に示す実施形態では、傾斜取付具が圧延機の一方にのみ取り付けられているが、任意選択で、必要に応じて同じ取付具が両側に取り付けられてもよい。2つの傾斜取付具を使用するために、第1の取付具が、ロールの一方の面に取り付けられ、第2の取付具が、反対の面に取り付けられ、ロールの幅の半分のみを覆っている。
【0067】
ワークピースは、傾斜圧延プロセスと同様に、従来の圧延法でも反りやすい。あるパスでワークピースが反ると、次のパスのために、ロールにワークピースを供給することが困難となる。これは、従来の圧延法と傾斜圧延法の両方において困難な問題となりうる。この問題は、ワークロールの幅の半分を傾斜圧延に使用して、図9に示すように対応することができる。ワークロールの幅のもう半分は、図9に示す「自由パス」または従来の圧延法に利用可能である。この実施形態では、傾斜圧延中に、1)ワークピースの平滑矯正と、2)次の傾斜ロールパスのために、傾斜取付具が取り付けられている側へのワークピースの移送、の2つの目的を達成することができる。自由パス中、上ロールと下ロール間のロール間隙は、板厚が減少しないか、減少してもその量が僅かとなるような値に設定される。自由パスでは、ワークピースの板厚が減少しないが、ワークピースが平滑矯正される。ワークピースが、圧延機の傾斜ロール取付具を取り付けた側に戻されると、ワークピースが、手作業で、あるいは吸着カップを有するクレーンを使用して、移送テーブルに配置されうる。次に、ワークピースを、手作業で、あるいは液圧式押出機を使用して、次のパスのワークロールに容易に押し込むことができる。
【0068】
ワークピース全体で傾斜圧延法の利点を得るために、傾斜圧延中に傾斜角を維持する必要がある。ワークピースは、終端が傾斜フィードテーブルから離れると、水平に押される傾向がある。このような状態が発生すると、傾斜圧延法が従来の圧延法に代わり、傾斜圧延法の利点を圧延される材料において得ることができなくなる。
【0069】
この影響を最小化するには、ワークロールと傾斜フィードテーブル(15)の先端の間の距離を最小限に短くすることが重要である。図10は、傾斜フィードテーブル(15)の先端の拡大図を示す。傾斜フィードテーブル(4)のローラー(12a〜c)は、ワークピース(3)と傾斜フィードテーブル(4)間の摩擦を低減させる重要な機能を有する。ロールを支持するための空き空間が非常に限られている傾斜フィードテーブルで、ローラーをロール(1),(2)にできるだけ接近させるための要件は、ローラーおよび傾斜フィードテーブルの設計の重要な考慮事項となる。傾斜フィードテーブル(15)の先端にテーパ角度(14)を設けることにより、十分な強度でローラーを支持するための十分な空間が提供される一方、ロールをできるだけ接近させることが可能となる。
【0070】
また、ワークピースの上端と下端の両方が、上ロールと下ロールに同時に接触する「完全導入」のための条件でワークピースがロールに供給されない場合にも、傾斜角度を維持することができなくなる。完全導入が行われない場合には、ワークピースの傾斜角が、傾斜フィードテーブルの傾斜角からずれてしまう。
【0071】
完全導入は、傾斜角の制御に加えて、ワークピースと傾斜フィードテーブル間に広い接触面積を維持するためにも必要とされる。ワークピースが完全導入の条件で供給されない場合、テーブルの先端あるいはワークピースの終端で、ワークピースと傾斜フィードテーブル間の接触が面接触から線接触に小さくなってしまう。線接触により、傾斜フィードテーブルまたはワークピースに過度の接触圧がかかり、テーブルまたはワークピースが破損されうる。
【0072】
完全導入を行うためには、傾斜フィードテーブルの先端を正確に配置する必要があり、この位置は、板厚とパス当たり減少率との関数として変動しうる。テーブルの先端を、完全導入を確実にするように垂直方向に配置したのち、テーブルの先端を、好ましくは、先端をできるだけロールに接近させるように水平方向に配置する。このため、傾斜フィードテーブル(4)は、垂直方向と圧延方向に移動するように調整可能とする必要がある。傾斜フィードテーブル(4)は、図10のシムの高さ(13)と、図9のシムの高さ(11a〜b)をそれぞれ変えることによって、垂直方向と圧延方向に調整することができる。また、ワークピースの平坦度は、完全導入の条件にも寄与する。完全導入に関して本明細書で説明した調整は、平坦なワークピースではより正確に行うことができる。
【0073】
取付具の別の利点として、従来の圧延機に15分以内に容易に取り付けることができるという点が挙げられる。取付は、圧延機の大がかりな変更を必要としない。圧延機は、従来の圧延法に使用したのちに、生産を大きく中断せずに傾斜圧延法に切り替えることができる。
【実施例】
【0074】
本発明を以下の実施例を用いて説明するが、これらの実施例は限定することを意図するものではない。
【0075】
下に示す2つの実施例では粉末冶金によって作製したタンタルワークピースを、圧延の出発ワークピース材料として使用した。粉末冶金によって作製したワークピースの組織は、ランダムに近いことが知られている。前の加工の影響を分離できるように、ランダムな組織を有するワークピースを出発材料として使用すると、傾斜圧延の効果を明確に観察することができる。
【0076】
実施例1(比較例)
米国特許第6,521,173号明細書に従って、板厚7〜8mmの3枚のプレートを作製した。下に挙げるプロセス(ステップ1〜6)により、直径165mmおよび厚さ81mmのパックを得た。詳細には、この操作は以下の通りである。
1)粉末を60〜90%の密度に冷間等方圧加圧加工(CIP)。
2)プレスしたプリフォームをスチール缶に封入し、缶を排気および封止。
3)プリフォームを密度100%のビレットに熱間等方圧加圧加工(HIP)。
4)スチール缶を除去。
5)ビレットを焼鈍。
バンドソーまたは任意の類似の適切な切断装置を使用して、プレートに圧延するために適した、ホッケーパックの形状を有するスライスに切断。
【0077】
パックは、従来法(厚さ33mmでの焼鈍ステップを含む)で圧延し、従来法で仕上げ加工を行った。圧延では、パス当たり15%の減少を使用し、パス間で90°回転させた。ワークピースは反転しなかった。
【0078】
各プレートの中央、各プレート径の中間点および各プレートの端部からサンプルを採取し(2サンプル、十分に離間)、水平方向と垂直方向の両方において10μmのステップを使用して、EBSDによって組織を求めた。平均結晶粒径は、約ASTM 7(28ミクロンALI)であった。サンプルの上面から裏面までの組織を示すテクスチャーマップを得たのち、板厚方向の組織勾配を定量化するために、テクスチャーマップを以下のように数学的に分析した。
1)マップを、上半分(H1)と下半分(H2)の2つの部分に分ける。
2)高さ90μm、全幅(この例では1.64mm)の切り欠孔を有するマスクを、切り欠孔の上端が、マップの下端に一致するように、マップの上に置く。ウィンドウの高さにほぼ3つの粒子が入り、EBSDのステップが整数(この場合9ステップ)となるように選択されている点に注意されたい。
3)<100>//NDの15°内の粒子が占める切り欠孔内の面積の割合と、<111>//NDの15°内の粒子が占める切り欠孔内の面積の割合とを求める。
4)マスクを10μm下に移動させ、計算を繰り返す。
5)切り欠孔の下端がマップの下端に一致するまで、操作4を繰り返す。
6)板厚の半分のそれぞれについて、このデータを分析して、以下を決定する。
a)100のデータを通る最良適合直線の勾配(1mm当たりの%)(100勾配)。
b)111のデータを通る最良適合直線の勾配(1mm当たりの%)(111勾配)。
【0079】
3つの標本の上半分と下半分の両方の、この分析の結果を以下に示す。
【0080】
【表2】
【0081】
実施例2(本発明)
上で説明したのと同じ粉末冶金プロセス(ステップ1〜6)を使用して、板厚7.5mmのプレートを作製し、直径165mmおよび厚さ42mmのパックを得た。
【0082】
次に、これを所定の板厚に圧延した。5°の傾斜角を使用した。各パスで、ピースの板厚を5〜10%ずつ減少させた。各パスの後、各ピースを垂直軸に対して45°回転させた。ピースは、4パスごとに反転させた。圧延後のピースの最終的な板厚は、7.5mmであった。仕上げ加工(焼鈍など)は、従来の方法で実施した。
【0083】
プレートの中央、プレート径の中間点およびプレートの端部からサンプルを採取し、水平方向と垂直方向の両方において15μmのステップを使用して、EBSDによって組織を求めた。平均結晶粒径は、約ASTM 6 1/2(32ミクロンALI)であった。結果を、実施例1と同様に計算した。
【0084】
【表3】
【0085】
データ点の数が少ないものの、従来技術と本発明の方法の統計的な比較は、有用でありうる。表4に、実施例1(比較例)と実施例2(本発明)の組織勾配の変動を比較する。表2と表3に挙げた組織勾配値の絶対値を使用して、実施例1のプレート1,2,3と実施例2のプレートとについて、最大−最小範囲、組織勾配の平均と標準偏差を得た。表4は、本発明に記載の方法により、100成分と111成分の両方について、組織勾配が大幅に低減されたことを示している。
【0086】
【表4】
【0087】
本発明の特定の実施形態を、説明のために上で説明したが、添付の特許請求の範囲に記載の本発明を逸脱しない範囲で、本発明の詳細をさまざまに変更することができることは、当業者に明らかであろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属プレートまたはシートの圧延方法であって、水平上方または水平下方2〜20°の角度で圧延機のローラーに前記プレートまたはシートを供給するステップを有する方法。
【請求項2】
前記角度は、10〜20°である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
剪断組織が増加している請求項2に記載の方法。
【請求項4】
<100>//NDの15°内および<111>//NDの15°内に配向しているfee金属の単位体積当たりの粒子の割合がそれぞれ10.2%超および13.6%超である請求項3に記載の方法。
【請求項5】
<110>//NDの15°内に配向しているbcc金属の単位体積当たりの粒子の割合が20.4%超である請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記角度は、3〜7°である請求項1に記載の方法。
【請求項7】
板厚方向勾配が低減されている請求項6に記載の方法。
【請求項8】
100//ND組織成分および111//ND組織成分のそれぞれについて、前記板厚方向の組織勾配が1mm当たり4%以下である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記金属プレートまたはシートが、前記ロールを2回以上通過する請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記金属プレートまたはシートがパス間で反転される請求項1に記載の方法。
【請求項11】
実質的に反りを生じないように、パス当たりの所定の板厚減少率が使用される請求項1に記載の方法。
【請求項12】
潤滑剤が前記ワークピースの上面と下面に塗布され、ロールが一定の粗さに維持される請求項1に記載の方法。
【請求項13】
反りによる最大歪みが、前記圧延パスで発生する垂直歪みの20%未満である請求項1に記載の方法。
【請求項14】
反りによる前記最大歪みが、前記圧延パスで発生する垂直歪みの10%未満である請求項1に記載の方法。
【請求項15】
所定角度で金属プレートまたはシートを圧延する装置であって、水平上方にまたは水平下方に2〜20°の角度に傾斜された傾斜フィードテーブルを備えた圧延機を有する装置。
【請求項16】
前記傾斜フィードテーブルは、前記圧延機に一体化されている請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記傾斜フィードテーブルは着脱可能であり、前記圧延機は、前記傾斜フィードテーブル支持するためのクロスバーと、前記ワークピースを前記傾斜フィードテーブルに移送するための移送テーブルとを更に有する請求項15に記載の装置。
【請求項18】
前記傾斜フィードテーブルは、水平上方または水平下方に3〜7°の角度に傾斜されている請求項15に記載の装置。
【請求項19】
前記傾斜フィードテーブルは、水平上方または水平下方に10〜20°の角度に傾斜されている請求項15に記載の装置。
【請求項20】
対称圧延から非対称圧延への(およびその逆の)切換に要する時間が短縮されている請求項15に記載の装置。
【請求項1】
金属プレートまたはシートの圧延方法であって、水平上方または水平下方2〜20°の角度で圧延機のローラーに前記プレートまたはシートを供給するステップを有する方法。
【請求項2】
前記角度は、10〜20°である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
剪断組織が増加している請求項2に記載の方法。
【請求項4】
<100>//NDの15°内および<111>//NDの15°内に配向しているfee金属の単位体積当たりの粒子の割合がそれぞれ10.2%超および13.6%超である請求項3に記載の方法。
【請求項5】
<110>//NDの15°内に配向しているbcc金属の単位体積当たりの粒子の割合が20.4%超である請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記角度は、3〜7°である請求項1に記載の方法。
【請求項7】
板厚方向勾配が低減されている請求項6に記載の方法。
【請求項8】
100//ND組織成分および111//ND組織成分のそれぞれについて、前記板厚方向の組織勾配が1mm当たり4%以下である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記金属プレートまたはシートが、前記ロールを2回以上通過する請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記金属プレートまたはシートがパス間で反転される請求項1に記載の方法。
【請求項11】
実質的に反りを生じないように、パス当たりの所定の板厚減少率が使用される請求項1に記載の方法。
【請求項12】
潤滑剤が前記ワークピースの上面と下面に塗布され、ロールが一定の粗さに維持される請求項1に記載の方法。
【請求項13】
反りによる最大歪みが、前記圧延パスで発生する垂直歪みの20%未満である請求項1に記載の方法。
【請求項14】
反りによる前記最大歪みが、前記圧延パスで発生する垂直歪みの10%未満である請求項1に記載の方法。
【請求項15】
所定角度で金属プレートまたはシートを圧延する装置であって、水平上方にまたは水平下方に2〜20°の角度に傾斜された傾斜フィードテーブルを備えた圧延機を有する装置。
【請求項16】
前記傾斜フィードテーブルは、前記圧延機に一体化されている請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記傾斜フィードテーブルは着脱可能であり、前記圧延機は、前記傾斜フィードテーブル支持するためのクロスバーと、前記ワークピースを前記傾斜フィードテーブルに移送するための移送テーブルとを更に有する請求項15に記載の装置。
【請求項18】
前記傾斜フィードテーブルは、水平上方または水平下方に3〜7°の角度に傾斜されている請求項15に記載の装置。
【請求項19】
前記傾斜フィードテーブルは、水平上方または水平下方に10〜20°の角度に傾斜されている請求項15に記載の装置。
【請求項20】
対称圧延から非対称圧延への(およびその逆の)切換に要する時間が短縮されている請求項15に記載の装置。
【図1a】
【図1b】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図1b】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2010−535633(P2010−535633A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−519977(P2010−519977)
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【国際出願番号】PCT/US2008/009446
【国際公開番号】WO2009/020619
【国際公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(509303512)エイチ.シー. スターク インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【国際出願番号】PCT/US2008/009446
【国際公開番号】WO2009/020619
【国際公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(509303512)エイチ.シー. スターク インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】
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